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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095126
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04701 20160101AFI20230629BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230629BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20230629BHJP
   B60L 50/75 20190101ALI20230629BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230629BHJP
   B60L 58/31 20190101ALI20230629BHJP
   B60L 58/32 20190101ALI20230629BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20230629BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230629BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20230629BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230629BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04694
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
H01M8/04537
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/31
B60L58/32
B60L58/40
G16Y10/40
G16Y40/30
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210830
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】寺田 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】岸保 健生
(72)【発明者】
【氏名】錦織 将浩
(72)【発明者】
【氏名】松川 雅彦
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA20
5H125AC07
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC12
5H125BD02
5H125BD04
5H125BD08
5H125CC04
5H125CC07
5H125CD09
5H125EE37
5H125EE41
5H125EE51
5H125EE55
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127DA01
5H127DB70
5H127DB92
5H127DB99
5H127DC41
5H127DC49
5H127DC74
5H127DC92
5H127EE04
5H127FF11
(57)【要約】
【課題】前記燃料電池と該燃料電池によって駆動される駆動モータとを備えた作業車両において、簡易な構成によって想定した作業時に確実に前記燃料電池によって発電された電力によって作業走行可能に構成された作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】走行機体に搭載された燃料電池と、前記燃料電池によって駆動するモータと、前記燃料電池の温度を検出する温度センサと、前記燃料電池の起動開始と起動終了を制御する制御部とを備え、前記制御部は、目標時間を予め設定することにより、目標時間までに前記燃料電池が効率的に動作する動作温度となるように事前に前記燃料電池を自動的に起動させて暖気作業を実行する準備制御が実行可能に構成された。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載された燃料電池と、
前記燃料電池によって駆動するモータと、
前記燃料電池の温度を検出する温度センサと、
前記燃料電池の起動開始と起動終了を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、目標時間を予め設定することにより、目標時間までに前記燃料電池が効率的に動作する動作温度となるように事前に前記燃料電池を自動的に起動させて暖気作業を実行する準備制御が実行可能に構成された
作業車両。
【請求項2】
