(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094862
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】スパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20230629BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20230629BHJP
D01F 6/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H3/007
D01F6/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210425
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山中 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】小出 現
【テーマコード(参考)】
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD13
4L035FF05
4L035HH10
4L047AA14
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047CA19
4L047CB01
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】 低目付化しても実使用に耐えうるような、高強度のスパンボンド不織布を提供すること。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記繊維を構成するポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.950以上0.990以下である、スパンボンド不織布。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記繊維を構成するポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.950以上0.990以下である、スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布を構成する繊維の平均単繊維直径が6.5μm以上14.5μm以下である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
【請求項3】
前記繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが155g/10分以上850g/10分以下である、請求項1または2に記載のスパンボンド不織布。
【請求項4】
前記繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率(mmmm)が0.950以上0.995以下である、請求項1~3のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【請求項5】
前記スパンボンド不織布の目付が5g/m2以上100g/m2以下である、請求項1~4のいずれかに記載のスパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料やマスク等に好適に用いることができるスパンボンド不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料やマスク等には、低価格であることや実使用における適度な柔軟性と物理特性を得やすいことから、スパンボンド不織布が多く用いられる。これらの用途は1回の使用で廃棄し焼却処分や埋め立て処分する場合が多いことから、環境配慮の観点で使用するプラスチック量の削減が求められている。
【0003】
スパンボンド不織布におけるプラスチック量を削減することは、具体的には、1m2あたりの不織布質量である目付(g/m2)を低減することであるが、目付を低減すればするほど、一般には不織布の物理特性である引張強度が低下し、実使用時に破れる等の課題が顕在化する。そこで、スパンボンド不織布の強度向上が種々検討されている。
【0004】
一般には、スパンボンド不織布の強度を向上する手法としては、糸の強度を向上させる方法と熱接着性を向上させる方法との2つが考えられる。前者としては、例えば、特許文献1に、分子量分布が3未満のポリプロピレン樹脂に、0.1~1重量部の高溶融強度ポリプロピレンを添加することで、糸のテナシティと伸びやすさの両立を図ることが記載されている。また、後者としては、例えば、特許文献2に、ポリプロピレン樹脂のメルトマスフローレートや紡糸条件を制御することで結晶子サイズを小さくし、融点および融解熱量を特定の範囲とし、スパンボンド不織布の製造工程における熱接着性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008-523231号公報
【特許文献2】特開2019-196576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、糸の強度をある程度向上させることはできるが、高溶融強度ポリプロピレンの添加量が少ないことにより、熱接着性に影響を与えることはなく、スパンボンド不織布の強度が大きく向上し難い。一方、特許文献2に開示された方法では、熱接着性をある程度向上させることができるがが、糸強度は結晶子サイズが小さいことにより低くなるため、やはり、スパンボンド不織布の強度が大きく向上し難い。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記の課題に鑑み、低目付化しても実使用に耐えうるような、高強度のスパンボンド不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、スパンボンド不織布を構成する繊維のポリプロピレン樹脂について、分岐指数gを特定の範囲とすることによって、スパンボンド不織布を構成する繊維の強度と熱接着性の双方を向上でき、従前よりも高い強度のスパンボンド不織布を得られるという知見を得た。
【0009】
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0010】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記の繊維を構成するポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.950以上0.990以下である。
【0011】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布を構成する繊維の平均単繊維直径が6.5μm以上14.5μm以下である。
【0012】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートが155g/10分以上850g/10分以下である。
【0013】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記の繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率(mmmm)が0.950以上0.995以下である。
【0014】
