(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094861
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】導電性パターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/12 20060101AFI20230629BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20230629BHJP
B41M 1/08 20060101ALI20230629BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230629BHJP
C09D 11/52 20140101ALI20230629BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20230629BHJP
H05K 3/20 20060101ALI20230629BHJP
G03F 7/004 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
H05K3/12 630Z
G03F7/00 503
B41M1/08
B41M3/00 Z
C09D11/52
C09D11/101
H05K3/20 C
G03F7/004 507
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210420
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久世 康典
(72)【発明者】
【氏名】三井 博子
【テーマコード(参考)】
2H113
2H196
2H225
4J039
5E343
【Fターム(参考)】
2H113AA04
2H113BA05
2H113BA06
2H113BB02
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB09
2H113BC12
2H113CA17
2H113DA03
2H113DA04
2H113EA07
2H113EA08
2H113FA28
2H113FA35
2H113FA42
2H113FA43
2H113FA45
2H196AA11
2H196BA16
2H196EA04
2H196EA23
2H196GA08
2H225AM80P
2H225AM86N
2H225AN32P
2H225AN80P
2H225BA12P
2H225CA05
2H225CB01
2H225CC03
2H225CC29
4J039BA06
4J039BC13
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE27
4J039BE33
4J039CA05
4J039EA06
4J039EA24
4J039FA01
4J039GA16
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA22
5E343AA26
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB34
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5E343BB44
5E343BB47
5E343BB48
5E343BB75
5E343DD02
5E343DD68
5E343FF08
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】導電性インキに活性エネルギー線を照射し、短時間で硬化させることで、高精細かつ、積み重ねや巻き取りが可能な生産性の高い導電性パターンの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも
(I)平版印刷版を用いて導電性インキを被印刷物である基板の被転写面に転写する転写工程
(II)前記転写された導電性インキに活性エネルギー線を照射する照射工程
をこの順に含む導電性パターンの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(I)平版印刷版を用いて導電性インキを被印刷物である基板の被転写面に転写する転写工程
(II)前記転写された導電性インキに活性エネルギー線を照射する照射工程
をこの順に含む導電性パターンの製造方法。
【請求項2】
前記(I)と(II)の工程の間に、さらに
(III)導電性インキが転写された基板をプレスする押圧工程
を含む請求項1に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項3】
前記導電性インキの25℃における粘度が1~1,000Pa・sである請求項1または2に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項4】
前記導電性インキ中における導電性粒子の平均粒子径が10~100nmである請求項1~3のいずれかに記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項5】
前記導電性粒子が、炭素を含む表面被覆層を有する請求項4に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項6】
前記平版印刷版が、シリコーンゴム層を有する請求項1~5のいずれかに記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項7】
前記シリコーンゴム層中に、1気圧における沸点が150℃以上であるインキ反発性の液体を10質量%以上30質量%以下含有する請求項6に記載の導電性パターンの製造方法。
【請求項8】
基板上に導電性層を有する配線基板の製造方法であって、請求項1~7のいずれかに記載の導電性パターンの製造方法によって、平均厚み1.8μm以上の導電性層を形成する配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性パターンの製造方法およびそれを用いた配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の配線、薄膜トランジスタ(TFT)電極やカラーフィルターなどの微細パターンの形成には、高精細なパターン形成が可能なフォトリソグラフィ法が好ましく用いられている。しかしながら、フォトリソグラフィは、工程が多いこと、現像に有害な薬液を使用する場合には環境負荷が大きいことなどから、導電性インキをパターン形状に印刷する印刷法により、微細パターンを形成する技術も検討されている。
