(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094926
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】シートフレーム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20230629BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20230629BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60N2/68
A47C7/40
B60N2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210530
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 典恭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC01
3B087DB02
3B087DB04
(57)【要約】
【課題】追加の潰し工程を要することなく接合用座面を有するフレーム部材を備えたシートフレームを提供する。
【解決手段】シートフレーム1は、上下方向に延びており乗員の上半身を後方から支持する左右一対のバックサイドフレーム4と、ヘッドレスト20を支持するヘッドレスト支持部材21と、同一の中空閉断面形状で延びて左右一対のバックサイドフレーム4を接続しており外表面にヘッドレスト支持部材21が当該外表面に沿って接合される平面部14を有するアッパフレーム10とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びており、乗員の上半身を後方から支持する左右一対のバックサイドフレームと、
ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持部材と、
同一の中空閉断面形状で延びて前記左右一対のバックサイドフレームを接続しており、外表面に前記ヘッドレスト支持部材が当該外表面に沿って接合される接合用座面を有する、フレーム部材と
を備えたシートフレーム。
【請求項2】
前記フレーム部材は、アルミニウム合金製押出形材である、
請求項1に記載のシートフレーム。
【請求項3】
前記フレーム部材は、
中心軸線が曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ内側に位置する曲げ内側壁部を有しており、
前記曲げ内側壁部の肉厚は、そのほかの部位の肉厚よりも厚い、
請求項1又は2に記載のシートフレーム。
【請求項4】
前記フレーム部材は、
中心軸線が曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ内側に位置する曲げ内側壁部を有しており、
前記中心軸線に直交する断面において、前記曲げ内側壁部の外表面は、断面外側に凸となる円弧状である、
請求項1~3のいずれか1つに記載のシートフレーム。
【請求項5】
前記フレーム部材は、
中心軸線が、曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ外側に位置する曲げ外側壁部と、
前記曲げ外側壁部の前縁部に連続して上下方向に延びる前壁部と、
前記曲げ外側壁部の後縁部に連続して上下方向に延びる後壁部と
を有しており、
前記前壁部の肉厚及び前記後壁部の肉厚は、前記曲げ外側壁部の肉厚よりも厚い、
請求項1~4のいずれか1つに記載のシートフレーム。
【請求項6】
前記フレーム部材は、
車両前方側に位置する前壁部と、
車両後方側に位置する後壁部と
を有しており、
前記後壁部は、前記フレーム部材に対して後方へ荷重が作用する際に当該フレーム部材に構成される圧縮応力及び引張応力のいずれも作用しない中立面に対して、平行な平面状である、