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記のスパンボンド不織布の目付が5g/m2以上100g/m2以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従前よりも高い強度のスパンボンド不織布が得られる。そのため、比較的低い目付のスパンボンド不織布としたとしても、実使用に耐えうる物理的特性を有するものとなり、プラスチック原料を低減した環境配慮の不織布として、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料やマスク等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維で構成されてなるスパンボンド不織布であって、前記繊維を構成するポリプロピレン樹脂の分岐指数gが0.950以上0.990以下である。
【0017】
以下に、これら本発明の構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0018】
[ポリプロピレン系樹脂]
本発明のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂を主成分としてなる繊維で構成されてなる。ポリプロピレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂などの他のポリオレフィン系樹脂と比較して紡糸性や強度特性に優れることから好適である。また、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。
【0019】
本発明に係る繊維を構成するポリプロピレン系樹脂について、プロピレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ、強度を向上させることができる。
【0020】
このポリプロピレン系樹脂としては、2種以上の混合物であってもよく、またポリエチレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのその他のオレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物を用いることもできる。
【0021】
また、このポリプロピレン系樹脂の融点は、80℃以上200℃以下であることが好ましい。融点を好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性が得られやすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し安定した紡糸が行い易くなる。
【0022】
さらに、このポリプロピレン系樹脂には、滑り性や柔軟性を向上させるために、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物が含有されても良い。ポリプロピレン系樹脂に混合される脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは23以上とし、より好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に露出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れたものとし、高い生産性を保持することができる。一方、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下とし、より好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面に移動しやすくなり、スパンボンド不織布に滑り性と柔軟性を付与することができる。
【0023】
本発明で使用される炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、例えば、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。
【0024】
具体的には、炭素数23以上50以下の脂肪酸アミド化合物として、テトラドコサン酸アミド、ヘキサドコサン酸アミド、オクタドコサン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサペンタエン酸アミド、ニシン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。中でも、エチレンビスステアリン酸アミドは、熱安定性に優れているため溶融紡糸が可能であり、高い紡糸安定性を保持しながら、滑り性や柔軟性に優れたスパンボンド不織布を得ることができるため、好ましい。
【0025】
本発明において、前記の繊維を構成するポリプロピレン系樹脂に含まれる脂肪酸アミド化合物の量(以降、単に、脂肪酸アミド化合物の含有量と記載することがある)は、0.01質量%~5質量%であることが好ましい態様である。脂肪酸アミド化合物の含有量を0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上とすることで、適度な滑り性と柔軟性を付与することができる。一方、脂肪酸アミド化合物の含有量を5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下とすることで、紡糸性の低下を抑制することができる。
【0026】
ここでいう脂肪酸アミド化合物の含有量とは、ポリプロピレン系樹脂からなる繊維全体の質量に対する脂肪酸アミド化合物の質量の割合(%)を言う。つまり、例えば、前記の繊維が芯鞘型複合繊維であったとして、この芯鞘型複合繊維の鞘部の成分のみに脂肪酸アミド化合物を含む場合であっても、芯鞘型複合繊維の全体の質量に対する脂肪酸アミド化合物の質量の割合を算出することとする。
【0027】
この脂肪酸アミド化合物の含有量を測定する方法としては、例えば、繊維から添加剤を溶媒抽出し、液体クロマトグラフ質量分析(LS/MS)などを用いて定量分析する方法が挙げられる。このとき抽出溶媒は脂肪酸アミド化合物の種類に応じて適宜選択されるものであるが、例えばエチレンビスステアリン酸アミドの場合には、クロロホルム-メタノール混液などを用いる方法が一例として挙げられる。
【0028】
本発明に係る繊維を構成するポリプロピレン系樹脂には、他の特性を付与するために本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、帯電助剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
【0029】
本発明に係る繊維を構成するポリプロピレン系樹脂は、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂からなる。主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレン主鎖骨格から枝分かれしたポリプロピレン鎖を有するポリプロピレンである。主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンを用いることで、溶融押出の段階から長鎖分岐が微結晶間を疑似架橋するタイ分子として作用し、その後の紡糸工程で特に繊維表面に優先的に微細な結晶を形成する。結晶サイズが微細で、かつ微結晶間の疑似架橋によって結晶配向が進みにくくなり、繊維表面の軟化温度を低下するため、スパンボンドの熱接着工程で繊維同士が強固に融着してスパンボンド不織布の強度を向上できる。
【0030】