【0003】
印刷法による配線パターンの作製方法として、例えば、基板上に、少なくとも感熱層あるいは感光層と、シリコーンゴム層とを有する配線パターン印刷用水なし平版印刷版原版を用いて、導電性材料を印刷することを特徴とする配線パターン作製方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、印刷法による微細パターンの形成のための導電性インキについて、シリコーン樹脂表面に画像形成されたインキ塗膜を被写印刷基材に転写する印刷法において用いられる導電性インキ組成物が提案され、印刷物の製造方法に関して、水なし平版オフセット印刷法などが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-148386号公報
【特許文献2】特開2012-188558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される導電性インキは、焼成前の未硬化の状態では流動性を有するため、印刷から焼成までの間に画像が太りやすく、細線などの高精細なパターン再現性に課題があった。特許文献2には、導電性インキをシリコーン樹脂上で1~2分間自然乾燥した後に被写印刷基材へ転写する印刷方法が開示されており、シリコーン樹脂上において導電性インキの流動性を低減しているものの、自然乾燥の工程を要することから、生産性に課題があった。さらに、特許文献1~2のいずれの技術においても、焼成前の未硬化の状態においては、巻き取りや積層により画像が崩れることから、1枚ずつ焼成する必要があり、生産性に課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、高精細なパターン再現性に優れた、生産性の高い導電性パターンの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、主として以下の構成を有する。
少なくとも
(I)平版印刷版を用いて導電性インキを被印刷物である基板の被転写面に転写する転写工程
(II)前記転写された導電性インキに活性エネルギー線を照射する照射工程
をこの順に含む導電性パターンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る導電性パターンの製造方法によれば、高精細なパターンを、生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の導電性パターンの製造方法の一例を示す概略模式図である。
【
図2】本発明の導電性パターンの製造方法の別の一例を示す概略模式図である。
【
図3】本発明の導電性パターンの製造方法の別の一例を示す概略模式図である。
【
図4】本発明の導電性パターンの製造方法の別の一例を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明において「以上」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも大きいことを意味する。また、「以下」とは、そこに示す数値と同じかまたはそれよりも小さいことを意味する。
【0011】
本発明の導電性パターンの製造方法は、少なくとも
(I)平版印刷版を用いて導電性インキを被印刷物である基板の被転写面に転写する転写工程(以下、「転写工程」と略記する場合がある)
(II)前記転写された導電性インキに活性エネルギー線を照射する照射工程(以下、「照射工程」と略記する場合がある)
をこの順に含む。凹凸部により画像部を形成してインキを物理的に付着させる凹版印刷版や凸版印刷版と比較して、平版印刷版は、感光部や感熱部のインキ付着性の化学的な変化により画像部/非画像部を形成するため、高精細なパターンを得ることができる。本発明においては、転写工程において、平版印刷版を用いることにより、高精細なパターンを得ることができる。さらに、転写工程の後に、照射工程において導電性インキに活性エネルギー線を照射することにより、導電性インキを短時間で硬化させることができる。このため、導電性インキの流動性による画像の太りを抑制し、高精細なパターンを形成することができる。また、焼成前であっても巻き取りや積層が可能となることから、積層した状態での一括焼成が可能となるなど、生産性を向上させることができる。
【0012】
(I)転写工程と(II)照射工程の間に、さらに
(III)導電性インキが転写された基板をプレスする押圧工程(以下、「押圧工程」と略記する場合がある)
を含むことが好ましい。平版印刷に特有のインキの曳引性によるインキ表面の凹凸を、押圧工程により平滑化することができる。
【0013】
図1~4に、本発明の導電性パターンの製造方法の例の概略模式図を示す。
【0014】
図1において、印刷機の版胴4に平版印刷版3を装着し、ブランケット胴6にゴムブランケット5を装着する。インキローラー1により、平版印刷版3に導電性インキ2を供給し、平版印刷版3とゴムブランケット5とを接触させ、平版印刷版3からゴムブランケット5に導電性インキ2を転写する。続いて、支持体(圧胴)7とブランケット胴6との間に基板8を通してゴムブランケット5を接触させることにより、ゴムブランケット5上の導電性インキ2を基板8に転写する(転写工程)。転写された導電性インキ2を、赤外線乾燥機9により乾燥した後、紫外線照射装置10から紫外線を照射する(照射工程)。導電性インキ2は、紫外線照射により硬化し、導電性層11となる。
【0015】
図2において、転写工程は
図1と同じである。転写された導電性インキ2を、赤外線乾燥機9により乾燥した後、支持体(圧胴)7とプレス体12により、導電性インキ2が転写された基板8をプレスする(押圧工程)。その後、
図1と同様の照射工程を経て、導電性層11を得る。
【0016】
図3は、
図1における赤外線乾燥機9による乾燥の工程を有しない方法を示す。
【0017】
図4は、
図2における赤外線乾燥機9による乾燥の工程を有しない方法を示す。
【0018】
以下に各工程について説明する。
【0019】
まず、(I)転写工程について説明する。転写工程においては、平版印刷版を用いて、導電性インキを、被印刷物である基板の被転写面に転写する。
【0020】
(平版印刷版)
