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特開2023-9481無線端末のアンテナ指向特性の測定システムおよび測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009481
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】無線端末のアンテナ指向特性の測定システムおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20230113BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20230113BHJP
   H01Q 3/36 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01R29/10 D
H01Q21/24
H01Q3/36
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112821
(22)【出願日】2021-07-07
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横堀 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 圭一郎
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021FA06
5J021JA05
5J021JA06
5J021JA10
(57)【要約】
【課題】必要な直交偏波間アイソレーションを確保可能な端末アンテナの指向特性を迅速に測定する。
【解決手段】
端末アンテナ3との間で電波の送信および受信を行う測定アンテナ20と、測定アンテナを介して垂直偏波と水平偏波を含む偏波信号を試験信号として無線端末に送信し、端末アンテナで受信した試験信号の電力値を含む応答信号を受信するRF送受信部40と、応答信号から電力値を検出する検出部31と、電波進行方向を軸に該軸回りに試験信号の偏波面を90°回転させた直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナから送信し、検出部により検出された、端末アンテナが受信した直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出部が検出した電力値との差が12dB以上あるか否かを判定するアイソレーション判定部335とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末が備える端末アンテナの指向特性を測定するアンテナ指向特性測定システム(1)であって、
前記端末アンテナとの間で電波の送信および受信を行う測定アンテナ(20)と、
前記測定アンテナを介して垂直偏波と水平偏波を含む偏波信号を試験信号として前記無線端末に送信し、前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の電力値の情報を含んだ応答信号を、前記端末アンテナから前記測定アンテナを介して受信する送受信部(40)と、
前記送受信部が受信した前記応答信号から前記試験信号の電力値を検出する検出部(31)と、
電波進行方向を軸(Z)に該軸回りに前記試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出部により検出された、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出した電力値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定するアイソレーション判定部(335)と、
を備える、アンテナ指向特性測定システム。
【請求項2】
前記無線端末を保持し回転させ該無線端末の位置を変える端末回転機構(10)と、
前記検出された電力値を前記無線端末の位置と関連付けて記憶する記憶部(32)と、
前記記憶部に記憶された前記無線端末のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定する極大判定部(332)と、をさらに備え、
前記アイソレーション判定部は、前記電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、前記電波進行方向を軸に該軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出部により検出された、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と、前記電力極大値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定する、請求項1に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項3】
前記応答信号は、前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の第1方向の偏波成分の電力値と前記第1方向に直交する第2方向の偏波成分の電力値の情報を含み、
前記検出部は、前記送受信部が受信した前記応答信号から前記第1方向および前記第2方向の偏波成分の電力値を検出し、
前記アイソレーション判定部は、前記第1方向および前記第2方向ごとに検出した電力値の差がそれぞれ所定の閾値以上あるか否かを判定する、請求項1または2に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項4】
前記送受信部は、前記垂直偏波を移相する第1移相器(41)と、前記水平偏波を移相する第2移相器(42)とを備え、前記アンテナ指向特性測定システムは、
前記極大判定部により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅(A,A)および位相差(δ)のうち少なくとも1つを変化させる電気的位相回転制御部(333)をさらに備える、請求項2または3に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項5】
前記電気的位相回転制御部は、前記アイソレーション判定部により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅(A,A)および位相差(δ)のうち少なくとも1つをさらに変化させる、請求項4に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項6】
前記極大判定部により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、前記端末回転機構により前記無線端末の位置を変化させる機械的回転制御部(334)をさらに備える、請求項2~5のいずれか一項に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項7】
前記機械的回転制御部は、前記アイソレーション判定部により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、前記端末回転機構により前記無線端末の位置をさらに変化させる、請求項6に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項8】
前記極大判定部により前記端末アンテナが受信した試験信号の電力の極大値が存在すると判定され、かつ、前記アイソレーション判定部により偏波面の90°回転前後で検出された試験信号の電力値の差が所定の閾値以上あると判定された場合に、前記無線端末の位置を試験の候補位置として表示する表示部(36)をさらに備える、請求項2に記載のアンテナ指向特性測定システム。
【請求項9】
無線端末が備える端末アンテナの指向特性を測定するアンテナ指向特性測定方法であって、
前記無線端末を保持し回転させ該無線端末の位置を変える端末回転工程と、
垂直偏波と水平偏波とを含む偏波信号を試験信号として測定アンテナから前記無線端末に送信する送信工程と、