本発明において、前記の繊維を構成するポリプロピレン系樹脂の分岐指数gは、0.950以上0.990以下である。このポリプロピレン系樹脂の分岐指数gとは、ポリプロピレン系樹脂の長鎖の分岐の程度を示す指標であり、例えば「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V.Dawkinsed.Applied Science Publishers,1983)にも記載されているものである。分岐指数gが0.950以上、好ましくは0.965以上、より好ましくは0.980以上であることで溶融張力が高くなりすぎず、溶融紡糸延伸時の延伸追従性が不足することなく、安定して紡糸することができる。これは、主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレンを含むことにより、冷却固化時には長鎖分岐が系内の微結晶を貫く非晶相のタイ分子の絡み合いを促進し(微結晶間の疑似架橋効果)、その後の延伸過程で延伸応力が系全体に均一に伝達される(延伸が均一化の傾向となる)ことにより、繊維内部に発生するボイドが減少し、糸切れが抑制されるものと推察される。また、前記の分岐指数gが0.990以下であることで、微結晶形成効果や、結晶配向の阻害効果によって軟化温度を低下させてスパンボンドの熱接着工程で繊維同士が強固に融着してスパンボンド不織布の強度を向上できる。
【0031】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂の分岐指数gは、以下の方法によって測定されるものとする。
(1)スパンボンド不織布から10mgのサンプルを3箇所採取する。
(2)上記サンプルを1,2,4-トリクロロベンゼンに溶解させる。この際の濃度は、1mg/mLとする。
(3)示差屈折計(RI)と、粘度検出器(Viscometer)とを備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(例えば、Waters社製「Alliance GPC/V2000」など)と、その装置に対応したGPCV解析ソフト(例えば、Waters社製「Millennium32」など)とを用いて、以下の測定条件でサンプルの固有粘度測定を行う。これによって得られる固有粘度の算術平均値の小数点以下第4位を四捨五入して、[η]brとする。
・移動相溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン
・流量:1mL/分
・カラム:東ソー株式会社製「GMHHR-H(S)HT」を2本連結したもの
・カラム温度、試料注入部温度、各検出器温度:140℃
・試料注入量(サンプルループ容量):上記のWaters社製「Alliance GPC/V2000」であれば、0.2175mL
(4)サンプルの重量平均分子量を、低角度レーザー光散乱光度測定法で測定する。
(5)(3)と同様の条件で、(4)で得られた重量平均分子量と同等の重量平均分子量を有する直鎖状のポリプロピレン樹脂の固有粘度測定を行う。あるいは、(4)で得られた重量平均分子量と同等の重量平均分子量を有する直鎖状のポリプロピレン樹脂の固有粘度測定が行えない場合には、直鎖状のポリプロピレン樹脂の固有粘度の対数は、分子量の対数と線形の関係があることは、Mark-Houwink-Sakurada式として公知であるから、市販の直鎖状のポリプロピレン樹脂(例えば、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP(登録商標) FY6」など)の固有粘度測定を行い、その固有粘度を低分子量側や高分子量側に適宜外挿して数値を得ることができる。これによって得られる固有粘度の算術平均値の小数点以下第4位を四捨五入して、[η]linとする。
(6)以下の式(1)より、分岐指数gを算出し、得られた値の小数点以下第4位を四捨五入する。
【0032】
g=[η]br/[η]lin ・・・(1)
一般に、ポリマー分子に長鎖分岐構造が導入されると、同じ分子量の直鎖状のポリマー分子と比較して慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、固有粘度が小さくなることから、長鎖分岐構造が導入されるに従い、同じ分子量の直鎖状のポリプロピレンの固有粘度([η]lin)に対する分岐鎖状ポリマーの固有粘度([η]br)の比([η]br/[η]lin)である分岐指数gは、小さくなる傾向にある。
【0033】
本発明に係る繊維を構成するポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1.0×105以上であることが好ましい。このポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)を1.0×105以上、好ましくは1.5×105以上、より好ましくは2.0×105以上とすることで、微結晶間の疑似架橋効果を十分に得ることができる。また、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)には、本発明の効果を奏する限り、特に上限は設けないが、例えば、溶融押出特性の観点から5.0×106以下であることが好ましい。ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、マッコーネル(M.L.McConnell)、「POLYMER MOLECULAR WEIGHTS AND MOLECULAR WEIGHT DISTRIBUTIONS BY LOW-ANGLE LASER LIGHT SCATTERING」、American Laboratory、1978年5月、第10巻、p.63-75に開示されている方法、すなわち、低角度レーザー光散乱光度測定法で測定することができる。
【0034】
本発明で繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記載する場合がある。)は、155g/10分以上850g/10分以下であることが好ましい。MFRを155g/10分以上、より好ましくは170g/10分以上、さらに好ましくは190g/分以上とすることで、風合いや柔軟性、生産時の曳糸性に優れ、かつ地合が均一なスパンボンド不織布とすることができる。一方、850g/10分以下、より好ましくは600g/10分以下、さらに好ましくは400g/10分以下とすることで、スパンボンド不織布の強度低下を抑制することができる。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、ASTM D1238(A法)によって測定される値を採用する。この規格によれば、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて測定することが規定されている。
【0036】
MFRの異なる2種類以上のポリプロピレン系樹脂を任意の割合でブレンドして、ポリプロピレン系樹脂のMFRを調整することもできる。この場合、主となるポリプロピレン系樹脂に対してブレンドする樹脂のMFRは、10g/10分以上であることが好ましく、より好ましくは20g/10分以上、さらに好ましくは30g/10分以上である。また、1000g/10分以下であることが好ましく、より好ましくは800g/10分以下、さらに好ましくは600g/10分以下である。上記範囲とすることにより、ブレンドしたポリプロピレン系樹脂に部分的な粘度斑を抑制し、繊度の不均一化や紡糸性の悪化を防ぐことができる。
【0037】
なお、MFRはポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量により制御することができる。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量が高いほど、MFRは小さくなる。また、ポリプロピレン系樹脂に有機過酸化物、アゾ系化合物およびニトロキシドからなる群から少なくとも1種のラジカル発生剤を添加し、該ポリプロピレン系樹脂を分解させることで、MFRを調整してもよい。
【0038】
本発明で繊維を構成するポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率(mmmm)は0.950以上0.995以下であることが好ましい。より好ましくは0.965以上、特に好ましくは0.980以上である。
【0039】
