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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095136
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】塗布工具
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210845
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】小倉 栄次
【テーマコード(参考)】
4F041
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA10
4F041CA03
4F041CA13
4F041CA16
(57)【要約】
【課題】長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い塗布工具を提供する。
【解決手段】塗布工具は、一対のヘッド部材と、マニホールドと、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して第1方向に延び、マニホールドと連通し、第1方向および第2方向と直交する第3方向において、一対のヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、マニホールド内に配置され、第1方向に移動可能な栓部と、スロット内に配置され、栓部とともに第1方向に移動可能なシム部と、栓部およびシム部を第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、塗布幅調整機構は、一端側が一対のヘッド部材の第1方向の少なくともいずれか一方側に設けられるとともに他端側が第1方向に対して異なる方向へ湾曲した湾曲部と、湾曲部の内部空間に配置され、一端側が栓部に接続された可撓性部材と、を有し、可撓性部材は、湾曲部に対して相対的に移動可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、
一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、
前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、
前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、
前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、
前記塗布幅調整機構は、
一端側が一対の前記ヘッド部材の前記第1方向の少なくともいずれか一方側に設けられるとともに他端側が前記第1方向に対して異なる方向へ湾曲した湾曲部と、
前記湾曲部の内部空間に配置され、一端側が前記栓部に接続された可撓性部材と、を有し、
前記可撓性部材は、前記湾曲部に対して相対的に移動可能である、
塗布工具。
【請求項2】
前記塗布幅調整機構は、
前記第1方向とは異なる方向に沿って延びるとともに中心軸の軸回りに回転する回転軸部と、
前記回転軸部と前記可撓性部材とを接続するとともに前記回転軸部の回転を前記可撓性部材に伝達することで、前記湾曲部に対する前記可撓性部材の相対移動を可能にする伝達部と、を備える、
請求項1に記載の塗布工具。
【請求項3】
前記湾曲部は、前記第1方向に対して垂直な方向へ湾曲した形状をなす、
請求項1または2に記載の塗布工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布工具として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の塗布工具は、長手方向に延びる一対のヘッド部材と、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対のヘッド部材の内面同士の間に位置して長手方向に延び、マニホールドと連通し、一対のヘッド部材の先端部間に開口するスロット(スリット)と、マニホールドおよびスロットの内部に配置され、長手方向に移動可能なインナーディッケルと、インナーディッケルを長手方向に移動させる、ボールねじや滑りねじ(台形ねじ)を用いた直動機構と、を有する。