平版印刷版としては、湿し水を用いた水あり印刷に用いられる水あり平版印刷版や、湿し水を要しない水なし印刷に用いられる水なし平版印刷版などが挙げられる。湿し水による導電性インキへの影響を抑制する観点から、水なし平版印刷版が好ましい。
【0021】
水なし平版印刷版は、シリコーンゴム層を有する平版印刷版である。シリコーンゴム層は導電性インキを反発して非画像部を形成し、シリコーンゴム層が除去された領域は導電性インキが付着して画像部を形成する。基板上に、感熱層または感光層と、シリコーンゴム層とをこの順に有することが好ましい。
【0022】
シリコーンゴム層は、インキ反発性の液体を含有することが好ましい。インキ反発性の液体を含有することにより、導電性インキに対するシリコーンゴム層の反発性を高め、印刷中の導電性粒子によるシリコーン層の損耗に起因する非画像部へのインキの付着を抑制することができる。また、水なし平版に対する導電性インキの供給量を増やすことができ、厚膜の導電性層を形成することができる。
【0023】
インキ反発性の液体は、1気圧における沸点が150℃以上であることが好ましい。印刷時に水なし平版印刷版の版面が加圧されたとき、シリコーンゴム層表面にインキ反発性の液体が表出し、インキの剥離を助けることによりインキ反発性を向上させる。沸点が150℃以上であれば、水なし平版印刷版製造時の揮発を抑制することができる。ここでいう沸点は、1気圧の環境下で1時間静置したのちの質量減少量が、0.5質量%以上になる温度で定義される。言い換えると、この液体は、150℃、1気圧環境下で1時間静置したのちの質量減少が0.5質量%未満である。
【0024】
インキ反発性の液体の25℃における表面張力は、15mN/m以上30mN/m以下が好ましい。表面張力が15mN/m以上であれば、シリコーンゴム層中に含まれる他の成分との親和性に優れ、シリコーンゴム層組成物溶液の安定性が向上する。一方、表面張力が30mN/m以下であれば、インキ反発性をより向上させることができる。
【0025】
インキ反発性をより向上させる観点から、インキ反発性の液体のシリコーンゴム層中における含有量は、10質量%以上が好ましい。一方、シリコーンゴム層の膜強度を維持する観点から、インキ反発性の液体のシリコーンゴム層中における含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
【0026】
前記インキ反発性の液体は、シリコーン化合物であることが好ましく、シリコーンオイルがより好ましい。ここで言うシリコーンオイルとは、シリコーンゴム層の架橋に携わらないフリーのポリシロキサン成分のことを指す。シリコーンオイルとしては、例えば、末端ジメチルポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、末端ジメチル-ポリジメチル-ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー、末端ジメチル-ポリジメチル-ポリジフェニルシロキサンコポリマーなどのジメチルシリコーンオイル類、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、カルバナ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどの分子中のメチル基の一部に各種有機基を導入した変性シリコーンオイル類などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、シリコーンゴム層と親和性が高く、多く含有できる点で、ジメチルシリコーンオイル類が好ましい。
【0027】
シリコーンオイルの重量平均分子量Mwは、1,000以上10万以下が好ましい。ここで、シリコーンオイルの重量平均分子量は、標品にポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0028】
基板上に、感熱層およびシリコーンゴム層をこの順に有する水なし平版印刷版の好ましい態様としては、例えば、国際公開公報第2016/076286号に記載の平版印刷版が挙げられる。
【0029】
(導電性インキ)
本発明において、導電性インキとは、活性エネルギー線により硬化し得る基(以下、「重合性基」と記載する場合がある)を有する化合物および導電性粒子を含むインキまたはペーストを指す。
【0030】
活性エネルギー線により硬化しうる重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート基、ビニル基、アリル基などのエチレン性不飽和基が挙げられる。かかる重合性基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリレートなどのモノマーやそれらのオリゴマー、側鎖に不飽和二重結合を有するアクリル系重合体などのポリマーなどが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0031】
前述の水なし平版印刷版を用いる場合は、重合性基を有する化合物として、直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレート含んでもよい。かかる化合物を含むことにより、導電性インキに対するシリコーンゴム層の反発性を高め、印刷中の導電性粒子によるシリコーン層の損耗に起因する非画像部へのインキの付着を抑制することができる。すなわち、平版印刷版の耐損耗性を向上させることができる。また、水なし平版に対する導電性インキの供給量を増やすことができ、厚膜の導電性層を形成することができる。直鎖アルキル基の炭素数は、9以上が好ましい。直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
【0032】
直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートの含有量は、インキ反発性を向上させる観点から、導電性インキ中、0.5~10質量%が好ましい。
【0033】
導電性粒子とは、電気抵抗率が10-5Ω・m以下の物質で構成される粒子を指す。導電性粒子としては、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の金属粒子が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、金、銀、銅、ニッケル、錫、ビスマス、鉛、亜鉛、パラジウム、白金、アルミニウムを含有する金属粒子が好ましく、銀粒子がより好ましい。
