IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社加藤製作所の特許一覧

<>
  • 特開-建設機械 図1
  • 特開-建設機械 図2
  • 特開-建設機械 図3
  • 特開-建設機械 図4
  • 特開-建設機械 図5
  • 特開-建設機械 図6
  • 特開-建設機械 図7
  • 特開-建設機械 図8
  • 特開-建設機械 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095142
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/12 20060101AFI20230629BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20230629BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20230629BHJP
   B62D 21/18 20060101ALI20230629BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B66C13/12 D
B66C23/42 A
B60K1/00
B62D21/18 E
E02F9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210867
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】森山 巌誉
【テーマコード(参考)】
2D015
3D203
3D235
3F205
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D203AA26
3D203AA27
3D235AA16
3D235BB17
3D235CC05
3D235CC13
3D235DD17
3D235FF24
3F205AA05
(57)【要約】
【課題】エンジン、後処理装置、インバータ及びコンバータの全てが搭載されても重量のバランスが確保され、エンジンでの熱のインバータ及びコンバータへの影響が低減される建設機械を提供すること。
【解決手段】建設機械では、旋回体の旋回軸に対して走行車体の後方側で車体フレームに鉛直上側からエンジンカバーが設置され、エンジンカバーの内部のエンジンルームに、エンジンが配置される。後処理装置は、走行車体の幅方向の一方側にエンジンに対して並んで配置される。インバータ及びコンバータは、エンジンルームの外部で、かつ、走行車体の幅方向についてエンジンに対して後処理装置が位置する側とは反対側で、車体フレームに鉛直上側から設置される。インバータは、直流電力と交流電力との間で電力変換し、コンバータは、直流電力を電圧変換する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームを備える走行車体と、
前記走行車体の前記車体フレームに鉛直上側から連結され、鉛直方向に沿う旋回軸を中心に前記走行車体に対して旋回可能な旋回体と、
前記旋回体の前記旋回軸に対して前記走行車体の後方側で前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、エンジンルームを内部に形成するエンジンカバーと、
前記エンジンルームに配置され、始動されることにより動力を発生するエンジンと、
前記走行車体の幅方向の一方側に前記エンジンに対して並んで配置され、前記エンジンからの排気ガスを後処理して大気に排気する後処理装置と、
前記エンジンルームの外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、直流電力と交流電力との間で電力変換するインバータと、
前記エンジンルームの前記外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、直流電力を電圧変換するコンバータと、
を具備する、建設機械。
【請求項2】
前記エンジンルームの前記外部で前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、前記インバータ及び前記コンバータを収容する収容空洞を内部に形成するカバー部材をさらに具備し、
前記エンジンカバー及び前記カバー部材の少なくとも一方は、前記エンジンルームと前記収容空洞との間を仕切る、
請求項1の建設機械。
【請求項3】
前記インバータにおいて前記直流電力から変換された前記交流電力が供給されることにより動力を発生し、前記走行車体の走行による運動エネルギーを電気エネルギーに変換することによって発電した前記交流電力を前記インバータに供給するモータジェネレータと、
