(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094911
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】シート材の綴じ込み機、そのシート材の綴じ込み機によって綴じ込まれたシート製品及び、シート材の綴じ込み方法
(51)【国際特許分類】
B42B 5/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B42B5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210508
(22)【出願日】2021-12-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521564799
【氏名又は名称】森 康一
(71)【出願人】
【識別番号】521564607
【氏名又は名称】森 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】森 昭平
(57)【要約】
【課題】 一対の歯車の一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の噛合する力を厳密に設定しなくとも、シート材の枚数や厚みに応じた綴じ込みができるとともに、シート材の綴じ込み部分が破断したりシワ(皺)になったり位置ずれしたりすることを回避する。
【解決手段】 複数のシート材Vを搬送用ステージSに供給して開口部Oを介して一対の歯車Gの凹凸歯Tが噛合させて凹凸痕K付与して綴じ込むシート材の綴じ込み機において、複数枚のシート材の厚みVtに応じて、前記搬送用ステージSと、一対の歯車が噛み合う綴じ込み位置Iの位置関係を調節可能なシート材の綴じ込み機を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート材を重ねた状態で綴じ込み位置に誘導する、前記シート材と接する面を表面、その反対を裏面とする搬送用ステージと、
前記搬送用ステージの表面側と裏面側に対向するように配され、外周面に互いに噛み合う凹凸歯を有する一対の歯車と、
前記一対の歯車が備える凹凸歯が互いに噛み合う綴じ込み位置に、綴じ込みが行われていない静止状態でも綴じ込み圧力を付与する押圧機構と、
を備え、静止状態でも綴じ込み圧力が付与された前記綴じ込み位置に、複数枚のシート材を誘導し、前記一対の歯車の回転により、前記複数枚のシート材を圧縮するとともに凹凸痕を付与して綴じ込む、シート材の綴じ込み機であって、
前記一対の歯車と干渉しないように前記搬送用ステージに設けられた開口から、静止状態において前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が、前記搬送用ステージの表面側に突出しないように配されていることを特徴とするシート材の綴じ込み機。
【請求項2】
複数枚のシート材を重ねた状態で綴じ込み位置に誘導する、前記シート材と接する面を表面、その反対を裏面とする搬送用ステージと、
前記搬送用ステージの表面側と裏面側に対向するように配され、外周面に互いに噛み合う凹凸歯を有する一対の歯車と、前記搬送用ステージの前記一対の歯車が噛み合う部分に設けられた開口と、
前記一対の歯車が備える凹凸歯が互いに噛み合う綴じ込み位置に、綴じ込みが行われていない静止状態でも綴じ込み圧力を付与する押圧機構と、
を備え、静止状態でも綴じ込み圧力が付与された前記綴じ込み位置に、複数枚のシート材を誘導し、前記一対の歯車の回転により、前記複数枚のシート材を圧縮するとともに凹凸痕を付与して綴じ込む、シート材の綴じ込み機であって、
前記搬送用ステージは、ステージ位置調節機構を備え、その表面側方向及び裏面側方向に位置調節可能に配されていることを特徴とするシート材の綴じ込み機。
【請求項3】
前記搬送用ステージが備えるステージ位置調節機構により、綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも薄い場合及び、同一の場合は、前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が前記搬送用ステージの表面側に突出しない位置に配され、綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも厚い場合は、前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が前記搬送用ステージの表面側に突出する位置に配され綴じ込むことを特徴とする請求項2に記載のシート材の綴じ込み機。
【請求項4】
前記開口の下流側の端部近傍には、前記綴じ込み位置で綴じ込みを終えた前記シート材の先端を、前記搬送用ステージの表面側に誘導するためのシート材誘導部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載のシート材の綴じ込み機。
【請求項5】
