(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094905
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ルーフパネルおよび車両用ルーフ構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20230629BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B62D25/06 Z
B62D29/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210498
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA01
3D203BB59
3D203BB62
3D203BB63
3D203CA07
3D203CA53
3D203CA56
3D203CB07
(57)【要約】
【課題】車両用ルーフパネルの軽量化と剛性確保を低コストで両立させる。
【解決手段】車両上部で車両幅方向に延びるルーフリンフォース24に接合される熱可塑性樹脂製のルーフパネル3は、パネル本体31と、パネル本体31の下面に一体成形され、車両幅方向に間隔を置いて車両前後方向に延びる複数の厚肉リブ32と、を有し、厚肉リブ32は、厚みが最大でルーフリンフォース24に接合される第1の厚肉領域32aと、第1の厚肉領域32aに隣接し、第1の厚肉領域32aから離れるにつれて厚みが減少する第2の厚肉領域32bとを有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上部で車両幅方向に延びるルーフリンフォースに接合される熱可塑性樹脂製のルーフパネルであって、
パネル本体と、前記パネル本体の下面に一体成形され、車両幅方向に間隔を置いて車両前後方向に延びる複数の厚肉リブと、を有し、
前記厚肉リブは、厚みが最大で前記ルーフリンフォースに接合される第1の厚肉領域と、前記第1の厚肉領域に隣接し、前記第1の厚肉領域から離れるにつれて厚みが減少する第2の厚肉領域とを有する、ルーフパネル。
【請求項2】
前記第1の厚肉領域は、前記厚肉リブの車両幅方向の中央部に配置され、前記第2の厚肉領域は、車両前後方向および車両幅方向の両方向に沿って前記第1の厚肉領域から離れるにつれて厚みが減少する、請求項1に記載のルーフパネル。
【請求項3】
前記第1の厚肉領域を通り車両幅方向に平行な断面において、前記パネル本体に対する前記第2の厚肉領域の傾きは、10°以下である、請求項2に記載のルーフパネル。
【請求項4】
前記第1の厚肉領域は、車両前後方向に沿って複数設けられている、請求項2または3に記載のルーフパネル。
【請求項5】
前記厚肉リブは、車両前後方向に沿って前記第1の厚肉領域と交互に配置され、前記第1の厚肉領域よりも厚みが薄い第3の厚肉領域を有し、
前記第3の厚肉領域は、前記厚肉リブの車両幅方向の中央部に配置され、前記第2の厚肉領域は、車両前後方向に沿って前記第1の厚肉領域から前記第3の厚肉領域に向かって厚みが減少し、車両幅方向に沿って前記第3の厚肉領域から離れるにつれて厚みが減少する、請求項4に記載のルーフパネル。
【請求項6】
前記第3の厚肉領域を通り車両幅方向に平行な断面において、前記パネル本体に対する前記第2の厚肉領域の傾きは、10°以下であり、前記第3の厚肉領域を通り車両前後方向に平行な断面において、前記第3の厚肉領域に対する前記第2の厚肉領域の傾きは、10°以下である、請求項5に記載のルーフパネル。
【請求項7】
前厚肉リブは、車両前後方向に沿って前記第1の厚肉領域から前記第3の厚肉領域に向かって幅が減少する、請求項5または6に記載のルーフパネル。
【請求項8】
前記第1の厚肉領域の平面視における面積は、前記第3の厚肉領域の平面視における面積よりも大きい、請求項5から7のいずれか1項に記載のルーフパネル。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のルーフパネルと、
車両上部で車両幅方向に延び、前記ルーフパネルを支持するルーフリンフォースと、を有し、
前記ルーフパネルは、マスチック接着剤により、前記厚肉リブの前記第1の厚肉領域で前記ルーフリンフォースに接合されている、車両用ルーフ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフパネルおよび車両用ルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体のさらなる軽量化のために、ルーフの大部分が樹脂製のルーフパネルから構成された車両が知られている。このようなルーフパネル用の樹脂としては、剛性や耐衝撃性などの機械的強度の観点から、熱硬化性の繊維強化樹脂を用いることが検討されており(例えば、特許文献1参照)、その実用化も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱硬化性樹脂製のルーフパネルは、成形サイクルタイムが長く、成形後に後加工も必要になることから、高価であり、一部の高級車にしか採用できないのが現状である。