(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095109
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ダクト装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
F24F13/02 D
F24F13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210796
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野木 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】村田 孝友
(72)【発明者】
【氏名】京井 貴史
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA02
3L080AA03
3L080AA05
3L080AC01
(57)【要約】
【課題】ダクト装置における偏流された空気が取り込まれた分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑える。
【解決手段】ダクト装置10の分配チャンバー30には、空調空気の導入口40と、複数の分岐口41~46とが設けられている。分岐口41~46からそれぞれ分岐ダクト81~86が延びている。分配チャンバー30の内部には、通気孔61を有する整流板60が、分岐口41~46と対面するように設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気の導入口と、複数の分岐口とが設けられた分配チャンバーと、
前記複数の分岐口からそれぞれ延びる複数の分岐ダクトと、
空気を透過する多数の通気孔を有して、前記分配チャンバーの内部に前記複数の分岐口と対面するように設けられた整流板と
を備えたことを特徴とするダクト装置。
【請求項2】
前記整流板には、前記通気孔の少なくとも一部を含む透過領域と、前記通気孔の配置間隔より大きい幅の無孔の遮蔽領域とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のダクト装置。
【請求項3】
前記透過領域と前記遮蔽領域とが、前記複数の分岐口の並び方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のダクト装置。
【請求項4】
前記透過領域と前記遮蔽領域とが、前記複数の分岐口の並び方向及び前記並び方向と直交する方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のダクト装置。
【請求項5】
前記整流板が、前記分岐口から前記分配チャンバーの内側に離れていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のダクト装置。
【請求項6】
前記分配チャンバーの筐体の内面又は外面には断熱層が設けられており、前記整流板が、分配チャンバーの外部から断熱されていることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のダクト装置。
【請求項7】
先端部が前記導入口に連なり、前記空調空気を前記分配チャンバーへ導入する導入ダクトと、
前記導入ダクトと前記導入口との間又は前記導入ダクトの中途部に介在された風量調節機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載のダクト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の空調設備におけるダクト装置に関し、特に、空調機からの空調空気を複数方向へ分配するダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オフィスビル等の建物には空調機とダクト装置を含む空調設備が設けられている(特許文献1等参照)。特許文献1に開示されたダクト装置は、空調機から延びる導入ダクトと、分配チャンバーと、複数の分岐ダクトを含む。分配チャンバーは、例えば円筒形状に形成されている。分配チャンバーの周壁には、1の導入口と複数の分岐口とが、互いに周壁の周方向に離れて設けられている。導入ダクトの先端部が導入口に接続されている。各分岐口から分岐ダクトが、対応する空調エリアへ延びている。空調機からの空調空気が、導入ダクトを経て、分配チャンバーにおいて複数の分岐ダクトに分配されて、各空調エリアへ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のダクト装置においては、偏流された空気が取り込まれた分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比が不均等になることがある。特に、導入ダクトに開度調節ダンパーを設けた場合、開度によって分配比がばらつく傾向がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、ダクト装置における分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明に係るダクト装置は、
