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特開2023-94903強誘電体メモリの読み出し回路、強誘電体メモリ及び強誘電体メモリの読み出し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094903
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】強誘電体メモリの読み出し回路、強誘電体メモリ及び強誘電体メモリの読み出し方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/22 20060101AFI20230629BHJP
   G11C 7/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G11C11/22 230
G11C7/06 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210496
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520233375
【氏名又は名称】富士通セミコンダクターメモリソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 哲朗
(57)【要約】
【課題】強誘電体メモリの読み出し時に、ノイズの影響を受けにくくする。
【解決手段】読み出し回路10の制御回路11が、メモリセル13からのデータの読み出し時に、強誘電体キャパシタ13aの一方の端子に電気的に接続されるビット線(BL)の電位であるビット線電位と、第1の参照電位(VREF1)との比較結果に基づいて、強誘電体キャパシタ13aの他方の端子に電気的に接続されるプレート線(PL)と、ビット線との間の電圧であるメモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御し、センスアンプ12が、入力電圧が固定されたときの、ビット線電位と第2の参照電位(VREF2)との比較結果に基づいて、データの値を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体キャパシタを含むメモリセルを備えた強誘電体メモリの読み出し回路において、
前記メモリセルからのデータの読み出し時に、前記強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続されるビット線の電位であるビット線電位と、第1の参照電位との比較結果に基づいて、前記強誘電体キャパシタの他方の端子に電気的に接続されるプレート線と、前記ビット線との間の電圧である前記メモリセルの入力電圧が固定されるように前記入力電圧を制御する制御回路と、
前記入力電圧が固定されたときの、前記ビット線電位または前記プレート線の電位であるプレート線電位と、第2の参照電位との比較結果に基づいて、前記データの値を判定するセンスアンプと、
を有する強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項2】
前記制御回路は、第1の入力端子が前記ビット線電位となり、第2の入力端子が前記第1の参照電位となる差動増幅器を含む、請求項1に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項3】
前記第1の参照電位は一定の電位であり、
前記制御回路は、前記ビット線電位が前記第1の参照電位に達したときに、前記プレート線電位の上昇を止めることで、前記入力電圧を固定する、請求項1または2に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項4】
一端が前記プレート線に電気的に接続され、他端が参照ビット線に電気的に接続されるキャパシタを有し、
前記第1の参照電位は、前記参照ビット線の電位である、
請求項1または2に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項5】
前記制御回路は、前記メモリセルに第1の値が記憶されている場合、前記ビット線電位が、前記参照ビット線の電位に達したときに、前記プレート線電位を固定し、
前記メモリセルに前記第1の値とは異なる第2の値が記憶されている場合、前記プレート線電位は、最大値に到達するまで上昇し、前記最大値に到達したときに、前記ビット線電位が固定される、
請求項4に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項6】
一端が接地され、他端が参照ビット線に電気的に接続されるキャパシタを有し、
前記第1の参照電位は、前記参照ビット線の電位である、
請求項1または2に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項7】
前記制御回路は、前記ビット線電位が前記参照ビット線の電位を下回ったときに、前記ビット線電位を固定する、請求項6に記載の強誘電体メモリの読み出し回路。
【請求項8】
強誘電体キャパシタを含むメモリセルと、
前記メモリセルからのデータの読み出し時に、前記強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続されるビット線の電位であるビット線電位と、第1の参照電位との比較結果に基づいて、前記強誘電体キャパシタの他方の端子に電気的に接続されるプレート線と、前記ビット線との間の電圧である前記メモリセルの入力電圧が固定されるように前記入力電圧を制御する制御回路と、前記入力電圧が固定されたときの、前記ビット線電位または前記プレート線の電位であるプレート線電位と、第2の参照電位との比較結果に基づいて、前記データの値を判定するセンスアンプと、を備えた読み出し回路と、
を有する強誘電体メモリ。
【請求項9】
強誘電体キャパシタを含むメモリセルを備えた強誘電体メモリの読み出し方法において、
制御回路が、前記メモリセルからのデータの読み出し時に、前記強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続されるビット線の電位であるビット線電位と、第1の参照電位との比較結果に基づいて、前記強誘電体キャパシタの他方の端子に電気的に接続されるプレート線と、前記ビット線との間の電圧である前記メモリセルの入力電圧が固定されるように前記入力電圧を制御し、
センスアンプが、前記入力電圧が固定されたときの、前記ビット線電位または前記プレート線の電位であるプレート線電位と、第2の参照電位との比較結果に基づいて、前記データの値を判定する、
強誘電体メモリの読み出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体メモリの読み出し回路、強誘電体メモリ及び強誘電体メモリの読み出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリにおいて、強誘電体キャパシタを含むメモリセルは、強誘電体の分極状態によって“0”または“1”のデータを記憶する。
