(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094835
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20230629BHJP
F24H 15/10 20220101ALI20230629BHJP
【FI】
F24H4/02 Q
F24H4/02 S
F24H1/18 503Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210371
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】江田 秋人
【テーマコード(参考)】
3L122
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA13
3L122AA23
3L122AA54
3L122AA76
3L122AB24
3L122AB60
3L122BA02
3L122BA12
3L122BA13
3L122BA14
3L122BA18
3L122BA32
3L122BB02
3L122BB05
3L122BB13
3L122BB14
3L122DA01
3L122DA13
3L122DA21
3L122EA22
3L122EA63
3L122FA02
3L122FA13
(57)【要約】
【課題】建物の通風扉付き収容部に収容される貯湯給湯装置であって、ヒートポンプ熱源機と燃焼式補助熱源機を同時運転する際の燃焼排気による収容部内の機器や通風扉の腐食を抑制するようにした貯湯給湯装置を提供する。
【解決手段】 湯水を加熱して貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を制御する制御部(5)を備えた貯湯給湯装置(1)であって、貯湯運転で湯水を加熱するヒートポンプ熱源機(3)と燃焼式の補助熱源機(4)と貯湯タンク(2)が、建物の通風扉付き収容部(S)に設置された貯湯給湯装置(1)において、ヒートポンプ熱源機(3)と補助熱源機(4)が同時運転する場合には、補助熱源機(4)の燃焼負荷が第1閾値以上のときヒートポンプ熱源機(3)の運転を制限し、燃焼負荷が第1閾値よりも大きな第2閾値以上となったときにはヒートポンプ熱源機(3)の運転を停止する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を加熱して貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を制御する制御部を備えた貯湯給湯装置であって、貯湯運転で湯水を加熱するヒートポンプ熱源機と燃焼式の補助熱源機と貯湯タンクが、建物の通風扉付き収容部に設置された貯湯給湯装置において、
前記ヒートポンプ熱源機と補助熱源機が同時運転する場合には、前記補助熱源機の燃焼負荷が第1閾値以上のときヒートポンプ熱源機の運転を制限することを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
前記補助熱源機の燃焼負荷が前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上となったときには前記ヒートポンプ熱源機の運転を停止すること特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記ヒートポンプ熱源機が凍結予防運転又は除霜運転を行っているときにはヒートポンプ熱源機の運転を制限しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯装置。
【請求項4】
前記第1閾値は燃焼負荷30%であり、第2閾値は燃焼負荷60%であることを特徴とする請求項2に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ熱源機で加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯して給湯に使用する貯湯給湯装置に関し、特に建物の通風扉付き収容部に貯湯タンクとヒートポンプ熱源機と補助熱源機が収容された貯湯給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒートポンプ熱源機で加熱した湯水を貯湯タンクに貯湯して給湯に使用し、貯湯した湯水を給湯に使用できない場合には補助熱源機で加熱して給湯する貯湯給湯装置が戸建ての住宅等で広く利用されている。貯湯タンクと補助熱源機と給湯用の配管等が外装ケース内に収容されて貯湯給湯ユニットが構成され、外気の熱を利用して湯水を加熱するヒートポンプ熱源機は、外気が通り易いように貯湯ユニットと別体に構成されている。