前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の第1方向の偏波成分の電力値と前記第1方向に直交する第2方向の偏波成分の電力値の情報を含んだ応答信号を、前記端末アンテナから前記測定アンテナを介して受信する受信工程と、
前記受信した前記応答信号から前記第1方向および前記第2方向の偏波成分の電力値をそれぞれ検出する検出工程と、
前記検出された電力値を前記無線端末の位置と関連付けて記憶する記憶工程と、
前記記憶された前記無線端末のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定する極大判定工程と、
前記電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、電波進行方向を軸に該軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出工程で検出した、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と、前記電力極大値との差が所定の閾値以上あるか否かを前記第1方向および前記第2方向ごとに判定するアイソレーション判定工程と、
を含む、アンテナ指向特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、無線ルータ等の無線端末のアンテナの指向特性を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデータ通信端末等の無線端末を開発した場合、開発した無線端末が正常に通信を行なえるか否かを試験する必要がある。このため、実際の基地局の機能を擬似する擬似基地局として動作する試験装置に試験対象の無線端末を接続し、試験装置と無線端末との間で通信を行ない、通信の内容を確認する試験を行なっている。
【0003】
このような試験として、5G NR(New Radio)に対応した無線端末が3GPP(3rd Generation Partnership Project)の規格に準じているかを確認するコンフォーマンス試験がある。コンフォーマンス試験の方法もまた、3GPPにより詳細に規定されており、規定された要件を満たした測定を行う必要がある。
【0004】
例えば、FR2(Frequency Range 2)に関するコンフォーマンス試験では、OTA(Over The Air)試験環境において、姿勢制御可能なポジショナに試験対象の無線端末を設置し、無線端末の姿勢を変えつつ無線端末の送受信特性を測定する(例えば特許文献1参照)。試験対象の無線端末が備える端末アンテナは、指向性を有する例えばアレイアンテナが用いられており、測定された送受信特性は姿勢(向きあるいは方向)に依存したものとなる。そのため、コンフォーマンス試験においても端末アンテナの指向性に関する条件が規定されている。
【0005】
具体的には、3GPPの技術仕様に従ったコンフォーマンス試験では、同技術仕様に記載の条件を満たす無線端末または端末アンテナの配置方向を探す必要がある(例えば、非特許文献1参照)。例えば、2つのTE偏波ブランチごとに12dB以上のアイソレーションがあることや、無線端末が報告するランク(rank)が試験で規定された所定のランクと同等以上であること等の条件を満たすことが要求されている。このコンフォーマンス試験においては、規定されたこれらの条件を満たすように端末アンテナを測定アンテナに対して正対して配置した後、具体的な試験の内容を実施していく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-189601号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS 38.521-4 annex H.0およびH.1の"Procedure for finding UE direction"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、3GPPにより規定されたコンフォーマンス試験のアンテナセットアップでは、測定アンテナと端末アンテナが正対し、端末アンテナの水平および垂直偏波間のアイソレーションが十分に確保されていることが要求されている。実際には、ポジショナに配置された端末アンテナが備える垂直偏波アンテナは鉛直方向とは異なる第1方向を向き、水平偏波アンテナは水平方向とは異なる第2方向を向いている可能性がある。このため、端末アンテナの水平および垂直偏波間のアイソレーションを直交偏波間アイソレーション(または極間アイソレーション)と称することとする。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の測定システムでは、直交偏波間アイソレーションが所望の値以上あることを確認するためには、無線端末の端末アンテナを電波進行方向に垂直な平面内で機械的に90°回転させ、受信電力が最小(受信電力の差が12dB以上)になることを確認する必要がある。
【0010】
端末アンテナの直交偏波間アイソレーションを測定するために無線端末を機械的に回転させると、それに要する時間が取られ、試験のセットアップに掛かる時間が長くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、必要な直交偏波間アイソレーションを確保可能な無線端末のアンテナの指向特性を迅速に測定することができるアンテナ指向特性測定システムおよび測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、無線端末が備える端末アンテナの指向特性を測定するアンテナ指向特性測定システム(1)であって、前記端末アンテナとの間で電波の送信および受信を行う測定アンテナ(20)と、前記測定アンテナを介して垂直偏波と水平偏波を含む偏波信号を試験信号として前記無線端末に送信し、前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の電力値の情報を含んだ応答信号を、前記端末アンテナから前記測定アンテナを介して受信する送受信部(40)と、前記送受信部が受信した前記応答信号から前記試験信号の電力値を検出する検出部(31)と、電波進行方向を軸(Z)に該軸回りに前記試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出部により検出された、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出した電力値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定するアイソレーション判定部(335)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上述のように、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、アイソレーション判定部が、電波進行方向を軸に該軸回りに試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナから送信し、検出部により検出された、端末アンテナが受信した直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出部が検出した電力値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定するようになっている。この構成により、無線端末を実際に機械的に90°回転することなく、送信する試験信号の偏波面を90°回転させて、端末アンテナで受信した試験信号の回転前後の電力値の差に基づいて端末アンテナでの直交偏波間アイソレーションを確認することができる。これにより、アイソレーションを確認するために無線端末を実際に回転させる必要がないので、無線端末の指向特性を測定する時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、前記無線端末を保持し回転させ該無線端末の位置を変える端末回転機構(10)と、前記検出された電力値を前記無線端末の位置と関連付けて記憶する記憶部(32)と、前記記憶部に記憶された前記無線端末のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定する極大判定部(332)と、をさらに備え、前記アイソレーション判定部は、前記電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、前記電波進行方向を軸に該軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出部により検出された、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と、前記電力極大値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定する構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、端末アンテナにおいて必要な直交偏波間アイソレーションが確保可能な無線端末の位置(θ,φ)を特定することができる。すなわち、測定アンテナと端末アンテナが正対状態となる無線端末の位置の正確な情報を得ることができる。
