(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095065
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】鉛筆芯および鉛筆
(51)【国際特許分類】
C09D 13/00 20060101AFI20230629BHJP
B43K 19/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C09D13/00
B43K19/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210726
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅原 正紘
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD05
4J039AD08
4J039BA03
4J039BC07
4J039BC18
4J039BC20
4J039BE01
4J039CA09
4J039EA42
4J039GA30
(57)【要約】
【課題】書き味のなめらかさおよび折れにくさの両立を図る。
【解決手段】先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり、筆記抵抗値が65N以下である、鉛筆芯。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり、
筆記抵抗値が65N以下である、
鉛筆芯。
【請求項2】
黒鉛を含み、
前記黒鉛のc軸方向の結晶子サイズが15nm以上40nm以下である、
請求項1に記載の鉛筆芯。
【請求項3】
気孔径が0.005μm以上0.05μm以下である、
請求項1または請求項2に記載の鉛筆芯。
【請求項4】
気孔率が10%以上30%以下である、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鉛筆芯。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の鉛筆芯を備えた鉛筆。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛筆芯および鉛筆に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛筆に用いられる鉛筆芯は、黒鉛と樹脂などの結合材とを混合および混練した後に成形し、焼成により焼成体を形成し、焼成体に含まれる気孔中に必要に応じて油やワックス等を含浸させることにより製造される。鉛筆芯に要求される特性には、筆記時の書き味のなめらかさ、鉛筆芯の折れにくさ、等がある。しかし、書き味のなめらかさと折れにくさとは相反する性能であり、好ましい相関関係を求めて各種の方法が検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
【0003】
特許文献1には、含まれる黒鉛の結晶子サイズLcを15~60nmとした焼成鉛筆芯が開示されている。特許文献2には、黒鉛の結晶子のc軸方向のサイズLc、a軸方向のサイズLa、およびこれらの比を特有の範囲内とした焼成鉛筆芯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-127055公報
【特許文献2】特開2017-222787公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、書き味のなめらかさと折れにくさの両立には更なる改良の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、書き味のなめらかさおよび折れにくさの向上を図ることができる、鉛筆芯および鉛筆を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり、
筆記抵抗値が65N以下である、
鉛筆芯。
2.黒鉛を含み、
前記黒鉛のc軸方向の結晶子サイズが15nm以上40nm以下である、
第1項に記載の鉛筆芯。
3.気孔径が0.005μm以上0.05μm以下である、
第1項または第2項に記載の鉛筆芯。
4.気孔率が10%以上30%以下である、
第1項~第3項の何れか1項に記載の鉛筆芯。
5.第1項~第4項の何れか1項に記載の鉛筆芯を備えた鉛筆。」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、書き味のなめらかさおよび折れにくさの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の鉛筆の一例の模式図である。
【
図2】