前記インバータにおいて前記交流電力に変換される前記直流電力を前記インバータに供給するとともに、前記直流電力を前記コンバータに供給する電源と、
をさらに具備し、
前記コンバータは、前記電源からの前記直流電力、及び、前記インバータにおいて前記交流電力から変換された前記直流電力に対して、電圧変換し、電圧変換した前記直流電力を出力する、
請求項1又は2の建設機械。
【請求項4】
前記エンジンルームの前記外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、作動されることにより、前記インバータ及び前記コンバータを通して冷媒を循環させるポンプと、
前記エンジンルームの前記外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、循環する前記冷媒において熱を放熱するラジエータと、
をさらに具備する、請求項1乃至3のいずれか1項の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、走行車体、及び、走行車体に鉛直上側から連結される旋回体を備える建設機械としてクレーンが開示されている。このクレーンでは、旋回体は、鉛直方向に沿う旋回軸を中心に、走行車体に対して旋回可能である。また、クレーンには、エンジンが搭載され、エンジンの始動によって発生した動力を用いて、走行車体の走行動作、旋回体の旋回動作、及び、ブームの起伏動作等が行われる。また、クレーンでは、電源であるバッテリーからの直流電力がインバータで交流電力に変換され、インバータでは変換された交流電力がモータ(電動機)に供給されることにより、モータで動力が発生する。クレーンでは、モータで発生した動力も、走行車体の走行動作等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-289983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のようにエンジンが搭載される建設機械では、エンジンからの排気ガスを後処理して大気に排気する後処理装置が、搭載されることがある。また、建設機械には、バッテリーからの電力とは異なる電圧で作動される電装品が、搭載されることがある。この場合、直流電力の電圧を変換するコンバータ(DC/DCコンバータ)を、建設機械に搭載することが、必要となる。エンジン、後処理装置、インバータ及びコンバータのそれぞれの重量は、ある程度の大きさとなる。このため、エンジン、後処理装置、インバータ及びコンバータの全てが搭載される建設機械では、走行車体等における重量のバランスが確保されることが、求められている。また、エンジンで発生した熱のインバータ及びコンバータへの影響が低減されることが、求められている。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エンジン、後処理装置、インバータ及びコンバータの全てが搭載されても重量のバランスが確保され、エンジンでの熱のインバータ及びコンバータへの影響が低減される建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様の建設機械は、車体フレームを備える走行車体と、前記走行車体の前記車体フレームに鉛直上側から連結され、鉛直方向に沿う旋回軸を中心に前記走行車体に対して旋回可能な旋回体と、前記旋回体の前記旋回軸に対して前記走行車体の後方側で前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、エンジンルームを内部に形成するエンジンカバーと、前記エンジンルームに配置され、始動されることにより動力を発生するエンジンと、前記走行車体の幅方向の一方側に前記エンジンに対して並んで配置され、前記エンジンからの排気ガスを後処理して大気に排気する後処理装置と、前記エンジンルームの外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、直流電力と交流電力との間で電力変換するインバータと、前記エンジンルームの前記外部で、かつ、前記走行車体の前記幅方向について前記エンジンに対して前記後処理装置が位置する側とは反対側で、前記車体フレームに前記鉛直上側から設置され、直流電力を電圧変換するコンバータと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジン、後処理装置、インバータ及びコンバータの全てが搭載されても重量のバランスが確保され、エンジンでの熱のインバータ及びコンバータへの影響が低減される建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る建設機械の一例であるクレーンを、幅方向の一方側から走行車体を視た状態で示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る建設機械の一例であるクレーンを、後方側から走行車体を視た状態で示す背面図である。