【0016】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、前記応答信号は、前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の第1方向の偏波成分の電力値と前記第1方向に直交する第2方向の偏波成分の電力値の情報を含み、前記検出部は、前記送受信部が受信した前記応答信号から前記第1方向および前記第2方向の偏波成分の電力値を検出し、前記アイソレーション判定部は、前記第1方向および前記第2方向ごとに検出した電力値の差がそれぞれ所定の閾値以上あるか否かを判定する構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、アイソレーション判定部が第1方向および第2方向ごとに判定しているので、端末アンテナの直交偏波間アイソレーションをより正確に判定することができる。
【0018】
本発明のアンテナ指向特性測定システムにおいて、前記送受信部は、前記垂直偏波を移相する第1移相器(41)と、前記水平偏波を移相する第2移相器(42)とを備え、前記アンテナ指向特性測定システムは、前記極大判定部により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅(A,A)および位相差(δ)のうち少なくとも1つを変化させる電気的位相回転制御部(333)をさらに備える構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、電波進行方向(Z軸)を軸とし該軸回りに端末アンテナが回転している場合だけでなく、該軸に直交する軸(例えばY軸)回りに端末アンテナが回転している場合であっても、端末アンテナでの受信電力値の極大の存在を正確に判定することができ、これにより端末アンテナの方向をより正確に特定することができる。
【0020】
本発明のアンテナ指向特性測定システムにおいて、前記電気的位相回転制御部は、前記アイソレーション判定部により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅(A,A)および位相差(δ)のうち少なくとも1つをさらに変化させる構成であってもよい。
【0021】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、電波進行方向(Z軸)を軸とし該軸回りに端末アンテナが回転している場合だけでなく、該軸に直交する軸(例えばY軸)回りに端末アンテナが回転している場合であっても、端末アンテナの直交偏波間アイソレーションを正確に判定することができ、これにより端末アンテナの方向をより正確に特定することができる。
【0022】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、前記極大判定部により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、前記端末回転機構により前記無線端末の位置を変化させる機械的回転制御部(334)をさらに備える構成であってもよい。
【0023】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、端末アンテナでの受信電力値の極大の存在を正確に判定することができ、これにより、電気的回転可能な範囲を越えて、測定アンテナと端末アンテナが正対している候補位置を探すことができる。
【0024】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、前記機械的回転制御部は、前記アイソレーション判定部により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、前記端末回転機構により前記無線端末の位置をさらに変化させる構成であってもよい。
【0025】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、端末アンテナの直交偏波間アイソレーションを正確に判定することができ、これにより、電気的回転可能な範囲を越えて、測定アンテナと端末アンテナが正対している候補位置を探すことができる。
【0026】
本発明のアンテナ指向特性測定システムは、前記極大判定部により前記端末アンテナが受信した試験信号の電力の極大値が存在すると判定され、かつ、前記アイソレーション判定部により偏波面の90°回転前後で検出された試験信号の電力値の差が所定の閾値以上あると判定された場合に、前記無線端末の位置を試験の候補位置として表示する表示部(36)をさらに備える構成であってもよい。
【0027】
この構成により、本発明のアンテナ指向特性測定システムは、ユーザが試験の候補位置を確認することができる。
【0028】
本発明のアンテナ指向特性測定方法は、無線端末が備える端末アンテナの指向特性を測定するアンテナ指向特性測定方法であって、前記無線端末を保持し回転させ該無線端末の位置を変える端末回転工程と、垂直偏波と水平偏波とを含む偏波信号を試験信号として測定アンテナから前記無線端末に送信する送信工程と、前記無線端末が前記端末アンテナで受信した前記試験信号の第1方向の偏波成分の電力値と前記第1方向に直交する第2方向の偏波成分の電力値の情報を含んだ応答信号を、前記端末アンテナから前記測定アンテナを介して受信する受信工程と、前記受信した前記応答信号から前記第1方向および前記第2方向の偏波成分の電力値をそれぞれ検出する検出工程と、前記検出された電力値を前記無線端末の位置と関連付けて記憶する記憶工程と、前記記憶された前記無線端末のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定する極大判定工程と、前記電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、電波進行方向を軸に該軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、前記検出工程で検出した、前記端末アンテナが受信した前記直線偏波信号の電力値と、前記電力極大値との差が所定の閾値以上あるか否かを前記第1方向および前記第2方向ごとに判定するアイソレーション判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0029】
上述のように、本発明のアンテナ指向特性測定方法は、アイソレーション判定工程において、電波進行方向を軸に該軸回りに試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナから送信し、検出工程で検出した、端末アンテナが受信した直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出工程で検出した電力値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定するようになっている。この構成により、無線端末を実際に機械的に90°回転することなく、送信する試験信号の偏波面を90°回転させて、端末アンテナで受信した試験信号の回転前後の電力値の差に基づいて端末アンテナでの直交偏波間アイソレーションを確認することができる。これにより、アイソレーションを確認するために無線端末を実際に回転させる必要がないので、無線端末の指向特性を測定する時間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、必要な直交偏波間アイソレーションを確保可能な無線端末のアンテナの指向特性を迅速に測定することができるアンテナ指向特性測定システムおよび測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るアンテナ指向特性測定システムの全体の概略構成を示す図である。