【0003】
このような貯湯給湯装置を例えば集合住宅において利用する場合には、外装ケースを使用せず、建物に作られた通風扉付き収容部(一般的にパイプスペース又はメータボックスと呼ばれる設置スペース)に貯湯タンクとヒートポンプ熱源機と補助熱源機が設置される。
例えば特許文献1には、貯湯タンクとヒートポンプ熱源機が通風扉付き収容部に収容されたヒートポンプ給湯機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒートポンプ熱源機と貯湯タンクと燃焼式の補助熱源機を有する貯湯給湯装置は、ヒートポンプ熱源機を優先的に稼働させて貯湯タンクへの貯湯運転を行うように制御されるが、貯湯タンクの湯切れが生じた場合には、ヒートポンプ熱源機と補助熱源機を同時運転する仕様となっている。この同時運転時には、ヒートポンプ熱源機によって外気と共に補助熱交換器の燃焼排気ガスも一緒に収容部内に吸入し、燃焼排気ガスに含まれる腐食性物質によって収容部内の機器や通風扉等が腐食するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、建物の通風扉付き収容部に収容される貯湯給湯装置であって、ヒートポンプ熱源機と燃焼式補助熱源機を同時運転する際の燃焼排気による収容部内の機器や通風扉の腐食を抑制するようにした貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の貯湯給湯装置は、 湯水を加熱して貯湯タンクに貯湯する貯湯運転を制御する制御部を備えた貯湯給湯装置であって、貯湯運転で湯水を加熱するヒートポンプ熱源機と燃焼式の補助熱源機と貯湯タンクが、建物の通風扉付き収容部に設置された貯湯給湯装置において、前記ヒートポンプ熱源機と補助熱源機が同時運転する場合には、前記補助熱源機の燃焼負荷が第1閾値以上のときヒートポンプ熱源機の運転を制限することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、前記ヒートポンプ熱源機と補助熱源機が同時運転する場合には、ヒートポンプ熱源機の蒸発熱交換器のファンが作動するため、補助熱源機の燃焼排気ガス を収容部内に吸入する。その燃焼排気ガスにより収容部内の機器や通風扉等が腐食し易くなるが、補助熱源機の燃焼負荷が第1閾値以上のときヒートポンプ熱源機の運転を制限するため、収容部内の機器や通風扉等の腐食を抑制することができる。
【0009】
請求項2の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記補助熱源機の燃焼負荷が前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上となったときには前記ヒートポンプ熱源機の運転を停止すること特徴としている。
上記の構成によれば、補助熱源機の燃焼負荷が前記第1閾値よりも大きな第2閾値以上となったときには前記ヒートポンプ熱源機の運転を停止するため、燃焼排気ガスによる収容部内の機器や通風扉等の腐食を防止することができる。
【0010】
請求項3の貯湯給湯装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記ヒートポンプ熱源機が凍結予防運転又は除霜運転を行っているときにはヒートポンプ熱源機の運転を制限しないことを特徴としている。
上記の構成によれば、ヒートポンプ熱源機が凍結予防運転又は除霜運転を行っているときにはヒートポンプ熱源機の運転を制限しないため、凍結予防運転、除霜運転を確実に行うことができる。
【0011】
請求項4の貯湯給湯装置は、請求項2の発明において、前記第1閾値は燃焼負荷30%であり、第2閾値は燃焼負荷60%であることを特徴としている。