図3図3は、実施形態に係るクレーンの走行車体を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るクレーンの走行車体を、エンジンカバー及びカバー部材を取外した状態で示す斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るクレーンの走行車体において、エンジンルームの内部構成、及び、収容空洞の内部構成を示す斜視図である。
図6図6は、実施形態に係るクレーンの走行車体において、収容空洞の内部構成を、鉛直上側から視た状態で示す上面図である。
図7図7は、実施形態に係るクレーンの走行車体において、収容空洞の内部構成を、走行車体の幅方向の外側から視た状態で示す側面図である。
図8図8は、実施形態に係るクレーンの走行車体において、収容空洞の内部構成を、ラジエータ及びオイルクーラを取外し、かつ、走行車体の幅方向の外側から視た状態で示す側面図である。
図9図9は、実施形態に係るクレーンの走行車体において、収容空洞の内部構成を、ラジエータ、オイルクーラ及びファンを取外し、かつ、走行車体の幅方向の外側から視た状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
図1及び図2は、実施形態に係る建設機械の一例として、クレーン1を示す。図1及び図2に示すように、クレーン1は、走行車体2及び旋回体3を備える。走行車体2では、鉛直方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)に対して交差する(直交又は略直交する)前後方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)が、規定される。図1では、走行車体2は、幅方向の一方側、すなわち、右方側(矢印W1側)から視た状態で示され、図2では、走行車体2は、後方側(矢印X2側)から視た状態で示される。
【0011】
走行車体2は、車体フレーム5を備える。車体フレーム5は、鉛直上側を向くフレーム上面6を備える。旋回体3は、鉛直上側から車体フレーム5に連結され、フレーム上面6に設置される。旋回体3は、鉛直方向に沿う旋回軸Pを中心に、走行車体2に対して旋回可能である。旋回体3でも、鉛直方向に交差する(直交又は略直交する)前後方向、及び、鉛直方向及び前後方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向が規定される。図1及び図2では、走行車体2の前後方向が旋回体3の前後方向と一致又は略一致し、かつ、走行車体2の幅方向が旋回体3の幅方向と一致又は略一致する状態を示す。また、図1及び図2では、走行車体2の前方側(矢印X1側)が旋回体3の前方側と一致又は略一致する状態で、クレーン1を示す。
【0012】
旋回体3は、キャブ(運転室)7を備える。キャブ7では、操作者によってクレーン1の操作等が行われる。クレーン1の操作には、クレーン1の走行に関する操作、及び、クレーン1を用いた作業における操作等が、含まれる。また、旋回体3には、ブーム8の後端部が連結される。ブーム8は、後端部から前端部まで、長手方向に沿って延設される。ブーム8は、旋回体3への連結位置から旋回体3の前方側へ向かって、延設される。ブーム8は、旋回体3に対して起伏可能である。また、ブーム8は、旋回体3と一緒に、走行車体2に対して旋回可能である。本実施形態では、ブーム8は、長手方向について伸縮可能である。旋回体3では、キャブ7は、ブーム8に対して幅方向の一方側に位置し、図1及び図2等の一例では、キャブ7は、ブーム8に対して旋回体3の右方側に位置する。
【0013】
図3及び図4は、走行車体2を示す。図1図3及び図4等に示すように、走行車体2は、フロントアクスル11A及びリアアクスル11Bを備える。フロントアクスル11A及びリアアクスル11Bのそれぞれは、車体フレーム5に対して鉛直下側に配置され、走行車体2の幅方向に沿って延設される。また、フロントアクスル11A及びリアアクスル11Bは、走行車体2の前後方向に互いに対して離れて配置され、走行車体2では、フロントアクスル11Aは、前方側の部位に配置され、リアアクスル11Bは、後方側の部位に配置される。そして、旋回体3の旋回軸Pは、走行車体2の前後方向についてフロントアクスル11Aとリアアクスル11Bとの間を通過する。また、フロントアクスル11Aは、一対の前輪12Aを備え、リアアクスル11Bは、一対の後輪12Bを備える。フロントアクスル11Aでは、走行車体2の幅方向について両端部のそれぞれに、前輪12Aの対応する一方が設けられ、リアアクスル11Bでは、走行車体2の幅方向について両端部のそれぞれに、後輪12Bの対応する一方が設けられる。
