(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095094
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20230629BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230629BHJP
C08K 9/10 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B29D30/06
C08L21/00
C08K9/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210777
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有二
【テーマコード(参考)】
4F215
4J002
【Fターム(参考)】
4F215AB02D
4F215AH20
4F215VD20
4F215VL27
4J002AC001
4J002EA016
4J002FB286
4J002FD140
4J002FD326
4J002GN01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発泡剤を含むゴム組成物を用いるにあたって、スピューによるベントホールの目詰まりを効果的に抑制することを可能にしたタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ外表面を成形する成形面31と、該成形面31に開口するベントホール32とを備えたタイヤ加硫金型10を使用し、該タイヤ加硫金型10の内側に未加硫状態のタイヤTを投入し、該タイヤTを成形面31に向かって加圧しながら加硫することでタイヤTを製造する方法において、タイヤTの少なくとも一部を構成するゴム組成物に加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4以下である発泡剤を配合し、該発泡剤により発泡構造を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ外表面を成形する成形面と、該成形面に開口するベントホールとを備えたタイヤ加硫金型を使用し、該タイヤ加硫金型の内側に未加硫状態のタイヤを投入し、該タイヤを前記成形面に向かって加圧しながら加硫することでタイヤを製造する方法において、
前記タイヤの少なくとも一部を構成するゴム組成物に加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4以下である発泡剤を配合し、該発泡剤により発泡構造を形成することを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤は、加硫中の最高到達温度での蒸気圧が1.4MPaより低いことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記発泡剤は、加硫前の平均粒径が20μm~200μmの範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記加硫中の最高到達温度が150℃~180℃の範囲にあることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントホールを備えたタイヤ加硫金型を用いたタイヤの製造方法に関し、更に詳しくは、発泡剤を含むゴム組成物を用いるにあたって、スピューによるベントホールの目詰まりを効果的に抑制することを可能にしたタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造工程においては、タイヤ加硫金型の内側に未加硫状態のタイヤを投入し、そのタイヤをブラダーにより内側から加圧しながら加熱することにより、タイヤの加硫を行っている。その際、タイヤ加硫金型の成形面と未加硫タイヤとの間にエアが残っていると、その残留エアに起因してタイヤ表面故障が発生する。このようなタイヤ表面故障を防止するために、タイヤ加硫金型には成形面に開口するエア抜き用の多数のベントホールが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、加硫時にベントホール内に形成されたスピュー(髭状のゴム片)の少なくとも一部が離型時にベントホール内に残存し、ベントホールに目詰まりを生じると、次の加硫においてベントホールによるエア抜きを行うことができず、その部分にタイヤ表面故障が生じることになる。また、スピューによるベントホールの目詰まりが発生した場合、ベントホールを掃除するためにタイヤの生産を一時的に停止する必要があり、このことはタイヤの生産性を大幅に低下させる要因となる。
【0004】
ところで、空気入りタイヤにおいて、例えばトレッド部を構成するゴム組成物に発泡剤を配合し、この発泡剤により発泡構造を形成することが提案されている(例えば、特許文献2~4参照)。このような発泡剤を含むゴム組成物は発泡剤を含まない場合に比べて破断強度が低下する。そのため、スピューによるベントホールの目詰まりは発泡剤を含むゴム組成物を用いた場合に顕在化する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-139830号公報
【特許文献2】特許第3542414号公報
【特許文献3】特許第4289508号公報
【特許文献4】特許第6012261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発泡剤を含むゴム組成物を用いるにあたって、スピューによるベントホールの目詰まりを効果的に抑制することを可能にしたタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明のタイヤの製造方法は、タイヤ外表面を成形する成形面と、該成形面に開口するベントホールとを備えたタイヤ加硫金型を使用し、該タイヤ加硫金型の内側に未加硫状態のタイヤを投入し、該タイヤを前記成形面に向かって加圧しながら加硫することでタイヤを製造する方法において、
