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  • 特開-建物構造 図1
  • 特開-建物構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094886
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/20 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
E04B1/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210455
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 綾香
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 好徳
(57)【要約】
【課題】建物のデザイン性を確保しながら、ウォールガーダに使用するコンクリート量の削減を図れるようにする。
【解決手段】建物1の外壁部3を構成するウォールガーダ4を備えた建物構造において、ウォールガーダ4には、外壁部3の外壁面3Aから外方に突出する突出部4Cがウォールガーダ4の全長又は略全長にわたって一体的に備えられ、突出部4Cの外壁面3A側には、ウォールガーダ4の全長又は略全長にわたる切欠部4Caが形成されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁部を構成するウォールガーダを備えた建物構造であって、
前記ウォールガーダには、前記外壁部の外壁面から外方に突出する突出部が前記ウォールガーダの全長又は略全長にわたって一体的に備えられ、
前記突出部の前記外壁面側には、前記ウォールガーダの全長又は略全長にわたる切欠部が形成されている建物構造。
【請求項2】
前記突出部は、その下部側に前記切欠部が形成されるとともに、当該突出部の上部側が前記ウォールガーダの下部から外方に突出する状態で、前記ウォールガーダに一体的に備えられ、
前記建物内に給気する給気口が、前記外壁部における前記切欠部と連通する高さ位置に配置されている請求項1に記載の建物構造。
【請求項3】
前記突出部は、その下端で下向きに開口する状態で当該突出部の下端から前記給気口の下端にわたる縦長の給気経路部を有するように、前記切欠部が前記突出部の下端から上下中間部にわたって形成されている請求項2に記載の建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁部を構成するウォールガーダ(壁梁)を備えた建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁部を構成するウォールガーダを備えた建物構造においては、例えば、図4に示すように、ウォールガーダ4に、外壁部3の外壁面3Aから外方に突出する突出部4Cをウォールガーダ4の全幅にわたって一体的に備えることで、外部からは、ウォールガーダ4の全幅にわたる梁形が立体的に見えるようにして、建物のデザイン性を向上させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような突出部をウォールガーダに備えると、ウォールガーダに使用するコンクリート量が増えてウォールガーダの重量が増すことにより、これに応じてウォールガーダの梁せいをより高くする必要が生じ、これにより、ウォールガーダに使用するコンクリート量が更に増えることになる。
【0004】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、建物のデザイン性を確保しながら、ウォールガーダに使用するコンクリート量の削減を図れるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、建物の外壁部を構成するウォールガーダを備えた建物構造であって、
前記ウォールガーダには、前記外壁部の外壁面から外方に突出する突出部が前記ウォールガーダの全長又は略全長にわたって一体的に備えられ、
前記突出部の前記外壁面側には、前記ウォールガーダの全長又は略全長にわたる切欠部が形成されている点にある。
【0006】
本構成によると、ウォールガーダの全長又は略全長にわたる突出部を、外部からは梁形として立体的に見せることができ、これにより、建物のデザイン性を向上させることができる。
そして、突出部の外壁面側には前述した切欠部が形成されることにより、突出部の見附面積を変えることなく、ウォールガーダに使用するコンクリート量を削減することができ、これに応じてウォールガーダの重量が低下することにより、ウォールガーダの梁せいを低くすることができ、これに応じて、ウォールガーダに使用するコンクリート量を更に削減することができる。
