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  • 特開-ロータシャフト用素材の成形方法 図1
  • 特開-ロータシャフト用素材の成形方法 図2
  • 特開-ロータシャフト用素材の成形方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095045
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ロータシャフト用素材の成形方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230629BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H02K15/02 Z
H02K1/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210698
(22)【出願日】2021-12-24
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】391037799
【氏名又は名称】株式会社ゴーシュー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】瀧戸 一晶
(72)【発明者】
【氏名】田崎 賢児
(72)【発明者】
【氏名】秋田 亨
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 拓也
(72)【発明者】
【氏名】長塚 健吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 建壮
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601HH02
5H601KK04
5H601KK10
5H615AA01
5H615PP24
5H615SS08
5H615SS25
5H615TT13
(57)【要約】
【課題】最終製品の寸法精度を確保しながら、ロータシャフトのキー溝の機械加工による加工を不要又は加工時間を短縮化することができるロータシャフト用素材の成形方法を提供すること。
【解決手段】ロータシャフト用素材3のフランジ部33からロータコア装着部側の先端に亘って、冷間鍛造によって、ロータコアを嵌合するための、幅5~10mm、深さ1~10mmのキー溝34を、ロータシャフト用素材3の中心に形成する深穴32a、32b及びフランジ部33の成形と同時に成形する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータコアが装着されるロータコア装着部と、該ロータコア装着部の軸方向の装着位置を決めるフランジ部とを有する回転電機のロータシャフト用素材の成形方法において、前記ロータシャフト用素材のフランジ部からロータコア装着部側の先端に亘って、冷間鍛造によって、ロータコアを嵌合するための、幅5~10mm、深さ1~10mmのキー溝を成形するようにしたことを特徴とするロータシャフト用素材の成形方法。
【請求項2】
前記キー溝の成形を、ロータシャフト用素材の中心に形成する深穴及びフランジ部の成形と同時に行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のロータシャフト用素材の成形方法。
【請求項3】
前記キー溝が、最終製品の公差レンジを満たすように成形されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のロータシャフト用素材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に用いられるロータシャフト用素材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機に用いられるロータシャフトは、例えば、特許文献1に開示されているように、ロータの軸方向一端面に当接してロータを位置決めするフランジと、ロータが外周面上に保持されるとともにキー溝が軸方向に延伸して凹設されているロータ保持部と、ロータ保持部に隣り合って形成された雄ねじ部とを有する。
そして、磁性体薄板で構成されるロータコアのキーがロータ保持部のキー溝に嵌合され、また、雄ねじ部に螺合させたナットをロータコアの軸方向端面に締め付けることによって、段差とナットとの間においてロータが軸方向に位置決めされてロータシャフトに締結される。
【0003】
そして、この種の回転電機に用いられるロータシャフトは、特許文献2に開示されているような、キー溝加工、スプライン、異型穴等のブローチング加工を行うブローチング装置を用いて製作される。
【0004】
さらに、特許文献3に開示されているように、ロータシャフトに雄ねじ部を形成した後に、雄ねじ部からロータ保持部に亘ってキー溝が形成されることがある。
このキー溝は、軸に積層された磁性体薄板で構成されるロータコアとロータシャフトが一体となって回転するためのものである。
【0005】
このキー溝は、通常、エンドミルカッタで切削加工されるが、外径旋盤加工に比べ、特殊な工具が必要になり、加工時間もかかるため、製作コストが上昇するという問題があった。
また、エンドミルよりも切削効率に優れる外周面と両側面に切れ刃を持つ円盤形状の切削工具であるサイドカッタで切削する方法もあるが、キー溝に加え、ロータを位置決めするフランジも切削してしまう欠点がある。
このほか、ブローチ盤により加工する方法があるが、ブローチ工具が、ロータ保持部に対し、干渉する形状にキー溝を加工してしまう欠点がある。
また、切削加工以外に、塑性変形でキー溝を製作する方法があるが、この場合、最初に中空軸を成形し、その後、外周にキー溝を成形しようとすると、軸自体の変形による寸法精度の低下や成形端で余肉が発生し、その後処理が必要になる欠点がある。
【0006】
そして、金属製品用素材を製造するために汎用されている鍛造によってロータシャフト用素材を成形するようにした場合も、上記問題は共通して存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-116022号公報
【特許文献2】特開2007-54927号公報