前記タイヤの少なくとも一部を構成するゴム組成物に加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4以下である発泡剤を配合し、該発泡剤により発泡構造を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、ベントホールを備えたタイヤ加硫金型を用いたタイヤの製造方法について鋭意研究した結果、このようなタイヤ加硫金型を用いて加硫を繰り返し行う場合、ベントホール内に形成されるスピューの先端部付近に汚れが徐々に堆積し、その堆積物に起因してスピューの先端部が破断するという現象を認識した。特に、発泡剤を含むゴム組成物を用いた場合、ベントホール内ではスピューの根元側から先端部側に向かって徐々に圧力が低下し、スピューの先端部は大気圧に近い状態で加熱されるため発泡が顕著に生じることを知見した。そして、スピューの先端部では、ゴムの密度が低下し、破断強度も低下し、このことが汚れの堆積やスピューの破断を生じ易くすることを知見した。本発明者は、このような状況に鑑みて、スピューの先端部におけるゴムの発泡を最小限に抑制することでベントホールの目詰まりを効果的に抑制可能であることを知見し、本発明に至ったのである。
【0009】
即ち、本発明では、タイヤ外表面を成形する成形面と、該成形面に開口するベントホールとを備えたタイヤ加硫金型を用いたタイヤの製造方法において、タイヤの少なくとも一部を構成するゴム組成物に加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4以下、好ましくは1.1以下である発泡剤を配合し、該発泡剤により発泡構造を形成するので、スピューの先端部におけるゴムの発泡を最小限に抑制することができる。そのため、ベントホール内に形成されるスピューの先端部付近に汚れが堆積することを防止し、そのような堆積物に起因するスピューの先端部の破断を防止することができる。これにより、発泡剤を含むゴム組成物を用いるにあたって、スピューによるベントホールの目詰まりを効果的に抑制することができる。その結果、残留エアに起因するタイヤ表面故障を防止すると共に、ベントホールの清掃頻度を低減してタイヤの生産性を改善するという優れた効果を得ることができる。
【0010】
本発明において、発泡剤は、加硫中の最高到達温度での蒸気圧が1.4MPaより低いことが好ましい。これにより、スピューの先端部におけるゴムの発泡を効果的に抑制することができる。
【0011】
発泡剤は、加硫前の平均粒径が20μm~200μmの範囲にあることが好ましい。加硫中の発泡倍率が低い発泡剤を使用するので、初期の平均粒径を比較的大きくすることにより、加硫後の発泡剤の大きさを十分に確保することができる。
【0012】
加硫中の最高到達温度は150℃~180℃の範囲にあることが好ましい。このような加硫中の最高到達温度に鑑みて、加硫中の最高到達温度での発泡倍率が所定の値となる発泡剤を適宜選択することができる。
【0013】
なお、本発明における加硫中の最高到達温度での発泡倍率とは、加硫時の金型内に設定される圧力条件における発泡剤の発泡倍率であり、加硫前の20℃での発泡剤の粒径に対する加硫中の最高到達温度での発泡剤の粒径の比率である。また、加硫中の最高到達温度とは、加硫されるタイヤにおいて測定される最高到達温度である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明で使用されるタイヤ加硫装置を示す子午線断面図である。
【
図2】タイヤ加硫金型のベントホール内に形成されるスピューを示す断面図である。
【
図4】従来のベントホール内に形成されるスピューを示す断面図である。
【
図5】従来のベントホールにおける目詰まりの発生メカニズムを示し、(a)~(c)は各段階でのベントホールの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明で使用されるタイヤ加硫装置を示すものである。
【0016】
図1に示すように、このタイヤ加硫装置は、空気入りタイヤTの外表面を成形するタイヤ加硫金型(以下、「金型」と称す)10と、空気入りタイヤTの内側に挿入される筒状のブラダー20とを備えている。また、このタイヤ加硫装置は、該ブラダー20の内側にスチーム等の加熱加圧媒体を供給するための加熱加圧媒体供給手段(不図示)や、金型10を加熱するための加熱手段(不図示)を備えている。
【0017】
金型10は、空気入りタイヤTのサイドウォール部を成形するための下側サイドプレート11及び上側サイドプレート12と、空気入りタイヤTのビード部を成形するための下側ビードリング13及び上側ビードリング14と、空気入りタイヤTのトレッド部を成形するための複数のセクター15とから構成され、その金型10の内側で空気入りタイヤTを加硫成形するようになっている。なお、金型10の構造は特に限定されるものではなく、図示のようなセクショナルタイプのモールドのほか、二つ割りタイプのモールドを使用することも可能である。
【0018】
ブラダー20は、その下端部が下側ビードリング13と下側クランプリング21との間に把持され、その上端部が上側クランプリング22と補助リング23との間に把持されている。
図1に示すような加硫状態において、ブラダー20は空気入りタイヤTの径方向外側に向かって拡張した状態にあるが、加硫後に空気入りタイヤTを金型10内から取り出す際には上側クランプリング22が上方に移動し、それに伴ってブラダー20が空気入りタイヤTの内側から抜き取られるようになっている。
【0019】
上述したタイヤ加硫装置において、
図1に示すように、金型10は、タイヤ外表面を成形する成形面31と、該成形面31に開口するベントホール32とを備えている。ベントホール32は、一端が成形面31に開口する一方で、他端が金型10の外部に連通している。
