IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上田日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図1
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図2
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図3
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図4
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図5
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図6
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図7
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図8
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図9
  • 特開-距離測定無線機および無線タグ 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095010
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】距離測定無線機および無線タグ
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20230629BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20230629BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20230629BHJP
   H04B 1/7163 20110101ALI20230629BHJP
【FI】
H04M9/00 D
A61G12/00 E
H04M9/00 C
H04B1/59
H04B1/7163
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210652
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西沢 昇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修一
【テーマコード(参考)】
4C341
5K038
【Fターム(参考)】
4C341LL10
5K038AA06
5K038AA08
5K038BB01
5K038DD12
5K038EE02
5K038EE05
5K038EE08
5K038FF01
5K038GG02
(57)【要約】
【課題】本発明は、ナースコールシステムにおける子機の置き忘れを回避すると共に、子機の位置を高精度に測定することを目的とする。
【解決手段】ナースコールシステム100を構成するナースコール子機14は、距離測定無線機として動作する。ナースコール子機14は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部30と、親機16に情報を送信する子機無線部38と、IR-UWB無線部30および子機無線部38を制御する子機コントローラ32とを備えている。子機コントローラ32は、親機16との間で無線通信を行うことで、親機16との間の距離を測定し、または親機16に当該距離を測定させる距離測定処理を、IR-UWB無線部30と共に実行する。子機コントローラ32は、距離測定処理によって測定された親機間距離を含む上り信号を親機16に送信する処理を、子機無線部38と共に実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、
親機または中継装置に情報を送信する子機無線部と、
前記IR-UWB無線部および前記子機無線部を制御する子機コントローラと、を備え、
前記子機コントローラは、
前記親機との間で無線通信を行うことで、前記親機との間の距離を測定し、または前記親機に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、
前記距離測定処理によって測定された親機間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行することを特徴とする距離測定無線機。
【請求項2】
請求項1に記載の距離測定無線機において、
前記親機間距離に基づいて、ユーザに対する報知処理を実行することを特徴とする距離測定無線機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の距離測定無線機において、
前記子機コントローラは、
無線タグとの間で無線通信を行うことで、前記無線タグとの間の距離を測定し、または前記無線タグに当該距離を測定させる無線タグ距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、
前記無線タグ距離測定処理によって測定されたタグ間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行することを特徴とする距離測定無線機。
【請求項4】
IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、
親機または中継装置に情報を送信する子機無線部と、
前記IR-UWB無線部および前記子機無線部を制御する子機コントローラと、を備え、
前記子機コントローラは、
無線タグとの間で無線通信を行うことで、前記無線タグとの間の距離を測定し、または前記無線タグに当該距離を測定させる無線タグ距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、
前記無線タグ距離測定処理によって測定されたタグ間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行することを特徴とする距離測定無線機。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の距離測定無線機において、
前記子機コントローラは、
前記タグ間距離に応じて、ユーザに対する報知処理を実行することを特徴とする距離測定無線機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の距離測定無線機において、
前記子機コントローラは、前記子機無線部と共に、前記親機との間でペアリングを実行し、
複数の前記親機のうちペアリングを完了した前記親機との間で、前記子機無線部を介した通信を行うことを特徴とする距離測定無線機。
【請求項7】
IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、
前記IR-UWB無線部を制御するタグコントローラと、を備え、
