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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095167
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】鳥害防止具
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/32 20110101AFI20230629BHJP
【FI】
A01M29/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210896
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA07
2B121BB26
2B121EA21
2B121FA01
(57)【要約】
【課題】バンド部材に容易に固定できる鳥害防止具を提供する。
【解決手段】パイプPの外周面を抱持するバンド部材20に取り付けられる鳥害防止具10であって、前記パイプの外周面と前記バンド部材の内周面との間に介在され、弾性変形可能な材質からなる本体部11と、該本体部から離れる方向に延伸する突起部12と、前記バンド部材に係止される係止部13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面を抱持するバンド部材に取り付けられる鳥害防止具であって、
前記パイプの外周面と前記バンド部材の内周面との間に介在され、弾性変形可能な材質からなる本体部と、該本体部から離れる方向に延伸する突起部と、前記バンド部材に係止される係止部とを備えることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項2】
請求項1において、
前記本体部は、前記バンド部材の内周面に沿って弾性変形可能な長尺の板状とされ、
前記突起部は、前記本体部の長手方向に沿って複数配置されていることを特徴とする鳥害防止具。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記本体部と前記突起部と前記係止部とは、一体成形されていることを特徴とする鳥害防止具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを抱持するバンド部材に取り付けられる鳥害防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物等が備える野外のパイプには、鳥が止まることや鳥の営巣を抑制させるための鳥害防止具が設置されることがある。このような鳥害防止具は、複数の突起部を備えることによって、パイプに止まろうとする鳥の行動を妨げている。
【0003】
下記特許文献1では、鳥の止まりを妨げる針状突起(22)が設けられた複数の防鳥モジュール(20)が、支持杆(11)の外周面に沿って配置した状態で帯状締付具(30)によって支持杆(11)に固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-341930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、複数の防鳥モジュール(20)が帯状締付具(30)によって支持杆(11)の外周面に沿うように配置して固定されているため、各防鳥モジュール(20)の位置調整が煩雑という懸念がある。また、帯状締付具(30)が支持杆(11)に固定される前は、防鳥モジュール(20)が帯状締付具(30)に対して固定されていないため、鳥害防止装置(10)の取り付け作業時には、作業員は防鳥モジュール(20)が落下しないよう注意して作業を行う必要がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、バンド部材に容易に固定できる鳥害防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の鳥害防止具は、パイプの外周面を抱持するバンド部材に取り付けられる鳥害防止具であって、前記パイプの外周面と前記バンド部材の内周面との間に介在され、弾性変形可能な材質からなる本体部と、該本体部から離れる方向に延伸する突起部と、前記バンド部材に係止される係止部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鳥害防止具は上述した構成とされるため、バンド部材に容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る鳥害防止具の使用例を示す概略的正面図である。
図2】同鳥害防止具が取り付けられるバンド部材を示す図であり、(a)は模式的側面図、(b)は模式的平面図である。
図3】同鳥害防止具の模式的斜視図である。
図4】同鳥害防止具がバンド部材に取り付けられた状態を示す図であり、(a)は模式的側面図、(b)は模式的平面図、(c)は(a)のX-X線矢視拡大断面図である。