メソペンタッド分率(mmmm)は核磁気共鳴法(NMR法)で測定されるポリプロピレンの結晶相の立体規則性を示す指標であり、数値が高いほど立体規則性が高いことを示し、結晶化度や融点は高くなる。ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率は0.950以上であると、結晶化度が高いことによってスパンボンドの糸強度が向上し、スパンボンド不織布が実用に供しうる機械的強度となる。メソペンタッド分率が0.995以下であると、溶融紡糸時の曳糸性を保って、安定してスパンボンド不織布を得ることができる。これは、微結晶核が優先的に形成、成長進行することで、細繊度化時に糸揺れが発生しても、糸同士が触れ合っても互いに融着することが無くなるため、周りの糸を巻き込み糸切れすることが抑えられるためである。
【0040】
メソペンタッド分率(mmmm)は、13C核磁気共鳴(13C-NMR)を用いて測定される、ポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率であり、周知の方法(例えば、A.Zambelli、「マクロモレキュールス(Macromolecules)」、1973年、第6巻、p.625、あるいは、同、「マクロモレキュールス(Macromolecules)」、1975年、第8巻、p.687に記載された方法)で測定されるものであって、13C-NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中の[mmmm]ピークの強度分率により測定される。
【0041】
[スパンボンド不織布を構成する繊維]
本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維は、平均単繊維径が6.5μm以上14.5μm以下であることが好ましい。平均単繊維径を好ましくは6.5μm以上、より好ましくは7.5μm以上、さらに好ましくは8.4μm以上であることにより、表面触感が滑らかな、衛生材料やマスク等に好適なスパンボンド不織布とすることができ、製造時においては、紡糸性の低下を防ぎ、安定して品質の良いスパンボンド不織布を生産することができる。一方、平均単繊維径を好ましくは14.5μm以下、より好ましくは11.7μm以下、さらに好ましくは11.2μm以下であることにより、単繊維同士が融着しやすくなって、繊維同士が融着している箇所の単位面積当たりの数が多くなるため、強度の強いスパンボンド不織布とすることができる。
【0042】
なお、本発明のスパンボンド不織布を構成する繊維の平均単繊維径(μm)の測定は、以下の手順によって算出される。
(1)スパンボンド不織布について、ランダムに小片サンプル10個を採取する。
(2)走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製「VHX-D500」など)で撮影倍率500~1000倍の表面写真を撮影し、各表面写真から10本ずつ、計100本の繊維の幅を測定する。
(3)測定した100本の値の算術平均値(μm)の小数点以下第2位を平均単繊維径(μm)とした。
【0043】
スパンボンド不織布を構成する繊維の単繊維径の変動係数(以下、単に単繊維径のCV値と略することがある。)は7%以下であることが好ましい。単繊維径のCV値を好ましくは7%以下とし、より好ましくは6%以下とし、さらに好ましくは5%以下とすることで、表面にざらつき感が生じることを防ぎ、均一性の高いスパンボンド不織布とすることができる。単繊維径のCV値には、紡糸口金の背圧や糸冷却条件、延伸条件の均一性が支配的であり、これらを適切に調整することにより制御することができる。
【0044】
[スパンボンド不織布]
本発明のスパンボンド不織布の目付は、5g/m2以上100g/m2以下であることが好ましい。目付を好ましくは5g/m2以上とし、より好ましくは10g/m2以上とし、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、目付は好ましくは100g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下とすることにより、不織布の実使用に適した適度な柔軟性を有するスパンボンド不織布とすることができる。
【0045】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の目付は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取する。
(2)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(3)その算術平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表し、小数点以下第1位を四捨五入する。
【0046】
本発明のスパンボンド不織布の厚みは、0.05mm以上1.5mm以下であることが好ましい。厚みが好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.08mm以上、さらに好ましくは0.1mm以上であることによって、あるいは、厚みが好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下であることによって、柔軟性と適度なクッション性を備え、実使用に適したスパンボンド不織布とすることができる。
【0047】
なお、本発明において、スパンボンド不織布の厚み(mm)は、JIS L1906:2000「一般長繊維不織布試験方法」の「5.1 厚さ」に準じ測定される値を採用するものとする。
【0048】
また、本発明のスパンボンド不織布の見掛密度は、0.05g/cm3以上0.30g/cm3以下であることが好ましい。スパンボンド不織布の見掛密度を好ましくは0.30g/cm3以下、より好ましくは0.25g/cm3以下、さらに好ましくは0.20g/cm3以下であることにより、スパンボンド不織布の強度を損なわずに、柔軟な風合いを発現することができる。
【0049】
一方、スパンボンド不織布の見掛密度を好ましくは0.05g/cm3以上とし、より好ましくは0.08g/cm3以上とし、さらに好ましくは0.10g/cm3以上とすることにより、毛羽立ちや層間剥離の発生を抑え、実用に耐え得る強度を備えたスパンボンド不織布とすることができる。
【0050】
本発明において、見掛密度(g/cm3)は、上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づいて算出し、小数点以下第三位を四捨五入したものとする
見掛密度(g/cm3)=[目付(g/m2)]/[厚さ(mm)]×10-3。
【0051】
本発明において、スパンボンド不織布の目付あたりの引張強度は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)50mm×300mmの試験片を、長片側が不織布の縦方向(不織布の長手方向)、横方向(不織布の幅方向)となるそれぞれの向きで、不織布の幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔200mmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度100mm/分で引張試験を実施し、最大強力を測定する。
(4)各試験片で測定した最大強力の平均値を求め、次の式に基づいて目付あたりの引張強度を算出し、小数点以下第二位を四捨五入する
目付あたりの引張強度((N/25mm)/(g/m2))=[最大強力の平均値(N/25mm)]/目付(g/m2)。
【0052】
