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特開2023-95108パルサリング及びパルサリング製造方法
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  • 特開-パルサリング及びパルサリング製造方法 図1
  • 特開-パルサリング及びパルサリング製造方法 図2
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  • 特開-パルサリング及びパルサリング製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095108
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】パルサリング及びパルサリング製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 3/488 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
G01P3/488 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210795
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】521565187
【氏名又は名称】サンスター・エンジニアリング・タイランド・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】秋山 賢史
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 典雅
(72)【発明者】
【氏名】田中 郁己
(57)【要約】
【課題】多数の検出孔を精度よく形成したパルサリングを提供すること。
【解決手段】本発明に係るパルサリング1の一態様は、複数の金属板30の積層体からなり、等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔11を有し、本発明に係るパルサリング製造方法の一態様は、等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔を有するパルサリング1の製造方法であって、複数の金属板30を1枚ずつ前記パルサリング1の平面形状にパンチング加工する工程と、パンチング加工された前記金属板30を積層状態で接合する工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板の積層体からなり、
等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔を有する、
パルサリング。
【請求項2】
前記積層体の厚みに対する前記検出孔の最短距離の比が1.0以下である、請求項1に記載のパルサリング。
【請求項3】
前記金属板の厚みは0.2mm以上1.0mm以下である、請求項1又は2に記載のパルサリング。
【請求項4】
前記複数の金属板は、前記金属板に局所的に膨出するよう形成された接続突起を隣接する前記金属板に形成された接続孔に嵌合することにより互いに接合されている、請求項1から3のいずれかに記載のパルサリング。
【請求項5】
前記複数の金属板は、互いに接着剤により接着されている、請求項1から3のいずれかに記載のパルサリング。
【請求項6】
前記複数の金属板は、互いに溶接されている、請求項1から3のいずれかに記載のパルサリング。
【請求項7】
等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔を有するパルサリングの製造方法であって、
複数の金属板を1枚ずつ前記パルサリングの平面形状にパンチング加工する工程と、
パンチング加工された前記金属板を積層状態で接合する工程と、
を備える、パルサリング製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルサリング及びパルサリング製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸の回転速度を検出するために、各種のロータリエンコーダが用いられている。例えば二輪車等では、車軸の回転速度を検出するために、環状の金属板に等間隔に検出孔を検出したパルサリングを回転軸に取り付け、軸受側に回転不能に固定されたセンサによってパルサリングの検出孔の通過数を検出するよう構成されたロータリエンコーダが用いられている。例えば特許文献1には、外周部に複数の検出孔が形成され、内周部が車軸に固定するためのハブを構成するパルサリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-255826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなパルサリングは、一般的に金属板をパンチング加工することにより形成される。ロータリエンコーダの分解能を向上するためには検出孔の数を増やすことが必要となるが、パンチング加工では形成できる検出孔の数に限度がある。特に、板厚が大きくなると、パンチング加工におけるダイとパンチのクリアランスを大きくする必要があり、加工誤差も大きくなる。また、検出孔を複数回に分けてパンチング加工することにより、検出孔の数を増やすこともできるが、パンチング加工時の位置決め誤差により加工精度がさらに低下する。パルサリングに板厚が要求される例として、二輪車用ABS(Anti-lock Breake System)に用いられるエンコーダが挙げられる。二輪車では、パルサリングが外部に露出して配設されるため、十分な強度を確保するためにパルサリングに一定の板厚が要求される。
【0005】
このような実情に鑑みて、本発明は、多数の検出孔を精度よく形成したパルサリングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るパルサリングの一態様は、複数の金属板の積層体からなり、等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔を有する。
【0007】
上述のパルサリングにおいて、前記積層体の厚みに対する前記検出孔の最短距離の比が1.0以下であってもよい。