図5】(a)は一実施形態に係る鳥害防止具の変形例を示す模式的斜視図、(b)は突条部の変形を説明するための説明図、(c)は同鳥害防止具の使用例を示す概略的平面図である。
図6】(a)は一実施形態に係る鳥害防止具の他の変形例を示す模式的斜視図、(b)は同鳥害防止具の取り付け方を説明するための図である。
図7】(a)は本発明の他の実施形態に係る鳥害防止具の模式的斜視図であり、(b)はその使用例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
図1図4に示す本実施形態に係る鳥害防止具10は、パイプPの外周面を抱持するバンド部材20に取り付けられる。鳥害防止具10は、パイプPの外周面とバンド部材20の内周面との間に介在され、弾性変形可能な材質からなる本体部11と、本体部11から離れる方向に延伸する突起部12と、バンド部材20に係止される係止部13とを備える。
以下、詳述する。
【0011】
図1は、鳥害防止具10の使用例を示す概略的正面図である。図1に示すパイプPは、建物や橋等の構造体に付随して設けられており、構造体の見付け方向に沿って配管されている。このパイプPには、バンド部材20を介して鳥害防止具10が固定されている。1つのバンド部材20には、2つの鳥害防止具10,10が取り付けられている。図1では、鳥害防止具10が取り付けられた複数のバンド部材20をパイプPの所望の位置に固定することで、カラスやハト、スズメ等の鳥がパイプPに止まることや鳥の営巣を抑制させることができる。次に、各図面を参照しながら各部材について説明する。まず、鳥害防止具10が取り付けられるバンド部材20について説明する。
【0012】
図2は、バンド部材20を示す図であり、(a)は模式的側面図、(b)は模式的平面図である。図2(a)(b)に示すバンド部材20は、金属製の帯板材を加工して形成されている。バンド部材20は、ヒンジ部21を介して開閉可能に連結された一対の略半円状の抱持部22,22と、各抱持部22の一端部221から平板状に延伸し、ボルトSが挿通される2つの貫通孔23a,23aを有する取付部23とを備えている。抱持部22は、抱持部22の周方向に沿って延伸し、外周面側に突出した補強用のリブ24が形成されている。バンド部材20は、ヒンジ部21を介して抱持部22,22を回動して閉じたときにパイプPに対応した形状となるように構成されている。
【0013】
次に、図3を参照しながら鳥害防止具10について説明する。図3は、バンド部材20に取り付けられる前の状態における鳥害防止具10を示す模式的斜視図である。本実施形態の鳥害防止具10は、弾性材料であるゴム材を射出成形することによって成形され、本体部11と突起部12と係止部13とが一体成形されている。本体部11は、バンド部材20の抱持部22の内周面22bに沿って弾性変形可能な長尺の板状に形成されている。本実施形態の本体部11の長手方向の寸法は、バンド部材20の抱持部22の周方向の寸法よりも若干短い寸法で形成されている。
【0014】
本体部11の厚さ方向の一方側には、本体部11の一方面11aから空間を介して離隔した位置に係止部13A,13Bが設けられている。本体部11の短手方向の一方側に位置する係止部13Aは、本体部11の短手方向の一方側の端部111から本体部11の厚さ方向の一方側に延伸した接続部14の端部141から本体部11における短手方向の他方側に延伸して設けられている。また、本体部11の短手方向の他方側に位置する係止部13Bは、本体部11の短手方向の他方側の端部112から本体部11の厚さ方向の一方側に延伸した接続部14の端部141から本体部11における短手方向の一方側に延伸して設けられている。係止部13A,13Bは、本体部11の長手方向に沿って延びている。なお、本体部11の短手方向の寸法は、接続部14,14間の寸法がバンド部材20の短手方向の寸法(バンド部材20を構成する帯板の幅寸法)と略同一になるように構成されている。また、本体部11と係止部13A,13A間の寸法は、バンド部材20の厚さ方向の寸法と略同一になるように構成されている。
【0015】
係止部13A,13Bの各一方面13a,13aには、係止部13A,13Bの長手方向に沿って等間隔に複数配置された突起部12が設けられている。係止部13A,13Bの各一方面13a,13aには、それぞれ4つの突起部12が設けられている。突起部12は、円錐状に形成され、本体部11から離れる方向に延伸している。突起部12は、本体部11の短手方向に対して傾斜した角度で設けられており、本体部11の短手方向の一方側の係止部13Aに設けられた突起部12は、本体部11の短手方向の一方側に傾斜して設けられている。また、本体部11の短手方向の他方側の係止部13Bに設けられた突起部12は、本体部11の短手方向の他方側に傾斜して設けられている。
【0016】