前記タグコントローラは、
無線装置との間で無線通信を行うことで、前記無線装置との間の距離を測定し、または前記無線装置に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、
前記距離測定処理によって測定された無線装置間距離を含む上り信号を、前記無線装置に送信する処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行することを特徴とする無線タグ。
【請求項8】
請求項7に記載の無線タグにおいて、
前記タグコントローラは、
上り呼び出し信号をユーザの操作に基づいて生成する処理を実行し、
前記上り呼び出し信号を前記無線装置に送信する処理を前記IR-UWB無線部と共に実行することを特徴とする無線タグ。
【請求項9】
IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、
前記IR-UWB無線部を制御する親機コントローラと、を備え、
前記親機コントローラは、
無線装置との間で無線通信を行うことで、前記無線装置との間の距離を測定し、または前記無線装置に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、
前記距離測定処理によって測定された無線装置間距離を含む上り信号を、管理装置に送信する処理を実行することを特徴とする距離測定無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離測定無線機および無線タグに関し、特に、IR-UWB方式の無線通信を用いた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
病室にいる患者が無線機を操作することによって、スタッフルームの管理装置に患者の様子を伝えるナースコールシステムにつき研究開発が行われている。例えば、患者に異常が生じた旨の情報が無線機から管理装置に伝えられ、管理装置は、その情報をディスプレイに表示する。スタッフルームにいる看護師は、ディスプレイに表示された情報を参照することで患者の様子を把握する。
【0003】
ナースコールシステムにおいて患者が携行する無線機(子機)は、例えば病室に設置された親機に情報を送信する。子機から情報を受信した親機は、管理装置に情報を送信する。以下の特許文献1~3には、無線通信機能を備えた子機を用いるナースコールシステムが記載されている。
【0004】
非特許文献1には、本願発明に関連する技術として、IR-UWB方式に関する記載がある。IR-UWB方式は、UWBの規格に従うと共に、搬送波を用いずにパルスによって信号を伝送する通信方式である。非引用文献1では、IR-UWB方式に関する規格であるIEEE 802.15.4zが参照されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-6202号公報
【特許文献2】特開2010-172555号公報
【特許文献3】特開2012-49623号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Petr Sedlacek, Martin Slanina, and Pavel Masek, “ An Overbview of the IEEE 802.15.4z Standard and its Comparison to the Existing UWB Standards “, 2019 29th International Conference Radioelektronika (RADIOELEKTRONIKA)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ナースコールシステムの子機は携行可能であるため、患者が子機をどこかに置き忘れてしまう可能性がある。この問題点に対し、特許文献2に記載のナースコールシステムでは、患者用ICタグが取り付けられた患者用バンドを装着した患者が、ナースコール子機を携行する。ナースコール子機には子機用ICタグが含まれている。ベッド付近に設置されたウォールユニットの非接触ICリーダライタが、患者用ICタグおよび子機用ICタグの両者から情報を読み取った場合には、ナースコール子機を患者が携行していると判定される。一方、非接触ICリーダライタが、患者用ICタグのみから情報を読み取った場合には、ナースコール子機を患者が置き忘れたと判定される。
【0008】
また、特許文献3に記載のナースコールシステムでは、壁面に設置された子機プレートに呼出子機が紐によって連結されており、呼出子機の紛失が防がれている。これらの文献に記載されているナースコールシステムでは、患者が子機を置き忘れた場合に、ユーザが子機の位置を高精度に把握することは困難である。
【0009】
本発明は、ナースコールシステムにおける無線機の置き忘れを回避すると共に、無線機の位置を高精度に測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、親機または中継装置に情報を送信する子機無線部と、前記IR-UWB無線部および前記子機無線部を制御する子機コントローラと、を備え、前記子機コントローラは、前記親機との間で無線通信を行うことで、前記親機との間の距離を測定し、または前記親機に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、前記距離測定処理によって測定された親機間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行することを特徴とする。
【0011】
望ましくは、前記親機間距離に基づいて、ユーザに対する報知処理を実行する。
【0012】
望ましくは、前記子機コントローラは、無線タグとの間で無線通信を行うことで、前記無線タグとの間の距離を測定し、または前記無線タグに当該距離を測定させる無線タグ距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、前記無線タグ距離測定処理によって測定されたタグ間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行する。
【0013】
また、本発明は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、親機または中継装置に情報を送信する子機無線部と、前記IR-UWB無線部および前記子機無線部を制御する子機コントローラと、を備え、前記子機コントローラは、無線タグとの間で無線通信を行うことで、前記無線タグとの間の距離を測定し、または前記無線タグに当該距離を測定させる無線タグ距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、前記無線タグ距離測定処理によって測定されたタグ間距離を含む上り信号を前記親機または前記中継装置に送信する処理を、前記子機無線部と共に実行することを特徴とする。
【0014】
望ましくは、前記子機コントローラは、前記タグ間距離に応じて、ユーザに対する報知処理を実行する。
【0015】