【特許文献3】特開2017-55470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の回転電機に用いられるロータシャフトに形成するキー溝に係る問
題点に鑑み、最終製品の寸法精度を確保しながら、ロータシャフトのキー溝の機械加工による加工を不要又は加工時間を短縮化することができるロータシャフト用素材の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のロータシャフト用素材の成形方法は、ロータコアが装着されるロータコア装着部と、該ロータコア装着部の軸方向の装着位置を決めるフランジ部とを有する回転電機のロータシャフト用素材の成形方法において、前記ロータシャフト用素材のフランジ部からロータコア装着部側の先端に亘って、冷間鍛造によって、ロータコアを嵌合するための、幅5~10mm、深さ1~10mmのキー溝を成形するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記キー溝の成形を、ロータシャフト用素材の中心に形成する深穴及びフランジ部の成形と同時に行うようにすることができる。
【0011】
また、前記キー溝が、最終製品の公差レンジを満たすように成形されるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロータシャフト用素材の成形方法によれば、回転電機に用いられるロータシャフト用素材のフランジ部からロータコア装着部側の先端に亘って形成されるキー溝を、ロータシャフト用素材の成形と併せて、冷間鍛造によって成形することにより、最終製品の寸法精度を確保することで、ロータシャフトのキー溝の機械加工による加工を不要又は加工時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のロータシャフト用素材の成形方法を適用したロータシャフトの製造工程の一例を示す説明図である。
図2】本発明のロータシャフト用素材の成形方法の説明図である。
図3】(a1)はロータシャフト用素材の縦断面図、(a2)は同平面図、(b1)はロータシャフト(最終製品)の縦断面図、(b2)は同平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のロータシャフト用素材の成形方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に、本発明の成形方法を適用した工程の一例として、浸炭用鋼を用いたロータシャフト用素材の製造例を示す。
【0016】
(1)熱処理
ビレット(円柱状素材)1の冷間成形性を良好にするため、ビレット(円柱状素材)1に熱処理(焼鈍)を行う。
【0017】
(2)冷間鍛造
図2に示すように、ビレット(円柱状素材)1を、鍛造型(ロータシャフト用素材3の中心に形成する深穴32a、32b、フランジ部33及びキー溝34に対応した形状に形成した鍛造型)を用いて、冷間鍛造(常温)により、1工程で、中心に穴22a、22bを有するブランク2を経て、全長150~300mm程度で、軸部31(径40~80mm程度)、深穴32a、32b、フランジ部33(径60~100mm程度)及びキー溝34(長さ100~250mm程度(フランジ部からロータコア装着部側の先端に亘る長
さ)、幅5~10mm程度、深さ1~10mm程度)を形成したロータシャフト用素材3に成形する。
ここで、キー溝34は、軸部31の180°対称位置に2本形成するようにしたが、1本又は3本以上形成することもできる。
【0018】
(3)熱処理
次に、ロータシャフト用素材3の機械加工性を良好にするため、ロータシャフト用素材3に熱処理(焼準)を行う。
【0019】
(4)中間加工
ロータシャフト用素材3の深穴32b側の軸部31の内周面を機械加工する。
【0020】
(5)冷間スプライン成形
ロータシャフト用素材3の深穴32b側の軸部31の内周面に冷間スプライン成形を行う。
【0021】
(6)機械加工
ロータシャフト用素材3の軸部31の両側の外周面を機械加工(ロータコア装着部及び軸受装着部の仕上げ加工並びにナットが螺合する雄ねじ部の形成)するとともに、深穴32a、32b同士を貫通させ、図3(b1)及び(b2)に示すロータシャフト(最終製品)4を得る。
【0022】
ここで、製造したロータシャフト用素材3の諸元値(一例)を示す。
[ロータシャフト用素材3の諸元値]
・全長:212.0mm
・軸部31の径:55.0mm
・深穴32a、32bの径:29.0mm
・深穴32a、32bの長さ:167.0mm、22.0mm
・フランジ部33の径:75.0mm
・キー溝34の長さ:170.0mm
・キー溝34の幅:7.0mm、7.5mm
・キー溝34の深さ:5.0mm、5.0mm
【0023】
このロータシャフト用素材3は、回転電機に用いられるロータシャフト用素材3のフランジ部33からロータコア装着部側の先端に亘って形成されるキー溝34を、ロータシャフト用素材3の成形(ロータシャフト用素材3の中心に形成する深穴32a、32b及びフランジ部33の成形)と併せて、冷間鍛造によって成形することにより、ロータシャフト(最終製品)4の寸法精度(キー溝34の幅の公差レンジ:0.1mm以下(好ましくは、0.05mm以下))を確保することで、ロータシャフト(最終製品)4のキー溝44の機械加工による加工を不要(鍛造黒皮化仕様のままとするによるネットシェイプ化)又は加工時間を短縮化(切削加工量の削減)することができる。
【0024】
以上、本発明のロータシャフト用素材の成形方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のロータシャフト用素材の成形方法は、最終製品の寸法精度を確保しながら、ロータシャフトのキー溝の機械加工による加工を不要又は加工時間を短縮化することができることから、回転電機に用いられるロータシャフトの製造するために広く用いることがで
きる。
【符号の説明】
【0026】
1 ビレット(円柱状素材)
2 ブランク
22a 穴
22b 穴
3 ロータシャフト用素材
31 軸部
32a 深穴
32b 深穴
33 フランジ部
34 キー溝
4 ロータシャフト(最終製品)
44 キー溝
図1
図2
図3