請求項1~5のいずれか1つに記載のシートフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、平坦で比較的大きな面積を有する接合用座面が、管軸方向の途中に形成された金属管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートフレームを、乗員を下方から支持するシートクッションフレームと乗員を後方から支持するシートバックフレームとを備え、シートバックフレームがヘッドレストを支持するフレーム部材を有するように構成し、フレーム部材に対して接合用座面を形成し、該接合用座面にヘッドレストを支持するヘッドレスト支持部材を接合することが考えられる。この場合、接合用座面を有するフレーム部材を製造するには、上記特許文献1によれば、素材となるフレーム部材を形成した後に、接合用座面を形成するために該素材に対して潰し加工を実施することを要する。
【0005】
本発明は、追加の潰し工程を要することなく、接合用座面を有するフレーム部材を備えたシートフレームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
上下方向に延びており、乗員の上半身を後方から支持する左右一対のバックサイドフレームと、
ヘッドレストを支持するヘッドレスト支持部材と、
同一の中空閉断面形状で延びて前記左右一対のバックサイドフレームを接続しており、外表面に前記ヘッドレスト支持部材が当該外表面に沿って接合される接合用座面を有する、フレーム部材と
を備えたシートフレームを提供する。
【0007】
本発明によれば、フレーム部材は外表面に接合用座面を有する同一の中空閉断面形状であるので、例えばフレーム部材を押出成形する際に素材として接合用座面も同時に一体的に形成できる。その結果、接合用座面を形成するために、後工程による潰し工程を要しないので、シートフレームの生産性が向上する。
【0008】
また、前記フレーム部材は、アルミニウム合金製押出形材であってもよい。
【0009】
本構成によれば、平面部を有するフレーム部材を、アルミニウム合金を押出成形することによって、押出成形後の追加工程を要することなく容易に形成できる。
【0010】
また、前記フレーム部材は、
中心軸線が曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ内側に位置する曲げ内側壁部を有しており、
前記曲げ内側壁部の肉厚は、そのほかの部位の肉厚よりも厚くてもよい。
【0011】
本構成によれば、曲げ内側壁部の肉厚がそのほかの部位の肉厚よりも厚いので、曲げ内側壁部の剛性を増大させることができる。その結果、曲げ加工の際に曲げ内側壁部が断面内側に没入して座屈することが抑制される。
【0012】
また、前記フレーム部材は、
中心軸線が曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ内側に位置する曲げ内側壁部を有しており、
前記中心軸線に直交する断面において、前記曲げ内側壁部の外表面は、断面外側に凸となる円弧状であってもよい。
【0013】
本構成によれば、曲げ内側壁部の外表面は断面外側に凸となる円弧状であるので、径方向断面において曲げ内側壁部の外表面における面剛性を増大させることができる。その結果、曲げ加工の際に、曲げ内側壁部が断面内側に没入して座屈することが抑制される。
【0014】
また、前記フレーム部材は、
中心軸線が、曲げ平面上で湾曲しており、
曲げ外側に位置する曲げ外側壁部と、
前記曲げ外側壁部の前縁部に連続して上下方向に延びる前壁部と、
前記曲げ外側壁部の後縁部に連続して上下方向に延びる後壁部と
を有しており、
前記前壁部の肉厚及び前記後壁部の肉厚は、前記曲げ外側壁部の肉厚よりも厚くてもよい。
【0015】
本構成によれば、例えば車両が後方から後突荷重が受ける後突の場合にフレーム部材に対して後方に向かう荷重が作用するときに、厚肉とされた前壁部及び後壁部は上記後方に向かう荷重に対して抗しやすく、前壁部及び後壁部の変形が抑制される。その結果、フレーム部材に対してヘッドレスト支持部材を介して取り付けられるヘッドレストのバックサイドフレームに対する相対的な前後方向への変位が抑制されるので、乗員の頭部の支持性能を高めることができる。よって、後突時における乗員のむち打ちが軽減される。
【0016】
また、前記フレーム部材は、
車両前方側に位置する前壁部と、
車両後方側に位置する後壁部と
を有しており、
前記後壁部は、前記フレーム部材に対して後方へ荷重が作用する際に当該フレーム部材に構成される圧縮応力及び引張応力のいずれも作用しない中立面に対して、平行な平面状であってもよい。
【0017】
