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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094980
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ロボットハンドの端部ツール
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/12 20060101AFI20230629BHJP
   B25J 15/00 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
B25J15/12
B25J15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210614
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊吾
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 仁
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707ES03
3C707ES04
3C707ES05
3C707ES10
3C707EU19
3C707EV02
3C707EV04
3C707HS11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロボットハンドに装着され、取り扱う物体として小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げるような操作を行う場合に、所定の量を安定的に掬い上げることができるロボットハンドの端部ツールを提供する。
【解決手段】ロボットハンドの端部ツール10は、内部に導入される流体の流体圧で湾曲状態、伸長状態が制御される複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を備えるロボットハンド20のフィンガ先端部43aに着脱可能に装着される筒状部分11aを有する取付け部11と、該取付け部と一体成形されひれ状に形成された爪部13と、を備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に導入される流体の流体圧で湾曲状態、伸縮状態が制御される複数の湾曲型流体圧アクチュエータを備えるロボットハンドのフィンガ先端部に着脱可能に装着される筒状部分を有する取付け部と、
前記取付け部と一体成形され、ひれ状に形成された爪部と、
を備えるロボットハンドの端部ツール。
【請求項2】
前記取付け部が前記複数の湾曲型流体圧アクチュエータの前記フィンガ先端部に装着された状態で前記複数の湾曲型流体圧アクチュエータを作動させた場合に、複数の前記爪部が組み合わされて凹状の収容部分を形成する、請求項1に記載のロボットハンドの端部ツール。
【請求項3】
前記筒状部分が有底筒状である、請求項1または2に記載のロボットハンドの端部ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドの先端部に装着される端部ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムでは、ロボットがアクチュエータ、グリッパ、エンドエフェクタ等のマニピュレータを使用して、周囲の物体を操作する。近年、ソフトロボットアクチュエータがマニピュレータとして採用されている。ソフトロボットアクチュエータは、金属や硬質のプラスチックから形成される従来のマニピュレータと異なり、ゴム等のエラストマ材料で形成されたチューブ状の本体の内部の圧力を変化させることで、伸縮、湾曲するアクチュエータで構成される。
【0003】
湾曲可能な複数のソフトロボットアクチュエータを用いれば、取り扱う対象となる物体に対して、取り扱う過程で過度の圧力がかかることを防止しつつ前記物体の把持等を行うことができる。例えば、湾曲可能な複数のソフトロボットアクチュエータを用いたロボットハンドは、軟らかい物体を変形させない或いは潰さないように、物体を把持することに優れている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、取り扱う物体として小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げるような操作を行う場合、取り扱う物体を潰さないために前記ロボットハンドを採用すると、所定の量を安定的に掬い上げる操作等を行うことが容易でなかった。
【0005】
本発明では、ロボットハンドに装着され、取り扱う物体として小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げる操作を行う場合に、所定の量を安定的に掬い上げることができるロボットハンドの端部ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るロボットハンドの端部ツールは、内部に導入される流体の流体圧で湾曲状態、伸縮状態が制御される複数の湾曲型流体圧アクチュエータを備えるロボットハンドのフィンガ先端部に着脱可能に装着される筒状部分を有する取付け部と、前記取付け部と一体成形され、ひれ状に形成された爪部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、ロボットハンドに装着され、取り扱う物体として小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げる操作を行う場合に、所定の量を安定的に掬い上げることができるロボットハンドの端部ツールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、第1実施形態に係るロボットハンド端部ツール及びロボットハンドを示す斜視図であり、ロボットハンドの作動開始前の状態を示す斜視図である。