本体部11、接続部14,14、係止部13A,13Bにより囲まれた空間が、バンド部材20の抱持部22が配される空間15Aとなる。鳥害防止具10は、ゴム材からなるので、バンド部材20の抱持部22の大きさや形状に合わせて変形してバンド部材20に取り付けが可能である。また、2つの係止部13A,13B間には、空間15Aに連なる空間15Bが設けられている。空間15Bは、鳥害防止具10がバンド部材20に取り付けられた際にバンド部材20のリブ24が係止部13A,13Bと接触せずに空間15B内に位置するように設けられている。空間15Bにより、リブ24が設けられているバンド部材20であっても鳥害防止具10を取り付けることができる。また、係止部13A,13Bにリブ24が接触しないように設けられた空間15Bにより、係止部13A,13Bはリブ24との接触による傾きや変形が抑制されて、係止部13A,13Bに設けられた各突起部12が所望の角度を維持することができる。
【0017】
次に、図4を参照しながら、バンド部材20に鳥害防止具10が取り付けられた状態について説明する。図4(a)に示すように、バンド部材20には、各抱持部22,22に対して鳥害防止具10が1つずつ取り付けられている。つまり、本実施形態では、1つのバンド部材20に対して2つの鳥害防止具10,10が取り付けられている。鳥害防止具10は、本体部11がバンド部材20の抱持部22の内周面22bに沿って弾性変形可能なので、抱持部22が略半円状であっても抱持部22の内周面22bに沿って湾曲状に変形して取り付けることが可能となっている。また、図4(b)に示すように鳥害防止具10は、抱持部22の外周面22aに係止される係止部13A,13Bを備えている。鳥害防止具10は、本体部11と係止部13A,13Bとが抱持部22を挟み込むように取り付けられるため、バンド部材20から脱落しにくくなっている。
【0018】
また、図4(c)に示すように、バンド部材20の抱持部22は鳥害防止具10の空間15A内に収まるように配され、リブ24は係止部13A,13B間の空間15B内に位置している。係止部13A,13Bは、リブ24に接触しないように構成されているので、リブ24の接触に伴う変形や傾きが抑制される。そして、突起部12が設けられた係止部13A,13Bがリブ24の接触に伴う変形や傾きが生じにくいので、突起部12は設計された角度でバンド部材20に固定される。
【0019】
バンド部材20は、抱持部22,22がパイプPを抱持している状態で取付部23の貫通孔23aに挿通されたボルトSとナットNとの螺着により抱持部22,22が締結されることによって、パイプPに固定される。鳥害防止具10の本体部11は一方面11aがバンド部材20の抱持部22の内周面22bに接触し、他方面11bがパイプPの外周面に接触した状態で、バンド部材20とパイプPとの間に介在する。本実施形態では、抱持部22,22の略全周に亘って鳥害防止具10,10が取り付けられたバンド部材20がパイプPに固定されている。そのため、飛来した鳥がパイプPに止まろうとすると、突起部12が鳥の体に接触して鳥がパイプPに止まることを抑制する。また、突起部12は本体部11や係止部13と同様にゴム材からなるので、突起部12の先端部が鳥の体に接触しても、鳥の体を傷つけるおそれは少ない。なお、鳥害防止具10は、少なくともパイプPに固定されたときにパイプPの上側(空を向く方向)となる位置に設けられることが望ましい。
【0020】
バンド部材20の内径の大きさは、パイプPの外径に鳥害防止具10の本体部11の厚みを考慮して選択される。図4(a)に示すように、パイプPの外周面とバンド部材20の抱持部22,22の内周面22b,22bとの間には隙間が形成されており、その隙間を鳥害防止具10の本体部11が埋めている。これにより、バンド部材20はパイプPに対して強固に固定される。また、本実施形態の鳥害防止具10はゴム材からなるので、本体部11の他方面11bがパイプPの外周面に対して圧縮変形しながら接触することにより、寸法誤差を吸収することができる。また、圧縮変形した鳥害防止具10による押圧がバンド部材20やパイプPに対してかかっているので、外力等によりバンド部材20がパイプPに対して移動してしまうことや脱落してしまうことが抑制される。
【0021】
本実施形態の鳥害防止具10は、本体部11がバンド部材20に係止する係止部13A,13Bを備えることにより、バンド部材20に容易に固定することができる。また、鳥害防止具10はバンド部材20に合体してからパイプPに取り付けする取り付け手順であり、個別に取り付けなくてもよいため、取り付け作業を迅速に実施できる。また、鳥害防止具10は係止部13によってバンド部材20に係止されているため、鳥害防止具10がバンド部材20から脱落して取付作業を妨げるような事態が発生しにくい。なお、鳥害防止具10の空間15Aがバンド部材20に対して大きく形成されていても、係止部13A,13Bがバンド部材20の外周面に係止されていれば、鳥害防止具10は容易にはバンド部材20から脱落しない。そして、パイプPに固定されれば、バンド部材20によって鳥害防止具10が締め付けられるので、鳥害防止具10がパイプPから脱落するおそれは小さくなる。また、本体部11がバンド部材20の内周面に沿って弾性変形可能な長尺の板状なので、鳥害防止具10はバンド部材20の形や大きさに関わらず取り付け可能となる。そして、鳥害防止具10が同一の材料によって一体成形されていることによって、各部材がばらけることが抑制される。また、鳥害防止具10は射出成形等の公知の成型方法によって、容易に製造することができる。