上記の構成によれば、第1閾値は燃焼負荷30%であり、第2閾値は燃焼負荷60%であるため、燃焼負荷30%から60%の間ではヒートポンプ熱源機の運転を燃焼負荷に応じて制限し、燃焼負荷60%以上ではヒートポンプ熱源機の運転を停止させる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明は種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例に係る貯湯給湯装置が収容される通風扉付き収容部の正面図である。
【
図2】通風扉付き収容部の貯湯給湯装置の収容例を示す側面図である。
【
図5】ヒートポンプ熱源機出力制限制御のフローチャートである。
【
図6】上記の制御に用いられるマップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0015】
複数階建ての集合住宅には、各戸の上水配管、ガス配管等の配管類を上下方向に通すためのパイプスペースSが、例えば共用通路部に臨むように設けられている。
図1、
図2に示すように、通常、このパイプスペースSには開閉可能な扉(ここでは4つの扉D1~D4)が装備され、このパイプスペースS内に貯湯給湯装置1が収容される。矢印Uは上方を示し、矢印Rは右方を示し、矢印Fは前方を示す。
【0016】
扉D1,D2の上方、扉D3,D4の下方には、空気が出入り可能な隙間Gが設けられている。このパイプスペースS内には水道メータ、ガスメータ等が配設される場合があり、メータボックスと呼ばれる場合もある。以下、パイプスペース又はメータボックスを収容部Sとする。
【0017】
収容部Sには貯湯給湯装置1が収容されている。貯湯給湯装置1は、貯湯タンク2と、この貯湯タンク2の湯水を加熱動作によって加熱して貯湯タンク2に貯湯するヒートポンプ熱源機3と、燃焼式の補助熱源機4と、貯湯タンク2へ貯湯する貯湯運転等を制御する制御部5を有する。貯湯タンク2と補助熱源機4は外装ケースに収容されずに収容部Sに設置され、ヒートポンプ熱源機3も同じ収容部Sに設置される。尚、扉D1~D4を閉じた状態で貯湯給湯装置1が使用される。制御部5は、収容部Sに収容されていてもよく、室内に設置されていてもよい。
【0018】
貯湯タンク2は、小さい設置面積で湯水を多く貯湯できるように高さがある円筒状に形成され、例えば収容部Sの奥側(後部)に設置される。補助熱源機4は、収容部Sの前にいる人に燃焼排気が直接当たらないように高い位置に開口部OP2が設けられた扉D2に臨むように収容部Sの上部に配設され、図示外の金属フレームに固定される。ヒートポンプ熱源機3は、補助熱源機4の下方に扉D3,D4に臨むように設置され、限られた収容部S内を有効に利用している。貯湯タンク2は図示外の保温材で覆われ、この貯湯タンク2の周辺には後述する湯水の通路、ポンプ、弁類が設置される。
【0019】
ヒートポンプ熱源機3は送風ファン36を有し、送風ファン36を駆動して湯水の加熱のために収容部S内の空気を取り込み、収容部Sの外に向けて送風する。そのため収容部Sの扉D3,D4が、開口部OP3,OP4を備えたルーバーを有する通風扉になっている。補助熱源機4は、湯水の加熱のために燃焼用の空気を収容部S内から取り込み、燃焼排気ガスを収容部Sの外に排出する。そのため、この扉D2の開口部OP2から補助熱源機4の排気筒6を収容部Sの外まで延ばしている。扉D1~D4は、一般的に不燃性且つ耐久性が高い金属製の扉である。
【0020】
次に、貯湯給湯装置1について
図3に基づいて説明する。
貯湯給湯装置1は、ヒートポンプ熱源機3の加熱動作によって所定の貯湯設定温度に加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯する貯湯運転を行う。燃焼式の補助熱源機4は、供給される湯水の温度に応じて、燃焼運転を実行し又は燃焼運転を実行せずに、予め設定された給湯設定温度の湯水を給湯栓Fに供給する。
【0021】
制御部5は、学習記憶した給湯使用実績に基づいて将来の給湯使用の予測を行い、予測した給湯使用量に相当する必要熱量を給湯使用の前に貯湯タンク2に貯湯するように貯湯運転を制御する。
【0022】
貯湯タンク2の下部には、ヒートポンプ熱源機3に貯湯タンク2の湯水を供給するためのポンプ7を備えた往き通路8が接続されている。貯湯タンク2の上部には、ヒートポンプ熱源機3の加熱動作で加熱された湯水を貯湯タンク2に貯湯するための戻り通路9が接続されている。戻り通路9の途中には、湯水の流路を切り替える切替弁10が配設され、この切替弁10で戻り通路9から分岐された分岐通路9aが、往き通路8のポンプ7よりも上流部分に接続されている。