【0014】
また、走行車体2は、一対のフロントアウトリガ13A及び一対のリアアウトリガ13Bを備える。走行車体2では、フロントアウトリガ13Aのそれぞれは、フロントアクスル11Aに対して前方側に配置され、リアアウトリガ13Bのそれぞれは、リアアクスル11Bに対して後方側に配置される。このため、走行車体2では、一対のフロントアウトリガ13Aは、旋回軸Pに対して前方側に配置され、一対のリアアウトリガ13Bは、旋回軸Pに対して後方側に配置される。クレーン1での作業時等には、フロントアウトリガ13A及びリアアウトリガ13Bのそれぞれは、走行車体2の幅方向の外側へ張出されるとともに、地盤に接地される。
【0015】
図1乃至図3等に示すように、走行車体2では、エンジンカバー15及びカバー部材16が、車体フレーム5に鉛直上側から設置される。車体フレーム5のフレーム上面6では、旋回軸Pに対して走行車体2の後方側に、エンジンカバー15及びカバー部材16が配置される。また、車体フレーム5のフレーム上面6では、カバー部材16は、エンジンカバー15に対して、走行車体2の幅方向の一方側に並んで配置される。図1乃至図3等の一例では、カバー部材16は、エンジンカバー15に対して、走行車体2の右方側に並んで配置される。エンジンカバー15の内部には、エンジンルーム17が形成され、カバー部材16の内部には、収容空洞18が形成される。なお、図4では、エンジンカバー15及びカバー部材16を取外した状態が示され、エンジンルーム17の内部構成、及び、収容空洞18の内部構成が示される。
【0016】
エンジンカバー15は、鉛直上側、走行車体2の前方側、走行車体2の後方側、及び、走行車体2の幅方向について収容空洞18が位置する側とは反対側のそれぞれから、エンジンルーム17を覆う。また、カバー部材16は、鉛直上側、走行車体2の前方側、走行車体2の後方側、及び、走行車体2の幅方向についてエンジンルーム17が位置する側とは反対側のそれぞれから、収容空洞18を覆う。車体フレーム5は、エンジンルーム17及び収容空洞18に鉛直下側から隣接し、エンジンルーム17及び収容空洞18を鉛直下側から覆う。
【0017】
また、走行車体2の幅方向についてエンジンルーム17と収容空洞18との間は、エンジンカバー15及びカバー部材16の少なくとも一方によって、仕切られる。したがって、エンジンカバー15及びカバー部材16の少なくとも一方は、走行車体2の幅方向について収容空洞18が位置する側(走行車体2の右方側)から、エンジンルーム17を覆う。エンジンカバー15及びカバー部材16の少なくとも一方がエンジンルーム17と収容空洞18との間を仕切るため、カバー部材16は、エンジンルーム17の外部で車体フレーム5に設置され、収容空洞18は、エンジンルーム17の外部に形成される。
【0018】
図5は、エンジンルーム17の内部構成、及び、収容空洞18の内部構成を示す。図5では、図4に示す走行車体2において後方側の部分が、拡大して示される。図4及び図5等に示すように、エンジンルーム17には、エンジン21が、配置される。エンジン21は、エンジンルーム17の内部で、車体フレーム5に鉛直上側から設置される。エンジン21は、旋回軸Pに対して、走行車体2の後方側に位置する。また、車体フレーム5には、後処理装置22が鉛直上側から設置される。後処理装置22は、走行車体2の幅方向の一方側にエンジン21に対して並んで配置され、図4及び図5等の一例では、後処理装置22は、走行車体2の左方側(矢印W2側)にエンジン21に対して並んで配置される。エンジン21と後処理装置22との間は、排気管23を介して接続される。また、幅方向についての走行車体2の仮想上の中央面は、エンジン21を通過する。なお、図3乃至図5等の一例では、エンジン21と後処理装置22との間は、エンジンカバー15等で仕切られ、後処理装置22は、エンジンルーム17の外部に配置される。ただし、ある一例では、後処理装置22は、エンジンルーム17の内部に配置されてもよい。
【0019】
また、走行車体2では、エンジン21に対して前方側に流体継手であるトルクコンバータ25が設置される。トルクコンバータ25は、旋回軸Pに対して、走行車体2の後方側に配置される。原動機であるエンジン21は、始動されることにより、動力を発生する。エンジン21で発生した動力は、トルクコンバータ25に伝達される。トルクコンバータ25は、オイル等を用いて、エンジン21からの動力をトランスミッション(図示しない)に伝達する。そして、トランスミッションに伝達された動力は、フロントアクスル11A及びリアアクスル11Bの少なくとも一方に伝達される。エンジン21からの動力がフロントアクスル11A及び/又はリアアクスル11Bに伝達されることにより、前輪12A及び/又は後輪12Bが回転する。これにより、走行車体2(クレーン1)が走行動作を行う。
【0020】
