IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社環境緑化保全コンサルタントの特許一覧

<>
  • 特開-植栽用基材 図1
  • 特開-植栽用基材 図2
  • 特開-植栽用基材 図3
  • 特開-植栽用基材 図4
  • 特開-植栽用基材 図5
  • 特開-植栽用基材 図6
  • 特開-植栽用基材 図7
  • 特開-植栽用基材 図8
  • 特開-植栽用基材 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094882
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】植栽用基材
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20230629BHJP
   A01G 22/00 20180101ALI20230629BHJP
【FI】
A01G9/02 Z
A01G22/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210451
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】510340274
【氏名又は名称】株式会社くりんか
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楳木 真一
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022AB17
2B022AB20
2B327NA10
2B327NB03
2B327NC02
2B327NC12
2B327NC17
2B327NC24
2B327NC56
2B327ND01
2B327ND20
(57)【要約】
【課題】頻繁な灌水を不要にし、植物の成長を向上させることができる軽量で丈夫な植栽用基材を提供する。
【解決手段】粗粒あるいは細粒状のクリンカアッシュを骨材として、これにバインダーと水を加え、これを混練した後自然乾燥することで硬化させてプランター1を製造する。例えば、円筒径で片方の開口部に内向きに張り出したリブ2aを持つ外枠2と、この外枠2内に収納可能な略円錐形で底部に外向きに張り出した鍔3aを有する型枠を使用し、内外組み合わせた型枠内に混錬材料を流し込み、これを天地逆転させた状態で高架させた後、先ず外枠2を外し、内枠3を引き抜くことで、鉢状のプランター1を得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリンカアッシュを、ポルトランドセメント、樹脂、又はジオセメントから選択される少なくとも一種のバインダーと混錬し、硬化させてなることを特徴とする植栽用基材。
【請求項2】
容器又は平板であることを特徴とする請求項1記載の植栽用基材。
【請求項3】
植栽植物が苔類であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の植栽用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培に供される植栽用ポット、プランター及び保水プレート等に関し、産業廃棄物として取り扱われている石炭灰(クリンカアッシュ)を主たる骨材として成型加工した透水性能及び保水性能に優れた植栽用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内や庭園において花卉を育成するための植木鉢、植栽ポットやプランターとしては、釉薬を掛けずに焼成された陶器(素焼き)、セラミックス、プラスチック製のものが多く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、多孔質無機質粒子で保水性を、多孔質無機質粒子の空隙で排水性と通気性を実現する植木鉢の製造方法が開示されている。特許文献2には、土壌層に多孔質構造の土壌改良剤が含まれてなる植木鉢が開示されている。特許文献3には、多孔質のセラミックスと通常の焼物とを焼結して結合された複合セラミックス構造体からなる植木鉢が開示されている。特許文献4には、外鉢と内鉢とからなり、外鉢が不透水の容器で内鉢が多孔質材料である植木鉢が開示されている。特許文献5には、外筒と、この外筒の内側に設けられる内筒と、外筒と内筒の下部に設けられる環状台座とを備え、外筒が多孔質材料で形成され、外筒と内筒の間に貯水部が設けられ、内筒の内側には、止水層が設けられ、植物の育成に適した温度及び湿度を保つことができる植木鉢が開示されている。特許文献6には、熱可塑性樹脂内に石炭灰を分散した成形用樹脂材料からなるプランターが開示されている。