前記凹凸歯を有する一対の歯車のうち、前記搬送用ステージの表面側に配される第1の歯車が回転軸部材を介して連結される第1の支持ブロックと、前記搬送用ステージの裏面側に配される第2の歯車が回転軸部材を介して連結される第2の支持ブロックを有し、前記第1の支持ブロック及び第2の支持ブロックは、基台上に配される支柱に摺動可能に取付けられ、前記押圧機構から付与される綴じ込み圧力により、基台側に付勢されることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のシート材の綴じ込み機。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のシート材の綴じ込み機によって、綴じ込まれたシート製品。
【請求項7】
複数枚のシート材を重ねた状態で綴じ込み位置に誘導する、前記シート材と接する面を表面、その反対を裏面とする搬送用ステージと、
前記搬送用ステージの表面側と裏面側に対向するように配され、外周面に互いに噛み合う複数の凹凸歯を有する一対の歯車と、
前記一対の歯車が備える凹凸歯が互いに噛み合う綴じ込み位置に、綴じ込みが行われていない静止状態でも綴じ込み圧力を付与する押圧機構と、
を備え、前記搬送用ステージにはその表面側方向及び、裏面側方向に位置調節可能となるようにステージ位置調節機構を備えているシート材の綴じ込み機によるシート材の綴じ込み方法において、
綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも薄い場合及び、同一の場合は、前記綴じ込み位置を構成するステージ裏面側に配された歯車の先端を前記搬送用ステージの表面側に突出しない位置に配し、綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも厚い場合は、前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端を前記搬送用ステージの表面側に突出する位置に配するように、前記搬送用ステージを位置調節して綴じ込むことを特徴とするシート材の綴じ込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の綴じ針や糊等を使用しないで、一対の歯車の凹凸歯により複数枚のシート材(紙、セロファン、合成樹脂フィルム、金属フィルムなどや、薬袋、食品包装材を含む。)に凹凸痕を付与して綴じ込むことができるシート材の綴じ込み機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冊子や帳票等の多くが金属製の綴じ針や糊等で綴じられて作成されている。また、薬袋や食品包装材では、複数の袋を一つに綴じて、同時に収納したり、展示したりすること等も行われている。しかし、金属製の綴じ針は、その綴じ針が突き出す状態が生じると危険である。また、冊子や帳票等が不要になり破棄する場合、必要に応じてシュレッダーにより裁断し、焼却処分(あるいは省資源)といった観点から再生紙として再利用することが行われており、金属製の綴じ針で綴じられたものは、シュレッダーの刃の損傷を避けるため、金属製の綴じ針を外す必要があり、その処分も難しいのが実情である。一方、糊等で綴じられたものは、その糊がホットメルト等の樹脂系糊である場合、焼却の際、有毒ガスが発生する問題を有する。
【0003】
これらの問題点に対応するため、金属製の針や糊を使用しないで、紙を綴じ込むことができるものとして、例えば、シート材(コピー用紙や帳票等)の複数枚を綴じ込む場合、一枚一枚の紙に水分を供給し、凹凸が連なった綴じ部材で上下から圧力を掛けて綴じ込む装置が記載されている(例えば、特許文献1と2)。
【0004】
しかし、これらでは、水分等を含ませるので、簡易に綴じることができず、構造も大掛かりなものとなるので、
図28示すように、本願出願人は、その発明者として、ハンディタイプの綴じ込み機を開発した(特許文献3)。この特許文献3の綴込み機によれば、ハンディタイプであることに加えて、一方の凹凸歯が配される一方側支持ブロック(固定ブロック)と他方の凹凸歯が配される他方側支持ブロック(固定ブロック)とにより隙間(シート材が通過する隙間)を設けるので、その構造も簡単な構造にできる利点がある。
また、本願出願人は、シート材の綴じ込み機(特許文献4)を既に開示している。特許文献4は、複数枚のシート材を重ね合わせて一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の間に挟持して、綴じられる凹凸痕を付与するシート材の綴じ込み機において、一方の凹凸歯が取り付けられる一方側支持ブロックが他方の凹凸歯が取り付けられる他方側支持ブロックに接離可能に取り付けられるともに、前記一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の間隔を調節する凹凸歯間隔調整用の弾性力調整部材と、その調節に用いられる操作手段を押圧操作することによって、前記一方の凹凸歯と他方の凹凸歯との綴じ圧力を調整することを特徴とするシート材の綴じ込み機であり、第1の弾性力調整部材(凹凸歯間隔調整用の弾性力調整部材)のみならず第2の弾性力調整部材(支持ブロック間調整用の弾性力調整部材)を備えるためか、シート材の枚数が増えると、凹凸痕の近傍位置にシート材の綴じ込み部分(或いはその周辺に)がシワ(皺)になったり、枚数毎に位置ずれしたり、ときには破断したりする現象が生じることがある。この原因は明らかではないが、枚数が多くなればなるほどその傾向が強いことが、本願発明者の研究により明らかになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3481300号公報