望ましくは、前記子機コントローラは、前記子機無線部と共に、前記親機との間でペアリングを実行し、複数の前記親機のうちペアリングを完了した前記親機との間で、前記子機無線部を介した通信を行う。
【0016】
また、本発明は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、前記IR-UWB無線部を制御するタグコントローラと、を備え、前記タグコントローラは、無線装置との間で無線通信を行うことで、前記無線装置との間の距離を測定し、または前記無線装置に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、前記距離測定処理によって測定された無線装置間距離を含む上り信号を、前記無線装置に送信する処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行することを特徴とする。
【0017】
望ましくは、前記タグコントローラは、上り呼び出し信号をユーザの操作に基づいて生成する処理を実行し、前記上り呼び出し信号を前記無線装置に送信する処理を前記IR-UWB無線部と共に実行する。
【0018】
また、本発明は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部と、前記IR-UWB無線部を制御する親機コントローラと、を備え、前記親機コントローラは、無線装置との間で無線通信を行うことで、前記無線装置との間の距離を測定し、または前記無線装置に当該距離を測定させる距離測定処理を、前記IR-UWB無線部と共に実行し、前記距離測定処理によって測定された無線装置間距離を含む上り信号を、管理装置に送信する処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ナースコールシステムにおける無線機の置き忘れを回避すると共に、無線機の位置を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るナースコールシステムの構成を示す図である。
図2】ナースコールシステムの具体的な構成例を示す図である。
図3】ナースコール子機、親機および無線タグの具体的な構成を示す図である。
図4】IR-UWB方式の無線信号のデータシンボルの構造を示す図である。
図5】測距装置が送信する測距信号のパケットと、対象装置が受信する測距応答信号のパケットを示す図である。
図6】第1子機・親機間条件~第4子機・親機間条件と、第1子機・タグ間条件~第3子機・タグ間条件との各組み合わせに対する判定内容を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るナースコールシステムの構成を示す図である。
図8】ナースコールシステムの具体的な構成例を示す図である。
図9】ナースコール子機、親機および無線タグの具体的な構成を示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るナースコールシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示されている同一の事項については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0022】
図1には、本発明の第1実施形態に係るナースコールシステム100の構成が示されている。ナースコールシステム100は、管理装置20、親機16、ナースコール子機14および無線タグ18を備えている。ナースコール子機14は、通常、患者によって携行される。また、無線タグ18は、リストバンド等によって患者の体に固定されている。親機16は病室10に設置されている。管理装置20は、病室10とは異なる部屋であるスタッフルーム12に設置されている。スタッフルーム12には、看護師や介護士等、患者を見守るスタッフが待機している。管理装置20は、親機16に有線接続されている。
【0023】
管理装置20およびナースコール子機14は、親機16を介して通信を行う。すなわち、管理装置20は、下り信号を親機16に送信する。親機16は下り信号を受信し、ナースコール子機14に下り信号を無線送信する。同様にして、ナースコール子機14は、上り信号を親機16に無線送信する。親機16は上り信号を受信し、管理装置20に上り信号を送信する。
【0024】
なお、「上り信号」の用語は、特定の情報を送信する信号を示すものではなく、ナースコール子機14または無線タグ18から親機16を介して管理装置20に向けて送信される信号を包括的に示す用語である。同様に、「下り信号」の用語は、特定の情報を送信する信号を示すものではなく、管理装置20から親機16を介してナースコール子機14または無線タグ18に向けて送信される信号を包括的に示す用語である。
【0025】
患者は、スタッフを呼び出すときはナースコール子機14を操作して、ナースコール子機14にスタッフ呼び出し情報を送信させる。すなわち、ナースコール子機14は、患者を特定する患者IDを含み、さらにスタッフ呼び出し情報を含む上り信号(上り呼び出し信号)を親機16を介して管理装置20に送信する。管理装置20は、上り呼び出し信号に含まれる患者IDおよびスタッフ呼び出し情報に応じて、患者IDで特定される患者から呼び出しがあったことをスタッフに伝える呼び出し動作を実行する。呼び出し動作には、例えば、患者IDをディスプレイに表示する、呼び出し音を発する等の動作がある。
【0026】
本実施形態に係るナースコール子機14は、親機16との間の距離である親機間距離を、親機16との間の無線通信によって測定する。また、ナースコール子機14は、無線タグ18との間の距離であるタグ間距離を、無線タグ18との間の無線通信によって測定する。ナースコール子機14は、親機間距離およびタグ間距離を含む上り信号を管理装置20に送信する。管理装置20は、親機間距離およびタグ間距離に応じて、ナースコール子機14の位置や、患者がナースコール子機14を携行しているか否か等を判定する。
【0027】
例えば、親機間距離が所定の閾値を超える場合、管理装置20は、指定された病室10の外にナースコール子機14が持ち出されたとの判定をする。タグ間距離が所定の閾値を超える場合、管理装置20は、患者がナースコール子機14を携行していないとの判定をする。管理装置20は、親機間距離についての判定と、タグ間距離についての判定を組み合わせた以下のような判定をしてもよい。
【0028】
親機間距離が所定の閾値を超え、かつ、タグ間距離が所定の閾値を超える場合には、管理装置20は、患者がナースコール子機14を病室外に持ち出し、どこかに置き忘れていると判定してよい。
【0029】
親機間距離が所定の閾値を超え、タグ間距離が所定の閾値以下である場合には、管理装置20は、患者がナースコール子機14を病室10外に持ち出し、携行していると判定してよい。
【0030】
親機間距離が所定の閾値以下であり、かつ、タグ間距離が所定の閾値を超える場合には、管理装置20は、患者が病室10にいるものの、ナースコール子機14を病室10外に置き忘れていると判定してよい。
【0031】