読み出し時には、たとえば、強誘電体キャパシタの一方の端子に接続されるプレート線の電位(以下プレート線電位という)が上げられる。このとき、強誘電体キャパシタの他方の端子に電気的に接続されるビット線の電位(以下ビット線電位という)は、メモリセルに“0”が記憶されているか“1”が記憶されているかによって異なる。このようなビット線電位の相違は、強誘電体の分極反転の有無によって生じる。
【0003】
たとえば、上記のようにプレート線電位を上げた場合、メモリセルに“1”が記憶されているときには、強誘電体の分極反転が生じ、ビット線に大きな電流が流れる。これに対して、メモリセルに“0”が記憶されているとき、プレート線電位を上げても分極反転が生じず、ビット線にあまり電流が流れない。ビット線に接続されるセンスアンプは、ビット線電位と参照電位との比較結果に応じて、データを判定する。
【0004】
なお、上記のような強誘電体の分極の反転を伴う読み出しは、破壊読出しと呼ばれる。
また、強誘電体メモリでは、読み出し後にも同じデータを同じメモリセルに保持させるために、再書き込みが行われる。
【0005】
ところで、従来、プレート線電位を上げたときのビット線電位と参照電位との比較結果に応じ、ビット線電位が変化しないようにビット線に対し電荷の供給を行うとともに、供給した電荷量に基づいてデータを判別する技術があった(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来、参照電位を生成するためのメモリセルの劣化による参照電位の不安定化を防ぐため、分極反転が生じない“0”を記憶したメモリセルからの読み出し電位を上昇させて参照電位を得る技術があった(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
さらに、従来、抵抗体を介してビット線を充電し、メモリセルにおける分極反転の有無によりビット線電位の上昇速度を顕著に異ならせ、十分な読み出しマージンが得られるタイミングでデータ判別を行う技術があった(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-351374号公報
【特許文献2】特開2001-57071号公報
【特許文献3】特開2006-31800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
強誘電体メモリにおいて、メモリセルの疲労劣化などにより、“0”と“1”の読み出しマージンが小さくなった場合、ノイズの影響を受けやすくなり、動作不良が発生する可能性がある。
【0010】
1つの側面では、本発明は、ノイズの影響を受けにくい読み出し回路、そのような読み出し回路を有する強誘電体メモリ及び強誘電体メモリの読み出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの実施態様では、強誘電体キャパシタを含むメモリセルを備えた強誘電体メモリの読み出し回路において、前記メモリセルからのデータの読み出し時に、前記強誘電体キャパシタの一方の端子に電気的に接続されるビット線の電位であるビット線電位と、第1の参照電位との比較結果に基づいて、前記強誘電体キャパシタの他方の端子に電気的に接続されるプレート線と、前記ビット線との間の電圧である前記メモリセルの入力電圧が固定されるように前記入力電圧を制御する制御回路と、前記入力電圧が固定されたときの、前記ビット線電位または前記プレート線の電位であるプレート線電位と、第2の参照電位との比較結果に基づいて、前記データの値を判定するセンスアンプと、を有する強誘電体メモリの読み出し回路が提供される。
【0012】
また、1つの実施態様では、強誘電体メモリが提供される。
また、1つの実施態様では、強誘電体メモリの読み出し方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
1つの側面では、本発明によれば、強誘電体メモリのメモリセルからのデータの読み出し時に、ノイズの影響を受けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。
図2】強誘電体キャパシタのヒステリシス・ループ特性を示す図である。
図3】第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図4】VPLとBLに供給される電荷量との関係を示す図である。
図5】比較例の強誘電体メモリの一部を示す図である。
図6】比較例の強誘電体メモリの読み出し動作の一例を示すタイミングチャートである。
図7】強誘電体メモリの一例を示す図である。
図8】メモリセルアレイの一部とコラム関連回路部の一部の一例を示す図である。
図9】第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。
図10】第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11】VPLとBLに供給される電荷量との関係を示す図である。
図12】第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。
図13】第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図14】VBL及びVRBLと強誘電体キャパシタに供給される電荷量との関係を示す図である。
図15】比較例の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。
図16】第1の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。
図17】第2の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。
図18】第3の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。なお、図1においてWLはワード線、BLはビット線、PLはプレート線を表す。
【0016】
第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10は、WL、PL及びBLに接続されたメモリセル13に記憶されているデータを読み出す回路である。
メモリセル13は、強誘電体キャパシタ13aと、nチャネル型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)(以下nMOSと略す)13bとを有する。強誘電体キャパシタ13aの一端はPLに接続されており、他端はnMOS13bのドレインに接続されている。nMOS13bのソースはBLに接続されており、nMOS13bのゲートはWLに接続されている。
【0017】
このようなメモリセル13では、読み出し時や書き込み時に、WLの電位が引き上げられると、nMOS13bがオン状態となり、強誘電体キャパシタ13aの上記他端とBLとが電気的に接続される。なお、nMOS13bは、アクセストランジスタ、またはアクセスゲートなどと呼ばれる場合もある。
【0018】
読み出し回路10は、制御回路11とセンスアンプ(図1では“SA”と表記されている)12を有する。
制御回路11は、BLの電位であるビット線電位と、参照電位(VREF1)との比較結果に基づいて、PLとBLとの間の電圧であるメモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0019】