【特許文献2】特許第3502204号公報
【特許文献3】特許第6258686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の綴じ込み機(特許文献1~4を含む。)には、一枚でも多く綴じ込みたいというニーズが存在する。上記のような従来の綴じ込み機でもそのニーズは高く、現在のところ、普通紙で多くて3~5枚程度、薄い合成フィルムで4~6枚程度であるが、ほつれることなく、一枚でも多く綴じるためには更なる改良が必要である。また、綴じ込む対象となるシート材としては、紙製シートだけでなく、合成樹脂シートやセロファンなど、種類は多岐にわたり、薬袋や食品袋といった、美観の向上が求められ場面もあり、綴じ込みの際に生じるシワ(皺)や位置ずれの解消などのニーズに対応した綴じ込み機が必要となる。
他方、使用される一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の大きさや種類(鋼鉄製の歯の先鋭さ等)などによって、重ね合わせ枚数が異なったり、或いは、これら歯の噛み合わせが適正ではなくなったり、シート材に損傷させるなどの問題も有していた。すなわち、シート材の材質や厚みに応じた、一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の押し付け合う力の適正な設定は、そもそも難しいことに加えて、紙詰まりが生じた際に、一度凹凸歯を押し付け合う力(噛合力)の設定を解除してしまうと、元の適切な設定に戻すことは難しくなる。
さらに、複数枚のシートを一対の凹凸歯で綴じたとしても、その反動で一部のシート材がめくれ上がる現象も生じることがある。そして、これらの事象を抑制して、複数枚のシート材を綴じなければならない。
この点、特許文献3では、凹凸歯の切り欠き平面部30により、紙詰まりした場合に紙類を排除することができるが、連続して搬送する場合においては、柔軟に紙詰まりを修正しなければならず、これのみでは、十分ではなかった。
【0007】
また、特許文献1や2では、複数枚のシート材を重ね合わせて送ると(枚数を多くすると)、搬送するときにスリップが生じたり、互いに凹凸歯の噛み合わせが十分でなく、容易に剥がれる現象が生じたりする問題点を有する。上記スリップが生じると、シート材にテカリが生じたり、凹凸痕が線を引くように生じたり波打つように生じたり、また、複数枚のシート材がズレ(位置ずれ)たりして、シート材の美感を害することになる問題も有していた。このため、このような現象を解決しなければならない。また、特許文献1や2では、その装置構成が複雑であり、高価なものになっており、簡易で容易なシート材の綴じ込み機の提供が課題になっていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、一対の歯車の一方の凹凸歯と他方の凹凸歯の噛合する力を厳密に設定しなくとも、シート材の枚数や厚みに応じた綴じ込みができるとともに、シート材の綴じ込み部分(或いはその周囲)が破断したりシワ(皺)になったり位置ずれしたりすることを回避し、綺麗な凹凸痕で綴じることができるシート材の綴じ込み機とそのシート材の綴じ込み機によって綴じ込まれたシート製品、及びシート材の綴じ込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数枚のシート材を重ねた状態で綴じ込み位置に誘導する、前記シート材と接する面を表面、その反対を裏面とする搬送用ステージと、
前記搬送用ステージの表面側と裏面側に対向するように配され、外周面に互いに噛み合う凹凸歯を有する一対の歯車と、
前記一対の歯車が備える凹凸歯が互いに噛み合う綴じ込み位置に、綴じ込みが行われていない静止状態でも綴じ込み圧力を付与する押圧機構と、
を備え、静止状態でも綴じ込み圧力が付与された前記綴じ込み位置に、複数枚のシート材を誘導し、前記おっ対の歯車の回転により、前記複数枚のシート材を圧縮するとともに凹凸痕を付与して綴じ込む、シート材の綴じ込み機であって、
前記一対の歯車と干渉しないように前記搬送用ステージに設けられた開口から、静止状態における前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が、前記搬送用ステージの表面側に突出しないように配されていることを特徴とするシート材の綴じ込み機である。
ここで、押圧機構による「シート材に綴じ込みが行われていない静止状態の綴じ込み圧力」とは、一対の歯車の互いの凹凸歯が噛み合う綴じ込み位置にシート材が挟み込まれていない状態の綴じ込み圧力を言い、綴じ込みが行われていない静止状態でも、一対の歯車の互いの凹凸歯が接する綴じ込み位置には、押圧機構による綴じ込み圧力が予め付与されている状態となって、この状態で搬送用ステージに複数枚のシート材を綴じ込み位置に供給することを言う。
本発明によれば、一対の歯車の互いの凹凸歯が接する綴じ込み位置において、複数枚のシート材の材質や厚み等に応じてスムーズな綴じ込みが可能で、さらに搬送用ステージの表面側へ静止状態の綴じ込み位置が開口から突出しないように配することで、綴じ込むシート材の材質や厚みに最適な綴じ込み圧力を探る必要がないだけでなく、凹凸痕が付与されるシート材の綴じ込み部分(或いはその周囲)が破断したりシワ(皺)になったり位置ずれしたりすることを回避し、綺麗な綴じ込み部分を形成することができる。
