(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009488
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】樹脂の溶解方法、溶解樹脂含有液の製造方法、石油化学原料の製造方法、石油製品の製造方法、及び石油製品の製造システム
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20230113BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20230113BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20230113BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
C10G1/10
C10G11/18
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112831
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100209347
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】千代田 範人
(72)【発明者】
【氏名】難波 照代
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA15
4F401AA16
4F401AA19
4F401AA20
4F401AA21
4F401AA22
4F401AA23
4F401AA24
4F401AA25
4F401AA26
4F401AC11
4F401CA22
4F401CA51
4F401CB15
4F401EA52
4F401EA53
4F401EA55
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4F401EA58
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA63
4F401EA68
4H129AA01
4H129BA04
4H129BB01
4H129BC06
4H129BC08
4H129BC37
4H129CA22
4H129DA04
4H129GA03
4H129KA02
4H129KB02
4H129NA43
(57)【要約】
【課題】複数の樹脂を含む混合物である廃プラスチックから、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解可能な樹脂の溶解方法及び溶解樹脂含有液の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法であって、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法であって、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法。
【請求項2】
前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶液とした後、前記溶液を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点未満の温度に冷却する、請求項1に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項3】
前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶液とした後、前記溶液を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点未満の温度に冷却する、請求項1又は2に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項4】
前記特定の樹脂は、塩素元素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項5】
前記混合物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項6】
前記特定の樹脂は、ポリ塩化ビニルであり、前記特定の樹脂以外の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項7】
前記溶媒は、2種以上の溶媒を含む混合溶媒である、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法を樹脂溶解工程として有する、溶解樹脂含有液の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程を含む、石油化学原料の製造方法。
【請求項10】
前記石油精製設備は、流動接触分解設備である、請求項9に記載の石油化学原料の製造方法。
【請求項11】
請求項8に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理することにより石油製品を製造する、石油製品の製造方法であって、
前記処理に必要なエネルギーとして、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼することにより得られるエネルギーを用いる、石油製品の製造方法。
【請求項12】
前記廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方の燃焼が、製油所設備外で行われる、請求項11に記載の石油製品の製造方法。
【請求項13】
前記廃棄物が、一般廃棄物である、請求項11又は12に記載の石油製品の製造方法。
【請求項14】
請求項8に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を処理することにより石油製品を製造する石油精製設備と、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼する燃焼設備と、前記燃焼設備と前記石油精製設備との間で前記燃焼設備により得られたエネルギーを伝達する手段と、を備える石油製品の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の溶解方法、溶解樹脂含有液の製造方法、石油化学原料の製造方法、石油製品の製造方法、及び石油製品の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
循環型社会形成の観点から、限りある天然資源の消費を抑制しつつ、循環資源を有効に使用することが求められている。天然資源の消費抑制を目的に、再生不能な天然資源の消費の抑制(リデュース)、使用済み天然資源の循環的な利用(リユース、リサイクル)が求められている。
このような観点から、廃棄物のリサイクル技術の開発は、近年の廃棄物の増加及び天然資源の消費抑制の観点から、非常に重要である。廃棄物のリサイクルの中でも天然資源である化石燃料から製造される廃プラスチックのリサイクル技術に対するニーズは高い。廃プラスチックのリサイクル技術の開発は、近年の廃棄物の増加及び限られた資源の有効利用の観点から重要課題の一つとなっている。廃プラスチックのリサイクル方法としては、廃プラスチックをそのまま再利用するマテリアルリサイクル、廃プラスチックを化学的に分解して、モノマー等の基礎化学原料を回収するケミカルリサイクル、廃プラスチックより熱エネルギーを回収するサーマルリサイクルの3つに大別される。
この中でもマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルは、廃プラスチックを製品の原料に変換して再利用可能であるため、資源の循環的利用により、限りある天然資源の消費を抑制し、埋め立て処理量を減らすなど、環境負荷軽減の観点から望ましい。
マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックをフレークやペレットという原料にした後、溶融、成形し、再び同じ製品又は別のプラスチック製品の樹脂材料として再利用する。
樹脂材料としての品質基準を満たすために、異物や汚れを取り除き、基本的に同一種類のプラスチックにする必要がある。マテリアルリサイクルでは、回収した廃プラスチックに異なる種類の廃プラスチックが混入すると、再生プラスチックの特性が低下するため、回収した廃プラスチックを高精度に分離する技術が必要となる。
ケミカルリサイクルでは、廃プラスチックを高温で熱分解して合成ガスや分解油などの化学原料を製造、又は化学的に分解してモノマーを製造するなど、他の化学物質に変換して再利用する。マテリアルリサイクルと比較して、種類の異なるプラスチックが混在していたり、異物や汚れがあったりしても、リサイクル可能である場合が多い。一方、種類の異なるプラスチックが混在している場合、工程上問題となることもある。
したがって、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルに適さない、廃プラスチックはサーマルリサイクルにより処理されているのが現状であり、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルに適する廃プラスチックを得るための分離技術が強く望まれている。
【0003】
廃プラスチックの分離技術として、特許文献1には、複数種類の材質を含む廃プラスチックから再利用プラスチックを選別する廃プラスチックの選別処理方法であって、材質による波長の吸収度の相違に基づいて前記再利用プラスチックを選別する材質選別工程と、材質による比重の相違に基づいて前記再利用プラスチックの純度を高める遠心分離工程と、を有し、前記材質選別工程及び前記遠心分離工程により、前記再利用プラスチックの少なくとも1種類を種類別の再利用プラスチックとして選別する、廃プラスチックの選別処理方法が開示されている。
【0004】
また、ケミカルリサイクルとして、特許文献2には炭化水素系重合体(樹脂)を流動接触分解装置にて分解処理する方法が開示されている。具体的には、樹脂と、流動接触分解ガソリン、軽質分解軽油、重質分解軽油、分解残渣油から選ばれる炭化水素油との混合物を流動接触分解原料油に混ぜ、流動接触分解装置に供給することを特徴とする樹脂の分解処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-170653号公報
【特許文献2】特開2002-294261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、材質選別工程、遠心分離工程という2つの工程が必要であり、効率的ではない。
また、特許文献2に記載の方法では、樹脂を含むスラリーに300℃程度に加熱した前記炭化水素油を混合し、樹脂を溶融していると考えられる。この方法では、300℃程度という高温で樹脂を溶融するための専用の溶解槽、並びに高温の溶融液を流動接触分解装置へ移送するための専用のラインが必要となり、既存の流動接触分解装置をそのまま活用することは困難である。さらに、前記スラリーに複数の樹脂が含まれる場合、全ての樹脂を溶融する必要があるため、流動接触分解装置や流動接触分解触媒に悪影響を与える樹脂由来の不純物が大量に混入する恐れがある。この場合、スラリーを調製する前に樹脂を選別分離する必要があり、効率的ではない。
さらに、特許文献2に記載の分解処理を行うために必要となる電力、スチーム等のエネルギーは、依然として天然資源である化石燃料から製造されている。したがって、特許文献2に記載の方法においても、天然資源の消費抑制の観点から充分ではない。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、複数の樹脂を含む混合物である廃プラスチックから、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解可能な樹脂の溶解方法及び溶解樹脂含有液の製造方法を提供することを課題とする。すなわち、本発明は、複数の樹脂を含む混合物である廃プラスチックから、特定の樹脂を固体として、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解樹脂含有液として効率的に分離する方法を提供することを課題とする。
また、複数の種類の樹脂を含む混合物から石油化学原料を製造する場合に、既存の石油精製設備がそのまま使用可能で、かつ前記混合物に含まれる樹脂の種類によらず、効率的に石油化学原料を製造することが可能な、石油化学原料の製造方法を提供することも課題とする。
さらに、従来の製造方法に比べ、化石燃料の消費を抑制可能な、原料油を石油精製設備で処理することによる石油製品の製造方法、及び石油製品の製造システムを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法であって、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法。
[1-1] 複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法であって、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記溶媒を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱した後、前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法。
[1-2] 複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法であって、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点未満の温度で前記溶媒と前記混合物とを接触させた後、前記溶媒と前記混合物の混合物を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱して前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法。
[2] 前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶液とした後、前記溶液を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点未満の温度に冷却する、[1]に記載の樹脂の溶解方法。
[3] 前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶液とした後、前記溶液を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点未満の温度に冷却する、[1]又は[2]に記載の樹脂の溶解方法。
[4] 前記特定の樹脂は、塩素元素を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂の溶解方法。
[5] 前記混合物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂の溶解方法。
[6] 前記特定の樹脂は、ポリ塩化ビニルであり、前記特定の樹脂以外の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂の溶解方法。
[7] 前記溶媒は、2種以上の溶媒を含む混合溶媒である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂の溶解方法。