特許文献1のようなインナーディッケル式の塗布工具では、直動機構によりインナーディッケルを長手方向に移動させることで、塗布工具を分解することなく、塗布液の塗布幅を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-188735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗布工具では、インナーディッケルを長手方向に移動させるための直動機構がヘッド部材から長手方向に大きく出っ張る。このため、塗布工具の長手方向の外形寸法が大きくなり、設置スペースなどに制限が生じやすく、塗布装置に搭載することが困難となる場合がある。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとすると、その分塗布工具の長手方向の外形寸法も大きくなり、上記問題がより顕著となる。
また、ヘッド部材の長手方向の両端部に直動機構がそれぞれ設けられる場合、両方の直動機構を操作するためにオペレーターの移動距離が増えるなど、操作性が悪かった。
【0005】
本発明は、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い塗布工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布工具の一つの態様は、第1方向に延び、前記第1方向と直交する第2方向において互いに対向する一対のヘッド部材と、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、内部に塗布液が貯留されるマニホールドと、一対の前記ヘッド部材の内面同士の間に位置して前記第1方向に延び、前記マニホールドと連通し、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において、一対の前記ヘッド部材の先端部間に開口するスロットと、前記マニホールド内に配置され、前記第1方向に移動可能な栓部と、前記スロット内に配置され、前記栓部とともに前記第1方向に移動可能なシム部と、前記栓部および前記シム部を前記第1方向に移動させる塗布幅調整機構と、を備え、前記塗布幅調整機構は、一端側が前記一対のヘッド部材の前記第1方向の少なくともいずれか一方側に設けられるとともに他端側が前記第1方向に対して異なる方向へ湾曲した湾曲部と、前記湾曲部の内部空間に配置され、一端側が前記栓部に接続された可撓性部材と、を有し、前記可撓性部材は、前記湾曲部に対して相対的に移動可能である。
【0007】
本発明の塗布工具は、いわゆるインナーディッケル式のスロットダイであり、塗布幅調整機構により、栓部およびシム部を含むインナーディッケルを第1方向、つまり、ヘッド部材の長手方向に移動させることで、塗布液の塗布幅を調整することが可能である。塗布幅調整機構は、湾曲部の内部空間に配置される可撓性部材を湾曲部に対して相対的に移動させることによって、インナーディッケルを第1方向に移動させることが可能である。これにより、被塗布物への塗布液の第1方向の塗布幅が調整される。
【0008】
本発明によれば、塗布幅調整機構が、ヘッド部材から第1方向、つまり、長手方向に大きく出っ張らないため、塗布幅調整機構の全体が第1方向に延在する構成に比べて、塗布工具の長手方向の外形寸法を小さく抑えることができる。このため、設置スペースなどに制限が生じにくく、塗布工具を塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具の長手方向の外形寸法増加への影響は小さく抑えられる。
【0009】
上記塗布工具において、前記塗布幅調整機構は、前記第1方向とは異なる方向に沿って延びるとともに中心軸の軸回りに回転する回転軸部と、前記ストローク調整部と前記可撓性部材とを接続するとともに前記回転軸部の回転を前記可撓性部材に伝達することで、前記湾曲部に対する前記可撓性部材の相対移動を可能にする伝達部と、を備える構成としてもよい。
【0010】
本発明によれば、塗布幅調整機構は、回転軸部の回転を可撓性部材に伝達して、インナーディッケルの第1方向への移動位置を調整することが可能である。
【0011】
上記塗布装置において、前記湾曲部は、前記第1方向に対して垂直な方向へ湾曲した形状をなす構成としてもよい。
【0012】