図2】座標系を説明するための図である。
図3】測定アンテナに対して端末アンテナが正対した状態を示す図である。
図4】端末アンテナの角度ずれを説明するための図である。
図5】Tx円偏波と等価なRx投影面での結合例を示す図である。
図6】垂直偏波と水平偏波の位相差と端末アンテナの角度ずれの関係を説明するための図である。
図7】本発明の特徴を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態に係るアンテナ指向特性測定装置の全体の概略構成を示す図である。
図9】制御部の機能の概略を示すブロック図である。
図10】本実施形態に係るアンテナ指向特性測定方法の目的を説明するためのフローチャートである。
図11】本実施形態に係るアンテナ指向特性測定方法の概略を示すフローチャートである。
図12】電力測定処理の概略を示すフローチャートである。
図13】結果表示処理の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態に係るアンテナ指向特性測定システムおよび測定方法について、図面を参照して説明する。
【0033】
(アンテナ指向特性測定システム)
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ指向特性測定システム1の全体の概略構成を示す図である。図1に示すように、アンテナ指向特性測定システム1は、無線端末2が備える端末アンテナ3の指向特性を測定するシステムであり、端末回転機構としてのポジショナ10と測定アンテナ20とアンテナ指向特性測定装置30とを備えている。
【0034】
測定アンテナ20は、端末アンテナ3との間で電波の送受信を行うようになっている。具体的には、測定アンテナ20は、垂直偏波信号と水平偏波信号とを含む試験信号を端末アンテナ3に送信し、端末アンテナ3から偏波信号である応答信号を受信するようになっている。測定アンテナ20は、外部からの電波の進入および内部での電波の反射が抑制された例えば電波暗箱(図示せず)内の測定空間の所定位置に固定された指向特性既知のアンテナであり、端末アンテナ3は、同様に測定空間内でポジショナ10に保持された指向特性未知のアンテナである。ミリ波帯での試験では、図1に示すようなホーンアンテナや、プリント基板上にアンテナ素子がパターン形成されたアンテナ(例えばテーパスロットアンテナ)等の種々のタイプのアンテナを測定アンテナ20として用いることができる。
【0035】
測定対象としては、例えば、直交する2つのアンテナ素子を備えた直交二偏波アンテナを有する携帯電話、スマートフォン、タブレット、無線ルータ等の無線端末が挙げられる。本実施形態では、例として5G NRに準拠した移動体端末を測定対象の無線端末2であるとし、無線端末2に対して3GPP規定のFR2コンフォーマンス試験を行う場合を例に説明する。
【0036】
ポジショナ10は、測定空間内の基準点Oの近傍で測定対象の無線端末2を保持し、保持した無線端末2を、基準点Oを回転中心として回転させ、無線端末2の位置(θ,φ)(回転位置(θ,φ)ともいう)を変えるように構成されている。基準点Oは、測定アンテナ20の位相中心Qからその指向特性の基準方向(通常は開口に直交する最大利得方向)に所定距離Rだけ離れた位置にある。測定アンテナ20と無線端末2の距離Rは、公知の遠方界測定の距離条件を満たすように設定される。なお、アンテナの位相中心Qとは、電波の発射、入射において仮想的に電波の集中点と見なせる点である。
【0037】
本実施形態では、図1に示すように、基準点Oを原点とするXYZ直交座標系を想定する。測定アンテナ20の位相中心QはZ軸上に位置し、Y軸が鉛直方向、X軸がY軸およびZ軸に直交する方向になっている。ポジショナ10は、保持した無線端末2を、基準点Oを機械的回転中心とし、例えば、3つの直交軸XYZのうち、少なくともY軸回り(θ方向)とZ軸回り(φ方向)に回転させる構造とする。ポジショナ10により無線端末2をY軸回りに回転角θ、Z軸回りに回転角φだけ回転させたとき、無線端末2の姿勢あるいは配置を示す(回転)位置を(θ,φ)の対によって表す。なお、ポジショナ10は、X軸回りの回転も含めた3軸回転構造のポジショナとすることもできる。
【0038】
ポジショナ10の具体的な構造は詳述しないが、例えば、図1に示すように、無線端末2を保持する保持台11を、基準点Oを回転中心としてステッピングモータやサーボモータ等の回転装置12、13によりY軸回りおよびZ軸回りに所定角度ステップで回転させる機構であれば任意の機構が採用できる。これらの回転角θ,φの制御は、例えば制御部33の制御下でポジショナ制御部34によって行なわれる。保持台11の材質、形状は、その保持機構を含めて、無線端末2の端末アンテナ3の放射特性に影響を与えにくいものが採用される。
【0039】
図2は、図1の座標系において、3GPPに規定されたFR2コンフォーマンス試験での測定アンテナ20と端末アンテナ3の配置を示す図である。図2に示すように、Z軸上において基準点Oから距離rの位置Pに「Tx」として表示された端末アンテナ3が配置され、Z軸上に基準点Oから距離Rの位置に「Rx」として表示された測定アンテナ20が配置される。基準点Oが機械的回転中心であり、端末アンテナ3の位置Pが、作用する電気的回転中心である。測定アンテナ20は、垂直偏波アンテナ20Vと水平偏波アンテナ20Hを有しており(図8参照)、X軸に平行な方向が水平偏波方向Hであり、Y軸に平行な方向が垂直偏波方向Vである。測定アンテナ20は、メインローブがZ軸に沿った方向に向くように設定されている。
【0040】
図1図2に示すように、保持台11上に保持された無線端末2が、Y軸回りに回転角θだけ回転し、Z軸回りに回転角φだけ回転したとき、端末アンテナ3の位置r(θ,φ)は、直交座標系XYZにおける端末アンテナ3の位置を(x,y,z)とすると、次式により表される。
【数1】
【0041】
図3は、Rxとして表示された測定アンテナ20に対して、Txとして表示された端末アンテナ3が回転角φ′のずれを有しほぼ正対した状態を示す図である。オフセットパラボラ型のリフレクタを使用するIFF(Indirect Far Field)方式の場合、クワイエットゾーン内のTx点に配置されたパッチアンテナアレイ等の端末アンテナ3の指向性は容易に直接観測できる。一方、パッチアンテナアレイ等の端末アンテナ3から想定される2方向のTE波に対するRx点での指向性は、無線端末2のZ軸回りの回転によって変わらないことから、垂直および水平偏波面との整合性を必要とはするが、3GPP技術仕様(TS 38.521-4 annex H)ではビームピーク方向で正対できる点があると考え、直交偏波間(極間)のアイソレーションが12dB以上あればアンテナ同士が正対していると認めることとしている。
【0042】
図4は、端末アンテナ3の角度ずれを説明するための図である。本実施形態では、直交する垂直偏波方向Vと水平偏波方向Hの2方向の観点で特定モードのTE波への感度と、エネルギーとしての分布とを合わせて考慮する。図4において、LRxは、Rx(測定アンテナ20)側での垂直偏波と垂直偏波の合成ローブを表し、LTxは、対となるTx(端末アンテナ3)側の合成ローブを表す。SS-RSRPB(SS-Reference Signal Received Power per Branch)を利用した電力測定では、Rx端を送信側として用いる。端末アンテナ3が正対に近い任意のTx配置位置(θ′,φ′)にあり、図4(a)に示すようにRx配置との角度ずれφ"が存在する場合、Tx側での信号強度または電力値TxH,TxVとRx側での信号強度または電力値RxH,RxVの関係は次式で表される。
