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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095091
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/06 20060101AFI20230629BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 25/26 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K33/06
A61K9/20
A61K47/02
A61K47/12
A61P1/00
A61P29/00
A61K31/192
A61K31/167
A61K31/522
A61P25/26
A61K31/17
A61P25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210772
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松木 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 里奈
(72)【発明者】
【氏名】志波 徹朗
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC05
4C076DD26B
4C076DD41B
4C076FF06
4C076FF33
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB07
4C086HA05
4C086HA23
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA06
4C086ZA11
4C086ZA66
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206GA02
4C206GA31
4C206HA28
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA06
4C206ZA05
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する錠剤において、保存後の崩壊遅延が抑制された錠剤の提供。
【解決手段】(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲルと、(B)成分:リン酸二水素カリウムと、を含む薬物層を有し、前記(A)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して20質量%以上である、乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。前記薬物層は、(C)成分:ステアリン酸マグネシウムをさらに含むことが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲルと、
(B)成分:リン酸二水素カリウムと、
を含む薬物層を有し、
前記(A)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して20質量%以上である、乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【請求項2】
前記(B)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して2.4質量%以上である、請求項1に記載の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【請求項3】
前記(B)成分/前記(A)成分で表される質量比が0.24~0.34である、請求項1又は2に記載の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【請求項4】
前記薬物層が、(C)成分:ステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【請求項5】
前記(C)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して0.05~2質量%である、請求項4に記載の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【請求項6】
前記薬物層と、前記薬物層以外の任意層とを有する積層錠である、請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する錠剤は、他の薬効成分を用いた錠剤と比較して崩壊性が低下する傾向にあり、特に、経時による(保存後の)崩壊性の低下(崩壊遅延)が生じやすい。
崩壊性を改善する方法として、乾燥水酸化アルミニウムゲルに、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤及び二酸化ケイ素を併用する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-3904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースは崩壊剤として汎用される成分であるものの、乾燥水酸化アルミニウムゲルを高濃度に含む薬物層を有する錠剤においては、保存後の崩壊遅延の抑制効果は必ずしも十分とはいえない。
本発明は、乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する錠剤において、保存後の崩壊遅延が抑制された錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、乾燥水酸化アルミニウムゲルを高濃度(具体的には20質量%以上)含む薬物層を有する錠剤において、薬物層にリン酸二水素カリウムを含有することで、保存後の崩壊遅延が大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:乾燥水酸化アルミニウムゲルと、