【0010】
次に、本発明のシート材の綴じ込み機としては、搬送用ステージはステージ位置調節機構を備え、その表面側方向及び裏面側方向に位置調節可能に配されていることを特徴とする。
本発明によれば、、搬送用ステージと綴じ込み位置の位置関係を可変とすることにより、綴じ込むシート材の材質や厚みに応じて綴じ込み圧力の微調整といった経験や技能が必要な方法とは別に、容易に凹凸痕が付与されるシート材の綴じ込み部分(或いはその周囲)が破断やシワ(皺)、位置ずれや解れの発生を回避し、綺麗な綴じ込み部分を形成することができる。
【0011】
さらに、本発明のシート材の綴じ込み機としては、搬送用ステージが備えるステージ位置調節機構により、綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも薄い場合及び、同一の場合は、前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が前記搬送用ステージの表面側に突出しない位置に配され、綴じ込む複数枚のシート材の厚みが、前記一対の歯車の凹凸歯の歯丈よりも厚い場合は、前記綴じ込み位置を構成する搬送用ステージ裏面側に配された歯車の先端が前記搬送用ステージの表面側に突出する位置に配され綴じ込むことを特徴とする。
本発明によれば、一対の歯車が有する凹凸歯の歯丈(
図23参照)を基準とすることで、予め把握している凹凸歯の歯丈と、綴じ込むシート材の厚みとを比較することで、適切な綴じ込み圧力や搬送用ステージと綴じ込み位置の位置関係を探るための試行錯誤をしなくても、容易に美観を損なわない綴じ込みが可能となる。
【0012】
そして本発明のシート材の綴じ込み機としては、開口の下流側の端部近傍には、前記綴じ込み位置で綴じ込みを終えた前記シート材の先端を、前記搬送用ステージの表面側に誘導するためのシート材誘導部材を備えていることを特徴とする。
本発明により、搬送用ステージの表面側に、一対の歯車の凹凸歯が噛み合う綴じ込み位置が突出しないよう配されていたとしても、シート材を搬送用ステージの表面側に誘導し、シート材の詰まりを抑制し、スムーズな綴じ込みが可能となる。
【0013】
また本発明としては、凹凸歯を有する一対の歯車のうち、前記搬送用ステージの表面側に配される第1の歯車が回転軸部材を介して連結される第1の支持ブロックと、前記搬送用ステージの裏面側に配される第2の歯車が回転軸部材を介して連結される第2の支持ブロックを有し、前記第1の支持ブロック及び第2の支持ブロックは、基台上に配される支柱に摺動可能に取付けられ、前記押圧機構から付与される綴じ込み圧力により、基台側に付勢されることを特徴とする。
本発明によれば、部品点数も抑制でき、シンプルな構成であるため、装置の大型化、小型化が容易で、後述する本発明の実施の形態、図面で示すような一対の歯車が上下に配され、綴じ込むシート材を水平方向に移動させる装置とは別に、シート材を鉛直方向に移動させたり、斜めに移動させたりする装置とすることも可能な装置を提供することができる。
【0014】
本発明のシート材としては、上記の特徴を有するシート材の綴じ込み機によって綴じ込まれたことを特徴とする。
本発明によれば、容易に凹凸痕が付与されるシート材の綴じ込み部分(或いはその周囲)が破断やシワ(皺)、位置ずれや解れの発生を回避し、綺麗な綴じ込み部分を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のシート材を搬送用ステージに供給して前記搬送用ステージの開口部を介して一対の歯車の凹凸歯を噛合させて凹凸痕を付与して綴じ込むシート材の綴じ込み機において、押圧機構による綴じ込み圧力の微調整を都度行わずとも、シート材の材質や厚みに応じて、前記搬送用ステージと、一対の歯車が噛み合う綴じ込み位置の位置関係を調節可能とすることで、破れやシワ(皺)、位置ずれや解れを生じさせないで、綴じ込むシート材綴じ込み部に綺麗な凹凸痕を付与し、美観を損なわない綴じ込みが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態のシート材の綴じ込み機を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態のシート材の綴じ込み機を示す別角度からの斜視図である。
【
図3】上記実施形態の凹凸歯、綴じ込み位置を示す拡大斜視図である。
【
図4】上記実施形態における歯車、軸部材、支持ブロックを示す斜視図である。
【
図5】上記実施形態における回転力伝達機構を示す斜視図である。
【
図6】上記実施形態における回転力伝達機構の別の形態を示す参考図である。
【
図7】上記実施形態における支持ブロックと支柱の関係を示す斜視図である。
【
図8】上記実施形態とは上下反転の形態を示す斜視図である。
【
図9】上記実施形態における押圧機構を示す斜視図である。
【
図10】上記実施形態における押圧機構を示す斜視図である。
【
図11】上記実施形態における弾性部材を示す斜視図である。
【
図12】上記各実施形態の押圧機構と支持ブロックと基台の間の配される前記弾性部材の例を説明する図である。