本構成によれば、例えばフレーム部材を曲げ加工する場合に後壁部が曲げ内側壁部にならないときにはフレーム部材の曲げ加工性を維持することができる。さらに、後壁部は中立面に平行状であるため前後方向における部品剛性が向上するので、例えば後突時等、フレーム部材に作用する後方へ向かう荷重に抗しやすい。よって、フレーム部材を、曲げ加工性を維持しつつ、後突時における荷重に対して抗しやすく構成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシートフレームによれば、追加の潰し工程を要することなく接合用座面を有するフレーム部材を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシートフレームの斜視図。
【
図3A】
図2のIII-III線に沿ったアッパフレームアセンブリの断面図。
【
図3B】変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3C】他の変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3D】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3E】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3F】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3G】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3H】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【
図3I】更なる変形例に係るアッパフレームアセンブリの
図3Aと同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るシートフレームを添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、添付図面および以下の説明における上下、左右、前後は、本発明の一実施形態に係るシートフレームから構成されるシート(図示せず)に乗員が着座したときの当該乗員の視点を基準としたシートフレームの上下、左右、前後とする。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るシートフレーム1の斜視図である。
図1には、乗員の頭部を後方から支持するヘッドレスト20が併せて二点鎖線にて併せて表示されている。本実施形態では、シートフレーム1は自動車の前席用シートの骨格を構成している。シートフレーム1は、乗員を下方から支持するシートクッションフレーム2と、乗員を後方から支持するシートバックフレーム3とを有している。シートバックフレーム3は、左右方向において離間して上下方向に延びる一対のバックサイドフレーム4と、バックサイドフレーム4の上端部を左右に接続するアッパフレーム10(フレーム部材)を有している。本実施形態では、一対のバックサイドフレーム4とアッパフレーム10とは、別体の部品とする構造とし接合されている。ただし、この構造に限定されず、一対のバックサイドフレーム4の少なくとも一方のバックサイドフレーム4とアッパフレーム10とを一体とする構造としても良い。
【0022】
アッパフレーム10には、ヘッドレスト20を支持する左右一対の円筒状のヘッドレスト支持部材21が接合されている。ヘッドレスト20は、下端部に下方に突出する左右一対の取付ロッド22を有しており、左右一対の取付ロッド22をヘッドレスト支持部材21に挿入することによってアッパフレーム10に支持されている。アッパフレーム10と左右一対のヘッドレスト支持部材21とによって、アッパフレームアセンブリ5が構成されている。
【0023】
本実施形態では、アッパフレーム10は、押出成形された押出形材によって構成され、押出方向に同一の中空閉断面形状を有する。本実施形態では、押出形材は、アルミニウム合金製である。アルミニウム合金は、例えば、5000系、6000系、7000系から選択される。アッパフレーム10をアルミニウム合金製押出形材により構成することで、鋼で構成する場合に比して、重量の増大を抑制しつつ剛性を向上させることができる。なお、一対のバックサイドフレーム4とアッパフレーム10とを一体とする構造とした場合、一対のバックサイドフレーム4は、アッパフレーム10と一体的に押出形材によって構成される。