(B)成分:リン酸二水素カリウムと、
を含む薬物層を有し、
前記(A)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して20質量%以上である、乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
[2] 前記(B)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して2.4質量%以上である、前記[1]の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
[3] 前記(B)成分/前記(A)成分で表される質量比が0.24~0.34である、前記[1]又は[2]の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
[4] 前記薬物層が、(C)成分:ステアリン酸マグネシウムをさらに含む、前記[1]~[3]のいずれかの乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
[5] 前記(C)成分の含有割合が、前記薬物層の総質量に対して0.05~2質量%である、前記[4]の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
[6] 前記薬物層と、前記薬物層以外の任意層とを有する積層錠である、前記[1]~[5]のいずれかの乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乾燥水酸化アルミニウムゲルを含有する錠剤において、保存後の崩壊遅延が抑制された錠剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の乾燥水酸化アルミニウムゲル含有錠剤(以下、単に「錠剤」ともいう。)は、以下に示す(A)成分及び(B)成分を含む薬物層を有する。
薬物層は、以下に示す(C)成分をさらに含むことが好ましい。
【0009】
<(A)成分>
(A)成分は、乾燥水酸化アルミニウムゲルである。
(A)成分は、制酸剤としての役割を果たす成分であり、胃粘膜を保護する効果がある。
乾燥水酸化アルミニウムゲルには、結合水等の水が保持されていてもよい。
【0010】
(A)成分の中位径は、5~600μmが好ましく、10~350μmがより好ましい。(A)成分の中位径が上記範囲内であれば、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。
なお、本明細書において、「中位径」とは、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。
粒子径は、体積平均粒子径を意味し、例えば、レーザー回折・散乱粒度分布測定装置(例えばBECKMAN COULTER社製、製品名「LS13 320」)を用いて測定できる。
【0011】
1錠当たりの(A)成分の含有量は、10~400mgが好ましく、15~200mgがより好ましく、25~100mgがさらに好ましい。1錠当たりの(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、制酸剤としての効果が十分に得られる。1錠当たりの(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(A)成分に起因する崩壊遅延が起こりにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
なお、本発明において、(A)成分の質量は、無水物換算とする。
【0012】
薬物層中の(A)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して20質量%以上であり、23~90質量%が好ましく、24~62質量%がより好ましく、25~38質量%がさらに好ましい。薬物層中の(A)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、制酸剤としての効果が十分に得られる。薬物層中の(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、(A)成分に起因する崩壊遅延が起こりにくくなる。加えて、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0013】
1回当たりの(A)成分の服用量は、30~1200mgが好ましく、45~600mgがより好ましく、75~300mgがさらに好ましい。1回当たりの(A)成分の服用量が上記下限値以上であれば、制酸剤としての効果が十分に得られる。1回当たりの(A)成分の服用量が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が高まる。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、リン酸二水素カリウムである。
(B)成分には、錠剤を保存した後の崩壊遅延を抑制する効果がある。
【0015】
(B)成分の中位径は、5~850μmが好ましく、7~700μmがより好ましい。(B)成分の中位径が上記範囲内であれば、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。
【0016】
1錠当たりの(B)成分の含有量は、3~70mgが好ましく、5~50mgがより好ましく、8~25mgがさらに好ましい。1錠当たりの(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、保存後の崩壊遅延をより抑制できる。1錠当たりの(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、錠剤の硬度が高まり、外観も良好となる。