図2は、鉛筆の延伸方向に対する直交断面の一例の模式図である。
【
図3】
図3は、鉛筆の延伸方向の一端部を削った状態の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0011】
(鉛筆芯)
本実施形態の鉛筆芯は、先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり、筆記抵抗値が65N以下である。
【0012】
本実施形態の鉛筆芯は、先端強度/芯曲げ強度および筆記抵抗値が上記特有の範囲を満たす。このため、本実施形態の鉛筆芯は、相反する性能である書き味のなめらかさおよび折れにくさの両立を図ることができる。
【0013】
また、本実施形態の鉛筆芯は、鉛筆芯に要求される特性として、特に、書き味のなめらかさと折れにくさの両立を図ることができる。このため、職業上や趣味等の理由から、鉛筆を長時間または長期間使用するユーザに、折れにくく、書き味が滑らかで、且つ、疲れにくい、等の筆記に伴うストレスが効果的に低減された鉛筆芯および鉛筆を提供することができる。
【0014】
以下、詳細に説明する。
【0015】
(先端強度/芯曲げ強度および筆記抵抗値)
本実施形態の鉛筆芯の先端強度/芯曲げ強度は、0.6以上1.5以下である。
【0016】
本実施形態の鉛筆芯の先端強度/芯曲げ強度は0.6以上1.5以下の範囲であるが、該範囲の下限値は、0.65以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.75以上であることが更に好ましく、0.80以上であることが特に好ましい。また、本実施形態の鉛筆芯の先端強度/芯曲げ強度の上記範囲の上限値は、1.4以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。
【0017】
鉛筆芯の先端強度とは、鉛筆芯の延伸方向の一端部である先端の強度を表す。鉛筆芯の先端強度は、以下の条件により測定される。
【0018】
鉛筆削り器により鉛筆芯の延伸方向の一端部を角度13±1°の円錐形に削ることで、先端部を先端部の径0.35mmの円錐台形状とする。そして、先端部が円錐台形状とされた鉛筆芯を、水平面に載置した紙面との角度60°に治具により固定する。そして、毎分10mmの速さで鉛直方向に力を加えた状態で鉛筆芯を移動させ、鉛筆芯が破損したときの垂直抗力値を測定する。この測定を、同様に先端を円錐台形状とした鉛筆芯5本について行い、破損した時の垂直抗力値の平均値を、強度F(kgf)として求める。さらに、得られた強度F(kgf)から、下記式(α)を用いることで先端強度I(MPa)が求められる。
【0019】
I=(F×9.81)/A ・・式(α)
【0020】
式(α)中、Iは、先端強度(Mpa)を表す。Fは、上記強度F(kgf)を表す。Aは、鉛筆芯の先端面積を表す。鉛筆芯の先端面積は、0.175mm×0.175mm×3.14により求められる。
【0021】
芯曲げ強度は、JIS S6006:2020に規定されている方法を用い、支点間距離40mmとし、10本の鉛筆芯について測定した曲げ強さの値の平均値を、芯曲げ強度として求める。
【0022】
筆記抵抗は、JIS S6006:2020に規定されている方法で筆記した際の水平方向の抵抗力を測定し、筆記開始から1秒未満を含めず、1秒以降の抵抗力の平均値を1本分の筆記抵抗値として求めることができる。
【0023】
鉛筆芯の先端強度/芯曲げ強度および筆記抵抗値を上記範囲とすることで、書き味のなめらかさと折れにくさの両立を図ることが出来ると考えられる。また、鉛筆芯の先端強度/芯曲げ強度および筆記抵抗値を上記範囲とした本実施形態の鉛筆芯は、筆記時の折れにくさはもちろんのこと、先端を削る際においても折れにくく、先端をより鋭角に尖らせやすい傾向にある。このため、本実施形態の鉛筆芯は、職業上や趣味等の理由から、鉛筆を極力尖らせて使用したいユーザからも、好ましく用いられる。
【0024】
(黒鉛)
本実施形態の鉛筆芯は、黒鉛を含む。
【0025】
本実施形態の鉛筆芯に含まれる黒鉛の結晶子のc軸方向のサイズLcは、15nm以上40nm以下が好ましく、20nm以上35nm以下の範囲が更に好ましい。
【0026】
黒鉛の結晶子のa軸方向のサイズLaは特に限定されない。例えば、黒鉛の結晶子のサイズLaは、50nm以上75nm以下が好ましく、55nm以上70nm以下の範囲が更に好ましい。
【0027】
本実施形態の鉛筆芯に含まれる黒鉛は、結晶子のa軸方向のサイズLa(nm)およびc軸方向のサイズLc(nm)が下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(2)を満たすことが更に好ましく、下記式(3)を満たすことが特に好ましい。
【0028】
2La+3Lc≦280 ・・式(1)