前記制御部と通信可能な携帯端末を設け、
前記携帯端末は、前記目標時間の設定を操作する操作手段を有する
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
農作業の開始時刻を含む作業計画書を作成する作業計画作成手段を設け、
前記制御部は、前記作業計画書に記録された農作業の開始時刻に合わせて自動的に事前の暖気作業を実行するように構成された
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行機体の座標位置を取得する位置情報取得装置を設け、
前記制御部は、前記位置情報取得装置によって前記走行機体が予め定めた所定位置にあることが検出された場合に前記準備制御が実行されるように構成された
請求項1乃至3の何れかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記燃料電池で発電した電力、又は前記燃料電池から排出される熱を外部に供給する供給手段を設けた
請求項1乃至4の何れかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記走行機体に搭載されて燃料電池によって充電されるバッテリを設け、
前記制御部は、前記燃料電池を起動終了する場合、前記バッテリが所定以上充電されていることが検出された後に、前記燃料電池の起動終了を実行するように構成された
請求項1乃至5の何れかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池によって駆動するモータを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体に搭載された燃料電池と、前記燃料電池によって駆動するモータと、前記燃料電池を効率的に動作する動作温度にする昇温手段と、前記燃料電池の温度を検出する温度センサとを備え、前記燃料電池が動作温度(定常状態)まで暖気されていないことが検出された場合には、前記走行機体の駆動系を切換えて燃料電池による駆動を停止することにより、前記燃料電池が定常状態に達していない状態で発電することによる異常損傷を防止して長寿命化を図ることができる特許文献1に記載の作業車両が従来公知である。
【0003】
また、前記走行機体の前部に搭載された燃料電池と、走行用の走行モータと、前記走行機体の後部に設けた作業機用のPTOモータとを備え、前記走行機体の前後バランスが良好で、クリーンなエネルギーで前記走行モータや前記PTOモータを駆動させることができるとともに、駆動時の騒音も低減される特許文献2に記載の作業車両が従来公知である。
【0004】
さらに、前記燃料電池によって駆動するモータと、該モータによって駆動する刈取装置とを備え、前記燃料電池によって発電する電力によって駆動される前記モータによって前記刈取装置を駆動させることによって、前記刈取装置をバッテリに充電された電力を用いて駆動させるものと比較してエネルギー効率を向上させた特許文献3に記載のコンバインが従来公知である。
【0005】
上記特許文献1乃至3に記載の作業車両によれば、前記走行機体に前記燃料電池を搭載したことによって、高効率で且つクリーンに発電された電力を用いて作業走行することができるものであるが、通常は前記燃料電池が効率的に動作する定常状態にするまでに時間が掛かるため、何れも作業走行を開始する際に、前記燃料電池による効率的な発電ができなかったり、そもそも前記燃料電池が使えなかったりする場合が有り得るという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-10406号公報
【特許文献2】特開2003-136970号公報
【特許文献3】特開2019-205409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記燃料電池と該燃料電池によって駆動される駆動モータとを備えた作業車両において、簡易な構成によって想定した作業時に確実に前記燃料電池によって発電された電力によって作業走行可能に構成された作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願発明は第1に、走行機体に搭載された燃料電池と、前記燃料電池によって駆動するモータと、前記燃料電池の温度を検出する温度センサと、前記燃料電池の起動開始と起動終了を制御する制御部とを備え、前記制御部は、目標時間を予め設定することにより、目標時間までに前記燃料電池が効率的に動作する動作温度となるように事前に前記燃料電池を自動的に起動させて暖気作業を実行する準備制御が実行可能に構成されたことを特徴としている。
【0009】
第2に、前記制御部と通信可能な携帯端末を設け、前記携帯端末は、前記目標時間の設定を操作する操作手段を有することを特徴としている。
【0010】
第3に、農作業の開始時刻を含む作業計画書を作成する作業計画作成手段を設け、前記制御部は、前記作業計画書に記録された農作業の開始時刻に合わせて自動的に事前の暖気作業を実行するように構成されたことを特徴としている。