空調空気の導入口と、複数の分岐口とが設けられた分配チャンバーと、
前記複数の分岐口からそれぞれ延びる複数の分岐ダクトと、
空気を透過する多数の通気孔を有して、前記分配チャンバーの内部に前記複数の分岐口と対面するように設けられた整流板と
を備えたことを特徴とする。
これによって、ダクト装置における分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑えることができる。
【0006】
前記整流板には、前記通気孔の少なくとも一部を含む透過領域と、前記通気孔の配置間隔より大きい幅の無孔の遮蔽領域とが設けられていることが好ましい。
前記透過領域と前記遮蔽領域とが、前記複数の分岐口の並び方向に沿って交互に配置されていることが、より好ましい。
前記透過領域と前記遮蔽領域とが、前記複数の分岐口の並び方向及び前記並び方向と直交する方向に沿って交互に配置されていることが、より好ましい。
これによって、分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを一層確実に抑えることができる。
【0007】
前記整流板が、前記分岐口から前記分配チャンバーの内側に離れていることが好ましい。
これによって、流通抵抗の増大を抑えながら、分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑えることができる。
【0008】
前記分配チャンバーの筐体の内面又は外面には断熱層が設けられており、前記整流板が、分配チャンバーの外部から断熱されていることが好ましい。
筐体の内面の断熱層に整流板の支持材を保持させ、支持材と筐体を熱的に縁切りしてもよい。
整流板の支持材が筐体と連結される一方、支持材に熱の伝わりを抑制する孔を形成してもよい。
筐体の外面の断熱層によって筐体を外部から断熱し、これによって、筐体の内部の整流板を分配チャンバーの外部から断熱してもよい。
【0009】
前記ダクト装置は、先端部が前記導入口に連なり、前記空調空気を前記分配チャンバーへ導入する導入ダクトと、
前記導入ダクトと前記導入口との間又は前記導入ダクトの中途部に介在された風量調節機構と、を備えていることが好ましい。
風量調節機構によって、空調空気の総風量を調節できる。前記ダクト装置によれば、総風量に拘わらず、各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダクト装置における分配チャンバーから各分岐ダクトへの風量の分配比のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るダクト装置を含む建物用空調設備の平面図である。
【
図2】
図2は、前記ダクト装置の分配チャンバーの斜視図である。
【
図3】
図3は、
図4のIII-III線に沿う高さにおける、前記分配チャンバーの平面断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う、前記分配チャンバーの正面断面図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V曲線に沿う、前記分配チャンバーの整流板の一例を示す展開正面図である。
【
図6】
図6は、整流板の変形例を示す展開正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、建物1の空調設備2は、空調機3と、ダクト装置10を備えている。ダクト装置10は、導入ダクト11と、開度調節ダンパー20と、分配チャンバー30と、複数の分岐ダクト81~86を含む。空調機3から導入ダクト11が延びて分配チャンバー30に連なっている。分配チャンバー30から複数(ここでは6つ)の分岐ダクト81~86が延びている。各分岐ダクト81~86の先端部が、対応する空調対象エリア1a~1fの吹き出し部91~96に接続されている。
【0013】
図1に示すように、導入ダクト11と分配チャンバー30の後記導入口40との間には、風量調節機構として開度調節ダンパー20が介在されている。開度調節ダンパー20は、例えば2枚の半円状の回転羽根21を含む。回転羽根21の回転角度によって、導入口40の開度が調節され、空調空気の風量が調節される。
【0014】
図2に示すように、分配チャンバー30は、有蓋及び有底の円筒形状の容器状に形成されている。
図3に示すように、分配チャンバー30は、筐体31と、断熱層50を備えている。
図3及び
図4に示すように、筐体31は、円筒形状の周壁32と、周壁32の上端部を塞ぐ天板33と、周壁32の底部を塞ぐ底板34を含む。これら周壁32、天板33及び底板34は、鋼板等の金属板によって構成されている。
