(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009508
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体及びオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
C04B37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112856
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 絵美子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康隆
【テーマコード(参考)】
4G026
【Fターム(参考)】
4G026BA01
4G026BB01
4G026BF01
4G026BF43
4G026BG04
4G026BG26
4G026BH13
(57)【要約】
【課題】
複雑な形状でも、オキシフッ化イットリウム焼結体を提供できるようオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体、及び、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】
第1領域と、上記第1領域と界面領域を挟み対向する第2領域と、からなるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体であって、上記界面領域は、上記第1領域及び前記第2領域よりも気孔率が高いことを特徴とするオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、前記第1領域と界面領域を挟み対向する第2領域と、からなるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体であって、
前記界面領域は、前記第1領域及び前記第2領域よりも気孔率が高い
ことを特徴とするオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【請求項2】
前記界面領域は、気孔率が2~60%である請求項1に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【請求項3】
前記接合体は、YF3とY5O4F7とが主成分であって、前記界面領域は、前記第1領域及び前記第2領域よりYF3含有量が多い請求項1又は2に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【請求項4】
前記界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、前記第1領域及び前記第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101~150%である請求項3に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【請求項5】
前記界面領域の組織は、前記第1領域及び前記第2領域の組織よりも細かい請求項1~4のいずれか1項に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の製造方法であって、
第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面とを、前記第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体よりもフッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を挟んで焼結する接合工程を有することを特徴とするオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記接合工程は、700~1200℃で行う請求項6に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記接合工程では、前記オキシフッ化イットリウムの粉末と溶媒とを含むスラリーを塗工する請求項6又は7に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒は、エタノール又はメタノールである請求項8に記載のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体及びオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法に関する。
【0002】
半導体の製造における各工程、特に、ドライエッチング、プラズマエッチング及びクリーニングの工程ではフッ素系腐食性ガスや塩素系腐食性ガス及びこれらを用いたプラズマが使用される。
【0003】
これらの腐食性ガスやプラズマを使用すると、半導体製造装置の構成部材が腐食されたり、上記構成部材の表面からはく離した微細粒子(パーティクル)が半導体の表面に付着し、製品不良の原因となりやすい。そのため、半導体製造装置の構成部材には、ハロゲン系プラズマに対して耐食性の高いセラミックスがバルク材料として使用される必要がある。
【0004】
このようなバルク材料として、アルミニウム酸化物、イットリウム酸化物、アルミニウムイットリウム複合酸化物や、イットリウムフッ化物が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-136877号公報
【特許文献2】特開2013-144622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体の製造においてバルク材料である焼結体は、表面も内部も同一材料であり、消耗しても、不純物汚染の恐れが少ない。しかしながら半導体の製造においては、様々な形状の半導体製造装置用部材が用いられ、加工が困難な焼結体では、複雑な形状に対応しにくい。
【0007】
本発明では、上記課題を鑑み、複雑な形状でも、オキシフッ化イットリウム焼結体を提供できるようオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体及び、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体は、第1領域と、上記第1領域と界面領域を挟み対向する第2領域と、からなるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体であって、上記界面領域は、上記第1領域及び上記第2領域よりも気孔率が高い。
【0009】