第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10では、制御回路11は、差動増幅器11aを有する。差動増幅器11aは反転入力端子(図1では“-”と表記されている)と非反転入力端子(図1では“+”と表記されている)とを有し、反転入力端子はBLに接続されており、非反転入力端子の電位は、VREF1となっている。また、差動増幅器11aの出力端子は、PLに接続されている。ここで、VREF1は一定の電位であり、後述の参照電位生成回路24(図7参照)によって差動増幅器11aの非反転入力端子に印加される。VREF1は読み出しマージンが適切な大きさになるように、適宜設定される。
【0020】
差動増幅器11aは、メモリセル13からデータを読み出す際に有効となり、ビット線電位とVREF1との差を増幅した信号を出力してプレート線電位を上昇させる。増幅率は、たとえば、100倍、1000倍などである。
【0021】
このような差動増幅器11aは、ビット線電位がVREF1に達したときに、プレート線電位の上昇を止めることで、メモリセル13の入力電圧を固定する。
センスアンプ12は、PLに接続されている。センスアンプ12は、入力電圧が固定されたときの、プレート線電位と、参照電位(VREF2)との比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。ここで、VREF2は一定の電位であり、後述の参照電位生成回路24(図7参照)によってセンスアンプ12に印加される。VREF2は、たとえば、メモリセル13から“0”が読み出される場合のプレート線電位と、メモリセル13から“1”が読み出される場合のプレート線電位との、中間電位になるように設定されている。
【0022】
なお、図1には、さらに、nMOS14が示されている。nMOS14のドレインはBLに接続されており、ソースは接地されている。また、nMOS14のゲートにはプリチャージ信号であるPRECHGが入力される。PRECHGは、後述のコントローラ23(図7参照)によって供給される。さらに、図1には、ビット線容量(BLの寄生容量)15が示されている。
【0023】
このような読み出し回路10では、矢印で示されているように、PLから強誘電体キャパシタ13aに電荷が供給される。
図2は、強誘電体キャパシタのヒステリシス・ループ特性を示す図である。横軸はPLとBL間の電位差(VPL-VBL)(上記のメモリセル13の入力電圧に相当する)、縦軸は分極量Qを表す。
【0024】
図2に示すように、強誘電体キャパシタ13aは、VPL-VBLが0Vのときに分極量Qが異なる2つの安定点をもち、正側の安定点が“0”、負側の安定点が“1”に対応する。なお、正側の安定点を“1”、負側の安定点を“0”としてもよい。
【0025】
PL-VBLが上昇すると、分極量Qがヒステリシス・ループ特性に沿って矢印方向に変化する。このときの分極量Qの変化量ΔQは、正側の安定点から変化する場合よりも、負側の安定点から変化する場合の方が大きい。負側の安定点から変化する場合には、強誘電体の分極反転が生じるためである。
【0026】
したがって、たとえば、メモリセル13に“1”が記憶されていた場合、BLに大きな電流が流れ、メモリセル13に“0”が記憶されていた場合、分極反転が生じず、BLにあまり電流が流れない。
【0027】
図3は、第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。図3には、PRECHG、差動増幅器11aのイネーブル信号であるOAEN及びセンスアンプ12のイネーブル信号であるSAENの電位(V)の時間変化が示されている。さらに、図3には、WLの電位であるVWL、PLの電位であるVPL、BLの電位であるVBL及びセンスアンプ12の出力であるDATAの電位(V)の時間変化が示されている。
【0028】
PRECHGの電位が、たとえば、電源電位から接地電位(たとえば0V)に立ち下がると(タイミングt1)、nMOS14がオフ状態となり、BLはフローティング状態となる。
【0029】
WLが立ち上がり(タイミングt2)、OAENの電位が立ち上がると、差動増幅器11aが動作を開始し、VPLとVBLが上昇を開始する。これによりnMOS13bがオン状態となり、メモリセル13からのデータの読み出しが始まる。このとき、前述の分極反転の有無により、メモリセル13に“1”が記憶されている場合よりも、“0”が記憶されている場合の方が、単位時間当たりの上昇幅が小さい(つまり、上昇速度が遅い)。
【0030】
このため、VBLは、メモリセル13に“1”が記憶されている場合、メモリセル13に“0”が記憶されている場合より早くVREF1に達し(タイミングt3)、差動増幅器11aは、VPLの上昇を止める。これによりVBLの上昇も止まり、メモリセル13の入力電圧(VPL-VBL)が固定される。
【0031】
一方、VBLは、メモリセル13に“0”が記憶されている場合、メモリセル13に“1”が記憶されている場合より遅くVREF1に達し(タイミングt4)、差動増幅器11aは、VPLの上昇を止める。これによりVBLの上昇も止まり、メモリセル13の入力電圧(VPL-VBL)が固定される。
【0032】
その後、OAENの電位が立ち下がることで差動増幅器11aが動作を停止し(タイミングt5)、SAENの電位が立ち上がると、センスアンプ12は、VPLと、VREF2との比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。VPL≧VREF2の場合、DATA=“0”(たとえば、接地電位)となり、VPL<VREF2の場合、DATA=“1”(たとえば、電源電位)となる。
【0033】
その後、判定結果に基づいて、VPLとVBLが設定され(タイミングt6)、VWLがさらに上昇され、メモリセル13への再書き込みが行われる。“0”が再書き込みされる場合、VPLはさらに引き上げられ、VBLは、接地電位に引き下げられる。“1”が再書き込みされる場合、VPLは、接地電位に引き下げられ、VBLはさらに引き上げられる。
【0034】
同じWLにメモリセル13が複数接続されている場合(図8参照)、上記の読み出し方法によれば、VPLが各メモリセルについて制御される。このため、同じWLに接続される複数のメモリセルに対する再書き込み時には、“0”を書き込む処理と“1”を書き込む処理を、後述の比較例(図6参照)のように別々のタイミングで行わなくてよい。
【0035】
PRECHGの電位が、電源電位に立ち上がると(タイミングt7)、nMOS14がオン状態となり、VBLは接地電位で固定される。
図4は、VPLとBLに供給される電荷量との関係を示す図である。横軸はVPLを表し、縦軸はBLに供給される電荷量(Q)を表す。
【0036】
図4には、メモリセル13に“0”が記憶されている場合と、メモリセル13に“1”が記憶されている場合のVPLとBLに供給される電荷量との関係が示されている。QVREF1は、VBL=VREF1の場合にBLに供給される電荷量を表している。また、VPL1は、メモリセル13に“1”が記憶されている場合において、Q=QVREF1となるときの、VPLである。VPL0は、メモリセル13に“0”が記憶されている場合において、Q=QVREF1となるときの、VPLである。