【0023】
戻り通路9の切替弁10よりも上流部分には、ヒートポンプ熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する温度センサ9bが配設されている。例えばヒートポンプ熱源機3の起動直後における温度センサ9bの検知温度が所定の貯湯設定温度よりも低い場合に、切替弁10を貯湯タンク2側から分岐通路9a側に切り替えて、十分に加熱できるようになるまで貯湯タンク2に湯水を戻さずに循環させる。
【0024】
貯湯タンク2の底部には、矢印CWで示す上水を供給する給水通路11が接続されている。貯湯タンク2の頂部には、貯湯タンク2の湯水を出湯するための出湯通路12が接続されている。給水通路11の途中から分岐された給水分岐通路11aは、出湯通路12の途中に配設された混合弁14に接続されている。混合弁14は、貯湯タンク2から出湯された湯水と上水を混合して出湯する。尚、混合弁14の代わりに、貯湯タンク2側の流量を調整する流量調整弁と、給水分岐通路11a側の流量を調整する流量調整弁とで湯水と上水の混合比率を調整するようにしてもよい。
【0025】
貯湯タンク2の外周部には、湯水の温度を検知する複数の貯湯温度センサ2a~2dが上下方向に所定の間隔を空けて配設されている。貯湯温度センサ2a~2d及び貯湯タンク2は、貯湯された湯水の放熱を低減するために図示外の保温材により覆われている。
【0026】
給水通路11には、給水通路11から供給される上水の温度(給水温度)を検知する給水温度センサ11bが配設されている。出湯通路12には、出湯通路12の出口の出湯流量を検知する出湯流量センサ12aと、貯湯タンク2から出湯される湯水の温度(貯湯タンク出湯温度)を検知するタンク出湯温度センサ12bと、混合弁14で温度調整された湯水の出湯温度を検知する出湯温度センサ12cが配設されている。
【0027】
出湯通路12と補助熱源機4の給水口4aが湯水通路15によって接続されている。補助熱源機4の給湯口4bは給湯通路16に接続され、給湯通路16には給湯栓Fが接続されている。
補助熱源機4は、給水口4aから入水する湯水の入水温度を検知する入水温度センサ4cと、給湯口4bから給湯される湯水の給湯温度を検知する給湯温度センサ4dと、給湯流量を検知する給湯流量センサ4eを有する。出湯通路12から出湯された湯水は、補助熱源機4を介して給湯栓Fに供給され、給湯栓Fから矢印HWで示すように給湯される。
【0028】
制御部5は、タンク出湯温度センサ12bで検知されるタンク出湯温度と、給水温度センサ11bで検知される給水温度と、出湯流量センサ12aで検知される出湯流量に基づいて、出湯温度センサ12cで検知される温度が予め設定された給湯設定温度又は所定の燃焼運転開始温度になるように、混合弁14の上水と湯水の混合比率を調整して出湯する。また、制御部5は、貯湯温度センサ2a~2dの検知温度に基づいて貯湯熱量を算出する。
【0029】
貯湯運転におけるヒートポンプ熱源機3の加熱動作では、外気(収容部Sの空気)から吸熱して湯水が加熱される。一般的にヒートポンプ熱源機3の運転効率は、外気温度が高い程、また加熱後の湯水温度が低い程向上する。運転効率が高い状態で加熱動作を行うために、ヒートポンプ熱源機3の運転能力が外気温度とヒートポンプ入水温度に応じて設定される。
【0030】
制御部5には、室内(例えば浴室内)に配設された給湯リモコン17が通信可能に接続されている。給湯リモコン17は、各種操作を行う操作部と各種情報を表示する表示部を有するが、操作部と表示部が一体化されたタッチパネルを有していてもよい。この給湯リモコン17の操作によって、各種運転を開始、終了させることができ、給湯設定温度等の各種設定を行うことができる。尚、貯湯給湯装置1は、浴室の給湯リモコン17の他に、例えば台所に配設された台所リモコン等、複数の操作端末を有していてもよい。
【0031】