【
図13】上記各実施形態の押圧機構と支持ブロックと基台の間の配される前記弾性部材の例を説明する図である。
【
図14】上記各実施形態の押圧機構と支持ブロックと基台の間の配される前記弾性部材の例を説明する図である。
【
図15】上記実施形態における搬送用ステージの構成を示す斜視図である。
【
図16】上記実施形態における搬送用ステージの昇降機構を示す斜視図である。
【
図17(a)】上記実施形態における別の形態の搬送用ステージの昇降機構を示す斜視図である。
【
図17(b)】上記実施形態における別の形態の搬送用ステージの昇降機構を示す斜視図である。
【
図18】上記実施形態における搬送用ステージと歯車の位置関係と(a)、綴じ込まれたシート材(b)を示す図である。
【
図19】上記実施形態における搬送用ステージと歯車の位置関係と(a)、綴じ込まれたシート材(b)を示す図である。
【
図20】上記実施形態における搬送用ステージと歯車の位置関係、シート材にかかる綴じ込み圧力を示す模式図である。
【
図21】上記実施形態の実施例2における綴じ込まれたシート材の状態を示す図である。
【
図22】上記実施形態の実施例2における綴じ込まれたシート材の状態を示す図である。
【
図23】上記実施形態における、搬送用ステージと綴じ込み位置の関係の基準となる歯丈とシート材の厚みを示す図である。
【
図24】本発明の第2の実施の形態のステージ位置調節機構を示す斜視図である。
【
図25】本発明の第2の実施の形態のステージ位置調節機構を示す斜視図である。
【
図26】本発明の第1の実施の形態の搬送用ステージのシート材誘導部材を示す斜視図である。
【
図27】本発明における支持ブロックの別形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を以下に詳述する。
【0018】
(第1の実施の形態)
図1及び、
図2は本実施の形態のシート材の綴じ込み機100を示す斜視図であり、複数枚のシート材Vを重ねて、
図1の手前側(上流側)から一対の歯車Gが接する位置である綴じ込み位置Iを経由して奥側(下流側)へ送り出しながら綴じ込む。
一対の歯車Gは、後述する搬送用ステージSを挟むように対向して配され、対向する外周面に互いに噛み合うように複数の凹凸歯T(凹をTd、凸をTpとする)を備え(
図3)、一対の歯車Gが接する綴じ込み位置Iに複数枚のシート材Vを送り、回転させることにより、前記シート材Vを圧縮するとともに凹凸痕Kを付与して綴じ込む。
本実施の形態において、搬送用ステージSのシート材Vと接する面側を搬送用ステージSの表面側Sfと定義し、表面側(本実施形態では上方の)歯車を第1の歯車G1、搬送用ステージSの裏面側Sb(本実施形態では下方)の歯車を第2の歯車G2として説明を進める(
図1~
図3)。
本実施の形態の一対の歯車G(G1,G2)は軸部材A(A1,A2)を介して回転可能にそれぞれの支持ブロックHに固定されている。ここで、第1の歯車G1が支持されている方を第1の支持ブロックH1、第2の歯車G2が支持されている方を第2の支持ブロックH2とする。
綴じ込み位置Iは一対の歯車Gが接する位置であり、より詳細には、一対の歯車Gが接するとともに、前記一対の歯車G外周面にそれぞれ設けられた複数の凹凸歯Tが噛み合う位置であり、本実施の形態における第1の歯車の先端(下方端)近傍と第2の歯車G2の先端(上方端)近傍によって構成される。
本実施の形態の一対の歯車Gの一方には、綴じ込み時のシート材Vの詰まりが生じた際にシート材Vの詰まりをスムーズに解消するため、各図面に示すように一対の歯車Gが噛み合わせのない部分Gcを設けている。
また、一対の歯車Gが有する凹凸歯Tの形状に制限はなく、素材も耐摩耗性を持つ高硬度な金属などであれば種々の素材が適用可能であり、綴じ込むシート材Vとしては、紙、セロファン、合成樹脂フィルム、金属フィルムなどや、薬袋、食品包装材が含まれる。
【0019】
本実施の形態のシート材の綴じ込み機100には、上記の一対の歯車Gを、軸部材Aを介してそれぞれ固定するための支持ブロックHを有する(
図4)。
第1の支持ブロックH1には、第1の歯車G1と接続する回転軸A1に回転力を伝える回転力伝達機構を備えており、
図5に示すように本実施の形態の回転力伝達機構は前記軸部材を延伸させた先端をラチェット式のレンチWで一方向に回転させるというシンプルな構成となっているが、
図6に示すような、電気モーターMを、ギアMgを介して軸部材A1と接続させ、回転力伝達機構としてもよく、その動力や機構に制限はない。
回転力伝達機構により回転力を付与された第1の歯車G1は回転し、第1の歯車G1の凹凸歯Tが噛み合っている第2の歯車G2も付随して回転する。この構成により、第2の歯車G2を回転させる別の動力や機構も不要で、第1の歯車G1を回転させる動力があれば足り、簡易で安価なシート材の綴じ込み機100の実現に貢献する。
そして、本実施の形態では、第1の支持ブロックH1と第2の支持ブロックH2は対向する二本の支柱Pに挟持され、第1の支持ブロックH1は上下に摺動可能で、第2の支持ブロックH2は基台Fに固定された構成となっているが、第1の支持ブロックH1、第2の支持ブロックH2の両者ともに摺動可能な構成としてもよい(
図7)。
ここで、
