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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009513
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/14 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01N29/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112871
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 賢治
(72)【発明者】
【氏名】河村 哲史
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA05
2G047BC03
2G047BC07
2G047BC19
2G047CA01
2G047CA05
2G047GA01
2G047GA13
2G047GG46
(57)【要約】
【課題】対象物を熱処理中に精度よく検査すること。
【解決手段】検査装置は、熱処理炉の内部に配置されるアコースティックエミッションセンサと、前記アコースティックエミッションセンサを格納して当該センサの周囲の温度と前記熱処理炉の炉内温度とを異ならせる格納庫と、前記格納庫を貫通し、一端に前記アコースティックエミッションセンサを取り付けられ、他端が前記熱処理炉の検査対象物に接する導波棒とを備える。判定部は、検査装置のアコースティックエミッションセンサの出力を処理して前記検査対象物の状態を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉の内部に配置されるアコースティックエミッションセンサと、
前記アコースティックエミッションセンサを格納して当該センサの周囲の温度と前記熱処理炉の炉内温度とを異ならせる格納庫と、
前記格納庫を貫通し、一端に前記アコースティックエミッションセンサを取り付けられ、他端が前記熱処理炉の検査対象物に接する導波棒と
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記導波棒が前記格納庫を貫通する貫通孔を吸音部材で充填したことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
温度特性及び/又は吸音特性の異なる2以上の吸音部材を組み合わせて用いることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記格納庫の内部の温度を制御する温度制御機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記温度制御機構は、前記導波棒が前記格納庫を貫通する貫通孔の近傍に前記炉内温度よりも低温の気体を送ることを特徴とする請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記格納庫は、少なくとも前記貫通孔の近傍で二重構造の壁部材を有し、
前記温度制御機構は、前記壁部材の二重構造の中に前記気体を送る
ことを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記格納庫内に温度センサをさらに備え、
前記温度制御機構は、前記温度センサの出力に基づいて冷却された気体を送る
ことを特徴とする請求項4に記載の検査装置。
【請求項8】
熱処理炉の内部に配置されるアコースティックエミッションセンサと、
前記アコースティックエミッションセンサを格納して当該センサの周囲の温度と前記熱処理炉の炉内温度とを異ならせる格納庫と、
前記格納庫を貫通し、一端に前記アコースティックエミッションセンサを取り付けられ、他端が前記熱処理炉の検査対象物に接する導波棒と、
前記熱処理炉の外部で、前記アコースティックエミッションセンサの出力を処理して前記検査対象物の状態を判定する判定部と
を備えたことを特徴とする検査システム。
【請求項9】
前記熱処理炉の外部に設けられた冷却機構と、
前記格納庫の内部の温度を制御する温度制御機構をさらに備え、
前記温度制御機構は、冷却機構により冷却された気体を前記格納庫の内部に送ることを特徴とする請求項8に記載の検査システム。
【請求項10】
前記判定部は、前記検査対象物の複数の位置から取得された弾性波を比較して、前記検査対象物における異常の発生位置を特定することを特徴とする請求項8に記載の検査システム。
【請求項11】
前記検査対象物は半導体ウェハであり、