本発明のスパンボンド不織布について、その目付あたりの縦方向の引張強力は、1.4(N/25mm)/(g/m2)以上3.0(N/25mm)/(g/m2)以下であることがより好ましい。目付あたりの引張強力が好ましくは1.4(N/25mm)/(g/m2)以上、より好ましくは1.5(N/25mm)/(g/m2)以上、さらに好ましくは1.6(N/25mm)/(g/m2)以上であることにより、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、目付あたりの横方向の引張強力が好ましくは3.0(N/25mm)/(g/m2)以下であることにより、スパンボンド不織布の柔軟性が低下したり、風合いが損なわれたりすることを防ぐことができる。目付あたりの縦方向の引張強力は、前記のポリプロピレン系樹脂のMFR、添加剤、平均単繊維径、および/または後述する紡糸速度、熱接着の条件(接着部の形状、圧着率、温度、および線圧等)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0053】
本発明のスパンボンド不織布の目付あたりの横方向の引張強力は、0.4(N/25mm)/(g/m2)以上2.0(N/25mm)/(g/m2)以下であることがより好ましい。目付あたりの引張強力が好ましくは0.4(N/25mm)/(g/m2)以上、より好ましくは0.6(N/25mm)/(g/m2)以上、さらに好ましくは0.8(N/25mm)/(g/m2)以上であることにより、実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。一方、目付あたりの横方向の引張強力が好ましくは2.0(N/25mm)/(g/m2)以下であることにより、スパンボンド不織布の柔軟性が低下したり、風合いが損なわれたりすることを防ぐことができる。なお、スパンボンド不織布の引張強力は縦方向と横方向があるが、一般的には横方向の引張強力の方が縦方向の引張強力よりも小さくなることから、目付あたりの横方向の引張強力が0.4(N/25mm)/(g/m2)以上2.0(N/25mm)/(g/m2)以下であることにより、縦方向においても実用に供しうる強度を有するスパンボンド不織布とすることができる。目付あたりの横方向の引張強力は、前記のポリプロピレン系樹脂のMFR、添加剤、平均単繊維径、および/または後述する紡糸速度、熱接着の条件(接着部の形状、圧着率、温度、および線圧等)などを適切に調整することにより制御することができる。
【0054】
本発明のスパンボンド不織布は、低目付化しても実使用に耐えうる物理特定を有することで、プラスチック原料を低減できる環境配慮の不織布として、衛生材料、医療材料、生活資材および工業資材等に幅広く用いることができる。特に衛生材料では使い捨ておむつ、生理用品および湿布材の基布等、医療材料では防護服やサージカルガウン等として好適に用いることができる。
【0055】
[スパンボンド不織布の製造方法]
次に、本発明のスパンボンド不織布を製造する方法の好ましい態様について、具体的に説明する。
【0056】
本発明のスパンボンド不織布は、スパンボンド法により製造される長繊維不織布である。スパンボンド法は、生産性や機械的強度に優れている他、短繊維不織布で起こりやすい毛羽立ちや繊維の脱落を抑制することができる。また、捕集したスパンボンド不織繊維ウェブあるいは熱圧着したスパンボンド不織布(どちらもSと表記する)を、SS、SSSおよびSSSSと複数層積層することにより、生産性や地合均一性が向上するため好ましい態様である。
【0057】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法に用いられる原料樹脂としては、主たる繰り返し単位がプロピレンであるプロピレン系樹脂である。ここで主たる繰り返し単位であるとは、その繰り返し単位が樹脂全体のうち90mol%以上を占める繰り返し単位であることをいう。そのため、原料樹脂の具体例としては、プロピレンの単独重合体、もしくはプロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。原料樹脂として、プロピレンと各種α-オレフィンとの共重合体を用いる場合、各種α-オレフィンの共重合比率は、高強度化の観点から10mol%以下が好ましく、より好ましくは5mol%以下であり、さらに好ましくは3mol%以下である。
【0058】
本発明で用いられる原料樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、他成分樹脂をブレンドして用いてもよい。他成分樹脂としては、融点がポリプロピレンに近いポリエチレンやポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィン系樹脂の他、低融点ポリエステル樹脂および低融点ポリアミド樹脂が挙げられ、柔軟性付与の観点から低結晶性のオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。低結晶性のオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体等が好適に用いられる。他成分樹脂の質量比率は、ポリプロピレン系樹脂の特性を十分に発現させるため、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0059】
また、原料樹脂はマテリアルリサイクルされた、いわゆるリサイクル樹脂であってもよい。マテリアルリサイクルする樹脂原料としては、スパンボンド法で溶融紡糸できるメルトフローレートであることが必要であるため、所望のメルトフローレートであるリサイクル原料を再度溶融して用いてもよいし、所望のメルトフローレートではない場合は、原料樹脂に有機過酸化物、アゾ系化合物、および、ニトロキシドからなる群から少なくとも1種のラジカル発生剤を添加して、原料樹脂の分子量を低下させてメルトフローレートを調整して用いてもよい。なお、リサイクル樹脂を使用することで、バージンの石油化学原料の使用量を削減でき、スパンボンド不織布の製造時における環境負荷を低減することができ、望ましい。
【0060】
前記の有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、ジベンゾイルパーオキシド、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジ-(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキシド等のジアシルパーオキシド類、t-ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のジアルキルパーオキシド類、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシカーボネート類が挙げられるが、中でもMFRの制御が容易なジアルキルパーオキシド類が好ましい。
【0061】
また、前記のアゾ系化合物としては、アゾビスイソブチロニトリルやアゾビスイソバレロニトリルが挙げられる。
【0062】
そして、前記のニトロキシドとしては、立体障害型ヒンダードヒドロキシルアミンエステルが挙げられる。
【0063】
前記の原料樹脂を直接、溶融紡糸する際には、単軸や2軸エクストルーダー型などの押出機を用いた手法を適用することができる。なお、前記のラジカル発生剤は、紡糸に供する前に押出機で混練してペレット化してポリプロピレン系樹脂としておいてもよいが、紡糸機の押出機を用いて紡糸時に原料樹脂とラジカル発生剤とを混練し、溶融紡糸と同時に前記のポリプロピレン系樹脂を得る方法を採ってもよい。
【0064】
本発明において、前記の分岐指数gを前記の範囲とするためには、分岐指数gが前記の該当するポリプロピレン系樹脂を用いる方法以外に、直鎖状のポリプロピレン系樹脂に分岐構造を持つ分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂をブレンドする方法、特開昭62-121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法、あるいは特許第2869606号公報に記載されているような方法などが好ましく用いられるが、中でも分岐指数gを容易に調整できることから、直鎖状のポリプロピレン系樹脂に、分岐鎖状のポリプロピレン系樹脂をブレンドする方法が好ましい。