これに対し、様々な車種への樹脂製のルーフパネルの採用拡大を図るためには、熱硬化性樹脂の代わりに安価な熱可塑性樹脂を用いることが考えられるが、そのためには、軽量化を維持しつつ必要な剛性を確保する対策が必要になる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ルーフパネルの軽量化と剛性確保を低コストで両立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明のルーフパネルは、車両上部で車両幅方向に延びるルーフリンフォースに接合される熱可塑性樹脂製のルーフパネルであって、パネル本体と、パネル本体の下面に一体成形され、車両幅方向に間隔を置いて車両前後方向に延びる複数の厚肉リブと、を有し、厚肉リブは、厚みが最大でルーフリンフォースに接合される第1の厚肉領域と、第1の厚肉領域に隣接し、第1の厚肉領域から離れるにつれて厚みが減少する第2の厚肉領域とを有している。
【0007】
また、本発明の車両用ルーフ構造は、上記ルーフパネルと、車両上部で車両幅方向に延び、ルーフパネルを支持するルーフリンフォースと、を有し、ルーフパネルは、マスチック接着剤により、厚肉リブの第1の厚肉領域でルーフリンフォースに接合されている。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、車両用ルーフパネルの軽量化と剛性確保を低コストで両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用ルーフ構造の斜視図である。
【
図3】本実施形態のルーフパネルの平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用ルーフ構造の斜視図である。
図2は、
図1のA-A線に沿った断面図である。
【0012】
車両用ルーフ構造(以下、単に「ルーフ構造」ともいう)1は、車両上部(ルーフ)の骨格を構成するルーフ骨格部材2を有している。ルーフ骨格部材2は、一対のルーフサイドレール21と、フロントヘッダーパネル22と、リアルーフレール23と、複数のルーフリンフォース24とを有している。
【0013】
ルーフサイドレール21は、車両幅方向の両端部に配置され、それぞれ車両前後方向に延びている。フロントヘッダーパネル22およびリアルーフレール23は、それぞれ車両前方側および車両後方側の端部で車両幅方向に沿って一対のルーフサイドレール21間に架け渡されている。ルーフリンフォース24は、こうして形成されたルーフ開口部25に車両前後方向に間隔を置いて配置され、車両幅方向に沿って一対のルーフサイドレール21間に架け渡されている。ルーフサイドレール21は、サイドアウター21aと、サイドアウター21aの車室内側に配置されたサイドインナー21bと、サイドアウター21aとサイドインナー21bとの間に配置されたルーフサイドレールリンフォース21cとから構成されている。これらが互いに接合されることで、ルーフサイドレール21は閉断面構造を有している。なお、図示していないが、リアルーフレール23も同様の閉断面構造を有している。
【0014】
また、ルーフ構造1は、ルーフ骨格部材2のルーフ開口部25を覆うルーフパネル3を有している。ルーフパネル3は、導電性の熱可塑性樹脂製であり、好ましくは、ポニフェニレンエーテル樹脂(PPE/PPO)製である。ルーフパネル3は、その周縁部の全周にわたって、構造用接着剤4により、ルーフサイドレール21、フロントヘッダーパネル22、およびリアルーフレール23にそれぞれ固定されている。なお、構造用接着剤4の外周側には、ルーフパネル3とルーフ骨格部材2との隙間、すなわち、ルーフサイドレール21、フロントヘッダーパネル22、およびリアルーフレール23との隙間をシールして両者間の水密性を確保するシール材5が設けられている。
【0015】
ルーフパネル3は、パネル本体31と、パネル本体31の下面に一体成形され、ルーフパネル3の剛性を高めるための複数の厚肉リブ32とを有している。詳細は後述するが、厚肉リブ32は、ルーフリンフォース24と交差するように車両前後方向に延び、その交差部分に塗布されたマスチック接着剤6により、ルーフリンフォース24に接合されている。マスチック接着剤6は、弾性を有する接着剤であり、ルーフパネル3とルーフリンフォース24とを固定してルーフパネル3の張り剛性を確保するとともに、ルーフパネル3の振動や騒音を抑制する機能も有している。
【0016】
ここで、
図3を参照して、本実施形態の厚肉リブの詳細な形状について説明する。
図3(a)は、本実施形態のルーフパネルの下面側の一部を拡大して示す平面図である。
図3(b)は、
図3(a)のB-B線に沿った断面図、
図3(c)は、
図3(a)のC-C線に沿った断面図である。なお、
図3(a)における厚肉リブの配置は、あくまで一例であり、本発明を制限するものではない。
【0017】