【0034】
導電性粒子の粒子径は、分散安定性を向上させる観点から、10nm以上が好ましい。一方、導電性粒子の粒子径は、緻密な導電性層を形成する観点や、平版印刷版の耐損耗性を向上させる観点から、100nm以下が好ましい。
【0035】
ここで、導電性粒子の粒子径とは、導電性粒子の比表面積換算径(Dp)をいう。比表面積換算径(Dp)とは、単位質量に含まれる個々の粒子の表面積の総和である。個々の粒子は同一径を有する球形であると仮定し、比表面積換算径(粒子直径)をDp(μm)、球形粒子の密度をρ、球形粒子の比表面積をSw(m2/g)とすると、
Dp=6/(ρSw)
の関係が成り立つ。密度ρは、全自動真密度測定装置(例えば、Macpycno;Mountech(株)製)、比表面積Sw(m2/g)(BET値)は、全自動比表面積測定装置(例えば、MacsorbHMmodel-1201;Mountech(株)製)により測定することができる。
【0036】
導電性粒子は、炭素を含む表面被覆層(以下、「表面被覆層」と略記する場合がある)を有することが好ましい。表面被覆層を有することにより、室温付近における導電性粒子同士の融着による粗大化を抑制し、平版印刷版の耐損耗性を向上させることができる。
【0037】
表面被覆層の形成方法としては、例えば、熱プラズマ法により導電性粒子を作製する際に、反応性ガスと接触させる方法(特開2007-138287号公報)が挙げられる。導電性粒子の表面は、完全に被覆されていることが好ましいが、室温付近における導電性粒子同士の融着による粗大化を抑制できる限りにおいては、一部に被覆が不完全な粒子が存在することは許容される。
【0038】
表面被覆層の平均厚みは、導電性粒子同士の融着による粗大化をより抑制する観点から、0.1~10nmが好ましい。
【0039】
導電性インキの25℃における粘度は、押圧工程における画像の太りを抑制し、高精細なパターンの再現性をより向上させる観点から、1Pa・s以上が好ましく、7Pa・s以上がより好ましい。一方、導電性インキの25℃における粘度は、緻密な導電性層を形成する観点から、1,000Pa・s以下が好ましく、200Pa・s以下がより好ましい。ここで、導電性インキの25℃における粘度は、コーンプレート(コーン角1°、φ=40mm)を装着したレオメーターMCR301(アントン・パール製)を用いて、インキ量:0.15mL、温度:25℃、回転数:0.5rpmの条件で測定することができる。
【0040】
導電性インキには、さらに、光重合開始剤や熱重合開始剤などの重合開始剤や、溶剤、その他添加剤を含んでもよい。
【0041】
導電性インキの好ましい態様としては、例えば、国際公開公報第2012/124438号に記載の感光性導電ペーストや、表面被覆層を有する導電性粒子を含む態様として、国際公開公報第2015/159655号に記載の感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0042】
(基板)
被印刷物である基板としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル・塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、トリアセテート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルファイド樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、セロファン、スチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ペンタセンおよびその誘導体、オリゴチオフェンおよびその誘導体、ベンゾチオフェン誘導体、テトラベンゾポルフィリンおよびその誘導体等の有機半導体材料、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子等の各種樹脂類からなるシートまたはフィルムや、石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、“パイレックス”(登録商標)ガラス、サファイア等の各種ガラス、Au、Ag、Pb、Al、Cr、Pt、Cu、Mo等の金属、ITO(酸化インジウム錫)、FTO、ZnO、Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、Y2O3、ThO2、CaO等の金属酸化物、AlN、GaN、SiN等の金属窒化物、SiC、TaC等の金属炭化物、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)、単結晶シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等の無機半導体材料からなる板や、低温同時焼成セラミックス(LTCC)や積層セラミックコンデンサを形成するために用いられるグリーンシート類、紙等が挙げられる。紙としては、例えば、アート紙、コート紙、板紙、上質紙等の印刷用紙、PPC用紙等の情報用紙、インクジェット用紙、ポリオレフィン樹脂被覆紙、和紙、不織布、合成紙等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0043】
基板の形態としては、枚葉、ロールのいずれも用いることができる。
【0044】
(転写工程)
転写方法としては、平版印刷版から導電性インキを直接基板に転写する「直刷り」、ゴムブランケットに一旦転写してから基板に転写する「オフセット」のいずれでもよい。平版印刷版の耐損耗性を向上させる観点から、オフセット方式が好ましい。
【0045】
導電性インキを転写する装置としては、例えば、平台印刷機、枚葉印刷機、輪転印刷機、間欠式印刷機などが挙げられる。後述の押圧工程に印刷ユニットが利用できるため、多色印刷機が好ましい。
【0046】
転写工程において、同じパターンを同じ位置に複数回転写することにより、導電性層を厚膜化することもできる。複数回転写する場合は、複数の転写工程の間に、後述する照射工程、押圧工程を加えてもよい。
【0047】
次に、(II)照射工程について説明する。照射工程においては、転写された導電性インキに活性エネルギー線を照射する。
【0048】
(照射工程)