また、トルクコンバータ25は、エンジン21からの動力をトランスミッションに伝達しない状態に、切替わり可能である。エンジン21からの動力がトランスミッションに伝達されない状態では、エンジン21が駆動していても、走行車体2は、走行動作を行うことなく停止する。また、エンジン21で発生した動力は、トルクコンバータ25を介して、油圧ポンプ(図示しない)に伝達可能である。エンジン21から伝達された動力によって油圧ポンプが作動されることにより、クレーン1に設けられる油圧モータ及び油圧シリンダー(いずれも図示しない)に作動油を供給可能になり、油圧モータ及び油圧シリンダーを作動可能となる。例えば、油圧モータの1つである旋回モータ(図示しない)が作動されることにより、旋回体3が旋回動作を行い、油圧シリンダーの1つであるブーム起伏シリンダー(図示しない)が作動されることにより、ブーム8が起伏動作を行う。
【0021】
また、エンジン21では、排気ガスが発生する。エンジン21で発生した排気ガスは、排気管23の内部を通して、後処理装置22へ排出される。後処理装置22は、エンジン21からの排気ガスの無害化処理等の後処理を行う。後処理装置22は、排気ガスに含まれる窒素酸化物及び粒子状物質等に対して処理を行う。例えば、後処理装置22では、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx:nitrogen oxide)を尿素水と反応させることで、窒素及び水を発生させ、窒素酸化物を排気ガスから除去する。また、後処理装置では、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF:diesel particulate filter)によって、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM:particulate matter)を捕集し、粒子状物質を排気ガスから除去する。排気ガスは、後処理装置22によって後処理が行われた後に、大気に排気される。この際、エンジンルーム17の外部に、後処理された排気ガスが排気される。
【0022】
また、走行車体2では、前後方向についてエンジン21とトルクコンバータ25との間に、モータジェネレータ26が設置される。モータジェネレータ26は、交流電力が供給されることにより、動力を発生する。このため、クレーン1には、エンジン21及びモータジェネレータ26の2つの動力源が設けられる。モータジェネレータ26は、クラッチ(図示しない)を間に介して、エンジン21に連結される。クラッチは、エンジン21とモータジェネレータ26との間で動力を伝達可能な状態、及び、エンジン21とモータジェネレータ26との間で動力を伝達不可能な状態のいずれかに切替わる。
【0023】
トルクコンバータ25は、モータジェネレータ26で発生した動力を、トランスミッション(図示しない)を介して、フロントアクスル11A及びリアアクスル11Bの少なくとも一方に伝達可能である。そして、モータジェネレータ26からの動力がフロントアクスル11A及び/又はリアアクスル11Bに伝達されることにより、前輪12A及び/又は後輪12Bが回転し、走行車体2(クレーン1)が走行動作を行う。このため、走行車体2は、エンジン21で発生した動力によって走行可能であるとともに、モータジェネレータ26で発生した動力によっても走行可能である。
【0024】
また、走行時において走行車体2が減速している状態等では、前輪12A及び後輪12Bを回転させる駆動力等を含む走行による運動エネルギーが、モータジェネレータ26に伝達される。モータジェネレータ26は、走行による運動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより、交流電力を発電する。したがって、モータジェネレータ26は、回生エネルギー(回生電力)を発生可能である。
【0025】
また、エンジン21が停止した状態では、エンジン21は、モータジェネレータ26から動力が伝達されることにより、始動される。このため、モータジェネレータ26は、エンジン21のスタータとして機能する。また、モータジェネレータ26は、エンジン21から伝達された動力を、交流電力に変換する。このため、モータジェネレータ26は、オルタネータとしても機能する。また、エンジン21とモータジェネレータ26との間で動力を伝達不可能な状態等では、モータジェネレータ26で発生した動力は、トルクコンバータ25を介して、前述の油圧ポンプに伝達可能である。モータジェネレータ26から伝達された動力によって油圧ポンプが作動された場合も、前述のように、油圧モータ及び油圧シリンダーに作動油を供給可能になり、油圧モータ及び油圧シリンダーを作動可能となる。
【0026】