【数2】
【0043】
上記の式に基づき、Rx配置との角度ずれφ"を、図4(b)、(c)に示すように垂直偏波方向Vおよび水平偏波方向Hとで個別に以前の相対配置との信号強度または電力値の差異によってそれぞれ推測する。例えば、MMSE(Minimum Mean Square Error)等を用いて推定される角度ずれφ"を垂直および水平偏波双方の信号強度または電力値で検出するようにしてもよい。
【0044】
図5は、Tx円偏波と等価なRx投影面での結合例を示す図である。Rx配置に対する物理的な角度ずれθ",φ"について、角度ずれがφ"のみ(θ"=0°)であれば、垂直および水平偏波の位相差なし(δ=0°)とすることで、垂直および水平偏波の強度差または電力差によって角度φ方向毎に直線偏波を与え、任意のTx配置の一方向偏波と結合できる、等価なφ回転を行うことができる。
【0045】
z軸方向の角度ずれがあるθ"≠0°場合は、Tx配置の円偏波と結合することで、垂直および水平偏波の位相差がある(δ≠0°)楕円偏波と等価にでき、特に円偏波(δ=90°)に対して、等価となるθ回転位置では、どの角度φに対しても、垂直および水平偏波で作る信号強度と等価にできる。よって、位相差δの制御により、この2観点での信号強度または電力値の増減を測定することで、正対する物理角度と、極間アイソレーションが推定できる。
【0046】
図6は、垂直偏波と水平偏波の位相差δと角度ずれφ"の関係を説明するための図である。垂直偏波方向と水平偏波方向の2方向の特定モードのTE波が作る合成波(図中の合成TE)は、垂直偏波励振RF部43と水平偏波励振RF部44のそれぞれの位相または位相差δを制御することにより可変となる。合成TEの傾斜角度が角度ずれφ"に対応している。2方向のTE波を任意の振幅と角度で合成することにより、機械的回転では数秒かかる回転をミリ秒以下で電気的に実現することができる。
【0047】
図7は、本実施形態の測定法を説明するための図である。まず、測定対象の無線端末2をZ軸回りおよびY軸回りに機械的に回転させて、アンテナ指向特性測定装置30により測定された、端末アンテナ3の受信電力値が最大となる位置を探す。次いで、従来は、図7の上図に示すように、無線端末2をZ軸回りに機械的に90度回転させて、アンテナ指向特性測定装置30により測定された、端末アンテナ3の受信電力値が最小(電力差が12dB以上)となることを確認していた。
【0048】
本実施形態では、無線端末2を機械的に90度回転させると時間がかかるので、アンテナ指向特性測定システム1の測定アンテナ20を電気的位相回転により90度回転した状態にすることで時間を短縮することができる。電気的位相回転では、XY平面内の回転だけでなく、Z軸方向への回転を加えることもでき、これにより、無線端末2と測定アンテナ20の位置関係の微調整も可能となる。
【0049】
(アンテナ指向特性測定装置)
図8は、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定装置30の全体の概略構成を示す図である。図8に示すように、アンテナ指向特性測定装置30は、検出部31、記憶部32、制御部33、ポジショナ制御部34、操作部35、表示部36、RF送受信部40、ベースバンド(BB)受信部50、ベースバンド(BB)送信部60、および発振部70を備えている。以下、各構成要素について説明する。
【0050】
RF送受信部40は、垂直偏波と水平偏波を含む偏波信号を試験信号として生成し、測定アンテナ20を介して無線端末2に送信するようになっている。また、RF送受信部40は、無線端末2が端末アンテナ3で受信した試験信号の電力値の情報を含んだ応答信号を、端末アンテナ3から測定アンテナ20を介して受信するようになっている。なお、本実施形態のRF送受信部40は、本発明の送受信部に対応する。
【0051】
検出部31は、RF送受信部40が受信した応答信号から試験信号の電力値を検出するようになっている。具体的には、検出部31は、無線端末2からの応答信号に含まれるSS-RSRPBが示す電力値(RSRPB値、RSRPB報告値ともいう)をブランチ(第1方向および第2方向)ごとに取得する。
【0052】
制御部33は、アンテナ指向特性測定システム1の全体を対象とする統括的な制御を行うとともに、端末アンテナ3が受信した試験信号の電力値の情報に基づいて試験信号パラメータを設定するようになっている(試験信号パラメータ設定部331)。試験信号パラメータとしては、測定アンテナ20から送信する垂直偏波信号の振幅A、水平偏波信号の振幅A、垂直偏波信号の遅延位相δ、水平偏波信号の遅延位相δが挙げられる。垂直偏波信号と水平偏波信号の位相差δは遅延位相の差δ-δにより表される。
【0053】
ポジショナ制御部34は、制御部33による制御下でポジショナ10の回転装置12、13の駆動を制御して無線端末2を2軸回りに回転させ、無線端末2の回転位置(θ,φ)を変えることができるようになっている。無線端末2の回転位置(θ,φ)は、無線端末2の位置、姿勢、配置方向、方向、または向きを示す。
【0054】
操作部35は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部36の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成されていてもよい。あるいは、操作部35は、キーボードまたはマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部35は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部35への操作入力は、制御部33により検知されるようになっている。例えば、操作部35により、通信方式、試験の種別、各種閾値、試験信号パラメータの初期値等をユーザが任意に指定するようにしてもよい。
【0055】
表示部36は、各種情報の入力画面や測定結果等を表示するようになっており、例えば、無線端末2の各回転位置(θ,φ)での無線端末2からの報告情報(電力値、ランク)や、所定の閾値以上のアイソレーションが得られる試験候補位置を表示するようになっている。
【0056】
記憶部32は、端末アンテナ3が受信した試験信号のブランチ1(第1方向)およびブランチ2(第2方向)の偏波成分の電力値を無線端末2の回転位置(θ,φ)と関連付けて記憶するようになっている。また、記憶部32は、直交偏波間アイソレーションの情報、測定アンテナ20から送信した垂直偏波信号および水平偏波信号の各振幅、位相差等の情報、端末アンテナ3から報告されたランク情報等を無線端末2の回転位置(θ,φ)と関連付けて記憶するようになっている。
【0057】
発振部70は、試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号を同期させるために共通の基準信号を生成する基準信号生成部71を備えている。
【0058】
ベースバンド(BB)受信部50は、基準信号生成部71により生成された基準信号を参照して、RF送受信部40が測定アンテナ20を介して受信したアップリンク(UL)信号を復調しベースバンド信号を取得するアップリンク(UL)復調部51を備えている。
【0059】
ベースバンド(BB)送信部60は、基準信号生成部71により生成された基準信号を参照して、測定アンテナ20を介して送信するダウンリンク(DL)信号をRF送受信部40にて生成させるために、ベースバンドの変調信号を生成するダウンリンク(DL)変調部61を備えている。
【0060】
(RF送受信部)
RF送受信部40は、第1移相器41、第2移相器42、垂直偏波励振RF部43、水平偏波励振RF部44、およびアンカー励振RF部45を備えている。
【0061】
第1移相器41は、制御部33の試験信号パラメータ設定部331により与えられた移相量δに基づいて、垂直偏波信号を移相させ、第2移相器42は、試験信号パラメータ設定部331により与えられた移相量δに基づいて、水平偏波信号を移相させるようになっている。第1および第2移相器41、42により移相操作を受けた垂直偏波信号と水平偏波信号は、位相差δ(=δ-δ)を有することになる。
【0062】