図8示すように、回転力伝達機構と接続される第1の歯車G1と、第1の歯車G1の回転に付随して回転する第2の歯車G2の関係を逆にすることも可能である。
【0020】
また、第1の歯車G1と第2の歯車G2が軸部材Aを介して連結される支持ブロックHの形状や大きさは限定されず、、
図27に示すように、第1の歯車G1と接続する軸部材A1に巻きつくようにベアリングを備えたコンパクトな支持ブロックを設け、第2の支持ブロックH2に内包されるように摺動可能に配され、後述する押圧機構Xによって付与される綴じ込み圧力の受け止めと、第1の歯車G1の回転の両立を実現するものであってもよい。
【0021】
図9は、本実施の形態のシート材の綴じ込み機100における、押圧機構Xを示す図である。この押圧機構Xは、上記支持ブロックHを挟持する支柱Pの上方に取り付けられており、当該押圧機構Xにより、第1の支持ブロックH1を下方側(第2の支持ブロックH2側)に押し込む力を生じさせ、第1の支持ブロックH1に付随する第1の歯車G1が第2の歯車G2と接してシート材Vを綴じ込む力を生じさせるとともに、綴じ込み位置Iに綴じ込みに必要な力がかかった状態を維持するための機構である。
押圧機構Xは、物理的に第1の支持ブロックH1を第2の支持ブロックH2側に押圧する昇降板Xaと、昇降板X1を昇降させる操作手段であるボルトXbを備えており、本実施の形態において操作手段であるボルトX2は、支持ブロックHを挟持する二本の支柱Pを架け渡すとともに、雌ねじ状になった挿通孔を有するブリッジXcを挿通にて、回転動作により昇降板Lを昇降させる(
図10)。
【0022】
本実施の形態のシート材の綴じ込み機100には、昇降板Xaと第1の支持ブロックH1の間に弾性部材Eが配される。この弾性部材Eは、押圧機構Xからの綴じ込み圧力により第1の歯車G1と第2の歯車G2が接して、綴じ込みのための力が付与されている状態で、綴じ込み位置Iに誘導したシート材Vの厚さに応じて押圧機構5により付与されている綴じ込み圧力に抗して第1の支持ブロックH1(及び第1の歯車G1)を上方に押し上げ、スムーズな綴じ込みを実現する役割を担う。
本実施の形態における弾性部材Eは、第1の支持ブロックH1の上面の四隅に形成された収納孔Eh(
図4参照)にそれぞれ弾性部材Eを配して、その上端を昇降板Xaの下面に接するように配される(
図11)が、第1の歯車G1と第2の歯車G2が接し、綴じ込みに必要な綴じ込み圧力が付与された状態を維持することを条件に、第1の支持ブロックH1と第2の支持ブロックH2との間や、第2の支持ブロックH2と基台Fとの間のいずれかに配されていてもよい(
図12~
図14)。
本実施の形態における弾性部材Eとしては、押圧機構Xによる昇降板Xaを下降させる力に耐え、弾性力を失わず、完全に縮みきらない強度を有する点が重要である。
また、本実施の形態における弾性部材Eとして、バネ材を使用しているが、バネ材に限定されず、収納孔Ehにゴム材を収納したり、収納孔Ehを設けない第1の支持ブロックH1と昇降板Xaとの間にゴム材を挟むように配置したりしてもよい。
弾性部材Eは、複数枚のシート材Vに綴じ込み圧力を付与する押圧機構Xの一部を構成する一方で、シート材Vの厚みに応じてスムーズな綴じ込みを実現するための一対の歯車Gの間隔を調整する機能を有している。
【0023】
図15は、本実施の形態のシート材の綴じ込み機における搬送用ステージSを示す図であり、複数枚のシート材Vを重ねて整列させ、第1の歯車G1と第2の歯車G2の接する綴じ込み位置Iに誘導する役割を担う。
本実施の形態における搬送用ステージSには、シート材Vと接する面を搬送用ステージSの表面Sf、その裏面を搬送用ステージSの裏面Sbとし(
図1、
図2参照)、第1の歯車G1と第2の歯車G2が接する綴じ込み位置Iに干渉しないように開口Oが設けられ、この開口Oは矩形(四角形)を呈しており、一対の歯車Gの凹凸歯Tの噛合に干渉しない程度に形成されており、
図26に示すように、開口Oの左右端近傍のうち少なくとも下流側には、綴じ込み位置Iで綴じ込みを終えたシート材Vの先端が搬送用ステージの表面側Sfに誘導されるように、シート材誘導部材Yが設けられており、綴じ込みを終えたシート材が開口O付近で干渉しシート詰まりを抑制する。
ここで、開口Oの左右端近傍のうち上流側にもシート材誘導部材を設けてもよく、シート材Vをスムーズに綴じ込み位置Iに誘導する役割を担わせることも可能である(図示せず)。
また、搬送用ステージSの脚部Skの少なくとも一方にはステージ昇降機構R1が組み込まれ、搬送用ステージ表面Sf側方向と搬送用ステージ裏面Sb側の方向に搬送用ステージSの位置を調節できる機能を有している。搬送用ステージ表面Sfの位置は、シート材Vを誘導する前の静止状態において、綴じ込み位置Iが開口Oから搬送用ステージ表面Sf側へ突出しない位置と、綴じ込み位置Iと搬送用ステージ表面Sfと同一の位置、そして、綴じ込み位置Iが開口Oから搬送用ステージ表面Sf側に突出している位置の少なくとも3つの位置を実現できることが望ましい。
本実施の形態における搬送用ステージの昇降機構R1は、
図16に示すように、脚部Skの搬送用ステージ表面Sf側方向及び、搬送用ステージ裏面Sb側の方向にピンRpを差し込む複数の孔Rhを設けて、所望する位置に搬送用ステージSを調整し、ピンRpを差し込む構成としているが、無段階に位置調節ができる搬送用ステージ昇降機構R1を採用してもよく、適宜選択可能である。