本発明によれば、湾曲部が第1方向に対して垂直な湾曲形状をなすことから、塗布工具の第1方向における外形寸法をより小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一つの態様の塗布工具によれば、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態の塗布工具を-X側から見た構成を示す側面図である。
図2図2は、一実施形態の塗布工具を+Z側から見た構成を示す正面図である。
図3図3は、図2のIII-III断面を示す断面図である。
図4図4は、一実施形態の塗布工具の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<一実施形態>
本発明の一実施形態の塗布工具10について、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の塗布工具10は、工具の構成部材を分解することなく、被塗布物(図示省略)への塗布液の塗布幅を調整可能ないわゆるインナーディッケル式のスロットダイである。
【0016】
図1は、一実施形態の塗布工具を-X側から見た構成を示す側面図である。図2は、一実施形態の塗布工具を+Z側から見た構成を示す正面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の塗布工具10は、一対のヘッド部材1,2と、マニホールド4と、スロット5と、サイドプレート3と、インナーディッケル9と、塗布幅調整機構8と、を備える。
【0017】
一対のヘッド部材1,2はそれぞれ、略長方形板状または略直方体状であり、所定方向に延びる。一対のヘッド部材1,2は、互いの内面(内側面)1b,2a同士を対向させた状態で、隣接して配置される。
【0018】
〔方向の定義〕
本実施形態では、一対のヘッド部材1,2が延在する方向を、第1方向と呼ぶ。つまり一対のヘッド部材1,2は、第1方向に延びる。本実施形態において第1方向は、水平方向である。第1方向は、左右方向と言い換えてもよい。各図において、第1方向は、X軸方向に相当する。第1方向のうち、一方側を左側(-X側)と呼び、他方側を右側(+X側)と呼ぶ。なお、第1方向は、長手方向と言い換えてもよい。
【0019】
第1方向(X方向)と直交する方向のうち、一対のヘッド部材1,2が互いに対向する方向を、第2方向と呼ぶ。一対のヘッド部材1,2は、第2方向において互いに隣接配置される。本実施形態において第2方向は、鉛直方向である。第2方向は、上下方向と言い換えてもよい。各図において、第2方向は、Z軸方向に相当する。
【0020】
第2方向(Z方向)のうち、一方のヘッド部材1から他方のヘッド部材2へ向かう方向を下側(-Z側)と呼び、他方のヘッド部材2から一方のヘッド部材1へ向かう方向を上側(+Z側)と呼ぶ。なお、以下の説明では、一方のヘッド部材1を第1ヘッド部材1、他方のヘッド部材2を第2ヘッド部材2と呼ぶ場合がある。第2方向は、各ヘッド部材1,2の板厚方向に相当する。このため第2方向は、厚さ方向と言い換えてもよい。
【0021】
第1方向(X方向)および第2方向(Z方向)と直交する方向を、第3方向と呼ぶ。本実施形態において第3方向は、水平方向である。第3方向は、前後方向と言い換えてもよい。各図において、第3方向は、Y軸方向に相当する。
【0022】
第3方向(Y方向)のうち、一対のヘッド部材1,2の間からスロット5が不図示の被塗布物に向けて開口する方向を先端側(+Y側)と呼び、これとは反対方向を後端側(-Y側)と呼ぶ。なお、第3方向(Y方向)のうち、先端側は、前側と言い換えてもよく、後端側は、後側と言い換えてもよい。
【0023】
〔ヘッド部材〕
各ヘッド部材1,2は、例えばステンレス製である。一対のヘッド部材1,2は、図2に示すボルト等の締結部材15により、互いに固定される。
【0024】
〔マニホールド〕
マニホールド4は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向(X方向)に延び、内部に塗布液が貯留される。マニホールド4は、塗布工具10の内部に塗布液を一時的に保持する室(空間)である。本実施形態ではマニホールド4が、一対のヘッド部材1,2のうち、第2ヘッド部材2に配置される。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の上側を向く内面2aから下側に窪み、第1方向に延びる溝状である。マニホールド4は、第1方向(X方向)と垂直な断面の形状が、半円状である。
【0025】