オキシフッ化イットリウム焼結体は、フッ素を含有しているため、焼結や使用時に加熱すると軟化しやすく変形が生じやすい。
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体では、接合部である界面領域は、焼結体である第1領域及び第2領域よりも気孔率が高いので、焼結の過程などで第1領域及び第2領域が変形してクリアランスの変化が生じても気孔がクッションとなってその変化を吸収し、接合を維持することができる。このため複雑な形状でも容易に対応することができるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体を得ることができる。
【0010】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体において、上記界面領域は、気孔率が2~60%であることが望ましい。
界面領域における気孔率が2%以上であると、密度を十分に小さくすることができるので、熱応力を好適に分散することができる。また、界面領域における気孔率が60%以下であると、十分な接合強度を確保し、剥離を防止することができる。
なお、各領域における気孔率は、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面において気孔部分の断面積比から求めることができ、実際には500~10000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真の気孔部分の比を算出することで得ることができる。なお、気孔は、固定のために気孔に充填された樹脂であるか、焼結体の成分であるか元素マッピングによって判断することができる。
また、界面領域の厚さが構成する組織の平均径よりも十分に厚くない場合(10倍以下)、界面領域の気孔率は、上記走査電子顕微鏡写真において、界面領域と、第1領域又は第2領域との境界線からの距離が等しい中心線において、界面領域を構成するフッ化イットリウム等の粒子が存在する部分の長さと、気孔部分の長さの比により算出することで得ることもできる。
【0011】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体において、YF3とY5O4F7とが主成分であって上記界面領域は、上記第1領域及び上記第2領域よりYF3含有量が多いことが望ましい。
【0012】
接合体において界面領域は、もともと別部材であるため強度の弱い部分である。この強度の弱い界面領域において融点を下げる効果のあるフッ素の含有量を増やすことにより、以下の利点がある。
オキシフッ化イットリウム焼結体は、フッ素は異種元素ではないのでフッ素の含有量が増えても不純物とはならない。また、フッ素は拡散しやすいので、界面領域近傍のオキシフッ化イットリウム焼結体中にフッ素が拡散し、軟化点の低い部分が拡散し、フッ素の濃度勾配を緩やかにし、応力集中を発生しにくくする作用がある。このため、強度のあるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体を得ることができる。
【0013】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体において、上記界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、上記第1領域及び上記第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101~150%であることが望ましい。
【0014】
界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比が、第1領域及び第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101%以上であると、界面領域と第1領域及び第2領域との接合力を十分確保できる。
また、界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比が、第1領域及び第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して150%以下であると、Y5O4F7よりも熱膨張が大きいYF3の形成を抑制し、界面領域と第1領域及び第2領域との熱膨張差を小さくでき耐熱衝撃性を確保することができる。
【0015】
なお、界面領域におけるY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面においてYF3とY5O4F7の断面積比から求めることができ、実際には500~10000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真から比を算出することで得ることができる。また、断面積で算出しその比をそのまま含有量の比とするので含有量の比は体積比である。
また、界面領域の厚さが構成する組織の平均径よりも十分に厚くない場合(10倍以下)、界面領域におけるY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、上記走査電子顕微鏡写真において、界面領域と、第1領域又は第2領域との境界線からの距離が等しい中心線において、界面領域を構成するYF3の組織の部分の長さと、Y5O4F7の組織の長さの比により算出することで得ることもできる。
【0016】
上記界面領域の組織は、上記第1領域及び上記第2領域の組織よりも細かいことが望ましい。
なお、組織とは同じ組成で構成される領域であり、本実施形態においては、YF3の組織とY5O4F7の組織が存在する。
【0017】
界面領域の組織は、第1領域及び第2領域の組織よりも細かいと、応力集中などが生じて界面領域に大きな力が加わったとしても、界面領域の組織の方が細かいので強度が高く破壊しにくくすることができる。
【0018】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面とを、上記第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体よりもフッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を挟んで焼結する接合工程を有する。
【0019】
フッ素は、オキシフッ化イットリウムの融点を下げる作用があり、焼結助剤として作用する。このため、接合面にフッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を挟んで焼結することにより、第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を変形させたり、傷めたりすることなく、接合することができる。