前記判定部は、前記異常の発生位置と前記半導体ウェハの設計データとを用いて、前記半導体ウェハ上に形成される複数のデバイスのいずれに異常が発生したかを特定することを特徴とする請求項10に記載の検査システム。
【請求項12】
格納庫を貫通する導波棒の一端に、前記格納庫の内部で取り付けられたアコースティックエミッションセンサを備える検査装置が、熱処理炉の内部で検査対象の弾性波を取得するステップと、
前記弾性波を判定部に出力するステップと、
前記判定部が、前記弾性波に基づいて前記検査対象の異常を判定するステップと
を含むことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アコースティックエミッション(Acoustic Emission,以下AEと記載する)により放出される弾性波をAEセンサにより検知し、対象の状態を検査する手法が知られている。例えば、特開2014-22594号公報(特許文献1)には、「被処理体を収容する処理容器を有すると共に前記被処理体の表面に薄膜を形成する成膜装置に設けられて膜割れ検出操作を行う膜割れ検出装置において、前記処理容器内に設けられたプローブ手段と、前記プローブ手段の端部に取り付けられて弾性波を検出する弾性波検出手段と、前記弾性波検出手段の検出結果に基づいて前記処理容器のメンテナンスの要否を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-22594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、処理容器内に設けたプローブ手段に堆積した膜が割れたときに生じる弾性波を、処理容器外の弾性波検出手段で検知している。このように、プローブ手段を処理容器外まで引き出す構成は、処理容器内の温度が不安定になるおそれがある。さらに、弾性波検出手段までの距離が長くなるために高い検査精度を望めない。
また、特許文献1は、成膜装置のメンテナンスのタイミングを示すことはできるが、熱処理中の加工対象物の異常を検知することはできない。
半導体ウェハに成膜を行った後の応力の除去や、セラミックの焼成などには熱処理が用いられ、クラックの発生などの加工対象物の異常が熱処理の途中に生じることがある。しかし、熱処理のプロセス温度はAEセンサの耐熱温度を超えるため、熱処理中の加工対象物の異常をいかにして精度よく検査することが重要な課題となっていた。なお、熱処理には、加熱する工程と加熱後に冷却する工程のいずれも含み、加工対象物の異常は加熱する工程でも冷却する工程でも発生しうるので、熱処理炉から加工対象物を取り出すまで検査可能とすることが求められる。
そこで、本発明では、対象物を熱処理中に精度よく検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の検査装置及び検査システムの一つは、熱処理炉の内部に配置されるアコースティックエミッションセンサと、前記アコースティックエミッションセンサを格納して当該センサの周囲の温度と前記熱処理炉の炉内温度とを異ならせる格納庫と、前記格納庫を貫通し、一端に前記アコースティックエミッションセンサを取り付けられ、他端が前記熱処理炉の検査対象物に接する導波棒とを備えたことを特徴とする。
また、代表的な本発明の検査方法の一つは、格納庫を貫通する導波棒の一端に、前記格納庫の内部で取り付けられたアコースティックエミッションセンサを備える検査装置が、熱処理炉の内部で検査対象の弾性波を取得するステップと、前記弾性波を判定部に出力するステップと、前記判定部が、前記弾性波に基づいて前記検査対象物の異常を判定するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、対象物を熱処理中に精度よく検査することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る検査を用いるデバイス製造システムの説明図。
図2】実施例に係る検査方法を用いる半導体の製造工程の説明図。
図3】熱処理中の検査の説明図。
図4】検査装置の構成例についての説明図(その1)。
図5】検査装置の構成例についての説明図(その2)。
図6】AEセンサの信号処理の説明図。
図7】クラックの発生位置の利用についての説明図。
図8】半導体ウェハ単位での検査の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例0009】
図1は、実施例に係る検査を用いるデバイス製造システムの説明図である。図1に示したように熱処理装置10は、熱処理炉11の内部に載置された加工対象物12に対して熱処理を行う装置である。検査装置30は、熱処理炉11の内部に配置され、熱処理中に加工対象物12の状態をリアルタイムで検査する。すなわち、本実施例では、加工対象物12が検査対象物となる。