【0017】
薬物層中の(B)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して2.4質量%以上が好ましく、2.4~17質量%がより好ましく、6~14質量%がさらに好ましい。薬物層中の(B)成分の含有割合が上記範囲内であれば、胃内での(A)成分の不溶解物の割合が少なくなり、制酸効果が速やかに発揮されやすくなる。特に、薬物層中の(B)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、保存後の崩壊遅延をより抑制できる。薬物層中の(B)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤の硬度が高まる。
【0018】
薬物層中における、(B)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「B/A比」ともいう。)は0.03~0.71が好ましく、0.24~0.34がより好ましい。B/A比が上記範囲内であれば、胃内での(A)成分の不溶解物の割合が少なくなる。特に、B/A比が上記下限値以上であれば、保存後の崩壊遅延をより抑制でき、B/A比が上記上限値以下であれば、錠剤の硬度が高まる。
【0019】
<(C)成分>
(C)成分は、ステアリン酸マグネシウムである。
(C)成分には、錠剤を保存した後の崩壊遅延を抑制する効果がある。
【0020】
(C)成分の中位径は、1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。(C)成分の中位径が上記範囲内であれば、製造性がより良好となり、後述の粉体混合物のハンドリングが容易になる。
【0021】
1錠当たりの(C)成分の含有量は、0.03~12mgが好ましく、0.06~9mgがより好ましく、0.14~5mgがさらに好ましい。1錠当たりの(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、保存後の崩壊遅延をより抑制でき、製造装置への付着も抑制できる。1錠当たりの(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、錠剤の硬度が高まる。
【0022】
薬物層中の(C)成分の含有割合は、薬物層の総質量に対して0.05~2質量%が好ましく、0.2~1質量%がより好ましい。薬物層中の(C)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、保存後の崩壊遅延をより抑制できる。加えて、錠剤の製造時に装置への粉体混合物の付着を抑制できる。薬物層中の(C)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤の硬度が高まる。
【0023】
<任意成分>
錠剤には、本発明の効果等を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の成分(任意成分)を含有してもよい。
任意成分としては、(A)成分以外の生理活性成分(以下、「他の生理活性成分」ともいう。)、(B)成分及び(C)成分以外の添加剤(以下、「他の添加剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0024】
他の生理活性成分としては、例えばイブプロフェン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ロキソプロフェンナトリウム、アセトアミノフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブフェキサマック、ジクロフェナック、アルクロフェナック、エトドラック、フルルビプロフェン、メフェナミック、メクロフェナミック、ピロキシカム等の非ステロイド抗炎症剤;ニトラゼパム、トリアゾラム、フェノバルビタ-ル、アミバルビタ-ル、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等の催眠・鎮静剤;フェニトイン、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン、バルプロ酸等の抗てんかん剤;塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等の鎮うん剤;ハロペリドール、クロルジアゼポキシド、ジアゼバム、スルピリド等の精神神経用剤;アトロピン等の鎮けい剤;ジゴキシン等の強心剤;ピンドロール、ジソピラミド等の不整脈剤;ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等の利尿剤;塩酸プラゾシン等の抗高血圧剤;硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ジピリダモール等の冠血管拡張剤;ノスカピン、ツロプテロール、トラニラスト等の鎮咳剤;塩酸ブロムヘキシン等の去痰剤;エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、グリセオフルビン等の抗生物質;フマル酸クレマスチン等の抗ヒスタミン剤;安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮成分;デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、酢酸クロルマジノン等のステロイド剤;ビタミンA類、葉酸(ビタミンM類)等のビタミン剤;ファモチジン、メトクロプラミド、オメプラゾール、トレピブトン、スクラルファート等の消化器系疾患治療剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の(A)成分以外の制酸剤(以下、「他の制酸剤」ともいう。);クロフィブラート、メルカプトプリン、メトトレキサート、メシル酸ジヒドロエルゴタミン等が挙げられる。