なお、フッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムとは、粒子自体のYF3含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を用いてもよいし、オキシフッ化イットリウムとフッ化イットリウムとの混合物においてその比率を調整することによりフッ素含有量を増やしてもよい。
また、オキシフッ化イットリウムの粉末における「オキシフッ化イットリウム」とは、完全なY5O4F7だけではなく、YF3相を含むものである。
【0020】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法において、上記接合工程は、700~1200℃で行うことが好ましい。
【0021】
接合工程を700℃以上で行うことにより、余分なフッ素が焼結助剤となって強く接合することができる。また、接合工程を1200℃以下で行うことによって、第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体の焼結を進行させず、変形や、収縮を防止することができる。
【0022】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法において、上記接合工程では、上記オキシフッ化イットリウムの粉末と溶媒とを含むスラリーを塗工することが好ましい。
【0023】
オキシフッ化イットリウムの粉末を溶媒に溶いてスラリー化することにより、流動性がよくなるため、界面領域を薄くすることができる。界面領域は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体(第1の領域)あるいは第2のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体(第2の領域)よりも強度的に劣るが、界面領域を薄くすることによって、焼結の過程で第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体と原子の相互貫入が進行し、強度低下を抑制することができる。
【0024】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法において、上記溶媒は、エタノール又はメタノールであることが好ましい。
【0025】
エタノールや、メタノールは沸点が低い上に、表面エネルギーが小さいので、気孔内部に浸透しやすい。このため、第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体に挟まれたスラリーから、溶媒だけが焼結体に浸透しやすく、薄い界面領域を形成しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0026】
複雑な形状でも、オキシフッ化イットリウムを提供できるようオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体及び、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
【
図2】本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
【
図3】実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真における第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)の拡大写真である。
【
図5】実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真における界面領域の拡大写真である。
【
図6】実施例2で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【
図7】実施例3で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<オキシフッ化イットリウム焼結体>
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体は、第1領域と、上記第1領域と界面領域を挟み対向する第2領域と、からなるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体であって、上記界面領域は、上記第1領域及び上記第2領域よりも気孔率が高い。
【0029】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体では、接合部である界面領域は、焼結体である第1領域及び第2領域よりも気孔率が高いので、焼結の過程などで第1領域及び第2領域が変形してクリアランスの変化が生じても気孔がクッションとなってその変化を吸収し、接合を維持することができる。このため複雑な形状でも容易に対応することができるオキシフッ化イットリウム焼結体を得ることができる。
【0030】
第1領域及び第2領域は、Y5O4F7とYF3とを主成分とする。
なお、「主成分」とは、構成する成分のうちその成分が90モル%以上であるものを意味する。
【0031】
第1領域及び第2領域は、気孔率が0.1~1%であることが望ましい。
第1領域及び第2領域における気孔率が上記範囲であれば、第1領域及び第2領域に十分な強度を付与することができる。
【0032】
界面領域は、気孔率が2~60%であることが望ましい。
界面領域における気孔率が2%以上であると、密度を十分に小さくすることができるので、熱応力を好適に分散することができる。また、界面領域における気孔率が60%以下であると、十分な接合強度を確保し、剥離を防止することができる。
【0033】
界面領域は、上記第1領域及び上記第2領域よりもYF3含有量が多いことが望ましい。
【0034】
接合体において界面領域は、もともと別部材であるため強度の弱い部分である。この強度の弱い界面領域において融点を下げる効果のあるフッ素の含有量を増やすことにより、以下の利点がある。
オキシフッ化イットリウム焼結体において、フッ素は異種元素ではないのでフッ素の含有量が増えても不純物とはならない。また、フッ素は拡散しやすいので、界面領域近傍のオキシフッ化イットリウム焼結体中にフッ素が拡散し、軟化点の低い部分が拡散し、フッ素の濃度勾配を緩やかにし、応力集中を発生しにくくする作用がある。このため、強度のあるオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体を得ることができる。