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、ガンマ線、赤外線などが挙げられる。導電性インキに光重合開始剤が含まれる場合には、紫外線が好ましく用いられる。紫外線照射により、導電性インキ中においてラジカルを発生させ、重合・硬化させることにより、導電性層を形成する。導電性インキに光重合開始剤を含まない場合には、電子線やガンマ線などの放射線が好ましく用いられる。放射線照射により、導電性インキ中において高エネルギーの二次電子を発生させ、周囲の分子を励起してラジカルに代表される反応活性種を生成し、重合・硬化させることにより、導電性層を形成する。導電性インキに溶剤を含む場合など、硬化に先立って乾燥することが好ましい場合には、赤外線が好ましく用いられる。赤外線照射により、溶剤などの揮発性成分を除去することができる。また、導電性インキに熱重合開始剤などの熱重合成分を含む場合は、赤外線照射により、導電性インキを硬化させることもできる。
【0049】
活性エネルギー線照射装置としては、後述の押圧工程に印刷ユニットが利用できるため、多色印刷機に備えられた活性エネルギー照射装置でが好ましい。多色印刷機としては、各印刷ユニット間に活性エネルギー線照射装置を備えるものが好ましい。このような多色印刷機としては、例えば、印刷ユニット間にLED-UV照射装置を備えたシール・ラベル印刷機などが挙げられる。
【0050】
次に、(III)押圧工程について説明する。押圧工程においては、導電性インキが転写された基板をプレスする。
【0051】
(押圧工程)
押圧工程は、前述の転写工程の後、照射工程の前に行われる。照射工程前の未硬化の導電性インキをプレスすることにより、導電性インキ表面を平滑化する。プレス方法としては、多色印刷機を使用する場合、後刷りの印刷ユニットを利用することができる。この場合、先刷りの印刷ユニットで転写された被転写面の未硬化導電性インキに対して、後刷りの印刷ユニットのプレス体が接触する。ここで、プレス体は、「直刷り」であれば平版印刷版、「オフセット」であればゴムブランケットをそのまま用いてもよい。
【0052】
プレス体の表面材質としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂およびエチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコーンゴム、ウレタンゴム等のゴムなどが挙げられる。
【0053】
プレス体の算術平均表面粗さRaは、導電性インキ表面の凹凸をより平滑化する観点から、0.50μm以下が好ましく、0.30μm以下がより好ましい。ここで、算術平均表面粗さRaは、表面粗さ・輪郭形状測定機を用い、JIS B0601:2013に準拠して、無作為に選択した5箇所について測定した表面粗さRaの算術平均値である。
【0054】
押圧工程における押圧は、インキ表面の凹凸をより平滑化する観点から、100N/cm2以上が好ましく、200N/cm2以上がより好ましい。一方、押圧は、押圧装置の保護の観点から、700N/cm2以下が好ましく、600N/cm2がより好ましく、500N/cm2以下がさらに好ましい。
【0055】
本発明の導電性パターンの製造方法は、押圧工程を有する場合、例えば、(A)転写工程-押圧工程-照射工程(紫外線や放射線硬化)、(B)転写工程-照射工程(赤外線乾燥)-押圧工程-照射工程(紫外線や放射線硬化)、(C)転写工程-押圧工程-照射工程(赤外線乾燥)-照射工程(紫外線や放射線硬化)などが挙げられる。導電性インキとして溶剤を含まない紫外線硬化型導電性インキを用いる場合、(A)の方法が好ましく、溶剤を含む紫外線硬化型導電性インキを用いる場合、(B)や(C)の方法が好ましい。また、押圧工程を複数回実施してもよく、平滑化の効果をより高めることができる。
【0056】
さらに、照射工程(紫外線や放射線硬化)の後、ポストベーク工程を設けてもよい。ポストベーク条件としては、温度:100~300℃、時間:5分間~120分間が好ましい。
【0057】
次に、本発明の配線基板の製造方法について説明する。
【0058】
本発明における配線基板は、基板上に導電性層を有する。導電性層の平均厚みは、導電性の観点から、0.8μm以上が好ましく、1.3μm以上がより好ましく、1.8μm以上がさらに好ましい。また、導電性層の算術平均表面粗さRaは、0.6μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。導電性層のRaを前記範囲にする方法としては、例えば、押圧工程を有する方法により導電性層を形成する方法などが挙げられる。
【0059】
本発明の配線基板の製造方法は、前述の本発明の導電性パターンの製造方法によって、平均厚み1.8μm以上の導電性層を形成する。平均厚み1.8μm以上の導電性層を形成する方法としては、例えば、前述の転写工程において、同じパターンを同じ位置に複数回転写する方法などが挙げられる。複数回転写する場合、複数の転写工程の間に、前述の照射工程、押圧工程を加えてもよい。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載する重量平均分子量は、標品にポリスチレンを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0061】
(導電性インキの作製)
<導電性インキ-1>
導電性インキ-1を以下の方法により作製した。
下記(i)~(vii)を混合して100℃で溶解させ、ワニス-1を作製した。
(i)スチレンアクリル樹脂RS-1191(商品名、星光PMC(株)製、重量平均分子量6,500):100質量部
(ii)エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート:80質量部
(iii)光重合開始剤 ジメチルベンジルケタール:15質量部
(iv)光重合開始剤 4-ジメチルアミノ安息香酸:12質量部
(v)光重合開始剤 イソプロピルチオキサントン:10質量部
(vi)ブチルカルビトール:150質量部
(vii)レベリング剤 ポリフローNo.90(商品名、共栄社化学(株)製):0.5質量部。
【0062】
次いで、得られたワニス-1に以下(viii)および(ix)を添加して室温下で混練し、導電性インキ-1を得た。
(viii)銀粒子(平均粒子径1.5μm):800質量部
(ix)ガラスフリット:20質量部。
【0063】
<導電性インキ-2>
導電性インキ-2を以下の方法により作製した。
(i)~(vii)を混合して100℃で溶解させワニス-2を作製した。
(i)スチレンアクリル樹脂YS-1274(商品名、星光PMC(株)製、重量平均分子量19,000):240質量部