【0008】
上述のパルサリングにおいて、前記金属板の厚みは0.2mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0009】
上述のパルサリングにおいて、前記複数の金属板は、前記金属板に局所的に膨出するよう形成された接続突起を隣接する前記金属板に形成された接続孔に嵌合することにより互いに接合されていてもよい。
【0010】
上述のパルサリングにおいて、前記複数の金属板は、互いに接着剤により接着されていてもよい。
【0011】
上述のパルサリングにおいて、前記複数の金属板は、互いに溶接されていてもよい。
【0012】
本発明に係るパルサリング製造方法の一態様は、等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔を有するパルサリングの製造方法であって、複数の金属板を1枚ずつ前記パルサリングの平面形状にパンチング加工する工程と、パンチング加工された前記金属板を積層状態で接合する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、多数の検出孔を精度よく形成したパルサリングを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るパルサリングの平面図である。
図2図1のパルサリングのX-X線部分拡大断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るパルサリングの部分拡大断面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るパルサリングの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るパルサリング1の平面図(回転軸方向視図)である。図2はパルサリング1の部分拡大断面図である。
【0016】
本発明の第1実施形態に係るパルサリング1は、等間隔円環状に並んで形成される複数の検出孔11を有する環状部10と、環状部10から突出し、それぞれ当該パルサリング1を回転軸のハブ等にボルト等を用いて取り付けるための取付穴21を有する複数のブラケット部20と、を備える。
【0017】
パルサリング1は、回転軸の回転速度を検出するロータリエンコーダに用いることができる。具体的には、パルサリング1は、車軸と共に回転しない軸受側の構造体に固定される不図示のセンサと共に使用される。パルサリング1を用いるエンコーダは、センサがその検出部にパルサリング1の検出孔11が対向しているか否かを2値の検出信号、つまり検出パルスとして出力するよう構成される。これにより、単位時間当たりの検出パルスの数に基づいてパルサリング1ひいては回転軸の回転速度を算出することができる。本実施形態では、環状部10の内側においてセンサが固定されることを企図しており、ブラケット部20が環状部10の外側に設けられている。
【0018】
パルサリング1は、図2に示すように、複数の金属板30の積層体からなる。本実施形態において、複数の金属板30は、プレス成形により金属板30に局所的に膨出するよう形成されたカップ状の接続突起31を、隣接する金属板30に形成された接続孔32に嵌合することにより互いに接合されている。接続孔32は、接続突起31の形成により反対側に形成される凹部とすることができ、接続突起31の突出方向端部の金属板30については接続突起31がパルサリング1の表面に接続突起31が突出しないよう貫通穴とされてもよい。
【0019】
金属板30の厚みの下限としては、0.02mmが好ましく、0.1mmがより好ましく、0.2mmがさらに好ましい。一方、金属板30の厚みの上限としては、1.0mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。金属板30の厚みを前記下限以上とすることによって、金属板30が積層される前に変形することを防止できる。また、金属板30の厚みを前記上限以下とすることによって、パンチング加工によって検出孔11を小さい間隔で正確に形成することができると共に、高速プレス機を用いてパルサリング1の生産性を向上することができる。
【0020】
金属板30の積層体つまりパルサリング1の厚みの下限としては、1.2mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。一方、パルサリング1の厚みの上限としては、3.0mmが好ましく、2.0mmがより好ましい。パルサリング1の厚みを前記下限以上とすることによって、パルサリング1の強度を確保することができる。また、パルサリング1の厚みを前記上限以下とすることによって、不必要な重量やコストの増大を避けられる。
【0021】
金属板30の材質としては、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、高張力鋼等を挙げることができる。特に金属板30としてステンレス鋼を用いることでパルサリング1に対候性を付与できるため、二輪車等において外気に露出して用いられる場合にもロータリエンコーダを用いた制御の信頼性を向上できる。
【0022】
隣接する検出孔11の最短距離の金属板30の積層体に対する比、つまりパルサリング1の非開口部の周方向最小幅の全体の厚みに対する比の下限としては、0.2が好ましく、0.3がより好ましく、0.5がさらに好ましい。一方、検出孔11の最短距離の金属板30の積層体に対する比の上限としては、2.0が好ましく、1.0がより好ましく0.8がさらに好ましい。検出孔11の最短距離の金属板30の積層体に対する比を前記下限以上とすることによって、検出孔11のパンチング加工が比較的容易となるため、パルサリング1を安価に製造できる。また、検出孔11の最短距離の金属板30の積層体に対する比を前記上限以下とすることによって、多数の検出孔11を形成してロータリエンコーダの検出精度を向上できる。また、検出孔11間隔を小さくすることにより、対応するセンサも小さくできるため、ロータリエンコーダを小型化することができる。
【0023】
接続突起31の直径の下限(突出高さ中央で測定)としては、金属板30の厚みの0.8倍が好ましく、1.0倍がより好ましい。一方、接続突起31の直径の上限としては、金属板30の厚みの4.0倍が好ましく、3.0倍がより好ましい。接続突起31の直径を前記下限以上とすることによって、接続突起31をプレス加工によって形成することができる。また、接続突起31の直径を前記上限以下とすることによって、パルサリング1の面積の増大を抑制できると共に、金属板30の確実な接続が可能となる。