本実施形態では、マニホールド4が第2ヘッド部材2を第1方向(X方向)に貫通する。マニホールド4は、第2ヘッド部材2の左側(-X側)を向く端面2cおよび右側(+X側)を向く端面(不図示)に開口する。すなわち、マニホールド4の第1方向の長さは、第2ヘッド部材2の第1方向(X方向)の長さと等しい。
【0026】
マニホールド4には、図1に示す供給路21から塗布液が流入し、この塗布液はマニホールド4内に一時的に保持されて、スロット5へ流出する。つまり、マニホールド4の内部には、塗布液が流通する。
【0027】
〔スロット〕
スロット5は、一対のヘッド部材1,2の内面1b,2a同士の間に位置して第1方向に延び、マニホールド4と連通する。スロット5は、マニホールド4の先端側に隣り合って配置される。スロット5は、第1ヘッド部材1の先端部1cと第2ヘッド部材2の先端部2eとの間から第3方向(Y方向)の先端側へ向けて、外部に開口する。
【0028】
つまり、スロット5は、第3方向(Y方向)において、一対のヘッド部材1,2の先端部1c,2eの間に開口する。スロット5の先端部、つまりスロット開口部は、第2方向において第1ヘッド部材1の先端部1cと第2ヘッド部材2の先端部2eとの間に位置する。スロット5の後端部は、マニホールド4と接続される。
【0029】
本実施形態では、スロット5の第1方向(X方向)の長さが、各ヘッド部材1,2の第1方向(X方向)の長さと等しい。スロット5は、ヘッド部材1,2の第1方向を向く両端面に開口する。スロット5には、マニホールド4から塗布液が流入し、この塗布液はスロット開口部から先端側の被塗布物(図示省略)へ向けて流出する。つまり、スロット5の内部には、塗布液が流通する。
【0030】
〔サイドプレート〕
サイドプレート3は、例えばステンレス製である。サイドプレート3は、ヘッド部材1,2の第1方向(X方向)の両端部に一対設けられる。なお、図1図4では、一方(左側)のサイドプレート3のみ図示している。
【0031】
各サイドプレート3は、ボルト18等により一対のヘッド部材1,2と固定される。サイドプレート3は、板状であり、一対の板面が第1方向(X方向)を向く。一対のサイドプレート3のうち、左側に位置する一方のサイドプレート3の右側を向く板面3aは、各ヘッド部材1,2の左側を向く端面1eと接触する。一対のサイドプレート3のうち、右側に位置する他方のサイドプレート3(不図示)の左側を向く板面は、各ヘッド部材1,2の右側を向く端面と接触する。
【0032】
一対のサイドプレート3は、マニホールド4の第1方向(X方向)の両端部を、第1方向から塞ぐ。一対のサイドプレート3は、スロット5の第1方向(X方向)の両端部を、外側から塞ぐ。
【0033】
〔インナーディッケル〕
インナーディッケル9は、例えば、樹脂製または金属製である。図2に示すように、インナーディッケル9は、栓部6と、シム部7と、を有する。つまり、塗布工具10は、栓部6と、シム部7と、を備える。本実施形態では、インナーディッケル9、つまり、栓部6およびシム部7の組が、塗布工具10の第1方向(X方向)の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに、一対設けられる。なお、図1図4では、一方(左側)のインナーディッケル9のみ図示している。
【0034】
栓部6は、マニホールド4内に配置される。栓部6は、図2に示すように、マニホールド4の第1方向(X方向)の端部に配置される。栓部6は、マニホールド4の内部を第1方向(X方向)に移動可能である。本実施形態の栓部6は、図1に示すように、第1方向(X方向)に延びる半円柱状をなす。栓部6の外周面のうち湾曲面6aは、マニホールド4の内周面4aに対して摺動可能に接触する。栓部6の外周面のうち第1方向に沿って延びる矩形平面6bは、第1ヘッド部材1の内面1bに対して摺動可能に接触する。
【0035】
栓部6は、マニホールド4の内部空間を第1方向(X方向)から密封(シール)している。つまり、栓部6は、マニホールド4の内部空間を第1方向(X方向)に仕切る。栓部6は、マニホールド4の内部空間4Kを、第1方向(X方向)において、塗布液が貯留される部分(塗布液貯留部30)と、塗布液が貯留されない部分(塗布液非貯留部31)とに区画する。このため、栓部6(塗布液非貯留部31)が第1方向(X方向)に移動することで、マニホールド4の塗布液貯留部30の第1方向(X方向)の長さが変化する。
【0036】
