(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094970
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】インフルエンサー選定支援システム、インフルエンサー選定支援方法、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/00 20120101AFI20230629BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20230629BHJP
G06Q 30/02 20230101ALI20230629BHJP
【FI】
G06Q50/00 300
G06Q50/10
G06Q30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210598
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】521564939
【氏名又は名称】ゼロスタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森倉 峻
(72)【発明者】
【氏名】長友 竜帆
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB05
5L049CC12
5L049CC60
(57)【要約】
【課題】投稿情報に対する評価値を精度良く予測し、投稿情報の投稿を依頼するのに適したインフルエンサーの選定を支援するためのインフルエンサー選定支援システム、方法、及び、コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】インフルエンサー選定支援システム1は、インフルエンサー情報記憶部11Aと、投稿予定の投稿情報の入力を受け付ける投稿情報入力部23と、投稿情報の投稿予定日時の入力を受け付ける投稿日時入力部25と、投稿情報の投稿を依頼する1以上のインフルエンサーを選択するインフルエンサー選択部27と、投稿情報、投稿予定日時及び選択された1以上のインフルエンサーの属性情報に基づき、1以上のインフルエンサーによって投稿情報が投稿された場合の投稿情報に対する予測評価値を演算して出力する評価値演算部11Bと、予測評価値を1以上のインフルエンサーごとに表示する予測評価値表示部31とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投稿情報の投稿を依頼するのに適したインフルエンサーの選定を支援するためのインフルエンサー選定支援システムであって、
SNS上で投稿を行っている複数のインフルエンサーの属性情報を記憶したインフルエンサー情報記憶部と、
投稿予定の前記投稿情報の入力を受け付ける投稿情報入力部と、
前記投稿情報の投稿予定日時の入力を受け付ける投稿日時入力部と、
前記インフルエンサー情報記憶部に記憶された前記複数のインフルエンサーの中から、前記投稿情報の投稿を依頼する1以上の前記インフルエンサーを選択するインフルエンサー選択部と、
前記投稿情報、前記投稿予定日時及び前記インフルエンサー選択部で選択された前記1以上のインフルエンサーの属性情報に基づき、前記1以上のインフルエンサーによって前記投稿情報が投稿された場合の前記投稿情報に対する予測評価値を演算して出力する評価値演算部と、
前記予測評価値を前記1以上のインフルエンサーごとに表示する予測評価値表示部と、を備えた、
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記評価値演算部は、学習データとして、前記複数のインフルエンサーの属性情報、及び、前記複数のインフルエンサーの過去の投稿に関する投稿情報を説明変数として用い、前記複数のインフルエンサーの投稿情報に対する評価情報を目的変数として用いて機械学習を行い生成された学習済みモデルを備えた、
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記複数のインフルエンサーの属性情報は、少なくとも前記複数のインフルエンサーのフォロワー数、フォロー数、平均いいね数、信頼度、エンゲージメント、エンゲージメント率のいずれか1つを含み、
前記複数のインフルエンサーの過去の投稿に関する投稿情報は、少なくとも前記投稿が含むハッシュタグの数、前記投稿が含む文字数、前記投稿の投稿日時のいずれか1つを含む