【0024】
接続突起31の突出高さの下限としては、金属板30の厚みの0.3倍が好ましく、0.5倍がより好ましい。一方、接続突起31の突出高さの上限としては、金属板30の厚みの1.0倍が好ましく、0.8倍がより好ましい。接続突起31の突出高さを前記下限以上とすることによって、金属板30の十分な接続強度が得られる。また、接続突起31の突出高さを前記上限以下とすることによって、接続突起31が隣接する金属板30から突出せず、接続突起31の形成が容易となる。
【0025】
パルサリング1は、本発明に係るパルサリング製造方法によって製造することができる。本発明の一実施形態に係るパルサリング製造方法によるパルサリング1の製造手順は、複数の金属板30を1枚ずつパルサリング1の平面形状にパンチング加工する工程(パンチング加工工程)と、パンチング加工された金属板30を積層状態で接合する工程(接合工程)と、を備える。
【0026】
パンチング加工工程では、複数回に分けて金属板30を打ち抜いてもよい。また、このパンチング加工する工程において、金属板30に接続突起31及び接続孔32を形成することが好ましい。金属板30を1枚ずつパンチング加工することによって、ダイとパンチのクリアランスを小さくして検出孔11の形状及び配置の精度を高くすることができるので、より多くの検出孔11を有するパルサリング1を製造できる。
【0027】
接合工程では、1枚の金属板30又は複数の金属板30の積層体に新たな金属板30を積層して、この新たな金属板30を隣接する金属板30に接合する。金属板30の接合は、接続突起31を接続孔32に嵌合させた状態で、接続突起31の内側に治具を押し込むことにより行うことができる。具体的には、治具によって接続突起31を押し広げるよう塑性変形させることにより、接続突起31を拡径して接続孔32から抜けない締まり嵌めの状態とすることができる。この金属板30の積層及び接続突起31の塑性変形を1枚ずつ繰り返し行うことにより、所望の積層枚数のパルサリング1を得ることができる。
【0028】
以上のように、パンチング加工した複数の金属板30を積層してパルサリング1を形成することによって、検出孔11の形状及び配置の精度を向上できるため、多数の検出孔を精度よく形成することができ、ロータリエンコーダの分解能を向上できる。
【0029】
図3は、本発明の第2実施形態に係るパルサリング1Aの部分拡大断面図である。図3のパルサリング1Aの平面形状は、図1のパルサリング1と同様である。このため、図3のパルサリング1Aについて、図1のパルサリング1と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
本実施形態のパルサリング1Aは、複数の金属板30Aの積層体からなる。本実施形態において、複数の金属板30Aは、接続突起及び接続孔が設けられておらず、互いに接着剤40により接着されている。接着剤40としては、例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等を用いることができる。
【0031】
接着剤40により金属板30Aの隙間を埋めることにより、金属板30Aの間に水が浸入することを防止できるので、パルサリング1Aの対候性を向上することができる。また、接着剤40により金属板30Aを全面で接着することで、金属板30Aの剥離強度を向上できる。
【0032】
図3のパルサリング1Aは、本発明に係るパルサリング製造方法の別の実施形態により製造することができる。具体的には、パルサリング1Aは、複数の金属板30Aを1枚ずつパルサリング1の平面形状にパンチング加工する工程と、パンチング加工された金属板30Aを接着剤によって積層状態で接合する工程と、を備えるパルサリング製造方法によって製造することができる。
【0033】
図4は、本発明の第2実施形態に係るパルサリング1Bの部分拡大断面図である。図4のパルサリング1Bの平面形状は、図1のパルサリング1と同様である。このため、図4のパルサリング1Bについて、図1のパルサリング1と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0034】
本実施形態のパルサリング1Bは、複数の金属板30Bの積層体からなる。本実施形態において、複数の金属板30Bは、互いに溶接により接着され、溶接痕50を有する。金属板30Bの溶接は、作業の容易性に鑑みて外周部において行うことが好ましいが、内周部や面内で行われてもよい。また、金属板30の面内で溶接する場合、溶接のために隣接する金属板30Bを露出させる開口を形成してもよい。溶接による歪みを抑制するために、点状に溶接痕50が分散して形成されてもよい。
【0035】
図4のパルサリング1Bは、本発明に係るパルサリング製造方法のさらに別の実施形態により製造することができる。具体的には、パルサリング1Bは、複数の金属板30Bを1枚ずつパルサリング1の平面形状にパンチング加工する工程と、パンチング加工された金属板30Bを積層状態で溶接により接合する工程と、を備えるパルサリング製造方法によって製造することができる。溶接方法としては、特に限定されないが、特にレーザ溶接が好適に用いられる。
【0036】
以上、本発明の実施形態のパルサリング及びパルサリング製造方法について説明したが、本発明に係るパルサリング及びパルサリング製造方法の構成及びその効果は、上述したものに限定されず、適宜変更が可能である。
【0037】
例として、本発明に係るパルサリングは、検出孔を有する環状部の内側に取付穴を有する複数のブラケット部が設けられていてもよく、ブラケット部を有さず、環状部の内側の検出孔と径方向に異なる位置に固定孔が形成されていてもよい。また、複数の金属板を積層時に位置決めするピン孔等の構成を設けてもよく、複数の金属板をリベット等により一体化してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B パルサリング
11 検出孔
10 環状部
21 取付穴
20 ブラケット部
30,30A,30B 金属板
31 接続突起
32 接続孔
40 接着剤
50 溶接痕
図1
図2
図3
図4