【0065】
直鎖状のポリプロピレン系樹脂にブレンドする分岐鎖状のポリプロピレン系樹脂の添加量は、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。添加量を好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上とすることで、繊維中の結晶成長を阻害して、より微細な結晶とすることができ、そして、結晶配向が進みにくくなることで、繊維表面の軟化温度が低下して、スパンボンドの熱接着工程で繊維同士が強固に融着し、高強度のスパンボンド不織布とすることができる。一方、添加量が好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下とすることで、繊維中の結晶成長を必要以上に阻害せずにスパンボンドの熱接着性を維持したまま、糸強度を高めることができる。
【0066】
前記の分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Basell社製ポリプロピレン(例えば、タイプ名:「PF-814」、「PF-633」、「PF-611」、「SD-632」など)、Borealis社製ポリプロピレン(例えば、タイプ名:「WB130HMS」など)、Dow社製ポリプロピレン(例えば、タイプ名:「D114」、「D201」、「D206」など)などが挙げられる。
【0067】
なお、ここでいう分岐鎖状ポリプロピレンとは、カーボン原子10000個中に対し5箇所以下の内部3置換オレフィンを有するポリプロピレンのことを指すものとする。この内部3置換オレフィンの存在は1H-NMRスペクトルのプロトン比により確認することができる。
【0068】
ポリプロピレン系樹脂を溶融して紡糸する際の紡糸温度は、200℃以上270℃以下であることが好ましい。より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは220℃以上であり、また、より好ましくは260℃以下であり、さらに好ましくは250℃以下である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0069】
紡糸口金の背圧は、0.1MPa以上6.0MPa以下とすることが好ましい。背圧を好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.5MPa以上とすることで、吐出均一性が悪化して繊維径ばらつきが生じることを抑制することができる。一方、背圧を6.0MPa以下とすることにより、耐圧性を上げるための口金の大型化を防ぐことができる。紡糸口金の背圧は口金の吐出孔径や吐出孔深度、紡糸温度などにより調整することができ、なかでも吐出孔径の寄与が大きい。
【0070】
続いて、紡出された長繊維の糸条を冷却する。紡出された糸条を冷却する方法は、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整して採用することができる。
【0071】
冷却固化した糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。紡糸速度は、3500m/分以上6500m/分以下であることが好ましく、より好ましくは4000m/分以上6500m/分以下であり、さらに好ましくは4500m/分以上6500m/分である。紡糸速度を3500m/分以上6500m/分以下とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。通常では紡糸速度を上げていくと、紡糸性は悪化して糸状を安定して生産することができないが、特定の範囲のMFRを有するポリプロピレン系樹脂を用いることにより、意図するポリプロピレン繊維を安定して紡糸することができる。
【0072】
この後、得られた長繊維を、移動するネット上などに捕集して不織繊維ウェブを得る。ここで、高い紡糸速度で延伸すると、エジェクターから出た繊維が、高速の気流で制御された状態でネットに捕集されることとなり、繊維の絡みが少なく均一性の高い不織布が得られやすくなる。
【0073】
このとき、紡糸速度/ライン速度の比は、18以上とすることが、好ましい態様である。紡糸速度/ライン速度の比を好ましくは18以上、より好ましくは20以上とすることで、繊維が縦方向に配向した状態で移動するネット上に捕集でき、縦方向に強度が強い不織布を得ることができる。
【0074】
エジェクターから噴射された糸条の繊維の向きを一様に引き揃える方法としては、エジェクターとネットの間に角度をつけた平板を設置して糸条を誘導する方法、上記の平板に複数の角度の異なる溝を設けることにより、平板に沿って落下する糸条と溝に沿って落下する糸条に分離させて不織繊維ウェブ流れ方向に分散させ開繊する方法、およびエジェクター出口に複数の角度の異なる平板を櫛歯状に配列し、糸条をそれぞれの平板に沿って落下させることでより不織繊維ウェブ流れ方向に分散し、開繊する方法などが挙げられる。
【0075】
なかでも、エジェクター出口に複数の角度の異なる平板を櫛歯状に配列し、糸条をそれぞれの平板に沿って落下させることにより開繊する方法が、細繊維径の糸条を効率よく不織繊維ウェブ流れ方向に分散させ、極力減速させることなく制御された状態で開繊できることから、繊維の配向方向を揃えるためには、好ましい態様である。
【0076】
ネット上に繊維を捕集して得た不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防ぎ、糸条を捕集してから熱接着するまでの搬送性を改善することができる。
【0077】
そして、得られた不織繊維ウェブを熱接着することにより、意図するスパンボンド不織布を得ることができる。不織繊維ウェブを熱接着する方法は特に制限されないが、例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールを用いる方法や、ホーンの超音波振動を用いる方法(超音波接着)などが挙げられる。
【0078】
なかでも、生産性に優れ、部分的に設けられる接着部で強度を付与し、かつ、非接着部で不織布ならではの風合いや肌触りを保持することができることから、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい態様である。
【0079】
熱エンボスロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得て、かつ片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい態様である。
【0080】
熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5%以上30%以下であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上とし、より好ましくは8%以上とし、さらに好ましくは10%以上することにより、スパンボンド不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下とし、より好ましくは25%以下とし、さらに好ましくは20%以下とすることにより、実使用に適した適度な柔軟性を得ることができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
【0081】