他の生理活性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
他の添加剤としては、例えば崩壊剤、(B)成分以外の賦形剤(以下、「他の賦形剤」ともいう。)、結合剤、香料、(C)成分以外の滑沢剤(以下、「他の滑沢剤」ともいう。)、甘味剤、酸味剤等が挙げられる。
【0026】
崩壊剤としては、例えばカルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC))、クロスポビドン等が挙げられる。
他の賦形剤としては、例えば糖類、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、L-システイン等が挙げられる。糖類として具体的には、単糖類(キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース、異性化乳糖、その他各種オリゴ糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
【0027】
結合剤としては、例えばデンプン、可溶性デンプン、デキストリン、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ゼラチン、トラガントガム、ローカストビーンガム、カゼイン等の天然高分子;ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチル化デンプンナトリウム、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、部分けん化酢酸ビニルとビニルエーテルの共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びそのエステル又は塩の重合体若しくは共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)等の合成高分子等が挙げられる。
【0028】
香料としては、例えばメントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
他の滑沢剤としては、例えばステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等が挙げられる。
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース、マンニトール、エリスリトール等が挙げられる。
酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びこれらの塩等が挙げられる。
他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
錠剤が薬物層中に任意成分を含有する場合、任意成分の含有割合は、薬物層中の総質量に対して10~77.6質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましい。任意成分の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤の成形性、崩壊性を向上しやすい。任意成分の含有割合が上記上限値以下であれば、保存後の崩壊遅延効果がより発揮されやすい。
【0030】
また、錠剤が任意成分を含有する場合、任意成分の含有割合は、錠剤の総質量に対して10~90質量%が好ましく、20~85質量%がより好ましく、30~80質量%がさらに好ましい。任意成分の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤の成形性、崩壊性を向上しやすい。任意成分の含有割合が上記上限値以下であれば、保存後の崩壊遅延効果がより発揮されやすい。
【0031】
<錠剤の形態>
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から錠剤の径φとして5~14mmが好ましく、6~13mmがより好ましく、7~12mmがさらに好ましい。また1錠当たりの錠剤質量は、150~550mgが好ましい。
また、錠剤の形状としては特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。
【0032】
錠剤は、単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよい。
錠剤が単層錠の場合、錠剤は、上述した(A)成分及び(B)成分と、必要に応じて(C)成分及び任意成分の1つ以上とを含む薬物層で構成される。一方、錠剤が積層錠の場合、錠剤は、前記薬物層と、薬物層以外の層(任意層)とで構成される。
なお、錠剤が積層錠の場合、層の数は2層であってもよいし、3層以上であってもよい。本明細書において、2層の積層錠を特に「2層錠」ともいい、3層の積層錠を特に「3層錠」ともいう。
また、錠剤が積層錠の場合、任意層は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれか1つ以上を含んでいてもよいし、いずれも含まなくてもよい。任意層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有割合等は、錠剤1錠当たりのこれらの成分の服用量等を勘案して適宜、選択することができる。また、上述した任意成分は、薬物層のみに含まれていてもよいし、任意層のみに含まれていてもよいし、薬物層及び任意層の両方に含まれていてもよい。錠剤が単層錠の場合、任意成分は薬物層に含まれる。なお、任意成分のうち、(A)成分との相互作用により経時で含有量が低下する成分(例えば、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン等)は、任意層に含まれることが好ましい。
【0033】
<製造方法>
本発明の錠剤は、薬物層を構成する成分を含む粉体混合物を打錠成形して薬物層を形成することで得られる。このようにして得られる錠剤は、少なくとも(A)成分及び(B)成分が同一層に存在する。
