(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009505
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】建物構造
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20230113BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E04H1/04
E04H9/02 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112853
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】須賀 順子
(72)【発明者】
【氏名】堀 良平
(72)【発明者】
【氏名】原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】肥山 卓矢
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC03
2E139AC26
(57)【要約】
【課題】平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられる建物構造において、居室の屋外側面の開口面積を大きくとることができ、開放的な居室空間を創造することのできる技術を提供する。
【解決手段】平面視で矩形状又は略矩形状の居室2を有する建物部Baが備えられ、建物部Baの耐震壁1として、平面視で居室2の屋外側面22の延在方向に対して斜めに交差する方向に延びる斜め姿勢の斜め耐震壁12が、建物部Baにおける居室2の屋外側面22の外側部位に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられ、
前記建物部の耐震壁として、平面視で前記居室の屋外側面の延在方向に対して斜めに交差する方向に延びる斜め姿勢の斜め耐震壁が、前記建物部における前記居室の屋外側面の外側部位に配置されている建物構造。
【請求項2】
前記斜め耐震壁の前記斜め姿勢が、遮り対象に対して壁面を向ける姿勢に設定されている請求項1記載の建物構造。
【請求項3】
前記遮り対象が、前記建物部に隣接する隣接建物部からの視線である請求項2記載の建物構造。
【請求項4】
前記隣接建物部が、前記建物部に対して平面視で交差する方向に沿って延びる状態で配置され、
前記斜め耐震壁が、平面視で前記建物部と前記隣接建物部との交差角度の間の中間角度で延びる斜め姿勢で、前記建物部における前記建物部と前記隣接建物部とで囲まれる屋外空間側に配置されている請求項3記載の建物構造。
【請求項5】
前記斜め耐震壁が、前記居室の屋外側面の延在方向の中間部から外側に延びる状態で配置され、
前記居室に給気する給気部と前記居室から排気する排気部とが、前記居室の屋外側面における前記斜め耐震壁の接続部を境にして前記居室の屋外側面の延在方向の一端側と他端側とに分けて配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の建物構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられる建物構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブと耐震壁(壁柱)とで構築される壁式構造等の建物部(例えば特許文献1、2参照)を有する建物構造では、少なくとも平面視で直交する二つの方向に延びる耐震壁を配置することで耐震性能を確保することが行われている。
そして、形状がシンプルで使いやすい矩形状又は略矩形状の居室を連続配置している壁式構造等の建物部では、一般的に、平面視で居室の屋外側面の延在方向に直交する方向の地震力に抵抗するべく、隣接する居室どうしの間の戸境壁部分に平面視で居室の屋外側面の延在方向に直交する方向に延びる耐震壁を配置するとともに、平面視で居室の屋外側面の延在方向の地震力に抵抗するべく、居室の屋外側面の壁部分等に平面視で屋外側面の延在方向に延びる耐震壁を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6463901号公報
【特許文献2】特許第6482887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の建物構造では、居室の形状がシンプルで使いやすい利点はあるものの、居室の屋外側面の延在方向の地震力に抵抗する耐震壁が居室の屋外側面の壁部分の一部を占有するので、居室の屋外側面の開口面積を大きくとるのが難しく、居室が閉鎖的な空間になり易いという問題がある。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられる建物構造において、居室の屋外側面の開口面積を大きくとることができ、開放的な居室空間を創造することのできる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられ、
前記建物部の耐震壁として、平面視で前記居室の屋外側面の延在方向に対して斜めに交差する方向に延びる斜め姿勢の斜め耐震壁が、前記建物部における前記居室の屋外側面の外側部位に配置されている点にある。
【0007】
つまり、平面視で居室の屋外側面の延在方向に対して斜めに交差する方向に延びる斜め耐震壁は、平面視で居室の屋外側面の延在方向に延びる耐震壁に比べて抵抗効率は低いものの、居室の屋外側面の延在方向の地震力に抵抗することができる。本構成によれば、居室の屋外側面の延在方向に直交する方向の地震力に抵抗するべく、このような斜め姿勢の斜め耐震壁を配置することで、例えば居室どうしの間の戸境壁部分等で居室の屋外側面の延在方向に直交する方向に延びる耐震壁等と斜め耐震壁とが協働して建物部の耐震性能を適切に確保することができる。そして、居室の屋外側面の延在方向の地震力に抵抗する斜め耐震壁が、建物部における居室の屋外側面の外側部位に配置されているので、居室の屋外側面の延在方向の地震力に抵抗する耐震壁が居室の屋外側面の壁部分を占有するのを回避することができる。
したがって、平面視で矩形状又は略矩形状の居室を有する建物部が備えられる建物構造において、居室の屋外側面の開口面積を大きくとることができ、開放的な居室空間を創造することのできる技術を提供することができる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記斜め耐震壁の前記斜め姿勢が、遮り対象に対して壁面を向ける姿勢に設定されている点にある。