(ii)エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレート:560質量部
(iii)光重合開始剤 ジメチルベンジルケタール:15質量部
(iv)光重合開始剤 4-ジメチルアミノ安息香酸:12質量部
(v)光重合開始剤 イソプロピルチオキサントン:10質量部
(vi)レベリング剤 ポリフローNo.90(商品名、共栄社化学(株)製):0.5質量部。
【0064】
次いで、得られたワニス-2に以下(viii)および(ix)を添加して室温下で混練し、導電性インキ-2を得た。
(vii)銀粒子(平均粒子径1.5μm):800質量部
(viii)ガラスフリット:20質量部。
【0065】
<導電性インキ-3>
導電性インキ-3を以下の方法により作製した。
ホモジナイザーを用いて、下記(i)~(iii)を、1200rpmの条件で30分間混合し、さらに、その混合液を、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、銀粒子分散体-1を得た。
(i)銀粒子(平均粒子径60nm、Sigma-Aldrich製):80質量部
(ii)分散剤“DISPERBYK”(登録商標)140(ビックケミ-・ジャパン(株)製):4.06質量部
(iii)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略記する):196.14質量部。
【0066】
また、以下の方法によりアクリル樹脂溶液を作製した。2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル):2質量部、PGMEA:50質量部、メタクリル酸:23.26質量部、ベンジルメタクリレート:31.46質量部、ジシクロペンタニルメタクリレート:32.80質量部をフラスコに仕込み、室温でしばらく撹拌し、フラスコ内をバブリングによって十分に窒素置換した後、70℃で5時間加熱撹拌し、アクリル樹脂の溶液を得た。得られた樹脂溶液に、メタクリル酸グリシジル:12.69質量部、ジメチルベンジルアミン:1質量部、p-メトキシフェノール:0.2質量部、PGMEA:100質量部を添加し、90℃で4時間加熱撹拌し、樹脂の側鎖にエチレン性不飽和結合を導入した。得られた樹脂溶液に、固形分濃度が40質量%になるようにPGMEAを加え、アクリル樹脂溶液とした。
【0067】
次いで、前述の方法により得られた銀粒子分散体-1:63.28質量部に対して、上記アクリル樹脂溶液:4.40質量部、光重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)OXE02(オキシムエステル系化合物;BASF社製):0.41質量部、“ライトアクリレート”(登録商標)PE-4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート;共栄社化学(株)製):1.30質量部を混合したものに、ジアセトンアルコール:23.25質量部、PGMEA:7.31質量部を添加し、撹拌し、導電性インキ-3を得た。
【0068】
<導電性インキ-4>
導電性インキ-4を以下の方法により作製した。
ホモジナイザーを用いて、下記(i)~(iii)を、1200rpmの条件で30分間混合し、さらに、その混合液を、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、銀粒子分散体-2を得た。
(i)炭素を含む表面被覆層(平均厚み1nm)を有する銀粒子(平均粒子径40nm、日清エンジニアリング(株)製):80質量部
(ii)分散剤“DISPERBYK”(登録商標)140(ビックケミ-・ジャパン(株)製):4.06質量部
(iii)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と略記する):196.14質量部。
【0069】
次いで、前述の方法により得られた銀粒子分散体-2:63.28質量部に対して、導電性インキ-3と同様にして得られたアクリル樹脂溶液:4.40質量部、光重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)OXE02(オキシムエステル系化合物;BASF社製):0.41質量部、“ライトアクリレート”(登録商標)PE-4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート;共栄社化学(株)製):1.30質量部を混合したものに、ジアセトンアルコール:23.25質量部、PGMEA:7.31質量部を添加し、撹拌し、導電性インキ-4を得た。
【0070】
<導電性インキ-5>
下記(i)~(iii)を混合して、室温下で溶解させ、導電性インキ-4を作製した。
(i)銀粒子(平均粒子径1.5μm):8質量部
(ii)エチレングリコール:8質量部
(iii)テルピネオール:4質量部。
【0071】
(平版印刷版の作製)
<水なし平版印刷版-1>
水なし平版原版-1を以下の方法で作製した。
厚み0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に、下記の断熱層組成物溶液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、厚み6.0μmの断熱層を設けた。なお、断熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0072】
[断熱層組成物溶液]
(i)エポキシ樹脂“jER”(登録商標)1010(三菱ケミカル(株)製):29.2質量部
(ii)ポリウレタン“サンプレン”(登録商標)LQ-T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20質量%):51.7質量部
(iii)アルミキレートALCH-TR(川研ファインケミカル(株)製):4.5質量部
(iv)レベリング剤“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10質量%):0.1質量部
(v)酸化チタン“タイペーク”(登録商標)CR-50(石原産業(株)製)のN,N-ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50質量%):14.5質量部
(vi)N,N-ジメチルホルムアミド:450質量部