100≦2La+3Lc ・・式(2)
100≦2La+3Lc≦260 ・・式(3)
【0029】
サイズLaは、黒鉛の結晶子のa軸方向の幅(nm)を表す。サイズLcは、黒鉛の結晶子のc軸方向の厚み(nm)を表す。これらのサイズLaおよびサイズLcは、いずれも体積で重みづけされた体積加重平均サイズである。
【0030】
黒鉛の結晶子のサイズLaおよびサイズLcは、以下により求めることができる。まず、X線回折装置を用いて測定されたXRDプロファイルをもとに、サイズLaに対しては(110)面に対応する回折線、サイズLcに対しては(002)面に対応する回折線の半値幅を求める。そして、これらの求めた回折線および半値幅から、以下のシェラーの式(A)により、サイズLaおよびサイズLcが求められる。
【0031】
シェラーの式:L = Kλ/βcosθ ・・式(A)
【0032】
式(A)中、L、K、λ、及びβは、各々以下を表す。
【0033】
L:結晶子サイズ[nm]
K:シェラー定数(K=1を適用)
λ:X線波長[nm]
β:半値幅(ピーク強度の50%に相当する強度における回折線幅)
θ:X線照射角度(ラジアン)
【0034】
(気孔率および気孔径)
詳細な製法は後述するが、本実施形態の鉛筆芯は、焼成工程を含む製造工程を得ることで製造される。このため、本実施形態の鉛筆芯は、気孔を有する。気孔は、細孔と称される場合がある。
【0035】
本実施形態の鉛筆芯の気孔率は、10%以上30%以下が好ましく、20%以上30%以下が更に好ましい。
【0036】
気孔率とは、鉛筆芯の外形容積を1とした場合の、その中に占める気孔部分の容積の百分比である。気孔率は、例えば、JIS R1634:1998などに準じた測定や、細孔分布測定装置を用いた測定により求めることができる。
【0037】
本実施形態の鉛筆芯の気孔径は、0.005μm以上0.05μm以下が好ましく、0.01μm以上0.03μm以下がより好ましく、0.01μm以上0.026μm以下が特に好ましい。
【0038】
気孔径は、水銀圧入法による細孔分布測定装置を用い、初期圧7kPaとし、水銀パラメーターとして水銀接触角130degreesおよび水銀表面張力485dyns/cmとして測定を行い、モード径(最頻値)を気孔径として求めることができる。
【0039】
気孔率および気孔径は、鉛筆芯の強度に影響を与える要素の1つである。本実施形態の鉛筆芯の気孔率および気孔径の少なくとも一方を上記範囲とすることで、曲げ強度の更なる向上を図ることが出来る。また、鉛筆芯の気孔率および気孔径の少なくとも一方を上記範囲とすることで、鉛筆芯の製造時に焼成体に含浸させる油状物質が含浸しやすくなり、書き味のなめらかさを更に向上させることが出来ると考えられる。
【0040】
また、鉛筆芯の気孔率および気孔径を上記範囲内で調整することで、先端強度/曲げ強度および筆記抵抗値が本実施形態の上記範囲内となるように調整できると推測される。
【0041】
(R値)
本実施形態の鉛筆芯は、ラマン分光法によるR値が0.15以上0.55以下であることが好ましい。また、本実施形態の鉛筆芯は、R値が上記範囲内であり、且つ、黒鉛のa軸方向のサイズLa(nm)およびc軸方向のサイズLc(nm)が上記式(1)を満たすことが更に好ましい。
【0042】
ラマン分光法とは、JIS K 0137:2010にも定められているが、物質に光を照射したときに起こるラマン散乱光を分光して得られたラマンスペクトルから、物質の分子レベルの構造を解析する手法である。
【0043】
炭素材料をラマン測定すると、欠陥等の導入により対称性が乱れた場合に出現するDバンドのピークが1360cm-1付近に確認され、グラファイト構造に由来するGバンドのピークが1580cm-1付近に確認される。すなわち、Dバンド(1360cm-1)のピークは鉛筆芯に含まれる非晶質(不定形)カーボンまたはアモルファスカーボンの存在を表し、Gバンド(1580cm-1)のピークは結晶性の黒鉛の存在を表す。
【0044】
R値は、この1580cm-1付近のGバンドのピーク強度(IG)と、1360cm-1付近のDバンドのピーク強度(ID)との比(ID/IG)によって表される。R値は、ラマンR値と称される場合もある。R値はX線回折法により求められる結晶子サイズと逆比例の関係にあり、R値が小さいほど結晶性が高く、R値が大きいほど結晶性が低いことを意味する。
【0045】
本実施形態の鉛筆芯は、ラマン分光法によるR値が0.15以上0.55以下であることが好ましく、更に好ましくは0.20以上0.50以下である。
【0046】
ラマン分光法の測定条件は、本実施形態の鉛筆芯の測定によりラマンスペクトルが得られるものであれば、特に制限されず、レーザー光源、分光器及び検出器を備えたラマン分光装置を用いることができる。例えば、レーザーラマンによるラマン分光法によるラマンシフトは以下の条件で測定することができる。なお、顕微鏡を備えた顕微レーザーラマン分光装置を使用して測定してもよい。