【0009】
本構成によれば、遮り対象に対して壁面を向ける姿勢に設定された斜め耐震壁により、斜め耐震壁の延在方向での居室からの眺望を確保しながら、遮り対象を適切に遮って遮り対象が居室内に到達するのを抑制することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記遮り対象が、前記建物部に隣接する隣接建物部からの視線である点にある。
【0011】
本構成によれば、斜め耐震壁により、隣接建物部からの視線を適切に遮ることができ、居室内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記隣接建物部が、前記建物部に対して平面視で交差する方向に沿って延びる状態で配置され、
前記斜め耐震壁が、平面視で前記建物部と前記隣接建物部との交差角度の間の中間角度で延びる斜め姿勢で、前記建物部における前記建物部と前記隣接建物部とで囲まれる屋外空間側に配置されている点にある。
【0013】
本構成によれば、建物部と隣接建物部からなる建物の形状を二方向に耐震壁を配置し易いL字状や十字状等にすることができ、耐震性能を確保し易くすることができる。
そして、斜め耐震壁が、平面視で建物部と隣接建物部との交差角度(例えば90度)の間の中間角度(例えば30度~60度)の斜め姿勢で、建物部における当該建物部と隣接建物部とで囲まれる屋外空間側に配置されているので、斜め耐震壁の延在方向側となる屋外空間側への眺望を確保しながら、隣接建物部からの視線を遮って居室内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0014】
本発明の第5特徴構成は、前記斜め耐震壁が、前記居室の屋外側面の延在方向の中間部から外側に延びる状態で配置され、
前記居室に給気する給気部と前記居室から排気する排気部とが、前記居室の屋外側面における前記斜め耐震壁の接続部を境にして前記居室の屋外側面の延在方向の一端側と他端側とに分けて配置されている点にある。
【0015】
本構成によれば、居室の屋外側面の延在方向の中間部から外側に延びる状態で配置される斜め耐震壁により、居室の屋外側面における斜め耐震壁の接続部を境にして居室の屋外側面の延在方向の一端側と他端側とに分けて配置された給気部と排気部との間でのショートサーキットを抑制することができ、給気部と排気部による居室の換気を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の建物構造を適用した建物の平面配置図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の建物構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本建物構造が採用された建物Bは、各階のスラブ間に鉛直力や水平力を負担する耐震壁(壁柱)1が配置された鉄筋コンクリート造等の壁式構造にて構成され、寮室や住戸等の多数の居室2を各階に有する中高層の寮や集合住宅等として構成されている。なお、
図1では、耐震壁1を太実線で表示している。以下、
図1において、左右方向をX方向、上下方向をY方向として説明を加える。
【0018】
この建物Bには、多数の居室2が長手方向に連続して配置された複数の居住用建物部Baとして第1~第4建物部b1~b4が備えられている。また、第1~第4建物部b1~b4の間には、住人の共用スペースが配置された共用スペース用建物部Bbとして第5建物部b5が備えられている。
【0019】
具体的には、建物BのY1側(図中上側)には、X方向を長手方向とする第1建物部b1と、Y方向を長手方向とする第2建物部b2とが、平面視でL字を左右反転させた状態に配置されて変形L字型建物部として構成されている。
また、建物BのY2側(図中下側)には、X方向を長手方向とする第3建物部b3とY方向を長手方向とする第4建物部b4とが、平面視でL字を上下反転させた状態に配置されて変形L字型建物部として構成されている。
そして、平面視で矩形状の第5建物部b5が、第1建物部b1と第2建物部b2からなる変形L字型建物部と、第3建物部b3と第4建物部b4からなる変形L字型建物部との間に配置されて両変形L字型建物部を接続一体化している。
そのため、この建物Bは、平面視で剛心と重心が略一致した点対称又は略点対称となるバランスの良い平面形状に構成されている。
【0020】
図2に示すように、各居住用建物部Ba(第1~第4建物部b1~b4)には、廊下3を挟んで短手方向(
図2中では上下方向)の両外側に位置する2列配置で多数の居室2が長手方向(
図2中では左右方向)に連続して配置されている。各居室2は、本実施形態では、平面視で矩形状に構成されている。ちなみに、居室2の平面視の形状は、外周辺の極一部に凹部や凸部を有していたり、外周辺の一部が僅かに湾曲していてもよく、平面視で略矩形状であればよい。
【0021】
そして、居室2どうしの間の戸境壁部分21には、耐震壁1として、平面視で居室2の屋外側面22の延在方向(居住用建物部Baの長手方向、桁行方向)に対して直交する方向に延びる非斜め耐震壁11が配置されている。また、居室2の屋外側面22の外側部位(屋外空間に開放された外側部位)には、耐震壁1として、平面視で居室2の屋外側面22の延在方向に対して斜めに交差する方向(90度を除く角度で交差する方向)に延びる斜め姿勢の斜め耐震壁12が配置されている。
【0022】
このような斜め姿勢の斜め耐震壁12は、平面視で居室2の屋外側面22の延在方向に対する地震力に抵抗することができるので、平面視で居室2の屋外側面22の延在方向に対して直交する方向に延びる非斜め耐震壁11と協働して耐震性能を適切に確保することができる。そして、この斜め耐震壁12が、各居住用建物部Baにおける居室2の屋外側面22の外側部位に配置されているので、耐震壁1が居室2の屋外側面22の壁部分を占有するのを回避することができ、居室2の屋外側面22の開口面積を大きくとって開放的な居室空間を創造することができる。ちなみに、この斜め耐震壁12は、
図1に示すように、共用スペース用建物部Bb(第5建物部b5)の外側部位にも配置されている。
【0023】