また、搬送用ステージSは必ずしもSf側方向及び、Sb側方向に平行に移動しなくてもよく、本実施の形態におけるステージ昇降機能R1のように、搬送用ステージSの脚部Skそれぞれに設けられるものだけでなく、脚部Skの一方のみにステージ昇降機能R1が設けられていても良い(図示せず)。
さらに、
図17に示すように、第1の支持ブロックH1と第2の支持ブロックH2で挟むように可塑性を有した金属板を用いた搬送用ステージS2を採用し(
図17(a))、第1の支持ブロックH1側、または第2の支持ブロックH2側に曲げることで、ステージ昇降機能R2とみなし、綴じ込み位置Iとの位置関係を適宜変更できるようにしても良い(
図17(b))。
【0024】
本実施の形態におけるシート材の綴じ込み機100により、複数枚のシート材Vを綴じ込む場合、綴じ込むシート材Vの材質、厚み(枚数)によって、綴じ込みの仕上がりに差異が生じる。
まず、本実施の形態におけるシート材の綴じ込み機100による基本的な綴じ込み手順は次の通りである。
第1の歯車G1と、第2の歯車G2が接している状態で、上記押圧機構Xにより第1の歯車G1(を支持する第1の支持ブロックH1)を第2の歯車G2(を支持する第2の支持ブロックH2)側に押し込む任意の綴じ込み圧力を加えるステップを備える。
次に、押圧機構Xによる綴じ込み圧力がかかっている第1の歯車G1と第2の歯車G2が接して、互いの凹凸歯Tが噛み合っている綴じ込み位置Iへ、搬送用ステージSの表面Sf上を複数枚のシート材Vが整列され、重ねられた状態で誘導するステップを備える。
そして回転力伝達機構により、第1の歯車G1及び第2の歯車G2を回転させ、複数枚のシート材Vを挟み込み、圧縮し、凹凸痕Kを付与することでシート材V同士が絡まり合い、綴じ込まれるステップへと進んで行く。
この際、綴じ込むシート材Vの厚みVtが薄い場合や、シート材Vの材質が破れやすいものである場合では、押圧機構Xにより当該シート材Vの厚みや材質に適した力よりも、過剰な力が加えられていると、シート材Vの綴じ込み部分(或いはその周辺部分)が破れてしまったり、綴じ込んだ部分(或いはその周囲)にシワ(皺)ができたり、シート材Vの位置がずれ、美観を損なう仕上がりとなってしまうおそれが生じる。
これは、綴じ込む複数枚のシート材Vに応じて、押圧機構Xにより微妙な綴じ込み圧力の調節が必要であることを意味し、その都度、適切な綴じ込み圧力を探るなど、上述の綴じ込み手順を始める前に、非常に煩雑な作業を行わなければならない。
【0025】
(綴じ込み部分の美観維持・向上のための構成)
上記のような煩雑な作業を回避するため、綴じ込み位置Iと搬送用ステージS(搬送用ステージ表面Sf)の位置関係に着目し、次の検証を行った。
【0026】
(実施例1)
(1)コピー用紙等に使用される一枚の厚さが約0.09mmの普通紙5枚をシート材Vとして綴じ込む場合。
まず、普通紙5枚を綴じ込む際に、綴じ込み部分が破れたり、シワ(皺)ができたり、位置ずれが生じず、美観を損なわない仕上がりとなる押圧機構Xによる適切な綴じ込み圧力を探り、当該圧力よりも更に大きな所定の綴じ込み圧力を付与する。
そして、
図18(a)に示すように、綴じ込み前の静止状態において、綴じ込み位置Iを構成する第2歯車G2の先端G2tが、搬送用ステージSの開口Oから搬送用ステージの表面Sf側に突出するように設定された状態で綴じ込み動作を行うと、綴じ込み部分にシワ(皺)Z1や破れZ2ができ、
図18(b)のような仕上がりとなる。
図18(b)は、仕上がり不良の例を示している。
一方で、
図19(a)に示すように、綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tが、開口Oから搬送用ステージSの表面Sf側に突出しないように設定されていると、シート材Vの綴じ込み部分(凹凸痕K)は、
図19(b)のように美観を損なわない綺麗な仕上がりとなる。これは、綴じ込み位置Iのシート材Vが、開口Oを介して搬送用ステージSの表面Sf側に引っ張られ、過剰な綴じ込み圧力を緩和するためと考えられる(
図20(a)(b))。
【0027】
(実施例2)
(2)コピー用紙等に使用される一枚の厚さが約0.09mmの普通紙10枚シート材Vとして枚綴じ込む場合。
実施例1の場合と同一の綴じ込み圧力で、
図19(a)に示すように静止状態において綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tが、開口Oから搬送用ステージ表面Sf側に突出しないように設定された状態で綴じ込もうとすると、重ねられたシート材Vの整列状態に乱れ(位置ずれ)Z3が生じたり(
図21)、綴じ込みが甘く、綴じ込んだシート材が解れてしまうなどの問題が生じる。
一方で、押圧機構Xの綴じ込み圧力を変更せずに、
図18(a)に示すように綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tが、開口Oから搬送用ステージの表面Sf側に突出するように設定されていると、