図1においては、ベントホール32が金型10を構成するセクター15に形成される構造を描写しているが、ベントホール32は下側サイドプレート11、上側サイドプレート12、下側ビードリング13又は上側ビードリング14に形成することも可能であり、金型10の全体において多数のベントホール32を配設することが可能である。
【0020】
上述したタイヤ加硫装置を用いて空気入りタイヤTを加硫する場合、金型10の内側に未加硫状態の空気入りタイヤTを投入し、その空気入りタイヤTの内側にブラダー20を挿入し、ブラダー20内に加熱加圧媒体を導入する一方で金型10を外側から加熱することにより、空気入りタイヤTを成形面31に向かって加圧しながら該空気入りタイヤTの加硫を行う。
【0021】
このような加硫工程において、金型10の成形面31と未加硫状態の空気入りタイヤTとの間に残留するエアはベントホール32を介して金型10の外部に排出される。そして、空気入りタイヤTを構成する未加硫ゴムがベントホール32内に侵入し、
図2に示すように、ベントホール32内にスピューSが形成される。加硫済の空気入りタイヤTが金型10から取り外される際に、スピューSはベントホール32から引き抜かれる。そして、スピューSは必要に応じて切除される。
【0022】
ここで、
図4及び
図5(a)~(c)を用いて、従来のベントホールにおける目詰まりの発生メカニズムについて詳しく説明する。本発明者の知見によれば、
図4に示すように、従来のベントホール32内では、スピューSの根元側から先端部側に向かって徐々に圧力が低下し、スピューSの先端部は大気圧に近い状態で加熱されるため発泡が生じる。このような発泡はゴム組成物に発泡剤が含まれる場合に顕在化する。その結果、スピューSの先端部では、ゴムの密度が低下し、破断強度も低下し、このことが汚れの堆積やスピューSの破断を生じ易くする要因となる。
【0023】
このような状況において加硫工程を繰り返し行うと、
図5(a)に示すように、金型10のベントホール32内に形成されるスピューSの先端部付近に汚れが堆積し、堆積物Xが徐々に成長する。次いで、
図5(b)に示すように、加硫時にベントホール32内に未加硫ゴムGが進入し、それが堆積物Xを越える位置まで到達する。そして、
図5(c)に示すように、加硫後にスピューSが引き抜かれた際に、堆積物Xと一体化したスピューSの先端部が千切れてベントホール32を閉塞する。
【0024】
そこで、本発明では、タイヤ外表面を成形する成形面31と、該成形面31に開口するベントホール32とを備えたタイヤ加硫金型10を使用し、該タイヤ加硫金型10の内側に未加硫状態の空気入りタイヤTを投入し、該空気入りタイヤTを成形面31に向かって加圧しながら加硫することで空気入りタイヤTを製造する方法において、空気入りタイヤTの少なくとも一部(例えば、トレッド部)を構成するゴム組成物に、加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4以下、好ましくは1.1以下である発泡剤を配合し、該発泡剤により発泡構造を形成するのである。これにより、スピューSの先端部におけるゴムの発泡を最小限に抑制することができる。そのため、ベントホール32内に形成されるスピューSの先端部付近に汚れが堆積することを防止し、その堆積物Xに起因するスピューSの先端部の破断を防止することができる。これにより、発泡剤を含むゴム組成物を用いるにあたって、スピューSによるベントホール32の目詰まりを効果的に抑制することができる。その結果、残留エアに起因するタイヤ表面故障を防止すると共に、ベントホール32の清掃頻度を低減して空気入りタイヤTの生産性を改善することができる。
【0025】
図3は発泡剤の発泡特性を示すものである。
図3において、横軸は温度を示し、縦軸は発泡倍率を示す。
図3に示すように、従来から一般的に使用される発泡剤(破線)は温度の上昇と共に発泡倍率が大きくなり、加硫中の最高到達温度Tmaxにおいては発泡倍率がかなり大きくなっている。一方、本発明で使用される発泡剤(実線)は発泡開始温度が従来よりも遅いものであり、加硫中の最高到達温度Tmaxにおいては発泡倍率が1.4以下、好ましくは1.1以下となっている。このような発泡剤を選択することで、スピューSの先端部におけるゴムの発泡を最小限に抑制するのである。なお、本発明で使用される発泡剤は、加硫中の最高到達温度Tmaxでの発泡倍率が1.01以上であることが望ましい。
【0026】
本発明で使用される発泡剤は、加硫中の最高到達温度Tmaxでの蒸気圧が1.4MPaより低いものであると良い。これにより、スピューSの先端部におけるゴムの発泡を効果的に抑制することができる。なお、本発明で使用される発泡剤は、加硫中の最高到達温度Tmaxでの蒸気圧が0.1MPa以上であることが望ましい。
【0027】
本発明で使用される発泡剤は、加硫前の平均粒径が20μm~200μmの範囲にあると良い。加硫中の発泡倍率が低い発泡剤を使用するので、初期の平均粒径を大きくすることにより、加硫後の発泡剤の大きさを十分に確保することができる。特に、加硫前の平均粒径が40μm~80μmの範囲にあることが望ましい。なお、発泡剤の加硫前の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SYMPATEC社製HEROS&RODOS)を使用して、乾式分散ユニットの分散圧5.0bar、真空度5.0mbarの条件で乾式測定により求められる値である。
【0028】
加硫中の最高到達温度Tmaxは150℃~180℃の範囲に設定されることが一般的である。このような加硫中の最高到達温度Tmaxに鑑みて、加硫中の最高到達温度Tmaxでの発泡倍率が所定の値となる発泡剤を適宜選択することができる。例えば、加硫中の最高到達温度Tmaxが150℃である場合、150℃での発泡倍率が1.4以下、好ましくは1.1以下である発泡剤を使用すれば良い。
【0029】