【0047】
例えば、顕微レーザーラマン分光装置を用いて、以下の測定条件でラマンシフトを求めることができる。
【0048】
-測定条件-
・レーザー波長:532[nm]
・レーザー出力:10[mW]
・対物レンズ:10倍
・露光時間:10秒
・積算回数:2回
・刻線数:1200[gr/mm]
・スリット幅:100[μm]
・フィルター:未使用
・検出器:CCD(Charge-Coupled Device)半導体素子
【0049】
ラマン分光法によるR値が上記特有の範囲を満たし、黒鉛のサイズLa(nm)およびサイズLc(nm)が上記式(1)を満たすと、曲げ強度および書き味のなめらかさの更なる向上を図ることができる推測される。
【0050】
(筆記濃度および硬度)
本実施形態の鉛筆芯の硬度および筆記濃度は限定されない。
【0051】
鉛筆に用いられる鉛筆芯には、各種の硬度のものがある。鉛筆用の芯に用いられる硬度は、例えば、HB等の硬度記号で表される。JIS規格には、JIS S 6006:2020又はJIS S 6005:2019に規定されている方法で測定した筆記濃度Dが0.25~0.45であるものが硬度HBとされている。本実施形態の鉛筆芯の筆記濃度Dおよび硬度は、筆記濃度D0.25~0.45および硬度HBに限定されない。
【0052】
本実施形態の鉛筆芯は、先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり且つ筆記抵抗値が65N以下であれば、JIS規格で規定されている何れの筆記濃度Dおよび硬度であってよい。
【0053】
なお、筆記濃度Dは、JIS S 6006:2020又はJIS S 6005:2019に規定されている方法で測定される。使用されるケント紙には、王子製紙株式会社製であり、坪量:126g/m2、厚さ:0.150mm、密度:0.85g/cm3、表面粗さ:81a、平滑度:81S、サイズ度:110S、白色度:99.4%、および不透明度:92.7%の比の品質特性を有するものを用いる。
【0054】
(鉛筆芯の製造方法)
本実施形態の鉛筆芯の製造方法の一例を説明する。なお、鉛筆芯の製造方法は、その発明特定事項を備える全ての実施形態を広く包含するものであり、以下に説明する実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0055】
鉛筆芯は、黒鉛と樹脂などの結合材とを含む原料を混合および混練し、押出成形して成形体とした後に焼成により焼成体とし、焼成体に含まれる気孔中に必要に応じて油やワックス等の油状物質を含浸させることにより製造される。
【0056】
本実施形態の鉛筆芯も、このような製造方法に準じて任意の方法で製造できる。例えば、本実施形態の鉛筆芯の製造方法は、混合工程と、予備成形工程と、粉砕工程と、押出成形工程と、焼成工程と、油浸工程と、を含む。
【0057】
(1)混合工程
まず、原料を配合し、それを混合および混練する。原料としては、黒鉛と結合材が挙げられる。
【0058】
黒鉛としては、結晶子サイズの大きいものよりも小さいものを用いることが好ましい。しかし、結晶子サイズの小さい黒鉛は入手が困難であり、また製造過程における破砕または粉砕工程によって変化するのであることから、必ずしも限定されない。
【0059】
結合材としては、従来公知のものであればいずれも用いることができる。結合材としては、代表的には各種の樹脂が挙げられる。樹脂としては水溶性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが用いられるが、この他にコールタール、アスファルトなどのピッチ状物質を用いることもできる。また、原料として溶剤や可塑剤などを配合することもできる。
【0060】
これらを配合して原料配合物としたうえ、必要に応じて一次混合をした後、さらに混合および混練を行う。混合および混練には、ヘンシェルミキサー、ニーダー、3本ローラーなどを用いることができる。ここで、ニーダーには加圧ニーダー、普通ニーダー、連続式ニーダーなど任意のものを選択することができる。
【0061】
(2)予備成形工程
予備成形工程では、混合工程で得られた混合物をさらに混合し、押出機などにより細線状に予備成形する。このような予備成形、およびその後に引き続いて行う粉砕工程を行うこと、言い換えれば、原料混合物の混合および成形と粉砕とを2回、またはそれ以上行うことによって、より小さい結晶子を含む鉛筆芯の実現が容易となる。
【0062】
ただし、単に混合、成形、および粉砕を2回以上行うだけでなく、各条件の調整や原料の最適化を行うことにより、より優れた特性を有する鉛筆芯を、効率よく製造することが可能となる。