【0037】
したがって、第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10において、読み出しマージンは、VPL0-VPL1である。読み出しマージンは、QVREF1の値によって決まるため、ビット線容量15の影響を受ける。ビット線容量15の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係については後述する(図16参照)。
【0038】
上記のような第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10では、制御回路11が、VBLとVREF1との比較結果に基づいて、メモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0039】
たとえば、VPLが上昇する過程でノイズによりVBLが一時的にVREF1を超え、VPLの上昇が止まっても、VBLが元に戻ると再びVPLは上昇を続け、VBLがVREF1に達したときに、VPLの上昇が止まりメモリセル13の入力電圧が固定される。
【0040】
そして、センスアンプ12が、入力電圧が固定されたときの、VPLとVREF2との比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定するため、ノイズの影響を受けにくい。
【0041】
また、読み出し回路10は、制御回路11が差動増幅器11aを含んでおり、差動増幅器11aにより、VBLとVREF1の差が検出されている。差動増幅器11aのゲインは大きくすることが容易であり、ゲインが大きければ差動増幅器11aの入力オフセットやVREF1のばらつきがあっても正しく動作させることが可能である。
【0042】
(比較例)
図5は、比較例の強誘電体メモリの一部を示す図である。図1に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。
【0043】
図5では、センスアンプ12は、BLに接続されており、VBLとVREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。
【0044】
図6は、比較例の強誘電体メモリの読み出し動作の一例を示すタイミングチャートである。図6には、PRECHG、センスアンプ12のイネーブル信号であるSAENの電位(V)の時間変化が示されている。さらに、図6には、WLの電位であるVWL、PLの電位であるVPL、BLの電位であるVBL及びセンスアンプ12の出力であるDATAの電位(V)の時間変化が示されている。
【0045】
PRECHGの電位が、たとえば、電源電位から接地電位(たとえば0V)に立ち下がると(タイミングt10)、nMOS14がオフ状態となり、BLはフローティング状態となる。
【0046】
WLが立ち上がり(タイミングt11)、PLに所定のVPLが印加されると、VBLも上昇を開始する。これによりメモリセル13からのデータの読み出しが始まる。このとき、前述の分極反転の有無により、メモリセル13に“1”が記憶されている場合よりも、“0”が記憶されている場合の方が、VBLの単位時間当たりの上昇幅が小さい(つまり、上昇速度が遅い)。
【0047】
SAENの電位が立ち上がると(タイミングt12)、センスアンプ12は、VBLと、VREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。VBL≧VREFの場合、DATA=“1”(たとえば、電源電位)となり、VBL<VREFの場合、DATA=“0”(たとえば、接地電位)となる。
【0048】
その後、“0”の再書き込みを行うために、VPLがそのまま維持された状態でVBLが、接地電位に引き下げられる(タイミングt13)。次に、“1”の再書き込みを行うために、VBLがそのまま維持された状態でVPLが、接地電位に引き下げられる(タイミングt14)。
【0049】
PRECHGの電位が、電源電位に立ち上がると(タイミングt15)、nMOS14がオン状態となり、VBLは接地電位で固定される。
このような、比較例の強誘電体メモリでは、強誘電体キャパシタ13aの劣化などにより、読み出しマージンが小さくなると、ノイズの影響を受けやすくなる。
【0050】
これに対して、第1の実施の形態の強誘電体メモリでは、読み出し回路10を有することで、前述の理由からノイズの影響を受けにくい。
(読み出し回路10が適用される強誘電体メモリの例)
図7は、強誘電体メモリの一例を示す図である。
【0051】
強誘電体メモリ20は、メモリセルアレイ21、アドレスバッファ22、コントローラ23、参照電位生成回路24、ロウ関連回路部25、コラム関連回路部26を有する。
メモリセルアレイ21は、マトリクス状に配置された複数のメモリセルと、複数のビット線、複数のワード線及び複数のプレート線を有する(後述の図8参照)。
【0052】
アドレスバッファ22は、強誘電体メモリ20の外部からアドレスを受信し、受信したアドレスを、ロウ関連回路部25とコラム関連回路部26に供給する。
コントローラ23は、強誘電体メモリ20の外部からコマンド(チップセレクト信号、ライトイネーブル信号、出力イネーブル信号など)を受信する。そして、コントローラ23は、受信したコマンドに基づいて、ロウ関連回路部25やコラム関連回路部26に各種の制御信号(前述のPRECHG、SAENなど)を供給する。
【0053】
参照電位生成回路24は、前述の参照電位(VREF1やVREF2)を生成する。
ロウ関連回路部25は、図示を省略しているが、たとえば、ロウデコーダやドライバ回路を含む。ロウデコーダは、アドレスに含まれるロウアドレス(たとえば、アドレス信号の上位側のビット)をデコードすることでロウデコード信号を生成し、生成したロウデコード信号をドライバ回路に供給する。ドライバ回路は、複数のワード線のうち、ロウデコード信号により指定されるワード線に、コントローラ23から供給される制御信号に応じて、所定期間、所定の電圧を印加する。
【0054】
コラム関連回路部26は、図示を省略しているが、コラムデコーダやライトアンプ、入出力回路の他、図1に示したような読み出し回路10を含む。
図8は、メモリセルアレイの一部とコラム関連回路部の一部の一例を示す図である。
【0055】
図8に示すように、メモリセルアレイ21は、図1に示したメモリセル13を含む。読み出し回路10が用いられる場合、同一WLに接続される複数のメモリセルは、それぞれVPLが異なるため、PLはWLに対して直交に配置されている。
【0056】
また、コラム関連回路部26は、図1に示したnMOS14や、読み出し回路10を含む。さらに、コラム関連回路部26は、コラムデコーダ・ライトアンプ部26a、入出力回路26bを含む。nMOS14や読み出し回路10と同様の構成は、BLとPLによるペアごとに設けられている。
【0057】
コラムデコーダ・ライトアンプ部26aは、たとえば、コラムデコーダ、ライトアンプ、コラムスイッチを含む。コラムデコーダはアドレスに含まれるコラムアドレス(たとえば、アドレス信号の下位側のビット)をデコードすることでコラムデコード信号を生成する。生成されたコラムデコード信号はコラムスイッチに供給され、コラムスイッチは、コラムデコード信号に基づいて、複数のBLや複数のPLのうち、ライトアンプや入出力回路26bに接続するものを選択する。