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記評価値演算部は、演算前に、数値化された前記投稿情報の内容、前記投稿予定日時及び前記インフルエンサー選択部で選択された前記1以上のインフルエンサーの属性情報を正規分布に近づける、べき正規変換を行った上で正規化処理を行い、且つ、演算後、演算結果を逆正規化処理を行った上で、逆べき正規変換を行って前記予測評価値として出力する
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記べき正規変換は、所定のラムダ定数を用いたYeo-Johnson変換であり、
前記正規化処理は、所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理であり、
前記逆正規化処理は、所定の最大・最小値を用いたMin-Max逆正規化処理であり、
前記逆べき正規変換は、所定のラムダ定数を用いた逆Yeo-Johnson変換である
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記評価値演算部の前記学習済みモデルは、前記学習データを、前記複数のインフルエンサーの属性情報の数値範囲で区分けして、独立して学習させた複数の区分学習済みモデルを備えており、
前記評価値演算部は、前記インフルエンサー選択部で選択された前記1以上のインフルエンサーの属性情報の属する区分の前記区分学習済みモデルを用いて前記予測評価値を出力する
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項7】
請求項6に記載されたインフルエンサー選定支援システムにおいて、
前記複数の区分学習済みモデルは、前記複数のインフルエンサーの平均いいね数の数値範囲で区分けされている
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援システム。
【請求項8】
SNS上で投稿を行っている複数のインフルエンサーの属性情報を記憶したインフルエンサー情報記憶部を備えた、投稿情報の投稿を依頼するのに適したインフルエンサーの選定を支援するためのインフルエンサー選定支援システムを用いたインフルエンサー選定支援方法であって、
投稿予定の前記投稿情報の入力を受け付けるステップと、
前記投稿情報の投稿予定日時の入力を受け付けるステップと、
前記インフルエンサー情報記憶部に記憶された前記複数のインフルエンサーの中から、前記投稿情報の投稿を依頼する1以上の前記インフルエンサーの選択を受け付けるステップと、
前記投稿情報、前記投稿予定日時及び選択された前記1以上のインフルエンサーの属性情報に基づき、前記1以上のインフルエンサーによって前記投稿情報が投稿された場合の前記投稿情報に対する予測評価値を演算するステップと、
前記予測評価値を前記1以上のインフルエンサーごとに表示するステップと、
を有する、
ことを特徴とするインフルエンサー選定支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載されたインフルエンサー選定支援方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンサー選定支援システム、インフルエンサー選定支援方法、及び、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の普及とともに、SNSを通して消費者の購買を促すSNSマーケティングが盛んに行われるようになっている。そのため、自社アカウントや競合アカウントを管理するためのアカウント運用ツールが普及しつつある。例えば、株式会社ユーザーローカルが提供している「Social Insight」では、フォロワー伸び率や人気の投稿等を管理可能であり、また、どの曜日・時間帯に投稿するとエンゲージメント(他のSNSユーザからの反応)が付きやすいか等の分析ができるようになっている。
【0003】
このような状況の中で、SNS上で影響力を有する人である、いわゆる「インフルエンサー」の影響力を利用したインフルエンサー・マーケティングが注目されている。そして、例えば非特許文献1に示すようなインフルエンサーによる投稿情報の発信効果(具体的には、その発信された情報に対する閲覧者の反応である「いいね」の数)を予測する試みが行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山崎康之介,牛尼剛聡,「SNS広告におけるインフルエンサー推薦のための「いいね」数予測」,第13回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(DEIM Forum 2021),2021年3月3日,I31-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同じ情報を発信しても、その情報を発信する発信者によって、発信効果は異なる。そのため、インフルエンサーに情報発信を依頼する場合に、インフルエンサーによる投稿情報の発信効果を比較検討したい、というニーズが存在する。
