(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009493
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ホウ素の除去方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20230113BHJP
B01J 45/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C02F1/42 B
B01J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112838
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 治雄
【テーマコード(参考)】
4D025
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025AB33
4D025BA17
4D025BA22
4D025BA27
4D025BB02
4D025BB07
(57)【要約】
【課題】被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去する方法を提供する。
【解決手段】グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、ホウ素含有量が500μg/L以下の被処理水を、液空間速度SVが60~700h-1となるように通水することを特徴とするホウ素の除去方法であり、好ましくは、上記ホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理したものであるホウ素の除去方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、ホウ素含有量が500μg/L以下の被処理水を、液空間速度SVが60~700h-1となるように通水することを特徴とするホウ素の除去方法。
【請求項2】
上記ホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理したものである請求項1に記載のホウ素の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中のホウ素の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造時におけるシリコンの洗浄工程等において、ホウ素濃度が1ng/L以下の超純水が求められるようになっている。
水中のホウ素濃度を低減する方法として、ホウ素選択性イオン交換樹脂を利用する方法が提案されるようになっており、例えば、特許文献1には、純水又は超純水の製造設備内のいずれかの位置で、前処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂に接触させてホウ素を除去する方法が提案されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、特許文献1等に記載されているホウ素選択性イオン交換樹脂を用いて水中のホウ素を処理しようとすると、処理水中の全有機炭素(TOC(Total Organic Carbon))濃度が処理前よりも上昇し易くなることが判明した。
【0005】
本発明者等がさらに検討したところ、上記全有機炭素濃度の上昇は、イオン交換樹脂中に残留する炭化水素類が溶出すること等により生じ、特にホウ素選択性イオン交換樹脂としてグルカミン基を有するイオン交換樹脂を用いた場合に、イオン交換樹脂中に残留する未反応のグルカミンが溶出して、処理水中の全有機炭素濃度を上昇させ易いことが判明した。
【0006】
このような状況下、本発明は、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、グルカミン基を有する特定のホウ素選択性イオン交換樹脂に対して特定の条件で被処理水を接触させることにより、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、ホウ素含有量が500μg/L以下の被処理水を、液空間速度SVが60~700h-1となるように通水することを特徴とするホウ素の除去方法、および
(2)上記ホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理したものである上記(1)に記載のホウ素の除去方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るホウ素の除去方法は、グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、ホウ素含有量が500μg/L以下の被処理水を、液空間速度SVが60~700h-1となるように通水することを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、被処理水中のホウ素含有量は、500μg/L以下であり、100μg/L以下であることが好ましく、50μg/L以下であることがより好ましい。
本発明において処理対象となる被処理水中のホウ素の含有量の下限値は、特に制限されないが、被処理水中のホウ素含有量は、通常、50ng/L以上である。
【0012】
本発明においては、被処理水中のホウ素含有量が500μg/L以下であることにより、ホウ素選択性イオン交換樹脂の破過を抑制しつつ被処理水中のホウ素の含有量をより効果的に低減することができる。
【0013】
なお、本出願書類において、水中のホウ素含有量はAgilent Technology者製ICP-MS 8900により測定した値を意味する。
【0014】