[7-1] 前記特定の樹脂の種類と、前記特定の樹脂以外の樹脂の種類の和が2~8であり、2~5が好ましい、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-2] 前記特定の樹脂の種類が、1~3であり、1~2であることが好ましい、[1]~[5]、[7-1]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-3] 前記特定の樹脂以外の樹脂の種類が、1~5であり、1~3であることが好ましい、[1]~[5]、[7-1]、[7-2]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-4] 前記溶媒は、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超10以下であり、2.5以上10以下であることが好ましく、3以上10以下であることがより好ましい、[1]~[5]、[7-1]~[7-3]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-5] 前記溶媒は、前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が0.1以上1以下であり、0.1以上0.9以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることがより好ましい、[1]~[5]、[7-1]~[7-4]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-6] 前記特定の樹脂を溶解せずとは、前記特定の樹脂の総質量に対して1質量%未満が溶解することが好ましく、0.5質量%以下が溶解することがより好ましい、[1]~[5]、[7-1]~[7-5]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[7-7] 前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解するとは、前記特定の樹脂以外の樹脂の総質量に対して、80質量%以上が溶解することが好ましく、90質量%以上が溶解することがより好ましい、[1]~[5]、[7-1]~[7-6]のいずれか一項に記載の樹脂の溶解方法。
[8] [1]~[7]、[7-1]~[7-7]のいずれかに記載の樹脂の溶解方法を樹脂溶解工程として有する、溶解樹脂含有液の製造方法。
[9] [8]に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程を含む、石油化学原料の製造方法。
[10] 前記石油精製設備は、流動接触分解設備である、[9]に記載の石油化学原料の製造方法。
[11] [8]に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理することにより石油製品を製造する、石油製品の製造方法であって、
前記処理に必要なエネルギーとして、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼することにより得られるエネルギーを用いる、石油製品の製造方法。
[12] 前記廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方の燃焼が、製油所設備外で行われる、[11]に記載の石油製品の製造方法。
[13] 前記廃棄物が、一般廃棄物である、[11]又は[12]に記載の石油製品の製造方法。
[14] [8]に記載の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を処理することにより石油製品を製造する石油精製設備と、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼する燃焼設備と、前記燃焼設備と前記石油精製設備との間で前記燃焼設備により得られたエネルギーを伝達する手段と、を備える石油製品の製造システム。
[2-1] 複数の種類の樹脂を含む混合物から石油化学原料を製造する、石油化学原料の製造方法であって、前記複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶解樹脂含有液を得る、樹脂溶解工程と、前記溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製装置で処理する工程と、と含み、前記樹脂溶解工程は、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記溶媒を前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱した後、前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、石油化学原料の製造方法。
[2-2] 前記特定の樹脂は、塩素元素を含む、[2-1]に記載の石油化学原料の製造方法。
[2-3] 前記混合物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[2-1]又は[2-2]に記載の石油化学原料の製造方法。
[2-4] 前記特定の樹脂は、ポリ塩化ビニルであり、前記特定の樹脂以外の樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、[2-1]~[2-3]のいずれか一項に記載の石油化学原料の製造方法。
[2-5] 前記溶媒は、2種以上の溶媒を含む、[2-1]~[2-4]のいずれか一項に記載の石油化学原料の製造方法。
[2-6] 前記石油精製装置は、流動接触分解装置である、[2-1]~[2-5]のいずれか一項に記載の石油化学原料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の樹脂を含む混合物である廃プラスチックから、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解可能な樹脂の溶解方法を提供することができる。
また、前記樹脂の溶解方法を樹脂溶解工程として有する、溶解樹脂含有液の製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明によれば、複数の種類の樹脂を含む混合物から石油化学原料を製造する場合に、既存の石油精製設備がそのまま使用可能で、かつ前記混合物に含まれる樹脂の種類によらず、効率的に石油化学原料を製造することが可能な、石油化学原料の製造方法を提供することができる。
【0011】
本発明によれば、従来の製造方法に比べ、化石燃料の消費を抑制可能な、原料油を石油精製設備で処理することによる石油製品の製造方法、及び石油製品の製造システムを提供することができる。
【0012】
本発明によれば、溶解樹脂含有液に溶解した樹脂が析出しないので、常温(20℃±15℃)で、加熱することなく移送又は保管することができ、移送時又は保管時のエネルギー消費を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ハンセン溶解度パラメータ値及び相互作用半径の求め方を示す模式図である。
【
図2】物質1と物質2の2物質の溶解度パラメータ値間の距離を示す模式図である。
【
図3】物質1の物質2に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以内である場合を示す模式図である。
【
図4】物質1の物質2に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超である場合を示す模式図である。
【
図5】溶媒Lのハンセン溶解度パラメータと、樹脂P
A1、P
A2のハンセン球S(P
A1)、S(P
A2)と、P
B1、P
B2のハンセン球S(P
B1)、S(P
B2)の関係を示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る溶解樹脂含有液を含む原料油を処理する流動接触分解反応において使用される装置の構成を示す構成図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る分解油を精製する精製設備の構成を示す構成図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る石油製品の製造システムの構成を表す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0015】
本明細書において「原料油」は、各種石油精製設備で通常処理される原油由来の留分、廃棄物由来の樹脂、及びこれらの混合物を意味する。
本明細書において「石油製品」とは、各種石油精製設備で製造される、液化石油ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、ジェット燃料油、軽油、潤滑油ベースオイル、重油、及びアスファルト等の原油由来の製品、並びに芳香族化合物及びオレフィンなどの石油化学製品等を意味する。石油化学製品の詳細については後述する。
本明細書の「廃棄物」には、一般廃棄物と産業廃棄物の両方が含まれる。産業廃棄物とは、日本国法令(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で定められる20種類であり、一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物を意味する。但し、本明細書の「廃棄物」には、製油所設備の石油精製プロセスにおいて発生する廃液等の廃棄物は含まれない。すなわち、本明細書における「廃棄物」とは、一般廃棄物と製油所設備の石油精製プロセスにおいて発生する廃棄物を除く産業廃棄物を意味する。
【0016】
[樹脂の溶解方法]
本実施形態の樹脂の溶解方法は、複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法である。具体的には、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法である。本実施形態において、混合物は、複数の樹脂を含む廃プラスチックであることが好ましい。
以下、ハンセン溶解度パラメータ、及び前記相対的エネルギー差の求め方を説明する。
【0017】
<ハンセン溶解度パラメータ>
ハンセン溶解度パラメータ(Hansen solubility parameter(以下、単に「HSP」ともいう。)は、分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすいとの考えに基づいている。HSPは、分子間の分散力に由来するエネルギー(δd)、分子間の双極子相互作用に由来するエネルギー(δp)、及び分子間の水素結合に由来するエネルギー(δh)から構成される。これらの3つのパラメータは3次元空間(ハンセン空間)における座標とみなすことができる。
【0018】
HSP値が未知の評価試料におけるHSP値は以下の方法で算出することができる。
HSP値(δdm、δpm、δhm)を三次元空間にプロットすることにより特定されるハンセン溶解度パラメータ空間において、既知のHSP値を有する複数の標準物質をプロットするとともに、上記標準物質に対する評価試料の溶解性の有無によってハンセン球を特定し、当該ハンセン球の中心値を求めることで評価試料のHSP値を算出することが出来る(ハンセン球法)。標準物質は、一般に、既知のHSP値を有する純物質(1種の化合物からなる物質)であるが、HSP値が既知であれば、標準物質として混合物(2種以上の化合物からなる物質)を使用することもできる。溶解性の判断は、特に限定されず、種々の判断手法を使用することができるが、例えば、評価試料が液体の場合も固体の場合も目視により行うことができる。評価試料が液体の場合、標準試料と層分離しておらず、均一になっていることが確認できた場合、溶解性有りと判断することができる。評価試料が固体の場合、この固体が残存していないことを確認できた場合、溶解性ありと判断することができる。なお、溶解性の判断において、評価試料の溶解性有りとは、評価試料の全てが溶解した場合でもよく、評価試料の総質量に対して90質量%以上が溶解した場合でもよく、評価試料の総質量に対して80質量%以上が溶解した場合でもよい。中でも評価試料の全てが溶解した場合を溶解性有りと判断することが好ましい。また評価試料のHSP値は、平均分子構造の情報から原子団寄与法を用いて算出することも出来る。
ハンセン球法の場合も、原子団寄与法の場合も、評価試料のHSP値を算出する場合、例えばコンピューターソフトウェアHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)を使用して算出することができる。
本実施形態においては、ハンセン球法により評価試料におけるHSP値を求めることが好ましい。
ハンセン球法の場合、評価試料は純物質であってもよく、混合物であってもよい。
【0019】
上記ハンセン球の中心値、すなわちHSP値(δd
m、δp
m、δh
m)の求め方について、
図1を用いて説明する。
先ず、
図1に例示する(分散力項δd、双極子間力項δp及び水素結合力項δhを座標軸とする)三次元空間に既知のHSP値を有する15~30個の標準物質のHSP値をプロットする。
このとき、
図1に示すように、例えば、評価試料に溶解性を示す標準物質を○印、評価試料に溶解性を示さない標準物質を×印で表記する。次いで、プロットされた評価試料の溶解性に基づき、溶解性を示した標準物質(
図1で○印で示す)を包含し、かつ溶解性を示さなかった標準物質(
図1に×印で示す)を包含しない仮想球のうち、最小半径を有するものを(
図1に球状に示す)ハンセン球Sとして求める。
上記ハンセン球Sを成す半径(上記最少半径)が図中に○印で示す標準物質を溶解し相溶性を示す相互作用半径R
0となり、また、得られたハンセン球Sの中心値(δd
m、δp
m、δh
m)が評価試料のHSP値となる。
ハンセン球を求めるために使用する上記標準物質のHSP値としては例えば、分散力項δdが10~25MPa
1/2であり、双極子間力項δpが0~20MPa
1/2であり、水素結合力項δhが0~20MPa
1/2である。
【0020】
本発明の一つの側面としては、標準物質のHSP値としては、分散力項δdが13.0~22.0MPa1/2であり、双極子間力項δpが0.0~20.0MPa1/2であり、水素結合力項δhが0.0~20.0MPa1/2であることが好ましく、分散力項δdが13.5~21.0MPa1/2であり、双極子間力項δpが0.0~16.6MPa1/2であり、水素結合力項δhが0.0~19.5MPa1/2であることがより好ましい。
【0021】