【0006】
本発明の目的は、インフルエンサーによって投稿される投稿情報に対する評価値を精度良く予測し、投稿情報の投稿を依頼するのに適したインフルエンサーの選定を支援するためのインフルエンサー選定支援システム、インフルエンサー選定支援方法、及び、コンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示のインフルエンサー選定支援システムは、投稿情報の投稿を依頼するのに適したインフルエンサーの選定を支援するためのものであって、SNS上で投稿を行っている複数のインフルエンサーの属性情報を記憶したインフルエンサー情報記憶部と、投稿予定の前記投稿情報の入力を受け付ける投稿情報入力部と、前記投稿情報の投稿予定日時の入力を受け付ける投稿日時入力部と、前記インフルエンサー情報記憶部に記憶された前記複数のインフルエンサーの中から、前記投稿情報の投稿を依頼する1以上の前記インフルエンサーを選択するインフルエンサー選択部と、前記投稿情報、前記投稿予定日時及び前記インフルエンサー選択部で選択された前記1以上のインフルエンサーの属性情報に基づき、前記1以上のインフルエンサーによって前記投稿情報が投稿された場合の前記投稿情報に対する予測評価値を演算して出力する評価値演算部と、前記予測評価値を前記1以上のインフルエンサーごとに表示する予測評価値表示部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、予測評価値表示部に表示された予測評価値を参照することで、情報発信の依頼に適したインフルエンサーの選定を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】インフルエンサー選定支援システムの実施の形態の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】ユーザ端末の表示画面に表示されるインフルエンサー選定支援システムのウェブサイトの一例である。
【
図3】評価値演算部での演算処理を示すフローチャートである。
【
図5】学習済みモデルのアンサンブル学習の構造を示す図である。
【
図7】区分学習済みモデルに分けた、予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
【
図8】ベースモデルの予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
【
図9】処理モデルの予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
【
図10】アンサンブル+処理モデルの予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
【
図11】分岐モデルの予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明のインフルエンサー選定支援システム、インフルエンサー選定支援方法、及び、コンピュータプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明のインフルエンサー選定支援システムの実施の形態の構成を示すブロック図であり、
図2は、ユーザ端末の表示画面に表示されるインフルエンサー選定支援システムのウェブサイトの一例である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態のインフルエンサー選定支援システム1は、電気通信回線NWに接続されたサーバシステム3と、ユーザ端末5とから構成されている。
【0013】
サーバシステム3は、フロントエンドサーバ7と、バックエンドサーバ9と、APIサーバ11とを備えている。フロントエンドサーバ7は、ユーザ端末5から入力データを取得し、且つ、ユーザ端末5に出力データを表示する。バックエンドサーバ9は、フロントエンドサーバ7からの要請に基づき、適正な要請に対して、APIサーバ11へのルーティングを行う。APIサーバ11は、インフルエンサー情報記憶部11A及び評価値演算部11Bを有しており、バックエンドサーバ9からの要請に基づき、インフルエンサーによって投稿情報が投稿された場合の投稿情報に対する予測評価値を演算してバックエンドサーバ9に返すようになっている。