【0011】
第4に、前記走行機体の座標位置を取得する位置情報取得装置を設け、前記制御部は、前記位置情報取得装置によって前記走行機体が予め定めた所定位置にあることが検出された場合に前記準備制御が実行されるように構成されたことを特徴としている。
【0012】
第5に、前記燃料電池で発電した電力、又は前記燃料電池から排出される熱を外部に供給する供給手段を設けたことを特徴としている。
【0013】
第6に、前記走行機体に搭載されて燃料電池によって充電されるバッテリを設け、前記制御部は、前記燃料電池を起動終了する場合、前記バッテリが所定以上充電されていることが検出された後に、前記燃料電池の起動終了を実行するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
前記準備手段は、予め設定した目標時間までに前記燃料電池が動作温度となるように自動的に事前の暖気作業を実行するように構成されたことにより、作業者が作業を開始する際には、前記燃料電池が既に動作温度に保たれている状態となるため、事前の準備に時間の掛かる前記燃料電池を備えた作業車両であってもスムーズに作業走行を開始することができる。
【0015】
また、前記制御部と通信可能な携帯端末を設け、前記携帯端末は、前記目標時間の設定を操作する操作手段を有するものによれば、作業者は前記走行機体に乗込むことなく前記準備手段を実行するための目標時間を事前に設定することができるため、利便性が向上する。
【0016】
また、農作業の開始時刻を含む作業計画書を作成する作業計画作成手段を設け、前記制御部は、前記作業計画書に記録された農作業の開始時刻に合わせて自動的に事前の暖気作業を実行するように構成されたものによれば、前記作業計画作成手段によって事前に作業計画を作成することによって、事前の暖気作業を自動的に実行するための目標時間を設定することができるため、利便性及び作業効率が向上する。
【0017】
また、前記走行機体の座標位置を取得する位置情報取得装置を設け、前記制御部は、前記位置情報取得装置によって前記走行機体が予め定めた所定位置にあることが検出された場合に前記準備制御が実行されるように構成されたものによれば、前記走行機体が意図しない位置に置いてある状況で前記燃料電池が昇温することを防止できるため、安全性が向上する。
【0018】
また、前記燃料電池で発電した電力、又は前記燃料電池から排出される熱を外部に供給する供給手段を設けたものによれば、前記燃料電池を動作温度(定常状態)で維持した状態で、作業走行をせず待機する場合において、前記燃料電池で発電した電力や、前記燃料電池から排出される排熱を有効活用することができる。
【0019】
なお、前記走行機体に搭載されて燃料電池によって充電されるバッテリを設け、前記制御部は、前記燃料電池を起動終了する場合、前記バッテリが所定以上充電されていることが検出された後に、前記燃料電池の起動終了を実行するように構成されたものによれば、次回の作業走行時に前記バッテリを充電するための時間を削減できるため、スムーズな作業開始に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した作業車両が構成する起動制御システムを示した概念図である。
図2】作業車両の供給モードを示した図である。
図3】作業車両のブロック図である。
図4】制御装置の構成を示したブロック図である。
図5】ユーザ端末のブロック図である。
図6】情報処理サーバのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を適用した作業車両が構成する起動制御システムを示した概念図であり、図2は、作業車両の供給モードを示した図であり、図3は、作業車両のブロック図である。本発明の作業車両10は、燃料電池5Aと、前記燃料電池5Aの起動を制御する制御装置50とを備え、前記制御装置50は、インターネット等のグローバルなネットワーク1を介して、ユーザ端末(携帯端末)20と、情報処理サーバ(営農サーバ)30とに通信可能に接続されている。これにより、前記燃料電池5Aの起動・起動終了を制御する燃料電池制御システム(起動制御システム)が構成されている(図1参照)。
【0022】
前記作業車両10は、実施例では図示するトラクタに基づいて説明するが、燃料電池5Aを備えたものであれば乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機等の乗用作業車両の他、無人の作業車両にも適用することができる。以下、図1乃至4に基づき、作業車両10の具体的な構成について説明する。
【0023】
前記作業車両10は、左右一対の前輪1,1及び後輪2,2によって支持される走行機体3と、前記走行機体3に設置された前記燃料電池5Aと、前記走行機体3の前部に設けたボンネット4と、前記ボンネット4の後方に設置された操縦部6とを備え、その後方側には図示しないロータリ耕耘機等の作業機が連結可能に構成されている。