厚肉リブ32は、車両幅方向に間隔を置いて車両前後方向に延びるように、パネル本体31の下面に一体成形されている。厚肉リブ32は、厚みが最大の第1の厚肉領域32aと、第1の厚肉領域32aに隣接し、第1の厚肉領域32aから離れるにつれて厚みが減少する第2の厚肉領域32bとを有している。第1の厚肉領域32aは、ルーフリンフォース24に対向する位置に配置され、マスチック接着剤6が塗布されてルーフリンフォース24に接合される領域である。第1の厚肉領域32aは、厚肉リブ32の車両幅方向の中央部に配置され、車両前後方向に沿って複数設けられている。したがって、第2の厚肉領域32bは、車両前後方向および車両幅方向の両方向に沿って第1の厚肉領域32aから離れるにつれて厚みが減少するようになっている。
【0018】
また、厚肉リブ32は、車両前後方向に沿って第1の厚肉領域32aと交互に配置され、第1の厚肉領域32aよりも厚みが薄い第3の厚肉領域32cを有している。第3の厚肉領域32cは、第1の厚肉領域32aと同様に、厚肉リブ32の車両幅方向の中央部に配置されている。したがって、第2の厚肉領域32bは、車両前後方向に沿って第1の厚肉領域32aから第3の厚肉領域32cに向かって厚みが減少し、かつ車両幅方向に沿って第3の厚肉領域32cから離れるにつれて厚みが減少するようになっている。また、第1の厚肉領域32aの平面視における面積は、第3の厚肉領域32cの平面視における面積よりも大きい。これに伴い、厚肉リブ32の幅は、第1の厚肉領域32a付近で最大で、そこから車両前後方向に沿って第3の厚肉領域32cに近づくにつれて徐々に減少し、第3の厚肉領域32c付近で最小になる。
【0019】
このように、本実施形態では、ルーフパネル3に車両前後方向に延びる厚肉リブ32が設けられ、それと交差するルーフリンフォース24にルーフパネル3が支持されている。これにより、ルーフパネル3は車両前後方向と車両幅方向の両方向の荷重に耐えることができ、十分な剛性を確保することができる。また、ルーフパネル3とルーフリンフォース24を接合するマスチック接着剤6は、厚肉リブ32のうち厚みが最大の第1の厚肉領域32aに塗布されている。マスチック接着剤は、防振性や緩衝性の観点から発泡剤を含有し、加熱処理後の冷却過程での収縮(硬化)に伴い、特に薄板部材の場合には接着部分にヒケを生じさせる可能性があるが、本実施形態では、そのような領域32aの厚みが相対的に厚くなっているため、そうしたヒケの発生を抑制することができる。
【0020】
一方で、ルーフパネル3の厚みを局所的に厚くしたことによってもヒケの発生が懸念されるが、厚肉リブ32の厚みは、第1の厚肉領域32aから離れるにつれて徐々に減少するため、ヒケの発生を抑制することができるだけでなく、仮にヒケが発生したとしても、それを目立たなくすることもできる。また、厚肉リブ32の幅は、十分な厚みを必要とする領域32aでは広く、それほどの厚みを必要としない領域32cで狭くなっているため、上述した十分な剛性を確保しつつ、ルーフパネル3の軽量化を図ることができる。さらに、ルーフパネル3として導電性の熱可塑性樹脂を用いることは、材料コストを大幅に削減できるだけでなく、車体の電着塗装工程においてルーフパネル3の塗装も同時または逐次に実行することができるため、塗装コストを大幅に削減できる点でも有利である。
【0021】
なお、ヒケの発生を効果的に抑制するために、厚肉リブ32の第2の厚肉領域32bの厚み変化は、できるだけ滑らかであることが好ましい。具体的には、第1の厚肉領域32aを通り車両幅方向に平行な断面(
図3(b)参照)において、パネル本体31に対する第2の厚肉領域32bの傾きαは、10°以下であることが好ましい。また、第3の厚肉領域32cを通り車両幅方向に平行な断面(
図3(b)参照)において、パネル本体31に対する第2の厚肉領域32bの傾きβは、10°以下であることが好ましく、第3の厚肉領域32cを通り車両前後方向に平行な断面(
図3(c)参照)において、第3の厚肉領域32cに対する第2の厚肉領域32bの傾きγは、10°以下であることが好ましい。
【0022】
厚肉リブ32の数や配置、そのサイズは、特に限定されず、ルーフパネル3に必要とされる機械的強度に応じて適宜設定することができる。厚肉リブ32の第1の厚肉領域32aは、少なくともルーフリンフォース24に対向する位置に形成されるが、その数は、必ずしもルーフリンフォース24の数と同数でなくてもよく、それより少なくてもよい。したがって、ルーフパネル3全体に対する第1の厚肉領域32aの配置は、格子状に限定されず、例えば、千鳥状であってもよい。換言すると、車両幅方向に隣接する厚肉リブ32において、第1の厚肉領域32a同士が車両前後方向で同じ位置にあってもよく、第1の厚肉領域32aと第3の厚肉領域32cが同じ位置にあってもよい。なお、ルーフリンフォース24の数は、図示した3つに限定されず、2つ以下であってもよく、あるいは、4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 車両用ルーフ構造
2 ルーフ骨格部材
21 ルーフサイドレール
21a サイドアウター
21b サイドインナー
21c ルーフサイドレールリンフォース
22 フロントヘッダーパネル
23 リアルーフレール
24 ルーフリンフォース
25 ルーフ開口部
3 ルーフパネル
31 パネル本体
32 厚肉リブ
32a 第1の厚肉領域
32b 第2の厚肉領域
32c 第3の厚肉領域
4 構造用接着剤
5 シール材
6 マスチック接着剤