シム部7は、板状である。具体的には、図2に示すように四角形板状である。シム部7の厚さ方向両側の一対の板面7aは、第2方向(Z方向)を向く。シム部7は、スロット5内に配置される。シム部7は、スロット5の第1方向(X方向)の端部に配置される。シム部7の一対の板面は、スロット5の第2方向(Z方向)を向く一対の壁面と摺動可能に接触する。
【0037】
シム部7は、栓部6の先端側に隣り合って配置される。シム部7は、栓部6と接続される。本実施形態では、シム部7と栓部6とが、単一の部材により一体に形成される。シム部7は、スロット5の内部を第1方向(X方向)に移動可能である。すなわち、シム部7は、栓部6とともに第1方向(X方向)に移動可能である。
【0038】
シム部7は、スロット5の内部空間を第1方向(X方向)から密封(シール)している。つまり、シム部7は、スロット5の内部空間を第1方向(X方向)に仕切る。シム部7は、スロット5の内部空間を、第1方向(X方向)において、塗布液が流通する部分(塗布液流通部)と、塗布液が流通しない部分(塗布液非流通部)とに区画する。このため、シム部7が第1方向(X方向)に移動することで、スロット5の塗布液流通部の第1方向(X方向)の長さが変化する。
【0039】
このように、インナーディッケル9が、ヘッド部材1,2に対して第1方向(X方向)に移動することにより、スロット5の先端部(スロット開口部)から、図示しない被塗布物に塗布される塗布液の第1方向(X方向)の塗布長さ、つまり塗布幅が変化する。
【0040】
〔塗布幅調整機構〕
図3は、図2のIII-III断面を示す断面図である。図4は、一実施形態の塗布工具の動作図である。
塗布幅調整機構8は、栓部6およびシム部7つまりインナーディッケル9を、第1方向(X方向)に移動させる。塗布幅調整機構8は、図3に示すように、インナーディッケル9に接続されたインナーディッケル移動部81と、インナーディッケル移動部81を支持する支持部82と、を備える。このような塗布幅調整機構8は、ヘッド部材1,2の長手方向の両側にそれぞれ設けられ、第1方向の一方側部分(左側部分)と、他方側部分(右側部分)とに一対設けられている。図1図4においては左側の塗布幅調整機構8のみ図示している。
【0041】
支持部82は、湾曲部821と、収容ケース822と、継手用ナット823と、を有する。
湾曲部821は、円筒形状のステンレスパイプであって、その長手方向の中央付近において略90°に湾曲変形されている。そのため、湾曲部821の一端側と他端側は異なる方向を向いている。具体的に、湾曲部821の一端はサイドプレート3に固定され、他端は収容ケース822に固定されている。
【0042】
湾曲部821の内部空間は、サイドプレート3の厚さ方向を貫通する貫通孔を通じてマニホールド4の内部空間4Kに連通している。湾曲部821の内部空間には、インナーディッケル移動部81の一部であって、後述するフレキシブルシャフト811が挿入される。
【0043】
収容ケース822は、例えばステンレスからなり、内部空間にインナーディッケル移動部81の一部を収容可能である。収容ケース822は、湾曲部821の他端(上端)側からさらに第2方向(+Z方向)へ延びている。収容ケース822の第2方向の長さは、栓部6の第1方向(X方向)への移動量以上であることが好ましい。
【0044】
本実施形態の収容ケース822の上端面822aには、ねじ込み式の継手用ナット823が取り付けられている。継手用ナット823には、インナーディッケル移動部81のストローク調整ねじ(回転軸部)813が挿入される。
【0045】
インナーディッケル移動部81は、フレキシブルシャフト(可撓性部材)811と、カップリング(伝達部)812と、ストローク調整ねじ813と、駆動手段(不図示)と、を有する。インナーディッケル移動部81は、支持部82内に収容されて支持され、支持部82に対して相対的に移動可能である。
【0046】
フレキシブルシャフト811は、径方向に湾曲可能な可撓性を有するシャフトであって所定の長さを有する。フレキシブルシャフト811として、例えば、ステンレス製のシャフトが挙げられる。
【0047】
図3に示す初期位置におけるフレキシブルシャフト811は、一端側が湾曲部821内に収容されるとともに、他端側が収容ケース822内に収容されている。フレキシブルシャフト811は、湾曲部821の形状に沿って垂直に湾曲変形させられるため、フレキシブルシャフト811の他端は一端とは異なる方向へ向いている。すなわち、フレキシブルシャフト811は、一端がヘッド部材1,2の長手方向(第1位方向:X方向)、他端が上方向(第2方向:Z方向)を向く。