本発明の一つの側面としては、標準物質として、ジメチルスルホキシド(DMSO)(δd=15.9MPa1/2,δp=15.5MPa1/2,δh=7.7MPa1/2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(δd=14MPa1/2,δp=7.4MPa1/2,δh=9.5MPa1/2)、1-オクタノール(δd=13.8MPa1/2,δp=4.7MPa1/2,δh=8.5MPa1/2)、1-メチルイミダゾール(δd=17MPa1/2,δp=14.8MPa1/2,δh=8.5MPa1/2)、サリチルアルデヒド(δd=16.4MPa1/2,δp=9.9MPa1/2,δh=9.1MPa1/2)、エチレングリコール(δd=14.7MPa1/2,δp=10.4MPa1/2,δh=19.7MPa1/2)、マロン酸ジメチル(δd=13.9MPa1/2,δp=7.3MPa1/2,δh=6.3MPa1/2)、N-メチルホルムアミド(δd=15MPa1/2,δp=17.8MPa1/2,δh=12MPa1/2)、m-クレゾール(δd=16MPa1/2,δp=6.1MPa1/2,δh=10.4MPa1/2)、N-メチル-2-ピロリドン(Nmp)(δd=15.6MPa1/2,δp=11.6MPa1/2,δh=5.4MPa1/2)、γ-ブチロラクトン(Gbl)(δd=15.6MPa1/2,δp=15.7MPa1/2,δh=5.6MPa1/2)、ベンジルアルコール(δd=15.9MPa1/2,δp=6MPa1/2,δh=10.4MPa1/2)、ニトロベンゼン(δd=17.3MPa1/2,δp=10MPa1/2,δh=2.3MPa1/2)、安息香酸エチル(δd=15.5MPa1/2,δp=5.9MPa1/2,δh=4.5MPa1/2)、ホルムアミド(δd=14.9MPa1/2,δp=24.8MPa1/2,δh=14.4MPa1/2)、フェニルアセトニトリル(δd=16.9MPa1/2,δp=11.6MPa1/2,δh=2.9MPa1/2)、キノリン(δd=17.7MPa1/2,δp=5.3MPa1/2,δh=4.3MPa1/2)、フェニルヒドラジン(δd=17.6MPa1/2,δp=6.1MPa1/2,δh=10.6MPa1/2)、1,1,2,2-テトラブロモエタン(δd=18.2MPa1/2,δp=6.6MPa1/2,δh=6.2MPa1/2)、1-メチルナフタレン(δd=17MPa1/2,δp=0.8MPa1/2,δh=3.6MPa1/2)、グリセロール(δd=15MPa1/2,δp=10.7MPa1/2,δh=20.6MPa1/2)、安息香酸ベンジル(δd=17.3MPa1/2,δp=4.8MPa1/2,δh=3.9MPa1/2)を使用して評価試料のハンセン球を求めることが好ましい。
【0022】
また、溶解性は温度に依存するため、上記ハンセン球を求める際は、実際に樹脂の溶解を行う温度にて溶解性試験を行うことが好ましい。このような温度としては、例えば、180℃が例として挙げられる。
【0023】
次に
図2は、物質1と物質2の2物質の溶解度パラメータ間の距離を示す模式図である。まず、物質1と物質2のハンセン球を上述の方法で求める。物質1のHSP値を(δd
1、δp
1、δh
1)とし、物質2のHSP値を(δd
2、δp
2、δh
2)とした時に、2物質間のHSP値の距離(以下、単に「Ra」ともいう。)は、下式1により算出することができる。
Ra={4×(δd
1-δd
2)
2+(δp
1-δp
2)
2+(δh
1-δh
2)
2}
0.5 式1
【0024】
物質1の物質2に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差(以下、単に「RED」ともいう。)は、物質2の相互作用半径をR0としたときに下式2により算出することができる。
RED=Ra/R0 式2
【0025】
図3は、物質1の物質2に対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1以内である場合を示す模式図である。この場合、
図3に示す通り、物質1のHSP値(δd
1、δp
1、δh
1)が、物質2のハンセン球S2の内側(球の表面も含む)に位置することになる。
【0026】
図4は、物質1の物質2に対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1超である場合を示す模式図である。この場合、
図4に示す通り、物質1のHSP値(δd
1、δp
1、δh
1)が、物質2のハンセン球のS2の外側(球の表面は含まない)に位置することになる。
【0027】
本実施形態の樹脂の溶解方法は、複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解方法である。具体的には、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解させる、樹脂の溶解方法である。
前記特定の樹脂は1種でも複数でもよい。前記特定の樹脂以外の樹脂は1種でも複数でもよい。
以下、前記特定の樹脂を「樹脂A」、前記特定の樹脂以外の樹脂を「樹脂B」という。
本実施形態では樹脂Aと樹脂Bを含む混合物から、樹脂Bのみを溶解する。
【0028】
<溶媒の選択方法>
樹脂Aは、樹脂PA1~PAxからなり、樹脂Bは、樹脂PB1~PByからなる。xは、樹脂Aを構成する樹脂の種類の数を表し、1以上の整数である。yは、樹脂Bを構成する樹脂の種類の数を表し、1以上の整数である。
xの値は特に限定されないが、前記溶媒の選定が容易になる観点から、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。yの値は特に限定されないが、前記溶媒の選定が容易になる観点から、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。前記x+yの値は特に限定されないが、前記溶媒の選定が容易になる観点から、2~8であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。
【0029】
上述の方法により、樹脂PA1~PAxのハンセン球S(PA1)~S(PAx)をそれぞれ求める。そして、得られたハンセン球S(PA1)~S(PAx)から、樹脂PA1~PAxのHSP値[δd(PA1)、δp(PA1)、δh(PA1)]~[δd(PAx)、δp(PAx)、δh(PAx)]及び相互作用半径R0(PA1)~R0(PAx)をそれぞれ求める。
同様にPB1~PByのハンセン球S(PB1)~S(PBy)をそれぞれ求める。そして、得られたハンセン球S(PB1)~S(PBy)から、樹脂PB1~PByのHSP値[δd(PB1)、δp(PB1)、δh(PB1)]~[δd(PBy)、δp(PBy)、δh(PBy)]及び相互作用半径R0(PB1)~R0(PBy)をそれぞれ求める。
【0030】
選択する溶媒LのHSP値を仮の値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]とする。
樹脂PA1~PAxのHSP値[δd(PA1)、δp(PA1)、δh(PA1)]~[δd(PAx)、δp(PAx)、δh(PAx)]をそれぞれ前記式1の(δd2、δp2、δh2)に代入し、溶媒LのHSP値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]を前記式1の(δd1、δp1、δh1)に代入し、Ra(PA1)~Ra(PAx)をそれぞれ求める。得られたRa(PA1)~Ra(PAx)は、δd(L)、δp(L)、δh(L)の関数となる。そして、PA1~PAxの相互作用半径R0(PA1)~R0(PAx)及び得られたRa(PA1)~Ra(PAx)をそれぞれ前記式2に代入し、RED(PA1)~RED(PAx)を求める。得られたRED(PA1)~RED(PAx)は、δd(L)、δp(L)、δh(L)の関数となる。
【0031】
同様に、樹脂PB1~PByのHSP値[δd(PB1)、δp(PB1)、δh(PB1)]~[δd(PBy)、δp(PBy)、δh(PBy)]をそれぞれ前記式1の(δd2、δp2、δh2)に代入し、溶媒LのHSP値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]を前記式1の(δd1、δp1、δh1)に代入し、Ra(PB1)~Ra(PBy)をそれぞれ求める。得られたRa(PB1)~Ra(PBy)は、δd(L)、δp(L)、δh(L)の関数となる。そして、PB1~PByの相互作用半径R0(PB1)~R0(PBy)及び得られたRa(PB1)~Ra(PBy)をそれぞれ前記式2に代入し、RED(PB1)~RED(PBy)を求める。得られたRED(PB1)~RED(PBy)は、δd(L)、δp(L)、δh(L)の関数となる。
【0032】
本実施形態においては、RED(P
A1)~RED(P
Ax)の全てが1超であり、かつRED(P
B1)~RED(P
By)の全てが1以下となる、HSP値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]を有する溶媒Lを選択する。
図5にxが2、yが2の場合の溶媒LのHSP値と、樹脂P
A1、P
A2のハンセン球S(P
A1)、S(P
A2)と、樹脂P
B1、P
B2のハンセン球S(P
B1)、S(P
B2)の関係を示す。
図5に示されるように、溶媒LのHSP値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]は、樹脂P
A1、P
A2のハンセン球S(P
A1)、S(P
A2)の外側(球の表面は含まない)に位置し、かつ樹脂P
B1、P
B2のハンセン球S(P
B1)、S(P
B2)の内側(球の表面も含む)に位置する。
【0033】
本実施形態においては、RED(PA1)~RED(PAx)の全てが1超であり、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。RED(PA1)~RED(PAx)の全てが前記下限値超(以上)であると、樹脂Aを構成する樹脂PA1~PAxの溶媒Lによる溶解が抑制される。RED(PA1)~RED(PAx)の上限値は特に限定されないが、例えば10以下である。
RED(PA1)~RED(PAx)の全てが1超10以下であることが好ましく、2.5以上10以下であることがより好ましく、3以上10以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本実施形態においては、RED(PB1)~RED(PBy)の全てが1以下であり、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。RED(PB1)~RED(PBy)の全てが前記上限値以下であると、樹脂Bを構成する樹脂PB1~PByの溶媒Lによる溶解が促進される。RED(PB1)~RED(PBy)の下限値は特に限定されないが、例えば0.1以上である。
RED(PB1)~RED(PBy)の全てが0.1以上1以下であることが好ましく、0.1以上0.9以下であることがより好ましく、0.1以上0.8以下であることがさらに好ましい。
【0035】
溶媒LのHSP値と樹脂PA1~PAxそれぞれのHSP値の距離であるRa(PA1)~Ra(PAx)は、RED(PA1)~RED(PAx)の全てが1超である限り特に限定されないが、例えば5MPa1/2以上が好ましく、10MPa1/2以上がより好ましい。Ra(PA1)~Ra(PAx)の上限値は特に限定されないが、例えば、20MPa1/2以下である。
Ra(PA1)~Ra(PAx)は、5MPa1/2以上20MPa1/2以下であることが好ましく、10MPa1/2以上15MPa1/2以下であることがより好ましい。
【0036】
溶媒LのHSP値と樹脂PB1~PByそれぞれのHSP値の距離であるRa(PB1)~Ra(PBy)は、RED(PB1)~RED(PBy)の全てが1以下である限り特に限定されないが、例えば8MPa1/2以下が好ましく、5MPa1/2以下がより好ましい。Ra(PB1)~Ra(PBy)の下限値は特に限定されないが、例えば、2MPa1/2以上である。
Ra(PB1)~Ra(PBy)は、2MPa1/2以上8MPa1/2以下であることが好ましく、3MPa1/2以上5MPa1/2以下であることがより好ましい。
【0037】
RED(PB1)~RED(PBy)の全てが1以下となるようなHSP値[δd(L)、δp(L)、δh(L)]を有する溶媒Lを選択するためには、yが2以上の場合において、樹脂PB1~PByのハンセン球S(PB1)~S(PBy)の全てが重なる部分を有することを意味する。
すなわち、樹脂Bから無作為に、y=c、y=dである樹脂PBc、PBdを選択したときに、PBcのHSP値[δd(PBc)、δp(PBc)、δh(PBc)]及びPBdのHSP値[δd(PBd)、δp(PBd)、δh(PBd)]を前記式1の(δd1、δp1、δh1)及び(δd2、δp2、δh2)にそれぞれを代入して得られるRa(PBc-PBd)と、PBcの相互作用半径R0(PBc)と、PBdの相互作用半径R0(PBd)との関係が下式3を満たす。
{R0(PBc)+R0(PBd)}≧Ra(PBc-PBd) 式3
【0038】
前記式3を満たさない樹脂PB1~PByの組み合わせがあるときは、樹脂Bの樹脂を適宜選択し直せばよい。すなわち、樹脂Bを構成するPB1~PByから任意の樹脂を除き、前記式3を満たすようにする。この場合、前記除かれた樹脂は、樹脂Aを構成することになる。
【0039】
<樹脂>
本実施形態の混合物に含まれる樹脂の種類としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン等のポリスルホン樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11等のポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;アルキド樹脂等が挙げられる。
本実施形態の混合物に含まれる樹脂の質量平均分子量は、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、例えば10,000~100,000でもよく、100,000~1,000,000でもよい。なお、本願の発明者らは、樹脂の質量平均分子量が変わっても、HSP値は実質的に変化しないことを確認している。すなわち、HSP値は基本的に樹脂の種類のみに依存するため、同一種類の樹脂で質量平均分子量が異なる場合は、本発明において、同一のHSP値を使用することができる。
本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値を意味する。
【0040】
また、本実施形態の樹脂としては30℃以下で固体である。樹脂の形態は、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、ペットボトル等の包装体状に成形された成形体、ペレット状、フレーク状等が挙げられる。樹脂の大きさは、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、その長径が1~100mm程度である。
このような樹脂の中から、後述の用途に応じ、樹脂A、樹脂Bを任意に選択することができる。
【0041】
<溶媒>
本実施形態の溶媒としては、RED(PA1)~RED(PAx)の全てが1超であり、かつRED(PB1)~RED(PBy)の全てが1以下となるHSP値を有する限り、特に限定されない。溶媒としては、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル等のエステル類、アセトン、ジイソブチルケトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2ピロリドン等のケトン類、ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、2-メトキシテトラヒドロピラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-炭酸グリセロール等のカーボネート基を有する有機溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、n-ペンタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、1-オクタデセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロヘキセン、エチルベンゼン、d-リモネン、l-リモネン等の炭化水素等が例として挙げられる。
【0042】
溶媒は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。すなわち、本実施形態の溶媒は2種以上の溶媒の混合物(以下、「混合溶媒」ともいう。)でもよい。混合溶媒としては、上記で列記した2種以上溶媒の混合物が挙げられる。