図22に示すようにシワ(皺)Z1や位置ずれZ3や、解れのない美観を損なわない仕上がりとなる。これは、静止状態における綴じ込み位置Iを開口Oから搬送用ステージの表面Sf側に突出させることで、シート材Vが搬送用ステージSの開口Oから搬送用ステージの表面Sf側に引っ張られることで生じる綴じ込み圧力の緩和を受けず、綴じ込み位置Iにかかる圧力が、複数枚のシート材Vにロスなく付与されるためであると考えられる。そして、前提となる押圧機構Xからの圧力を強めれば、さらに枚数を増やしたシート材Vの綴じ込みも可能となる。
【0028】
上述のように、綴じ込むシート材の厚みVtに応じて綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tと搬送用ステージSの位置関係を調整することで、美観を損なわない綴じ込みができることがわかったが、どのような基準によって綴じ込み位置Iと搬送用ステージSの位置関係を調整するかを本願発明者はさらに鋭意研究し、一対の歯車Gが備える凹凸歯Tの歯丈にTlに着目した。
【0029】
本実施の形態における凹凸歯Tの歯丈Tlは0.5mmであり、上述の実施例1の検証において、シート材の厚みは、約0.09mmの普通紙が5枚で、約0.45mmである。次に実施例2の検証においてシート材の厚みは、約0.09mmの普通紙が10枚で、約0.9mmである。
すなわち、
図23(a)に示すように、一対の歯車Gが有する凹凸歯Tの歯丈Tlよりもシート材の厚みVtが薄い場合に、綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tは搬送用ステージSの表面Sf側に突出しないように位置を調節し、
図23(b)に示すように、一対の歯車Gが有する凹凸歯Tの歯丈Tlよりもシート材の厚みVtが厚い場合に、綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tは搬送用ステージSの表面Sf側に突出するように位置を調節することで、美観を損なわない綴じ込みが可能となった。
なお、異なる歯丈Tlの凹凸歯Tを用いて検証を行ったが、上記と同様の結果が得られた。
【0030】
(第2の実施の形態)
次に、搬送用ステージの高さを調節するステージ位置調節機構を自動的に制御する実施の形態について説明する。
図24は、ステージ位置調節機構を自動的に制御する実施の形態の概要図である。
ここで、自動的なステージ位置調節機構以外のシート材の綴じ込み機については、第1の実施の形態で示した通りであり、詳細の説明を省略する。
【0031】
自動ステージ位置調節機構R3としては、シート材Vの厚みを検出するシート材厚み検出手段U1と、モーター等の駆動手段U2、制御部U3を備え、搬送用ステージSの昇降動作を制御する。
綴じ込む複数枚のシート材Vの厚みをシート材厚み検出手段U1により検知し、予め制御部U3に記憶されている一対の歯車Gの凹凸歯Tの歯丈(歯の高さ)Tlよりも複数枚のシート材Vの厚みVtが薄い場合には、制御部U3により駆動手段U2を駆動させ、綴じ込み前の静止状態における綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tが搬送用ステージSの表面Sf側から突出しない位置なるように搬送用ステージSの位置を調節する。制御部U3に記憶されている一対の歯車Gの凹凸歯Tの歯丈Tlよりも複数枚のシート材Vの厚みVtが厚い場合には、制御部U3は、駆動手段U2を駆動させ、綴じ込み前の静止状態において綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tが搬送用ステージSの表面Sf側に突出した位置となるように搬送用ステージSの位置を調節する。
【0032】
以上のように、静止状態における綴じ込み位置Iを構成する第2の歯車G2の先端G2tと搬送用ステージS(搬送用ステージ表面Sf)との位置関係を調節可能にすることで、綴じ込むシート材Vの材質や厚みに応じ、適切な綴じ込み圧力を探るため微妙な調節を行う時間的・物質的なコストを低減させるとともに、美観を損なわない安価で簡易なシート材の綴じ込み機を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 シート材の綴じ込み機、
A 軸部材、 A1 第1の軸部材、 A2 第2の軸部材、
E 弾性部材、 Eh 弾性部材の収納孔、
F 基台、
G 歯車、 G1 第1の歯車、 G2 第2の歯車、Gc 凹凸歯のない部分、
G2t 綴じ込み位置を構成する第2の歯車の先端部、
H 支持ブロック、 H1 第1の支持ブロック、 H2 第2の支持ブロック、
I 綴じ込み位置、
M 回転力伝達機構を構成するモーター、
Mg 回転力伝達機構を構成するギア、
O 搬送用ステージに設けられた開口、
P 支柱、
R1~R3 ステージ位置調節機構、
Rh ステージ位置調節機構を構成する孔、
Rp ステージ位置調節機構を構成するピン
S,S2 搬送用ステージ、
Sk 搬送用ステージの脚部、
Sf 搬送用ステージの表面側、 Sb 搬送用ステージの裏面側、
T 凹凸歯、Td 凹凸歯の凹、 Tp 凹凸歯の凸、
Tl 凹凸歯の歯丈、
U1 シート材厚み検出手段、
U2 駆動手段、
U3 制御部、
V シート材、
Vt シート材の厚み
W レンチ、
X 押圧機構、
Xa 押圧機構を構成する昇降板、 Xb ボルト、 Xc ブリッジ、
Y シート材誘導部材
Z1 シワ(皺)、 Z2 破れ、 Z3 位置ずれ、