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特開2023-94825配向装置、成形体の製造方法、着磁装置、磁石の製造方法および空芯コイル
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  • 特開-配向装置、成形体の製造方法、着磁装置、磁石の製造方法および空芯コイル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094825
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】配向装置、成形体の製造方法、着磁装置、磁石の製造方法および空芯コイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 13/00 20060101AFI20230629BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01F13/00 300
H01F41/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210349
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】牧野 直幸
【テーマコード(参考)】
5E062
【Fターム(参考)】
5E062CF02
(57)【要約】
【課題】空芯コイル内により長い直線で表される磁束を発生させることができる空芯コイルを含む配向装置の提供。
【解決手段】空芯コイルと、前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に配置され、磁石用粉末を充填するキャビティと、を含む、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向するために用いる配向装置であって、前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、配向装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空芯コイルと、前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に配置され、磁石用粉末を充填するキャビティと、を含む、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向するために用いる配向装置であって、
前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、配向装置。
【請求項2】
前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、請求項1に記載の配向装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配向装置を用いて、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向し、配向済み磁石用成形体を得る、成形体の製造方法。
【請求項4】
空芯コイルと、磁石用粉末を焼成して得た焼成体を前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に固定する固定手段と、を含む、前記焼成体を着磁する着磁装置であって、
前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、着磁装置。
【請求項5】
前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、請求項4に記載の着磁装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の着磁装置を用いて、前記焼成体を着磁し、磁石を得る、磁石の製造方法。
【請求項7】
磁石用粉末の配向に用いる配向装置、または前記磁石用粉末を焼成して得た焼成体の着磁に用いる着磁装置に含まれる空芯コイルであって、
中心軸ωを含む断面において、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する空芯コイル。
【請求項8】
前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、請求項7に記載の空芯コイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配向装置、成形体の製造方法、着磁装置、磁石の製造方法および空芯コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石製造時において、原料粉末(磁石用粉末)を充填したキャビティを空芯コイル内に挿入し、磁場を発生させることで原料粉末の配向方向を揃えることが行われている。
【0003】
これに関連する従来法として、例えば特許文献1には、焼結磁石の原料の合金粉末を容器のキャビティに充填する充填手段と、該キャビティに充填された該合金粉末に機械的圧力を印加することなく磁界を印加することにより該合金粉末を配向させる配向手段と、該配向手段により配向させた該合金粉末に機械的圧力を印加することなく該合金粉末を加熱することにより焼結させる焼結手段を有する装置であって、前記配向手段が、a)空芯コイルと、b)前記空芯コイル内に、前記容器を収容する空間を挟んで該空芯コイルの両開口端側に配置された、強磁性体から成る強磁性材と、を備えることを特徴とする焼結磁石製造装置が記載されている。
【0004】