【0024】
また、本実施形態では、アッパフレーム10は、曲げ加工によって、下方向へその両端部が湾曲している。
【0025】
図2は、アッパフレームアセンブリ5の単体斜視図である。
図2に示されるように、アッパフレーム10は、中心軸線O1に沿って同一の中空閉断面形状で延びている。アッパフレーム10は、一対のバックサイドフレーム4(
図1参照)の上端部に接続されて上下方向に直線状に延びる一対の第1部分11と、一対の第1部分11の間を左右方向に直線状に延びる第2部分12と、一対の第1部分11それぞれと第2部分12とを接続し、中心軸線O1を通る所定の曲げ平面上で湾曲する一対の第3部分13とを有している。
【0026】
本実施形態では、アッパフレーム10は、一対の第3部分13それぞれにおいて中心軸線O1が同一の曲げ平面P1上で湾曲している。すなわち、曲げ平面P1は、第1部分11及び第2部分12それぞれにおける中心軸線O1が通る平面として画定されている。第3部分13は、曲げ平面P1上に位置する曲げ中心X1周りに湾曲している。本実施形態では曲げ平面P1はシートフレーム1の前後方向に直交する方向に延びている。
【0027】
ここで、以下の説明では、中心軸線O1と直交する断面において、アッパフレーム10のうち、曲げ加工の曲げ内側に相当する部位を曲げ内側壁部15と称し、曲げ加工の曲げ外側に相当する部位を曲げ外側壁部16と称する。具体的に説明すると、曲げ内側壁部15は、中心軸線O1を通り曲げ平面P1に直交する方向に延びる湾曲面P2に対して、アッパフレーム10のうち曲げ中心X1側において曲げ平面P1に直交する方向(前後方向)に概ね沿って延びる部位であり、曲げ外側壁部16は、曲げ中心X1とは反対側において曲げ平面P1に直交する方向(前後方向)に概ね沿って延びる部位である。
【0028】
アッパフレーム10は、外周面の前部に前方に面する平面状である前部外周面14を有する。上述したようにアッパフレーム10は同一の断面形状であるので、前部外周面14は、第1~第3部分11~13にわたって延びている。前部外周面14にはヘッドレスト支持部材21が接合されている。すなわち前部外周面14は本開示に係る接合用座面を構成している。
【0029】
上述したように、アッパフレーム10は、押出形材によって構成されているので、中心軸線O1が伸びる方向に前部外周面14を一体的に構成することができる。すなわち、アッパフレーム10は追加の潰し工程を要することなく、前部外周面14を素材として一体的に有している。
【0030】
本実施形態では、ヘッドレスト支持部材21も、アルミニウム合金製であり、前部外周面14に沿ってMIG、TIGなどのアーク溶接により接合されている。このほか、抵抗、高周波、電子ビーム、プラズマ、レーザ、摩擦攪拌などの他の溶接を、代わりに組み合わせてもよい。また、リベット(丸リベット、ブラインドリベット、セルフピアシングリベット)、ボルト・ナットなど、汎用される機械的な接合を、前記溶接の代りにあるいは前記溶接と組み合わせて用いてもよい。更に、接着剤による接合を、これらの溶接や機械的な接合の代りにあるいは組み合わせてもよい。
【0031】
なお、ヘッドレスト支持部材21がアルミニウム合金製ではなく、例えば鋼製であるとき、アルミニウム合金製であるアッパフレーム10との異種金属同士を接合する場合には、互いの電位差による電食(腐食)の発生を防止する必要がある。このためには前記接着剤による接合が好ましいが、その他の接合手段を用いる場合には、両部材の隙間を絶縁被覆することが好ましい。この絶縁被覆は公知の手法が適用可能であり、例えば鋼材側へ塗膜などの樹脂被覆を設けて行う。
【0032】
図3Aは、
図2のIII-III線に沿った、アッパフレームアセンブリ5の中心軸線O1に直交する断面図である。
図3Aに示されるように、アッパフレーム10は、曲げ内側壁部15の前縁部と曲げ外側壁部16の前縁部とに連続し、アッパフレーム10の前側部を構成する前壁部17と、曲げ内側壁部15の後縁部と曲げ外側壁部16の後縁部とに連続し、アッパフレーム10の後側部を構成する後壁部18とを有している。
【0033】
具体的には、本実施形態では、中心軸線O1に直交する断面において、曲げ内側壁部15及び曲げ外側壁部16は前後方向に概ね直前状に延びている。前壁部17は上下方向に概ね直線状に延びており、外表面に前部外周面14が構成されている。後壁部18は後方に突出するように円弧状に延びている。すなわち、アッパフレーム10は概ねD字状断面に構成されている。