親機間距離が所定の閾値以下であり、かつ、タグ間距離が所定の閾値以下である場合には、管理装置20は、患者が病室10におり、かつ、ナースコール子機14を携行していると判定してよい。
【0032】
管理装置20は、親機間距離に基づく判定結果、タグ間距離に基づく判定結果、または親機間距離およびタグ間距離に基づく判定結果を、ディスプレイに表示してよい。
【0033】
ナースコール子機14は、管理装置20と同様、親機間距離およびタグ間距離に応じて、ナースコール子機14の位置や、患者がナースコール子機14を携行しているか否か等を判定してもよい。また、患者が病室10にいるものの、患者がナースコール子機14を病室10外に置き忘れているとナースコール子機14が判定した場合や、患者が病室外におり、かつ、ナースコール子機14を携行していないとナースコール子機14が判定した場合には、ナースコール子機14は、ユーザに対する報知処理を実行してよい。例えば、ナースコール子機14は、判定結果に応じて光を発する、音を発する等の処理を実行してもよい。
【0034】
無線タグ18は、患者IDを含み、スタッフ呼び出し情報を含む上り呼び出し信号を直接、親機16に送信し、その上り呼び出し信号を親機16を介して管理装置20に送信してもよい。この場合、患者は、無線タグ18を操作して、無線タグ18に上り呼び出し信号を送信させる。すなわち、無線タグ18は、上り呼び出し信号を親機16を介して管理装置20に送信する。管理装置20は、上り呼び出し信号に含まれる患者IDおよびスタッフ呼び出し情報に応じて呼び出し動作を実行する。
【0035】
図2には、ナースコールシステム100の具体的な構成例が示されている。病室10-1~10-Nのそれぞれには、親機16および壁埋込装置22が設置されている。また、トイレ等の共用スペース10-Sにも親機16および壁埋込装置22が設置されている。壁埋込装置22は壁に固定されており、壁埋込装置22には親機16が有線接続されている。壁埋込装置22と親機16はコネクタ等によって着脱自在であってよい。病室10-1~10-Nおよび共用スペース10-Sのそれぞれに設置された壁埋込装置22は、それぞれ、廊下に設置された廊下灯24-1~24-Nおよび24-Sに有線接続されている。各廊下灯24-j(jは1~Nのうちいずれかの整数)および24-Sは、スタッフルーム12に設置された管理装置20に有線接続されている。
【0036】
廊下灯24-jおよび24-Sは、親機16から壁埋込装置22を介して送信された上り信号を受信し、管理装置20に送信する。また、廊下灯24-jおよび24-Sは、管理装置20から壁埋込装置22を介して送信された下り信号を受信し、親機16に送信する。廊下灯24-jおよび24-Sは、下り信号に含まれている情報に基づいて、ナースコール子機14が病室10-j(jは1~Nのうちいずれかの整数)にあるか、患者がナースコール子機14を携行しているか等の情報を表示してよい。
【0037】
ナースコール子機14は、原則として、そのナースコール子機14を使用する患者の病室に設置された親機16とペアリングを行う。ナースコール子機14は、ペアリングを完了した親機16と無線通信を行い、その親機16および廊下灯24-jを介して管理装置20との間で通信を行う。ただし、ナースコール子機14を携行した患者が共用スペース10-Sや他の病室に移動したときは、そのナースコール子機14は、移動先に設置された親機16とペアリングを行い、ペアリングを完了した親機16および廊下灯24-jを介して管理装置20との間で通信を行う。
【0038】
ペアリングについて具体的に説明する。ペアリングを要求する側の装置であるナースコール子機14は、自らのID(以下、子機IDという)を含むペアリング要求信号を送信する。ペアリング要求信号を受信した親機16は、ペアリング要求信号から子機IDを抽出して第1登録IDとして記憶すると共に、自らのID(以下、親機IDという)を含むペアリング応答信号をナースコール子機14に送信する。ペアリング要求信号のレベルが十分でない等、ペアリング要求信号の質が良好でないときは、親機16は、第1登録IDの記憶およびペアリング応答信号の送信を行わない。
【0039】
ペアリング応答信号を受信したナースコール子機14は、ペアリング応答信号から親機IDを抽出して第2登録IDとして記憶する。ペアリング応答信号のレベルが十分でない等、ペアリング応答信号の質が良好でないときは、ナースコール子機14は、第2登録IDの記憶を行わない。なお、子機IDおよび親機IDは、それぞれ、ナースコール子機14および親機16のMACアドレスであってよい。
【0040】
第1登録IDが親機16に記憶され、第2登録IDがナースコール子機14に記憶されることでペアリングが完了する。ペアリングが完了した後は、第1登録IDおよび第2登録IDを用いて、親機16およびナースコール子機14との間の無線通信が行われる。
【0041】
各ナースコール子機14は、管理装置20に送信する上り信号に、患者IDと共に、ペアリングを完了した親機16のIDを特定する親機IDを含ませる。上り信号を受信した管理装置20は、患者IDと共に親機IDを上り信号から抽出し、患者IDと親機IDとを対応付けて記憶する。スタッフは、管理装置20が記憶する患者IDと、それに対応付けて管理装置20が記憶する親機IDとを参照することで、患者の居場所を把握することができる。
【0042】
管理装置20は、ナースコール子機14との間で通信を行うときは、そのナースコール子機14がペアリングを完了した親機16の親機IDを用いて、その親機16を介して通信を行う。すなわち、ナースコール子機14がペアリングを完了した親機16を介して下り信号を送信する。また、ナースコール子機14は、ペアリングを完了した親機16を介して、管理装置20に上り信号を送信する。
【0043】
このように、ペアリングを完了した親機16との間で、ナースコール子機14が無線通信を行うことで、ナースコール子機14を携行した患者が、自らの病室10-jから共用スペース10-S等、他の部屋に移動したとしても、ナースコール子機14は、他の部屋に設置された親機16を介して管理装置20との間で通信を行う。これによって、患者が行動可能な範囲が広がる。
【0044】
図3(a)~(c)には、それぞれ、ナースコール子機14、親機16および無線タグ18の具体的な構成が示されている。ナースコール子機14は、IR-UWB無線部30、子機コントローラ32、押ボタン34、表示器36、子機無線部38、スピーカ40およびマイク42を備えている。子機コントローラ32は、プログラムを実行することで各処理を実行するプロセッサによって構成されてよい。
【0045】
子機コントローラ32は、子機無線部38を用いて親機16との間で無線通信を行い、親機16との間でペアリングを行い、ペアリングを完了した親機16との間で無線通信を行う。
【0046】
子機コントローラ32は、IR-UWB無線部30を用いて親機16との間でIR-UWB方式の無線通信を行い、親機16との間の親機間距離を測定する。ここで、IR-UWB方式は、UWBの規格に従うと共に、搬送波を用いずにパルスによって信号を伝送する通信方式である。UWBの規格は、信号の周波数スペクトラムを広帯域とし、単位周波数当たりの電力を抑制する通信規格である。IR-UWB方式の無線通信については後述する。子機コントローラ32は、さらに、IR-UWB無線部30を用いて無線タグ18との間でIR-UWB方式の無線通信を行い、無線タグ18との間のタグ間距離を測定する。