【0014】
インフルエンサー情報記憶部11Aは、SNS(Social Networking Service)上で投稿を行っている複数のインフルエンサーの属性情報を記憶している。SNSの例としては、Twitter社(アメリカ)が提供する「Twitter(登録商標)」、メタ・プラットフォームズ社(アメリカ)が提供する「Instagram(登録商標)」、Google社(アメリカ)が提供する「YouTube(登録商標)」、ByteDance社(中国)が提供する「TikTok(登録商標)」等が存在するが、本実施の形態では、一例として、インフルエンサー選定支援システム1は「Instagram」を対象としている。また、「インフルエンサー」とは、一般には「SNS上で影響力を有する人のこと」を指すが、本明細書においては、「SNSにて投稿実績のある公開アカウントのこと」をいう。
【0015】
本実施の形態では、インフルエンサー情報記憶部11Aが記憶している「インフルエンサーの属性情報」は、インフルエンサーに関する情報を収集・分析して得られるインフルエンサーに関する次の情報である。
(1)フォロワー数・・・該インフルエンサーをフォローしている(該インフルエンサーの投稿等を見られるように登録している)SNSユーザアカウント(フォロワー)の数
(2)フォロー数・・・該インフルエンサーがフォローしているSNSユーザアカウントの数
(3)平均いいね数・・・該インフルエンサーがSNS上に投稿した過去の投稿情報に対して、SNSユーザが「いいねボタン」(SNSによって具体的な呼び名等は変わるが、投稿内容に対して好き、楽しい、支持できる、というような意志を示すためにSNSユーザが押すボタン)を押した数(以下、「いいね数」)の総数を、該インフルエンサーの総投稿数で割って得られる数
(4)信頼度(フェイクフォロワー率)・・・該インフルエンサーのフォロワーのうち一定期間SNS(Instagram)を利用していない非アクティブユーザのフォロワー数を、該インフルエンサーのフォロワー数で割って得られる数
(5)エンゲージメント・・・該インフルエンサーが投稿した過去の投稿情報に対するいいね数と、該インフルエンサーの過去の投稿情報に対するSNSユーザのコメント数の和
(6)エンゲージメント率・・・「エンゲージメント」を該インフルエンサーの総投稿数で割って得られる数
【0016】
評価値演算部11Bは、複数のインフルエンサーの情報を学習データとして学習して得られた学習済みモデル(回帰モデル)LMを備えている。具体的には、学習済みモデルLMは、学習データとして、複数のインフルエンサーの属性情報、及び、複数のインフルエンサーの過去の投稿に関する投稿情報を説明変数として用い、複数のインフルエンサーの投稿情報に対する評価情報を目的変数として用いて機械学習を行い生成されたものである。
【0017】
説明変数の「複数のインフルエンサーの属性情報」は上記と同様である。「複数のインフルエンサーの過去の投稿に関する投稿情報」は、次の情報である。
【0018】
(1)ハッシュタグ数・・・該インフルエンサーの過去の投稿のハッシュタグ数(#(ハッシュマーク)を付けてタグ化されたキーワードの数)
(2)テキストの長さ・・・投稿情報の文字数
(3)投稿日時・・・投稿情報の投稿曜日(日曜日を0として、月曜日を1、火曜日を2、のように、曜日ごとに1ずつ増加させて得られた数値)、投稿時間(0~23)、及び、投稿分(0~59)
【0019】
目的変数の「複数のインフルエンサーの投稿情報に対する評価情報」は、投稿情報に対する「いいね数」である。
【0020】
機械学習は、LightGBM(Light Gradient Boosting Machine)アルゴリズムを用いている。本実施の形態では、学習データをインフルエンサーの平均いいね数を(i)1千未満、(ii)1千以上1万未満、(iii)1万以上の3通りに数値範囲で区分けして、独立して学習させた複数の区分(本実施の形態では、区分学習済みモデルLM1~LM3)を用意している。
【0021】
なお、学習処理を効率化するために、学習処理を実行する前にチューニング処理を実行してもよいのはもちろんである。チューニング処理とは、モデルが持つハイパーパラメータをチューニングする処理のことである。パラメータのチューニング方法としては、例えば、ベイズ最適化、グリッドサーチ、ランダムサーチ、メタヒューリスティックサーチ等が知られている。ベンチマークテストを行い、モデルの学習速度を考慮して、チューニング方法を決定すればよい。