本発明において、被処理水は、pH5~9であるものが適当であり、pH6~8であるものがさらに適当である。
本発明において、処理対象となる被処理水は、ホウ素選択性イオン交換樹脂に接触処理する前に適宜pH調整してもよい。
【0015】
本発明において、被処理水としては、半導体製造時にシリコンの洗浄用途に使用される水等を挙げることができる。
【0016】
本発明においては、上記被処理水を、グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に通水する。
【0017】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂におけるイオン交換基の代わりにホウ素とキレート結合を形成しやすいキレート生成基(キレート基)としてグルカミン基が導入されたことにより、ホウ素を選択的に吸着することができる。
【0018】
本発明において、ホウ素選択性イオン交換樹脂は、樹脂製の基体にグルカミン基が導入された所定の全有機炭素放出量を有するイオン交換体であれば特に制限されず、粉末状、ビーズ状、膜状など種々の形態のものを採用することができ、ゲル型イオン交換樹脂または多孔性型イオン交換樹脂のいずれであってもよい。
【0019】
ゲル型イオン交換樹脂および多孔性型イオン交換樹脂は、イオン交換樹脂のミクロ構造に基づく分類であり、このうちゲル型イオン交換樹脂とは、スチレンとジビニルベンゼンを無溶媒で重合させたものを基体とするイオン交換樹脂で不均一に架橋したゲル状の構造を有し、最も古典的なイオン交換樹脂を意味する。
【0020】
また、多孔性型イオン交換樹脂は、重合の際に溶媒を使用することによって孔径20nmから100nm程度のマクロポアが形成された樹脂を基体とするイオン交換樹脂を意味し、MR形と呼ばれているものも含む。多孔性型イオン交換樹脂は、極性の低い溶媒でも樹脂内部に入り込むことができるために非水溶液系でも使用することができ、マクロポアが連続しておらず均一度にも欠けるためゲル型樹脂に比べてイオン交換容量は低いが、物理的強度は高く浸透圧や機械的圧力に対する耐性に優れている。
【0021】
本発明において、上記キレート生成基であるグルカミン基が結合する基体としては、具体的には、架橋ポリスチレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等のスチレン系化合物や、フェノール類、アルデヒド類の縮合体や、架橋ポリアクリル酸等から選ばれる一種以上が好ましく、架橋ポリスチレン又はスチレン-ジビニルベンゼン共重合体がより好ましい。
【0022】
本発明において、キレート生成基であるグルカミン基が結合するホウ素選択性イオン交換樹脂としては、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体を基体とするMR形イオン交換樹脂が好ましい。
【0023】
本発明において、上記キレート生成基であるグルカミン基としては、特に制限されないが、N-アルキルグルカミン基が好ましく、N-メチルグルカミン基がより好ましい。
【0024】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂は、全有機炭素放出量が、10μg/L以下であるものであり、5μg/L以下であるものがより好ましい。
【0025】
本出願書類において、上記全有機炭素放出量は、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、全有機炭素(TOC)が1.0μg/L以下の試験水を、常温下において、液空間速度SV50hr-1で24時間通水したときの流出水中の全有機炭素(TOC)量(μg/L)を意味する。
【0026】
なお、本出願書類において、水中の全有機炭素(TOC)濃度は、Suez社製Sievers M9eにより測定した値を意味する。
【0027】
本発明においては、グルカミン基を有するとともに全有機炭素放出量が上記範囲内にある特定のホウ素選択性イオン交換樹脂を用いることにより、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去することができる。
【0028】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂は、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理したものであってもよい。
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理したものであることにより、所望の全有機炭素放出量を有するものを容易に提供することができる。
【0029】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理してなるものである場合、以下の(1)~(3)の条件下で前処理することが好ましい。
(1)3~5L/L-Rの1N NaOH水溶液を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通薬する。
(ホウ素選択性イオン樹脂の3~5倍体積量の1N NaOH水溶液を、「1時間あたりに通液するNaOH水溶液の体積量/ホウ素選択性イオン交換樹脂の体積量」が4となるように通薬する)。
(2)次いで、1.5L/L-Rの超純水または純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通水して、ホウ素選択性イオン交換樹脂中に残存するNaOHを押し出す。
(3)その後、10~20L/L-Rの超純水または純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=10hr-1で通水して、洗浄する。