【0063】
例えば、予備成形における圧力の調整により混合物中の黒鉛粒子と結合材との密着性を高めたり、細線状に予備成形する際の絞り率を調整したりすることで、鉛筆芯の緻密度を改善することができる。ここで、絞り率とは、押出機の材料導入部と成形体押出部の直径の比をいう。
【0064】
(3)粉砕工程
粉砕工程では、予備成形工程で得られた細線状成形体を粉砕する。粉砕後の粒子径は、特に限定されないが、D50で10μm以上500μm以下が好ましく、で50μm以上400μm以下であることがより好ましい。組織の細かい緻密構造を形成しやすくするために、粒子は小さいことが好ましい。また、粉砕後の粒子の飛散を防ぎ、取り扱いを容易にするために、また粉砕時間短縮のために、粒子はある程度大きいことが好ましい。
【0065】
粉砕された粒子の大きさや分布は、上記と同様にレーザー回折・散乱法に基づく粒度分布測定機を使用して測定することができる。上記と同様に、粒子径は相対粒子数50%に相当する、所謂D50(体積基準で測定したメディアン径)である。粒度分布の測定は乾式および湿式のいずれであって可能であるが、比較的小さい粒子の大きさを測定する場合には、より簡便な乾式方法で測定することが好ましい。
【0066】
粉砕には一般的な粉砕機を使用することが可能である。具体的には、(i)粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャーなど、(ii)中粉砕機としては、ロールクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、石臼型、リングミルなど、(iii)微粉砕機としては、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミルなどが挙げられる。これらは単独で利用してもよいし、複数組み合わせて利用することも出来る。
【0067】
(4)押出成形工程
押出成形工程では、粉砕工程によって粉砕された混練物を必要に応じて加熱し、細線状に押出成形する。押出機には任意のものを用いることができる。押出成形時の混練物の押出速度は、例えば0.1m/秒以上15m/秒≦である。
【0068】
(5)焼成工程
焼成工程では、押出成形工程によって押出成形された混練物を焼成する。焼成の際の雰囲気は酸素含有率が低いことが好ましく、真空または不活性ガス雰囲気下で行われる。焼成温度は特に限定されないが、800℃以上1500℃以下が好ましく、1000℃以上1400℃以下がより好ましい。
【0069】
(6)油浸工程
焼成工程により得られた焼成体は気孔を含む。油浸工程では、この気孔に油状物質を含浸させる。油状物質には、公知の油成分を用いればよい。油浸工程によって、筆記の際の筆記感等を改良することができる。油浸方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。
【0070】
これらの上記工程を経ることによって、本実施形態の鉛筆芯が製造される。なお、以上の製造方法は一例であり、その他の方法により本実施形態の鉛筆芯を製造することもできる。
【0071】
(鉛筆)
本実施形態の鉛筆芯は、鉛筆芯を筆記用の芯として用いる各種の筆記具に適用される。例えば、本実施形態の鉛筆芯は、鉛筆用の筆記芯として用いることができる。
【0072】
図1は、本実施形態の鉛筆10の一例の模式図である。
図2は、鉛筆10の延伸方向Xに対する直交断面の一例の模式図である。
【0073】
鉛筆10は、本実施形態の鉛筆芯12と、木軸部14と、を備える。鉛筆芯12は、該鉛筆芯12の延伸方向Xに長い木軸部14によって挟持されてなる。木軸部14には、例えば、木材が用いられる。
【0074】
鉛筆10の木軸部14の外周面上には、塗装層16が設けられていてもよい。塗装層16は、木軸部14の外周面を保護する層である。
【0075】
塗装層16は、例えば、木軸部14の外周面上に、下地層16A、中塗り層16B、および表面層16Cをこの順に積層した3層からなる。なお、塗装層16は、1層、2層、または4層以上で構成されていてもよく、3層に構成された形態に限定されない。
【0076】
下地層16Aは、塗装素地としての木軸部14の欠点を補い、平滑な塗装素地面を作るための層である。下地層16Aは、例えば、目止剤から成る層である。目止剤としては、特に制限されず、公知のシーラーや水性目止剤等を適宜用いることができる。
【0077】
中塗り層16Bは、下地層16Aをさらに塗装してより平滑にするための層である。中塗り層16Bの構成材料は限定されない。表面層16Cは、中塗り層16Bの表面を更に塗装して平滑化するための層である。表面層16Cには、公知の仕上げ用塗料を適宜用いることができる。仕上げ用塗料としては、特に制限されず、例えば、エナメル塗料、クリア塗料等を適宜用いることができる。