図1に戻り、第1~第5建物部b1~b5において、斜め耐震壁12の姿勢は、隣接建物部からの視線(遮り対象の一例)に対して壁面を向ける姿勢に設定されている。具体的には、斜め耐震壁12は、平面視で自身が設置された当該建物部と、それに対して平面視で交差する方向に沿って延びる状態で配置された隣接建物部との交差角度αの間の中間角度(0度<中間角度<交差角度α)で延びる斜め姿勢で、当該建物部における当該建物部と隣接建物部とで囲まれる屋外空間側に配置されている。
【0024】
具体的には、X方向を長手方向とする第1建物部b1の短手方向の一方側(図中上側、Y1側)では、X方向を長手方向とする第2建物部b2が交差角度α(α1:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX1側且つY1側(図中左上方)に斜め45度の角度(交差角度αの中央の角度)で延びる斜め姿勢で、第1建物部b1と第2建物部b2とで囲まれる屋外空間S1側に配置されている。そのため、この第1建物部b1の短手方向の一方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S1側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第2建物b2からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0025】
また、第1建物部b1の短手方向の他方側(図中下側、Y2側)では、第5建物部b5と第4建物部b4が交差角度α(α2:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX1側且つY2側(図中左下方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第1建物部b1と第5建物部b5と第4建物部b4とで囲まれる屋外空間S2側に配置されている。そのため、この第1建物部b1の短手方向の他方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S2側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第5建物部b5と第4建物部b4からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0026】
第2建物部b2の短手方向の一方側(図中左側、X1側)では、第1建物部b1が交差角度α(α1:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX1側且つY1側(図中左上方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第1建物部b1と第2建物部b2とで囲まれる屋外空間S1側に配置されている。そのため、この第2建物部b2の短手方向の一方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S1側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第1建物部b1からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0027】
また、第2建物部b2の短手方向の他方側(図中右側、X2側)では、第5建物部b5と第3建物部b3が交差角度α(α3:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX2側且つY1側(図中右上方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第2建物部b2と第5建物部b5と第3建物部b3とで囲まれる屋外空間S3側に配置されている。そのため、この第2建物部b2の短手方向の他方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S3側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第5建物部b5と第3建物部b3からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0028】
X方向を長手方向とする第3建物部b3の短手方向の一方側(図中上側、Y1側)では、第5建物部b5と第2建物部b2が交差角度α(α3:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX2側且つY1側(図中右上方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第3建物部b3と第5建物部b5と第2建物部b2とで囲まれる屋外空間S3側に配置されている。そのため、この第3建物部b3の短手方向の一方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S3側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第5建物部b5と第2建物部b2からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0029】
また、第3建物部b3の短手方向の他方側(図中下側、Y2側)では、第4建物部b4が交差角度α(α4:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX2側且つY2側(図中右下方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第3建物部b3と第4建物部b4とで囲まれる屋外空間S4側に配置されている。そのため、この第3建物部b3の短手方向の他方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S4側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第4建物部b4からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0030】