【0035】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体において、上記界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、上記第1領域及び上記第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101~150%であることが望ましい。
【0036】
界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、第1領域及び第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の比に対して101%以上であると、界面の接合力を十分確保できる。なお、Y5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比とは、体積比である。
また、界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比が、第1領域及び第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して150%以下であると、オキシフッ化イットリウムよりも熱膨張が大きいフッ化イットリウムの形成を抑制し、界面領域と第1領域及び第2領域との熱膨張差を小さくでき耐熱衝撃性を確保することができる。
【0037】
上記界面領域の組織は、上記第1領域及び上記第2領域の組織よりも細かいことが望ましい。例えば、界面領域の組織の大きさは、0.1~10μmであることが望ましい。一方、上記第1領域及び上記第2領域の組織の大きさは、0.2~20μmであることが望ましい。
なお、組織の大きさは、構成する組織の大きさを、走査電子顕微鏡を用いて標準スケールと対比することにより測定することができる。また、YF3とY5O4F7は走査電子顕微鏡では濃度が異なって観察されるため、あらかじめ元素マッピングを行って成分を特定してから行う。
【0038】
界面領域の組織は、第1領域及び第2領域の組織よりも細かいと、応力集中などが生じて界面領域に大きな力が加わったとしても、界面領域の組織が細かいので破壊しにくくすることができる。
【0039】
第1領域及び第2領域の形状や大きさについては特に限定されず、目的とする加工に応じて適宜設定することができる。
【0040】
界面領域の厚さとしては、0.1~200μmであることが望ましく、1~10μmであることがより望ましい。
なお、界面領域の厚さは、オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面を走査電子顕微鏡写真にて観察することにより測定することができる。
【0041】
<オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法>
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合面とを、上記第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体よりもフッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を挟んで焼結する接合工程を有する。
【0042】
フッ素は、オキシフッ化イットリウムの融点を下げる作用があり、焼結助剤として作用する。このため、接合面にフッ素含有量の多いオキシフッ化イットリウムの粉末を挟んで焼結することにより、第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を変形させたり、傷めたりすることなく、接合することができる。
【0043】
本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法についての第1実施形態及び第2実施形態に基づいて説明する。
【0044】
[第1実施形態]
第1実施形態のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体は、
図1に示すフローチャートによって得られる。
図1は、本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法の第1実施形態を示すフローチャートである。
図1に示すように、第1実施形態では、接合面調整、原料調整、スラリー化、界面領域形成、圧着、乾燥及び焼結を有する。
【0045】
(接合面調整)
第1の実施形態では、まず、互いに接合するオキシフッ化イットリウム焼結体(第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体)の接合面を調整する。平面であってもよいし、互いに同じ曲率の曲面など、対向させたときにギャップが均一になればよく、特に限定されない。
接合面調整は、機械加工、研磨、共摺りなどどのような方法を用いてもよい。
【0046】
(原料調整)
次に接合に使用するオキシフッ化イットリウムの粉末の調整を行う。調整する内容は、成分比、平均粒子径のほか、顆粒状となっている時には顆粒の解砕を行ってもよい。
【0047】
オキシフッ化イットリウムの粉末は、焼結体よりも低温で軟化するように、例えば、Y5O4F7とYF3との比率を調整し、オキシフッ化イットリウムの粉末のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比が第1の及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比よりも多くなるように調整する。
例えば、オキシフッ化イットリウムの粉末は、Y5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比が、第1の及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101~150%であることが望ましい。成分比の調整は、YF3の比率の高いオキシフッ化イットリウムの粉末を用いてもよいし、YF3を追加してもよい。
フッ素を多く含有することにより、接合される焼結体よりも接合部(界面領域)の方が早く軟化し、全体の形状を変形させることなく、接合することができる。
【0048】
オキシフッ化イットリウムの粉末の平均粒子径は特に限定されないが、オキシフッ化イットリウム焼結体を構成する組織よりも細かな粉末を使用することが好ましい。例えば、平均粒子径は、0.1~10μmであることが望ましい。
また、オキシフッ化イットリウムの粉末がバインダで結合し顆粒となっている場合には、焼成してバインダを除去したり、粉砕して個々の粒子になるように解砕してもよい。
なお、オキシフッ化イットリウムの粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができる。