その結果、建物のデザイン性を確保しながら、ウォールガーダに使用するコンクリート量の削減を図ることができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記突出部は、その下部側に前記切欠部が形成されるとともに、当該突出部の上部側が前記ウォールガーダの下部から外方に突出する状態で、前記ウォールガーダに一体的に備えられ、
前記建物内に給気する給気口が、前記外壁部における前記切欠部と連通する高さ位置に配置されている点にある。
【0008】
本構成によると、突出部の切欠部を給気経路の一部に有効利用しながら、給気口を突出部にて覆い隠すことができ、これにより、建物のデザイン性を確保しながら、建物内への給気を、給気口からの雨水の浸入などが防止された好適な状態で行うことができる。
又、給気口が突出部の下端よりも上方の位置に配置されることから、給気口が突出部の下方に配置される場合に比較して、上下のウォールガーダ間に備えられる窓の上下長さを長くすることができ、これにより、採光などの面で有利にすることができる。
その結果、建物のデザイン性を確保しながら、建物内への給気や採光などをより好適に行うことができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記突出部は、その下端で下向きに開口する状態で当該突出部の下端から前記給気口の下端にわたる縦長の給気経路部を有するように、前記切欠部が前記突出部の下端から上下中間部にわたって形成されている点にある。
【0010】
本構成によると、突出部が縦長の給気経路部を有することで、給気口を外部から更に見え難くすることができるとともに、給気経路部に面する外壁部の壁面部分が水返しとして機能することにより、強風で雨水が突出部の下端の開口から切欠部に吹き込むような状況においても、給気口からの雨水の浸入などを防止することができる。
その結果、建物のデザイン性や建物内への給気性を確保しながら、建物内への雨水の浸入などをより好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ウォールガーダ(壁梁)を備えた建物の正面図
図2図1のII-II矢視断面図
図3】別実施形態でのウォールガーダの形状などを示す要部の垂直断面図
図4】従来のウォールガーダの形状を示す要部の垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1~2に示すように、本実施形態で例示する建物1は鉄筋コンクリート造(RC造)で、その外周部には、複数の外部柱2と、外部柱2間にわたって建物1の外壁部3を構成する複数のウォールガーダ(壁梁)4と、外部柱2とウォールガーダ4とで囲まれた開口部5に設置される複数の窓6などが備えられている。
【0014】
図2に示すように、建物1内における各階のスラブ7とスラブ7に吊り下げ支持された天井パネル8との間には設備空間9が形成されている。各設備空間9には、建物1の外壁部3を構成する窓枠6Aに備えられた給気口10から建物1内の各室11などにわたる給気経路Rを形成する給気ダクト12などが設置されている。
【0015】
図1~2に示すように、各外部柱2は、それらの外部側が外壁部3の外壁面3Aから外方に張出す状態で建物1の外周部に配置されている。これにより、建物1の全長にわたる各外部柱2の外部側を、外部からは柱形として立体的に見せることができる。
【0016】
各ウォールガーダ4は、スラブ7から立ち上がる腰壁部4Aと、スラブ7から垂れ下がる垂れ壁部4Bとを有し、これらの腰壁部4Aと垂れ壁部4Bとが、各外部柱2の外部側よりも建物1側に後退した建物1の外壁部3となるように外部柱2間に配置されている。各ウォールガーダ4には、外壁部3の外壁面3Aから外方に突出する突出部4Cがウォールガーダ4の全長(又は略全長)にわたって一体的に備えられている。これにより、ウォールガーダ4の全幅にわたる突出部4Cを、外部からは梁形として立体的に見せることができる。
【0017】
図2に示すように、各ウォールガーダ4は、それらの突出部4Cの突出端面が各外部柱2の張出し端面と面一になるように形成されている。
これにより、図1に示すように、建物1の外観を、各外部柱2の外部側で形成される柱形と各ウォールガーダ4の突出部4Cで形成される梁形とからなる立体的な格子縞を有するデザイン性の高いものにすることができる。
【0018】
図2に示すように、各ウォールガーダ4の突出部4Cは、それらの突出基端側である外壁部3の外壁面3A側に、ウォールガーダの全長(又は略全長)にわたる切欠部4Caが形成されている。
これにより、各突出部4Cの見附面積を変えることなく、各ウォールガーダ4に使用するコンクリート量を削減することができ、これに応じて各ウォールガーダ4の重量が低下することにより、各ウォールガーダ4の梁せいを低くすることができ、これに応じて、各ウォールガーダ4に使用するコンクリート量を更に削減することができる。