【0022】
ユーザ端末5は、ユーザが使用するコンピュータ端末である。具体的には、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(ノートPC,デスクトップPC)等が想定されるが、これらに限られるものではない。ユーザ端末5は、通信部13、入力部15、データ記憶部17、制御部19、表示画面21を有している。通信部13は、電気通信回線NWと接続し、サーバシステム3と通信するためのものである。入力部15は、データを入力するためのものであり、ユーザ端末に応じて、キーボード、マウス、表示画面21を利用したタッチパネル等、種々のものを利用可能である。
【0023】
本実施の形態では、ユーザ端末5のウェブブラウザでサーバシステム3にアクセスすることで、
図2に示すウェブサイトがユーザ端末5の表示画面21に表示され、ユーザがインフルエンサー選定支援システム1を利用可能になっている。もちろん、ユーザ端末5に予めインフルエンサー選定支援システム1を利用するためのコンピュータプログラムをインストールしておき、コンピュータプログラムを起動することで、インフルエンサー選定支援システム1を利用可能にしておいてもよいのはもちろんである。
【0024】
図2に示すように、インフルエンサー選定支援システム1のウェブサイトは、投稿情報入力部23と、投稿日時入力部25と、インフルエンサー選択部27と、実行ボタン29を備えている。投稿情報入力部23は、投稿予定の投稿情報として、投稿情報を入力する部分である。本実施の形態では、投稿情報には、テキスト文書と画像が含まれる。テキストボックスに投稿予定のテキスト文書を入力し、また、画像を選択する。投稿日時入力部25は、投稿情報の投稿予定日時(曜日、時、分)、すなわち、インフルエンサーに該投稿情報を投稿してもらいたい日時(曜日、時、分)を入力する部分である。ここでは、プルダウン形式で日時(曜日、時、分)を入力するようになっている。インフルエンサー選択部27は、インフルエンサー情報記憶部11Aに記憶された複数のインフルエンサーの中から、投稿情報の投稿を依頼する1以上のインフルエンサーを選択する部分である。「+」ボタンを押すことで表示されるインフルエンサーのリストから、所望のインフルエンサーを選択可能になっている。
【0025】
投稿情報、投稿日時を入力し、インフルエンサーを選択後、実行ボタン29を押すと、評価値演算部11Bに投稿情報、投稿予定日時及び選択された1以上のインフルエンサーの属性情報が入力され、1以上のインフルエンサーによって投稿情報が投稿された場合の投稿情報に対する予測評価値が演算される。
【0026】
本実施の形態では、予測評価値として、インフルエンサーによって投稿情報が投稿された場合の投稿情報に対する「予測いいね数」を演算している。これは、「いいね数」が多い投稿情報はSNSユーザに広く伝搬することから発信効果が高い(商品やサービスを宣伝する投稿情報であれば、広告効果が高い)、という考えに基づくものである。
【0027】
図3は、評価値演算部11Bでの演算処理を示すフローチャートである。上記の通り情報が入力されると(ステップST1)、評価値演算部11Bは、入力された投稿情報を数値化する(ステップST2)。具体的には、次のように数値化を行う(なお、各数値の定義は、上記「複数のインフルエンサーの過去の投稿に関する投稿情報」と同様である)。
(1)投稿情報→(a)ハッシュタグ数、(b)テキストの長さ
(2)投稿日時→(c)投稿曜日、(d)投稿時間、(e)投稿分
【0028】
また、下記の、選択された1以上のインフルエンサーの属性情報をインフルエンサー情報記憶部11Aから読み出す。
(3)インフルエンサーの属性情報→(f)フォロワー数、(g)フォロー数、(h)平均いいね数、(i)信頼度、(j)エンゲージメント、(k)エンゲージメント率
【0029】
次に、評価値演算部11Bは、上記(a)~(k)の数値に前処理を行う(ステップST3)。前処理は、各数値に応じて選択される、べき正規変換及び/または正規化処理である。「べき正規変換」は、数値を正規分布に近づける処理である。「正規化処理」は、データのスケールを扱いやすいものに整える処理である。本実施の形態では、具体的には、次の通りである。
(a)ハッシュタグ数→所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理