【0043】
その他の混合溶媒としては、常圧残渣油、減圧軽油、減圧残渣油、脱硫常圧残渣油、脱硫減圧軽油、軽質分解軽油、重質分解軽油等の原油の精製工程で得られる石油留分;大豆油、菜種油、ひまわり油、とうもろこし油、綿実油、落花生油、オリーブ油、パーム油、ゴマ油、コメ油、オレンジ油等の植物油及びこれらの廃油であってもよい。また、これらの混合溶媒にさらに上述の溶媒を混合してもよい。
【0044】
混合溶媒を本実施形態の溶媒として用いる場合、混合溶媒のHSP値は、上述の方法により求めてもよいし、以下のように混合溶媒を構成する溶媒のHSP値を加重平均して求めてもよい。
混合溶媒Lが、溶媒L1~Lzからなり、混合溶媒の混合前のすべての溶媒の体積の合計に対する溶媒L1~Lzの体積の割合をそれぞれ、V(L1)~V(Lz)とする。溶媒L1~LzのHSP値をそれぞれ、[δd(L1)、δp(L1)、δh(L1)]~[δd(Lz)、δp(Lz)、δh(Lz)]とすると、混合溶媒のHSP値である[δd(L)、δp(L)、δh(L)]は、下式4~6により求めることができる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
本実施形態においては、混合溶媒のHSP値は、前記式4~6によって求めることが好ましい。
【0049】
本実施形態の溶媒の沸点としては、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、例えば80~700℃でもよく、150~500℃でもよく、200~400℃でもよい。
本実施形態の溶媒の密度としては、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、例えば0.70~1.5g/cm3でもよく、0.80~1.2g/cm3でもよく、0.85~1.2g/cm3でもよい。
【0050】
<樹脂A、樹脂Bと溶媒Lの組み合わせ>
本実施形態においては、樹脂Aは、塩素元素を含むことが好ましい。また、本実施形態においては、樹脂B及び溶媒Lは塩素元素を含まないことが好ましい。本実施形態の樹脂の溶解方法及び溶解樹脂含有液の製造方法により得られる溶解樹脂含有液を後述のケミカルリサイクルの原料として用いる場合、溶解樹脂含有液中に塩素元素が含まれていると、ケミカルリサイクルのプロセス中で塩化水素が発生し、ケミカルリサイクルに使用される機器を腐食するおそれがある。例えば、本実施形態の樹脂溶解工程で得られる溶解樹脂含有液を含む原料油を、後述のように石油精製設備で処理する際、溶解樹脂含有液中に塩素元素が含まれていると、石油精製設備で処理する工程中で塩化水素が発生し、石油精製設備を腐食するおそれがある。樹脂Aが塩素元素を含み、樹脂B及び溶媒Lが塩素元素を含まないことにより、得られる溶解樹脂含有液中に塩素元素が含まれないことになり、前記機器の腐食を防止することが可能となる。例えば、樹脂Aが塩素元素を含み、樹脂B及び溶媒Lが塩素元素を含まないことにより、得られる溶解液中に塩素元素が含まれないことになり、石油精製設備の腐食を防止することが可能となる。
また、溶媒Lの沸点は、樹脂Bのうち最も融点が高い樹脂の融点よりも高いことが好ましい。溶媒Lの沸点が樹脂Bのうち最も融点が高い樹脂の融点よりも高いと、加圧することなく常圧(約1013hPa)で樹脂を溶解できる。
【0051】
本実施形態の混合物に含まれる樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリ塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。
【0052】
樹脂Aを構成する樹脂をポリプロピレン、ポリ塩化ビニルとし、樹脂Bを構成する樹脂をポリエチレン、ポリスチレンとしたときに、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒としては、安息香酸ブチル、酢酸ベンジルが例として挙げられる。
【0053】
樹脂Aを構成する樹脂をポリエチレン、ポリプロピレンとし、樹脂Bを構成する樹脂をポリスチレン、ポリ塩化ビニルとしたときに、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒としては、N-メチルピロリドン等が例として挙げられる。
【0054】
樹脂Aを構成する樹脂をポリプロピレンとし、樹脂Bを構成する樹脂をポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルとしたときに、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒としては、安息香酸エチル等が例として挙げられる。
【0055】
樹脂Aを構成する樹脂をポリ塩化ビニルとし、樹脂Bを構成する樹脂をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンとしたときに、180℃において、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒としては、重質分解軽油(HCO)、軽質分解軽油(LCO)、1-オクタノール等が例として挙げられる。
【0056】
(樹脂溶解の条件)
本実施形態の樹脂の溶解方法において、溶媒の総質量に対する混合物の割合は、樹脂Bを溶解可能な限り特に限定されないが、例えば、1~50質量%でもよく、1~40質量%でもよく、1~30質量%でもよい。
本実施形態の樹脂の溶解方法において、溶媒の総質量に対する樹脂Bの割合は、樹脂Bを溶解可能な限り特に限定されないが、例えば、1~20質量%でもよく、1~18質量%でもよく、1~15質量%でもよい。
【0057】
本実施形態の樹脂の溶解方法において、溶媒を樹脂Bのうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱した後、溶媒と樹脂Bを接触させる場合において、樹脂Bが1種類の樹脂のみから構成されるときは、その樹脂の融点以上の温度に、樹脂Bが2種類以上の樹脂から構成されるときは、その2種類以上の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に、溶媒を加熱する。
この場合において、樹脂Bを溶解するときの温度は、樹脂Bが1種類の樹脂のみから構成される場合は、その樹脂の融点以上であり、樹脂Bが2種類以上の樹脂から構成される場合は、その2種類以上の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度である。樹脂Bを溶解するときの温度の上限は、特に限定されないが、樹脂Aの軟化点又は融点未満、かつ、溶媒の沸点未満が好ましい。
本実施形態の樹脂の溶解方法において、溶媒と樹脂Bを接触させた後、溶媒及び樹脂Bを樹脂Bのうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱する場合において、樹脂Bが1種類の樹脂のみから構成されるときは、その樹脂の融点以上の温度に、樹脂Bが2種類以上の樹脂から構成されるときは、その2種類以上の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に、溶媒及び樹脂を加熱する。溶媒及び樹脂Bを加熱するときの温度の上限は、特に限定されないが、樹脂Aの軟化点又は融点未満、かつ、溶媒の沸点未満が好ましい。
樹脂Bを溶解するときには、撹拌、超音波処理等を行うことが好ましい。
【0058】
本実施形態の樹脂の溶解方法においては、樹脂Bの全てが溶解されることが好ましいが、樹脂Bの総質量に対して80~100質量%が溶解してもよく、90~100質量%が溶解してもよい。
本実施形態の樹脂の溶解方法においては、樹脂Aが溶解されないことが好ましいが、樹脂Aの総質量に対して0質量%以上1質量%未満が溶解してもよく、0~0.5質量%が溶解してもよい。
【0059】
樹脂の溶解量は、例えば、ハロゲン元素等のヘテロ原子を含む樹脂であれば、溶解液中のヘテロ原子の含有量を測定することにより、確認することができる。ヘテロ原子を含まない樹脂の溶解量は、従来公知の分析方法により測定することが可能であり、当該分析方法としては、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフ質量分析法、ゲル濾過浸透クロマトグラフィーが例として挙げられる。
【0060】
(樹脂溶解後の冷却)
本実施形態の樹脂の溶解方法において、樹脂Bを溶媒に溶解した後、樹脂Bを溶媒に溶解した溶液を、冷却してもよい。冷却目標温度は、樹脂Bが1種類の樹脂のみから構成される場合は、その樹脂の融点未満の温度が好ましく、樹脂Bが2種類以上の樹脂から構成される場合は、その2種類以上の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点未満の温度、又はその2種類以上の樹脂のうち最も融点が低い樹脂の融点未満の温度が好ましく、例えば、常温(20℃±15℃)がより好ましい。
本実施形態の樹脂の溶解方法で得られる樹脂Bを溶媒に溶解した溶液は、冷却した場合であっても樹脂Bが析出しないので、樹脂Bを溶解したままに維持するために加熱する必要がない。
【0061】
(推定メカニズム)
本発明者らは、樹脂Bを前記溶媒に接触処理させて溶解する前に前記溶媒の温度を、樹脂Bが1種類の樹脂のみから構成される場合は、その樹脂の融点以上の温度に、樹脂Bが2種類以上の樹脂から構成される場合は、その2種類以上の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度に加熱し、その後樹脂Bを前記溶媒に接触処理させて溶解することで、樹脂の分子間に溶媒が入り込みやすくなり、樹脂Bの結晶性が高い場合であっても、溶液の冷却後にも樹脂が溶媒に溶解した状態を維持できるものと推定している。
【0062】
[溶解樹脂含有液の製造方法]
本実施形態の溶解樹脂含有液の製造方法は、上述の樹脂の溶解方法を樹脂溶解工程として有する。溶解樹脂含有液として、樹脂Aが溶解せず、樹脂Bのみが溶解した溶解樹脂含有液を得ることができる。
【0063】
<樹脂の溶解方法及び溶解樹脂含有液の製造方法の用途>
本実施形態の樹脂の溶解方法及び溶解樹脂含有液の製造方法の用途としては、樹脂Aを利用する用途、樹脂Bを利用する用途の2種類に大別される。
【0064】
(樹脂Aを利用する方法)
本実施形態の樹脂の溶解方法により溶け残った樹脂Aを利用する用途としては、マテリアルリサイクルが例として挙げられる。
本明細書において「マテリアルリサイクル」とは、1種類の樹脂からなる廃プラスチックをプラスチック原料としてプラスチック製品に再生するリサイクル方法を意味する。
【0065】
樹脂Aをマテリアルリサイクルする場合、まず本実施形態の樹脂の溶解方法により得られた溶解樹脂含有液を固液分離することにより、樹脂Aを分取する。得られた樹脂Aを洗浄及び乾燥することにより樹脂Aを固体として得る。得られた樹脂Aを本分野で公知のマテリアルリサイクル法により処理することができる。
マテリアルリサイクルでは、樹脂Aは1種類であることが好ましい。マテリアルリサイクルで使用される樹脂Aとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリル樹脂等が好ましい。
【0066】
(樹脂Bを利用する方法)
本実施形態の樹脂の溶解方法により溶解した樹脂Bを利用する用途としては、ケミカルリサイクルが例として挙げられる。
本明細書において「ケミカルリサイクル」とは、複数の種類の樹脂を含む混合物である廃プラスチックを化学的に変換(分解等)することにより化学原料に再生するリサイクル方法を意味する。ケミカルリサイクルとしては、廃プラスチックを化学的に分解し、プラスチックやモノマーに戻す原料・モノマー化、廃プラスチックを製鉄所で還元剤として使用する高炉原料化、廃プラスチックをコークス炉で分解することにより、炭化水素油、コークス、コークス炉ガスを得るコークス炉化学原料化、廃プラスチックを熱で分解して合成ガスを得るガス化、廃プラスチックを熱で分解して合成ガスを得るガス化が例として挙げられる。
【0067】
樹脂Bをケミカルリサイクルする場合、まず本実施形態の樹脂の溶解方法により得られた固体の樹脂Aを含む溶解樹脂含有液を固液分離することにより、樹脂Aを分離し、樹脂Bが溶媒Lに溶解した溶解液を得る。そして、得られた溶解液をケミカルリサイクルの原料として使用することが好ましい。
【0068】
本実施形態においては、ケミカルリサイクルの中でも廃プラスチックを化学的に分解し、プラスチックやモノマーに戻す原料・モノマー化反応に前記溶解液を使用することが好ましい。原料・モノマー化反応を行う場合、本実施形態における複数の種類の樹脂を含む混合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリ塩化ビニルからなる樹脂を用いることが好ましく、樹脂Aとしてはポリ塩化ビニルを、樹脂Bとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンを選択することが好ましい。以下、ケミカルリサイクルの例として、石油化学原料の製造方法を説明する。
【0069】
[石油化学原料の製造方法]
本実施形態の石油化学原料の製造方法は、複数の種類の樹脂を含む混合物から石油化学原料を製造する、石油化学原料の製造方法であって、前記複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶解樹脂含有液を得る、樹脂溶解工程と、前記溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程とを含む。本実施形態において、混合物は、複数の樹脂を含む廃プラスチックであることが好ましい。
以下、樹脂溶解工程及び溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程について詳細に説明を行う。
【0070】
<樹脂溶解工程>
本実施形態の樹脂溶解工程は、複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解工程である。具体的には、前記特定の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1超であり、かつ前記特定の樹脂以外の樹脂に対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差が1以下である溶媒を選択し、前記特定の樹脂以外の樹脂のうち最も融点が高い樹脂の融点以上の温度で前記溶媒に前記混合物を接触処理させて前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解する、樹脂の溶解工程である。すなわち、上述の樹脂の溶解方法を樹脂溶解工程として有することが好ましい。
すなわち、本実施形態においては、上述の溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を使用することが好ましい。
【0071】
<溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程>
本実施形態においては、上述の樹脂溶解工程で得られた溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理し、石油化学原料を製造する。
【0072】
石油精製設備としては、特に限定されないが、常圧蒸留設備、減圧蒸留設備、流動接触分解設備、重質油熱分解設備、直接脱硫設備、間接脱硫設備、灯軽油脱硫設備、接触改質設備、異性化設備、水素化分解設備等が挙げられ、炭化水素を分解する設備であることが好ましく、流動接触分解設備、重質油熱分解設備、水素化分解設備がより好ましく、流動接触分解設備が最も好ましい。