(vii)メチルエチルケトン:150質量部。
【0073】
次いで、下記の感熱層組成物溶液を前記断熱層上に塗布し、140℃で90秒間加熱乾燥し、厚み1.5μmの感熱層を設けた。なお、感熱層組成物溶液は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0074】
[感熱層組成物溶液]
(i)赤外線吸収染料NK5559((株)林原製、最大吸収波長:774nm):12.0質量部
(ii)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):70.4質量部
(iii)チタニウム-n-ブトキシドビス(アセチルアセトネート)“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73質量%、溶剤としてn-ブタノール:27質量%を含む):17.6質量部
(iv)テトラヒドロフラン:900質量部。
【0075】
次いで、塗布直前に調製した下記のシリコーンゴム層組成物溶液-1を前記感熱層上に塗布し、140℃で80秒間加熱し、平均膜厚3.0μmのシリコーンゴム層を設け、水なし平版原版-1を得た。なお、シリコーンゴム層組成物溶液-1は、下記成分を室温にて撹拌混合することにより得た。
【0076】
[シリコーンゴム層組成物溶液-1]
(i)α,ω-ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS-V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):87.0質量部
(ii)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD-1(東レ・ダウコーニング(株)製):4.2質量部
(iii)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.6質量部
(iv)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):6.2質量部
(v)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部。
【0077】
得られた水なし平版原版-1に対し、CTP用露光機PlateRite 8900E(SCREEN(株)製)を用いて、照射エネルギー:125mJ/cm2(ドラム回転数:200rpm)の条件でパターン露光を行った。露光画像は、幅200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10μmの細線を100μmの間隔を空けてそれぞれ10本ずつ設けた。
【0078】
CP-X(東レ(株)製)を前処理液として、水道水を現像液として、露光した原版を自動現像機TWL-1160F(東レ(株)製)に速度60cm/分で通し、水なし平版印刷版-1を得た。
【0079】
(水なし平版印刷版-2)
シリコーンゴム層組成物溶液-1を下記シリコーンゴム層組成物溶液-2に変更した以外は、水なし平版原版-1と同様にして水なし平版原版-2を作製した。
【0080】
[シリコーンゴム層組成物溶液-2]
(i)α,ω-ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS-V35(重量平均分子量49,500、GELEST Inc.製):67.9質量部
(ii)末端ジメチルポリジメチルシロキサンKF-96-50cs(重量平均分子量:3,780、1気圧における沸点:150℃超、信越化学工業(株)製):20.0質量部
(iii)メチルハイドロジェンシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体RD-1(東レ・ダウコーニング(株)製):3.3質量部
(iv)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:2.6質量部
(v)白金触媒SRX212(東レ・ダウコーニング(株)製):6.2質量部
(vi)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):900質量部。
【0081】
得られた水なし平版原版-2に対して、水なし平版原版-1と同様に露光・現像し、水なし平版印刷版-2を得た。
【0082】
<プレス体の作製>
ゴムブランケットEX6300W((株)金陽社製、厚み1.95mm、算術平均表面粗さRa0.54μm)のゴム面に、ワイヤーバーコーターを用いて、前述のシリコーンゴム層組成物溶液-1を塗布し、140℃で80秒間加熱することにより、平均膜厚5.0μmのシリコーンゴム層を設け、プレス体を得た。
【0083】
各実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
【0084】
<高精細パターン再現性>
各実施例および比較例により得られた導電性層の各10本の細線を、光学顕微鏡L200N((株)Nikon製)を用いて、倍率50倍の条件で拡大観察し、断線・結線が発生していない最小の線幅を評価対象とした。例えば、10本の20μm細線を観察し、1本でも断線・結線が認められれば評価対象外とし、続いて10本の30μm細線を観察し、10本ともに断線・結線が認められなければ、30μm細線を評価対象とした。評価対象となる細線の線幅が80μm以下であれば高精細パターン再現性は可、60μm以下であれば良好、40μm以下であれば優れると判断した。
【0085】
<導電性層の平均厚みおよび表面粗さ>
評価対象の細線の中から無作為に選択した10箇所について、レーザー顕微鏡VK-X210((株)キーエンス製)を用いて、倍率50倍、分解能0.1μmの条件で、厚みおよび表面粗さを測定し、その平均値を算出した。導電性の観点から、平均厚みが0.8μm以上であれば可、1.3μm以上であれば良好、1.8μm以上であれば優れると判断した。また、算術平均表面粗さRaは、0.6μm以下であれば可、0.4μm以下であれば良好、0.2μm以下であれば優れると判断した。
【0086】
<印刷可能枚数>
各実施例および比較例において、500枚連続印刷を行い、100枚毎に印刷された基板を目視観察し基板の意図しない箇所に導電性インキが付着するようになるまでの枚数(印刷可能枚数)により、シリコーン層の耐損耗性を評価した。印刷可能枚数が100枚以上であれば、耐損耗性は可、300枚以上であれば良好と判断した。
【0087】
[実施例1]