具体的には、上記測定装置により得られる粒子の累積体積分布曲線において、粒子径の小さい方から累積体積が50体積%にあたる粒子径が平均粒子径である。
【0049】
(スラリー化)
接合工程では、オキシフッ化イットリウムの粉末と溶媒とを含むスラリーを塗工することが望ましい。
原料調整で得られたオキシフッ化イットリウムの粉末を薄く広げられるようスラリー化する。これにより、流動性がよくなるため、界面領域を薄くすることができる。
界面領域自体は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体あるいは第2のオキシフッ化イットリウム焼結体よりも強度的に劣るが、界面領域を薄くすることによって、焼結の過程で第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体と原子の相互貫入が進行し、強度低下を抑制することができる。
【0050】
溶媒としては、水、アルコール、アセトン、エーテルなど揮発しやすい溶媒が挙げられる。なかでも、エタノール又はメタノールであることが好ましい。
エタノールや、メタノールは沸点が低い上に、表面エネルギーが小さいので、気孔内部に浸透し易い。このため、第1及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体に挟まれたスラリーから、溶媒だけが焼結体に浸透しやすく、薄い界面領域を形成しやすくすることができる。
【0051】
スラリーの濃度は特に限定されないが、スラリーの全重量に対して粉末が60~90重量%であることが好ましい。粉末の含有量が60重量%以上であると接合面が変形してもクッションとして作用できるだけの十分な厚さを確保できる。粉末の含有量が90重量%以下であると過剰に粉末が残らず薄い界面領域を形成する。
薄い界面領域は、寸法精度を高くすることができる上に、強度の低くなりやすい界面領域の体積比が少なくでき、破壊しにくくすることができる。
【0052】
(界面領域形成)
次にスラリー化により得られたスラリーを接合面に塗布する。塗布の方法は特に限定されないが、スラリーが界面全体に行き渡るよう接合面の中心にスラリーを塗り、中心から徐々に広げられるようにしてもよい。これにより界面領域を形成することができる。
【0053】
(圧着)
塗布したスラリーを界面領域全体に気泡が残らないように圧着する。気泡が残らないよう接合面の中心部に塗布したスラリーを順に全体に広げるように徐々に圧力を加える。中心部に塗布されたスラリーは、気泡を含んでおらず、そのまま全体に広げることによって気泡がスラリー内部に取り込まれることなく界面領域全体に広げることができる。
圧着は、単純に圧力を加えるだけでもよいが、焼結体を揺動させたり回転させたりすることによりスラリーを行き渡らせてもよい。
【0054】
(乾燥)
接合面(界面領域)にスラリーが行き渡ったあと、溶媒を乾燥させる。溶媒は、接合面の隙間から少しずつ拡散して乾燥させてもよいが、オキシフッ化イットリウム焼結体との濡れ性の良い溶媒を用いることによって、接合面方向の溶媒の拡散に加え、焼結体の開気孔を伝播して接合面と直行する方向への拡散ができるので、外表面に近い側、中心部のいずれでも速やかに乾燥させることができる。
乾燥では、界面中心のスラリーで気泡を発生させると接合力が低下してしまうので、溶媒の沸点以下の温度で0.1時間以上保持し十分に溶媒を除去することが望ましい。その後、温度を溶媒の沸点以上にさらに上げ溶媒を完全に除去してもよいし、一旦温度を下げたのち、次の焼結の段階で溶媒を完全に除去してもよい。
乾燥の望ましい温度は、特に限定されないが、例えばエタノールを使用した場合、沸点以下の保持は、0~50℃、0.1~5時間、沸点以上の保持は、80~200℃、0.1~5時間が望ましい。
【0055】
(焼結)
2つの焼結体の界面でスラリーを乾燥させたのち、焼結する。焼結の雰囲気は、不活性雰囲気であることが好ましく、温度は700~1200℃であることが好ましい。焼結の温度が700℃以上であると、スラリーとして供給したオキシフッ化イットリウムの粉末の焼結を進行させ十分な強度で結合させることができる。焼結の温度が1200℃以下であると、2つの焼結体の軟化を防止でき、もともとの焼結体の変形を防止し、高い寸法精度のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体を得ることができる。なお、スラリーとして供給されるオキシフッ化イットリウムの粉末の方がオキシフッ化イットリウム焼結体よりもフッ素含有量が多いので、低い温度で軟化しやすく低温で焼結が進行しやすい。
【0056】
以上のプロセスで得られたオキシフッ化イットリウム焼結体は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体が第1領域、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体が第2領域、接合面に塗工されたオキシフッ化イットリウムの粉末が界面領域となる。
オキシフッ化イットリウムの粉末は、焼結体の組織より細かな粒子径のものを使用しているので、界面領域の組織は第1領域及び第2領域よりも細かくなる。また、焼結が進行しないよう第1の領域および第2の領域よりも低い温度で接合することにより、緻密化しにくく、第1領域及び第2領域よりも気孔率が高くなる。
接合面に塗工されたオキシフッ化イットリウムの粉末のフッ素含有量(界面領域のフッ素含有量)は、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体のフッ素含有量よりも多いので、接合工程でフッ素の拡散は徐々に起こるもののオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体外部にフッ素が散逸されにくく、界面領域のフッ素含有量の多い接合体が得られる。なお、焼結の時間を長くしたり、スラリーの厚さを薄くすることによって界面領域のフッ素含有量が第1の領域及び第2領域と同等になるケースがあるものの、この場合であっても界面領域は、第1領域及び第2領域よりも結晶化が進行しにくく、気孔率は高くなる。
【0057】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、スラリー化せずに、粉末を焼結体の間に挟んで接合する。
第2実施形態のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体は、
図2に示すフローチャートによって得られる。
図2は、本発明のオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の製造方法の第2実施形態を示すフローチャートである。
図2に示すように、第2実施形態では、接合面調整、原料調整、界面領域形成、圧着及び焼結を有する。
【0058】