【0078】
塗装層16を構成する少なくとも1層は、鉛筆芯12の硬度に対応する色であることが好ましい。言い換えると、塗装層16を構成する少なくとも1層は、鉛筆芯12の硬度に対応する色彩を有する層であることが好ましい。例えば鉛筆芯12の硬度に対応する色を予め設定する。そして、塗装層16を構成する少なくとも1層を、木軸部14によって挟持されている鉛筆芯12の硬度に応じた色とすればよい。
【0079】
図2には、一例として、中塗り層16Bが鉛筆芯12の硬度に対応する色彩を有する層である形態を一例として示す。
【0080】
図3は、鉛筆10の延伸方向Xの一端部を鉛筆削り器等により削った状態の一例を表す模式図である。
図3に示すように、鉛筆10の一端部を鉛筆削り器等により削ると、鉛筆10の削り面に中塗り層16Bの一部が露出した状態となる。すなわち、鉛筆芯12に対応する色の中塗り層16Bが、外部から容易に視認可能な状態となる。このため、ユーザは、削り面の中塗り層16Bの色を視認することで、鉛筆10の鉛筆芯12の硬度を容易に識別することが可能となる。
【0081】
また、例えば、硬度表記された表面層16Cが削られた場合や、硬度表記が隠れるように鉛筆10がペン立て等に立てられた状態等においても、ユーザは、表面層16Cに表記された硬度表記に頼らず中塗り層16Bの色を視認することで、鉛筆芯の12の硬度を容易に識別することができる。このため、本実施形態の鉛筆10は、上記効果に加えて、硬度表記が表面層16Cに記載されていることによる不具合や煩わしさを解消することができる。
【0082】
図2に戻り説明を続ける。鉛筆10の延伸方向Xに対する直交断面の形状は限定されない。
図1~
図3には、鉛筆10の延伸方向Xに対する直交断面の形状が六角形である形態を一例として示す。しかし、鉛筆10の該直交断面の形状は、円または多角形の何れであってもよく、六角形に限定されない。
【0083】
なお、鉛筆10の延伸方向Xに対する直交断面の形状を多角形状とする場合、該多角形を構成する各辺の頂点は、丸みをおびた角、すなわち角R形状とされていることが好ましい。
【0084】
鉛筆10の延伸方向Xの直交断面の形状が多角形である場合、多角形の各辺の頂点を角R形状とすることで、握りやすく且つ長時間筆記しても疲れにくい鉛筆10とすることができる。
【0085】
また、塗装層16の厚みは限定されないが、0.05mm以上の厚みを有することが好ましく、0.06mm以上の厚みを有することがより好ましい。塗装層16の厚みを上記厚みとすることで、筆記時の指当たりを滑らかとすることができる。
【0086】
(鉛筆の製造方法)
本実施形態の鉛筆10の製造方法の一例を説明する。なお、鉛筆10の製造方法は、その発明特定事項を備える全ての実施形態を広く包含するものであり、以下に説明する実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0087】
鉛筆10は、例えば、木工工程、塗装工程、印刷工程、小口切り工程、等を経て製造される。
【0088】
(A)木工工程
木工工程では、例えば、木軸部14として用いる2枚の板材の中心部に鉛筆芯12用の溝部を形成し、該溝部に鉛筆芯12を収容した上で、2枚の板材を接着して合板を得る。そして、合板を断面六角形状に加工することで、鉛筆芯12を挟持した木軸部14を得る。
【0089】
(B)塗装工程
塗装工程は、例えば、下地処理工程、中塗り工程、および仕上げ工程を含む。
【0090】
下地処理工程では、木工工程によって製造された木軸部14の表面を目止剤等で塗装することで、木軸部14上に下地層16Aを形成する。中塗り工程では、下地層16A上に中塗り層16Bを形成する。仕上げ工程では、中塗り層16B上に仕上げ用塗料を塗布することで、中塗り層16B上に表面層16Cを形成する。塗装工程における塗装方法には、しごき塗装法等の公知の方法を用いればよい。
【0091】
(C)印刷工程
印刷工程では、鉛筆10の用途に応じて鉛筆10の表面に鉛筆芯12の硬度等を表す文字や絵柄などを印刷する。印刷方法には公知の方法を用いればよい。印刷方法には、例えば、ホットスタンプ印刷、ドライオフセット印刷、熱転写印刷、等を用いればよい。
【0092】
(D)小口切り工程
小口切り工程では、鉛筆10の延伸方向Xの端部を切断して平坦にする工程である。
【0093】
これらの上記工程を経ることによって、本実施形態の鉛筆10が製造される。なお、以上の製造方法は一例であり、その他の方法により本実施形態の鉛筆10を製造することもできる。また、上記工程の後に、適宜、各種の後処理工程を行ってもよい。
【実施例0094】
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
(実施例1)