垂直偏波励振RF部43は、制御部33の試験信号パラメータ設定部331から与えられた振幅Aの情報を基に、DL変調部61により生成されたベースバンドのDL変調信号をアップコンバートするとともに、第1移相器41により位相を制御して垂直偏波信号を生成し、垂直偏波アンテナ20Vを励振するようになっている。
【0063】
水平偏波励振RF部44は、制御部33の試験信号パラメータ設定部331から与えられた振幅Aの情報を基に、DL変調部61により生成されたベースバンドのDL変調信号をアップコンバートするとともに、第2移相器42により位相を制御して水平偏波信号を生成し、水平偏波アンテナ20Hを励振するようになっている。
【0064】
アンカー励振RF部45は、リンクアンテナ80を励振するようになっている。リンクアンテナ80は、無線端末2との間でリンク(呼)を確立または保持するためのアンテナであり、例えば、ノンスタンドアローンモード(Non-Standalone mode)で使用されるLTE用のリンクアンテナや、スタンドアローンモード(Standalone mode)で使用される5G用のリンクアンテナである。
【0065】
(制御部)
図9は、制御部33の機能の概略を示すブロック図である。図9に示すように、制御部33は、試験信号パラメータ設定部331、極大判定部332、電気的位相回転制御部333、機械的回転制御部334、アイソレーション判定部335、および指向性判定部336を備えている。
【0066】
試験信号パラメータ設定部331は、試験信号を規定するパラメータ(試験信号パラメータ)を設定するようになっており、試験信号パラメータとしては、試験信号を構成する垂直偏波信号および水平偏波信号の各振幅A、A、各移相量δ、δ、および位相差δが挙げられる。
【0067】
極大判定部332は、記憶部32に記憶された無線端末2のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定するようになっている。極大が存在する場合には、そのとき送信された試験信号の振幅A,A、位相差δの情報、無線端末2の位置(θ、φ)の情報、端末アンテナ3が受信した電力値の情報を取得する。
【0068】
電気的位相回転制御部333は、極大判定部332により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅A,Aおよび位相差δのうち少なくとも1つを変化させるようになっている。また、電気的位相回転制御部333は、アイソレーション判定部335により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅A,Aおよび位相差δのうち少なくとも1つをさらに変化させるようになっている。
【0069】
具体的には、電気的位相回転制御部333は、試験信号を構成する垂直偏波信号および水平偏波信号の各振幅A,Aと位相差δを制御することにより、電気的位相回転を行うものである。例えば、位相差δが0の場合には、試験信号は直線偏波となり、垂直偏波信号と水平偏波信号の振幅の比を変えることにより偏波面の傾きを変えることができ、偏波面を90°回転させる前後での試験信号の電力値の差を測定することにより、直交偏波間アイソレーションを確認することができる。また、例えば、位相差δが0でない場合には、試験信号は楕円偏波となり、位相差δが90°の場合には、試験信号は円偏波となる。例えば、位相差δを90°の近傍で変化させて電気的位相回転を行うことにより、端末アンテナ3の電波進行方向(Z軸方向)前後の回転(傾き)の情報を得ることができる。このため、電気的位相回転制御部333は、極大判定部332が電力値に極大が存在しないと判定した場合に、極大の存在の可能性が高くなるように垂直偏波信号と水平偏波信号の各振幅A,Aおよび位相差δを変えるようにする。
【0070】
機械的回転制御部334は、無線端末2の回転位置(姿勢)を変えるようポジショナ制御部34を制御するようになっており、例えば、極大判定部332により電力値の極大が存在しないと判定された場合に、極大の存在の可能性が高くなるように、ポジショナ10により無線端末2の回転位置(θ,φ)を変化させるようになっている。また、機械的回転制御部334は、アイソレーション判定部335により電力値の差が12dBより小さいと判定された場合に、電力値の差が大きくなるように、ポジショナ10により無線端末2の回転位置(θ,φ)をさらに変化させるようになっている。
【0071】
機械的回転制御部334による無線端末2の回転操作と、電気的位相回転制御部333による電気的位相回転操作とは、併用してもよいし、どちらか一方を単独で行ってもよい。
【0072】
アイソレーション判定部335は、電波進行方向であるZ軸回りに試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナ20から送信し、検出部31により検出された、端末アンテナ3が受信した直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出した電力値との差が12dB以上あるか否かを判定するようになっている。例えば、アイソレーション判定部335は、電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、電波進行方向であるZ軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて前記測定アンテナから送信し、検出部31により検出された、端末アンテナ3が受信した直線偏波信号の電力値と、電力極大値との差が12dB以上あるか否かを判定する。
【0073】
指向性判定部336は、極大判定部332により端末アンテナ3が受信した試験信号の電力の極大値が存在すると判定され、かつ、アイソレーション判定部335により偏波面の90°回転前後で測定された試験信号の電力値の差が所定の閾値、例えば12dB以上あると判定された場合に、測定アンテナ20と端末アンテナ3が偏波面の整合性を含めて正対した状態にあると判定し、そのときの無線端末2の位置(θ,φ)をコンフォーマンス試験の候補位置として記憶部32に格納するとともに表示部36に表示させるようになっている。
【0074】
アンテナ指向特性測定装置30の一部または全部は、例えば、コンピュータ装置によって構成される。このコンピュータ装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、外部インタフェース(I/F)部と、SSD(Solid State Drive)やハードディスク装置等の不揮発性の記憶媒体と、各種入出力ポートとを有する。
【0075】
CPUは、アンテナ指向特性測定システム1を対象とする統括的な制御を行うようになっている。ROMは、CPUを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラムおよび制御用のパラメータ等を記憶するようになっている。RAMは、CPUが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するようになっている。外部インタフェース(I/F)部は、所定の信号が入力される入力インタフェース機能と所定の信号を出力する出力インタフェース機能を有している。
【0076】
外部I/F部は、ネットワークを介してポジショナ10に接続されている。入出力ポートには、操作部35および表示部36が接続されている。操作部35は、コマンドなど各種情報を入力するための機能部であり、表示部36は、上記各種情報の入力画面や測定結果等、各種情報を表示する機能部である。
【0077】
上述したコンピュータ装置は、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより検出部31や制御部33として機能する。制御部33が備える試験信号パラメータ設定部331、極大判定部332、電気的位相回転制御部333、機械的回転制御部334、アイソレーション判定部335、および指向性判定部336も、CPUがRAMの作業領域でROMに格納された所定のプログラムを実行することにより実現されるものである。
【0078】
(アンテナ指向特性測定方法)
次に、無線端末2が備える端末アンテナ3の指向特性を測定する方法を説明する。
【0079】