(b)テキストの長さ→所定のラムダ定数を用いたYeo-Johnson変換後、所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理
(c)投稿曜日、(d)投稿時間、(e)投稿分→(投稿曜日×60×24)+(投稿時間×60)+投稿分=post_timeとして計算した後、所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理
(f)フォロワー数、(g)フォロー数→所定のラムダ定数を用いたYeo-Johnson変換後、所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理
(h)平均いいね数、(i)信頼度、(j)エンゲージメント、(k)エンゲージメント率→所定のラムダ定数を用いたYeo-Johnson変換後、所定の最大・最小値を用いたMin-Max正規化処理
【0030】
ここで、「Yeo-Johnson変換」とは、任意の入力データセットX={x1,x2・・・,xn}における要素xi∈X(i=1,2,・・・,n)に対して次式の処理を行い、出力データセットY={y1,y2・・・,yn}に変換する変換処理である。
【数1】
ただし,パラメータλは出力データセットYの対数尤度関数を最大にするパラメータとして計算される。
【0031】
また、「Min-Max正規化処理」とは、任意の入力データセットX={x1,x2・・・,xn}における要素xi∈X(i=1,2,・・・,n)に対して次式の処理を行い、出力データセットY={y1,y2・・・,yn}の最大値が1、最小値が0となるように正規化を行う処理である。
【数2】
【0032】
次に、評価値演算部11Bは、前処理後の数値を用いて、演算を行う。本実施の形態では、上述の通り3通りの区分学習済みモデルLM1~LM3を用意しており、
図4に示すように、選択されたインフルエンサーの(h)平均いいね数に応じて分岐させた区分学習済みモデルLM1~LM3を用いて演算するようになっている。具体的には、(i)区分学習済みモデルLM1は、平均いいね数が1千未満、(ii)区分学習済みモデルLM2は、平均いいね数が1千以上1万未満、(iii)区分学習済みモデルLM3は、平均いいね数が1万以上の場合に選択される学習済みモデルであり、選択されたインフルエンサーの属する区分の学習済みモデルを用いて予測評価値を出力する。
【0033】
また、
図5に示すように、本実施の形態の区分学習済みモデルLM1~LM3のそれぞれは、精度を向上させるため、複数の(本実施の形態では、5つの)サブ学習済みモデル(サブ回帰モデル)を並列接続して構築したアンサンブル学習モデルである。それぞれのサブ学習済みモデルにより算出された出力の平均値を演算結果として出力するようになっている。
【0034】
その後、演算結果に後処理を行う(ステップST5)。後処理は、逆正規化処理及び逆べき正規変換である。具体的には、逆正規化処理は、所定の最大・最小値を用いたMin-Max逆正規化処理であり、逆べき正規変換は、所定のラムダ定数を用いた逆Yeo-Johnson変換である。
【0035】
ここで、「Min-Max逆正規化処理」とは、次式の処理で出力データセットYをデータセットX’に変換する変換処理である。
【数3】
【0036】
また、「逆Yeo-Johnson変換」とは、次式の処理で出力データセットYをデータセットX’に変換する変換処理である。
【数4】
【0037】
図6は、予測評価値の表示例である。選択されたインフルエンサーごとに、演算(ステップST4)及び後処理(ステップST5)を行い、ユーザ端末5の表示画面21に予測評価値を出力し、予測評価値表示部31に表示する(ステップST6)。本実施の形態では、予測評価値は、該インフルエンサーにより投稿情報が投稿された場合に予測される「予測いいね数」である。
図6に示すように、予測評価値表示部31は、選択されたインフルエンサーごとに設けられており、ユーザは、表示された「予測いいね数」を比較・検討することで、どのインフルエンサーに投稿を依頼した方が発信効果が高いかを比較・検討してインフルエンサーの選定が可能である。
【0038】
<予測精度の検証>
参考として、インフルエンサー選定支援システム1の評価値演算部11Bが備えている学習済みモデル(以下、「実施形態モデル」)の予測いいね数の精度を示す。
図7は、区分学習済みモデルLM1~LM3に分けた、予測いいね数と実際のいいね数の相関関係を示すグラフ(散布図)である。