【0058】
入出力回路26bは、たとえば、強誘電体メモリ20の外部から供給されるライトデータを保持するライトバッファを含む。ライトバッファは、書き戻しのため、センスアンプ12が読み出したデータを保持する機能を有していてもよい。
【0059】
また、入出力回路26bは、センスアンプ12により判定されたデータの値を保持し、出力する。
読み出し回路10は、以上のような強誘電体メモリ20に適用可能である。
【0060】
(第2の実施の形態)
図9は、第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。図9において、図1に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。なお、図1においてWLはワード線、BLはビット線、PLはプレート線、RWLは参照ワード線、RBLは参照ビット線を表す。
【0061】
第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路30は、第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10と同様に、センスアンプ12と制御回路31とを有する。さらに、読み出し回路30は、キャパシタ32と、nMOS33とを有する。
【0062】
キャパシタ32は、一端がPLに電気的に接続され、他端はnMOS33のドレインに接続されている。nMOS33のソースはRBLに接続されており、nMOS33のゲートはRWLに接続されている。なお、キャパシタ32は、強誘電体キャパシタではなく、印加電圧の増加に比例して保持電荷量が上昇する線形キャパシタである。メモリセル13の読み出し時には、RWLの電位が引き上げられ、nMOS33がオン状態となり、キャパシタ32の上記他端とBLとが電気的に接続される。
【0063】
読み出し回路30の制御回路31は、BLの電位であるVBLとRBLの電位であるVRBLとの比較結果に基づいて、PLとBLとの間の電圧であるメモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0064】
制御回路31は、読み出し回路10の制御回路11と同様に、差動増幅器31aを有しており、差動増幅器31aの反転入力端子はBLに接続されている。一方、差動増幅器31aの非反転入力端子はRBLに接続されている。差動増幅器31aの出力端子は、PLに接続されている。
【0065】
差動増幅器31aは、メモリセル13からデータを読み出す際に有効となり、VBLとVRBLとの差を増幅した信号を出力してPLの電位であるVPLを上昇させる。差動増幅器31aは、VBLがVRBLに達したときは、VPLの上昇を止めることで、メモリセル13の入力電圧を固定する。
【0066】
センスアンプ12は、PLに接続されている。センスアンプ12は、入力電圧が固定されたときの、VPLと、VREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。ここで、VREFは一定の電位であり、図7に示した参照電位生成回路24によってセンスアンプ12に印加される。VREFは、たとえば、図1のVREF2と同様に設定される。
【0067】
なお、図9には、さらに、nMOS34が示されている。nMOS34のドレインはRBLに接続されており、ソースは接地されている。また、nMOS34のゲートにはPRECHGが入力される。さらに、図9は、RBLのビット線容量35が示されている。
【0068】
このような読み出し回路30では、2つの矢印で示されているように、PLから強誘電体キャパシタ13aとキャパシタ32に電荷が供給される。
図10は、第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。図10には、PRECHG、差動増幅器31aのイネーブル信号であるOAEN及びセンスアンプ12のイネーブル信号であるSAENの電位(V)の時間変化が示されている。さらに、図10には、WLの電位であるVWL、PLの電位であるVPL、BLの電位であるVBL、RBLの電位であるVRBL及びセンスアンプ12の出力であるDATAの電位(V)の時間変化が示されている。
【0069】
PRECHGの電位が、たとえば、電源電位から接地電位(たとえば0V)に立ち下がると(タイミングt20)、nMOS14,34がオフ状態となり、BLとRBLはフローティング状態となる。
【0070】
WLが立ち上がり(タイミングt21)、OAENの電位が立ち上がると、差動増幅器31aが動作を開始し、VPLとVBLとが上昇を開始する。これにより、nMOS13bがオン状態となり、メモリセル13からのデータの読み出しが始まる。このとき、前述の分極反転の有無により、メモリセル13に“1”が記憶されている場合よりも、“0”が記憶されている場合の方が、VBLの単位時間当たりの上昇幅が小さい(つまり、上昇速度が遅い)。一方、図示が省略されているが、タイミングt21において、RWLの電位も立ち上がり、nMOS33がオン状態となる。これにより、VRBLは、時間に比例して上昇する。
【0071】
図10には、VBLとVRBLの立ち上がり部分の拡大図が示されている。メモリセル13に“0”が記憶されている場合と、“1”が記憶されている場合のそれぞれについてのVBLが実線で示されている。一方、VRBLは、拡大図では破線で示されているが、タイミングt22以降は、メモリセル13に“0”が記憶されている場合について示されている。VRBLは、タイミングt22までは、メモリセル13に“0”が記憶されている場合も、“1”が記憶されている場合も同様に変化する。
【0072】
図10の拡大図に示されているように、メモリセル13に“1”が記憶されている場合、VBLは、タイミングt22においてVRBLに達する。このため、差動増幅器31aは、VPLの上昇を止める。これによりVBLとVRBLも上昇が止まり、メモリセル13の入力電圧(VPL-VBL)が固定される。
【0073】
一方、メモリセル13に“0”が記憶されている場合、VBLは、VRBLに達しない。このため、VPLは最大値(たとえば、電源電位)になるため上昇を続ける。VPLが最大値に到達すると(タイミングt23)、VBLとVRBLも上昇が止まり、メモリセル13の入力電圧(VPL-VBL)が固定される。
【0074】
その後、OAENの電位が立ち下がることで差動増幅器31aが動作を停止し(タイミングt24)、SAENの電位が立ち上がると、センスアンプ12は、VPLと、VREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。VPL≧VREFの場合、DATA=“0”(たとえば、接地電位)となり、VPL<VREFの場合、DATA=“1”(たとえば、電源電位)となる。
【0075】
その後、判定結果に基づいて、VPLとVBLが設定され(タイミングt25)、VWLがさらに上昇され、メモリセル13への再書き込みが行われる。“0”が再書き込みされる場合、VPLが維持された状態で、VBLは、接地電位に引き下げられる。“1”が再書き込みされる場合、VPLは、接地電位に引き下げられ、VBLはさらに引き上げられる。