【0024】
前記走行機体3は、その前部(前記ボンネット4)側には前記燃料電池5Aの燃料(水素ガス、燃料ガス)を貯留する燃料タンク(図示しない)が配置され、その後部側には前記燃料電池5Aの本体、具体的には、該燃料電池5Aを構成するセルを多数積層することにより構成された重量物である燃料電池スタック(図示しない)が配置されている。
【0025】
該構成によれば、前記走行機体3の後部に作業機を連結した場合に、前記作業車両10全体の前後方向の重量バランスを最適化し易くなる他、前記走行機体3の後部に重量物を連結して牽引作業する場合に、牽引力も向上する。なお、前記燃料電池スタックを前記ボンネット4内に配置してメンテナンスし易くする構成としても良い。
【0026】
また、前記作業車両10は、前記燃料電池5Aと、該燃料電池5Aの温度を検出する温度センサ5Bと、前記燃料電池5Aによって発電される電力を蓄電(充電)するバッテリ11と、前記バッテリ11の電力を変換するインバータ12と、前記走行機体3の走行動力や前記作業機の駆動力の動力源となる電動モータ13と、作業者への報知を行う報知装置14と、入力手段の一例であるタッチパネル16と、出力手段の一例である液晶パネル17と、前記制御装置(ECU)50とを備え、前記制御装置50は、通信装置を介して前記ユーザ端末20や前記作業処理サーバ30とネットワーク1を介して接続可能に構成されている(図3等参照)。
【0027】
前記燃料電池5Aは、カソード電極に供給された酸化剤ガスとアノード電極に供給された燃料ガスの電気化学反応によって発電することにより、二酸化炭素を排出することなく発電可能なクリーンな発電システムであり、本実施例では、前記燃料電池5Aの電解質として固形酸化物(酸素イオン導電性酸化物)を利用した固形酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられている。
【0028】
ここで、前記燃料電池(SOFC)5の動作温度は、非常に高温(700~1000°程度、低温利用のものでも100°以上)のため、前記燃料電池を起動してから効率的に発電可能な動作温度(定常状態)に昇温するまでにある程度時間が掛かるという課題を有している。
【0029】
これに対し、前記制御装置50は、作業者が前記走行機体3側のタッチパネル等の入力手段16を用いて、作業走行の開始予定時刻、又は、開始予定時刻よりもある程度前の時刻である開始目標時間(目標時間、スケジュール)を予め設定入力することにより、設定された開始目標時間には前記燃料電池5Aが動作温度(定常状態)に達するように、前記燃料電池5Aを自動的に起動させて事前に暖気作業(暖気運転)を完了させる起動制御(準備制御)が実行可能に構成されている。
【0030】
このとき、前記燃料電池5Aを動作温度にするまでに必要な暖気作業時間は、前記温度センサ5Bによって検出される前記燃料電池5A本体の温度に応じて適切に設定することができる。これにより、前記制御装置50は、設定された開始目標時間と、算出された前記暖気作業時間とによって、前記燃料電池5Aの自動的な起動を開始する起動開始時間を精度良く算出することができる。
【0031】
該構成によれば、前記作業車両10は、予め設定した開始目標時間には搭載された前記燃料電池5Aを所定の動作温度にした状態(定常状態)で待機させることができるため、前記作業車両10は、予定した作業開始時刻からスムーズに作業走行を開始することができる。
【0032】
その一方で、前記起動制御は、作業者が前記走行機体3側のタッチパネル等の入力手段16を用いて、終了目標時間(目標時間、スケジュール)を予め設定入力することにより、設定された終了目標時間に前記燃料電池5Aの起動終了と、冷却処理とが自動的に実行されるように構成されている。
【0033】
また、前記制御装置50は、前記ユーザ端末20とネットワーク1を介して無線接続されるように構成されており、作業者は、前記ユーザ端末20を用いて、前記燃料電池5Aの起動操作と起動終了操作とを遠隔操作することができるように構成されている。なお、前記ユーザ端末20と前記制御装置50とは、NFCタグ(近距離無線通信)によって接続可能に構成しても良い。
【0034】
また、前記制御装置50は、前記ユーザ端末20を用いて、前記目標時間の設定操作も遠隔で行うことができるように構成されている。言い換えると、作業者は、前記ユーザ端末20を用いた遠隔操作によって、前記起動制御を実行することができる。このため、作業走行を開始する前に作業者が予め前記作業車両10の操縦部に乗込んで前記燃料電池5Aの起動操作をする必要がなくなるため、利便性が向上する。
【0035】
ここで、前記作業処理サーバ30は、前記作業車両10を用いて作業走行を行う作業計画を作成可能に構成されている。前記作業計画は、少なくとも前記作業車両10によって作業走行を開始する日時(前記開始目標時間)に関するスケジュール情報を有し、前記終了目標時間、作業予定時間、作業走行を行う圃場の場所や広さ、作業走行の内容に関する情報や、使用する作業車両10を待機する場所(車庫)に関する情報等を含んでいても良い。