また特許文献2には、磁石素材に高磁界を印可することにより着磁するようにした着磁装置において、磁石素材と略同一形状の開口部と半径方向に延在するスリットとを備えた磁束制御部材を着磁コイル内部に配置したことを特徴とする着磁装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2014/123078号公報
【特許文献2】特開2004-221354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の空芯コイルの場合、その内部において、磁束が直進する範囲が狭かった。この場合、キャビティ内の原料粉末(磁石用粉末)に直線的な配向を施すことが難しくなる場合があった。また、直線的な配向が施された原料粉末を着磁する場合、直線的に着磁することが難しい場合があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、空芯コイル内に、より長い直線で表される磁束を発生させることができる空芯コイル、それを含む配向装置または着磁装置、およびそれらを用いた成形体の製造方法および磁石の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の(1)~(8)である。
(1)空芯コイルと、前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に配置され、磁石用粉末を充填するキャビティと、を含む、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向するために用いる配向装置であって、
前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、配向装置。
(2)前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、上記(1)に記載の配向装置。
(3)上記(1)または(2)に記載の配向装置を用いて、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向し、配向済み磁石用成形体を得る、成形体の製造方法。
(4)空芯コイルと、磁石用粉末を焼成して得た焼成体を前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に固定する固定手段と、を含む、前記焼成体を着磁する着磁装置であって、
前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、着磁装置。
(5)前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、上記(4)に記載の着磁装置。
(6)上記(4)または(5)に記載の着磁装置を用いて、前記焼成体を着磁し、磁石を得る、磁石の製造方法。
(7)磁石用粉末の配向に用いる配向装置、または前記磁石用粉末を焼成して得た焼成体の着磁に用いる着磁装置に含まれる空芯コイルであって、
中心軸ωを含む断面において、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する空芯コイル。
(8)前記中心軸ωと平行方向における両端に前記縮径部を有する、上記(7)に記載の空芯コイル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、空芯コイル内に、より長い直線で表される磁束を発生させることができる空芯コイル、それを含む配向装置または着磁装置、およびそれらを用いた成形体の製造方法および磁石の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は第1態様の空芯コイル10の概略斜視図であり、図1(b)は第1態様の空芯コイル10およびキャビティ1の、空芯コイル10の中心軸ωを含む断面を示す概略図であり、図1(c)は図1(a)に示す第1態様の空芯コイル10に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。
図2図2(a)は第2態様の空芯コイル20の概略斜視図であり、図2(b)は第2態様の空芯コイル20およびキャビティ1の、空芯コイル20の中心軸ωを含む断面を示す概略図であり、図2(c)は図2(a)に示す第1態様の空芯コイル20に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。
図3図3(a)は第3態様の空芯コイル30の概略斜視図であり、図3(b)は第3態様の空芯コイル30の概略側面図である。
図4図4(a)は従来公知の空芯コイル100の概略斜視図であり、図4(b)は従来公知の空芯コイル100およびキャビティ1の、空芯コイル100の中心軸ωを含む断面を示す概略図であり、図4(c)は図4(a)に示す従来公知の空芯コイル100に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。
図5】シミュレーション方法を説明するための図である(数1、数2の式の説明のための図である)。
図6】シミュレーションにおいて想定する空芯コイルの中心軸を含む断面を示す図である(数3の式の説明のための図である)。
図7】実施例において用いた空芯コイルの中心軸ωを含む断面を示す概略図である。
図8】実施例において用いた、別の空芯コイルの中心軸ωを含む断面を示す概略図である。
図9】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、空芯コイルと、前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に配置され、磁石用粉末を充填するキャビティと、を含む、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向するために用いる配向装置であって、前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、配向装置である。