以下、本発明の錠剤の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、(A)成分及び(B)成分を含む粉体混合物又はその造粒物を打錠して薬物層を形成する打錠工程を有する。
【0034】
粉体混合物は、(A)成分及び(B)成分と、必要に応じて(C)成分及び任意成分の1つ以上とを混合することで得られる。各成分を混合する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
混合に使用する装置としては、例えばボーレコンテナミキサー(株式会社広島メタル&マシナリー製)、V型混合機(株式会社ダルトン製)、スパルタンミキサー(株式会社ダルトン製)、リボンミキサー(株式会社ダルトン製)等が挙げられる。
【0035】
なお、粉体混合物を調製する際、各成分は公知の製造方法により製造したものを用いてもよいし、市販のものを用いてもよい。
また、各成分は、原末をそのまま用いてもよいし、所望の中位径となるように混合前に原末を粉砕して用いてもよい。原末を粉砕する際、1種類の成分の原末を単独で粉砕してもよいし、他の成分の原末と共に粉砕して用いてもよい。
原末の粉砕に使用する装置としては、例えばコーミル、ピンミル等の粉砕機が挙げられる。
【0036】
また、各成分は、流動性や混合均一性を改善する目的で、混合前に原末を造粒して用いてもよい。また、各成分を混合して得られる粉体混合物を造粒してもよい。以下の明細書において、原末又は粉体混合物を造粒して得られるものを「造粒物」又は「造粒顆粒」ともいう。
原末又は粉体混合物を造粒する場合、造粒方法としては公知の造粒方法を採用できる。
造粒方法としては、例えばフローコーター(フロイント産業株式会社製)等の流動層造粒機を用いた流動層造粒、バーチカルグラニュレーター(株式会社パウレック製)等の攪拌造粒機を用いた攪拌造粒、ローラーコンパクター(フロイント・ターボ株式会社製)等の圧縮造粒機を用いた乾式造粒等が挙げられる。これらの中でも、薬物の安定性の観点から、水等の溶媒を使用しない乾式造粒が好ましい。
造粒条件は、造粒方法に応じて適宜選定できる。例えば、乾式造粒にて造粒を行う場合、ロール圧力は適宜選定されるが、3~12MPaが好ましく、粉体供給スクリュー回転速度は20~100rpmが好ましい。ローラー圧縮により得られたフレークを、解砕・整粒機等を用いて、解砕・整粒し、目的とする平均粒子径の乾式造粒顆粒を得ることができる。また、乾式造粒にて造粒を行う場合、ローラーを冷水等により冷却してもよい。ローラーの冷却を行うことで、ロール圧縮後のフレーク温度上昇に伴い生じる造粒顆粒や錠剤の物性変化を抑制することができる。また、乾式造粒にて造粒を行う場合、原末又は粉体混合物は、乾式造粒工程の直前まで混合工程を行ってもよい。乾式造粒工程の直前まで混合工程を行うことで、ローラー部に供給される粉体量が一定になり、フレークや造粒顆粒の物性がより均一にすることができる。なお、上記の乾式造粒工程の直前とは、少なくとも5分以内を意味し、3分以内がより好ましい。
造粒顆粒(造粒物)の平均粒子径は製造性に問題がない範囲で任意に設定できるが、例えば粉体混合物を乾式造粒して得られる乾式造粒顆粒の平均粒子径は、45~900μmが好ましく、150~850μmがより好ましく、250~800μmがさらに好ましい。乾式造粒顆粒の粒子径が上記下限値以上であれば、(A)成分に起因する打錠時に充填不良や付着等の障害を抑制できる。
なお、造粒顆粒の平均粒子径は個数平均径を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばBECKMAN COULTER社製、製品名「LS13 320」)を使用して個数%(メディアン径)により算出することができる。
【0037】
粉体混合物又はその造粒物を打錠する方法としては、例えば臼と杵とを備えた打錠機を用いて打錠する方法が挙げられる。
打錠機としては、ロータリー式の打錠機(例えば、株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」;株式会社畑鐵工所製、製品名「L-41型」)が挙げられるが、高い生産効率を有するロータリー式の打錠機(例えば、株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」)が好ましい。
【0038】
打錠条件としては特に制限されず、錠剤に求める硬度等を勘案して適宜決定される。
ロータリー式の打錠機は、回転盤を備える。回転盤の回転速度は適宜調整可能だが、10~100rpmが好ましく、20~60rpmがより好ましい。回転盤の回転速度が上記下限値以上であれば、生産効率を高められる。回転盤の回転速度が上記上限値以下であれば、臼への粉体混合物又はその造粒物の充填量が安定する。
【0039】
単層錠を製造する場合、粉体混合物又はその造粒物を臼に充填して打錠を行うが、打錠を行う際は、予圧で打錠した後に、本圧で打錠することが好ましい。以下の明細書において、予圧で打錠する工程を「予圧工程」といい、本圧で打錠する工程を「本圧工程」ともいう。すなわち、打錠工程は、予圧工程と本圧工程とを有することが好ましい。
予圧は10kN以下が好ましく、0.1~8kNがより好ましい。予圧を上記範囲内とすることでキャッピングを抑制できる。本圧は6~20kNが好ましく、8~14kNが好ましい。本圧を上記下限値以上とすることで十分な硬度が得られ、上記上限値以下とすることで錠剤の崩壊性が向上する。
【0040】
2層錠を製造する場合、薬物層を構成する成分を含む粉体混合物(以下、「第一の粉体混合物」ともいう。)又はその造粒物は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分を含む粉体混合物(以下、「第二の粉体混合物」ともいう。)又はその造粒物よりも後に充填されてもよい。任意層に含有される成分の安定性の観点から、第二の粉体混合物又はその造粒物を臼に充填した後に、第一の粉体混合物又はその造粒物を充填することが好ましい。