その結果、建物1のデザイン性を確保しながら、各ウォールガーダ4に使用するコンクリート量の削減を図ることができる。
【0019】
図2に示すように、各ウォールガーダ4の突出部4Cは、その下部側に切欠部4Caが形成されるとともに、突出部4Cの上部側がウォールガーダ4の下部となる垂れ壁部4Bから外方に突出する状態で、各ウォールガーダ4に一体的に備えられている。そして、建物1内に給気する各給気口10は、建物1の外壁部3における突出部4Cの切欠部4Caと連通する高さ位置に配置されている。
【0020】
この構成により、各突出部4Cの切欠部4Caを給気経路Rの一部として有効利用しながら、各給気口10を突出部4Cにて覆い隠すことができ、これにより、建物1のデザイン性を確保しながら、建物1内への給気を、各給気口10からの雨水の浸入などが防止された好適な状態で行うことができる。
又、各給気口10が突出部4Cの下端よりも上方の位置に配置されることから、各給気口10が突出部4Cの下方に配置される場合に比較して、上下のウォールガーダ4間に備えられる窓6の上下長さを長くすることができ、これにより、採光などの面で有利にすることができる。
その結果、建物のデザイン性を確保しながら、建物内への給気や採光などをより好適に行うことができる。
【0021】
図2に示すように、各突出部4Cは、それらの下端で下向きに開口する状態で当該突出部4Cの下端から給気口10の下端にわたる縦長の給気経路部Raを有するように、切欠部4Caが突出部4Cの下端から上下中間部にわたって形成されている。
【0022】
この構成により、各突出部4Cが縦長の給気経路部Raを有することで、各給気口10を外部から更に見え難くすることができるとともに、給気経路部Raに面する外壁部3(窓枠6A)の壁面部分3aが水返しとして機能することにより、強風で雨水が各突出部4Cの下端の開口から切欠部4Caに吹き込むような状況においても、各給気口10からの雨水の浸入などを防止することができる。
その結果、建物1のデザイン性や建物1内への給気性を確保しながら、建物1内への雨水の浸入などをより好適に防止することができる。
【0023】
図2に示すように、各突出部4Cの下端部には、下向きに開口する給気経路部Raからの鳥類などの異物の混入を防止する防鳥ネット13が設置されている。これにより、建物1のデザイン性や建物1内への給気性を確保しながら、給気経路部Raからの鳥類などの異物の混入を防止することができる。
尚、防鳥ネット13は、各突出部4Cの下端部に設置するのに代えて、建物1の外壁部3における給気口10の装備箇所に設置して、給気口10からの鳥類などの異物の混入を防止するようにしてもよい。
【0024】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0025】
(1)上記の実施形態においては、建物1として、立体的な格子縞の外観を有するものを例示したが、これに限らず、例えば、各ウォールガーダ4の突出部4Cで形成される立体的な梁形の外観を有するものであってもよい。
【0026】
(2)上記の実施形態においては、ウォールガーダ4として、腰壁部4Aと垂れ壁部4Bとを有するものを例示したが、これに限らず、例えば、腰壁部4Aと垂れ壁部4Bとのいずれか一方を有するものであってもよい。
【0027】
(3)上記の実施形態においては、ウォールガーダ4として、その下部側に突出部4Cが備えられたものを例示したが、これに限らず、例えば、ウォールガーダ4の上部側又は上下中間部に突出部4Cが備えられたものであってもよい。
【0028】
(4)上記の実施形態においては、ウォールガーダ4として、突出部4Cの外壁面3A側に切欠部4Caが形成されることによる重量の低下に応じてウォールガーダ4の梁せいを低くするものを例示したが、これに限らず、例えば、図3に示すように、ウォールガーダ4の梁せいを変えずに、突出部4Cの外壁面3A側に切欠部4Caが形成されるものであってもよい。
【0029】
(5)上記の実施形態においては、ウォールガーダ4として、突出部4Cにおける外壁面3A側の下部側に切欠部4Caが形成されるものを例示したが、これに限らず、例えば、突出部4Cにおける外壁面3A側の上部側又は上下両側に切欠部4Caが形成されるものであってもよい。
【0030】
(6)上記の実施形態においては、ウォールガーダ4として、突出部4Cに縦長の給気経路部Raを有するものを例示したが、これに限らず、例えば、突出部4Cに縦長の給気経路部Raを有していないものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 建物
3 外壁部
3A 外壁面
4 ウォールガーダ
4C 突出部
4Ca 切欠部
10 給気口
Ra 給気経路部
図1
図2
図3
図4