【0034】
中心軸線O1に直交する断面において、曲げ内側壁部15は概ね一定の厚みに形成されている。曲げ外側壁部16は概ね一定の厚みに形成されている。前壁部17は概ね一定の厚みt3に形成されている。後壁部18は上下方向においてその両端部から中央部18aに向かって厚みが増大して中央部18aおいて最大厚みを有するように形成されている。
【0035】
本明細書では、曲げ内側壁部15の肉厚t1とは、中心軸線O1に直交する断面において、曲げ内側壁部15のうち曲げ平面P1に交差する部位の肉厚を意味している。曲げ外側壁部16の肉厚t2とは、中心軸線O1に直交する断面において、曲げ外側壁部16のうち曲げ平面P1に交差する部位の肉厚を意味している。前壁部17の肉厚t3とは、中心軸線O1に直交する断面において、前壁部17のうち湾曲面P2が交差する部位の肉厚を意味している。後壁部18の肉厚t4とは、中心軸線O1に直交する断面において、後壁部18のうち湾曲面P2が交差する部位の肉厚を意味している。
【0036】
本実施形態では、曲げ内側壁部の厚みt1及び曲げ外側壁部16の厚みt2は概ね等しい。前壁部17の厚みt3及び後壁部18の厚みt4は概ね等しく、曲げ内側壁部15の厚みt1及び曲げ外側壁部16の厚みt2よりも厚い。具体的には、前壁部17の厚みt3及び後壁部18の厚みt4は、曲げ外側壁部16の厚みt2の1.1倍以上6.0倍以下であり、好ましくは1.1倍以上3.0倍以下であり、より好ましくは1.1倍以上2.5倍以下に設定されている。
【0037】
上記説明したシートフレーム1によれば、アッパフレーム10は押出形材であるので、押出成形する際に素材として平面部14も同時に一体的に形成できる。その結果、平面部14を形成するために、アッパフレーム10を追加で潰し加工することを要しないのでアッパフレーム10を効率的に生産できる。よって、シートフレーム1の生産性が向上する。
【0038】
また、例えば後突により車両が後方から荷重を受けると、アッパフレーム10に対して、乗員頭部からヘッドレスト20を介して後方に向かう荷重が作用する。本実施形態に係るアッパフレーム10は前壁部17及び後壁部18が曲げ外側壁部16よりも厚肉であるので、厚肉とされた前壁部17及び後壁部18は上記後方に向かう荷重に対して抗しやすく、前壁部17及び後壁部18の変形が抑制される。その結果、アッパフレーム10に対してヘッドレスト支持部材21を介して取り付けられるヘッドレスト20のバックサイドフレーム4に対する相対的な前後方向への変位が抑制されるので、乗員の頭部の支持性能を高めることができる。よって、後突時における乗員のむち打ちが軽減される。
【0039】
図3Bは第1変形例に係るアッパフレーム30を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Bに示されるように、アッパフレーム30は、アッパフレーム10に対して中心軸線O1に直交する断面の形状が相違している点で異なっている。具体的には、アッパフレーム30は、アッパフレーム10に対して、各部の肉厚t1~t4が均一の肉厚で構成されている点で異なっている。さらに、左右方向において、後壁部38が、アッパフレーム30に対して後方へ荷重が作用する際にアッパフレーム30に構成される圧縮応力及び引張応力のいずれも作用しない中立面Zに対して平行な平面状に構成されている点で異なっている。具体的には、後壁部38は概ね直線状に上下方向に延びている。すなわち、アッパフレーム30は、矩形状断面に構成されている。
【0040】
第1変形例に係るアッパフレーム30によれば、後壁部38は中立面Zに平行状であるため前後方向における部品剛性が向上するので、例えば後突時等、アッパフレーム30に作用する後方へ向かう荷重に抗しやすい。また、後壁部38は曲げ内側壁部35とは異なるので、後壁部38を直線状に構成しつつもアッパフレーム30の曲げ加工性が維持される。よって、アッパフレーム30を、曲げ加工性を維持しつつ、後突時における荷重に対して抗しやすく構成できる。
【0041】