図1B図1Bは、第1実施形態に係るロボットハンド端部ツール及びロボットハンドを示す斜視図であり、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す斜視図である。
図2A図2Aは、ロボットハンドの作動開始前の状態を示す側面図である。
図2B図2Bは、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す側面図である。
図3A図3Aは、図2AのIIIA-IIIA矢視図である。
図3B図3Bは、図2BのIIIB-IIIB矢視図である。
図4A図4Aは、第2実施形態に係るロボットハンド及びロボットハンド端部ツールの斜視図であり、ロボットハンドの作動開始前の状態を示す斜視図である。
図4B図4Bは、第2実施形態に係るロボットハンド端部ツール及びロボットハンドの斜視図であり、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す斜視図である。
図5A図5Aは、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す側面図である。
図5B図5Bは、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す図5AのVB-VB矢視図である。
図5C図5Cは、複数のロボットハンド端部ツールで収容部分を形成した状態を示す図5BのVC-VC矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0010】
(1)第1実施形態の端部ツール10に用い得るロボットハンド20の概略構成
図1Aは、第1実施形態に係るロボットハンドの端部ツール10及びロボットハンド20を示す斜視図であり、ロボットハンド20の作動開始前の状態を示す斜視図である。図1Bは、ロボットハンドの端部ツール10及びロボットハンド20を示す斜視図であり、複数のロボットハンドの端部ツール10で収容部分15を形成した状態を示す斜視図である。図2Aは、ロボットハンド20の作動開始前の状態を示す側面図である。図2Bは、複数のロボットハンド端部ツール10で収容部分15を形成した状態を示す側面図である。図3Aは、図2AのIIIA-IIIA矢視図である。図3Bは、図2BのIIIB-IIIB矢視図である。
【0011】
第1実施形態の端部ツール10が装着されるロボットハンド20を用い得る把持システムの構成例を示す。
【0012】
把持システムは、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40と、下面側に複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40の一端が固定された状態で複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を支持するロボットハンド基体30と、を備えるロボットハンド20、およびロボットハンド基体30の上面側に連結されロボットハンド20を取り扱う物体の上部に移動可能であり且つロボットハンド20を上下動可能なロボットアーム(不図示)を備える。
【0013】
ロボットハンド20の複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40は、ロボットアームによって上部から吊り下げられた状態になっている。図1A図3Bに示される第1実施形態では、湾曲型流体圧アクチュエータ40が3本、ロボットハンド基体30から吊り下げられている。ただし、ロボットハンド20を構成する複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40は、これに限定されるものでなく、湾曲型流体圧アクチュエータ40が2本、あるいは後述するように4本以上であってもよい。
【0014】
本実施形態の複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40は、ロボットハンド20の把持部として機能するように、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40の自由端側である先端(他端)が互いに接近するように湾曲可能にロボットハンド基体30に固定されている。
【0015】
本実施形態において、3本の湾曲型流体圧アクチュエータ40は、ロボットハンド基体30に固定された状態で、それぞれが下面の平面内で正三角形の頂点位置となるように互いに等間隔に配置されている。そして、3本の湾曲型流体圧アクチュエータ40それぞれが正三角形の略重心方向に湾曲するようにロボットハンド基体30に固定されている。
【0016】