【0015】
図2に示すように、周壁32には、1の導入口40と、複数(ここでは6つ)の分岐口41~46とが設けられている。導入口40は、短管によって構成され、周壁32の径方向外側へ突出されている。
図1に示すように、開度調節ダンパー20の出口部が導入口40に接続されている。
【0016】
図2に示すように、各分岐口41~46は、導入口40より小径の短管によって構成され、周壁32の径方向外側へ突出されている。複数の分岐口41~46は、周壁32の導入口40とは反対側の約半周部分に偏って、周壁32の周方向及び軸方向(
図2において上下)に互いに分散して配置されている。各分岐口41~46に分岐ダクト81~86の上流端部が接続されている。
【0017】
図3及び
図4に示すように、筐体31の内面には断熱層50が設けられている。断熱層50の材質としては、ウレタンなどの発泡樹脂のほか、グラスウールなどが挙げられる。断熱層50は、周面層52と、天面層53と、底面層54を含む。周面層52が周壁32の内周面に保持されている。導入口40及び分岐口41~46の内端部が、周面層52を貫通して、分配チャンバー30の内室に臨んでいる。導入口40及び分岐口41~46の前記内端部は、周面層52の内周面と略面一である。天面層53が天板33の内面(下面)に保持されている。底面層54が底板34の内面(上面)に保持されている。
前記筐体31の内面の断熱層50に代えて、又はそれに加えて、
図2において二点鎖線にて示すように、筐体31の外面に断熱層51が設けられていてもよい。筐体31の外面の全域が断熱層51で覆われていてもよい。
【0018】
図3及び
図4に示すように、分配チャンバー30の内部には、整流板60が設けられている。整流板60は、網、パンチングメタルなどの、空気を透過する多数の通気孔61を有する多孔板によって構成され、分配チャンバー30と同軸の半円筒状(部分円筒状)になるよう湾曲成形されている。
【0019】
図3に示すように、半円筒状の整流板60が、分配チャンバー30内における複数の分岐口41~46が配置された約半周部分に、これら分岐口41~46と対面するように設けられている。整流板60は、分岐口41~46及び周面層52から分配チャンバー30の内側(中心側)に離れている。整流板60の曲率半径は、周面層52の内周面の半径より小さい。分岐口41~46の内端部及び周面層52の内周面と、整流板60との離間距離Dは、好ましくはD=数mm~数十mm程度、より好ましくはD=30mm~40mm程度である。整流板60と周面層52との間には、分流空間35が形成されている。
【0020】
図5の展開図に示すように、好ましくは、整流板60には、有孔の透過領域62と、無孔の遮蔽領域63とが設けられている。透過領域62だけに通気孔61が形成されている。各透過領域62は、整流板60の全通気孔61のうち少なくとも一部を含む。遮蔽領域63には、通気孔61が形成されていない。ないしは、整流板60の全域に通気孔61が形成されるとともに、遮蔽領域63となる部分に孔閉塞材(図示せず)が被せられることで、遮蔽領域63の通気孔61が塞がれている。分配チャンバー30の周方向(
図5において左右方向)に沿う、遮蔽領域63の幅W
63は、通気孔61の配置間隔P
61より好ましくは数倍以上大きい(W
63>P
61)。透過領域62と遮蔽領域63とは、整流板60の周方向(分岐口41~46の並び方向)に沿って交互に配置されている。かつ透過領域62は、整流板60の軸方向に2つに分割されている。隣接する透過領域62どうしの間に遮蔽領域63が介在されている。
【0021】
図3及び
図5に示すように、整流板60における周方向の中央部分は、導入口40と正対している。透過領域62の配置は、各分岐口41~46の配置と必ずしも対応していなくてもよい。
図6に示すように、透過領域62と遮蔽領域63とが、整流板の周方向及び高さ方向(分岐口41~46の並び方向及び前記並び方向と直交する方向)に沿って交互に配置されていてもよい。すなわち、透過領域62と遮蔽領域63とが、千鳥に配置されていてもよい。
【0022】
図4に示すように、整流板60は、上下の支持材70によって支持されている。上下の各支持材70は、支持リング71と、複数(ここでは3つ)の支持アーム72とを含む。これら支持リング71及び支持アーム72は、鋼材などの金属によって構成されている。支持リング71は、水平部73及び鉛直部74を有する断面L字状の環状に形成されている。上側の支持材70の支持リング71は、周面層52の上端面と内周面とで作るコーナー部55に宛がわれるとともに、水平部73が、周面層52の上端面と天面層53とによって挟み付けられている。下側の支持材70の支持リング71は、周面層52の下端面と内周面とで作るコーナー部56に宛がわれるとともに、水平部73が、周面層52の下端面と底面層54とによって挟み付けられている。これによって、上下の支持材70が、それぞれ断熱層50によって保持されている。