【0076】
同じWLにメモリセル13が複数接続されている場合(図8参照)、上記の読み出し方法によれば、VPLが各メモリセルについて制御される。このため、同じWLに接続される複数のメモリセルに対する再書き込み時には、“0”を書き込む場合と“1”を書き込む場合とで、前述の比較例(図6参照)のように別々のタイミングで行わなくてよい。
【0077】
PRECHGの電位が、電源電位に立ち上がると(タイミングt26)、nMOS14,34がオン状態となり、VBLとVRBLは接地電位で固定される。
図11は、VPLとBLに供給される電荷量との関係を示す図である。横軸はVPLを表し、縦軸はBLに供給される電荷量(Q)を表す。
【0078】
図11には、メモリセル13に“0”が記憶されている場合と、メモリセル13に“1”が記憶されている場合のVPLとBLに供給される電荷量との関係が示されている。なお、図11には、VPLとRBLに供給される電荷量との関係が破線で示されている。破線の傾きは、キャパシタ32の大きさ(CREF)によって決まる。
【0079】
PL0は、メモリセル13に“0”が記憶されている場合に得られる、VPLの最大値である。VPL1は、メモリセル13に“1”が記憶されている場合において、VBL=VRBLとなるときの、VPLである。
【0080】
したがって、第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路30において、読み出しマージンは、VPL0-VPL1である。
上記のような第2の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路30では、制御回路31が、VBLとVRBLとの比較結果に基づいて、メモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0081】
たとえば、VPLが上昇する過程でノイズによりVBLが一時的にVRBLを超え、VPLの上昇が止まっても、VBLが元に戻ると再びVPLは上昇を続け、VBLがVRBLに達したときに、VPLの上昇が止まりメモリセル13の入力電圧が固定される。
【0082】
そして、センスアンプ12が、入力電圧が固定されたときの、VPLとVREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定するため、ノイズの影響を受けにくい。
【0083】
また、読み出し回路30は、制御回路31が差動増幅器31aを含んでおり、差動増幅器31aにより、VBLとVRBLの差が検出されている。差動増幅器31aのゲインは大きくすることが容易であり、ゲインが大きければ差動増幅器31aの入力オフセットやVRBLのばらつきがあっても正しく動作させることが可能である。
【0084】
さらに、読み出し回路30は、メモリセル13に“0”が記憶されている場合、VPLは、最大値に到達するまで上昇し、最大値に到達したときに、VBLが固定される。これにより、読み出しマージンを比較的大きくとることができ、さらにノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0085】
上記のような読み出し回路30も、図7に示したような強誘電体メモリ20に適用可能である。図8に示したようなコラム関連回路部26の構成を、読み出し回路30の回路構成に合わせて変更すればよい。読み出し回路30が用いられる場合、同一WLに接続される複数のメモリセルは、それぞれVPLが異なるため、PLはWLに対して直交に配置される。
【0086】
(第3の実施の形態)
図12は、第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の一例を示す図である。図12において図1に示した要素と同じ要素については同一符号が付されている。なお、図12においてWLはワード線、BLはビット線、PLはプレート線、RWLは参照ワード線、RBLは参照ビット線を表す。
【0087】
第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路40は、第1の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10と同様に、センスアンプ12と制御回路41とを有する。さらに、読み出し回路40は、キャパシタ42と、nMOS43とを有する。
【0088】
キャパシタ42は、一端が接地され、他端はnMOS43のソースに接続されている。nMOS43のドレインはRBLに接続されており、nMOS43のゲートはRWLに接続されている。なお、キャパシタ42は、強誘電体キャパシタではなく、印加電圧の増加に比例して保持電荷量が上昇する線形キャパシタである。メモリセル13の読み出し時には、RWLの電位が引き上げられ、nMOS43がオン状態となり、キャパシタ42の上記他端とBLとが電気的に接続される。
【0089】
読み出し回路40の制御回路41は、BLの電位であるVBLとRBLの電位であるVRBLとの比較結果に基づいて、PLとBLとの間の電圧であるメモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0090】
制御回路41は、読み出し回路10の制御回路11と同様に、差動増幅器41aを有している。さらに、制御回路41は、pチャネル型MOSFET(以下pMOSと略す)41b,41cとを含む。
【0091】
差動増幅器41aにおいて、反転入力端子はBLに接続されており、非反転入力端子はRBLに接続されている。また、差動増幅器41aの出力端子は、pMOS41b,41cのゲートに接続されている。pMOS41bのドレインには、RBLが接続されており、pMOS41cのドレインには、BLが接続されている。pMOS41b,41cのソースには、電源電圧(VDD)が印加される。
【0092】
差動増幅器41aは、メモリセル13からデータを読み出す際に有効となり、出力信号により、BLとRBLの電流量を制御するような機能を有する。差動増幅器41aは、後述のようにVBLがVRBLを下回ったときに、pMOS41b,41cをオフ状態とする出力信号を出力する。これによりVBLの上昇が止まり、VBLは固定される。
【0093】
第3の実施の形態の強誘電体メモリにおいて、メモリセル13の読み出し時には、VPLは接地電位(たとえば、0V)で固定される。このため、VBLの上昇が止まり、VBLが固定されると、メモリセル13の入力電圧も固定される。
【0094】
読み出し回路40において、センスアンプ12は、BLに接続されている。センスアンプ12は、入力電圧が固定されたときの、VBLと、VREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。ここで、VREFは一定の電位であり、図7に示した参照電位生成回路24によってセンスアンプ12に印加される。VREFは、たとえば、図1のVREF2と同様に設定される。
【0095】
なお、図12には、さらに、nMOS44が示されている。nMOS44のドレインはRBLに接続されており、ソースは接地されている。また、nMOS34のゲートにはPRECHGが入力される。さらに、図12は、RBLのビット線容量45が示されている。