以下の工程により実施例1の鉛筆芯を製造した。
【0096】
-原料A1-
・天然黒鉛 45質量部
・酢酸ビニル樹脂 30質量部
・石炭ピッチ 15質量部
・エタノール 20質量部
【0097】
原料として上記原料A1を用意した。そして、上記原料A1をヘンシェルミキサーにより混合し、更に3本ロールを用いて再度、混合、混練した。次いで、単軸押出成形機にて細線状に予備成形し、細線状の成形体を得た。得られた成形体をピンミルにより微粉化し、粉砕物を得た。この粉砕物を単軸押出機にて所望の寸法になるように再度細線状に成形した。得られた成形体を、空気中で250℃まで10時間かけて熱処理後、更に非酸化性雰囲気中において最高温度1000℃で熱処理を実施し、冷却して実施例1の焼成体を得た。
【0098】
得られた実施例1の焼成体にスピンドル油を100℃で2時間保持の条件で含浸させ、焼成体表面の余分な油を除去した後、180mmの長さに切断し、実施例1の鉛筆芯を得た。得られた実施例1の鉛筆芯の直径は2mmであり、筆記濃度Dは0.35であった。
【0099】
得られた実施例1の鉛筆芯を、溝部の形成された2枚の板材により挟持し、断面六角形状に加工することで、実施例1の鉛筆芯を挟持した木軸部を得た。得られた木軸部に、水性目止剤、中塗り層用の塗料、およびエナメル塗料の各々を用いた塗装工程を施すことで、実施例1の鉛筆を得た。
【0100】
(実施例2)
-原料A2-
・天然黒鉛 45質量部
・酢酸ビニル樹脂 15質量部
・塩化ビニル樹脂 20質量部
・石炭ピッチ 10質量部
・メチルエチルケトン 15質量部
・ジオクチルフタレート 0.5質量部
【0101】
実施例1の原料A1に替えて、上記原料A2を用いた点以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の鉛筆芯を得た。得られた実施例2の鉛筆芯の直径は2mmであり、筆記濃度Dは0.51であった。また、得られた実施例2の鉛筆芯を用いて、実施例1と同様にして実施例2の鉛筆を得た。
【0102】
(実施例3)
-原料A3-
・天然黒鉛 47質量部
・酢酸ビニル樹脂 20質量部
・塩化ビニル樹脂 15質量部
・石炭ピッチ 8質量部
・メチルエチルケトン 10質量部
・エタノール 5質量部
・ジオクチルフタレート 0.5質量部
【0103】
実施例1の原料A1に替えて、上記原料A3を用いた点以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の鉛筆芯を得た。得られた実施例3の鉛筆芯の直径は2mmであり、筆記濃度Dは0.63であった。また、得られた実施例3の鉛筆芯を用いて、実施例1と同様にして実施例3の鉛筆を得た。
【0104】
(比較例1)
比較例1として、クツワ株式会社製、商品名:ホクサイン、硬度HBの鉛筆を、比較例1の比較鉛筆として用意した。
【0105】
(比較例2)
比較例2として、クツワ株式会社製、商品名:ホクサイン、硬度2Bの鉛筆を、比較例2の比較鉛筆として用意した。
【0106】
(比較例3)
比較例3として、三菱鉛筆株式会社製、商品名:ハイユニ、硬度HBの鉛筆を、比較例3の比較鉛筆として用意した。
【0107】
(比較例4)
比較例4として、三菱鉛筆株式会社製、商品名:ハイユニ、硬度2Bの鉛筆を、比較例4の比較鉛筆として用意した。
【0108】
(評価)
実施例1~実施例3の鉛筆、および比較例1~比較例4の比較鉛筆について、物性を評価した。得られた結果を表1に示した。評価条件は以下とした。
【0109】
-結晶子のサイズLc-
実施例1~実施例3の焼成体、および比較例1~比較例4の比較焼成体の各々について、含まれる黒鉛のサイズLc(nm)を測定した。測定結果を、表1に示した。
【0110】
黒鉛の結晶子のサイズLcは、以下測定条件により測定した。
【0111】
X線回折装置(Bruker AXS社製、商品名:D8 ADVANCE)を用い、実施例1~実施例3の焼成体、および比較例1~比較例4の比較焼成体の各々に含まれる黒鉛の結晶子のサイズLc(002面)を測定した。測定には、1回の測定につき、1本の焼成体または1本の比較焼成体を使用した。
【0112】
X線回折測定には、一般には粉砕された粉末を用いるが、形状変化を避けるため、今回の評価では粉砕を行わなかった。測定にはゲーベル・ミラーによる平行ビーム法を用いた。
【0113】
サイズLcの測定は、焼成体および比較焼成体の各々の押出軸方向に対して平行にX線を照射し、方位角2θを20°以上30°以下の範囲でスキャンした。一方、サイズLaの測定は、焼成体および比較焼成体の各々の押出軸方向に対して垂直にX線(CuKα線)を照射し、方位角2θを70°以上80°以下の範囲でスキャンした。
【0114】