実施形態の複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40には、内部に導入される流体の流体圧で湾曲・伸縮可能に構成された、湾曲可能なマッキベン型の流体圧アクチュエータが用いられる。
【0017】
なお、湾曲可能なマッキベン型の流体圧アクチュエータ40は、例えば一般的なマッキベン型流体圧アクチュエータと同様に、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体であるゴム製のチューブと、所定方向(所定の編角)に配向された繊維コードを編み込んだ伸縮性を有する円筒状の構造体であり前記チューブの外周面を覆うスリーブと、を備えて構成される流体圧アクチュエータ本体41、および継手43を備え流体圧アクチュエータ本体41の両端を封止するアルミニウム等の金属製あるいは硬質プラスチック製の封止部材とで構成される。
【0018】
湾曲可能なマッキベン型の流体圧アクチュエータ40は、一般的なマッキベン型流体圧アクチュエータの構成に加えて、流体圧アクチュエータ本体41におけるチューブの周方向の一部に前記軸方向における一端側から他端側に亘って設けられる拘束部材(不図示)を備える。この拘束部材の作用によって、チューブの収縮・膨張時にチューブの周方向の一部の収縮が拘束されて、湾曲型流体圧アクチュエータ40が湾曲可能となっている。
【0019】
ロボットアームに支持されたロボットハンド20は、ロボットハンド基体30から吊り下げられている複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を湾曲させることで、ヒトの指に似た挙動を実現し得る。
【0020】
複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を用いたロボットハンド20は、鶏卵のような壊れやすい物体や、包装対象とともに不活性ガスが充填された被包装物等のような変形容易で軽量な物体等でも損傷させずに把持できる。また、湾曲型流体圧アクチュエータ40は、適切な拘束部材を採用することで、一定以上の重量があるような物体、例えば、砲丸投げの砲丸(7.26kg以上)を把持して持ち上げることも可能である。
【0021】
なお、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40の駆動は、すべての湾曲型流体圧アクチュエータ40を同時に昇圧して駆動してもよく、複数の流体供給源等からそれぞれの湾曲型流体圧アクチュエータ40に所望の順序で流体を供給することで複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を湾曲させてもよい。
【0022】
(2)第1実施形態の端部ツール10の構成
第1実施形態にかかるロボットハンドの端部ツール10は、上記構成の把持システムに含まれるロボットハンド20に適用可能である。ロボットハンドの端部ツール10は、内部に導入される流体の流体圧で湾曲状態、伸縮状態が制御される複数の流体圧アクチュエータ(湾曲型流体圧アクチュエータ)40を備えるロボットハンド20の継手43の先端部であるフィンガ先端部43aに着脱可能に装着される筒状部分11aを有する取付け部11と、取付け部11と一体成形されるひれ状に形成された爪部13と、を備える。
【0023】
第1実施形態における取付け部11の筒状部分11aは、有底筒状であり、円筒状に形成されている。取付け部11と一体成形される爪部13は、取付け部11の外周面における側面及び底面から張り出すひれ状(板状)に形成され、一方の面が凹状に湾曲した湾曲面を有している。
【0024】
端部ツール10の材質は、端部ツール10が取り扱う物体に応じて適宜選択されればよい。例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンを共重合させたABS樹脂や、ポリ乳酸樹脂(PLA)等の硬質のプラスチックであってもよく、シリコーン樹脂等の軟質の樹脂材料であってもよい。
【0025】
取付け部11が複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40のフィンガ先端部43aのそれぞれに装着された状態で複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40を作動させた場合に、複数の爪部13が組み合わされて凹状の収容部分15を形成する。具体的に、凹状の収容部分15は、取付け部11から張り出した爪部13の端縁が互いに当接した状態で、それぞれの爪部13に形成された凹状の湾曲面が組み合わされて構成される。なお、第1実施形態において複数の端部ツール10を一組の端部ツールとして収容部分15を形成する構成は、爪部13同士の端縁が互いに当接するものに限定されない。例えば、収容部分15は、爪部13同士の端縁部分が僅かに重なり合って形成されてもよい。
【0026】
第1実施形態の端部ツール10における有底筒状に形成された取付け部11は、端部ツール10をロボットハンド20のフィンガ先端部43aに装着する際には、取付け部11の底までフィンガ先端部43aが嵌め込まれるように装着することで、端部ツール10がフィンガ先端部43aに安定的に装着される。
【0027】
(3)第1実施形態の端部ツール10が装着されたロボットハンド20の挙動