【0022】
ところで、配管等に用いられるパイプは、互換性の確保等の観点から日本工業規格(JIS)等の規格に則って製造会社に製造される傾向にある。例えば、JIS G 3452では、黒管の寸法が定められており、黒管の外径60.5mmの次に大きいサイズは外径76.3mm、外径76.3mmの次に大きいサイズは外径89.1mm、外径89.1mmの次に大きいサイズは外径101.6mmといったように、細かく外径の寸法が定められている。
【0023】
黒管の外周面を抱持して建物等の構造体に固定するために用いられる固定部材は、製造会社が黒管の外径の規格に合わせて各種サイズに適合したものが製造される。例えば、外径60.5mmの黒管を抱持するための固定部材であれば、固定部材は内径が60.5mmに近い寸法のものが製造される。同様に、外径76.3mmの黒管のためのものならば固定部材は内径が76.3mmに近い寸法のものが製造され、JIS規格に適合した各種黒管に合わせた内径寸法を有する固定部材が製造される。このように固定対象の黒管の外径寸法に近い内径寸法を有する固定部材により、黒管は建物等の構造体に対して強固に固定される。
【0024】
本実施形態におけるバンド部材20は、すでに市場に流通している市販品の黒管等の固定部材を用いることができる。ところが、例えば黒管であるパイプPに鳥害防止具10を固定するために市販品の黒管の固定部材をバンド部材20として用いる場合、市販品の固定部材は、固定対象のパイプP(黒管)の外形寸法に近い内径寸法で形成されている。そのため、このような固定部材をバンド部材20として用い、鳥害防止具10を取り付けると、本体部11の厚み寸法によっては鳥害防止具10が取り付けられたバンド部材20をパイプPに取り付けられないおそれがある。また、厚み寸法の合わない鳥害防止具10を備えたバンド部材20がパイプPに取り付けることができたとしても、取付部23,23を固定するボルトSとナットNとの締結を若干緩める必要が生じる可能性がある。
【0025】
鳥害防止具10が取り付けられたバンド部材20がパイプPに取り付けられない場合、パイプPよりも一つサイズの大きい黒管を対象とした固定部材がバンド部材20として用いられる。JIS G 3452では、黒管の外形寸法は、60.5mm、76.3mm、89.1mm、101.6mm、114.3mm、139.8mm、165.2mm、190.7mm、216.3mmといったように、隣り合うサイズの寸法差が15.8mm、12.8mm、12.5mm、12.7mm、25.5mm、25.4mm、25.5mm、25.6mmといったようにばらつきがある。本実施形態では、本体部11が弾性変形するゴム材で形成されているので、ある程度の寸法差は本体部11の厚さを大きくすることで対応可能である。しかしながら、本体部11全体を分厚くしすぎるとコスト高を招くだけでなく、パイプPの外周面とバンド部材20の抱持部22,22の内周面22b,22bとの間の隙間に対して本体部11が過剰な厚みを有していると、パイプPに固定できないおそれがある。
【0026】
次に説明する第1実施形態の変形例である図5(a)(b)(c)に示す鳥害防止具10’は、本体部11が過剰な厚みとならないように、本体部11の他方面11bに部分的に突条部16を設けて、本体部11とパイプPとの間の隙間を埋めている。なお、図5(a)(b)(c)に示す鳥害防止具10’は、図1図4に示す鳥害防止具10と共通する部分の構成及び効果の説明は省略している。
【0027】
図5(a)(b)(c)に示す鳥害防止具10’は、各部材がゴム材によって一体成形されている。鳥害防止具10’は、本体部11の他方面11bの短手方向の両側に、長手方向に延伸する突条部16,16が形成され、突条部16,16間には空隙17が形成されている。突条部16,16が本体部11の他方面11bから突出して設けられているので、図5(b)に示すように、バンド部材20によってパイプPに鳥害防止具10’が固定されると、突条部16,16は弾性変形する。このとき突条部16,16は、短手方向両側の外部空間だけではなく、突条部16,16間に形成された空隙17にも逃げるように弾性変形する。このように、本変形例の鳥害防止具10’は、突条部16,16と空隙17とが設けられたことにより、突条部16,16の弾性変形により幅広いサイズのパイプPにバンド部材20を介して固定することができる。
【0028】