図7は、実際のいいね数を横軸に、予測いいね数を縦軸に表示している。図中、0を通る傾き1の線は予測精度が100%の場合(相対誤差が0の場合)を示しており、線からのズレが予測誤差に相当する。相対誤差(中央値)は、区分学習済みモデルLM1が13%、区分学習済みモデルLM2が16%、区分学習済みモデルLM3が15%であり、平均15%という好結果が得られた。
【0039】
なお、データの取得にあたっては、学習モデルの汎化性能評価のための「K分割交差検証法(K-fold cross-validation法)」を用いた。K分割交差検証法では、学習データを、K個(Kは2以上の整数)に分割し、その内一つを検証用データ、残り(K-1)を訓練用データとする。訓練用データで学習済みモデルを構築してから、検証用データにて評価を行う。学習データの分割から評価までをK回繰り返すことで汎化性能を評価する。
【0040】
図8乃至
図11を用いて、他の学習済みモデルと比較して、インフルエンサー選定支援システム1の評価値演算部11Bが備えている学習済みモデルの予測いいね数の精度が高いことを示す。ただし、
図8乃至
図11に示した例は従来技術ではなく、本発明の技術的思想の範囲に含まれる本発明の実施の形態の一例である。
【0041】
評価値演算部11Bが備えている学習済みモデルの予測精度の向上に寄与しているのは、(A)前処理(ステップST3)及び後処理(ステップST5)の実施(以下、「前処理・後処理」)の有無、(B)アンサンブル学習の有無、(C)平均いいね数による学習済みモデルの分岐構造(ステップST4)(以下、「分岐構造」)の有無であると考えられるため、それぞれの効果を実証するため、下記比較対象の学習済みモデルを準備し、予測いいね数を算出した。
(イ)ベースモデル:(A)前処理・後処理、(B)アンサンブル学習、(C)分岐構造を実施しないモデル
(ロ)処理モデル:(A)前処理・後処理のみ実施したモデル
(ハ)アンサンブル+処理モデル:(A)前処理・後処理、及び、(B)アンサンブル学習を実施したモデル
(ニ)分岐モデル:(A)前処理・後処理、(B)アンサンブル学習及び(C)分岐構造を実施しているが、(C)において、インフルエンサーの「フォロワー数」によって学習済みモデルを(i)1万未満、(ii)1万以上10万未満、(iii)10万以上の3条件で分岐させたモデル
【0042】
図8乃至
図11は、
図7と同様、実際のいいね数を横軸に、予測いいね数を縦軸に表示した散布図である。なお、データの取得にあたっては、実施形態モデルの場合と同様、「K分割交差検証法」を用いた。各モデルの相対誤差(中央値)は、次の通りである。
(イ)ベースモデル:28%
(ロ)処理モデル:17%
(ハ)アンサンブル+処理モデル:16%
(ニ)分岐モデル:区分学習済みモデルLM1が13%、区分学習済みモデルLM2が20%、区分学習済みモデルLM3が19%であり、平均17%
【0043】
(イ)ベースモデルと(ロ)処理モデルの結果を比較することで、(A)前処理・後処理が予測精度の向上に寄与することがわかる。(ロ)処理モデルと(ハ)アンサンブル+処理モデルの結果を比較することで、(B)アンサンブル学習が予測精度の向上に寄与することがわかる。(ハ)アンサンブル+処理モデルと(ニ)分岐モデルと実施形態モデルの結果を比較すると、(C)分岐構造は、分岐条件によって予測精度の向上に寄与することがわかる。
【0044】
以上より、実施形態モデルは、インフルエンサーによる投稿情報に対する予測いいね数を演算するのに適した学習済みモデルであることがわかる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0046】
例えば、学習済みモデルは、学習データとして、上記した全ての情報を説明変数として含まなくても、また、インフルエンサーの他の属性情報や投稿情報を説明変数として含めてもよいのはもちろんである。また、前処理・後処理については行わなくてもよく、他の手法による前処理・後処理を行ってもよいのはもちろんである。さらに、学習済みモデルは区分されていなくてもよく、他の区分による区分学習済みモデルを用意してもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1 インフルエンサー選定支援システム
3 サーバシステム
5 ユーザ端末
7 フロントエンドサーバ
9 バックエンドサーバ
11 APIサーバ
11A インフルエンサー情報記憶部
11B 評価値演算部
13 通信部
15 入力部
17 データ記憶部
19 制御部
21 表示画面
23 投稿情報入力部
25 投稿日時入力部
27 インフルエンサー選択部
29 実行ボタン
31 予測評価値表示部
LM 学習済みモデル
LM1~LM3 区分学習済みモデル