図1A,2A,3Aは、それぞれロボットハンド20に設けられた湾曲型流体圧アクチュエータ40の湾曲前の状態の斜視図、側面図、及び湾曲型流体圧アクチュエータ40、端部ツール10を上部から見た図である。図1B,2B,3Bは、図1A,2A,3Aに示された状態から、第1実施形態のロボットハンド20に設けられた複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40のチューブ内部の流体圧が昇圧されることで湾曲した状態を示している。
【0028】
図1B,2B,3Bの状態では、各湾曲型流体圧アクチュエータ40の継手43のフィンガ先端部43aに装着された端部ツール10のひれ状の爪部13の端縁が互いに当接して、凹状の収容部分15が形成されている。
【0029】
第1実施形態では、凹状の収容部分15は、底面が凹状の湾曲面を成し上面が解放された容器状(お椀型)に形成されている。ただし、凹状の収容部分15の底面形状は図1B等に示すようなお椀型の湾曲面に限定されるものでなく、収容部分15が組み合わせた複数の爪部の上面側外縁に対して凹む凹部を形成していればよい。
【0030】
また、第1実施形態では、凹状の収容部分15を形成する3つの端部ツール10の爪部13が全て同一形状に形成されている。しかし、複数の端部ツール10の爪部13を組み合わせて凹状の収容部分15を形成する場合、複数の端部ツール10の爪部13を組み合わせた状態で爪部13のひれ状部分が互いに当接、或いはひれ状の端縁同士が重なり合うことで、凹状の収容部分15を形成していればよく、必ずしも全ての爪部13が同一形状に形成されていなくてもよい。
【0031】
第1実施形態のロボットハンド20は、取り扱う物体の上部までロボットアームによって移動された状態から、まず、ロボットアームによってロボットハンド20が下方に移動させられて、取り扱う物体の上面よりも下方の位置まで少なくとも端部ツール10先端が下ろされる。次に湾曲型流体圧アクチュエータ40が湾曲され、複数の端部ツール10の爪部13によって凹状の収容部分15が形成されることで、取り扱う物体を収容部分15に収容する。ここで、取り扱う物体の上面とは、取り扱う対象となる軽量な粒状などの物体単体の上面のみを表すだけでなく、取り扱う対象となる小さく、軽量な粒状などの物体が容器等の内部に大量に収容された状態等、小さく、軽量な粒状などの物体の集団を、取り扱う物体と定義した場合の、取り扱う物体の上面も含む。
【0032】
(4)第2実施形態の端部ツール110に用い得るロボットハンド120の概略構成
図4Aは、第2実施形態に係るロボットハンド端部ツール110及びロボットハンド120の斜視図であり、ロボットハンド120の作動開始前の状態を示す斜視図である。図4Bは、第2実施形態に係るロボットハンド端部ツール110及びロボットハンド120の斜視図であり、複数のロボットハンド端部ツール110で収容部分115を形成した状態を示す斜視図である。図5Aは、複数のロボットハンド端部ツール110で収容部分115を形成した状態を示す側面図である。図5Bは、複数のロボットハンド端部ツール110で収容部分115を形成した状態を示す図5AのVB-VB矢視図である。図5Cは、複数のロボットハンド端部ツール110で収容部分115を形成した状態を示す図5BのVC-VC矢視図である。
【0033】
第2実施形態の端部ツール110が装着されるロボットハンド120を用い得る把持システムの構成例を示す。
【0034】
把持システムは、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140と、下面側に複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140の一端が固定され複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140を支持するロボットハンド基体130と、を備えるロボットハンド120、およびロボットハンド基体130の上面側に連結されロボットハンド120を取り扱う物体の上部に移動可能であり、且つロボットハンド120を上下動可能なロボットアーム(不図示)を備える。
【0035】
ロボットハンド120の複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140は、ロボットアームによって上部から吊り下げられた状態になっている。図4A図5Cに示される第2実施形態では、湾曲型流体圧アクチュエータ140が4本、ロボットハンド基体130から吊り下げられている点が第1実施形態のロボットハンド120と異なる。
【0036】
本実施形態に用いられる複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140は、第1実施形態に用いられた複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40と同様のアクチュエータ本体141,継手143,フィンガ先端部143aを備えた湾曲可能なマッキベン型の流体圧アクチュエータである。ロボットハンド120の把持部として機能するように、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140の自由端側である先端(他端)が互いに接近するように湾曲可能にロボットハンド基体130に固定されている。
【0037】
4本の湾曲型流体圧アクチュエータ140は、ロボットハンド基体130に固定された状態で、それぞれが下面の平面内で菱形(正方形を含む)の頂点位置となるように配置されている。そして、4本の湾曲型流体圧アクチュエータ140それぞれが菱形の略重心方向に湾曲するようにロボットハンド基体130に固定されている。