【0096】
このような読み出し回路40では、2つの矢印で示されているように、RBLからキャパシタ42に電荷が供給され、BLから強誘電体キャパシタ13aに電荷が供給される。
図13は、第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0097】
図13には、PRECHG、差動増幅器41aのイネーブル信号であるOAEN、センスアンプ12のイネーブル信号であるSAEN、及び差動増幅器41aの出力信号であるAMPOUTの電位(V)の時間変化が示されている。さらに、図13には、WLの電位であるVWL、PLの電位であるVPL、BLの電位であるVBL、RBLの電位であるVRBL及びセンスアンプ12の出力であるDATAの電位(V)の時間変化が示されている。なお、VRBLの時間変化は、破線で示されている。
【0098】
OAENの電位が接地電位の場合、差動増幅器41aは動作せず、差動増幅器41aの出力信号であるAMPOUTは、電源電位となっている。つまり、AMPOUTの初期電位は、電源電位である。このため、pMOS41b,41cはオフ状態である。
【0099】
PRECHGの電位が、たとえば、電源電位から接地電位(たとえば0V)に立ち下がると(タイミングt30)、nMOS14,44はオフ状態となり、BLとRBLはフローティング状態となる。
【0100】
WLが立ち上がり(タイミングt31)、OAENの電位が立ち上がると、nMOS13bがオン状態となり、差動増幅器41aが動作を開始し、VBLが上昇を開始する。これに伴い、AMPOUTの電位も下降を始め、pMOS41b,41cがオン状態となり、VDDにより、BLとRBLが充電される。なお、VPLは、接地電位のままである。
【0101】
これにより、メモリセル13からのデータの読み出しが始まる。第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路40を用いた場合、図2に示した場合と異なり、メモリセル13に“0”が記憶されている場合に、分極反転が生じる。このため、メモリセル13に“1”が記憶されている場合よりも、BLから図12の強誘電体キャパシタ13aに引き抜かれる電荷量が増え、VBLの単位時間当たりの上昇幅が小さい(つまり、上昇速度が遅い)。
【0102】
一方、図示が省略されているが、タイミングt31において、RWLの電位も立ち上がり、nMOS43がオン状態となる。これにより、VRBLは、時間に比例して上昇する。
【0103】
図13には、VBLとVRBLの立ち上がり部分の拡大図が示されている。メモリセル13に“0”が記憶されている場合と、“1”が記憶されている場合のそれぞれについてのVBLが実線で示されている。一方、VRBLは、拡大図では破線で示されている。VRBLは、タイミングt32までは、メモリセル13に“0”が記憶されている場合も、“1”が記憶されている場合も同様に変化する。
【0104】
図13の拡大図に示されているように、VBLは、メモリセル13に“0”が記憶されている場合も、メモリセル13に“1”が記憶されている場合も、VRBLの上昇速度より速い。ただ、メモリセル13に“0”が記憶されている場合、しだいに上昇速度が遅くなり、タイミングt32において、VBLはVRBLを下回る。このとき、AMPOUTの電位は上昇に転じ、pMOS41b,41cがオフ状態となり、VBLとVRBLが固定される。
【0105】
一方、メモリセル13に“1”が記憶されている場合、VBLは電源電位(たとえば、VDD)に達し固定され、その後、VRBLも電源電位に達し固定される。
PLは接地電位で固定されているため、上記のようにVBLが固定されることで、メモリセル13の入力電圧(VPL-VBL)が固定される。
【0106】
その後、信号OAENの電位が立ち下がることで差動増幅器41aが動作を停止し(タイミングt33)、信号SAENの電位が立ち上がる(タイミングt34)。これにより、センスアンプ12は、VBLと、VREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定し、判定結果であるDATAを出力する。VBL≧VREFの場合、DATA=“1”(たとえば、電源電位)となり、VBL<VREFの場合、DATA=“0”(たとえば、接地電位)となる。
【0107】
その後、VWLがさらに上昇され、メモリセル13への再書き込みが行われる(タイミングt35)。まずは、VBLとVPLがそのまま維持された状態で、“1”の再書き込みが行われ、次に、“1”の再書き込みを行うために、VBLがそのまま維持された状態でVPLが、所定の電位に引き上げられる(タイミングt36)。
【0108】
信号PRECHGの電位が、電源電位に立ち上がると(タイミングt37)、nMOS14,44がオン状態となり、VBLとVRBLは接地電位で固定される。
図14は、VBL及びVRBLと強誘電体キャパシタに供給される電荷量との関係を示す図である。横軸はVPLを表し、縦軸は強誘電体キャパシタ13aに供給される電荷量(Q)を表す。
【0109】
図14には、メモリセル13に“0”が記憶されている場合と、メモリセル13に“1”が記憶されている場合のVBL及びVRBLとBLに供給される電荷量との関係が示されている。なお、図14には、VBLと電荷量との関係が実線で示され、VRBLと電荷量との関係が破線で示されている。破線の傾きは、キャパシタ32の大きさ(CREF)によって決まる。
【0110】
BL0は、メモリセル13に“0”が記憶されている場合において、VBL=VRBLとなるときの、VBLである。VBL1は、メモリセル13に“1”が記憶されている場合に得られる、VBLの最大値である。
【0111】
したがって、第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路40において、読み出しマージンは、VBL1-VBL0である。
上記のような第3の実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路40では、制御回路41が、VBLとVRBLの比較結果に基づいて、メモリセル13の入力電圧が固定されるように入力電圧を制御する。
【0112】
そして、センスアンプ12が、入力電圧が固定されたときの、VBLとVREFとの比較結果に基づいて、メモリセル13に記憶されているデータの値を判定するため、ノイズの影響を受けにくい。
【0113】
また、読み出し回路40は、制御回路41が差動増幅器41aを含んでおり、差動増幅器41aにより、VBLとVRBLの差が検出されている。差動増幅器41aのゲインは大きくすることが容易であり、ゲインが大きければ差動増幅器41aの入力オフセットやVRBLのばらつきがあっても正しく動作させることが可能である。
【0114】
上記のような読み出し回路40も、図7に示したような強誘電体メモリ20に適用可能である。図8に示したようなコラム関連回路部26の構成を、読み出し回路40の回路構成に合わせて変更すればよい。
【0115】
なお、読み出し回路40が用いられる場合、同一WLに接続される複数のメモリセルは、それぞれVPLが同じでよいため、PLは、WLに対して平行に配置されていてもよいし、直交に配置されていてもよい。
【0116】
(ビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係)
以下、上記各実施の形態の強誘電体メモリの読み出し回路10,30,40を用いた場合の、ビット線容量15の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を説明する。まず、図5に示した比較例の強誘電体メモリにおけるビット線容量15の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係について説明する。
【0117】
図15は、比較例の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。図15には、横軸がVPL、縦軸がΔQ(BLに供給される電荷の変化量)を表すVPL-ΔQ特性のグラフと、横軸がビット線容量15の大きさ(CBL)を表し、縦軸がVBLを表すCBL-VBL特性を示すグラフが示されている。
【0118】
PL-ΔQ特性を示すグラフにおいて、傾きがCBLであり、ΔQ=CBL×VBLという式で表される直線が示されている。VBLは、強誘電体キャパシタ13aとビット線容量15との容量分割により決まる。
【0119】
上記式で表される直線と、メモリセル13に“0”が記憶されている場合及び“1”が記憶されている場合のそれぞれのVPL-ΔQ特性の線との交点間の電位差が、読み出しマージン(比較例ではΔVBL)に相当する。
【0120】
比較例の強誘電体メモリでは、CBL-VBL特性を示すグラフに示されているように、ΔVBLは、CBL=CBL1では小さく、CBL=CBL2に増加すると大きくなるが、CBL=CBL3にさらに増加すると小さくなる。
【0121】
図16は、第1の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。図16には、横軸がVPL、縦軸がΔQ(BLに供給される電荷の変化量)を表すVPL-ΔQ特性のグラフと、横軸がビット線容量15の大きさ(CBL)を表し、縦軸がVPLを表すCBL-VPL特性を示すグラフが示されている。
【0122】
PL-ΔQ特性を示すグラフにおいて、VBL=ΔQ/CBL=VREF1となるときのVPLが、メモリセル13に“0”が記憶されている場合及び“1”が記憶されている場合のそれぞれについて決まる。
【0123】
図16では、メモリセル13に“0”が記憶されている場合に、VBL0=ΔQ/CBL2=VREF1となるときのVPL0と、メモリセル13に“1”が記憶されている場合に、VBL1=ΔQ/CBL2=VREF1となるときのVPL1とが示されている。VPL0とVPL1との差(ΔVPL)が、CBL=CBL2のときの読み出しマージンに相当する。
【0124】
第1の実施の形態の強誘電体メモリでは、CBL-VPL特性を示すグラフに示されているように、ΔVPLは、CBL=CBL1では小さく、CBL=CBL2に増加すると大きくなるが、CBL=CBL3にさらに増加すると小さくなる。
【0125】
このように、比較例と第1の実施の形態の強誘電体メモリでは、読み出しマージンを大きくするためには、ビット線容量15のCBLを適切な値にすることが望ましい。
図17は、第2の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。図17には、横軸がVPL、縦軸がΔQ(BLに供給される電荷の変化量)を表すVPL-ΔQ特性のグラフと、横軸がビット線容量15の大きさ(CBL)を表し、縦軸がVPLを表すCBL-VPL特性を示すグラフが示されている。
【0126】
なお、VPL-ΔQ特性のグラフにおいて、VPLとRBLに供給される電荷の変化量との関係が破線で示されている。破線の傾きは、キャパシタ32の大きさ(CREF)によって決まる。
【0127】
第2の実施の形態の強誘電体メモリでは、前述のように、メモリセル13に“0”が記憶されている場合の読み出し時には、VPLは最大値(VPL0)に固定される。一方、メモリセル13に“1”が記憶されている場合の読み出し時のΔQは、図17の破線と、VPL-ΔQ特性の線との交点であり、CBLによらず一定である。
【0128】
図17では、メモリセル13に“1”が記憶されている場合に、CBL=CBL2のときのVPL1が示されている。このVPL0とVPL1との差(ΔVPL)が、CBL=CBL2のときの読み出しマージンに相当する。
【0129】
第2の実施の形態の強誘電体メモリでは、CBL-VPL特性を示すグラフに示されているように、ΔVPLは、CBLが増加するほど大きくなる。
このように、第2の実施の形態の強誘電体メモリでは、CBLを大きくすれば、読み出しマージンを大きくすることができる。ただ、CBLが大きくなると、差動増幅器31aの入力信号が小さくなるため、どれだけCBLを大きくできるかについては、差動増幅器31aの能力による。
【0130】
図18は、第3の実施の形態の強誘電体メモリについてのビット線容量の大きさと読み出しマージンの大きさとの関係を示す図である。図18には、横軸がVBL、縦軸がΔQ(強誘電体キャパシタ13aに供給される電荷の変化量)を表すVBL-ΔQ特性のグラフと、横軸がビット線容量15の大きさ(CBL)を表し、縦軸がVBLを表すCBL-VBL特性を示すグラフが示されている。
【0131】
なお、VBL-ΔQ特性のグラフにおいて、VRBLとRBLに供給される電荷の変化量との関係が破線で示されている。破線の傾きは、キャパシタ42の大きさ(CREF)によって決まる。
【0132】
第3の実施の形態の強誘電体メモリでは、前述のように、メモリセル13に“1”が記憶されている場合の読み出し時には、VBLは最大値(VBL1)に固定される。一方、メモリセル13に“1”が記憶されている場合の読み出し時のΔQは、図18の破線と、VBL-ΔQ特性の線との交点であり、CBLによらず一定である。この交点におけるVBL1と、VBL0との差、すなわち、VBL0-VBL1が、読み出しマージンに相当する。
【0133】
第3の実施の形態の強誘電体メモリでは、CBL-VBL特性を示すグラフに示されているように、ΔVBLは、CBLにかかわらず、一定である。
このように、第3の実施の形態の強誘電体メモリでは、CBLによらず、読み出しマージンを一定の大きさとすることができる。ただ、CBLが大きくなると、差動増幅器41aの入力信号が小さくなるため、どれだけCBLを大きくできるかについては、差動増幅器41aの能力による。
【0134】
以上、実施の形態に基づき、本発明の強誘電体メモリの読み出し回路、強誘電体メモリ及び強誘電体メモリの読み出し方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【0135】
たとえば、nMOSの代わりにpMOSを用いるなど、適宜回路構成を変更可能である。
【符号の説明】
【0136】
10 読み出し回路
11 制御回路
11a 差動増幅器
12 センスアンプ
13 メモリセル
13a 強誘電体キャパシタ
13b,14 nMOS
15 ビット線容量
図1
図2
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図5
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図18