このような配向装置を、以下では「本発明の配向装置」ともいう。
【0012】
また、本発明は、本発明の配向装置を用いて、前記キャビティ内の前記磁石用粉末を配向し、配向済み磁石用成形体を得る、成形体の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の成形体の製造方法」ともいう。
【0013】
また、本発明は、空芯コイルと、磁石用粉末を焼成して得た焼成体を前記空芯コイルの中心軸ωを含む位置に固定する固定手段と、を含む、前記焼成体を着磁する着磁装置であって、前記中心軸ωを含む断面において、前記空芯コイルは、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する、着磁装置である。
このような着磁装置を、以下では「本発明の着磁装置」ともいう。
【0014】
また、本発明は、本発明の着磁装置を用いて、前記焼成体を着磁し、磁石を得る、磁石の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の磁石の製造方法」ともいう。
【0015】
また、本発明は磁石用粉末の配向に用いる配向装置、または前記磁石用粉末を焼成して得た焼成体の着磁に用いる着磁装置に含まれる空芯コイルであって、中心軸ωを含む断面において、前記中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部を有する空芯コイルである。
このような空芯コイルを、以下では「本発明の空芯コイル」ともいう。
【0016】
本発明の配向装置または本発明の着磁装置は、本発明の空芯コイルを含む。
【0017】
以下において単に「本発明」と記した場合、本発明の配向装置、本発明の成形体の製造方法、本発明の着磁装置、本発明の磁石の製造方法、本発明の空芯コイルのいずれをも意味するものとする。
【0018】
本発明の配向装置が有する空芯コイルおよびキャビティについて、図を用いて説明する。この空芯コイルは本発明の空芯コイルに相当する。
【0019】
以下の図に示す空芯コイルおよびキャビティは例示であって、本発明における空芯コイルおよびキャビティは、図に示す態様に限定されない。
【0020】
図1(a)は第1態様の空芯コイル10の概略斜視図を示している。
また、図1(b)は第1態様に係る配向装置2の内容を示しており、第1態様の空芯コイル10およびキャビティ1の、空芯コイル10の中心軸ωを含む断面を示す概略図である。つまり、図1(b)は第1態様の空芯コイル10およびキャビティ1を空芯コイル10の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面を示す概略図である。なお、図1に示すキャビティ1は、後述する図2図4に示すキャビティ1と同一のものである。
さらに、図1(c)は図1(a)に示す第1態様の空芯コイル10に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。図1(c)には図1(b)と同様に空芯コイル10の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面における磁力線が示されており、中央の点線からなる矩形はキャビティ1の概ねの位置を示している。
シミュレーションの方法は後述する。
【0021】
第1態様の空芯コイル10は、図1(b)に示す中心軸ωを含む断面において、中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径(中心軸ωに垂直な断面における空芯コイルの直径)が小さくなる縮径部12、14を同方向の両端に有している。つまり、図1に示す態様の空芯コイル10は中心軸ωと平行方向における両端に縮径部12および縮径部14を有し、それらを縮径部に該当しない部分16がつないでいる。図1に示す態様では、この部分16は断面直径が一定となっている。
【0022】
図2(a)は第2態様の空芯コイル20の概略斜視図を示している。
また、図2(b)は第2態様の空芯コイル20およびキャビティ1の、空芯コイル20の中心軸ωを含む断面を示す概略図である。つまり、図2(b)は第2態様の空芯コイル20およびキャビティ1を空芯コイル20の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面を示す概略図である。
さらに、図2(c)は図2(a)に示す第2態様の空芯コイル20に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。図2(c)には図2(b)と同様に空芯コイル20の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面における磁力線が示されており、中央の点線からなる矩形はキャビティ1の概ねの位置を示している。
シミュレーションの方法は後述する。
【0023】
第2態様の空芯コイル20は、図2(b)に示す中心軸ωを含む断面において、中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部22、24を有している。また、前述の第1態様の場合とは異なり、それ以外の部分を有していない。つまり、図2に示す態様の空芯コイル20は縮径部22および縮径部24が結合した態様である。
【0024】
図3(a)は第3態様の空芯コイル30の概略斜視図を示している。また、図3(b)は第1態様の空芯コイル30の側面を示す概略図である。
【0025】