ここでいう接着面積率とは、接着部がスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。具体的には、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合には、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織繊維ウェブに当接する部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(接着部)のスパンボンド不織布全体に占める割合のことを言う。
【0082】
熱エンボスロールや超音波接着による接着部の形状は特に制限されないが、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また接着部は、スパンボンド不織布の長手方向(搬送方向)と幅方向にそれぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、スパンボンド不織布の強度のばらつきを低減することができる。
【0083】
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、使用しているポリプロピレン系樹脂の融点(以降、Tm(℃)と記載することがある)に対し、-50℃以上-10℃以下低い温度(すなわち、(Tm-50℃)~(Tm-10℃))とすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度をポリプロピレン系樹脂の融点に対し好ましくは-50℃(すなわち、Tm-50℃、以下同様)以上とし、より好ましくは-45℃(Tm-45℃)以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度をポリプロピレン系樹脂の融点に対し好ましくは-10℃(Tm-10℃)以下とし、より好ましくは-15℃(Tm-15℃)以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、実使用での適度な柔軟性を得ることができる。
【0084】
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50N/cm以上500N/cm以下とすることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる強度のスパンボンド不織布を得ることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、実使用での適度な柔軟性を得ることができる。
【0085】
また、スパンボンド不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
【0086】
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、例えば、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
【0087】
本発明のスパンボンド不織布の製造方法では、得られたスパンボンド不織布に対して機能性薬剤を付与してもよい。機能性薬剤としては、親水剤、撥水剤、撥油剤、帯電防止剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、防臭剤、芳香剤、冷感剤等が挙げられるが、特に限定はない。
【0088】
機能性薬剤の付与方法は特に限定はなく、含浸、スプレー、キスロール等を用いることができる。
【実施例0089】
次に、実施例に基づき、本発明のスパンボンド不織布について具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0090】
[測定方法]
(1)ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(g/10分):
JIS K7210-1(2014)に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定した。
(2)ポリプロピレン系樹脂の分岐指数g(-):
ポリプロピレン系樹脂の分岐指数gは、示差屈折計(RI)と、粘度検出器(Viscometer)とを備えたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置として、Waters社製「Alliance GPC/V2000」を、GPCV解析ソフトとして、Waters社製「Millennium32」を、移動相溶媒として、1,2,4-トリクロロベンゼンにBASFジャパン株式会社製の酸化防止剤「Irganox1076」を0.5mg/mLの濃度で添加したものを、直鎖状のポリプロピレン樹脂として、日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP(登録商標) FY6」を用い、試料注入量(サンプルループ容量)を0.2175mLとして、前記した方法に従って測定を行った。
【0091】
(3)ポリプロピレン系樹脂のメソペンタッド分率(mmmm)(-)
ポリプロピレン系樹脂試料を溶媒に溶解し、13C-NMRを用いて、以下の条件にてメソペンタッド分率(mmmm)を求めた。なお、測定に当たっては、前記した文献の他、社団法人日本分析化学会・高分子分析研究懇談会編「新版 高分子分析ハンドブック」、紀伊國屋書店、1995年1月、p.609~611を参考にした。
A.測定条件
・装置:Bruker社製「DRX-500」
・測定核:13C核(共鳴周波数:125.8MHz)
・測定濃度:10質量%
・溶媒:ベンゼン/重オルトジクロロベンゼン=質量比1:3混合溶液
・測定温度:130℃
・スピン回転数:12Hz
・NMR試料管:5mm管
・パルス幅:45°(4.5μs)
・パルス繰り返し時間:10秒
・データポイント:64K
・換算回数:10000回
・測定モード:complete decoupling
B.解析条件
LB(ラインブロードニングファクター)を1.0としてフーリエ変換を行い、mmmmピークを21.86ppmとした。WINFITソフト(Bruker社製)を用いて、ピーク分割を行う。その際に、高磁場側のピークから以下のようにピーク分割を行い、さらに付属ソフトを用いてピークの自動フィッティングを行った。ピーク分割の最適化を行った上で、mmmmのピーク分率の合計を求めた。なお、上記測定を5回行い、その平均値を本試料のメソペンタッド分率(mmmm)とした。
・ピーク
(a)mrrm
(b)mrrr
(c)rrrr
(d)rmrm
(e)rmrr
(f)mmrm
(g)mmrr
(h)rmmr
(i)mmmr
(j)mmmm。
【0092】
(4)平均単繊維直径(μm):
走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社キーエンス製「VHX-D500」を用い、前記の方法によって測定した。
【0093】
(5)目付(g/m2):
JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m2当たりの質量(g/m2)で表した。
【0094】
(6)スパンボンド不織布の目付あたりの引張強力((N/25mm)/(g/m2)):
測定装置には株式会社エー・アンド・デイ(A&D)製「RTG-1250」を使用し、前記の方法により測定した。
【0095】
[実施例1]
(ポリプロピレン系樹脂)
直鎖状ポリプロピレン系樹脂として、MFRが200g/10分、分岐指数gが1.000、メソペンタッド分率(mmmm)が0.990のポリプロピレンを用いた。また、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂として、MFRが2.7g/10分、分岐指数gが0.600、メソペンタッド分率(mmmm)が0.940のポリプロピレン(Basell社製「Profax PF-814」)を用いた。これらの樹脂について、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が97質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が3質量%となるように混合し、MFRが197g/10分、分岐指数gが0.988、メソペンタッド分率が0.989、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得た。