また、走行車体2では、エンジンルーム17に、クーリングユニット27が配置される。クーリングユニット27は、エンジン21に対して、走行車体2の後方側に位置する。クーリングユニット27には、エンジン21を冷却するラジエータ(図示しない)、空気を冷却するインタークーラ、及び、作動油を冷却するオイルクーラ等が、一体に設けられる。図4及び図5等に示すように、カバー部材16の内部の収容空洞18には、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35が配置される。インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35のそれぞれは、エンジンルーム17の外部で、車体フレーム5に鉛直上側から設置される。
【0027】
車体フレーム5のフレーム上面6では、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、旋回軸Pに対して、走行車体2の後方側に配置される。また、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、走行車体2の幅方向について、エンジン21に対して、後処理装置22が位置する側とは反対側に位置する。図4及び図5等の一例では、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、エンジン21に対して走行車体2の右方側に位置する。また、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、走行車体2の幅方向について、エンジン21に対して外側に配置される。
【0028】
図6乃至図9は、カバー部材16の内部の収容空洞18の構成を示す。図6は、鉛直上側から視た状態を示し、図7乃至図9は、走行車体2の幅方向の外側から視た状態を示す。また、図8は、ラジエータ33及びオイルクーラ35を取外した状態を示し、図9は、ラジエータ33、オイルクーラ35及び後述のファン48を取外した状態を示す。図4乃至図9等に示すように、収容空洞18に配置されるコンバータ32には、ケーブル37が接続される。また、図4等に示すように、走行車体2では、幅方向について一方側の側部に、電源としてバッテリーパック36が設置される。図4等の一例では、バッテリーパック36は、走行車体2の右側部に設置され、走行車体2の前後方向においてフロントアクスル11Aとリアアクスル11Bとの間に位置する。バッテリーパック36は、ケーブル37を間に介して、コンバータ32に電気的に接続される。
【0029】
また、図4乃至図9等に示すように、インバータ31には、ケーブル38が接続される。また、ケーブル38は、モータジェネレータ26に接続される。このため、インバータ31は、ケーブル38を間に介して、モータジェネレータ26に電気的に接続される。また、インバータ31は、ケーブル51を間に介して、コンバータ32に電気的に接続される。インバータ31は、直流電力と交流電力との間で電力変換する。コンバータ32は、直流電力を電圧変換する。
【0030】
バッテリーパック36は、ケーブル37を介して、電圧(第1の電圧)V1の直流電力を出力する。バッテリーパック36から出力された直流電力は、コンバータ32に供給される。また、バッテリーパック36からの直流電力は、ケーブル37,51を介して、インバータ31に供給される。バッテリーパック36からインバータ31へ供給される直流電力は、コンバータ32において電圧変換されず、電圧V1の直流電力がインバータ31へ供給される。インバータ31は、電圧V1の直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を、ケーブル38を介してモータジェネレータ26に供給する。モータジェネレータ26は、インバータ31から交流電力が供給されることにより、動力を発生する。
【0031】
また、モータジェネレータ26は、前述のようにして発電した交流電力を、ケーブル38を介してインバータ31に供給する。インバータ31は、モータジェネレータ26からの交流電力を、電圧V1の直流電力に変換する。そして、インバータ31は、変換した直流電力を、ケーブル37,51を介してバッテリーパック36に供給し、バッテリーパック36を充電する。インバータ31からバッテリーパック36へ供給される直流電力は、コンバータ32において電圧変換されず、電圧V1の直流電力がバッテリーパック36へ供給される。また、インバータ31は、交流電力から変換した直流電力を、ケーブル51を介してコンバータ32に供給する。
【0032】
コンバータ32は、バッテリーパック36からの直流電力、及び、インバータ31において交流電力から変換された直流電力に対して、電圧変換する。図4乃至図9等の一例では、コンバータ32は、電圧V1の直流電力を降圧することにより、電圧V1より低い電圧(第2の電圧)V2の直流電力に電圧変換する。そして、コンバータ32は、電圧V2に電圧変換された直流電力を、ケーブル(図示しない)を介して、出力する。ここで、例えば、電圧V1は288Vであり、電圧V2は24Vである。