【0004】
一方、石炭火力発電所において、石炭の焼却により発生する石炭灰(以下、クリンカアッシュと呼ぶ。)を、投棄処分することなく、単に埋立地の造成等に使用する以外の方法で再資源化する技術開発が嘱望される中、道路の舗装材等として利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-170861号公報
【特許文献2】実用新案登録第3070890号公報
【特許文献3】特開2005-1976号公報
【特許文献4】実用新案登録第3158620号公報
【特許文献5】実用新案登録第3203743号公報
【特許文献6】特開2003-335965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術における植木鉢やプランターにおいては、透水性(水はけのよさ)についてのみ言及するに留まり、その保水性については不問にされている。つまり、上記のようなプランターによる栽培では、水不足を補うために、植物への灌水を定期的に行う必要がある。特に、日照りや乾燥した季節には適量の灌水を頻繁に行わなければならない煩わしさがある。
また、素焼きのプランターは重くて割れやすいという欠点がある。一方、プラスチック製のプランターは軽くて丈夫であるが、通気性や排水性に劣り、用土の過湿状態を招きやすく根腐れ等の原因となり、植物の成長を阻害するという問題がある。
本考案は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、頻繁な灌水を不要にし、植物の成長を向上させることができる軽量で丈夫な植栽用基材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明の植栽用基材は、クリンカアッシュを、ポルトランドセメント、樹脂、又はジオセメントから選択される少なくとも一種のバインダーと混錬し、硬化させてなることを第1の特徴とする。また、容器又は平板であることを第2の特徴とする。さらに、植栽植物が苔類であることを第3の特徴とする。
【0008】
本発明の植栽用基材は、比較的粒径の揃った多数個のクリンカアッシュに、セメントなどのバインダーを適宜混和して製造される。ここでクリンカアッシュとは、石炭火力発電所から多量の粗粒あるいは細粒状のクリンカアッシュが発生する石炭残渣のことであって、多孔質であり、空隙率および吸水力が極めて高く、植栽用基材の材料として、抜群の通気性、保水性、排水性に優れ、道路の舗装材としても利用されるクリンカアッシュは高い堅牢性を持つと考察される。
【0009】
植栽用基材は、これ自身に多量の水分を保持できるように、肉厚に形成するのが好ましい。植栽用基材の立体形状は、平板、球形、角形、筒型、円錐台型又は箱形など自由な形状に構成でき、植栽植物としては、花卉、観葉植物、苔、野菜がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の植栽用基材は、多孔質のクリンカアッシュを骨材とし、また、バインダーとの間に生じる間隙に発生する毛細管現象により、それ自体に十分な量の水分を一度貯留させれば、この貯留水は、植物の根により適当量だけ徐々に吸水される。従って、植物に水やりを頻繁にしなくても、所要量の水分が長期間にわたって供給される。その結果、植物の根つきが良好になり、枯れたり根腐れすることなく、植物の順調な成長が促進される。また、廃棄物の減量に貢献すると共に、原料コストが安価で経済的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る植栽用基材(植木鉢)の一実施例を示す(a)は斜視図、(b)は製造用型枠の一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る植栽用基材(植木鉢)の製造工程を模式的に示す説明図である。
図3】本発明に係る植栽用基材の透水性及び保水性試験要領を(a)は成形物のみ、(b)は成形物内に培養土及び底床を布設した状態を模式的に示す説明図である。
図4】滲出水のpH値の時系列推移を示すグラフである。