第3態様の空芯コイル30は、図3(b)に示す側面において、中心軸ωと平行方向における端ほどその断面直径が小さくなる縮径部32、34を有しており、それらの両端側に、さらにその他の部分36、38を有している。図3に示す態様の場合、2つの縮径部32,34は隣り合っており、その各々の両端側に断面直径が一定となっている部分36、38を有している。
【0026】
図4に示す態様は本発明に相当しない。
図4(a)は従来公知の空芯コイル100の概略斜視図を示している。
また、図4(b)は従来公知の空芯コイル100およびキャビティ1の、空芯コイル100の中心軸ωを含む断面を示す概略図である。つまり、図4(b)は従来公知の空芯コイル100およびキャビティ1を空芯コイル100の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面を示す概略図である。
さらに、図4(c)は図4(a)に示す従来公知の空芯コイル100に3000Aを通電した場合に発生する磁界を示すシミュレーション結果である。図4(c)には図4(b)と同様に空芯コイル40の中心軸ωを含む面で切断した場合に得られる断面における磁力線が示されており、中央の点線からなる矩形はキャビティ1の概ねの位置を示している。
シミュレーションの方法は後述する。
【0027】
図4に示した従来公知の空芯コイル100は、図1図3に示した態様が有していた縮径部を有していない。
【0028】
図1(c)、図2(c)および図4(c)を対比すると、図4(c)の場合と比較して、図1(c)および図2(c)の場合、空芯コイル内により長い直線で表される磁束を発生させることができていることを確認できる。
【0029】
図1(c)、図2(c)および図4(c)を作成するために行ったシミュレーションの方法について説明する。
図5に示すように、コイル上の微小部分(dl)が中心軸ωの座標X(コイルの中心を基準(ゼロ)とする)の位置に作る磁場(H)は、次のビオサバールの式で表すことができる。
【0030】
【数1】
【0031】
ここでIは通電電流を意味し、aはコイルの半径を意味する。
【0032】
これをコイル1周分に拡張し、1つのコイルが中心軸ωの座標Xの位置に作る磁場は、次の式で表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
そして、図6に示すコイルを想定する。図6に示すコイルは複数の円形コイルが同軸上(中心軸上)に並んでいて、左右対称かつ上下対象である。また中心軸上であって中心軸と平行方向におけるコイルの中心を原点(ゼロ点)とする。そして、コイル中心(原点)から右方向へのコイルの巻き数をm、左方向へのコイル巻き数を-mとする。また、nは原点から数えてn番目のコイルを意味する。
そうすると、中心軸ωの座標Xの位置に作る磁場は、次の式で表すことができる。
【0035】
【数3】
【0036】
この式を、以下では式Aともいう。
【0037】
そして、この式を用いて、各位置(x)でのコイル径(R(x))を変えてコイル中心軸上の磁界の変化を算出し、良好な結果となるコイル形状(中心軸上でH(x)の変化が小さくなるコイル形状)を調査する。その後、その形状とした場合のシミュレーションを行い、コイルに3000Aを通電した際のコイル断面での磁束の流れを示した図1(c)、図2(c)および図4(c)が得る。
なお、シミュレータとして有限要素法に基づいた汎用のシミュレータであるMAGNUM(米国 Field Precision LLC社製)を使用した。
【0038】
図1図3に示した第1~第3態様の空芯コイルは、リング状とした銅製の角パイプ(1辺が8mm)を径方向に4重に並べ、中心軸ωと平行方向およびこれに垂直方向に接するように配置したものである。
ただし、本発明において空芯コイルの材質等は銅以外であってよく、断面が矩形でなくてもよく、パイプでなくてもよく、径方向に配置される本数も限定されない。
【0039】
中心軸ωと平行方向における縮径部の長さは特に限定されないものの、150~330mmであることが好ましく、180~270mmであることがより好ましい。
【0040】
中心軸ωと平行方向における縮径部の存在割合、つまり、中心軸ωと平行方向における空芯コイルの長さに対する縮径部の長さ(縮径部が複数存在する場合は合計の長さ)の比(百分率)は特に限定されないものの、30~90%であることが好ましく、30~80%であることがより好ましい。
【0041】
縮径部は空芯コイルの一部であって、空芯コイルの中心軸ωを含む断面において、中心軸ωと平行方向において端ほどその断面直径が小さくなる部分であるが、その縮径の程度は特に限定されない。例えば、最も大きい断面直径に対する最も小さい断面直径の比(百分率)が40~80%であることが好ましく、50~70%であることがより好ましい。
ここで縮径部が、図1図3に示した態様のように、径方向に重ねて配置されている場合(図1図3では4重に配置されている)、最も内周側のリングの中心によって直径を求めるものとする。
【0042】
空芯コイルの中心軸ωと平行方向における端の開口の断面直径は90~200mmであることが好ましく、200~110mmであることがより好ましい。
また、開口以外の部分の断面直径は190~320mmであることが好ましい。
ここで空芯コイルが、図1図3に示した態様のように、径方向に重ねて配置されている場合(図1図3では4重に配置されている)、最も内周側のリングの中心によって求められる直径を断面直径とする。
【0043】
図1図3に示したキャビティ1は、磁石用粉末を充填できる容器であれば特に限定されず、例えば従来公知のキャビティであってよい。キャビティは、従来と同様、空芯コイルの内部であって、中心軸ωを含む位置に配置される。
また、図1図3に示す態様のように、キャビティに充填される磁石用粉末の中心が中心軸ω上に配置されることが好ましい。