【0036】
該作業処理サーバ30は、ネットワーク1を介して前記ユーザ端末20と接続可能に構成されており、前記ユーザ端末20は、専用のアプリやウェブブラウザ等を用いて作業計画を入力(作成)することができるように構成されている。なお、該作業計画は、前記作業処理サーバ30側に設けられたキーボードやマウス等の入力手段を用いて作成可能としても良い。
【0037】
これに対し、前記制御装置50は、前記起動制御の実行を、前記作業処理サーバ30で作成された作業計画と連係させることができるように構成されている。具体的には、前記制御装置50は、作成された前記作業計画(スケジュール情報)に記載された開始目標時間や終了目標時間に合わせて、前記燃料電池5Aを予め自動的に起動させて暖気作業を完了させたり、自動的に前記燃料電池5Aの起動終了・冷却作業を実行したりすることができるように構成されている。
【0038】
該構成によれば、ある程度の先の期間の前記作業計画を予め作成することによって、作業者は、前記タッチパネルや、前記ユーザ端末20を用いて、事前に毎回目標時間の設定操作を行うことなく、前記起動制御を実行することができるようになる。これにより、作業者が目標時間の設定操作をし忘れることで、前記起動制御が実行されずに作業開始前に前記燃料電池5Aの暖気作業が完了しない等といった事態を効率的に防止できるため、利便性がより向上する。
【0039】
さらに、前記制御装置50は、前記起動制御によって前記燃料電池5Aの起動終了を制御する他、前記タッチパネルや、前記ユーザ端末、その他操作具を用いて前記燃料電池5Aの起動終了操作が行われた場合には、前記バッテリ11の充電量を確認し、前記バッテリ11が所定以上充電(満充電)されたことが検出された後に、前記燃料電池5Aの起動終了と、該燃料電池5Aの冷却作業とが実行されるように構成されている。
【0040】
該構成によれば、次に前記燃料電池5Aが起動した際に、前記バッテリ11を充電する必要がなくなるため、前記燃料電池5Aの起動作業がスムーズになる。また、前記バッテリ11の充電のためだけに前記燃料電池5Aを起動することがなくなるため、前記燃料電池5Aの無駄なON・OFFがなくなり劣化を抑えることができる。
【0041】
また、前記作業車両10は、図3に示されるように、前記走行機体3の位置情報を取得するGNSSセンサ9を有している。
【0042】
これに対し、前記制御装置50は、前記起動制御による前記燃料電池5Aの自動的な暖気作業を安全に開始できる車庫等の待機所を予め指定することによって、前記作業車両10が指定の車庫にあることが検出された場合にのみ、前記起動制御が実行されるように構成されている。
【0043】
該構成によれば、作業者が前記開始目標時間を設定した場合であっても、前記GNSSセンサ9によって前記作業車両10が所定の待機所にないことが確認された場合には、前記燃料電池5Aが自動的に起動しない。すなわち、作業者が意図しない位置に作業車両10がある場合には、前記燃料電池5Aが自動的に起動して高温となることを防止できるため、安全性が向上する。
【0044】
また、前記作業車両10に搭載された燃料電池システム5(前記燃料電池5A及び前記温度センサ5B)は、図2及び図3に示されるように、供給手段7を介して外部施設8に連結することができるように構成されている。
【0045】
前記供給手段7は、前記燃料電池5Aと、ビニールハウスや蓄電設備等の外部施設8とを連結することにより、前記燃料電池5Aで発電した電力(余剰電力)を外部施設(家等)に設置された蓄電設備に供給したり、前記燃料電池5Aから排出された排熱を外部施設(図示する例ではビニールハウス)8に供給したりすることができるように構成されている。これにより、前記作業車両10は、前記燃料電池5Aによって発電される余剰電力や、発電時に前記燃料電池5Aから発生する廃熱をより効率的に利用することができる。
【0046】
これに対し、前記制御装置50は、前記燃料電池5Aが動作温度(定常状態)を維持する維持制御が実行可能に構成されている。
【0047】
該構成によれば、前記維持制御の実行中に、前記燃料電池5Aから発電される電力や、前記燃料電池5Aから排出される熱を、前記供給手段7を用いて前記外部設備8に供給して無駄なく利用することができる。
【0048】
これにより、例えば、前記燃料電池5Aが動作温度(定常状態)となっている状態において、前記燃料電池5Aを起動停止して冷却すると、次に設定された目標時間までに前記燃料電池5Aを再び動作温度まで上昇させることが間に合わない場合や、一旦前記燃料電池5Aを起動停止すると燃料効率が悪い場合には、作業走行が再開されるまで前記維持制御を実行しつつ、その間に発生する余剰電力や排熱を前記供給手段7で有効活用することにより、作業走行をスムーズに開始(再開)することと、前記燃料電池5Aのエネルギーの効率的に利用することを両立させることができる。