第2実施形態では、接合面調整、原料調整までの工程は第1実施形態と同様に行い、オキシフッ化イットリウムの粉末をスラリー化せずに接合する。第1実施形態とはスラリー化、乾燥がない点で異なる。これに伴って界面領域形成以降が第1実施形態とは一部異なるが概ね同様に行うことができる。
【0059】
(界面領域形成)
第1実施形態と同様に得られたオキシフッ化イットリウムの粉末をスラリー化せずにそのまま接合面に塗布する。湿式ではなく乾式であるので圧着時の流動がほとんど期待できないため接合面に均等な厚さとなるようにオキシフッ化イットリウムの粉末を散布する。
【0060】
(圧着)
圧着では、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体と第2のオキシフッ化イットリウム焼結体に挟まれたオキシフッ化イットリウムの粉末に圧力を加え、高密度化し、後の焼結を進行させやすくする。本実施形態では乾式であるので一旦圧力を加えても、離れやすいので、治工具などを使用し、クランプしたまま焼結させてもよい。また焼結時も継続して圧力が加わるよう引き続き重りを用いるなどして荷重を加え続け焼結に移行してもよい。
【0061】
(焼結)
第1実施形態と同様に焼結を行う。
【0062】
本実施形態では、乾式で塗布(散布)を行っているので、圧力を加えても接合面からオキシフッ化イットリウムの粉末が流出しにくく、散布された粉末の量がそのまま界面領域(接合層)の厚さになる。このため、均等な厚さで、できるだけ薄く塗布ですることが重要である。
【0063】
本実施形態で得られた接合体は、第1実施形態と同様に、界面領域は第1領域及び第2領域よりも気孔率が高くなる。また、界面領域のフッ素含有量は第1領域及び第2領域のフッ素含有量よりも大きくなる。
なお、本実施形態では、オキシフッ化イットリウムの粉末の流動性がないので、薄い界面領域が得られにくく、フッ素の拡散が起こりにくく界面領域のフッ素含有量は多くなりやすい。
【実施例0064】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0065】
(実施例1)
オキシフッ化イットリウム焼結体(約φ20mm)1枚を準備し、半円形となるように切断し、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を得た。
平均粒子径4μmのY5O4F7の粉末(70重量部%)と、平均粒子径3μmのYF3の粉末(30重量部%)が均一に混合された平均粒子径20μmの顆粒を、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体に均一に散布したのち、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を重ね合わせた後、焼結した。
なお、Y5O4F7及びYF3粉末には、バインダなど他の成分は含んでいない。
焼結は、アルゴン雰囲気で、1000℃で2時間保持することにより焼結した。
【0066】
得られた第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体は、互いに変形することなく接合し、1枚の板(オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体)になっていた。
【0067】
図3は、実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
図3に示したオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体10において、中央の島状の部分が点在する色濃い層状の部分が界面領域1であり、界面領域の上側の淡色の部分が第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)、界面領域の下側の淡色の部分が第2のオキシフッ化イットリウム焼結体3(第2領域)である。また、界面領域1に多く有する空隙は気孔4であり、固定用の樹脂が含浸されている。
第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体3(第2領域)とに挟まれた界面領域1は、焼結後にも境界が明確であった。
【0068】
また、
図4は、実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真における第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)の拡大写真であり、
図5は、実施例1で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真における界面領域の拡大写真である。
図4に示した第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2の拡大写真において、淡色の部分がY
5O
4F
7の組織5を表し、濃色の部分がYF
3の組織6を表し、偏在する空隙が気孔4を表す。
図5に示した界面領域1の拡大写真も同様に、淡色の部分がY
5O
4F
7の組織5を表し、濃色の部分がYF
3の組織6を表し、偏在する空隙が気孔4を表す。
図4及び
図5に示すように、界面領域1では、小さいYF
3の組織6が多数偏在しているため、1つ1つのY
5O
4F
7の組織5及びYF
3の組織6が小さくなっている。
一方で、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)では、YF
3の組織6が少なく大きいので、Y
5O
4F
7の組織5及びYF
3の組織6が、界面領域1よりも大きい。また、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)の組織は、第1領域の組織と同等の大きさであるので、界面領域の組織は、第2領域の組織よりも細かい。
【0069】
図3~5を用いて、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)、及び、界面領域の気孔率、Y
5O
4F
7とYF
3の合計含有量に対するY
5O
4F
7の含有量の比とYF
3の含有量の比、及び、界面領域の厚さを測定した。
また、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)のYF
3の含有量の比に対する界面領域のYF
3の含有量の比の値を算出した。
これらを表1に示した。なお、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)の気孔率、Y
5O
4F
7とYF
3の合計含有量に対するY
5O
4F
7の含有量の比とYF