【0048】
フレキシブルシャフト811の湾曲方向は、塗布操作の邪魔にならず、ヘッド部材1,2に接触しない方向であればよく、ストローク調整ねじ813を操作しやすい方向がより望ましい。
【0049】
フレキシブルシャフト811の一端は、マニホールド4の内部空間4K内に収容された栓部6の末端に連結されている。フレキシブルシャフト811の他端は、支持部82の収容ケース822に収容されたカップリング812に接続される。
【0050】
ストローク調整ねじ813は、その中心軸Oが第2方向(上下方向:Z方向)に延びている。本実施形態では、ストローク調整ねじ813として、例えば、六角穴付き全ねじを用いている。ストローク調整ねじ813は、収容ケース822の上端面822aに取り付けられた継手用ナット823に螺合し、継手用ナット823に対する螺合位置を調整可能である。すなわち、継手用ナット823に対するストローク調整ねじ813の螺合量を調整することで、インナーディッケル9の移動距離(位置)を調整することが可能である。
【0051】
ストローク調整ねじ813(ねじ部)の軸方向長さは、インナーディッケル9の移動範囲以上の長さであることが好ましい。これにより、インナーディッケル9の第1方向におけるストロークを調整し、所望の塗布幅とすることができる。
【0052】
図3に示す初期位置において、ストローク調整ねじ813の上端は、収容ケース822に設けられた継手用ナット823よりもさらに上方(+Z方向)へ突出している。ストローク調整ねじ813の下端は、収容ケース822内に収容されたカップリング812に接続される。
【0053】
このとき、ストローク調整ねじ813の下端は、カップリング812に対してスムーズに回転可能である。これにより、インナーディッケル9を第1方向へ容易に移動させることができるので、インナーディッケル9の第1方向におけるストローク量を高精度かつ容易に調整することができる。
【0054】
また、中心軸Oの軸回りに回転するストローク調整ねじ813を用いることで、第1方向におけるインナーディッケル9のストローク量が僅かであっても微調整が容易である。
【0055】
カップリング812は、ストローク調整ねじ813の回転に伴う上下移動をフレキシブルシャフト811に伝達する。フレキシブルシャフト811は、ストローク調整ねじ813の回転に伴ってその長手方向に移動する。
【0056】
ストローク調整ねじ813を回転させる駆動手段としては、手動の他、ストローク調整ねじ813の頭部に連結された出力軸と、この出力軸を正方向又は逆方向へと回転させるモータ等を用いることが考えられる。モータ等を用いることによってフレキシブルシャフト811の移動、つまり、インナーディッケルの第1方向への移動を自動化することが可能である。
【0057】
不図示の駆動手段により、ストローク調整ねじ813を正方向へ回転させると、図4に示すように、ストローク調整ねじ813が下方向(-Z方向)へ移動し、カップリング812を介して接続されたフレキシブルシャフト811が前進する。これにより、インナーディッケル9(栓部6及びシム部7)がヘッド部材1,2の第1方向右側(+X方向)へ移動する。
【0058】
一方、不図示の駆動手段により、ストローク調整ねじ813を逆方向へ回転させると、ストローク調整ねじ813が上方(+Z方向)へ移動し、カップリング812を介して接続されたフレキシブルシャフト811が後退する。これにより、図3に示すように、インナーディッケル9がヘッド部材1,2の第1方向左側(-X方向)へ移動する。
【0059】
〔本実施形態による作用効果〕
以上説明した本実施形態の塗布工具10は、塗布幅調整機構8により、栓部6およびシム部7を含むインナーディッケル9を、第1方向(X方向)つまり、ヘッド部材1,2の長手方向に移動させることで、塗布液の塗布幅を調整可能である。
【0060】
本実施形態によれば、塗布幅調整機構8が、ヘッド部材1,2の側方から上方へ向かって湾曲した形状をなすことから、ヘッド部材1,2から第1方向つまり長手方向に大きく出っ張らないため、塗布工具10の長手方向(第1方向:X方向)の外形寸法を小さく抑えることができる。このため、設置スペースなどに制限が生じにくく、塗布工具10を不図示の塗布装置に搭載しやすい。また、塗布幅の調整範囲を大きく確保しようとする場合でも、塗布工具10の長手方向の外形寸法増加への影響を小さく抑えられる。
【0061】