【0096】
(スパンボンド不織布)
前記のポリプロピレン系樹脂を単軸押出機へ投入し、紡糸温度240℃で溶融させ、孔径φ0.40mmの矩形口金から、単孔吐出量が0.40g/分で紡出した。得られた糸条を冷却固化した後、さらに、矩形エジェクターにおいて、エジェクターから噴射される圧縮エアの圧力を0.45MPaとして、牽引し延伸した。この時の紡糸速度は、4019m/分であった。続いて、これを移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。引き続いて、得られた不織繊維ウェブを線圧が500N/cm、熱接着温度が140℃の条件で熱接着して、構成する繊維の平均単繊維直径が11.8μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。この時用いた熱エンボスロールは、上ロールが金属製で水玉柄の彫刻がなされた、接着面積率11%のエンボスロールであり、下ロールが金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールであった。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
[実施例2]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が96質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が4質量%となるように混合するように変えて、MFRが193g/10分、分岐指数gが0.984、メソペンタッド分率が0.988、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得たこと、実施例1の(スパンボンド不織布)において、単孔吐出量を0.50g/分、紡糸速度を4858m/分に変えたこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が12.0μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例3]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が92質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が8質量%となるように混合するように変えて、MFRが184g/10分、分岐指数gが0.968、メソペンタッド分率が0.986、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得たこと、実施例1の(スパンボンド不織布)において、単孔吐出量を0.50g/分、紡糸速度を5024m/分に変えたこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が11.8μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例4]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が89質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が11質量%となるように混合するように変えて、MFRが173g/10分、分岐指数gが0.956、メソペンタッド分率が0.985、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得たこと、実施例1の(スパンボンド不織布)において、単孔吐出量を0.60g/分、紡糸速度を3586m/分に変えたこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が15.3μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
[実施例5]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が90質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が10質量%となるように混合するように変えて、MFRが176g/10分、分岐指数gが0.960、メソペンタッド分率が0.958、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得たこと、実施例1の(スパンボンド不織布)において、単孔吐出量を0.60g/分、紡糸速度を3586m/分に変えたこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が15.3μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表1に示す。
【0101】
【0102】
[比較例1]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂として、MFRが200g/10分、分岐指数gが1.000、メソペンタッド分率(mmmm)が0.940のポリプロピレンのみを用い、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が11.8μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表2に示す。
【0103】
[比較例2]
実施例1の(ポリプロピレン系樹脂)において、直鎖状ポリプロピレン系樹脂として、MFRが200g/10分、分岐指数gが1.000、メソペンタッド分率(mmmm)が0.940のポリプロピレンを用い、直鎖状ポリプロピレン系樹脂が85質量%、分岐鎖状ポリプロピレン系樹脂が15質量%となるように混合するように変えて、MFRが166g/10分、分岐指数gが0.940、メソペンタッド分率が0.940、融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を得たこと、実施例1の(スパンボンド不織布)において、紡糸速度を3823m/分に変えたこと以外は実施例1と同様にして、構成する繊維の平均単繊維直径が12.1μm、目付が30g/m2のスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布について、縦方向、横方向の目付当たりの引張強力を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
【0105】
実施例1~5のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.950以上0.990以下であることで、目付あたりの引張強力は縦が1.4((N/25mm)/(g/m2))以上、横が0.4((N/25mm)/(g/m2))以上と、高強度のスパンボンド不織布を得た。
【0106】
一方、比較例1のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.995より大きいことで、熱接着工程における接着が強くなり、目付あたりの引張強力は弱いスパンボンド不織布となった。また、比較例2のスパンボンド不織布は、ポリプロピレン系樹脂の分岐指数gが0.950より小さいことで、糸強度が弱くなることで、目付あたりの引張強力は弱いスパンボンド不織布となった。
【0107】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。