図5】(a)はバインダーにポルトランドセメントを使用した場合のクリンカアッシュの粒度別吸水変化を示すグラフ、(b)は粒度別保水量の変化を示すグラフである。
図6】(a)はバインダーにエポキシ樹脂を使用した場合のクリンカアッシュの粒度別吸水変化を示すグラフ、(b)は粒度別保水量の変化を示すグラフである。
図7】(a)はバインダーにジオセメントを使用した場合のクリンカアッシュの粒度別吸水変化を示すグラフ、(b)は粒度別保水量の変化を示すグラフである。
図8】バインダー毎の粒度別保水量をまとめて示すグラフである。
図9】(a)は本発明に係る植栽用基材(保水調整プレート)の使用状態を模式的に示す説明図、(b)は苔ジオラマベースを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面にしたがって本発明の一実施例を説明する。便宜上、同様の構成要素には同一の参照符号を付して説明する。
【実施例0013】
石炭火力発電所から多量の粗粒あるいは細粒状のクリンカアッシュが発生するが、このクリンカアッシュを骨材として固化剤(バインダー)を混錬して硬化することにより、プランター(植木鉢)、保水プレート等の植栽用基材として活用する。
【0014】
図1(a)において、1はプランターで、このプランター1は、粗粒あるいは細粒状のクリンカアッシュを骨材として、これにバインダーと水を加え、これを混練した後自然乾燥することで硬化して製造される。製造方法としては、例えば、図1(b)に示す円筒径で片方の開口部に内向きに張り出したリブ2aを持つ外枠2と、この外枠2内に収納可能な略円錐形で底部に外向きに張り出した鍔3aを有する型枠を使用し、図2(A)~(D)に示す工程によって製造される。すなわち、内外組み合わせた型枠内に混錬材料を流し込み、これを天地逆転させた状態で高架させた後、先ず外枠2を外し、内枠3の鍔3aにハンドル4を螺合させて引き抜くことで、鉢状のプランター1が完成する。
【0015】
クリンカアッシュは、多孔質の通気性素材であって、空隙率が素焼き物等よりもかなり高く、保水性と排水性の双方に優れている。しかしながら、実際に植物の植生基材として適切であるか否かの確認を要する。先ず、植生に好適な弱酸性にpH値をコントロールすること、また適切な粒度及びバインダーを選択することが肝要である。そこで、図3に示すように、植栽用基材の透水性及び保水性試験を成形物1のみ、成形物1内に培養土6及びクリンカアッシュ混錬物による底床7を布設した状態で各種試験を行った。以下、その試験要領とその結果を示す。
【0016】
[クリンカアッシュ培養土試験]
(1)目的
(a)弱アルカリ性(pH7~10)のクリンカアッシュが弱酸性土(鹿沼土pH4~5)のブレンドによりpHが可能か検証する。
(b)苔の植生に適した弱酸性の配合を求める。
(2)材料
(a)クリンカアッシュ(粒径2mm未満;九州電力株式会社 苓北火力発電所由来)
(3)pH測定器:比色式pH検定器DM2:商品名:株式会社竹村電機製作所製)
(4)培養土配合と手順
1)クリンカアッシュCAと鹿沼土Kの配合割合を変えた試料1~試料10(表1参照)をpH測定器に投入して試薬を滴下して各3回ずつ測定した。結果を表2に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
表2から分かるように、鹿沼土KとクリンカアッシュCAの割合が、20:80、10:90及び0:100の場合が中性、30:70以下100:0において弱酸性を示した。これにより、苔の育成に適する弱酸性の培養土の配合割合の範囲が特定できた。尚、エージング処理したクリンカアッシュは中性を示すことも判明した。
【0020】
セメントは強アルカリ性であり、本発明で作製する「透水性保水性成形物」からの滲出水はアルカリ性であると予想される。そこで、「透水性保水性成型物」からの滲出水のpH測定を行った。
【0021】
[透水性保水性成型物からの滲出水のpH特定測定]
(1)目的
(a)セメントは強アルカリ性(pH12以上)を示すことが知られている。透水性保水性成型物に用いるバインダーがセメントの場合、灌水時に成型物から滲出する水分のpHを経時的に測定しアルカリ化傾向を把握する。
(b)中性のクリンカアッシュ(底石)と弱酸性の培養土とを組み合わせて鉢の内外でpHを測定しpH値の調整作用を検証した。
(2)試験体
(a)成型物のみ(図3(a)参照)
(b)培養土(鹿沼土K:クリンカアッシュCA50%混合:pH5.5~6.0)、底床用クリンカアッシュ(pH6.5)あり。