【0023】
図3に示すように、各支持材70の水平部73の外径は、周壁32の内径より小さい。水平部73の外周縁は、周壁32の径方向内側に離れている。したがって、各支持材70と筐体31とが、互いに離れて、熱的に縁切りされている。
【0024】
図3に示すように、上下の各支持リング71には、複数(3つ)の支持アーム72が互いに周方向に離れて配置されている。
図4に示すように、各支持アーム72は、鉛直部74に接合されるとともに径方向内側へ突出されている。上側の支持材70の支持アーム72の突出端部に整流板60の上端部が接合されている。下側の支持材70の支持アーム72の突出端部に整流板60の下端部が接合されている。これによって、整流板60が、支持部70を介して断熱層50に保持されている。整流板60と筐体31とは、熱的に縁切りされている。
【0025】
空調設備2においては、空調機3からの空調空気が、導入ダクト11を経て、開度調節ダンパー20によって風量調節された後、導入口40から分配チャンバー30に導入される。さらに、空調空気は、分配チャンバー30において各分岐ダクト81~86に分配されて、各吹き出し部91~96から各空調対象エリア1a~1fへ供給される。
【0026】
前記分配チャンバー30内においては、導入口40からの空調空気は、正面の分岐口43,44へ向かって流れようとする。この流れが、整流板60によって、分配チャンバー30の周方向に拡散される。これによって、分岐口41~46ひいては分岐ダクト81~86への風量分配比のばらつきを抑えることができる。
特に、開度調節ダンパー20の開度に拘わらず、風量分配比のばらつきを確実に抑えることができる。
【0027】
整流板60には透過領域62と遮蔽領域63とが分配チャンバー30の周方向に交互に設けられているため、空調空気の流れが前記周方向へ確実に拡散されるようにできる。これによって、風量分配比のばらつきを一層確実に抑えることができる。
整流板60は各分岐口41~46から離れて配置されており、整流板60と分岐口41~46との間に分流空間35が形成されているため、整流板60の各通気孔61を通過した空気流が、分流空間35においても拡散される。これによって、風量分配比のばらつきを、より一層抑えることができる。かつ、流通抵抗の増大を抑えることができる。
空調空気は、整流板60の周方向の両端部と周面層52との間からも分流空間35内へ流入できる。したがって、側方の分岐口41,46への風量を十分に確保でき、風量分配比のばらつきを確実に抑えることができる。
【0028】
金属製筐体31の内面又は外面には断熱層50,51が設けられているため、分配チャンバー30の断熱性及び保温性を確保できる。
さらに、整流板60の支持材70が筐体31から離れているため、支持材70と筐体31、ひいては整流板60と筐体31とを熱的に縁切りでき、断熱性及び保温性を一層高めることができる。
【0029】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、開度調節ダンパー20が導入ダクト11の中途部に介在されていてもよい。
回転羽根21には多数(複数)の開閉孔が設けられていてもよい。各開閉孔が、独立又は互いに連動して開度調節可能であってもよい。回転羽根21の回転角度だけでなく、開閉孔の開度によっても、導入口40の開度が調節され、空調空気の風量が調節されるようになっていてもよい。
開度調節ダンパー20が、2枚の半円状の回転羽根21に代えて、1枚の円形の回転羽根を有していてもよい。
さらに、風量調節機構として、回転羽根付きの開度調節ダンパーに限らず、展開・収縮可能な開閉蓋などを用いてもよい。
分岐口及び分岐ダクトの数は、6つに限らず。2つ以上であれば5つ以下でもよく、7つ以上でもよい。
分配チャンバー20の形状は、円筒形状に限らず、四角形その他の角筒形状であってもよい。
支持リング71を省略してもよい。支持アーム72を筐体31まで延長させてもよい。支持アーム72が筐体31と連結されていてもよい。この場合の支持アーム72には、孔を形成することによって、熱の伝わりを抑えることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えばオフィスビル、工場などの空調設備に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
1 建物
2 空調設備
3 空調機
10 ダクト装置
11 導入ダクト
20 開度調節ダンパー(風量調節機構)
21 回転羽根
30 分配チャンバー
31 筐体
32 周壁
33 天板
34 底板
35 分流空間
40 導入口
41~46 分岐口
50 内面の断熱層
51 外面の断熱層
52 周面層
53 天面層
54 底面層
60 整流板
61 通気孔
62 透過領域
63 遮蔽領域
70 支持材
71 支持リング
72 支持アーム
81~86 分岐ダクト