図1に示す導電性パターンの製造方法の一態様に対応する下記工程により、導電性層を形成した。
【0088】
(転写工程)
2セットの印刷ユニットを備えた枚葉印刷機“オリバー266EPZ”(桜井グラフィックシステムズ(株)製)の排紙部に速度可変式コンベアを内蔵した紫外線照射装置を連結した印刷試験機の1番目の印刷ユニットにおいて、版胴に前述の方法により得られた水なし平版印刷版-1、ブランケット胴にゴムブランケットEX6300W((株)金陽社製)を装着した。前述の方法により得られた導電性インキ-1を、インキローラーにより水なし平版印刷版-1に供給し、水なし平版印刷版-1とゴムブランケットとを接触させ、水なし平版印刷版-1からゴムブランケットにインキを転写した。続いてゴムブランケット上の導電性インキ-1を基板であるOKトップコート紙(王子製紙(株))に転写するオフセット印刷方式により、導電性インキを印刷した。
【0089】
(照射工程-1)
OKトップコート紙(王子製紙(株))に転写された導電性インキ-1に、赤外線乾燥機ADT-48α(日本ヒーター(株)製)により外部から赤外線照射を行い、溶媒を揮発させ予備乾燥を行った。
【0090】
(照射工程-2)
印刷試験機に連結した超高圧水銀ランプを有する紫外線照射装置を用いて、350mJ/cm2の露光量で、予備乾燥した導電性インキ-1に紫外線照射を行い、硬化させて導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0091】
前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0092】
[実施例2]
(照射工程-1)の後に、以下の(押圧工程)を設け、その後に(照射工程-2)を行ったこと以外は実施例1と同様にして導電性層を形成した。
図2に示す導電性パターンの製造方法の一態様に対応する。
【0093】
(押圧工程)
印刷試験機の1番目の印刷ユニットの後方に備えられた2番目の印刷ユニットにおいて、ブランケット胴に、前述の方法により得られたプレス体を装着した。印刷時に2番目の印刷ユニットの胴入れを行い、導電性インキ-1が転写され、予備乾燥された被転写面をプレスした。なお、圧力測定フィルム“プレスケール”低圧用(LW)を用いてプレス時の圧力を測定したところ、300N/cm2であった。
【0094】
巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0095】
[実施例3]
導電性インキ-1にかえて、前述の方法により得られた導電性インキ-2を用い、(転写工程)の後、(照射工程-1)を行うことなく(照射工程-2)を行ったこと以外は実施例1と同様にして導電性層を形成した。
図3に示す導電性パターンの製造方法の一態様に対応する。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れず、さらに(照射工程-1)が不要であるため、印刷速度を高速化することができ、生産性は非常に優れていた。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0096】
[実施例4]
(転写工程)の後に、実施例2に記載した(押圧工程)を設け、その後に(照射工程-2)を行ったこと以外は実施例3と同様にして導電性層を形成した。
図4に示す導電性パターンの製造方法の一態様に対応する。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れず、さらに(照射工程-1)が不要であるため、印刷速度を高速化することができ、生産性は非常に優れていた。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0097】
[実施例5]
導電性インキ-1にかえて、前述の方法により得られた導電性インキ-3を用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0098】
[実施例6]
導電性インキ-1にかえて、前述の方法により得られた導電性インキ-4を用いたこと以外は実施例2と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0099】
[実施例7]
水なし平版印刷版-1にかえて、前述の方法により得られた水なし平版印刷版-2を用いたこと以外は実施例6と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0100】
[実施例8]
上記導電性インキ-4および水なし平版印刷版-2を用いて、(転写工程)、(照射工程-1)、(押圧工程)、(照射工程-2)を各2回ずつ行い、同じパターンを同じ位置に重ねて転写したこと以外は実施例7と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れないため、生産性は良好であった。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0101】
[実施例9]
水なし平版印刷版-1にかえて、前述の方法により得られた水なし平版印刷版-2を用いたこと以外は実施例4と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れず、さらに(照射工程-1)が不要であるため、印刷速度を高速化することができ、生産性は非常に優れていた。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0102】
[実施例10]
上記導電性インキ-2および水なし平版印刷版-2を用いて、(転写工程)、(押圧工程)、(照射工程-2)を2回繰り返し、同じパターンを同じ位置に重ねて転写したこと以外は実施例9と同様にして導電性層を形成した。巻き取りや積層を行っても導電性層が崩れず、さらに(照射工程-1)が不要であるため、印刷速度を高速化することができ、生産性は非常に優れていた。前述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0103】
[比較例1]
導電性インキ-1にかえて前述の方法により得られた導電性インキ-5を用い、(転写工程)のみにより導電性層導電性パターンを形成したこと以外は実施例1と同様にして導電性層を形成した。導電性パターンの崩れを防止するために巻き取りや積層ができないため、生産性が低かった。
【0104】
各実施例および比較例の主な構成および評価結果を表1に示す。
【0105】