以下、石油精製設備が流動接触分解設備である場合を例に、溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程について詳細に説明を行う。
【0073】
本実施形態においては、上述の樹脂溶解工程で得られた溶解樹脂含有液を含む原料油を流動接触分解設備に供給し、流動接触分解触媒と接触処理することにより、石油化学原料を含む分解油を製造する。
【0074】
<流動接触分解設備>
本実施形態の流動接触分解設備(以下、「FCC設備」ともいう。)は、流動接触分解触媒に前記溶解樹脂含有液を含む原料油を接触させて原料油を分解することによって石油化学原料を含む分解油を生成するライザー、分解油と流動接触分解触媒とを分離する反応塔、分離した流動接触分解触媒上に堆積したカーボン(コーク)を燃焼することによって触媒を再生する再生塔、及び精製設備を備える。以下、
図6を参照して、本実施形態のFCC設備の一例を説明する。
図6は、FCC設備の一例を示す構成図である。FCC設備1はライザー10、反応塔20、再生塔30、及び精製設備40を備える。
【0075】
(ライザー)
ライザー10は、流動接触分解触媒に溶解樹脂含有液を含む原料油を接触させて前記原料油を分解することによって石油化学原料を含む分解油を生成する装置である。ライザー10は、例えば、再生塔30で再生された流動接触分解触媒を供給する再生触媒移送ライン34及び通常の流動接触分解反応に供される原料油(以下、「流動接触分解原料油」ともいう。)を供給する流動接触分解原料油供給ライン11、及び溶解樹脂含有液を供給する溶解樹脂含有液供給ライン51と接続されている。また、流動接触分解原料油供給ライン上及び溶解樹脂含有液供給ライン上には、予熱装置12及び予熱器52が、それぞれ備えられている。さらにライザー10の上方は、反応塔20と接続されている。
【0076】
(反応塔)
反応塔20は、分解油と流動接触分解触媒とを分離する装置である。反応塔20は、例えば、サイクロン21、分解油排出ライン22、ストリッパー23及び反応後触媒移送ライン24を備える。サイクロン21の上方は、分解油排出ライン22と接続されている。さらにストリッパー23の底部と再生塔30の下部とは反応後触媒移送ライン24で接続されている。
【0077】
(再生塔)
再生塔30は、反応塔20で分離した流動接触分解触媒上のコークを燃焼させることによって触媒を再生する装置である。再生塔30は、例えば、エアブロワー31、エアグリッド32、サイクロン33、再生触媒移送ライン34及び排ガスライン35を備える。再生塔の底部とエアブロワー31はエアグリッド32を介して接続されている。さらに再生塔の上部にはサイクロン33が設置されており、サイクロン33の上方は排ガスライン35と接続されている。
【0078】
(精製設備)
精製設備40は、FCC設備で生成した石油化学原料を含む分解油を、石油化学原料を多く含むガス成分、及び未分解物や重合物を含む重質成分に分離する設備である。
図7に示すように、精製設備は、例えば、蒸留塔41、ライン42、蒸留塔43、ライン44、蒸留塔45、ライン46、蒸留塔47、ライン48、芳香族抽出装置60、ライン61、ライン62、ナフサクラッカー70、接触改質装置80を備える。蒸留塔41は塔の中段付近において分解油排出ライン22を介して反応塔20と接続されている。蒸留塔43は塔の中段付近においてライン42を介して蒸留塔41の塔頂と接続されている。蒸留塔45は塔の中段付近においてライン44を介して蒸留塔43の塔底と接続されている。蒸留塔47は塔の中段付近においてライン46を介して蒸留塔45の塔頂と接続されている。芳香族抽出装置60はライン48を介して蒸留塔45の塔底と接続されている。ナフサクラッカー70はライン61を介して芳香族抽出装置60と接続されている。接触改質装置80はライン62を介して芳香族抽出装置60と接続されている。
【0079】
蒸留塔41、蒸留塔43、蒸留塔45、蒸留塔47は、後述の分離を行う対象に応じて、本分野において公知の蒸留塔を使用することができる。芳香族抽出装置60は、後述の分離を行う対象に応じて、本分野において公知の芳香族抽出装置を使用することができる。ナフサクラッカー70及び接触改質装置80も同様に、本分野において公知のナフサクラッカー及び接触改質装置を使用することができる。
なお、蒸留塔の還流ライン、予熱器、缶出液抜出ライン、流出液抜出ライン等の詳細な構造は、
図7においては不図示であるが、上述した通り、蒸留塔は本分野において公知の蒸留塔の構造を有する。芳香族抽出装置、ナフサクラッカー、接触改質装置も同様である。
【0080】
<樹脂溶解槽>
樹脂溶解槽50は、複数の種類の樹脂を含む混合物を溶媒に接触処理させて、前記樹脂Bを溶解させる上述の樹脂溶解工程を行う装置である。
樹脂溶解槽としては、石油貯蔵タンクを使用することができる。
樹脂溶解槽50は、溶解樹脂含有液供給ライン51を通じてライザー10を接続されている。樹脂溶解槽50は、撹拌装置、溶解槽加熱器、固形物除去装置等を備えていることが好ましい。
【0081】
<流動接触分解触媒>
本実施形態の流動接触分解触媒(以下、「FCC触媒」ともいう。)は、ソーダライトケージ構造を有するゼオライト、βゼオライト、ZSM-5型ゼオライト等のゼオライトを含むことが好ましく、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを含むことがより好ましい。
FCC触媒全質量に対するゼオライトの含有量は25~45質量%であることが好ましく、28~42質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。
【0082】
本明細書において、ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとは、ソーダライトケージ構造、すなわちアルミニウム及びケイ素四面体を基本単位とし、頂点の酸素をアルミニウム又はケイ素が共有することにより形成される立体的な正八面体の結晶構造の各頂点を切り落とした、四員環や六員環等により規定される十四面体結晶構造により構成される空隙を有し、このソーダライトケージ同士が結合する場所や方法が変化することによって、種々の細孔構造、骨格密度、チャンネル構造を有するものを意味する。
【0083】
上記ソーダライトケージ構造を有するゼオライトとしては、ソーダライト、A型ゼオライト、EMT、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、安定化Y型ゼオライト等から選ばれる一種以上を挙げることができ、安定化Y型ゼオライトであることが好ましい。
【0084】
安定化Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトを出発原料として合成され、Y型ゼオライトと比較して、結晶化度の劣化に対して耐性を示すものであり、一般には、Y型ゼオライトに対し高温での水蒸気処理を数回行った後、必要に応じて、塩酸等の鉱酸、水酸化ナトリウム等の塩基、フッ化カルシウム等の塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤で処理することにより作製される。
上記方法で得られた安定化Y型ゼオライトは、水素、アンモニウムあるいは多価金属から選ばれるカチオンでイオン交換された形で使用することができる。また、安定化Y型ゼオライトとして、より安定性に優れたヒートショック結晶性アルミノシリケートゼオライト(特許第2544317号公報参照)を使用することもできる。
【0085】
本実施形態のFCC触媒は、さらに結合剤、粘土鉱物等を含むことが好ましい。
結合剤としては、例えば、シリカゾルが例として挙げられる。シリカゾルを使用することにより、FCC触媒を造粒するときの成形性が向上し、容易に球状化することを可能にする。また、造粒後のFCC触媒の流動性及び耐摩耗性を容易に向上することができる。
FCC触媒全質量に対する結合剤の含有量は15~35質量%であることが好ましく、18~32質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
粘土鉱物としては、例えば、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ベントナイト、アタパルガイト、ボーキサイト等を挙げることができる。また、本実施形態のFCC触媒においては、シリカ、シリカ-アルミナ(上述のゼオライトを除く)、アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、リン-アルミナ、シリカ-ジルコニア、シリカ-マグネシア-アルミナ等の通常のFCC触媒に使用される公知の無機酸化物の微粒子を上記粘土鉱物と併用することができる。
FCC触媒全質量に対する粘土鉱物と無機酸化物の含有量の和は35~55質量%であることが好ましく、38~52質量%であることがより好ましく、40~50質量%であることがさらに好ましい。
FCC触媒全質量に対する粘土鉱物の含有量は25~50質量%であることが好ましく、30~45質量%であることがより好ましく、32~42質量%であることがさらに好ましい。
【0087】
また、本実施形態のFCC触媒は、ゼオライト安定性向上剤を含んでいてもよい。ゼオライト安定性向上剤は、ゼオライト結晶の崩壊を抑制する機能を有する。ゼオライト安定性向上剤としてはリン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、第一リン酸アルミニウム及びその他の水溶性リン酸塩等のリン系ゼオライト安定性向上剤、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ディスプロシウム及びホルミウム等の希土類金属系ゼオライト安定性向上剤があげられる。FCC触媒がゼオライト安定性向上剤を含む場合、FCC触媒全質量に対するゼオライト安定性向上剤の含有量は、0.1~5質量%であることが好ましい。
【0088】
FCC触媒は一定の大きさに造粒された上で、流動接触分解反応に使用される。FCC触媒の粒子径は、通常流動接触分解反応に使用可能な粒子径であれば、特に制限されないが、粒子径が20~150μmの範囲内にあるものが好ましい。
FCC触媒の粒子径は、例えば、筒井理化学器械製“ミクロ形電磁振動ふるい器 M-2型”により測定することができる。
【0089】
<流動接触分解触媒の製造方法>
本実施形態のFCC触媒は、従来公知の方法により製造することができる。FCC触媒が、ゼオライト、結合剤、粘土鉱物、ゼオライト安定性向上剤を含有する場合、ゼオライト、結合剤、粘土鉱物、ゼオライト安定性向上剤をそれぞれ所定量含むスラリーを乾燥処理することにより製造することができる。
【0090】
本製造方法においては、まず、ゼオライト、結合剤、粘土鉱物、及びゼオライト安定性向上剤を含む水性スラリーを調製する。
前記スラリー中の固形分の含有量は5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。水性スラリー中の固形分の含有量が前記範囲内であると、水性スラリーの乾燥時に蒸発させる水分量が適当量となり、簡便に乾燥を行うことができる。また、スラリーの粘度上昇を招くことなく、簡便に輸送することができる。
【0091】
その後水性スラリーを乾燥処理して、微小球体を得る。
水性スラリーの乾燥は、噴霧乾燥装置により、200~600℃のガス入口温度、及び100~300℃のガス出口温度の条件下に行うことが好ましい。
【0092】
本製造方法においては、上記乾燥処理して得られた微小球体に対し、さらに必要に応じて、公知の方法で洗浄処理及びイオン交換を行い、各種の原料から持ち込まれる過剰のアルカリ金属や可溶性の不純物等を除去してもよい。
【0093】
前記洗浄処理は、具体的には、水又はアンモニア水により行うことができ、水又はアンモニア水で洗浄することにより、可溶性不純物の含有量を低減させることができる。
【0094】
イオン交換処理は、具体的には、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム等のアンモニウム塩の水溶液によって行うことができ、このイオン交換によって微小球体に残存するナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を低減させることができる。
【0095】
上述の洗浄処理は、通常イオン交換処理に先立って行われるが、洗浄処理及びイオン交換処理が好適に施される限りにおいては、イオン交換処理を先に行ってもよい。
【0096】
上記洗浄処理及びイオン交換処理は、アルカリ金属の含有量及び可溶性不純物の含有量が所望量以下になるまで行うこと好ましい。アルカリ金属の含有量及び可溶性不純物の含有量が所望量以下であることにより、触媒活性を向上させることができる。
【0097】
前記微小球体は、乾燥触媒基準で、アルカリ金属の含有量が、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。また、可溶性不純物の含有量が、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0098】
上述の洗浄処理、イオン交換処理を施された微小球体に対し、再度乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理は、100~500℃の温度で、微小球体の水分含有量が1~25質量%になるまで行うことが好ましい。
このようにして本実施形態のFCC触媒を製造することができる。
【0099】
<流動接触分解反応>
本実施形態において流動接触分解反応は、本分野において公知の方法によって実施することができる。流動接触分解反応は、FCC設備において、高温で溶解樹脂含有液を含む原料油とFCC触媒を接触させることにより実施することができる。
【0100】
本実施形態において、分解される原料油は溶解樹脂含有液を含む。溶解樹脂含有液のみを原料油として用いてもよいし、溶解樹脂含有液と流動接触分解原料油とを混合して原料油としてもよい。
溶解樹脂含有液と混合される流動接触分解原料油としては、特に限定されず、常温・常圧で液体の炭化水素油(炭化水素混合物)を挙げることができる。
【0101】
前記炭化水素油としては、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油等から選ばれる一種以上を挙げることができ、コーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油、GTL(Gas to Liquids)油、植物油、廃潤滑油、廃食油等から選ばれる一種以上も挙げることができる。
【0102】
さらに、本実施形態において使用される流動接触分解原料油としては、上記炭化水素油を当業者に周知の水素化処理、すなわち、Ni-Mo系触媒、Co-Mo系触媒、Ni-Co-Mo系触媒、Ni-W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も挙げることができる。
【0103】
本実施形態の原料油の分解反応は、通常、垂直に据え付けられたライザー10、反応塔20、再生塔30からなるFCC設備1に、FCC触媒を連続的に循環させることにより行うことができる。なお、本明細書において、流動接触分解設備(FCC設備)には、残油流動接触分解設備(RFCC設備)も含まれる。すなわち、本明細書において、流動接触分解反応には、残油流動接触分解反応も含まれる。
【0104】
以下、FCC設備によって行われる流動接触分解反応を具体的に説明する。
ライザー10内には、揚送用流体が上方に向かって流通しており、再生触媒移送ライン34より供給されたFCC触媒は、揚送用流体とともにライザー10内を上方へ流れる。