図4に示すように、ヒートポンプ熱源機3は、圧縮機31、凝縮熱交換器32、膨張弁33、蒸発熱交換器34を冷媒回路35により接続して構成されている。このヒートポンプ熱源機3は、加熱動作において、冷媒回路35に封入された冷媒を圧縮機31で圧縮して高温にし、凝縮熱交換器32で高温の冷媒とポンプ7の駆動により供給される貯湯タンク2の湯水とを熱交換させて加熱する。熱交換後の温度が下がった冷媒は、膨張弁33において膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器34で外気から吸熱した後、再び圧縮機31に導入される。
【0032】
蒸発熱交換器34は、外気温度を検知する外気温度センサ34a(気温検知手段)と、外気湿度を検知する外気湿度センサ34b(湿度検知手段)と、送風ファン36を備えている。往き通路8が接続される凝縮熱交換器32の湯水の入口側には、湯水の入水温度を検知するヒートポンプ入水温度センサ32aが付設されている。また、ヒートポンプ熱源機3は、圧縮機31、膨張弁33、送風ファン36等を制御する補助制御部37を備えている。補助制御部37は、貯湯給湯装置1の主たる制御手段である制御部5に通信可能に接続され、制御部5の指令に従ってヒートポンプ熱源機3を制御するが、補助制御部37が無い場合には制御部5がヒートポンプ熱源機3を制御する。
【0033】
ヒートポンプ熱源機3は、加熱動作によって冷媒回路35の冷媒を循環させ、蒸発熱交換器34に低温の冷媒が導入される。蒸発熱交換器34の表面には、外気と熱交換する際にこの外気に含まれる水分が冷却されて霜がつくため、熱交換効率が低下してしまう。それ故、外気温センサ34aで検出した外気温度が基準外気温度以下になったときに、外気温度と蒸発熱交換器の出口温度センサが検知する冷媒温度の差が所定の基準値以上になった場合には、着霜したと検知し、霜を除去する除霜運転が行われる。
【0034】
除霜運転は、凝縮熱交換器32に流入する湯水を止め、膨張弁33を開いた状態にして、圧縮機31で圧縮され高温になった冷媒を蒸発熱交換器34に導入することによって、蒸発熱交換器34の霜を除去する。冷媒回路35の圧縮機31の下流側から分岐して蒸発熱交換器34の上流側に接続された冷媒バイパス通路38と、この冷媒バイパス通路38を開閉する除霜電磁弁38aを備えている場合には、凝縮熱交換器32に流入する湯水を止め、膨張弁33を閉じ、除霜電磁弁38aを開けて高温の冷媒を蒸発熱交換器34に導入し、蒸発熱交換器34の霜を除去する。
【0035】
外気温度が基準外気温度を下回った場合、又は入水温度が基準入水温度を下回った場合、又はその両方の条件が成立した場合には、次のような凍結予防運転が行なわれる。
最初、ポンプ7を運転し、往き通路8と凝縮熱交換器32と戻り通路9と分岐通路9aからなる循環通路に湯水を循環させて凍結を予防する。最初はヒートポンプ熱源機3を運転しないで行う。この湯水の循環によっても凍結を予防できない場合は、ヒートポンプ熱源機3を運転して湯水を温めて凍結を予防する。
【0036】
ここで、給湯栓Fから給湯要請があるにもかかわらず、貯湯タンク2の湯切れにより貯湯タンク2から出湯できない場合など、ヒートポンプ熱源機3と補助熱源機4の同時運転が行われる。このようなヒートポンプ熱源機3と補助熱源機4が同時運転される場合、ヒートポンプ熱源機3の蒸発熱交換器34の送風ファン36が作動するため、
図2に鎖線の矢印Wで示すように、補助熱源機4の燃焼排気ガスが収容部S内に流入し、収容部S内を流れてからその燃焼排気ガスがヒートポンプ熱源機3の送風ファン36により外部へ排出される。
【0037】
このように、補助熱源機4の燃焼排気ガスが収容部S内へ流入すると、燃焼排気ガスに含まれる腐食性物質によって収容部S内の機器や通風扉D1~D4等が腐食するという問題がある。そこで、ヒートポンプ熱源機3と補助熱源機4を同時運転する場合には、補助熱源機4の燃焼負荷が第1閾値以上のときヒートポンプ熱源機3の運転を燃焼負荷に応じて制限する。
【0038】
そして、補助熱源機4の燃焼負荷が第1閾値よりも大きな第2閾値以上となったときにはヒートポンプ熱源機3の運転を停止する。上記の第1閾値は燃焼負荷30%であり、第2閾値は燃焼負荷60%である。尚、ヒートポンプ熱源機3が凍結予防運転又は除霜運転を行っているときにはヒートポンプ熱源機3の運転を制限しない。
【0039】
上記のヒートポンプ熱源機と補助熱源機同時運転の際のヒートポンプ熱源機出力制限制御について、
図5のフローチャートに基づいて説明する。尚、このヒートポンプ熱源機出力制限制御のフローチャートと、