(3)pH測定器:pHテスター(APERA SX610)
(4)使用水:ミネラルウォーター(pH6.7:水質基準に関する省令に定められている「5.8以上8.6以下」を確認)
(5)試験手順
空の水槽に供試体である鉢を載置し、鉢の凹部に水を投入し、供試体から滲出した水を鉢に内側と外側で経時的に測定した。測定結果を図4のグラフに示す。
【0022】
セメント成分によるアルカリ化が見られたが滲出水は水質基準内であり、48時間経過しても概ね中性基準内であることが分かった。底石+培養土ありの鉢内の水はpH6.7近辺を推移し、培養土が滲出水のアルカリ化を抑制する作用があることが分かった。したがって、本発明の透水性保水性成型物を植栽容器として使用する場合は、pH5.0~5.5程度の酸性土を使用することで、滲出水のアルカリ化を抑制できる。また、ガラス製水槽などのアルカリ成分の溶出がほとんど無い容器でアクアリウム等を製作する際は、培養土試験結果に応じてpH適宜調整できる培養土を調製すればよい。
【0023】
[透水性及び保水性試験]
(1)目的
骨材別・粒度別・バインダー別の時間・吸水量・保水量の関係から、排水性(水はけ)と灌水力(保水性)を把握する。
(2)
(a)クリンカアッシュ(CA)3種:2~7mm、0.2~5mm、0.2~2mm(九州電力株式会社:苓北火力発電所排出物由来)
(b)溶融スラグ(YS):0~0.2mm(宗像清掃工場由来)
(3)手順
(A)容量1000mLの試験管に500mL注水
(B)(A)に供試験体を浸水
(C)浸水直後の水位から5分毎に水位を計測
(D)30分後に供試体を取り出し、滲出水を切ったものを計量器で測定し保水量を算定した。
【0024】
バインダーとしてポルトランドセメントを使用した場合の粒度別給水変化を図5(a)のグラフに、粒度別保水量を図5(b)のグラフ及び表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
時系列水量変化は初期水位(500mL+256mL)からの水位変化の差が吸水量となる。30分後の吸水量は[2-7CA:89g]、[0.2-5CA:43g]、[0.2-2CA:51g]、[0-2YS:40g]であった。また、飽和量までの到達時間を見てみると、2-7CAは浸水と同時に飽和量に到達しているが、他3種は飽和量まで約20分経過した。このことから吸水量と吸水スピードを兼ね備えた吸水力は2-7CAが最高であった。
【0027】
一方保水量は[0.2-2CA:46.5g(182g/L)]、[0.2-5CA:41.5g(162g/L)]、[0-2YS:40g(156g/L)]、[2-7CA:37.5g(147g/L)]となる。吸水量は浸水状態での測定であるが、保水量は滲出水(降下水)を切った後の重量である。
[2-7CA]は51.5g(約58%喪失)の滲出水(降下水)が発生しており、高い排水性も具備していると考えられる。また、骨材間隙率が大きいため毛細管力が乏しいことが要因と推察される。
【0028】
[0.2-2CA]と[0.2-5CA]の差は、多孔質であるクリンカアッシュが単位体積当たりにどれだけ存在するかで説明がつく。[0.2-2CA]の方が骨材上限が小さく充填量が多くなることから性能差につながっていると考察される。
【0029】
[0-2YS]は、より微細な粒度が単位体積当たり[0.2-2CA]よりも多く存在するが、多孔質でないことと微粒子分(0-0.2)が多く含まれ過密となっていることが要因と考察される。
【0030】
以上のことから、バインダーにセメントを使用した場合、石炭灰の粒度と多孔質特性の有無を考慮することにより、吸水性・排水性・保水性をコントロールすることが可能になることが分かった。
【0031】
次に、バインダーとしてエポキシ樹脂を使用した場合の粒度別給水変化を図6(a)のグラフに、粒度別保水量を図6(b)のグラフ及び表4に示す。
【0032】
【表4】
【0033】
樹脂系バインダーは、骨材をコーティングするため、多孔質骨材の場合は、骨材単体での吸水性が損なわれることが予想された。このため、骨材間隙水が吸水量及び保水量の性能を左右するという仮説の下において試験を行った。
吸水量は粒度の大きい方から[2-7CA:91g]、[0.2-5CA:66g]、[0.2-2CA:36g]、[0-2YS:5g]の順番であった。保水量は[0.2-5CA:44.5g(174g/L)]、[0.2-2CA:29.5g(115g/L)]、 [2-7CA:16.0g(63g/L)]、[0-2YS:12g(47g/L)]、となった。尚、[0-2YS]場合、引き抜き後の保水量が逆に7g増加しているのは、細骨材でかつ樹脂コーティングされることにより発生する強い表面張力によって、供試験体表面に付着した水分が含まれるものと考察される。