【0047】
子機コントローラ32は、親機間距離を含む上り信号、タグ間距離を含む上り信号、または親機間距離およびタグ間距離を含む上り信号を生成し、子機無線部38に出力する。子機無線部38は、子機コントローラ32が出力する上り信号を、ペアリングを完了した親機16に無線送信する。
【0048】
押ボタン34は、例えば、患者がスタッフを呼び出す際に操作される。押ボタン34が操作されたことに応じて、子機コントローラ32は、スタッフ呼び出し情報を含む上り呼び出し信号を生成し、子機無線部38に出力する。マイク42は、周囲の音に基づく音声信号を生成して子機コントローラ32に出力する。周囲の音には患者の発声がある。子機コントローラ32は、音声信号を含む上り信号を生成し、子機無線部38に出力する。子機無線部38は、子機コントローラ32が出力する上り信号を、ペアリングを完了した親機16に無線送信する。
【0049】
子機無線部38は、ペアリングを完了した親機16から無線送信された下り信号を受信し、子機コントローラ32に出力する。子機コントローラ32は、下り信号に音声信号が含まれる場合には、音声信号をスピーカ40に出力する。スピーカ40は音声信号に基づく音を発生する。子機コントローラ32は、スタッフを呼び出す操作が押ボタン34によって行われてから、下り信号に含まれる音声信号がスピーカ40から発せられるまでの間に、患者を安心させるための呼び出し音(上り呼び出し信号が送信されたことの確認音)をスピーカ40に発生させてもよい。表示器36は、LED等の光源によって構成されてよい。光源は、押ボタン34の操作に応じた態様や、下り信号に含まれる情報に応じた態様で光を発生してよい。
【0050】
親機16は、IR-UWB無線部44、親機コントローラ46、表示器48、親機無線部52、および壁埋込インターフェース(I/F)部56を備えている。親機コントローラ46は、プログラムを実行することで各処理を実行するプロセッサによって構成されてよい。壁埋込I/F部56は、病室10-jや共用スペース10-S等の壁等に固定される。壁埋込I/F部56は、各廊下灯24-jに有線接続されている。壁埋込I/F部56は、管理装置20に直接、有線接続されてもよい。
【0051】
親機コントローラ46は、親機無線部52を用いてナースコール子機14との間で無線通信を行い、ナースコール子機14との間でペアリングを行い、ペアリングを完了したナースコール子機14との間で無線通信を行う。
【0052】
親機コントローラ46は、IR-UWB無線部44を用いてナースコール子機14との間でIR-UWB方式の無線通信を行い、ナースコール子機14に親機間距離を測定させる。なお、親機コントローラ46が親機間距離を測定し、IR-UWB無線部44を用いて、親機間距離をナースコール子機14に送信してもよい。
【0053】
親機無線部52は、ペアリングを完了したナースコール子機14から無線送信された上り信号を受信し、親機コントローラ46に出力する。親機コントローラ46は、上り信号を壁埋込I/F部56に出力し、壁埋込I/F部56は、廊下灯24-jを介して管理装置20に至る通信線に上り信号を送信する。なお、親機コントローラ46が親機間距離を測定した場合には、親機コントローラ46は、親機間距離を含む上り信号を壁埋込I/F部56に出力し、管理装置20に上り信号を送信してもよい。
【0054】
壁埋込I/F部56は、通信線から下り信号を受信し、親機コントローラ46に出力する。親機コントローラ46は、下り信号を親機無線部52に出力する。親機無線部52は、ペアリングを完了したナースコール子機14に下り信号を送信する。親機コントローラ46は、下り信号に含まれる情報に基づく画像、文字等を表示器48に表示させてもよい。この情報は、例えば、スタッフの操作に応じて管理装置20が下り信号に含ませた情報であってよい。
【0055】
なお、親機16は、商用電源のコンセントから電源電力を取得してもよい。親機16は、磁気共鳴方式等のワイヤレス給電方式によって、ナースコール子機14に電力を供給してよい。
【0056】
無線タグ18は、IR-UWB無線部58、タグコントローラ60、押ボタン62および表示器64を備えている。タグコントローラ60は、IR-UWB無線部58を用いてナースコール子機14との間でIR-UWB方式の無線通信を行い、ナースコール子機14にタグ間距離を測定させる。なお、タグコントローラ60がタグ間距離を測定し、IR-UWB無線部58を用いて、タグ間距離をナースコール子機14に送信してもよい。
【0057】
ナースコール子機14が病室外に置き忘れられた場合等、ナースコール子機14が無線タグ18の近傍にない場合には、無線タグ18と親機16との間で次のような処理が実行される。押ボタン62は、例えば、患者がスタッフを呼び出す際に操作される。押ボタン62が操作されたことに応じて、タグコントローラ60は、患者IDを含み、スタッフ呼び出し情報を含む上り信号を生成し、IR-UWB無線部58に出力する。IR-UWB無線部58は、IR-UWB方式の無線通信によって、上り信号を親機16に送信する。親機16のIR-UWB無線部44は、上り信号を受信し、親機コントローラ46に出力する。親機コントローラ46は、患者IDを含み、スタッフ呼び出し情報を含む上り信号を壁埋込I/F部56に出力する。壁埋込I/F部56は上り信号を送信する。
【0058】
親機コントローラ46は、壁埋込I/F部56で受信され、壁埋込I/F部56から出力された下り信号をIR-UWB無線部44に出力する。IR-UWB無線部44は、下り信号を送信する。無線タグ18のIR-UWB無線部58は下り信号を受信し、タグコントローラ60に出力する。タグコントローラ60は、下り信号に応じて表示器64に表示動作をさせる。表示器64は、LED等の光源によって光を発するものであってよい。この場合、タグコントローラ60は、下り信号に含まれる情報に応じた態様で表示器64に光を発生させる。
【0059】
IR-UWB方式の無線通信について説明する。図4には、IR-UWB方式の無線信号のデータシンボルの構造が示されている(非特許文献1)。データシンボルは、時間軸上に連なった2つのハーフシンボル68から構成され、各ハーフシンボル68は、バースト列70およびガードインターバル72から構成されている。バースト列70は、複数のバースト74から構成されており、各バースト74は、複数のパルス76から構成されている。例えば、1つのバースト74には8個のパルス76が含まれてよく、バースト列70には8個のバースト74が含まれてよい。パルス76はインパルス状の波形を有している。1つのパルス76の時間長はns未満のオーダーであってよい。時間長は、例えば、信号の大きさがピーク値の半分まで立ち上がってから、ピーク値の半分まで立ち下がるまでの時間として定義される。バースト74に含まれる情報は、バースト74に含まれる複数のパルス76のそれぞれの極性によって表される。
【0060】