図6に示すマップのデータは、予め制御装置5に格納されている。尚、フローチャート中のSi(i=1,2,・・・)は各ステップを示し、以下「HP」は「ヒートポンプ」を意味する。
【0040】
このヒートポンプ熱源機出力制限制御が開始されると、S1においてHP熱源機3と補助熱源機4の同時運転が必要か否か判定される。この判定は、HP熱源機3の作動状態と補助熱源機4の作動状態により判定される。S1の判定がNoの場合はS1へ戻り、S1の判定がYesのときはS2へ移行してHP熱源機3が凍結防止運転中又は除霜運転中か否か判定される。この判定は補助制御部37における膨張弁33又は凍結防止弁38aの制御状態から判定される。
【0041】
S2の判定がYesの場合は、S4においてHP熱源機3と補助熱源機4の同時運転が許可され、その後S1へリターンする。S2の判定がNoのときはS3において、補助熱源機4の燃焼負荷Lが30%(第1閾値)よりも小さいか否か判定され、L<30%の場合はHP熱源機3の出力制限をする必要がないので、S4へ移行して同時運転が許可され、その後リターンする。前記燃焼負荷Lは補助熱源機4に供給する燃料ガス流量から求めることができる。
【0042】
S3の判定がNoのときは、S5において30%≦L<60%(第2閾値)か否か判定され、その判定がYesのときは、
図6に示すマップMに基づき、燃焼負荷Lに応じてHP熱源機3の出力が制限され、その後リターンする。
【0043】
このように、30%≦L<60%のときは、燃焼負荷Lが増大する程HP熱源機3の出力が低減するように、燃焼負荷Lに応じてHP熱源機3の出力を制限するため、補助熱源機4の燃焼排気ガスが収容部Sへ流入する流入ガス流量が低減され、燃焼排気ガスに含まれる腐食性物質の収容部Sへの流入量が低減され、収容部S内の機器や扉D1~D4の腐食を極力防止することができる。
【0044】
S5の判定がNoのときはS7へ移行して、60%≦Lか否か判定され、その判定がYesのときはS8へ移行し、S8においてHP熱源機3の運転が停止され、その後リターンする。尚、S5の判定がNoのときは、必ず60%≦Lになっているので、S7のステップは省略してもよい。
【0045】
以上説明した貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
この貯湯給湯装置1は、HP熱源機3と補助熱源機4と貯湯タンク2とを3ピース構成として収容部S(パイプスペース)に設置されている。
HP熱源機3と補助熱源機4とを同時運転するとき、補助熱源機4の燃焼負荷Lが30%未満ではHP熱源機3の出力制限をしないため、HP熱源機3による貯湯機能を維持することができる。
【0046】
補助熱源機4の燃焼負荷Lが30%以上で、60%未満のときは、マップMに基づき、燃焼負荷Lに応じてHP熱源機3の出力制限を行うため、HP熱源機3による貯湯機能を残しながら出力を制限して、収容部Sへの燃焼排気ガスの流入量を制限することができる。
そして、燃焼負荷Lが60%以上のときは、HP熱源機3の運転を停止するため、収容部Sへの燃焼排気ガスの流入を防止することができる。
【0047】
凍結予防運転中又は除霜運転中にはHP熱源機3と補助熱源機4の同時運転を許可するため、HP熱源機3の凍結予防及び霜の除去を確実に行うことができる。
尚、凍結予防運転中又は除霜運転中にHP熱源機3と補助熱源機4の同時運転を許可できるのは、凍結予防運転及び除霜運転は送風ファン36を低回転で運転する、もしくは送風ファン36を作動させずに運転するためである。
【0048】
次に、前記実施形態を変更する例について説明する。
1)前記マップMに示す特性は一例を示すものであって、この特性に限定される訳ではない。また、マップの代わりの燃焼負荷とHP熱源機3の出力とをパラメータとする演算式を採用してもよい。
【0049】
2)前記の燃焼負荷Lは、補助熱源機4に供給する燃料ガス流量とガス圧に基づいて求めてもよく、また、補助熱源機4の燃焼段数とガス圧とに基づいて求めてもよい。
3)前記第2閾値を燃焼負荷60%としたが、第2閾値を燃焼負荷70%に設定してもよい。
4)その他、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施することができ、本発明はそれらの変更形態を包含するものである。