得られたXRDプロファイルの(002面)に対応する26.4°付近の回折線に関して、バックグラウンドを除去し(5次のチェビシェフ多項式を使用)、X線吸収因子を補正し、プロファイル・フィッティング処理を行った。その後、上記式(A)で表されるシェラー式を用いて結晶子のサイズLcを算出した。フィッティング処理および結晶子のサイズの算出には、ファンダメンタル・パラメータ(FP)法を用いた。
【0115】
-気孔率、気孔径-
実施例1~実施例3の鉛筆芯、および、比較例1~比較例4の各々の比較鉛筆に設けられた比較鉛筆芯の各々について、焼成炉を用い、真空または不活性ガス雰囲気下において焼却炉により600℃で熱処理を行った。そして、この熱処理後の実施例1~実施例3の鉛筆芯、および、比較例1~比較例4の各々の比較鉛筆に設けられた比較鉛筆芯の各々について、外形容積を1とした場合の、その中に占める気孔部分の容積の百分比を求めた。具体的には、気孔率は、水銀圧入式オートスキャンポロシメーター(細孔分布測定装置オートポアV 9620/メリティックス社製)を用いて、気孔径と、その細孔容積率である気孔率を測定した。
【0116】
なお、気孔径については、上記細孔分布測定装置を用い、初期圧7kPaとし、水銀パラメーターとして水銀接触角130degreesおよび水銀表面張力485dyns/cmとして測定を行い、モード径(最頻値)を気孔径として求めた。気孔率および気孔径の測定結果を表1に示した。
【0117】
-角R-
実施例1~実施例3の鉛筆、および比較例1~比較例4の比較鉛筆、の各々について、六角形形状の断面の各頂点の角Rを測定した。測定結果を表1に示した。
【0118】
-先端強度/芯曲げ強度、筆記抵抗値-
(先端強度)
鉛筆削り器(ein cms110/CARL事務機社製)の細く削る仕様にて、実施例1の鉛筆について、鉛筆芯の延伸方向の一端部を角度13±1°の円錐形に削ることで、先端部を先端部の径0.35mmの円錐台形状とした。そして、先端部が円錐台形状とされた鉛筆芯を、水平面に載置した紙面との角度60°に治具により固定した。そして、毎分10mmの速さで鉛直方向に力を加えた状態で鉛筆芯を移動させ、鉛筆芯が破損したときの垂直抗力値を測定した。そして、この測定を、同様に先端を円錐台形状とした鉛筆芯5本について行い、破損した時の垂直抗力値の平均値を、強度F(kgf)として求めた。さらに、得られた強度F(kgf)から、上記式(α)を用いることで先端強度(MPa)を求めた。求めた結果を表1に示した。
【0119】
実施例2~実施例3の鉛筆、および比較例1~比較例4の比較鉛筆の各々についても、実施例1の鉛筆と同様にして先端強度(Mpa)を求めた。求めた結果を表1に示した。
【0120】
(芯曲げ強度)
芯曲げ強度は、実施例1の鉛筆芯について、JIS S 6006:2020に規定されている方法を用い、支点間距離40mmとし、10本の鉛筆芯について測定した曲げ強さの値の平均値を、芯曲げ強度(MPa)として求めた。求めた結果を表1に示した。
【0121】
実施例2~実施例3の鉛筆芯、および比較例1~比較例4の比較鉛筆芯の各々についても、実施例1の鉛筆芯と同様にして芯曲げ強度(MPa)を求めた。求めた結果を表1に示した。
【0122】
(先端強度(Mpa)/芯曲げ強度(MPa))
実施例1~実施例3、比較例1~比較例4の各々について、上記に求めた先端強度(Mpa)および芯曲げ強度(MPa)から、先端強度(Mpa)/芯曲げ強度(MPa)の値を計算した。計算結果を表1に示した。
【0123】
―筆記抵抗―
筆記抵抗は、実施例1の鉛筆について、JIS S 6006:2020に規定されている方法で筆記した際の水平方向の抵抗力を測定し、筆記開始から1秒未満を含めず、1秒以降の抵抗力の平均値を1本分の筆記抵抗値とて求めた。そして、実施例1の鉛筆5本の各々について、同様の試験により筆記抵抗値を求め、その平均値を、実施例1の鉛筆の筆記抵抗とした。得られた筆記抵抗を表1に示した。
【0124】
実施例2~実施例3の鉛筆、および比較例1~比較例4の比較鉛筆の各々についても、実施例1の鉛筆と同様にして筆記抵抗を求めた。求めた結果を表1に示した。
【0125】
-筆記濃度-
筆記濃度は、JIS S 6006:2020に規定されている方法で筆記した描線を濃度計(サクラ濃度計PDA65(商品名、小西六写真工業株式会社))で測定した。測定結果を表1に示した。
【0126】
【0127】
表1に示すように、実施例1~実施例3の鉛筆芯は、先端強度/芯曲げ強度が0.6以上1.5以下であり、筆記抵抗値が65N以下であった。一方、比較例1~比較例4の比較鉛筆芯は、先端強度/芯曲げ強度および筆記抵抗値の少なくとも一方が上記範囲を満たしていなかった。このため、実施例1~実施例3の鉛筆芯は、比較例1~比較例4の比較鉛筆芯に比べて、書き味のなめらかさおよび折れにくさの両立が図れていることが確認できた。