【0010】
検査装置30は、格納庫31に格納されたセンサユニット32と、導波棒33と、吸音部材34と、温度制御機構35とを有する。
【0011】
格納庫31は、センサユニット32を格納し、当該センサの周囲の温度と熱処理炉11の炉内温度とを異ならせる。
センサユニット32は、弾性波を検知するアコースティックエミッション(AE)センサと、温度センサとを含んだユニットである。
導波棒33は、格納庫31を貫通し、一端にセンサユニット32を取り付けられ、他端が熱処理炉11の加工対象物12に接する。
【0012】
吸音部材34は、導波棒33が格納庫31を貫通する貫通孔に充填され、貫通孔を塞ぐ。吸音部材34の素材は、導波棒33よりも十分に音響インピーダンスの小さいものを用いる。このため、格納庫31から熱処理炉11に気体が流れることを防ぎ、熱処理炉11の温度を安定させるとともに、センサユニット32が耐熱温度を超える高温に曝されることを防ぐことができる。また、吸音部材34は、格納庫31から導波棒33にノイズとなる不要な振動成分が伝搬することを防ぐ。
ここで、音響インピーダンスについて説明する。超音波であるAE波は、音響インピーダンスが異なる領域の境界において、入射波の一部が反射し、透過するAE波は減衰する。音響インピーダンスは、次の式1で表される。
式1: Z=ρ・C
音響インピーダンスは、物質固有の定数であり、単位としては、一般に、MRayl(メガ・レイル)が用いられる。1MRayl=1×10kg・m-2・s-1である。式1でρは音響媒質の密度を表し、Cは音響媒質中の音速を表す。
異なる媒質間の音響インピーダンスの差が小さいほど、媒質境界(界面)における反射が小さく、音響インピーダンスの差が大きいほど、界面での反射が大きい。
吸音材34の素材の音響インピーダンスを導波棒33よりも十分に小さくすることで、吸音材34を介して外部からの不要な振動成分を伝わりにくくする効果がある。
【0013】
温度制御機構35は、熱処理炉11の外部に設けられた冷却機構22で冷却された気体を格納庫31の内部に送風することで、格納庫31の内部の温度を制御する。
【0014】
判定部21は、センサユニット32からAE信号と温度信号を取得する。判定部21は、AE信号の波形を検波し、加工対象物12の異常の有無を判定する。また、判定部21は、温度信号を冷却機構22に渡す。
冷却機構22は、格納庫31に送る気体の冷却を行う。この冷却は、判定部21を介して得た温度信号に基づくフィードバック制御である。
【0015】
このように、判定部21、冷却機構22及び検査装置30は、検査システムを構成する。そして、検査装置30は、熱処理炉11の内部で熱処理中に加工対象物12の検査を行う。センサユニット32は、格納庫31及び吸音部材34で密閉されているため、熱処理炉11の炉内温度が不安定になることもなく、センサユニット32が耐熱温度以上の高温に曝されることもない。検査装置30は熱処理炉11の内部に配置するので、導波棒33を短くし、弾性波を精度よく検知することができる。
【0016】
図2は、実施例に係る検査方法を用いる半導体の製造工程の説明図である。まず、基板準備ステップで半導体ウェハを準備し(ステップS101)、成膜ステップで半導体ウェハの表面に薄膜を生成する(ステップS102)。つぎに、熱処理を行って薄膜の応力除去を行い(ステップS103)、薄膜の上に電極を形成する(ステップS104)。
電極の電気特性検査(ステップS105)を行った後、エッチング(ステップS106)を行って薄膜を加工し、デバイスを形成する。そして、熱処理(ステップS107)を行って応力を除去し、デバイスの電気特性検査(ステップS108)を行って、半導体ウェハが完成する(ステップS109)。
【0017】
本実施例の検査方法は、ステップS103の熱処理と、ステップS107の熱処理に適用できる。図3は、ステップS107の熱処理中の検査の説明図である。ステップS107の熱処理中に検査を行う場合には、複数の検査装置30(30-1~30-3)を半導体ウェハの異なる位置に接触させ、同時に検査を行う。
【0018】
半導体ウェハの薄膜に割れ(クラック)が発生すると、発生位置から弾性波が生じ、半導体ウェハを伝搬する。したがって、複数の検査装置30が複数の位置で弾性波を検知すると、判定部21は、弾性波の検知タイミングのズレからクラックの発生位置を特定することができる。
【0019】
図4及び図5は、検査装置30の構成例についての説明図である。