【0030】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂が、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理してなるものである場合、上記(1)~(3)の条件下で前処理することに先立って、以下の(i)~(iii)の条件下で予備処理することがより好ましい。
(i)3~5L/L-Rの1N HCl水溶液を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通薬する。
(ホウ素選択性イオン樹脂の3~5倍体積量の1N HCl水溶液を、「1時間あたりに通液するHCl水溶液の体積量/ホウ素選択性イオン交換樹脂の体積量」が4となるように通薬する)。
(ii)次いで、1.5L/L-Rの超純水または純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通水して、ホウ素選択性イオン交換樹脂中に残存するHClを押し出す。
(iii)その後、10~20L/L-Rの超純水または純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=10hr-1で通水して、洗浄する。
【0031】
なお、本出願書類において、純水とは、Foxboro製インライン比抵抗計により測定した電気抵抗率が1~18MΩ・cmの水を意味し、超純水とは、Foxboro製インライン比抵抗計により測定した電気抵抗率が18.0MΩ・cm超の水を意味する。
【0032】
本発明において、グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂としては、市販品であってもあってもよく、このようなホウ素選択性イオン交換樹脂としては、オルガノ(株)製ORLITE X-U653J等を挙げることができる。
【0033】
本発明において、グルカミン基を有するホウ素選択性イオン交換樹脂の形状も特に制限されないが、例えば粒形状を有する場合、その平均粒径は、0.2~1,0mmが好ましく、0.4~0.8mmがより好ましい。
【0034】
本発明において、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して被処理水を通水する際の液空間速度SV(「1時間当たりに通水する被処理水の体積量/ホウ素選択性イオン交換樹脂の体積量」)は、60~700hr-1であり、75~600hr-1であることが好ましく、90~600hr-1であることがより好ましく、100~250hr-1であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明において、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して被処理水を通水する際の液空間速度SVを上記範囲内に制御することにより、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ被処理水中のホウ素を効果的に除去することができる。
【0036】
従来、ホウ素選択性イオン交換樹脂に被処理水を通水する場合、液空間速度SVを50hr-1程度以下に抑制しないと被処理水中のホウ素を十分に除去し得ないとされていたが、本発明者等の検討によれば、グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂を用いた場合には、被処理水の液空間速度SVを60~700hr-1に上昇させた場合であっても水中のホウ素を十分に除去することができ、かつ全有機炭素濃度の上昇を抑制し得ることを見出して、本発明を完成するに至ったものである。
【0037】
ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して被処理水を通水する際の液空間速度SVが60hr-1未満であると、処理水中の全有機炭素濃度の上昇を抑制することができず、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して被処理水を通水する際の液空間速度SVが700hr-1超えると、処理水中のホウ素含有量を十分に抑制することが困難になる。
【0038】
本発明において、一定量の被処理水を通水したホウ素選択性イオン交換樹脂は、必要に応じて逆洗した後、再生剤を通液することにより、吸着物を溶離させて再生することができる。上記再生剤を通液することにより、高濃度のホウ素を含有する再生廃液が生成する。
上記再生剤としては、水酸化ナトリウム等を挙げることができる。
【0039】
本発明によれば、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去する方法を提供することができる。
【0040】
(実施例)
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0041】
(実施例1)
オルガノ(株)製ホウ素選択性イオン交換樹脂「ORLITE X-U653」(全有機炭素放出量が4μg/Lであるもの)を、樹脂量として500mL(500mL-R)充填したホウ素吸着カラムに対し、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が2μg/Lである被処理水を、液空間速度SVが100hr-1となるように24時間通水した。このとき得られた処理水中のホウ素含有量(μg/L)および全有機炭素含有量(μg/L)を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
(実施例2~実施例3、比較例1~比較例2)