溶解樹脂含有液は、予熱装置12によって所定の温度に加熱され、スチームを加えられた後、溶解樹脂含有液供給ライン51からライザー10に供給される。また、同様にして流動接触分解原料油が予熱装置12によって所定の温度に加熱され、流動接触分解原料油供給ライン11からライザー10に供給されてもよい。ライザー10内に供給された溶解樹脂含有液を含む原料油がFCC触媒と接触し分解反応が起こる。分解反応により生成した分解油とFCC触媒は反応塔20へ移送される。
供給される溶解樹脂含有液の総質量に対する樹脂の濃度は、本発明の効果を得られる限り特に限定されないが、例えば、1~50質量%でもよく、5~40質量%でもよく、5~30質量%でもよい。
【0105】
ライザー10の運転条件としては、反応温度が490~530℃であることが好ましく、500~520℃であることがより好ましい。ライザー10における反応温度が前記範囲の下限値以上であると、溶解樹脂含有液を含む原料油の分解反応が進行して、石油化学原料の収率が向上する。また、ライザー10における反応温度が前記範囲の上限値以下であると、熱分解により生成するドライガスなどの軽質ガス生成量やコーク生成量を軽減することができ、石油化学原料の収率を相対的に増大させ易くなるため経済的である。
【0106】
反応圧力は0.10MPa(常圧)~0.49MPa(5kg/cm2)であることが好ましく、0.10MPa(常圧)~0.29MPa(3kg/cm2)であることがより好ましい。分解反応は、反応物のモル数に対し、生成物のモル数が増加する反応であるため、ライザー10における反応圧力が0.49MPa以下であると、熱力学的(平衡的)に有利となる。
【0107】
FCC触媒/(溶解樹脂含有液+流動接触分解原料油)の質量比は3~7であることが好ましく、4~6であることがより好ましい。ライザー10におけるFCC触媒/(溶解樹脂含有液+流動接触分解原料油)の質量比が前記範囲の下限値以上であると、ライザー10内の触媒濃度を適度に保つことができ、原料油の分解効率が向上する。ライザー10におけるFCC触媒/(溶解樹脂含有液+流動接触分解原料油)の質量比が前記範囲の上限値以下である場合も、原料油の分解反応が効果的に進行し、触媒濃度の上昇に見合った分解反応を進行させ易くなる。
【0108】
溶解樹脂含有液供給ライン51から供給される溶解樹脂含有液と、流動接触分解原料油供給ライン11から供給される流動接触分解原料油の総流量[kL/h]に対する、溶解樹脂含有液の流量(kL/h)の割合((溶解樹脂含有液/(流動接触分解原料油+溶解樹脂含有液))×100%)は、5~100%であることが好ましく、10~95%であることがより好ましく、20~80%であることがさらに好ましい。
【0109】
ライザー10内で原料油の分解により生成した分解油は、サイクロン21に供給される。サイクロン21は、遠心力を利用して、分解油をFCC触媒から分離する。そして、分解油は、分解油排出ライン22により、反応塔20から排出され、蒸留塔41へと移送される。
【0110】
サイクロン21によって分離されたFCC触媒はストリッパー23に供給される。ストリッパー23には、スチーム、窒素等が供給されている。ストリッパー23では、スチーム、窒素等によりFCC触媒上の炭化水素を除去する。そして、FCC触媒は、反応後触媒移送ライン24により反応塔20から排出され、再生塔30に移送される。
【0111】
ストリッパー23におけるストリッピング処理時の温度は、通常470~530℃であり、480~520℃であることが好ましく、490~510℃であることがより好ましい。ストリッピングに使用されるガスとしては、ボイラにより発生されたスチームやコンプレッサー等により昇圧された窒素等の不活性ガスなどが使用される。
【0112】
エアブロワー31からエアグリッド32に空気が供給され、エアグリッド32から再生塔30内に空気が供給され、再生塔30に移送されたストリッピング処理後のFCC触媒上のコークは燃焼し、FCC触媒は再生される。再生したFCC触媒と、コークの燃焼により生じた排ガスとはサイクロン33により分離される。再生したFCC触媒は再生触媒移送ライン34により再生塔30から排出され、ライザー10に供給される。排ガスは、排ガスライン35により再生塔30から排出される。
【0113】
触媒再生塔の運転条件としては、再生温度が600~800℃であることが好ましく、700~750℃であることがより好ましい。
触媒再生塔における再生温度が600℃以上であると、コークの燃焼が充分に進み、触媒活性が充分に回復する。また、触媒再生塔における再生温度が800℃以下であると、装置材質への悪影響が低い。
【0114】
分解油排出ライン22により、反応塔20から蒸留塔41へと移送された分解油は、蒸留塔41において、塔頂から炭素数1~13の化合物を含む留分が留出され、塔の中段から重質分解軽油(HCO)及び軽質分解軽油(LCO)が留出され、塔底から流動接触分解残油(SLO)が留出される。
炭素数1~13の化合物を含む留分は、ライン42により、蒸留塔41から蒸留塔43へと移送され、蒸留塔43において、塔頂からガス成分が除かれ、塔底に液化石油ガス(LPG)及びガソリンを主成分とする留分が得られる。
LPG及びガソリンを主成分とする留分は、ライン44により、蒸留塔43から蒸留塔45へと移送され、蒸留塔45において、塔頂からLPGを主成分とする留分が留出され、塔底からガソリンを主成分とする留分が得られる。
LPGを主成分とする留分は、ライン46により、蒸留塔45から蒸留塔47へと移送され、蒸留塔47において、塔頂から石油化学原料であるプロピレンを主成分とする留分が留出され、塔底から石油化学原料であるブテンを主成分とする留分が得られる。
ガソリンを主成分とする留分は、ライン48により、蒸留塔45から芳香族抽出装置60へ移送され、芳香族抽出装置60において、石油化学原料である芳香族化合物を主成分とする留分と、芳香族化合物が除かれたガソリンを主成分とする留分に分離される。
芳香族化合物が除かれたガソリンを主成分とする留分は、ライン61によりナフサクラッカー70へと移送され、ナフサクラッカー70により石油化学原料であるエチレン、プロピレン、芳香族化合物を主成分とする留分が得られる。
また、芳香族化合物が除かれたガソリンを主成分とする留分は、ライン62により接触改質装置80へと移送され、接触改質装置80により石油化学原料である芳香族化合物を主成分とする留分が得られる。
【0115】
<石油化学原料>
本実施形態の石油化学原料の製造方法により製造される石油化学原料は、いわゆるモノマーである。石油化学原料の例としては、炭素数3~8のオレフィン、芳香族化合物等が挙げられる。炭素数3~8のオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1,3-ブタジエン等が挙げられる。芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
【0116】
[石油製品の製造方法及び石油製品の製造システム]
本実施形態の石油製品の製造方法では、上述した溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理することにより石油製品を製造する。本実施形態の石油製品の製造方法は、前記処理に必要なエネルギーとして、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼することにより得られるエネルギーを用いる。
はじめに、本実施形態の石油製品の製造方法で使用される石油製品の製造システムについて説明を行う。
【0117】
<石油製品の製造システム>
本実施形態の石油製品の製造システムは、上述した溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を処理することにより石油製品を製造する石油精製設備と、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼する燃焼設備と、前記燃焼設備と前記石油精製設備との間で前記燃焼設備により得られたエネルギーを伝達する手段とを備える。
エネルギーを伝達する手段とは、前記燃焼設備により得られたエネルギーを伝達するためのエネルギーの形態(スチーム、電力)、並びに前記燃焼設備により得られたエネルギーを伝達するための前記燃焼設備と前記石油精製設備の間の配管等を意味する。
【0118】
図8は、本発明の一実施形態に係る石油製品の製造システムの構成を表す構成図である。本実施形態の石油製品の製造システム100は、石油精製設備101と、燃焼設備102とを備える。本実施形態の石油製品の製造システム100は、さらに微生物処理設備103と、発電設備104とを備えてもよい。
【0119】
(燃焼設備)
燃焼設備102は、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼し、得られた熱を利用して、スチームを製造する設備である。燃焼設備102は、スチーム供給ラインL201を介して石油精製設備101と接続されている。燃焼設備102は、スチーム供給ラインL204を介して発電設備104と接続されている。燃焼設備102は、メタン供給ラインL302を介して微生物処理設備103と接続されている。
燃焼設備としては、従来公知の燃焼設備を使用することができる。燃焼設備の一例として、ごみピット、クレーン、焼却炉、廃熱ボイラ、エコノマイザ、灰ピット、集塵機、脱硝反応塔を備える燃焼設備が挙げられる。燃焼設備が備える上記各装置の機能については、後述する。
【0120】
(発電設備)
発電設備104は、燃焼設備102で製造されたスチームを使用して発電する設備である。発電設備104は、電力供給ラインL401を介して石油精製設備101と接続されている。
発電設備としては、従来公知の発電設備を使用することができる。発電設備の一例として、蒸気タービン式の発電設備が挙げられる。
【0121】
(微生物処理設備)
微生物処理設備103は、食品廃棄物をメタン発酵することにより、メタンを製造する設備である。微生物処理設備103は、メタン供給ラインL301を介して石油精製設備101と接続されている。
微生物処理設備としては、従来公知の微生物処理設備を使用することができる。微生物処理設備の一例としては、分別機、スラリータンク、メタン発酵槽、脱硫塔を備える微生物処理設備が挙げられる。微生物処理設備が備える上記各装置の機能については、後述する。
【0122】
(石油精製設備)
石油精製設備101としては、上述の溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程で説明した石油精製設備が例として挙げられ、好ましい態様も同様である。すなわち、本実施形態の石油精製設備101としては、上述のFCC設備であることが好ましい。
【0123】
<石油製品の製造方法>
本実施形態の石油製品の製造方法は、上述した溶解樹脂含有液の製造方法により製造された溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理することにより石油製品を製造する。また、前記処理に必要なエネルギーとして、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼することにより得られるエネルギーを用いる。
以下、原料油を石油精製設備で処理する工程と、廃棄物由来のエネルギーを得る工程を説明する。
【0124】
(原料油を石油精製設備で処理する工程)
本実施形態の原料油を石油精製設備で処理する工程は、上述の溶解樹脂含有液を含む原料油を石油精製設備で処理する工程と同じであり、好ましい態様も同様である。
本実施形態において、石油精製設備で処理される原料油としては、通常の石油精製設備で処理される原料油、廃棄物由来の樹脂、及びこれらの混合物を使用することができ、廃棄物由来の樹脂を含むことが好ましい。
通常の石油精製設備で処理される原料油としては、例えば、原油、ナフサ、軽油、灯油、常圧残渣油、減圧軽油、減圧残渣油等が例として挙げられる。
また、前記廃棄物由来の樹脂としては、廃プラスチック由来の樹脂が好ましい。原料油が廃プラスチック由来の樹脂を含むことにより、廃プラスチックを石油製品にリサイクルすることが可能となり、化石燃料の消費をさらに抑制することができる。原料油として、廃プラスチック由来の樹脂を含む原料油を使用する場合、廃プラスチックに含まれる複数の種類の樹脂を含む混合物から、特定の樹脂を溶解せず、前記特定の樹脂以外の樹脂を溶解して溶解樹脂含有液を得る、溶解樹脂含有液製造工程を有することが好ましい。溶解樹脂含有液製造工程としては、上述の樹脂溶解工程と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0125】
すなわち、本実施形態の原料油を石油精製設備で処理する工程は、原料油としては、通常の石油精製設備で処理される原料油のみを使用する場合以外は、石油化学原料の製造方法と同じである。また、石油製品の製造方法で製造される石油製品としては、上述の石油化学原料であることが好ましい。
【0126】
(廃棄物由来のエネルギーを得る工程)
本実施形態においては、原料油を石油精製設備で処理する工程で必要なエネルギーとして、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方を燃焼することにより得られるエネルギーを用いる。
廃棄物としては、一般廃棄物が好ましい。
【0127】
廃棄物を含む可燃性固体としては、廃プラスチック、食品残渣や生ごみなどの食品廃棄物、及びそれ以外の可燃性廃棄物(以下、それ以外の可燃性廃棄物を「可燃廃棄物」ともいう。)が挙げられ、上記3種は予め分別されていることが好ましい。
【0128】
燃焼設備102が上述のごみピット、クレーン、焼却炉、廃熱ボイラ、エコノマイザ、灰ピット、集塵機、脱硝反応塔を備える燃焼設備であり、発電設備104がタービン式発電設備である場合を例に、燃焼設備102、及び発電設備104における廃棄物由来のエネルギーの製造について説明する。
【0129】
可燃廃棄物は、ごみピットへ投入され、貯留される。ごみピットに貯留された可燃物は、クレーン等により、焼却炉に投入される。可燃物は焼却炉で焼却され、焼却により生じた排気ガスの熱は廃熱ボイラ及びエコノマイザにより回収される。可燃物の焼却には必要に応じてメタン供給ラインL302を介して、微生物発酵設備103から燃焼設備102へ供給されたメタンを燃料として行ってもよい。エコノマイザにより給水予熱を行い、廃熱ボイラにおいてスチームが製造される。製造されたスチームは、スチーム供給ラインL201を介して石油精製設備101へ供給される。さらに、製造されたスチームは、スチーム供給ラインL204を介して発電設備104へ供給される。
また、焼却炉から出た焼却灰は、灰ピットに送られ、その後搬出される。さらに焼却により生じた排気ガスは上述の廃熱ボイラ、エコノマイザにより温度を下げられ、その後、集塵機、脱硝反応塔で有害物質を除去した後に大気へ開放される。
【0130】
発電設備104において、スチーム供給ラインL204を介して供給されたスチームにより、発電がおこなわれる。発電された電力は、電力供給ラインL401を介して石油精製設備101へ供給される。
【0131】
廃棄物を燃焼させてスチームを製造、また製造されたスチームを用いて発電を行う場合、定期点検・補修による一部休炉や全休炉、焼却量の変動、ごみ質の変動等により、製造されるスチーム量や発電出力が安定しないため、エネルギーを効率的に利用することが困難であるという問題がある。本実施形態では、焼却設備102で製造されるスチーム及び発電設備104で発電された電力は、原料油を石油精製設備で処理する工程で使用される。石油精製設備では、莫大なエネルギーを精密にコントロールしながら利用している。すなわち、石油精製設備では、既存のボイラや発電設備により製造されるエネルギーと、本実施形態の廃棄物由来のエネルギーを組み合わせて利用することとなる。したがって、本実施形態では、燃焼設備102で製造されるスチーム量、発電設備104の発電出力の変動があった場合にも、既存のボイラや発電設備により製造されるエネルギー量を調整することにより、その変動を充分に静定することが可能であり、電力を効率的に利用することができる。