3の含有量の比は、もともと同一の材料であって、同一プロセスを経ているので第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)と同じであり、表1では省略した。
【0070】
(実施例2)
実施例1と同様に、オキシフッ化イットリウム焼結体(約φ20mm)1枚を準備し、半円形となるように切断し、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を得た。
実施例1と同じY5O4F7の粉末及びYF3の粉末を、をエタノール中で実施例1と同じ割合で混合し、スラリーを得た。
得られたスラリーは、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の中央に塗布し、圧着して過剰なスラリーを接合面の端から押し出した。その後50℃3時間乾燥したのち、アルゴン雰囲気、1000℃で焼結した。
得られた第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体は、変形することなく互いに接合し、1枚の板(オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体)になっていた。
【0071】
図6は、実施例2で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
図6に示したオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体10において、島状の粒子が点在する中央の色濃い層状の部分が界面領域1であり、界面領域の上側の淡色の部分が第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)、界面領域の下側の淡色の部分が第2のオキシフッ化イットリウム焼結体3(第2領域)である。また、色の濃い部分が樹脂埋めの樹脂であり、この部分に気孔4が存在する。
図6に示すように、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体3(第2領域)とに挟まれた界面領域1は、焼結後にも境界が明確であった。
実施例2では、スラリーに使用したY
5O
4F
7と、YF
3の粉末はともに凝集が生じていたので、焼結後の界面領域が明確に識別できる状態になったと考えられる。
【0072】
図6を用いて、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)、及び、界面領域の気孔率、Y
5O
4F
7とYF
3の合計含有量に対するY
5O
4F
7の含有量の比とYF
3の含有量の比、及び、界面領域の厚さを測定した。
また、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)のYF
3の含有量の比に対する界面領域のYF
3の含有量の比の値を算出した。これらは表1に示した。
【0073】
(実施例3)
実施例1と同様に、オキシフッ化イットリウム焼結体(約φ20mm)1枚を準備し、半円形となるように切断し、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体を得た。
Y5O4F7と、YF3の粉末をあらかじめ乳鉢を用いて凝集した粒子を粉砕し、個々の粒子となるまで解砕した。
平均粒子径3μmのY5O4F7の粉末70重量部と、平均粒子径3μmのYF3の粉末30部とを50重量部のエタノール中で混合し、スラリーを得た。
得られたスラリーは、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体の中央に塗布し、圧着し過剰なスラリーを接合面の端から押し出した。その後50℃3時間乾燥したのち、アルゴン雰囲気、1000℃で焼結した。
得られた第1のオキシフッ化イットリウム焼結体及び第2のオキシフッ化イットリウム焼結体は、互いに変形することなく接合し、1枚の板(オキシフッ化イットリウム焼結体の接合体)になっていた。
【0074】
図7は、実施例3で得られたオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体の断面の走査電子顕微鏡写真である。
図7に示したオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体10において、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体2(第1領域)と、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体3(第2領域)とに挟まれた気孔4を多く有する界面領域1は、実施例2と比較して薄くなっており境界が不明瞭であり、界面領域のY
5O
4F
7とYF
3の合計含有量に対するYF
3の含有量の比は中心線における比率で判断した。
実施例3では、スラリーに使用したY
5O
4F
7と、YF
3の粉末はともに凝集が生じなかったので、焼結後の界面領域を薄くすることができたと考えられる。
【0075】
図7を用いて、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)、第2のオキシフッ化イットリウム焼結体(第2領域)、及び、界面領域の気孔率、Y
5O
4F
7とYF
3の合計含有量に対するY
5O
4F
7の含有量の比とYF
3の含有量の比、及び、界面領域の厚さを測定した。
また、第1のオキシフッ化イットリウム焼結体(第1領域)のYF
3の含有量の比に対する界面領域のYF
3の含有量の比の値を算出した。これらは表1に示した。
【0076】
【0077】
表1に示すように、実施例1~3に係るオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体では、界面領域の気孔率が2~60%の範囲内であった。
また、実施例1~3に係るオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体では、界面領域のYF3含有量が第1領域及び第2領域のYF3含有量よりも多かった。
更に、実施例1~3に係るオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体では、界面領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比は、第1領域及び第2領域のY5O4F7とYF3の合計含有量に対するYF3の含有量の比に対して101~150%の範囲内であった。
そのため、実施例1~3に係るオキシフッ化イットリウム焼結体の接合体は、界面領域の密度が十分に小さく、熱応力を好適に分散することができ、かつ、接合強度を十分に備えたものであると推測される。