また、本実施形態では、湾曲部821の一端側が第1方向、他端側が第2方向を向いた垂直な湾曲形状をなすことから、塗布工具10の長手方向における外形寸法をより小さく抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態のように、ヘッド部材1,2の長手方向の右側部分と左側部分とに塗布幅調整機構8がそれぞれ設けられることで、スロット5の第1方向の開口寸法つまり塗布幅を、第1方向(X方向)の両端部においてそれぞれ調整でき、被塗布物との位置合わせ等の作業性が良い。
【0063】
また、両方の塗布幅調整機構8を操作するためにオペレーターが移動する距離は短く抑えられ、操作性が良い。また、いずれの塗布幅調整機構8も上方へ向けて同じ方向へ湾曲させることでオペレーターによる操作性がより向上する。
【0064】
また、塗布工具10の塗布幅を大きく変えようとすると、ストローク調整ねじ813(ねじ部)を長くする必要があるが、本実施形態の塗布幅調整機構8によれば、インナーディッケル9の移動方向とは異なる第2方向にストローク調整ねじ813が延びているため、塗布工具10の長手方向の外形寸法増加への影響を小さく抑えつつ、塗布工具10の塗布幅を大きくすることができる。
【0065】
〔本発明に含まれるその他の構成〕
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0066】
上述の実施形態では、インナーディッケル9および塗布幅調整機構8がそれぞれ、塗布工具10の第1方向の一方側部分(左側部分)と他方側部分(右側部分)とに一対設けられる例を挙げたが、これに限らない。インナーディッケル9および塗布幅調整機構8は、左側部分及び右側部分のうちのいずれか1方側のみに設けられてもよい。
【0067】
また、塗布幅調整機構8は、上述の構成に限らない。例えば、塗布幅調整機構8は、少なくとも、インナーディッケル移動部81としてのフレキシブルシャフト811と、支持部82としての湾曲部821と、を備える構成であってもよい。この場合、湾曲部821から露出したフレキシブルシャフト811の末端をオペレーターが持ち、湾曲部821に対してフレキシブルシャフト811を移動させてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態では、マニホールド4が、第2ヘッド部材2の内面2aから下側に窪み、第1方向に延びる溝状である例を挙げたが、これに限らない。マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内面1bから上側に窪み、第1方向に延びる溝状でもよい。
また、マニホールド4は、第1ヘッド部材1の内面1bから上側に窪み第1方向に延びる第1溝部と、第2ヘッド部材2の内面2aから下側に窪み第1方向に延びる第2溝部と、を有していてもよい。第1溝部と第2溝部とは、第2方向において対向し、互いに連通する。この場合、マニホールド4は、第1方向に延びる円柱状の室(空間)となる。
【0069】
また、上述の実施形態では、第2方向を鉛直方向(上下方向)とし、第3方向を水平方向として説明したが、これに限らない。例えば、第2方向を水平方向とし、第3方向を鉛直方向としてもよい。この場合、スロット5は、鉛直方向の上側または下側へ向けて外部に開口する。
また、第2方向が、鉛直方向と水平方向との間の傾斜方向であり、第3方向が、水平方向と鉛直方向との間の傾斜方向であってもよい。
【0070】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、上述の実施形態および変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、上述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の塗布工具によれば、長手方向の外形寸法を小さく抑えることができ、かつ操作性が良い。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0072】
1,2…ヘッド部材
1b,2a…内面
1c,2e…先端部
4…マニホールド
4K…内部空間
5…スロット
6…栓部
7…シム部
8…塗布幅調整機構
10…塗布工具
811…フレキシブルシャフト(可撓性部材)
812…カップリング(伝達部)
813…ストローク調整ねじ(回転軸部)
821…湾曲部
O…中心軸
図1
図2
図3
図4