以下、ゴム組成物に配合される発泡剤について説明する。このような発泡剤としては、熱膨張性のマイクロカプセルを用いることができる。熱膨張性のマイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成を有するものである。未加硫タイヤの加硫時にゴム組成物中のマイクロカプセルが加熱されると、殻材に内包された熱膨張性物質が膨張して殻材の粒径を大きくし、ゴム組成物中に多数の樹脂被覆気泡を形成する。このような発泡剤は、殻材と熱膨張性物質の組合せにより、所望の発泡倍率を発現することができる。発泡剤の配合により、例えば、スタッドレスタイヤにおいては、氷の表面に発生する水膜を効率的に吸収除去すると共に、ミクロなエッジ効果が得られるため、氷上摩擦力を改善することができる。発泡剤の配合量は、ゴム100重量部に対して、例えば1重量部~30重量部の範囲で選択することができる。
【0030】
殻材を形成する熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ニトリル系単量体(I)を主成分とし、分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有する単量体(II)及び2以上の重合性二重結合を有する単量体(III)から共重合することができる。また、膨張特性を調整するために、必要に応じて、共重合可能な単量体(IV)を加えてもよい。
【0031】
ニトリル系単量体(I)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等及びこれらの混合物が例示される。特に、アクリロニトリル及び/ 又はメタクリロニトリルが好ましい。単量体(I)の共重合比は、好ましくは35~95重量%、より好ましくは45~90重量%にすると良い。
【0032】
分子中に不飽和二重結合とカルボキシル基を有する単量体(II)としては、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等及びこれらの混合物が例示される。単量体(II)の共重合比は、好ましくは4~60重量%、より好ましくは10~50重量%にすると良い。
【0033】
2以上の重合性二重結合を有するモノマー(III)としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物、メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、重量平均分子量が200のポリエチレングリコール(PEG#200)ジ(メタ)アクリレート、重量平均分子量が400のポリエチレングリコール(PEG#400)ジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等及びこれらの混合物が例示される。単量体(III)の共重合比は、好ましくは0.05~5重量%、より好ましくは0.2~3重量%にすると良い。
【0034】
共重合可能な単量体(IV)は膨張特性を調整するために追加して共重合しても良く、共重合可能な単量体(IV)としては、例えば、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ) アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレンスルホン酸またはそのナトリウム塩、α-メチルスチレン、クロロスチレンなどスチレン系モノマー、アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミドなどを例示することができる。単量体(IV)は任意成分であり、これを添加するときは、共重合比は、好ましくは0.05~20重量%、より好ましくは1~15重量%にすると良い。
【0035】
殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化又は膨張する特性を有するものである。このような熱膨張性物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2-メチルペンタン、2-メチルヘキサン、2,2,4-トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n-ブタン、n-プロパン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組合わせて使用しても良い。
【実施例0036】
タイヤ外表面を成形する成形面と、該成形面に開口するベントホールとを備えたタイヤ加硫金型を使用し、該タイヤ加硫金型の内側に未加硫状態の空気入りタイヤを投入し、該空気入りタイヤを成形面に向かって加圧しながら加硫することにより、空気入りタイヤを製造するにあたって、空気入りタイヤのトレッド部を構成するゴム組成物に配合される発泡剤だけを異ならせて空気入りタイヤを製造した。なお、加硫中の最高到達温度は160℃とした。
【0037】
従来例では、加硫中の最高到達温度での発泡倍率が2.0である発泡剤(加硫前の平均粒径:20μm)を使用した。実施例1では、加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.4である発泡剤(加硫前の平均粒径:30μm)を使用した。実施例2では、加硫中の最高到達温度での発泡倍率が1.1である発泡剤(加硫前の平均粒径:40μm)を使用した。
【0038】
上述したタイヤ加硫金型を用いて空気入りタイヤの加硫を繰り返し行い、ベントホールの目詰まりが発生するまでの加硫回数を調べ、その結果を表1に示した。加硫回数は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどベントホールの目詰まりが少ないことを意味する。
【0039】
【0040】
表1から判るように、実施例1,2の方法では、従来例との対比において、スピューによるベントホールの目詰まりを効果的に抑制することができた。