図5の上段には、距離測定対象の装置(対象装置)との間の距離を測定する無線装置(測距装置)が送信する測距信号のパケット78と、測距装置が受信する測距応答信号のパケット78が示されている。測距装置は、ナースコール子機14、親機16または無線タグ18である。ナースコール子機14が測距装置である場合、対象装置は親機16または無線タグ18であり、親機16が測距装置である場合、対象装置はナースコール子機14である。また、無線タグ18が測距装置である場合、対象装置はナースコール子機14である。
【0061】
図5の下段には、対象装置が受信する測距信号のパケット78と、対象装置が送信する測距応答信号のパケット78が示されている。各パケット78は、図4に示されているデータシンボルによって構成されている。各パケット78には、パケット内で相対的に定められた固定位置に測距パルス列80が含まれている。測距パルス列80は、予め定められた複数桁の参照符号を表す複数のパルスである。
【0062】
測距装置は、測距信号を送信すると共に、測距信号に含まれる測距パルス列80の送信時刻t1を記憶する。測距信号を受信した対象装置は、自らが記憶する参照符号と、測距信号に含まれる測距パルス列80が示す符号とを照合することで、測距パルス列80を認識する。対象装置は、測距パルス列80を受信した時刻t2と、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を送信する時刻t3を測定し、応答時間trを求める。応答時間trは、測距パルス列80を受信してから測距パルス列80を送信するまでの時間であり、tr=t3-t2に従って求められる。対象装置は、応答時間trを示す情報を含む測距応答信号を送信する。
【0063】
なお、応答時間trが対象装置固有の値として一定である場合には、応答時間trは対象装置に予め記憶されてよい。この場合、対象装置は、予め記憶された応答時間trを示す情報を含む測距応答信号を送信する。
【0064】
測距応答信号を受信した測距装置は、自らが記憶する参照符号と、測距応答信号に含まれる測距パルス列80が示す符号とを照合することで、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を認識する。測距装置は、測距応答信号に含まれる測距パルス列80を受信した時刻t4を測定し記憶する。
【0065】
測距装置は、対象装置との間の隔離距離Dを次の(数1)に従って求める。
【0066】
(数1)D=(t4-t1-tr)・c/2
【0067】
ここで、cは電磁波の伝搬速度である。(数1)は、測距装置と対象装置との間の往復伝搬時間t4-t1-trの半分に、電磁波の伝搬速度cを乗じることで導かれる。
【0068】
なお、対象装置は、時刻t2およびt3を示す情報を含む測距応答信号を測距装置に送信してもよい。この場合、測距装置は、測距応答信号から時刻t2およびt3を示す情報を抽出し、時刻t2およびt3から応答時間trを求める。測距装置は、(数1)のtrをt3-t2に置き換えた式等、(数1)と同一の意義を有する数式に基づいて隔離距離Dを求めてもよい。
【0069】
本実施形態に係るナースコールシステム100では、測距装置と対象装置との間の距離が、測距信号および測距応答信号のそれぞれに含まれる測距パルス列80の伝搬時間に基づいて求められる。測距パルス列80は時間長がns未満のオーダーであってよい。したがって、測距装置の周辺で、対象装置との間の距離が高分解能で測定される。
【0070】
このように、ナースコールシステム100を構成するナースコール子機14は、距離測定無線機として動作する。ナースコール子機14は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部30と、親機16に情報を送信する子機無線部38と、IR-UWB無線部30および子機無線部38を制御する子機コントローラ32とを備えている。子機コントローラ32は、親機16との間で無線通信を行うことで、親機16との間の距離を測定し、または親機16に当該距離を測定させる距離測定処理をIR-UWB無線部30と共に実行する。子機コントローラ32は、距離測定処理によって測定された親機間距離を含む上り信号を親機16に送信する処理を、子機無線部38と共に実行する。
【0071】
また、子機コントローラ32は、無線タグ18との間で無線通信を行うことで、無線タグ18との間の距離を測定し、または無線タグ18に当該距離を測定させる無線タグ距離測定処理を、IR-UWB無線部30と共に実行する。子機コントローラ32は、無線タグ距離測定処理によって測定されたタグ間距離を含む上り信号を親機16に送信する処理を、子機無線部38と共に実行する。
【0072】
また、ナースコールシステム100を構成する無線タグ18は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部58と、IR-UWB無線部58を制御するタグコントローラ60とを備えている。タグコントローラ60は、ナースコール子機14(無線装置)との間で無線通信を行うことで、ナースコール子機14との間の距離を測定し、またはナースコール子機14に当該距離を測定させる距離測定処理を、IR-UWB無線部58と共に実行する。タグコントローラ60は、距離測定処理によって測定されたタグ間距離(無線装置間距離)を含む上り信号を、親機16に送信する処理を、IR-UWB無線部58と共に実行する。
【0073】
また、ナースコールシステム100を構成する親機16は、距離測定無線機として動作する。親機16は、IR-UWB方式の無線通信を行うIR-UWB無線部44と、IR-UWB無線部44を制御する親機コントローラ46とを備えている。親機コントローラ46は、ナースコール子機14(無線装置)との間で無線通信を行うことで、ナースコール子機14との間の距離を測定し、またはナースコール子機14に当該距離を測定させる距離測定処理を、IR-UWB無線部44と共に実行する。親機コントローラ46は、距離測定処理によって測定された親機間距離(無線装置間距離)を含む上り信号を、管理装置20に送信する処理を実行する。
【0074】
上記では、親機間距離が所定の閾値を超える場合に、ナースコール子機14が病室外に持ち出されたと管理装置20が判定し、タグ間距離が所定の閾値を超える場合に、患者がナースコール子機14を携行していないと管理装置20が判定する実施形態について説明した。管理装置20は、以下に示されるより詳細な判定をしてもよい。
【0075】
以下の説明では、親機間距離をdpとし、タグ間距離をdtとする。親機間距離dpについては、0<dp≦D1が成立する第1子機・親機間条件、D1<dp≦D2が成立する第2子機・親機間条件、D2<dp≦D3が成立する第3子機・親機間条件、およびD3<dpが成立する第4子機・親機間条件が定義されている。ここで、閾値D1、閾値D2および閾値D3は、親機16が設置された病室10-jの大きさ等に応じて予め定められる。
【0076】