Y方向を長手方向とする第4建物部b4の短手方向の一方側(図中左側、X1側)では、第5建物部b5と第1建物部b1が交差角度α(α2:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX1側且つY2側(図中左下方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第4建物部b4と第5建物部b5と第1建物部b1とで囲まれる屋外空間S2側に配置されている。そのため、この第4建物部b4の短手方向の一方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S2側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第5建物部b5と第1建物部b1からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0031】
また、第4建物部b4の短手方向の他方側(図中右側、X2側)では、第3建物部b3が交差角度α(α4:図示例では90度)となる状態で隣接していることから、斜め耐震壁12は、その交差角度αの間の中間角度としてX2側且つY2側(図中右下方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第4建物部b4と第3建物部b3とで囲まれる屋外空間S4側に配置されている。そのため、この第4建物部b4の短手方向の他方側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S4側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて第3建物部b3からの視線を遮って居室2内のプライバシーを良好に確保することができる。
【0032】
同様に、第5建物部b5のX1側(図中左側)とY2側(図中下側)では、隣接建物部(第1建物部b1及び第4建物部b4)との交差角度α(α2:図示例では90度)に対する中間角度としてX1側且つY2側(図中左下方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第5建物部b5と第1建物部b1と第4建物部b4とで囲まれる屋外空間S2側に配置されている。そのため、この第5建物部b5のX1側とY2側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S2側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて隣接建物部(第1建物部b1及び第4建物部b4)からの視線を遮ることができる。
【0033】
また、第5建物部b5のX2側(図中右側)とY1側(図中上側)では、隣接建物部(第2建物部b2及び第3建物部b3)との交差角度α(α3:図示例では90度)に対する中間角度としてX2側且つY1側(図中右上方)に斜め45度の角度で延びる斜め姿勢で、第5建物部b5と第2建物部b2と第3建物部b3とで囲まれる屋外空間S3側に配置されている。そのため、この第5建物部b5のX2側とY1側では、斜め耐震壁12の延在方向側となる屋外空間S3側への眺望(白抜き矢印参照)を確保しながら、斜め耐震壁12の壁面にて隣接建物部(第2建物部b2及び第3建物部b3)からの視線を遮ることができる。
【0034】
次に、各居住用建物部Baにおける斜め耐震壁12の配置について説明を加える。
図2に示すように、斜め耐震壁12は、各居住用建物部Baにおける居室2の屋外側面22の外側部位において屋外側面22の延在方向に所定のピッチで配置されている。斜め耐震壁12の配置ピッチは、例えば、隣接建物部の全ての部位からの視線を遮れるように設定することができる。
【0035】
本実施形態では、一つの居室2に対応して二つ(複数の一例)の斜め耐震壁12が配置されている。居室2毎の二つの斜め耐震壁12のうち、一方の斜め耐震壁12Aは、戸境壁部分21に非斜め耐震壁11が配置された居室2の屋外側面22の延在方向の端部から外側(屋外空間側)に延びる状態で配置されている。居室2毎の二つの斜め耐震壁12のうち、他方の斜め耐震壁12Bは、居室2の屋外側面22の延在方向の中間部から外側に延びる状態で配置されている。
【0036】
そして、居室2に給気する給気部23と、居室2から排気する排気部24とが、居室2の屋外側面22における斜め耐震壁12Bの接続部を境にして居室2の屋外側面22の延在方向の一端側と他端側とに分けて配置されている。なお、給気部23や排気部24は、例えば、屋外側面22に開口部やファン等を設けて構成することができる。
【0037】
そのため、居室2の屋外側面22の外側部位において、給気部23への取り入れ空間と排気部24による排気空間とを斜め耐震壁12Bにて仕切ることができ、給気部23と排気部24との間でのショートサーキットを抑制して給気部23と排気部24による居室2の換気を良好に行うことができる。
【0038】
しかも、本実施形態では、屋外側面22の延在方向で隣接する居室2の間において、一方の居室2の給気部23と他方の排気部24とを隣接させず、隣接する両居室2の排気部24どうしを隣接させるように構成されているので、一方の居室2の給気部23と他方の居室2の排気部24との間でのショートサーキットも抑制することができる。なお、これに代えて、隣接する両居室2の給気部23どうしを隣接させるように構成されていてもよい。
【0039】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0040】
(1)前述の実施形態では、スラブと耐震壁(壁柱)1を主要躯体とする壁式構造の建物Bに本発明を採用する場合を例に示したが、柱や梁を主要躯体としてスラブや耐震壁を配置するラーメン構造等の建物に本発明を採用してもよい。
【0041】
(2)前述の実施形態では、斜め耐震壁12の遮り対象を隣接建物部からの視線とし、斜め耐震壁12が隣接建物部に対して壁面を向ける姿勢に設定されている場合を例に示したが、例えば、斜め耐震壁12の遮り対象を西日とし、斜め耐震壁12が西日に対して壁面を向ける姿勢に設定されていてもよく、斜め耐震壁12の遮り対象は建物用途や周囲環境等に応じて設定することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 耐震壁
2 居室
12 斜め耐震壁
22 屋外側面
23 給気部
24 排気部
S1 屋外空間
S2 屋外空間
S3 屋外空間
S4 屋外空間
Ba 居住用建物部
Bb 共用スペース用建物部
b1 第1建物部
b2 第2建物部
b3 第2建物部
b4 第4建物部
b5 第5建物部
α 交差角度