センサユニット32のAEセンサは、圧電材料により構成される。AEセンサの構造には、共振型(狭帯域型)と広帯域型があるが、いずれを用いてもよい。また、AEセンサの種類には、シングルエンド型、ディファレンシャル型、プリアンプ内蔵型があるが、いずれを用いてもよい。また、ここでの例示に限定されず、AE波の周波数帯域(10kHz~数MHz)を検出できるセンサであれば、任意の種類のセンサを用いることができる。
【0020】
導波棒33は、金属あるいはセラミックの棒である。導波棒33の先端部を加工対象物12に接触させることで、加工対象物12で生じたクラックを音源とする弾性波は、導波棒33を伝播してAEセンサに到達する。導波棒33の平面にはAEセンサを設置する。AEセンサは接着剤で固定してもよい。あるいは、バネを内蔵したAEセンサホルダを導波棒33に取り付けて、バネ圧でAEセンサを固定してもよい。
AEセンサの受波面と導波棒33の平面との間には、音響伝達媒質としてのカプラントを介在させる。カプラントの材質は、グリース、ワックス、または接着剤等である。カプラントの機能は、音波の反射を防ぎ、AE波をAEセンサの受波面へ伝達しやすくすることである。周波数が高い音波である超音波は、空気との界面で略全反射してしまう。よって、導波棒の平面とAEセンサの受波面との隙間は、空気や微小な気泡が入らないように、カプラントで埋めて密着させる。
【0021】
図4に示した検査装置30aでは、導波棒33に接する吸音部材34aと格納庫31に接する吸音部材34bとを組み合わせて吸音部材34としている。この構成では、吸音部材34aよりも柔らかい材質で吸音部材34bを構成することで、格納庫31からの外乱ノイズ成分の侵入を抑制できる。
【0022】
図4に示した検査装置30bでは、熱処理炉11の内側に曝される吸音部材34cと格納庫31の内側の吸音部材34dとを組み合わせて吸音部材34としている。この構成では、高温対応の吸音部材を炉側の吸音部材34cとして配置することで、吸音部材34を介した格納庫31への温度の流入を防ぐ効果がある。
【0023】
図5に示した検査装置30cでは、温度制御機構35は、導波棒33が格納庫31を貫通する貫通孔の近傍に炉内温度よりも低温の気体を送る。
図5に示した検査装置30dは、外側格納庫31aの内側に内側格納庫31bを設けており、少なくとも貫通孔の近傍で二重構造の壁部材を有する。検査装置30dでは、温度制御機構35は、壁部材の二重構造の中に炉内温度よりも低温の気体を送る。このように、格納庫31を二重にすることで、内側格納庫31b内の冷却された空気が内側格納庫31bの外部へ、さらに炉内へと漏れ出すことを抑制できる。
【0024】
図6は、AEセンサの信号処理の説明図である。AEセンサ51で検出されたAE信号は、まずプリアンプ52で増幅し、バンドパスフィルタ53でノイズである低周波成分や高周波成分を遮断し、メインアンプ54でさらに増幅する。その後、アナログデジタル(AD)変換器55でサンプリングされる。さらに、全波整流包絡線検波56により、AE波形の包絡線を求め、AE波の発生時刻やAE波の強度、エネルギー等により判定57を行う。判定57は、一例として閾値電圧を設定し、AE波の強度からクラックの大きさを推定すればよい。この他、例えばAE波の周波数応答である周波数スペクトルの時系列変化からクラックの発生を判定するなど、任意の判定手法を採用することができる。判定結果は、所定の画面上に対して出力58を行う。また異常発生時にはランプを点灯して表示させてもよい。
【0025】
クラック発生時あるいは既に形成されたクラックが進展する際には、立上りが鋭く、高周波で振動しながら減衰していく波形のAE波が検出される。これを突発型AE波という。突発型AE波に全波整流と包絡線検波を行い、高低2レベルの電圧閾値VH,VLと比較して、高側の電圧閾値VHを超えてから低側の電圧閾値VL以下になるまでの期間を、1つのAEイベントとして検出する。1つのAEイベントは、1つのクラック発生に対応する。また、2個以上のAEセンサを用いることで、各センサへのAE波の到達時間差から、音源の発生位置、すなわちクラックの発生場所を特定することができる。
【0026】
図7は、クラックの発生位置の利用についての説明図である。既に説明したように、半導体ウェハの複数の位置でAE信号を取得することで、半導体ウェハ上のクラックの発生位置を特定できる。この半導体ウェハにおけるクラックの発生位置を特定する情報を便宜上、AE位置情報という。
【0027】
一方、半導体ウェハに対する電極の形成や薄膜のエッチングは、デバイス設計データに基づいて行われる。そこで、AE位置情報とデバイス設計データとを対応付けることで、クラックの発生位置に所在するデバイスを、不良デバイスとして特定できる。この不良デバイスを特定する情報を不良デバイス情報として出力することで、加工の評価に用いることができる。また、不良デバイスを除外し、完成品における不良率を下げることも可能である。