打錠を行う際は、1つ目の粉体混合物(例えば第二の粉体混合物)又はその造粒物を臼に充填し、その上に2つ目の粉体混合物(例えば第一の粉体混合物)又はその造粒物を充填した後に予圧工程及び本圧工程を順次行ってもよい。また、1つ目の粉体混合物又はその造粒物を臼に充填した後に1度目の予圧工程(第一の予圧工程)を行い、次いで2つ目の粉体混合物又はその造粒物を臼に充填した後に必要に応じて2度目の予圧工程(第二の予圧工程)を行い、さらに本圧工程を行ってもよい。打錠障害をより抑制する観点では、2度目の予圧工程を行うことが好ましい。
予圧は10kN以下が好ましく、0.1~8kNがより好ましい。予圧を上記範囲内とすることでキャッピングを抑制できる。本圧は6~20kNが好ましく、8~14kNが好ましい。本圧を上記下限値以上とすることで十分な硬度が得られ、上記上限値以下とすることで錠剤の崩壊性が向上する。
【0041】
3層錠を製造する場合、例えば、第一の粉体混合物又はその造粒物を二つに分け、第一の粉体混合物又はその造粒物、第二の粉体混合物又はその造粒物、第一の粉体混合物又はその造粒物の順に臼に充填した後に、打錠してもよく、第二の粉体混合物又はその造粒物を二つに分け、第二の粉体混合物又はその造粒物、第一の粉体混合物又はその造粒物、第二の粉体混合物又はその造粒物の順に臼に充填した後に、打錠してもよい。打錠障害をより抑止する観点では、第一の粉体混合物又はその造粒物、第二の粉体混合物又はその造粒物、第一の粉体混合物又はその造粒物の順に臼に充填することが好ましい。
また、任意層を構成する成分を含み第二の粉体混合物と組成が異なる粉体混合物(以下、「第三の粉体混合物」ともいう。)又はその造粒物を調製し、各粉体混合物又はその造粒物を任意の順に臼に充填した後に、打錠してもよい。打錠障害をより抑止する観点及び任意層に含有される成分の安定性の観点では、第一の粉体混合物又はその造粒物を最後に臼に充填することが好ましい。なお、予圧工程及び本圧工程については、上記2層錠を製造する場合と同様である。
【0042】
打錠工程では、(C)成分及び他の滑沢剤の少なくとも一方(以下、(C)成分及び他の滑沢剤を総称して「滑沢剤」ともいう。)を外部滑沢法により添加してもよい。
外部滑沢法は、滑沢剤を打錠機の杵及び臼に噴霧(塗布)して粉体混合物又はその造粒物を打錠することで、杵及び臼と接触する錠剤の表面に滑沢剤を添加する方法である。
滑沢剤の杵及び臼への噴霧(塗布)は、従来の公知の方法に基づき、あるいは市販の機械を用いて行うことができる。市販の機械としては、例えば外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)、外部滑沢装置EXTALUB(株式会社畑鐵工所製)等が挙げられる。
外部滑沢法によって添加される滑沢剤の量は、錠剤の崩壊性の観点から、粉体混合物又はその造粒物の総質量に対して1質量%未満が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
なお、外部滑沢法により、薬物層の表面に付着した滑沢剤も薬物層の一部とみなす。単層錠の場合、錠剤の表面に付着した滑沢剤の全てが薬物層の一部とみなされる。2層錠の場合、例えば第二の粉体混合物又はその造粒物を充填した後に第一の予圧工程を行った場合は、任意層の表面に付着した滑沢剤の全てが任意層の一部とみなされる。1つ目の粉体混合物又はその造粒物を臼に充填し、予圧工程を行わずにその上に2つ目の粉体混合物又はその造粒物を充填した後に予圧工程及び本圧工程を行う場合、外部滑沢法により添加された滑沢剤の半分が薬物層の一部とみなされ、残りの半分が任意層の一部とみなされる。3層錠の場合は、2層錠と同様である。ただし、外部滑沢法により薬物層の表面に付着する滑沢剤は、噴霧量の総質量に対して約1質量%であるため、噴霧量が1錠あたり3mg未満の場合、外部滑沢法によって噴霧された滑沢剤が錠剤の表面に付着する量は極僅かである。
【0043】
得られた錠剤は、服用性の向上等を目的として、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。
なお、本明細書において、コーティング前の錠剤を「素錠」ともいう。また、コーティング後の錠剤を「コーティング錠」ともいう。
また、本明細書において、コーティング処理により薬物層の表面に形成されたコーティング層は、薬物層の一部とみなす。
【0044】
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも被膜形成剤、可塑剤及び着色剤の1つ以上を含有することが好ましく、少なくとも被膜形成剤を含有することがより好ましい。
コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
被膜形成剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばマクロゴール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、カルナウバロウ等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
着色剤としては、例えば酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキ等が挙げられる。
被膜形成剤、可塑剤及び着色剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、コーティング剤として、これらの成分が混合された市販のプレミックス品を用いてもよく、例えば、日本カラコン合同会社製の商品名「オパドライ」等が挙げられる。
これらの中でも、コーティング剤としてはポリビニルアルコールが好ましく、市販品としては、例えば日本カラコン合同会社製の商品名「オパドライAMBII」が挙げられる。
【0047】