【0132】
微生物発酵設備103が上述の、分別機、スラリータンク、メタン発酵槽、脱硫塔を備える微生物処理設備である場合を例に、微生物発酵設備103における廃棄物由来のエネルギーの製造について説明する。
【0133】
まず、分別機により、食品廃棄物に含まれるビニール袋やプラスチック等の混入異物を除去する。除去後の食品廃棄物はスラリータンクに移送され、水を加えて、スラリーとする。前記スラリーをメタン発酵槽へ移送し、スラリーに含まれる有機物をメタン発酵菌によりメタンガスと二酸化炭素を主成分とするバイオガスに変換する。得られたバイオガスを脱硫塔に移送し、硫化水素を除去し、メタンガスを含むバイオガスが製造される。製造されたメタンガスを含むバイオガスは、メタン供給ラインL301を介して石油精製設備101へ供給される。さらに製造されたメタンガスを含むバイオガスは、メタン供給ラインL302を介して、燃焼設備102へ供給される。
【0134】
スチーム供給ラインL201を介して石油精製設備101へ供給されたスチームは、石油精製設備101で使用されるポンプの動力、蒸留塔のリボイラ等として使用される。
また、石油精製設備がFCC設備である場合、前記スチームは、触媒循環用のスチーム、原料油分散用スチーム、反応塔20において反応後の触媒と分解油とを分離するためのスチーム、ストリッパー23で使用されるスチームとして使用される。さらに、石油精製設備101が樹脂溶解槽50を備える場合、前記スチームは、溶解槽の加熱に使用される。
【0135】
メタン供給ラインL301を介して石油精製設備101へ供給されたメタンは、石油精製設備101の加熱炉(予熱器を含む)の加熱の原料として使用される。また、発生するメタンが余剰の場合は、例えば水素製造装置の原料として使用される。
【0136】
電力供給ラインL401を介して石油精製設備101へ供給された電力は、石油精製設備101の電力を用いる機器に使用される。さらに、石油精製設備101が樹脂溶解槽50を備える場合、前記電力は、溶解槽の撹拌装置、樹脂溶解槽50からライザー10へ溶解樹脂含有液を輸送するための輸送用のポンプの動力に使用される。
【0137】
石油精製設備101に必要なスチーム及び電力に対して、ごみの量が少ない場合は、通常の化石燃料を用いるボイラ及び発電設備から、石油精製設備にスチーム及び電力を供給してもよい。また、化石燃料を燃焼設備102の補助燃料として使用してもよい。
【0138】
石油精製設備101、燃焼設備102、微生物処理設備103、及び発電設備104は地理的に集約して設置されていることが好ましく、各設備間の距離は、0.1~5kmであることが好ましく、0.1~1kmであることがより好ましい。
通常、石油精製設備は、製油所設備内に存在する。製油所設備内は、高圧ガス設備を複数有するため、燃焼設備102は、製油所設備外に設置されることが好ましい。すなわち、廃棄物を含む可燃性固体及び廃棄物から得られたメタンのいずれか一方又は両方の燃焼は、製油所設備外で行われることが好ましい。
【0139】
燃焼設備102で製造されるスチーム量は、5,000~20,000ton/日であることが好ましく、10,000~15,000ton/日であることがより好ましい。
上述の原料油を石油精製設備で処理する工程で1日に必要となるスチーム量に対する、燃焼設備102で1日に製造されるスチーム量の割合は、1~120%であることが好ましく、1~100%であることがより好ましい。
前記割合が前記範囲の下限値以上であると、その分、化石燃料の消費を低減できる。
【0140】
発電設備104で発電される電力量は、500,000~2,000,000kWh/日であることが好ましく、800,000~1,500,000kWh/日であることがより好ましい。
上述の原料油を石油精製設備で処理する工程で1日に必要となる電力量に対する、電力設備104で1日に発電される電力量の割合は、1~120%であることが好ましく、1~100%であることがより好ましい。
前記割合が前記範囲の下限値以上であると、その分、化石燃料の消費を低減できる。
【実施例0141】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0142】
<樹脂>
処理対象の混合物に含まれる樹脂として、以下の樹脂を用いた。
・ポリ塩化ビニル(製品名:KVC 933J-N、昭和化成工業社製、融点:110℃、密度:1.325g/cm3)
・ポリスチレン(製品名:トーヨースチロールGP G201C、東洋スチレン社製、融点:100℃、密度:1.040g/cm3)
・低密度ポリエチレン(製品名:ノバテックLD LJ802、日本ポリエチレン社製、融点:106℃、密度:0.918g/cm3)
・高密度ポリエチレン(製品名:ノバテックHD HJ360、日本ポリエチレン社製製、融点:130℃、密度:0.951g/cm3)
・ポリプロピレン(製品名:ノバテックHD BC08F、日本ポリプロ社製、融点:168℃、密度:0.900g/cm3)
以下、ポリ塩化ビニルをPVC、ポリスチレンをPS、低密度ポリエチレンをLDPE、高密度ポリエチレンをHDPE、ポリプロピレンをPPと表す(表1、表3及び表4においても同様)。PVC、PS、LDPE、HDPE、PPはその形状、色が異なるため、後述の実施例において、どの樹脂が溶解したかを目視で判別可能である。
【0143】
<溶媒>
樹脂を溶解する溶媒として、以下の溶媒を用いた。
・軽質分解軽油
・重質分解軽油
・1-オクタノール(富士フイルム和光純薬社製、沸点:195℃、密度:0.820~0.833g/cm3)
・ジメチルスルホキシド(富士フイルム和光純薬社製、沸点:189℃、密度:1.099g/cm3)
・γ-ブチロラクトン(富士フイルム和光純薬社製、沸点:204℃、密度:1.128g/cm3)・1-メチルイミダゾール(東京化成工業社製、沸点:198℃、密度:1.04g/cm3)
・オレンジ油(富士フイルム和光純薬社製、沸点:177℃、密度:0.845g/cm3)
軽質分解軽油とは、流動接触分解反応によって得られた軽油留分のうちの軽質な留分である(沸点範囲:175~365℃、密度:0.925g/cm3)。以下、軽質分解軽油をLCOと表す。
重質分解軽油とは、流動接触分解反応によって得られた軽油留分のうちの重質な留分である(沸点範囲:200~450℃、密度:1.010g/cm3)。以下、重質分解軽油をHCOと表す。
以下、ジメチルスルホキシドをDMSOと表す。
【0144】
<HSP値、R0等の算出>
上記樹脂について、HSPiPを使用して、ハンセン球法によりハンセン球を決定し、180℃、25℃、及び80℃におけるHSP値及びR0を求めた。同様に、上記溶媒について、HSPiPを使用して、ハンセン球法によりハンセン球を決定し、180℃、25℃、及び80℃におけるHSP値を求めた。樹脂のHSP値及びR0、並びに溶媒のHSP値を表1~表3に示す。なお、表1に記載のハンセン球を求める際の溶解性の判断は180℃を基準に、表2に記載のハンセン球を求める際の溶解性の判断は25℃を基準に、表3に記載のハンセン球を求める際の溶解性の判断は80℃を基準に行った。以下実施例1~6、比較例1~7、参考例1においては、表1~表3に示された値を用いた。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
<塩素量の測定>
後述の実施例1~6、比較例1~7及び参考例1で得られた溶液中の塩素濃度を、微量塩素・硫黄装置(TCL-2100V、三菱ケミカルアナリティック社製)により測定した。
【0149】
[実施例1]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてLDPEを選択し、溶媒として、LCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、LDPEのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとLCO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B1)からLCOのLDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、及びRED(B1)を表4に示す。
LCO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、LDPE4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0150】
[実施例2]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてHDPEを選択し、溶媒として、LCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、HDPEのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、HDPEとLCO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、HDPEのR0及びRa(B1)からLCOのHDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、及びRED(B1)を表4に示す。
LCO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、HDPE4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、HDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0151】
[実施例3]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPPを選択し、溶媒として、LCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PPのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PPとLCO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PPのR0及びRa(B1)からLCOのPPに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、及びRED(B1)を表4に示す。
LCO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PP4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PPは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0152】
[実施例4]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPSを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、LCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PSのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PSとLCO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PSのR0及びRa(B1)からLCOのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。さらに、LDPEのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとLCO間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からLCOのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、RED(B1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表4に示す。
LCO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PS2g、LDPE2gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PS、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0153】
[実施例5]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPSを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、HCOを選択した。PVCのHSP値とHCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとHCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からHCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PSのHSP値とHCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PSとHCO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PSのR0及びRa(B1)からHCOのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。さらに、LDPEのHSP値とHCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとHCO間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からHCOのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、RED(B1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表4に示す。
HCO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PS2g、LDPE2gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PS、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0154】