【0038】
ロボットアームに支持されたロボットハンド120は、ロボットハンド基体130から吊り下げられている複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140を湾曲させることで、ヒトの指に似た挙動を実現し得る。
【0039】
なお、複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140の駆動は、すべての湾曲型流体圧アクチュエータ140を同時に昇圧駆動してもよいが、それぞれの湾曲型流体圧アクチュエータ140に所望の順序で流体を供給することで、例えば、菱形(正方形)の同じ対角線上に配置された一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140を先に湾曲させてから、他方の対角線上に配置された他の一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140を湾曲させてもよい。
【0040】
(5)第2実施形態の端部ツール110の構成
第2実施形態にかかるロボットハンドの端部ツール110は、上記構成の把持システムに含まれるロボットハンド120に適用可能である。ロボットハンドの端部ツール110は、内部に導入される流体の流体圧で湾曲状態、伸縮状態が制御される複数の流体圧アクチュエータ(湾曲型流体圧アクチュエータ)140を備えるロボットハンド120の継手143の先端部であるフィンガ先端部143aに着脱可能に装着される筒状部分111aを有する取付け部111と、取付け部111と一体成形されるひれ状に形成された爪部113と、を備える。
【0041】
図4A,4B等に示すように、第2実施形態における取付け部111の筒状部分111aは、第1実施形態と同様に有底筒状であり、円筒状に形成されている。取付け部11と一体成形される爪部13は、取付け部11の外周面における側面及び底面から張り出すひれ状(板状)に形成され、L字板状形状を有している。
【0042】
第1実施形態では、図1B,3B等に示されるように、組み合わされる3つの爪部13が同一形状を有していた。これに対して、第2実施形態では、図4A,5A,5B等に示すように、前記菱形の短い対角線上に配置された一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140のフィンガ先端部143aに装着される一方の一対の端部ツール110同士の爪部113が前記菱形の長い対角線と平行方向に長く取付け部111から張り出すL字板状に形成されており、前記菱形の長い対角線上に配置された他の一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140のフィンガ先端部143aに装着される他方の一対の端部ツール110同士の爪部113が前記菱形の短い対角線と平行方向に短く取付け部111から張り出すL字板状に形成されている。
【0043】
端部ツール110の材質は、第1実施形態と同様に、端部ツール110が取り扱う物体に応じて適宜選択されればよい。例えば、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンを共重合させたABS樹脂や、ポリ乳酸樹脂(PLA)等の硬質のプラスチックであってもよく、シリコーン樹脂等の軟質の樹脂材料であってもよい。
【0044】
図4Bに示すように、取付け部111が複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140のフィンガ先端部143aのそれぞれに装着された状態で複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140を作動させた場合に、複数の爪部113のひれ状部分が組み合わされて上面が開口した箱状の収容部分115を形成する。
【0045】
具体的に、図4B図5A~5Cに示すように、複数の端部ツール110を一組の端部ツールとすることで形成された箱状(凹状)の収容部分115は、菱形(正方形)の短い対角線上に配置された一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140を先に湾曲させてそのフィンガ先端部143aに装着された爪部113の端縁を互いに当接させ、次に長い対角線上に配置された他の一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140を湾曲させてそのフィンガ先端部143aに装着された爪部113を、一方の一対の端部ツール110の爪部113の側縁と底面に当接させて形成されている。なお、取付け部111に対するL字板状の爪部113の角度は、湾曲型流体圧アクチュエータ140が湾曲した状態で、箱状の収容部分115を形成可能な角度に設計されてよい。また、第1実施形態と同様に、爪部113が端縁で当接する構成は、爪部113同士の端縁部分が重なり合うように構成されてもよい。
【0046】
有底筒状に形成された第2実施形態の端部ツール10における取付け部111は、第1実施形態と同様に端部ツール110をロボットハンド120のフィンガ先端部143aに装着する際には、取付け部111の底までフィンガ先端部143aが嵌め込まれるように装着することで、端部ツール110がフィンガ先端部143aに安定的に装着される。