図10図13は、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定方法の概略を示すフローチャートである。以下では、3GPPにより規定されたFR2コンフォーマンス試験(TS 38.521-4、TR 38.810参照)の準備段階で行われる場合を例に説明するが、これに限定されず、無線端末2が備える端末アンテナ3の正確な指向特性を、直交偏波間アイソレーションの情報を基に迅速に測定する方法として用いることができる。
【0080】
まず、図1図10に示すように、無線端末2を2軸回りに回転可能なポジショナ10に設置する(ステップS1)。ポジショナ10により無線端末2の位置あるいは回転位置(θ,φ)を任意に変えることができる。
【0081】
次いで、3GPP技術仕様(TS 38.521-4 annex H.1の"Procedure for finding UE direction")に従って同技術使用(同annex H.0)に記載の条件を満たす無線端末2の位置(θ,φ)を探す(ステップS2)。
【0082】
ステップS2では、3GPP技術仕様(TS 38.521-4 annex H.1.1)に記載のRx beam direction searchを用いるステップS2-1か、3GPP技術仕様(TS 38.521-4 annex H.1.2)に記載のRSRPB based scanを用いるステップS2-2か、本実施形態に係る処理法を用いるステップS2-3のいずれかを採用することができる。以下、本実施形態に係る処理法(ステップS2-3)を用いる場合について説明する。
【0083】
図11に示すように、ステップS2-3では、まず、リンクアンテナ80を用いて端末アンテナ3との間で呼接続を行い、アンテナ指向特性測定装置30が無線端末2からRSRPBなどの報告値を得続けられるようにする(ステップS11)。
【0084】
次に、アンテナ指向特性測定装置30は、試験信号の垂直および水平偏波により形成される楕円偏波(位相差δ≒90°)を中心に、90°位相差の近傍角度の試験信号を用いて、無線端末2からの報告値を取得する(ステップS12)。
【0085】
具体的には、アンテナ指向特性測定装置30は、試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号を測定アンテナ20の垂直偏波アンテナ20Vおよび水平偏波アンテナ20Hからそれぞれ送信し、検出部31において端末アンテナ3での受信状態の報告値を取得する(電力測定処理)(ステップS13)。報告値としては、端末アンテナ3が受信した試験信号の第1方向の偏波成分の電力値(P1)、第1方向と直交する第2方向の偏波成分の電力値(P2)、ランク情報等が挙げられる。検出部31により検出した報告値は、無線端末2の位置(θ,φ)および垂直および水平偏波信号のパラメータ(A,A,δ,δ)に関連付けて記憶部32に格納しておく。電力測定処理については後で説明する。
【0086】
制御部33の極大判定部332は、記憶部32に格納された報告値の情報を基に、機械的回転および電気的位相回転により走査した位置(θ,φ)の範囲において端末アンテナ3が受信した試験信号の電力値に十分な極大が存在しているか否かを判定する(ステップS14)。制御部33の極大判定部332は、十分な極大が存在していると判定した場合は、極大点での位置(θ,φ)、垂直および水平偏波信号のパラメータ(A,A,δ,δ)、端末アンテナ3が受信した試験信号の電力値(受信電力値P1,P2)を取得し、ステップS15に進む。
【0087】
制御部33の機械的回転制御部334は、端末アンテナ3が受信した試験信号の電力値に十分な極大が存在していないと判定した場合(ステップS14で否)、電気的位相回転で走査できる程度の受信電力値の余裕を確保できるように、機械的回転により無線端末2の端末アンテナ3の対向面が別面になるよう回転位置(θ,φ)を移動走査させる(ステップS20)。具体的には、制御部33の機械的回転制御部334が、ポジショナ制御部34を制御してポジショナ10の保持台11に保持された無線端末2の回転位置(θ,φ)を規定する回転角度θおよびφのいずれか一方または両方を順次変えていく。回転角度θ,φの変更方法は、例えば、既に得られたデータを基に、より早く極大の存在が確かめられるように、または極大が存在する可能性が高くなるように、変更していく。ステップS20で回転角度θ,φの設定値を変更すると、ステップS12に戻る。
【0088】
ステップS20では、機械的回転とともに、あるいは単独で電気的位相回転制御部333が、試験信号を構成する垂直および水平偏波信号のパラメータ(振幅A,A,位相差δ)を変えるよう制御し電気的位相回転を行なってもよい。
【0089】
一方、ステップS15では、制御部33は、無線端末2からの報告値を基に、Rank2を取得できていたか否かを判定する(ステップS15)。ここで、「Rank2」とは、電磁テンソルの階数が2であることを示す。これは、無線端末2が複数のアンテナによって同一周波数の信号を受信したとき、固有の2波に分離できることを意味する。ランク情報は、RSRPB報告とは別に、無線端末2からRI(Rank Indicator)の値の報告により取得できる。
【0090】
ステップS15でRank2が取得できていないと判定された場合(ステップS15で否)、回転走査面(Z軸に垂直な面)の方向を凡そ確定しRank2状態を確保するように、RSRPBにより得られた受信電力値における余裕の中で電気的位相回転を行なって回転位置(θ,φ)を移動走査させる(ステップS21)。ステップS21で回転角度θ,φの設定値を変更すると、ステップS12に戻る。
【0091】
ステップS15でRank2が取得できていると判定された場合(ステップS15で是)、制御部33のアイソレーション判定部335は、直線偏波を形成する同位相(位相差δ=0°)の垂直偏波と水平偏波の振幅差を変えて偏波面を回転方向φに90°回転させて、RSRPBから受信電力値を取得し、偏波面を90°回転する前後の直線偏波信号の受信電力の差を端末アンテナ3の直交偏波間アイソレーションの指標として算出する(ステップS16)。具体的には、制御部33のアイソレーション判定部335は、極大点に対応する回転位置(θ,φ)、垂直および水平偏波信号のパラメータ(A,A)を基に、直線偏波の偏波面が回転方向φに90°回転した場合の垂直および水平偏波信号の振幅(A,A)を決定し、RF送受信部40により垂直および水平偏波信号を生成し、測定アンテナ20を励振させて垂直および水平偏波信号(直線偏波)を試験信号として送信する。そして、検出部31において端末アンテナ3からのRSRPBが示す受信電力値(RSRPB値またはRSRPB報告値ともいう)を取得し、受信電力差を算出し、記憶部32に格納する(電力測定処理)(ステップS17)
【0092】
次いで、制御部33の指向性判定部336は、記憶部32に格納されたRSRPB値の情報を基に、極大点に対応して取得されたRSRPB値と、電気的位相回転によりφ方向に90°回転した場合のRSRPB値との差が12dB以上あるか否かを判定する(ステップS18)。RSRPB値が12dB以上あると判定された場合は、ステップS19の結果表示処理を行なって処理を終了する。
【0093】
一方、RSRPB値が12dBより小さいと判定された場合(ステップS18で否)、3GPP試験の準備が整うアイソレーションを確保するために、機械的回転を交えて無線端末2の端末アンテナ3の対向面が別面になるよう回転角度θ,φを移動走査させる(ステップS20)。ステップS20で回転角度θ,φの設定値を変更すると、ステップS12に戻る。
【0094】
上述のように、図11において、ステップS12→S13→S14→S15→S21→S12のループにおいて、ステップS12→S13→S14→S15では、楕円偏波を形成する垂直および水平偏波の位相差δを90°近傍で振って無線端末2からRSRPB値の極大およびRank2が取得できたか判断している。
【0095】