[実施例6]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPSを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、1-オクタノールを選択した。PVCのHSP値と1-オクタノールのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCと1-オクタノール間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)から1-オクタノールのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PSのHSP値と1-オクタノールのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PSと1-オクタノール間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PSのR0及びRa(B1)から1-オクタノールのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。さらに、LDPEのHSP値と1-オクタノールのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEと1-オクタノール間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)から1-オクタノールのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、RED(B1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表4に示す。
1-オクタノール95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PS2g、LDPE2gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PS、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出は認められなかった。表4の「30℃冷却後析出」欄に「無」と記した。
【0155】
[参考例1]
樹脂A1としてPVCを選択し、溶媒としてLCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。Ra(A1)及びRED(A1)を表4に示す。
LCO99gを180℃に加熱した後、PVC1gを添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表4に示す。
【0156】
【0157】
[比較例1]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPSを選択し、溶媒として、DMSOを選択した。PVCのHSP値とDMSOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとDMSO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からDMSOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PSのHSP値とDMSOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PSとDMSO間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PSのR0及びRa(B1)からDMSOのPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、及びRED(B1)を表5に示す。
DMSO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PS4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PSは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
【0158】
[比較例2]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B3としてPPを選択し、溶媒として、DMSOを選択した。PVCのHSP値とDMSOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとDMSO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からDMSOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PPのHSP値とDMSOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PPとDMSO間のHSP値距離(Ra(B3))を求めた。さらに、PPのR0及びRa(B3)からDMSOのPPに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B3)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B3)、及びRED(B3)を表5に示す。
DMSO95gを180℃に加熱した後、PVC1g、PP4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PPは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
【0159】
[比較例3]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、γ-ブチロラクトンを選択した。PVCのHSP値とγ-ブチロラクトンのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとγ-ブチロラクトン間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からγ-ブチロラクトンのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、LDPEのHSP値とγ-ブチロラクトンのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとγ-ブチロラクトン間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からγ-ブチロラクトンのLDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表5に示す。
γ-ブチロラクトン95gを180℃に加熱した後、PVC1g、LDPE4gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
【0160】
[比較例4]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B2としてHDPEを、樹脂B3としてPPを選択し、溶媒として、1-メチルイミダゾールを選択した。PVCのHSP値と1-メチルイミダゾールのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCと1-メチルイミダゾール間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)から1-メチルイミダゾールのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、HDPEのHSP値と1-メチルイミダゾールのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、HDPEと1-メチルイミダゾール間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、HDPEのR0及びRa(B2)から1-メチルイミダゾールのHDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。同様に、PPのHSP値とDMSOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PPとDMSO間のHSP値距離(Ra(B3))を求めた。さらに、PPのR0及びRa(B3)からDMSOのPPに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B3)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B2)、RED(B2)、Ra(B3)、及びRED(B3)を表5に示す。
1-メチルイミダゾール95gを180℃に加熱した後、PVC1g、HDPE2g、PP2gの混合物を添加し、180℃で30分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、HDPE及びPPは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
【0161】
[比較例5]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、オレンジ油を選択した。PVCのHSP値とオレンジ油のHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとオレンジ油間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からオレンジ油のPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、LDPEのHSP値とオレンジ油のHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとオレンジ油間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からオレンジ油のLDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表5に示す。
PVC5g、LDPE5gの混合物に対して、オレンジ油を90g添加し、25℃で60分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出が認められた。表5の「30℃冷却後析出」欄に「有」と記した。
【0162】
[比較例6]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B1としてPSを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、オレンジ油を選択した。PVCのHSP値とオレンジ油のHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとオレンジ油間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からオレンジ油のPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、PSのHSP値とオレンジ油のHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PSとオレンジ油間のHSP値距離(Ra(B1))を求めた。さらに、PSのR0及びRa(B1)からオレンジ油のPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B1)を求めた。さらに、LDPEのHSP値とオレンジ油のHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとオレンジ油間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からオレンジ油のPSに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B1)、RED(B1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表5に示す。
PVC5g、PS5g、LDPE5gの混合物に対して、オレンジ油を85g添加し、25℃で60分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、PS及びLDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出が認められた。表5の「30℃冷却後析出」欄に「有」と記した。
【0163】
[比較例7]
樹脂A1としてPVCを、樹脂B2としてLDPEを選択し、溶媒として、LCOを選択した。PVCのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、PVCとLCO間のHSP値距離(Ra(A1))を求めた。さらに、PVCのR0及びRa(A1)からLCOのPVCに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(A1)を求めた。同様に、LDPEのHSP値とLCOのHSP値をそれぞれ、前記式1の(δd2、δp2、δh2)及び(δd1、δp1、δh1)に代入し、LDPEとLCO間のHSP値距離(Ra(B2))を求めた。さらに、LDPEのR0及びRa(B2)からLCOのLDPEに対するハンセン溶解度パラメータに基づく相対的エネルギー差であるRED(B2)を求めた。Ra(A1)、RED(A1)、Ra(B2)、及びRED(B2)を表5に示す。
PVC10g、LDPE10gの混合物に対して、LCOを90g添加し、80℃で60分間撹拌処理を行った。溶解状態を目視で観察したところ、LDPEは完全に溶解し、固体のPVCが確認された。溶液中の塩素量を表5に示す。
得られた溶液を30℃に冷却したところ、樹脂の析出が認められた。表5の「30℃冷却後析出」欄に「有」と記した。
【0164】
【0165】
樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1超であり、樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1以下である溶媒を選択し、当該溶媒を樹脂Bの融点以上に加熱した後で樹脂と接触させた実施例1~6では、樹脂Aを溶解せず、樹脂Bのみを溶解することができた。
一方、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1以下であり、樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1超である溶媒を選択した比較例1~4では、樹脂Aを溶解できたが、樹脂Bを溶解することができなかった。
また、樹脂Aに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1超であり、樹脂Bに対するハンセン溶解度パラメータに基づくREDが1以下である溶媒を選択したが、当該溶媒を樹脂Bの融点以上に加熱しないで樹脂と接触させた比較例5~7では、樹脂Aを溶解せず、樹脂Bのみを溶解することができたが、30℃に冷却した際に樹脂が析出した。
1…流動接触分解設備(FCC設備)、10…ライザー、11…流動接触分解原料油供給ライン、12…予熱装置、20…反応塔、21…サイクロン、22…分解油排出ライン、23…ストリッパー、24…反応後触媒移送ライン、30…再生塔、31…エアブロワー、32…エアグリッド、33…サイクロン、34…再生触媒移送ライン、35…排ガスライン、40…精製設備、41…蒸留塔、42…ライン、43…蒸留塔、44…ライン、45…蒸留塔、46…ライン、47…蒸留塔、48…ライン、50…樹脂溶解槽、51…溶解樹脂含有液供給ライン、52…予熱装置、60…芳香族抽出装置、61…ライン、62…ライン、70…ナフサクラッカー、80…接触改質装置、100…石油製品の製造システム、101…石油精製設備、102…燃焼設備、103…微生物処理設備、104…発電設備、L201…スチーム供給ライン、L204…スチーム供給ライン、L301…メタン供給ライン、L302…メタン供給ライン、L401…電力供給ライン