【0047】
(6)第2実施形態の端部ツール110が装着されたロボットハンド120の挙動
図4Aは、ロボットハンド120に設けられた湾曲型流体圧アクチュエータ140の湾曲前の状態の斜視図である。図4B,5A~5Cは、図4Aに示された状態から、第2実施形態のロボットハンド120に設けられた複数の湾曲型流体圧アクチュエータ140のチューブ内部の流体圧が昇圧されることで湾曲した状態を示している。
【0048】
図4B,5A~5Cの状態では、各湾曲型流体圧アクチュエータ40の継手43のフィンガ先端部43aに装着された端部ツール10のひれ状の爪部13が互いに当接して、箱状(凹状)の収容部分15が形成されている。
【0049】
第2実施形態のロボットハンド120は、取り扱う物体の上部までロボットアームによって移動された状態から、まず、ロボットアームによってロボットハンド120が下方に移動させられて、取り扱う物体の上面よりも下方の位置まで端部ツール110が下ろされる。そして、ロボットハンド基体130の下面に菱形の頂点位置となるように配置されている4つの湾曲型流体圧アクチュエータ140のうち、短い対角線上に配置された一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140が湾曲され、そのフィンガ先端部143aに装着された一方の一対の端部ツール110に備わる爪部113の端縁同士が当接する。次に、長い対角線上に配置された他の一対の湾曲型流体圧アクチュエータ140が湾曲され、そのフィンガ先端部143aに装着された他方の一対の端部ツール110に備わる爪部113が一方の一対の端部ツール110の爪部113の側縁と底面に当接する。このように複数の端部ツール110の爪部113によって凹状の収容部分115が形成されることで、取り扱う物体を収容部分115に収容する。
【0050】
(7)作用・効果
上記構成のロボットハンド20,120の端部ツール10,110は、ロボットハンド20,120のフィンガ先端部43a,143aに装着されることで、ロボットハンド20,120で取り扱うことが容易でない小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げるような操作を取り扱う物体に対して行う場合でも、端部ツール10,110に形成された爪部13,113によって、所定の量を安定的に掬い上げることができる。
【0051】
さらに、端部ツール10,110をロボットハンド20,120の複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40,140のフィンガ先端部43a,143aに装着して、複数の端部ツール10,110の爪部13,113を組み合わせて形成された凹状の収容部分15,115で小さく、軽量な粒状などの物体を所望の量掬い上げるような操作を取り扱う物体に対して行う場合、さらに、所定の量をより安定的に掬い上げることができるようになる。
【0052】
(8)その他の実施形態
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0053】
例えば、第1実施形態、第2実施形態では、端部ツール10,110に備わる取付け部11、111の筒状部分11a,111aが円筒状に形成されていたが、筒状部分11a,111aの形状はこれに限定されない。筒状部分の形状は、楕円筒状、多角形の筒状等の非円筒形状でもよい。
【0054】
端部ツールに備わる取付け部の筒状部分を楕円筒状、多角形の筒状等の非円筒形状とした場合、筒状部分は、フィンガ先端部に対する周り止め効果を奏する。具体的に、非円筒形状の筒状部分を備える端部ツールを湾曲型流体圧アクチュエータのフィンガ先端部に装着した場合、ロボットハンド実作動時の端部ツールの爪部の軸回りの回転が抑止される。これにより、湾曲型流体圧アクチュエータ作動時における収容部分の形状を長期に渡って安定形成可能となる。
【0055】
また、第1実施形態、第2実施形態では、ロボットハンド20,120が備える複数の湾曲型流体圧アクチュエータ40,140としてマッキベン型の湾曲型流体圧アクチュエータを用いたが、湾曲型流体圧アクチュエータはこれに限定されるものでない。湾曲型流体圧アクチュエータは、取り扱う物体に過度な圧力をかけることなく把持可能である湾曲可能なアクチュエータであればよい。例えば、エラストマ等の軟質な材料を用いたソフトアクチュエータを湾曲型流体圧アクチュエータとして用いてよい。
【0056】
また、第1実施形態、第2実施形態では、フィンガ先端部43a,143aが金属製等の硬質な継手43で構成されていたが、フィンガ先端部はこれに限定されない。フィンガ先端部は、ロボットハンドの端部ツール10,110を着脱可能なアクチュエータの先端部であればよく、エラストマ等の軟質な材料で構成されていてもよい。
【0057】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0058】
10,110 端部ツール
11,111 取付け部
11a,111a 筒状部分
13,113 爪部
15,115 収容部分
20,120 ロボットハンド
30,130 ロボットハンド基体
40,140 湾曲型流体圧アクチュエータ
41,141 流体圧アクチュエータ本体
43,143 継手
43a,143a フィンガ先端部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C