図3Cは第2変形例に係るアッパフレーム40を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Cに示されるように、アッパフレーム40は、アッパフレーム10に対して中心軸線O1に直交する断面の形状が相違している点で異なっている。具体的には、アッパフレーム40は、アッパフレーム10に対して、前壁部47及び後壁部48が曲げ外側壁部46と同じ肉厚に設定される一方で、曲げ内側壁部45が厚肉とされている点で異なっている。
【0042】
すなわち、曲げ内側壁部45の厚みt1は、曲げ外側壁部46の厚みt2、前壁部47の厚みt3及び後壁部48の厚みt4よりも厚い。具体的には、曲げ内側壁部45の厚みt1は、曲げ外側壁部46の厚みt2、前壁部47の厚みt3及び後壁部48の厚みt4の1.1倍以上6.0倍以下であり、好ましくは1.1倍以上3.0倍以下であり、より好ましくは1.1倍以上2.5倍以下に設定されている。
【0043】
第2変形例に係るアッパフレーム40によれば、曲げ内側壁部45の肉厚t1がそのほかの部位の肉厚よりも厚いので、曲げ内側壁部45の剛性を増大させることができる。その結果、押出成形により直線状に形成されたアッパフレーム40の素材を第1部分11、第2部分12及び第3部分13を有するように曲げ加工する際に、第3部分13において曲げ内側壁部45が断面内側に没入して座屈することが抑制される。よって、アッパフレーム40の曲げ加工性を向上させることができる。
【0044】
図3Dは、第3変形例に係るアッパフレーム50を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Dに示されるように、アッパフレーム50は、アッパフレーム10に対して中心軸線O1に直交する断面の形状が相違している点で異なっている。具体的には、アッパフレーム50は、アッパフレーム10に対して、曲げ内側壁部55、曲げ外側壁部56、前壁部57及び後壁部58の各肉厚t1~t4が均一に構成されており、且つ、曲げ内側壁部55の外表面が断面外側に凸となる円弧状である点で異なっている。
【0045】
第3変形例に係るアッパフレーム50によれば、曲げ内側壁部55の外表面は断面外側に凸となる円弧状であるので、中心軸線O1に直交する断面において曲げ内側壁部55の外表面における面剛性を増大させることができる。その結果、押出成形により直線状に形成されたアッパフレーム50の素材を第1部分11、第2部分12及び第3部分13を有するように曲げ加工する際に、第3部分13において曲げ内側壁部55が断面内側に没入して座屈することが抑制される。よって、アッパフレーム50の曲げ加工性を向上させることができる。
【0046】
上記実施形態に係るアッパフレーム10及び第1~第3変形例に係るアッパフレーム30,40,50の各構成は、適宜、互いに組み合わせることができ、それぞれの作用効果を奏する。以下に各組み合わせに係る変形例を例示する。
【0047】
図3Eは、第4変形例に係るアッパフレーム60を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Eに示されるように、アッパフレーム60は、アッパフレーム10に対して上記第3変形例に係るアッパフレーム50の曲げ内側壁部55の構成を組み合わせたものである。すなわち、アッパフレーム60は、前壁部67及び後壁部68が曲げ内側壁部65及び曲げ外側壁部66よりも厚肉であり、且つ、曲げ内側壁部65の外表面が断面外側に凸となる円弧状である。
【0048】
アッパフレーム60によれば、厚肉とされた前壁部67及び後壁部68によって、後突時の乗員の頭部の支持性能を高めて乗員のむち打ちが軽減される。断面外側に凸となる円弧状である曲げ内側壁部65によって、曲げ加工性を向上させることができる。
【0049】
図3Fは、第5変形例に係るアッパフレーム70を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Fに示されるように、アッパフレーム70は、第4変形例に係るアッパフレーム60に対して第1変形例に係るアッパフレーム30の後壁部38の構成を組み合わせたものである。すなわち、アッパフレーム70は、前壁部77及び後壁部78が曲げ内側壁部75及び曲げ外側壁部76よりも厚肉であり、且つ、曲げ内側壁部75の外表面が断面外側に凸となる円弧状であり、且つ、後壁部78が中立面Zに対して平行な平面状に構成されている。
【0050】