【0049】
また、前記作業車両10に前記供給手段7を設けたことにより、作業走行を行わない時期(季節)があっても、前記燃料電池5Aを稼働させて前記外部施設8である蓄電設備や、圃場の電気柵、給水ポンプ等への電力供給を行うことができる他、前記ビニールハウス等への排熱の供給等を行うことができる。このため、前記作業車両10に搭載した前記燃料電池5Aを持て余すことなくいつでも活用することができる。
【0050】
ちなみに、前記作業車両10は、前記燃料電池5Aとともに、図示しないリチウムイオン電池(LIB)を設け、前記燃料電池5Aが定常状態となる前は、前記リチウムイオン電池による電力で前記電動モータ13を駆動させる構成とするか、別途に専用のモータを設けた構成としても良い。このとき、前記燃料電池5Aが暖気作業中の場合には、前記リチウムイオン電池や、モータからの廃熱を利用することによって、前記燃料電池5Aの昇温作業をより効率的に行うことができるように構成しても良い。
【0051】
次に、図4乃至6に基づき、燃料電池制御システムによる起動制御の処理内容について説明する。図4は、制御装置50の詳細な構成を示したブロック図である。前記制御装置50は、CPUまたはRAM等から構成され且つ各種プログラムの実行によって様々な処理を行うことが可能な制御部51と、各種情報が記憶され且つ前記燃料電池制御システムの記憶装置の一部を構成する記憶装置52と、タッチパネル16や液晶パネル17等からなる入出力手段と、wifi等の無線通信を可能にするローカル無線通信インターフェース(通信装置)18Bと、インターネット等のネットワーク介した無線通信を可能とするグローバル無線インターフェース(通信装置)18Aと、を備えている。
【0052】
前記制御部51は、前記入出力手段16、17や、前記ユーザ端末20を介して入力された情報を処理する情報処理部51aと、設定された目標時間等の情報を管理する情報管理部51bと、設定された目標時間に基づいて前記燃料電池5Aを起動・起動終了を実行するスケジュールを作成するスケジュール作成部51cと、前記燃料電池5Aの起動開始を制御する起動制御部51dと、前記燃料電池5Aを定常状態で維持する温度維持制御部51eと、前記燃料電池5Aの起動終了操作を制御する終了制御部51fと、設定された目標時間の変更操作を受付ける時間変更部51gと、前記電動モータ13の駆動を制御するモータ制御部51hと、を備えている。
【0053】
前記スケジュール作成部51cは、設定された開始目標時間と、暖気作業によって前記燃料電池5Aを動作温度(定常状態)にするまでに必要な時間とに基づいて、前記燃料電池5Aの起動開始時間(時刻)を算出し、前記制御部51によって前記燃料電池5Aの自動的な起動開始時間(と起動終了時間)からなるスケジュールを作成することができる。
【0054】
このとき、暖気作業によって前記燃料電池5Aを動作温度にするまでに必要な時間は、前記温度センサ5Bによって検出された前記燃料電池5Aの温度に応じて適宜変更する。該構成によれば、暖気作業にかける時間をより正確に把握することができるため、暖気作業にかける時間を必要以上に長くとって燃料を無駄にすることを防止できる他、作業開始時に前記燃料電池5Aの暖気作業が終了していない事態も防止できる。
【0055】
前記起動制御部(制御部)51dは、前記スケジュール作成部51cにより作成されたスケジュールに基づいて前記燃料電池5Aを自動的に起動させて暖気作業を開始することができる。これにより、設定された目標時間までに前記燃料電池5Aを動作温度(定常状態)とすることができる。
【0056】
前記終了制御部51fは、前記スケジュール作成部51cにより作成されたスケジュールに基づいて、前記燃料電池5Aを起動終了操作と冷却作業とを開始するように構成されている。前記終了制御部51fは、設定された終了目標時間に前記報知装置14によってその旨を報知するように構成したり、設定された終了目標時間には、前記燃料電池5Aの起動終了と冷却作業とが完了するように構成したりしても良い。
【0057】
前記温度維持制御部5eは、前記燃料電池5Aが定常状態となっている場合において、設定された維持時間の間や、次の開始目標時間までの間、前記燃料電池5Aの起動を継続して動作温度を維持することができるように構成されている。具体的には、前記温度センサ5Bによって前記燃料電池5Aの温度が所定温度より下がった場合には、前記起動(昇温)制御部51dによって、前記燃料電池5Aを動作温度(所定温度)以上となるまで昇温させることで、前記燃料電池5Aの定常状態を維持する。
【0058】
前記記憶装置52には、前記起動制御が実行される作業車両10に関する登録情報が格納された機体情報記憶部52aと、設定された目標時間(開始目標時間及び終了目標時間)と、これらを基に算出される前記燃料電池5Aの起動開始時間と、起動終了時間とが格納される起動・終了時間記憶部52bと、前記起動制御を実行可能にする待機場所に関する位置情報が格納される場所情報記憶部52cと、を備えている。