電気的位相回転でθ方向に回転走査する場合は、位相差δによって円偏波-楕円偏波-直線偏波と変えて走査し(欠けたリンゴの切り口が見る方向で変わるのと同様)、φ方向に回転走査する場合は(θが合致していないとφ方向回転が共変成分を持って斜めに寄与しRSRPB報告値が極小方向に変位するため)、位相差δを固定したまま、合成する振幅Aと振幅Aを変えることによって角度を変えるようにする。ステップS12ではこのステップS21での二軸(θ,φ)合わせの回転範囲指定を受けてRSPRB測定をすべく位相差δをステップS13で設定して、ステップS13で垂直および水平偏波で概ね楕円偏波を生成、送信して無線端末2から報告値を取得している。
【0096】
(電力測定処理)
ここで、電力測定処理について図12を参照して説明する。
【0097】
制御部33の試験信号パラメータ設定部331は、検出部31により検出されたRSRPB報告値に基づいて、垂直および水平偏波信号のパラメータ(A,A,δ,δ)を設定する。RF送受信部40は、制御部33の試験信号パラメータ設定部331により設定されたパラメータを基に、指定された位相差δとなる移相量δと移相量δにより、垂直偏波励振RF部43が垂直偏波信号を生成し、水平偏波励振RF部44が水平偏波信号を生成する(ステップS31)。
【0098】
次いで、垂直偏波アンテナ20Vから垂直偏波信号を出力し、水平偏波アンテナ20Hから水平偏波信号を出力する(ステップS32)。
【0099】
無線端末2は、端末アンテナ3が受信した垂直および水平偏波信号からなる試験信号の第1方向の偏波成分(RSRPB1成分)の電力値と第2方向の偏波成分(RSRPB2成分)の電力値を取得する(ステップS33)。
【0100】
無線端末2は、第1方向の偏波成分の電力値(RSRPB1報告値)と第2方向の偏波成分の電力値(RSRPB2報告値)を含む応答信号を送信する(ステップS34)。
【0101】
次いで、アンテナ指向特性測定装置30のRF送受信部40が、測定アンテナ20を介して応答信号を受信する(ステップS35)。受信した応答信号は、ダウンコンバートされ、アップリンク復調部51に送られて復調される。EN-DC(E-UTRA-NR Dual Connectivity)接続時は、リンクアンテナ80を経由して応答信号を受信する。
【0102】
検出部31は、機械的回転や電気的位相回転により定まる回転位置(θ,φ)におけるZ軸回りの回転方向(φ方向)周囲のRSRPB1報告値とRSRPB2報告値および極大判別のためのそのRSRPB差を個別に取得し、記憶部32に保存し、記憶部32から制御部33にデータを渡すようにする(ステップS36)。
【0103】
(結果表示処理)
図13は、結果表示処理を示す。図13に示すように、結果表示処理では、記憶部32に保存された位置情報としての回転位置(θ,φ)に対応したRSRPB情報一覧と、12dB以上のアイソレーションが得られる3GPP試験候補位置とを表示部36に表示する(ステップS40)。
【0104】
(作用・効果)
以上のように、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定システム1は、アイソレーション判定部335が、電波進行方向であるZ軸回りに試験信号の偏波面を90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナ20から送信し、検出部31により検出された、端末アンテナ3が受信した直線偏波信号の電力値と偏波面を90°回転させる前の元の試験信号を用いたとき検出部31が検出した電力値との差が所定の閾値以上あるか否かを判定するようになっている。この構成により、無線端末2を実際に機械的に90°回転することなく、送信する試験信号の偏波面を90°回転させて、端末アンテナ3で受信した試験信号の回転前後の電力値の差に基づいて端末アンテナ3での直交偏波間アイソレーションを確認することができる。これにより、アイソレーションを確認するために無線端末2を実際に回転させる必要がないので、無線端末2の指向特性を測定する時間を大幅に短縮することができる。
【0105】
また、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定システム1は、制御部33が、記憶部32に記憶された無線端末2のいずれかの位置に電力値の極大が存在するか否かを判定する極大判定部332をさらに備え、アイソレーション判定部335は、電力値の極大が存在する場合、該極大での電力極大値を取得したとき用いられた試験信号の偏波面を、電波進行方向であるZ軸回りに90°回転させて得られる直線偏波信号を試験信号として生成させて測定アンテナ20から送信し、検出部31により検出された、端末アンテナ3が受信した直線偏波信号の電力値と、電力極大値との差が12dB以上あるか否かを判定するようになっている。この構成により、端末アンテナ3において必要の直交偏波間アイソレーションが確保可能な無線端末2の位置(θ,φ)を特定することができる。すなわち、測定アンテナ20と端末アンテナ3が正対状態となる無線端末2の位置の正確な情報を得ることができる。
【0106】
また、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定システム1において、制御部33は、極大判定部332により電力値の極大が存在しないと判定された場合や、アイソレーション判定部により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、送信する試験信号を構成する垂直偏波信号と水平偏波信号のそれぞれの振幅(A,A)および位相差(δ)のうち少なくとも1つを変化させる電気的位相回転制御部333を備えている。このために、RF送受信部40は、位相差δに基づいて垂直偏波信号を移相する第1移相器41と、水平偏波信号を移相する第2移相器42とを備えている。この構成により、電波進行方向であるZ軸回りに端末アンテナ3が回転している場合だけでなく、Z軸に直交する例えばY軸回りに端末アンテナ3が回転している場合であっても、電力値の極大の存在を正確に判定することができ、または端末アンテナの直交偏波間アイソレーションを正確に判定することができ、これにより、端末アンテナ3の方向をより正確に特定することができる。
【0107】
また、本実施形態に係るアンテナ指向特性測定システム1において、制御部33は、極大判定部332により電力値の極大が存在しないと判定された場合や、アイソレーション判定部335により電力値の差が所定の閾値より小さいと判定された場合に、ポジショナ10により無線端末2の位置(θ,φ)を変化させる機械的回転制御部334をさらに備えている。この構成により、端末アンテナ3の受信電力値の極大の存在を正確に判定することができ、また、端末アンテナ3の直交偏波間アイソレーションを正確に判定することができ、これにより、電気的回転可能な範囲を越えて、測定アンテナ20と端末アンテナ3が正対状態にあるコンフォーマンス試験の候補位置を探すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本発明は、必要な直交偏波間アイソレーションを確保可能な無線端末のアンテナの指向特性を迅速に測定することができるという効果を有し、無線端末のアンテナ指向特性測定システムおよび測定方法の全体に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 アンテナ指向特性測定システム
2 無線端末
3 端末アンテナ
10 ポジショナ(端末回転機構)
11 保持台
12、13 回転装置
20 測定アンテナ
20H 水平偏波アンテナ
20V 垂直偏波アンテナ
30 アンテナ指向特性測定装置
31 検出部
32 記憶部
33 制御部
34 ポジショナ制御部
35 操作部
36 表示部
40 RF送受信部
41 第1移相器
42 第2移相器
43 垂直偏波励振RF部(V偏波励振RF部)
44 水平偏波励振RF部(H偏波励振RF部)
45 アンカー励振RF部
50 ベースバンド受信部(BB受信部)
51 アップリンク復調部(UL復調部)
60 ベースバンド送信部(BB送信部)
61 ダウンリンク変調部(DL変調部)
70 発振部
71 基準信号生成器
80 リンクアンテナ
331 試験信号パラメータ設定部
332 極大判定部
333 電気的位相回転制御部
334 機械的回転制御部
335 アイソレーション判定部
336 指向性判定部
図1
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