第1子機・親機間条件が成立した場合、管理装置20は、ナースコール子機14が親機16に隣接した位置にあると判定する。第2子機・親機間条件が成立した場合、管理装置20は、ナースコール子機14が親機16の近傍にあると判定する。第3子機・親機間条件が成立した場合、管理装置20は、ナースコール子機14は親機16の近傍にないと判定する。第4子機・親機間条件が成立する場合、管理装置20は、ナースコール子機14は病室10-jの外にあると判定する。管理装置20は、第1子機・親機間条件~第4子機・親機間条件のうち、現時点の親機間距離について成立している条件をディスプレイに表示してもよい。
【0077】
タグ間距離dtについては、0<dt≦D11が成立する第1子機・タグ間条件、D11<dt≦D12が成立する第2子機・タグ間条件、およびD12<dtが成立する第3子機・タグ間条件が定義されている。ここで、閾値D11および閾値D12は、患者の体格や行動傾向に応じて予め定められる。
【0078】
第1子機・タグ間条件が成立した場合、管理装置20は、患者がナースコール子機14を携行していると判定する。第2子機・タグ間条件が成立した場合、管理装置20は、患者がナースコール子機14を患者の近くに置いたと判定する。第3子機・タグ間条件が成立した場合、管理装置20は、患者がナースコール子機14を携行していないと判定する。管理装置20は、第1子機・タグ間条件~第3子機・タグ間条件のうち、現時点のタグ間距離について成立している条件をディスプレイに表示してもよい。
【0079】
ナースコール子機14の子機コントローラ32は、管理装置20と同様の処理を実行し、親機間距離dpについて、第1子機・親機間条件~第4子機・親機間条件のいずれの条件が成立するかの判定を行ってもよい。子機コントローラ32は、第1子機・親機間条件~第4子機・親機間条件のうち、現時点の親機間距離について成立している条件を表示器36に表示させてもよい。また、子機コントローラ32は、第2子機・親機間条件~第4子機・親機間条件が成立するときは、これらの条件に応じて異なるパターンの報知音をスピーカ40に発生させてもよい。ここで、パターンとは、音の高低の変化や、リズムの変化のパターンをいう。第2子機・親機間条件~第4子機・親機間条件のそれぞれについては、条件が成立してから報知音を発生させるまでの時間が定められてよい。子機コントローラ32は、第2子機・親機間条件~第4子機・親機間条件のうちいずれかが成立したときは、その成立した条件に対して定められた時間が経過したときに、その成立した条件に対応するパターンの報知音をスピーカ40に発生させてよい。
【0080】
また、ナースコール子機14の子機コントローラ32は、管理装置20と同様の処理を実行し、タグ間距離dtについて、第1子機・タグ間条件~第3子機・タグ間条件のいずれの条件が成立するかの判定を行ってもよい。子機コントローラ32は、第1子機・タグ間条件~第3子機・タグ間条件のうち、現時点のタグ間距離について成立している条件を表示器36に表示させてもよい。また、子機コントローラ32は、第2子機・タグ間条件および第3子機・タグ間条件が成立するときは、これらの条件に応じて異なるパターンの報知音をスピーカ40に発生させてもよい。第2子機・タグ間条件および第3子機・タグ間条件のそれぞれについては、条件が成立してから報知音を発生させるまでの時間が定められてよい。子機コントローラ32は、第2子機・タグ間条件および第3子機・タグ間条件のうちいずれかが成立したときは、その成立した条件に対して定められた時間が経過したときに、その成立した条件に対応するパターンの報知音をスピーカ40に発生させてよい。
【0081】
図6には、第1子機・親機間条件~第4子機・親機間条件と、第1子機・タグ間条件~第3子機・タグ間条件との各組み合わせに対する判定結果が示されている。各条件に対する判定は、管理装置20または子機コントローラ32が実行してよい。管理装置20は、判定結果をディスプレイに表示してよい。子機コントローラ32は、判定結果を表示器36に表示させてよい。
【0082】
子機コントローラ32は、次の項目(i)~(vi)に該当する判定を実行したときには、判定結果に応じた報知処理を実行してよい。すなわち、子機コントローラ32は、判定結果に応じて異なるパターンの報知音をスピーカ40に発生させてもよい。また、子機コントローラ32は、判定結果を表示器36に表示させてもよい。また、ナースコール子機14に発光ダイオード等の光源が設けられている場合には、子機コントローラ32が、判定結果に応じた態様で光源を点灯させてもよい。
【0083】
(i)第1子機・親機間条件および第2子機・親機間条件のうちいずれかが成立し、かつ、第2子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者は病室にいる。患者は、ナースコール子機14を携行していないが病室に置いている。」と判定する。
【0084】
(ii)第3子機・親機間条件が成立し、かつ、第2子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者が病室にいる可能性が高い。患者は、ナースコール子機14を携行していないが患者の近くに置いている。」と判定する。
【0085】
(iii)第4子機・親機間条件が成立し、かつ、第2子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者が病室外にいる可能性が高い。患者は、ナースコール子機14を携行していないが患者の近くに置いている。」と判定する。
【0086】
(iv)第1子機・親機間条件および第2子機・親機間条件のうちいずれかが成立し、かつ、第3子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者は病室外にいる。患者は、ナースコール子機14を病室に置き忘れている。」と判定する。
【0087】
(v)第3子機・親機間条件が成立し、かつ、第3子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者が病室外にいる可能性が高い。患者は、ナースコール子機14を携行していない。」と判定する。
【0088】
(vi)第4子機・親機間条件が成立し、かつ、第3子機・タグ間条件が成立するときに、子機コントローラ32は、「患者が病室外にいる可能性が高い。患者は、ナースコール子機14を携行していない。」と判定する。
【0089】
項目(vi)の判定結果が最も報知の緊急度または重要度が高い。そして、項目(v)、(iv)、(iii)、(ii)、(i)の判定結果の順に報知の緊急度または重要度が高い。すなわち、項目(i)の判定結果が最も報知の緊急度または重要度が低い。子機コントローラ32は、緊急度または重要度が高いほど、より顕著な態様でスピーカ40に報知音を発生させてよい。
【0090】
なお、第1子機・タグ間条件が成立する場合には問題が生じる可能性が低いため、子機コントローラ32は報知音をスピーカ40に発生させる処理を実行しなくてもよい。
【0091】