コーティング錠におけるコーティング剤の使用量(被覆量)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定される。例えば、コーティングされていない錠剤(素錠)100質量部に対し、0.1~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。コーティング剤の使用量が、上記下限値以上であれば錠剤の服用性を良好に維持でき、上記上限値以下であれば崩壊性を良好に維持できる。
【0048】
素錠をコーティング処理する方法特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。コーティング処理に使用する装置としては、例えばハイコーター(フロイント産業株式会社製)、アクアコーター(フロイント産業株式会社製)等のパン型コーティング装置が挙げられる。
【0049】
<作用効果>
本発明の錠剤は、(A)成分を20質量%以上含む薬物層を有する錠剤において、薬物層に(B)成分を含有しているので、保存後の崩壊遅延を大幅に抑制できる。
【実施例0050】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各例で使用した原料、打錠条件及び評価方法は、以下の通りである。
【0051】
「使用原料」
使用原料として、以下に示す化合物を用いた。
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業株式会社製、商品名「S-100」、中位径60μm。
・リン酸二水素カリウム:太平化学産業株式会社製、商品名「日本薬局方外医薬品規格リン酸二水素カリウム」、中位径640μm。
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、商品名「ステアリン酸マグネシウム」、中位径2μm、植物性。
・イブプロフェン:BASF社製、商品名「イブプロフェン25」。
・アセトアミノフェン:ノバシル社製、商品名「RHODAPAPAP POWDER」。
・無水カフェイン:三菱ケミカルフーズ株式会社製、商品名「日本薬局方無水カフェイン」。
・アリルイソプロピルアセチル尿素:金剛化学株式会社製、商品名「アリプロナール「コンゴ―」粉砕品」。
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、商品名「LH-31」。
・D-マンニトール:ロケットジャパン株式会社製、商品名「ペアリトール50C」。
・軽質無水ケイ酸:富士シリシア株式会社製、商品名「サイリシア350」。
・メチルセルロース:信越化学工業株式会社製、商品名「メトローズ SM-4」。
・塩化カリウム:高杉製薬株式会社製、商品名「塩化カリウム」。
・リン酸二水素ナトリウム:太平化学産業株式会社製、商品名「リン酸二水素ナトリウム(無水)」。
【0052】
[測定・評価方法]
<崩壊遅延時間の測定>
錠剤をPTP(Press Through Package)包装材料(住友ベークライト株式会社製、商品名「VSL-4610N」)を用いてPTP包装した。PTP包装が施された錠剤を50℃、75%RHで6週間保存した。
保存前と保存後の錠剤6錠について、それぞれ第十七改日本薬局方に収載された錠剤の崩壊試験法に準じ、崩壊試験液として水を用いて崩壊時間を測定し、その平均値を求め、下記式(1)より崩壊遅延時間を算出した。
崩壊遅延時間[秒]=保存後の崩壊時間[秒]-保存前の崩壊時間[秒] ・・・(1)
【0053】
<不溶解物の評価>
溶出試験器のベッセルに、人工胃液として日本薬局方に規定される溶出試験の溶出試験液第1液(pH1.2)を900mL入れ、錠剤20錠を投入した後、パドル法に準じて50rpmで5分攪拌した。その後、液面の浮遊物を回収し、日本薬局方に規定される「乾燥水酸化アルミニウムゲル」の項記載の定量法に準じて酸化アルミニウムの量を定量した。酸化アルミニウムの量から乾燥水酸化アルミニウムゲルの量に換算し、下記式(2)より人工胃液に対する乾燥水酸化アルミニウムゲルの不溶解物の割合を算出した。乾燥水酸化アルミニウムゲルは制酸剤であり、不溶解物の割合が多くなると、制酸剤としての機能が発揮されにくくなる。なお、乾燥水酸化アルミニウムゲルの量は無水物換算とした。不溶解物の割合が、4%未満の場合を「〇」、4%以上12%未満の場合を「△」、12%以上の場合を「×」と評価した。
不溶解物の割合[%]=(定量により得られた浮遊物中に含まれる乾燥水酸化アルミニウムゲルの量/20錠中の乾燥水酸化アルミニウムゲルの含有量)×100 ・・・(2)
【0054】
[実施例1~11、比較例1~3]
(B)成分を粉砕機(株式会社パウレック製、製品名「コロプレックス160Z」で中位径が10μmになるまで粉砕した後、1錠当たりの組成が表1~3に示す含有組成となるように、(A)成分と、(C)成分と、任意成分とを混合し第一の粉体混合物を得た。得られた第一の粉体混合物を圧縮造粒機(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP90×30S」)に投入して乾式造粒し、平均粒子径が700~850μmである造粒物(AL造粒顆粒)を得た。だたし、比較例1~3の場合は、(B)成分を用いなかった。
第一の粉体混合物の造粒物(AL造粒顆粒)をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」)の臼に充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(予圧工程)、打錠直後の崩壊時間が150~170秒となるように本圧を調整して打錠し(本圧工程)、薬物層からなる錠剤(単層錠)を得た。なお、打錠には、実施例1~6、9~11、比較例1~3では直径φが8.5mmの臼及び杵を用い、実施例7、8では直径φが10.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(直径φが8.5mmの場合:R1=3.4mm、R2=10.0mm、直径φが10.0mmの場合:R1=4.0mm、R2=11.5mm)を用いた。
得られた錠剤について、崩壊遅延時間を測定し、不溶解物を評価した。結果を表1~3に示す。
【0055】
[実施例12~22、比較例4]