【0033】
クレーン1には、電圧V2の直流電力で作動される電装品が設けられる。電圧V2の直流電力で作動される電装品には、エンジンコントローラ、ハイブリッド用のコントローラ及び車両コントローラ等のコントローラが含まれるとともに、ソレノイド、リレー回路及び灯火器等が含まれる。また、収容空洞18には、ポンプ(電動ポンプ)46が配置され、ポンプ46も、電圧V2の直流電力によって作動される。コンバータ32において電圧変換された電圧V2の直流電力は、ケーブル(図示しない)を介して、ポンプ46を含む前述の電装品へ出力される。なお、ポンプ46は、収容空洞18に配置されるため、エンジンルーム17の外部で、かつ、走行車体2の幅方向についてエンジン21に対して後処理装置22が位置する側とは反対側で、車体フレーム5に鉛直上側から設置される。そして、ポンプ46は、旋回軸Pに対して、走行車体2の後方側に配置される。
【0034】
また、走行車体2には、バッテリー41が設置される。バッテリー41は、走行車体2の幅方向について、エンジン21に対して後処理装置22が位置する側とは反対側に配置される。また、バッテリー41は、カバー部材16に対して、走行車体2の後方側から隣接して配置される。バッテリー41は、電圧V2の直流電力を出力可能である。また、走行車体2では、収容ケース55が、鉛直下側から車体フレーム5に取付けられ、収容ケース55の内部には、リレー回路(図示しない)が収容される。そして、収容ケース55は、収容空洞18に鉛直下側から近接し、収容ケース55と収容空洞18との間には、車体フレーム5が介在する。
【0035】
コンバータ32は、収容ケース55の内部のリレー回路を間に介して、電圧V2の直流電力をバッテリー41に供給可能である。コンバータ32から電圧V2の直流電力が供給されることにより、バッテリー41が充電される。また、エンジン21及びモータジェネレータ26が駆動していない状態等では、バッテリー41は、収容ケース55の内部のリレー回路を間に介して、電圧V2の直流電力を前述の電装品に供給可能である。このため、前述した電装品は、バッテリー41からの電圧V2の直流電力によっても、作動される。
【0036】
また、収容空洞18では、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、インバータ31、コンバータ32及びポンプ46に対して、走行車体2の幅方向の外側に位置する。このため、ラジエータ33及びオイルクーラ35は、インバータ31及びコンバータ32に比べて、エンジン21から離れて位置する。ラジエータ33及びオイルクーラ35は、1つのフレーム45に一緒に取付けられ、フレーム45を介して車体フレーム5に設置される。また、収容空洞18では、ファン(電動ファン)48が、走行車体2の幅方向について、フレーム45とポンプ46との間に設置される。そして、ファン48は、ラジエータ33及びオイルクーラ35に対して、走行車体2の幅方向の内側から隣接する。
【0037】
また、収容空洞18では、タンク47が、ポンプ46に対して、走行車体2の幅方向の内側に設置される。タンク47は、チューブ43を間に介して、ラジエータ33に接続され、チューブ53を間に介して、インバータ31に接続される。タンク47には、冷媒となる水(冷却水)が溜められる。電圧V2の直流電力の供給等によってポンプ46が駆動されると、タンク47に溜められた水は、インバータ31、コンバータ32、ラジエータ33、ポンプ46及びタンク47を通して、循環する。冷媒となる水の循環経路の一部は、チューブ43,53等によって形成される。インバータ31、コンバータ32及びラジエータ33を通して循環する水の温度がある程度上昇したことに基づいて、ファン48が駆動される。ファン48が駆動されることにより、収容空洞18の外部からラジエータ33及びオイルクーラ35を通ってファン48に流入する空気の流れが、発生する。この際、走行車体2の幅方向の外側から、ラジエータ33及びオイルクーラ35を通って、ファン48に空気が流入する。これにより、ラジエータ33及びオイルクーラ35からファン48へ向かう空気の流れによって、ラジエータ33において、水が冷却される。そして、冷却された水(冷媒)を、インバータ31及びコンバータ32を通して循環させることにより、インバータ31及びコンバータ32が、冷却される。
【0038】