なお、ナースコール子機14が病室外に置き忘れられた場合に備えて、無線タグ18は、IR-UWB方式の無線通信を行い、親機16までのタグ・親機間距離を測定してもよい。あるいは、無線タグ18は、親機16にタグ・親機間距離を測定させ、親機16からタグ・親機間距離を取得してもよい。この場合、無線タグ18におけるタグコントローラ60は、IR-UWB無線部58を用いて、タグ・親機間距離を含む上り信号を親機16に直接送信する。親機16は、IR-UWB無線部44を用いて上り信号を受信し、上り信号を壁埋込I/F部56に出力する。壁埋込I/F部56は、廊下灯24-jを介して管理装置20に至る通信線に上り信号を送信する。このような処理によって、無線タグ18から管理装置20にタグ・親機間距離が送信され、管理装置20はタグ・親機間距離を取得する。また、壁埋込I/F部56は、通信線から下り信号を受信し、親機16に出力する。親機16は、IR-UWB無線部44を用いて、下り信号を無線タグ18に直接送信する。無線タグ18は、IR-UWB無線部58を用いて下り信号を受信する。
【0092】
図7には、本発明の第2実施形態に係るナースコールシステム102の構成が示されている。ナースコールシステム102は、管理装置20、アクセスポイント90、親機16A、ナースコール子機14Aおよび無線タグ18を備えている。ナースコールシステム102は、ナースコール子機14Aと管理装置20との間の中継装置として、アクセスポイント90を備える点が、第1実施形態に係るナースコールシステム100と異なる。アクセスポイント90は、管理装置20に有線接続または無線接続されている。アクセスポイント90は、病室や共用スペースの外の廊下等に設置されてよい。親機16Aと管理装置20との間では、直接的に通信が行われなくてもよい。
【0093】
ナースコール子機14Aは、上り信号をアクセスポイント90に無線送信する。上り信号を受信したアクセスポイント90は、上り信号を管理装置20に有線送信または無線送信する。管理装置20は、アクセスポイント90から送信された上り信号を受信する。管理装置20は、アクセスポイント90に下り信号を有線送信または無線送信する。下り信号を受信したアクセスポイント90は、下り信号をナースコール子機14Aに無線送信する。ナースコール子機14Aは、アクセスポイント90から送信された下り信号を受信する。
【0094】
図8には、ナースコールシステム102の具体的な構成例が示されている。病室10-1および共用スペース10-Sのそれぞれには、親機16Aが設置されている。図8に示される例では、患者は、最初に、無線タグ18およびナースコール子機14Aと共に病室10-1におり、無線タグ18およびナースコール子機14Aと共に共用スペース10-Sに移動する。ナースコール子機14Aは、移動前後においてアクセスポイント90を介して管理装置20との間で通信を行う。ナースコールシステム102には、異なる位置に複数のアクセスポイント90が設けられてもよい。この場合、ナースコール子機14Aは、通信状態が良好となるアクセスポイント90を介して管理装置20との間で通信を行う。
【0095】
ナースコールシステム102は、病室10-1および共用スペース10-Sに対応して無線式廊下灯92-1および92-Sを備えている。無線式廊下灯92-1および92-Sは、それぞれ、病室10-1および共用スペース10-Sの近傍に設けられてよい。無線式廊下灯92-1および92-Sは、管理装置20からアクセスポイント90に送信され、さらにアクセスポイント90から送信される下り信号を受信する。無線式廊下灯92-1および10-Sは、下り信号に含まれている情報に基づいて、患者が病室10-1または共用スペース10-Sにいるか、患者がナースコール子機14を携行しているか等の情報を表示してよい。
【0096】
図9(a)~(c)には、それぞれ、ナースコールシステム102を構成するナースコール子機14A、親機16Aおよび無線タグ18の具体的な構成が示されている。ナースコール子機14Aは、子機無線部38Aが、アクセスポイント90との間で無線通信を行う点が、ナースコールシステム100を構成する図3に示されるナースコール子機14と異なっている。また、親機16Aは、親機無線部52および壁埋込I/F部56を備えていない点で、図3に示される親機16と異なっている。親機16Aは、病室や共用スペースに固定される。無線タグ18は、図3に示された無線タグ18と同様の構成を有している。
【0097】
図10には、本発明の第3実施形態に係るナースコールシステム104の具体的な構成が示されている。ナースコールシステム104は、図1に示されているナースコールシステム100と、図8に示されているナースコールシステム102を組み合わせたものである。病室10-1および10-2に配置されている親機16、壁埋込装置22、病室10-1の壁埋込装置22に接続されている廊下灯24-1、病室10-2の壁埋込装置22に接続されている廊下灯24-2および管理装置20は、ナースコールシステム100を構成する。また、共用スペース10-Sに配置されている親機16A、アクセスポイント90および管理装置20は、ナースコールシステム102を構成する。
【0098】
ここでは、病室10-1、病室10-2、共用スペース10-Sおよびスタッフルーム12にナースコールシステム104が構成される実施形態が示された。ナースコールシステム104が構成される病室や共用スペースの数は任意である。また、どの部屋にナースコールシステム100の一部が構成され、どの部屋にナースコールシステム102の一部が構成されるかも任意である。
【0099】
本発明の実施形態に係るナースコールシステム100によれば、ナースコール子機14の置き忘れが回避される。また、ナースコールシステム102によればナースコール子機14Aの置き忘れが回避され、ナースコールシステム104によればナースコール子機14および14Aの置き忘れが回避される。IR-UWB方式の無線通信を用いて親機間距離およびタグ間距離が求められるため、ナースコール子機14の位置、ナースコール子機14Aの位置、および無線タグ18の位置が高精度で求められる。したがって、管理装置20で取得された情報に基づいて、ナースコール子機14および14Aの位置がスタッフによって高精度に把握される。
【0100】
上記では、ナースコールシステムが病院に設置された実施形態が示された。本発明は、介護施設等、その他の施設の建物に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0101】
10 10-1~10-N 病室、10-S 共用スペース、12 スタッフルーム、14,14A ナースコール子機、16,16A 親機、18 無線タグ、20 管理装置、22 壁埋込装置、24-1~24-N,24-S 廊下灯、30,44,58 IR-UWB無線部、32 子機コントローラ、34,62 押ボタン、36,48,64 表示器、38,38A 子機無線部、40 スピーカ、42 マイク、46 親機コントローラ、52 親機無線部、56 壁埋込I/F部、60 タグコントローラ、68 ハーフシンボル、70 バースト列、72 ガードインターバル、74 バースト、76 パルス、78 パケット、80 測距パルス列、90 アクセスポイント、92-1,92-S 無線式廊下灯、100,102,104 ナースコールシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10