【0044】
ここで用いられる磁石用粉末は、これを充填したキャビティを空芯コイル内に挿入し、磁場を発生させることで配向方向を揃える処理を行うことができるものであればよい。
磁石用粉末として、R-T-B系の磁石用粉末を用いることができる。R-T-B系とは、希土類元素(R)、遷移元素(T)およびホウ素(B)を主成分とすることを意味し、希土類元素としてはNd、Pr、Dy、Tbなど、遷移元素としてはFe、Co、Niなどが含まれる。
磁石用粉末は、例えば、溶解した母合金を回転ロール上に噴射し、超急冷することにより微細な結晶組織を持つ薄帯を得て、この薄帯を150μm以下程度に粉砕することで得ることができる。
【0045】
図1(b)および図2(b)に示す中心軸ωを含む断面において、中心軸ωと平行方向におけるキャビティ1の外側に、ヨークとして軟磁性体3を有することが好ましい。これは低磁界において磁束を直進させるという役割を果たす。
ヨークとしての軟磁性体3は例えば珪素鋼板であってよい。
【0046】
本発明の配向装置における空芯コイルおよびキャビティ以外の部分は、キャビティ内の磁石用粉末を配向するために用いられる従来公知の配向装置と同様であってよい。
【0047】
上記のような本発明の配向装置を用いてキャビティ内の磁石用粉末へ磁界を印加することで磁石用粉末の磁化容易軸の方向を所望の方向へそろえる配向を行い、配向済み磁石用成形体を得る、本発明の成形体の製造方法を行うことができる。
本発明では、空芯コイル内に、より長い直線で表される磁束を発生させることができるので、本発明の成形体の製造方法では、中心軸ωと平行方向に長いキャビティを用いても、そこへ充填される磁石用粉末の全体を所望の方向(中心軸ωと平行方向へ)配向することができる。
【0048】
本発明の着磁装置における空芯コイル以外の部分は、従来公知の着磁装置と同様であってよい。
例えば本発明の成形体の製造方法によって得られた配向済み磁石用成形体を焼成し、得られた焼成体を空芯コイルの中心軸ωを含む位置に、従来公知の固定手段によって固定した後、焼成体を着磁することができる。
ここで、固定手段としては、図1(b)において、軟磁性体3をキャビティ1の内側方向に保持する治具(図示省略)などにより実現できる。
また、例えば、図1(b)に示したキャビティ内に板状磁石を複数収容可能な収容ケースを積層する場合、キャビティの上下方向において、板状磁石をバラツキなく配向させることができる。
【0049】
上記のような本発明の着磁装置を用いて焼結体へ磁界を印加することで焼結体を着磁し、磁石を得る、本発明の磁石の製造方法を行うことができる。
例えば本発明の成形体の製造方法によって得られた配向済み磁石用成形体は、より広い範囲で直線的な配向が施されているが、これを着磁する場合、本発明の着磁装置によれば、その広い範囲について直線的に着磁することができる。
【実施例0050】
図2に示したものと同様の空芯コイルを用意した。図7に示す。
ただし、図7に示す態様の空芯コイルは、リング状とした銅製の角パイプ(1辺が8mm)を径方向に4重に並べ、中心軸ωと平行方向およびこれに垂直方向に接するように配置したものである。
ここで、図7に示す空芯コイルのR(半径)-Z(高さ)座標系において、空芯コイルの中心を原点とした。
そして、Z(高さ)方向に8mmずれるごとに空芯コイルの半径を1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mmずらした場合について、各々、前述の式Aにおいて
(μ0・H(z))/(μ0・H(0))=(H(z)/H(0))=z
の座標位置での磁束密度/原点位置での磁束密度を計算した。
なお、変数xを座標系に合わせzに置き換えた。
【0051】
また、合わせて、空芯コイルの半径を変更しなかったもの(0mmずらした場合)についても同様の計算を行った。これは図4に示した空芯コイルに相当する。
【0052】
さらに、図3に示したものと同様の空芯コイルを用意した。図8に示す。
ただし、図8に示す態様の空芯コイルは、リング状とした銅製の角パイプ(1辺が4mm)を径方向に4重に並べ、中心軸ωと平行方向およびこれに垂直方向に接するように配置したものである。
この場合、各高さ位置(Z方向)においてコイル内径を個別に調整し、前述の式Aにおいて
(μ0・H(z))/(μ0・H(0))=(H(z)/H(0))=z
の座標位置での磁束密度/原点位置での磁束密度を計算した。
なお、変数xを座標系に合わせzに置き換えた。
そして、この値が小さくなるように更に調整した。
【0053】
結果を図9に示す。なお、図9においては、図8に示した態様の場合を「適正」と示した。
【0054】
図9に示すように、0mmの場合、すなわち、本発明には含まれない、図4に相当する従来公知の空芯コイルの場合、原点から35mm程度で「磁束密度/原点位置での磁束密度」が95%程度にまで低下した。
これに対して、「1~6mm」および「適正」の場合、「磁束密度/原点位置での磁束密度」が95%程度にまで低下するのが、35mmよりも大きくなっている。特に4mm以上の場合、「磁束密度/原点位置での磁束密度」が95%程度にまで低下するのが、50mm程度にまで拡張されており、好ましい。
【0055】
このような結果から、本発明では空芯コイル内により長い直線で表される磁束を発生させることができるといえる。
【符号の説明】
【0056】
1 キャビティ
2 配向装置
3 軟磁性体(ヨーク)
12、14、22、24、32、34 縮径部
16、36、38 縮径部以外
10 第1態様の空芯コイル
20 第2態様の空芯コイル
30 第3態様の空芯コイル
100 従来公知の空芯コイル
ω 空芯コイルの中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9