ホウ素吸着カラムに対して、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が 2μg/Lである被処理水を通液する際の液空間速度SVを、各々、250hr-1(実施例2)、500hr-1(実施例2)、50hr-1(比較例1)、1000hr-1(比較例2)になるように変更した以外は、実施例1と同様に通水し、このとき得られた処理水中のホウ素量(μg/L)および全有機炭素量(μg/L)を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
(比較例3)
三菱ケミカル(株)製ホウ素選択性イオン交換樹脂「DIAION CRB03」(全有機炭素放出量が80μg/Lであるもの)を、樹脂量として500mL(500mL-R)充填したホウ素吸着カラムに対し、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が2μg/Lである被処理水を、液空間速度SVが50hr-1となるように24時間通水した。
このとき得られた処理水中のホウ素含有量(μg/L)および全有機炭素含有量(μg/L)を測定した。結果を表2に示す。
【0045】
(比較例4)
ホウ素吸着カラムに対して、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が 2μg/Lである被処理水を通液する際の液空間速度SVを100hr-1になるように変更した以外は、実施例4と同様に通水し、このとき得られた処理水中のホウ素量(μg/L)および全有機炭素量(μg/L)を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
(比較例5)
(1)ホウ素選択性イオン交換樹脂の前処理
三菱ケミカル(株)製ホウ素選択性イオン交換樹脂「DIAION CRB03」(全有機炭素放出量が80μg/Lであるもの)を、以下の(i)~(iii)の方法で予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理した。(i)~(iii)の方法により、前述のイオン交換樹脂の全有機炭素放出量は10μg/L以下となった。
(i)4L/L-Rの1N NaOH水溶液を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通薬した。
(ii)次いで、1.5L/L-Rの超純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=4hr-1で通水して、ホウ素選択性イオン交換樹脂中に残存するNaOHを押し出した。
(iii)その後、15L/L-Rの超純水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して、液空間速度SV=10hr-1で通水して、洗浄した。
(2)被処理水の通水処理
上記前処理して得られたホウ素選択性イオン交換樹脂を、樹脂量として500mL(500mL-R)充填したホウ素吸着カラムに対し、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が2μg/Lである被処理水を、液空間速度SVが50hr-1となるように24時間通水した。
このとき得られた処理水中のホウ素含有量(μg/L)および全有機炭素含有量(μg/L)を測定した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例5)
ホウ素吸着カラムに対して、ホウ素濃度が50μg/L、全有機炭素濃度が 2μg/Lである被処理水を通液する際の液空間速度SVを100hr-1になるように変更した以外は、比較例5と同様に通水し、このとき得られた処理水中のホウ素量(μg/L)および全有機炭素量(μg/L)を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【0049】
表1~表2より、実施例1~実施例5においては、グルカミン基を有し、全有機炭素放出量が10μg/L以下であるホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、ホウ素含有量が500μg/L以下の被処理水を、液空間速度SVが60~700h-1となるように通水していることから、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去できることが分かる。
また、表2より、実施例5においては、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対し、予め苛性ソーダ水溶液と接触して前処理することにより、得られる処理水中の全有機炭素量をより効果的に低減し得ることが分かる。
【0050】
一方、表1~表2より、比較例1~比較例3および比較例5においては、ホウ素選択性イオン交換樹脂に対して被処理水を通液する液空間速度SVが、60~700h-1の範囲外であることから、得られる処理水中の全有機炭素量が高かったり(比較例1、比較例3、比較例5)、得られる被処理水中のホウ素量が高い(比較例2)ことが分かる。
【0051】
また、比較例3および比較例4の結果から、ホウ素選択性イオン交換樹脂中として全有機炭素含有量(μg/L)が高いものを使用した場合には、液空間速度SVを50hr-1(比較例3)から100hr―1(比較例4)に上昇させても被処理液中の全有機炭素量の低減効果が低いことが分かり(表2参照)、一方で、比較例5および実施例5の結果から、前処理によってホウ素選択性イオン交換樹脂としてイオン交換樹脂中の全有機炭素含有量(μg/L)を予め低減させたものを使用した場合には、液空間速度を所定範囲内に制御することによって被処理液中の全有機炭素量を効果的に低減し得ることが分かる(表2参照)。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、被処理水中のホウ素を、全有機炭素濃度の上昇を抑制しつつ効果的に除去する方法を提供することができる。