また、オイルクーラ35には、チューブ42が接続される。そして、走行車体2では、オイルクーラ35及びモータジェネレータ26を通して、冷媒となる油が循環する。冷媒となる油の循環経路の一部は、チューブ42等によって形成される。前述のようにしてファン48が駆動されることにより、収容空洞18の外部からラジエータ33及びオイルクーラ35を通ってファン48に流入する空気の流れが、発生する。これにより、ラジエータ33及びオイルクーラ35からファン48へ向かう空気の流れによって、オイルクーラ35において、油が冷却される。そして、冷却された油(冷媒)を、モータジェネレータ26を通して循環させることにより、モータジェネレータ26が、冷却される。
【0039】
前述のように、本実施形態では、後処理装置22は、走行車体2の幅方向の一方側に、エンジン21に対して並んで配置される。そして、インバータ31及びコンバータ32は、エンジンルーム17の外部で、かつ、走行車体2の幅方向についてエンジン21に対して後処理装置22が位置する側とは反対側で、車体フレーム5に鉛直上側から設置される。ここで、エンジン21、後処理装置22、インバータ31及びコンバータ32のそれぞれの重量は、ある程度の大きさとなる。本実施形態では、エンジン21、後処理装置22、インバータ31及びコンバータ32が前述のように配置されるため、走行車体2における重量のバランスが適切に確保され、クレーン1における重量のバランスが適切に確保される。特に、本実施形態では、幅方向についての走行車体2の仮想上の中央面がエンジン21を通過する。このため、特に走行車体2の幅方向についての重量のバランスが、適切に確保される。
【0040】
また、本実施形態では、インバータ31及びコンバータ32は、エンジンルーム17の外部に配置される。エンジン21で発生した熱のインバータ31及びコンバータ32への影響が、低減される。すなわち、エンジン21での熱に起因するインバータ31及びコンバータ32の過度の温度上昇等が、有効に抑制される。このため、ラジエータ33等をインバータ31及びコンバータ32を冷却する機構の大型化が、抑制される。ラジエータ33において冷媒となる水を冷却するファン48での消費電力、及び、冷媒となる水を循環させるポンプ46での消費電力が、低減される。また、インバータ31及びコンバータ32がエンジンルーム17の外部に配置されるため、エンジンルーム17を内部に形成するエンジンカバー15の大型化が、抑制される。エンジンカバー15の大型化が抑制されることにより、旋回体3のエンジンカバー15への干渉が、有効に防止される。
【0041】
また、インバータ31及びコンバータ32は、車体フレーム5に鉛直上側から設置されるとともに、カバー部材16の内部の収容空洞18に収容される。このため、インバータ31及びコンバータ32が水等に曝され難くなり、水等によるインバータ31及びコンバータ32の損傷が有効に防止される。
【0042】
また、コンバータ32は、走行車体2の幅方向について、エンジン21に対してインバータ31が位置する側に配置され、インバータ31の近傍に配置される。このため、インバータ31及びコンバータ32を、互いに対して共通のラジエータ33、ポンプ46及びファン48を用いて、冷却可能となる。また、インバータ31及びコンバータ32が互いに対して近い位置に位置するため、冷媒である水を循環させる経路を形成するチューブ等の配管を短くすることが可能となる。水を循環させる経路を形成する配管等が短くなることにより、インバータ31及びコンバータ32を冷却する機構において、冷媒である水の圧力損失が抑制されるとともに、インバータ31及びコンバータ32を冷却する機構の軽量化を実現可能となる。
【0043】
また、前述のようにインバータ31及びコンバータ32を配置することより、モータジェネレータ26の近傍に、インバータ31を配置可能となる。モータジェネレータ26の近傍にインバータ31が配置されることにより、インバータ31とモータジェネレータ26との間のケーブル38を短くすることが可能となり、インバータ31とモータジェネレータ26との間での電力のロスが、有効に抑制される。これにより、モータジェネレータの性能がさらに適切に確保される。
【0044】
なお、前述のエンジン21、後処理装置22、インバータ31及びコンバータ32等の配置は、クレーン1以外の建設機械にも、適用可能である。すなわち、走行車体2及び旋回体3を備える建設機械であれば、前述のようにエンジン21、後処理装置22、インバータ31及びコンバータ32等を設置可能である。
【0045】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0046】
1…クレーン、2…走行車体、3…旋回体、5…車体フレーム、15…エンジンカバー、16…カバー部材、17…エンジンルーム、18…収容空洞、21…エンジン、22…後処理装置、25…トルクコンバータ、26…モータジェネレータ、31…インバータ、32…コンバータ、33…ラジエータ、46…ポンプ、48…ファン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9