【0059】
図5は、ユーザ端末の構成を示したブロック図である。前記ユーザ端末20は、スマートフォン、携帯電話または汎用OSを搭載したタブレット型やノート型のパーソナルコンピュータ等の情報端末であって、前記ユーザ端末20は、CPUまたはRAM等から構成され且つ各種プログラムの実行によって様々な処理を行うことが可能な制御部21と、各種情報が記憶され且つ前記燃料電池制御システムの記憶装置の一部を構成する記憶装置22と、タッチパネル式やキーボード、マウス等からなる入出力手段23と、前記作業車両10側の前記制御部51と通信可能にするローカル無線通信インターフェース24と、ネットワーク1を介した通信を可能とするグローバル無線インターフェース26と、を備えている。
【0060】
前記制御部21は、前記燃焼電池5Aの起動操作と起動終了操作とを実行する起動・終了指令部21aと、任意に設定した待機時間経過後に起動操作を自動的に実行する起動タイマ設定部21bと、任意に設定した待機時間経過後に起動終了操作を自動的に実行する終了タイマ設定部21cと、前記目標時間の設定操作を遠隔操舵で行うためのスケジュール設定部21dと、を備えている。
【0061】
前記起動・終了指令部21aは、前記ユーザ端末20の入出力手段23によって、前記燃料電池5Aの起動(開始)操作可能に構成されており、起動操作したことが検出された場合には、その旨を前記制御装置50に送信して、前記起動制御部50dを介して前記燃料電池5Aの起動処理を実行させることができる。同様に、前記起動・終了指令部21aは、前記ユーザ端末20の入出力手段23によって、前記燃料電池5Aの起動終了操作可能に構成されており、起動終了操作したことが検出された場合には、その旨を前記制御装置50に送信して、前記終了制御部50fを介して前記燃料電池5Aの起動終了と冷却処理とを実行させることができる。これにより、作業者は、前記ユーザ端末20を用いて、前記燃料電池5Aの起動操作と、起動終了操作とを遠隔操作することができる。
【0062】
前記スケジュール設定部21dは、前記ユーザ端末20の入出力手段23によって、前記開始目標時間の設定操作と、前記終了目標時間の設定操作とを行うことができるように構成されている。前記ユーザ端末20によって目標時間の設定操作がされた場合には、対応する前記作業車両10に該情報を送信し、遠隔操作による前記目標時間の設定を完了させることができる。
【0063】
図6は、情報処理サーバのブロック図である。前記情報処理サーバ30は、CPUまたはRAM等から構成され且つ各種プログラムの実行によって様々な処理を行うことが可能な前記制御部31と、各種情報が記憶され且つ前記燃料電池制御システムの記憶装置の一部を構成する記憶装置32と、ネットワーク介した無線通信を可能とするグローバル無線インターフェース33と、を備えている。
【0064】
前記制御部31は、前記作業計画に含まれる情報を処理して前記作業車両10に連係させる情報処理部31aと、作成された作業計画の情報を管理する情報管理部31bと、入力された情報に基づいて前記作業計画を作成する作業計画作成部31cと、を備えている。
【0065】
前記記憶装置32には、作業計画を作成した作業者に関する情報が格納されるユーザ情報記憶部32aと、作業者によって作成された作業計画が格納される作業計画記憶部32bと、を備えている。
【0066】
前記作業計画作成部31cは、作業走行を実行する日付と、前記開始目標時間と、前記終了目標時間と、対象となる作業車両10を識別する情報と、前記作業車両10の待機場所(暖気作業を実行する場所)に関する位置情報とを備えた作業計画を作成することができるように構成されている。これらの情報入力は、前記ユーザ端末20の入出力手段の他、前記作業車両10側のタッチパネル16や、前記情報処理サーバ30に接続したキーボードやタッチパネル等の入力手段によっても入力できるように構成しても良い。
【0067】
前記制御部31(情報処理部31a)は、対応する作業車両10に向けて、前記作業計画に含まれる前記目標時間を適宜送信することによって、前記作業計画と前記燃料電池5Aの起動スケジュールとを連係させることができる。
【0068】
なお、上述の実施例では、前記作業計画を作成、記録、管理する情報処理サーバ(営農サーバ)を設けたが、これらの機能を前記作業車両10側の前記制御装置50や、前記ユーザ端末20側に搭載した構成としても良い。
【符号の説明】
【0069】
3 走行機体
5B 温度センサ
7 供給手段
9 GNSSセンサ(位置情報取得装置)
11 バッテリ
13 電動モータ(モータ)
20 ユーザ端末(情報端末)
23 入出力手段(操作手段)
31c 作業計画作成部(作業計画作成手段)
51d 起動制御部(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6