【0028】
このように、ステップS107の熱処理に本発明の検査を適用し、1枚の半導体ウェハの複数位置でAE信号を検出することで、デバイス単位で検査を行うことができる。
一方、ステップS103の熱処理は、半導体ウェハにデバイスが形成される前の段階で実施され、また、複数枚の半導体ウェハを一括して処理する。この熱処理の本発明の検査を適用する場合には、半導体ウェハ単位で検査を行えばよい。
【0029】
図8は、半導体ウェハ単位での検査の説明図である。図8では、熱処理装置60は、熱処理炉61の内部に、複数の半導体ウェハを加工対象物12として載置し、熱処理を行う構成を有する。熱処理炉61の内部には、複数の検査装置80(80-1~80-2)が配置されおり、それぞれ判定部71及び冷却装置72に接続されている。
【0030】
複数の半導体ウェハには、それぞれ1の検査装置80が接している。このため、図8の構成では、半導体ウェハ単位でクラックの有無を検査することができる。
【0031】
上述してきたように、開示の検査装置は、熱処理炉の内部に配置されるアコースティックエミッションセンサを含むセンサユニット32と、前記アコースティックエミッションセンサを格納して当該センサの周囲の温度と前記熱処理炉の炉内温度とを異ならせる格納庫31と、前記格納庫31を貫通し、一端に前記アコースティックエミッションセンサを取り付けられ、他端が前記熱処理炉の検査対象物に接する導波棒33とを備える。
また、前記導波棒33が前記格納庫31を貫通する貫通孔を吸音部材34で充填している。
【0032】
かかる構成では、熱処理炉にAEセンサを配することで導波棒33を短くすることができるため、精度が向上する。また、AEセンサを格納庫31内に密閉しているので炉内温度を不安定にすることなく、AEセンサを炉内の熱から守ることができる。したがって、対象物を熱処理中に精度よく検査することができる。
【0033】
また、温度特性及び/又は吸音特性の異なる2以上の吸音部材を組み合わせて用いることで、格納庫31からのノイズの遮断や格納庫31内の温度の維持を効果的に行うことができる。
【0034】
また、前記格納庫31の内部の温度を制御する温度制御機構35をさらに備えてもよい。前記温度制御機構35は、前記導波棒33が前記格納庫31を貫通する貫通孔の近傍に前記炉内温度よりも低温の気体を送る。
また、前記格納庫31は、少なくとも前記貫通孔の近傍で二重構造の壁部材を有し、前記温度制御機構35は、前記壁部材の二重構造の中に前記気体を送る構成としてもよい。
また、前記格納庫内に温度センサをさらに備え、前記温度制御機構は、前記温度センサの出力に基づいて冷却された気体を送る構成としてもよい。
これらの構成により、格納庫31の温度をさらに効果的に維持することができる。
【0035】
また、前記アコースティックエミッションセンサの出力を処理して前記検査対象物の状態を判定する判定部21と、冷却機構22は、熱処理炉11の外部に設けることができる。
前記判定部21は、前記検査対象物の複数の位置から取得された弾性波を比較して、前記検査対象物における異常の発生位置を特定することができる。
例えば、検査対象物は半導体ウェハであり、判定部21は、前記異常の発生位置と前記半導体ウェハの設計データとを用いて、前記半導体ウェハ上に形成される複数のデバイスのいずれに異常が発生したかを特定する。
【0036】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、かかる構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
例えば、上記の実施例では、格納庫31を二重にする構成を例示したが、三重以上の構造であってもよい。
また、上述の実施例では、半導体ウェハの検査を例示したが、セラミックの焼成など、任意の熱処理に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10:熱処理装置、11:熱処理炉、12:加工対象物、21:判定部、22:冷却機構、30:検査装置、31:格納庫、32:センサユニット、33:導波棒、34:吸音部材、35:温度制御機構、51:AEセンサ、52:プリアンプ、53:バンドパスフィルタ、54:メインアンプ、55:AD変換器、56:全波整流包絡線検波、57:判定、58:出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8