(B)成分を粉砕機(株式会社パウレック製、製品名「コロプレックス160Z」で中位径が10μmになるまで粉砕した後、1錠当たりの組成が表4、5に示す含有組成となるように、(A)成分と、(C)成分と、任意成分とを混合し第一の粉体混合物を得た。得られた第一の粉体混合物を圧縮造粒機(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP90×30S」)に投入して乾式造粒し、平均粒子径が700~850μmである造粒物(AL造粒顆粒)を得た。だたし、比較例4の場合は、(B)成分を用いなかった。
別途、1錠当たりの組成が表4、5に示す含有組成となるように、(C)成分、イブプロフェン、アセトアミノフェン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、軽質無水ケイ酸を混合し、第二の粉体混合物を得た。得られた第二の粉体混合物を圧縮造粒機(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP90×30S」)に投入して乾式造粒し、平均粒子径が550~850μmである造粒物(IBP造粒顆粒)を得た。
第二の粉体混合物の造粒物(IBP造粒顆粒)をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」)の臼に充填し、予圧1kNにて打錠した後(第一の予圧工程)、第一の粉体混合物の造粒物(AL造粒顆粒)をさらに充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(第二の予圧工程)、打錠直後の崩壊時間が150~170秒となるように本圧を調整して打錠し(本圧工程)、薬物層及び任意層を有する錠剤(積層錠)を得た。なお、打錠には、実施例12~17、20~22、比較例4では直径φが8.5mmの臼及び杵を用い、実施例18、19では直径φが9.5mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(直径φが8.5mmの場合:R1=3.4mm、R2=10.0mm、直径φが9.5mmの場合:R1=3.8mm、R2=10.0mm)を用いた。
得られた錠剤について、崩壊遅延時間を測定し、不溶解物を評価した。結果を表4、5に示す。
【0056】
[処方例1~11]
(B)成分を粉砕機(株式会社パウレック製、製品名「コロプレックス160Z」で中位径が10μmになるまで粉砕した後、1錠当たりの組成が表6、7に示す含有組成となるように、(A)成分と、(C)成分と、任意成分とを混合し第一の粉体混合物を得た。得られた第一の粉体混合物を圧縮造粒機(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP90×30S」)に投入して乾式造粒し、平均粒子径が700~850μmである造粒物(AL造粒顆粒)を得た。
別途、1錠当たりの組成が表6、7に示す含有組成となるように、イブプロフェン、アセトアミノフェン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、軽質無水ケイ酸を混合し、第二の粉体混合物を得た。得られた第二の粉体混合物を圧縮造粒機(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP90×30S」)に投入して乾式造粒し、平均粒子径が550~850μmである造粒物(IBP造粒顆粒)を得た。
第二の粉体混合物の造粒物(IBP造粒顆粒)をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」)の臼に充填し、予圧1kNにて打錠した後(第一の予圧工程)、第一の粉体混合物の造粒物(AL造粒顆粒)をさらに充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(第二の予圧工程)、打錠直後の崩壊時間が150~170秒となるように本圧を調整して打錠し(本圧工程)、薬物層及び任意層を有する錠剤(積層錠)を得た。なお、打錠には、処方例1~3、7~11では直径φが8.5mmの臼及び杵を用い、処方例4~5では直径φが8.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(直径φが8.0mmの場合:R1=3.2mm、R2=9.5mm、直径φが8.5mmの場合:R1=3.4mm、R2=10.0mm)を用いた。
また、IBP造粒顆粒を臼に充填する前に、外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)を用いて、表6、7に示す噴霧量の(C)成分を臼と杵に噴霧した。なお、表6、7に示す噴霧量は、1錠あたりの噴霧量である。
【0057】
別途、日本カラコン合同会社製の商品名「オパドライAMBII」180gを精製水820gに溶解、懸濁させコーティング液を調製した。
先に得られた錠剤を素錠として用い、コーティング機(フロイント産業株式会社製、製品名「ハイコーターHCT-30N」)を用いて、素錠の総質量に対して固形分換算で約1~2質量%のコーティング液を素錠に噴霧し、コーティング錠を得た。
なお、外部滑沢法によって添加された(C)成分の噴霧量が1錠あたり最大0.14mgであるため、表6、7に記載した1錠合計[mg]には、外部滑沢法によって添加された(C)成分の量は含めていない。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
表中、「B/A比」は、(B)成分/(A)成分で表される質量比である。
表1~5の結果より、(A)成分を20質量%以上含む薬物層を有する錠剤において、薬物層に(B)成分が含まれている実施例1~22で得られた錠剤は、単層錠であっても積層錠であっても、保存後の崩壊遅延が抑制されていた。また、人工胃液に対する(A)成分の不溶解物の割合も少なかった。
一方、薬物層が(B)成分を含まない比較例1~4で得られた錠剤は、保存により顕著な崩壊遅延が発生した。また、人工胃液に対する(A)成分の不溶解物の割合が多かった。