【0034】
上述したように、バインダーにセメントを使用した場合は、[0.2-2CA]と[0.2-5CA]の吸水量の差は、多孔質であるクリンカアッシュが単位体積当たりどれだけ存在するかで性能差が生じた。しかし、樹脂系バインダーの場合は、多孔質の影響はほぼ喪失していると考察され、骨材間隙の大きさが性能差を左右すると推察した。すなわち、[0.2-5CA]の方が骨材上限が大きいため吸水量が大きくなったためと考察できる。
【0035】
一方、[0.2-2CA]と[0.2-5CA]の保水量の差であるが、エポキシ樹脂が骨材をコーティングすることで、骨材間隙に変化を与えた可能性がある。具体的には、[0.2-5CA]はエポキシ樹脂が間隙に入り込むことで、毛細管力を生じやすい環境に近づいたと考察できる。
【0036】
[2-7CA]は、75g(約82%喪失)の滲出水(降下水)が発生しており、多孔質特性の喪失がセメント使用の場合と比較して顕著であり、約24%の滲出水(降下水)増加となって影響が表われた。
【0037】
以上のことから、エポキシ樹脂を使用した場合、そのコーティング作用により、骨材の多孔質特性が損なわれる可能性が高いこと、また、粒度もコーティング作用により間隙の毛細管力が変化する可能性が高いことに留意して、吸水性・排水性・保水性をコントロールすることが重要であることが分かった。
【0038】
次に、バインダーとしてジオセメント(タフロック:商品名)を使用した場合の粒度別給水変化を図7(a)のグラフに、粒度別保水量を図7(b)のグラフ及び表5に示す。
【0039】
【表5】
【0040】
ジオセメント(タフロック:商品名)は、六価クロムが含まれないセメント系地盤改良材である。セメント系バインダーの種類による特性の差異確認のため試験を行った。尚、本試験では[0-2YS]は除いた。
【0041】
吸水量及び保水量変化ともにポルトランドセメントと同じ順番で実施した。ジオセメントは、ポルトランドセメントより接着力が危弱であるため、骨材同士の接着点が矮小であると看取される。したがって、ポルトランドセメントの同じ粒度より間隙が大きくなり、[0.2-2CA]と[0.2-5CA]は吸水量及び保水量の値がポルトランドセメントより高い。
【0042】
[2-7CA]については、同様の理由で間隙がポルトランドセメントより大きくなり、滲出水(降下水)が70g(71%喪失)とポルトランドセメントを約13%上回っていた。
【0043】
以上のことから、ジオセメント(地盤改良材)を使用した場合、ポルトランドセメントと同様の性能曲線と高い性能を発揮できるが、接着力の弱さと相殺されると考察できる、したがって、配合量(ジオセメントの添加量)を適切に計量することが重要であることが分かった。
【0044】
上記各試験例により得られた各供試体を30分間水浸して取り出し、滲出水(下降水)を切った状態で保水量を測定した。図8にそのグラフを示す。
【0045】
セメント系バインダー(ポルトランドセメント及びジオセメント)は、[0.2-2CA]の保水量が大、粒度が大きくなるほど少なくなる。ジオセメントの[0.2-2CA]及び[0.2-5CA]はセメントより大きくなっている。[0.2-5CA]はいずれのバインダーでも近似した保水量の値を保っているので、植栽用基材の骨材に適していると考察できる。
【実施例0046】
図9(a)に示すように、比較的粒径の細かい0.2~2mmの骨材で板状の植生用基材(保水プレート8)を作製した。これは肉厚が薄い容器や客土の保湿調整や自動灌水のために使用することができる。また、比較的粒径の粗い2~7mmの骨材を用いれば透水型になり、透水プレートとして良好に機能する。例えば、図9(b)に示すように、苔類Pのジオラマベースとして好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 植木鉢(植栽用基材)
2 植木鉢用型枠(外枠)
2a リブ
3 植木鉢用型枠(内枠)
3a 鍔
4 ハンドル
5 プール
6 客土
7 底床
8 保水プレート
P 植物(苔)
W 水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9