アッパフレーム70によれば、厚肉とされた前壁部77及び後壁部78によって、後突時の乗員の頭部の支持性能を高めて乗員のむち打ちが軽減される。断面外側に凸となる円弧状である曲げ内側壁部75によって、曲げ加工性を向上させることができる。さらに、中立面Zに対して平行な後壁部78によって、曲げ加工性を維持しつつ、後突時における荷重に対して抗しやすく構成できる。
【0051】
図3Gは、第6変形例に係るアッパフレーム80を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Gに示されるように、アッパフレーム80は、第3変形例に係るアッパフレーム50に対して、第1変形例に係るアッパフレーム30の後壁部38の構成を組み合わせたものである。すなわち、アッパフレーム80は、曲げ内側壁部85が断面外側に凸となる円弧状であり、且つ、後壁部88が中立面Zに対して平行な平面上に構成されている。
【0052】
アッパフレーム80によれば、断面外側に凸となる円弧状である曲げ内側壁部85によって、曲げ加工性を向上させることができる。さらに、中立面Zに対して平行な後壁部88によって、曲げ加工性を維持しつつ、後突時における荷重に対して抗しやすく構成できる。
【0053】
図3Hは、第7変形例に係るアッパフレーム90を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Hに示されるように、アッパフレーム90は、アッパフレーム10に対して、第2変形例に係るアッパフレーム40の曲げ内側壁部45の構成を組み合わせたものである。すなわち、アッパフレーム90は、前壁部97及び後壁部98が曲げ外側壁部96よりも厚肉であり、且つ、曲げ内側壁部95も曲げ外側壁部96よりも厚肉である。また、この場合、曲げ内側壁部95を、前壁部97及び後壁部98よりもさらに厚肉にしてもよい。
【0054】
アッパフレーム90によれば、厚肉とされた前壁部97及び後壁部98によって、後突時の乗員の頭部の支持性能を高めて乗員のむち打ちが軽減される。厚肉とされた曲げ内側壁部95によって、曲げ加工性を向上させることができる。
【0055】
図3Iは、第8変形例に係るアッパフレーム100を有するアッパフレームアセンブリ5の
図3Aと同じ位置における断面図を示している。
図3Iに示されるように、アッパフレーム100は、第1変形例に係るアッパフレーム30に対して、第2変形例に係るアッパフレーム40の曲げ内側壁部45の構成を組み合わせたものである。すなわち、アッパフレーム100は、後壁部108が中立面Zに対して平行な平面状であり、曲げ内側壁部105が、曲げ外側壁部106、前壁部107及び後壁部108よりも厚肉である。
【0056】
アッパフレーム100によれば、中立面Zに対して平行な後壁部108によって、曲げ加工性を維持しつつ、後突時における荷重に対して抗しやすく構成できる。厚肉とされた曲げ内側壁部105によって、曲げ加工性を向上させることができる。
【0057】
上記実施形態及び各変形例では、湾曲した第3部分13を左右方向の両側に有するアッパフレーム10等を例にとって説明したが、これに限らない。湾曲した第3部分13を左右方向の一方側にのみ有するアッパフレームにも本発明を適用してもよい。
【0058】
このほか、第3部分13を有さない直線状のアッパフレームにも本発明を適用してもよい。この場合、アッパフレームに曲げ内側壁部及び曲げ外側壁部は構成されず、前壁部及び後壁部に対して上記説明した各構成が適用される。
【0059】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0060】
上記実施形態では、押出形材としてアルミニウム合金の場合を例にとって説明したが、このほかマグネシウム合金等種々の材料を使用できる。また、アッパフレームを、押出形材によって構成する他、例えば鋼材をロールフォーム工法またはハイドロフォーム工法により形成して構成してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 シートフレーム
2 シートクッションフレーム
3 シートバックフレーム
4 バックサイドフレーム
5 アッパフレームアセンブリ
10 アッパフレーム
11 第1部分
12 第2部分
13 第3部分
14 平面部
15 曲げ内側壁部
16 曲げ外側壁部
17 前壁部
18 後壁部
20 ヘッドレスト
21 ヘッドレスト支持部材
22 取付ロッド