係止部13A,13Bは、第1実施形態の鳥害防止具10と同様に接続部14を介して本体部11の厚さ方向の一方側に設けられている。係止部13A,13Bには、それぞれ傾斜角度の異なる角錐状の突起部12A,12Bが本体部11の長手方向に沿って交互に設けられている。係止部13Aに設けられた突起部12Aは、第1実施形態の突起部12と同様に、本体部11の短手方向の一方側に傾斜して設けられており、同様に係止部13Bに設けられた突起部12Aは、本体部11の短手方向の他方側に傾斜して設けられている。係止部13A,13Bに設けられた突起部12Bは、本体部11の厚さ方向と略平行に延伸して設けられている。突起部12及び突起部12Bが異なる角度で傾斜することにより、パイプPに止まろうとする鳥により接触しやすくなり、鳥のパイプPへの止まりをより抑制することができる。
【0029】
また、係止部13Aと係止部13Bは、本体部11の長手方向の略同位置では、一方は突起部12A、他方は突起部12Bが設けられている構成になっている。これにより、図5(c)に示すように、鳥害防止具10’が取り付けられた複数のバンド部材20間の距離を小さくしても、一方のバンド部材20に取り付けられた鳥害防止具10’の突起部12A,12Bが他方のバンド部材20に取り付けられた鳥害防止具10’の突起部12A,12Bに接触しにくくなる。また、係止部13及び接続部14には、各突起部12A,12Bの間に切れ込み18が設けられている。複数の切れ込み18により、鳥害防止具10’はバンド部材20の外周面に沿ってより曲げやすくなっている。
【0030】
次に、図6(a)(b)に示す第1実施形態の鳥害防止具10のさらなる変形例である鳥害防止具10’’について説明する。鳥害防止具10’’は、第1実施形態の鳥害防止具10と比べて、突起部12が設けられている位置及び設けられている個数と、係止部13の構成が異なる。突起部12は、本体部11の短手方向の両側に設けられた接続部14,14に設けられている。本体部11の短手方向の一方側の接続部14に設けられている突起部12は、本体部11の短手方向の一方側に傾斜して設けられている。また、本体部11の短手方向の他方側の接続部14に設けられている突起部12は、本体部11の短手方向の他方側に傾斜して設けられている。
【0031】
係止部13A,13Bは、先端部が先細るように一方面13aが傾斜して形成されている。また、係止部13A,13Bは、第1実施形態のものよりも接続部14の一端部141からの突出寸法が小さく形成されている。これにより、図6(b)に示すように、バンド部材20の内周面側から鳥害防止具10’’を押し込むことで、係止部13A,13Bの傾斜した一方面13a,13aによってバンド部材20が本体部11、接続部14,14、係止部13A,13Bに囲まれた空間15A内に収まりやすくなる。
【0032】
次に図7(a)(b)に示す第2実施形態に係る鳥害防止具10Aについて説明する。なお、図1図4に示す第1実施形態に係る鳥害防止具10と共通する部分の構成及び効果の説明は省略する。図7(a)は、第2実施形態に係る鳥害防止具10Aの模式的斜視図である。簡単に説明すると、第2実施形態の鳥害防止具10Aは、第1実施形態の鳥害防止具10を係止部13が1つだけとなるように半分にしたものである。以下、詳しく説明する。
【0033】
図7(a)の鳥害防止具10Aは、本体部11と接続部14と係止部13と4つの突起部12とを備えている。本体部11は、バンド部材20の内周面に沿って弾性変形可能な長尺の板状に形成されている。なお、本体部11の短手方向の寸法は、第1実施形態の鳥害防止具10の本体部11の短手方向の寸法の略半分程度の大きさである。また、本体部11の短手方向の他方側の先端部は、短手方向の他方側にむけて先細った形状の差込部11cとなっている。本体部11の短手方向の一方側の端部111には、本体部11の厚さ方向の一方側に延伸した接続部14が設けられている。そして、接続部14の端部141から本体部11における短手方向の他方側に延伸して係止部13が設けられている。係止部13の一方面13aには、係止部13の長手方向に沿って等間隔に配置された4つの円錐状の突起部12が設けられている。係止部13は、本体部11の一方面11aから厚さ方向の一方側に離隔して設けられており、本体部11、接続部14、係止部13に囲まれた空間15Aが形成されている。
【0034】
図7(b)は、縦配管のパイプPにバンド部材20を介して固定されている鳥害防止具10Aの模式的正面図である。なお、バンド部材20は、第1実施形態とものと略同一のものを用いることが可能である。本実施形態の鳥害防止具10Aは、第1実施形態と同様にバンド部材20に予め取り付けてからパイプPに固定することができ、また、図7(b)に示す縦配管のパイプPに限らず図1に示すような横配管のパイプPにも用いることができる。
【0035】
また、パイプPにすでに取り付けられているバンド部材20に後付で鳥害防止具10Aを取り付けることも可能である。その場合には、ボルトSとナット(不図示)との締結を緩めてパイプPの外周面とバンド部材20の内周面との間に隙間を作り、当該隙間に鳥害防止具10Aの差込部11cをバンド部材20の上方から差し込む。接続部14がバンド部材20の端面に接触するまで本体部11が差し込まれたらボルトSとナットとを締結する。これにより、鳥害防止具10Aはバンド部材20を介してパイプPに後付で取り付けられる。図7(b)に示すように、鳥害防止具10Aの本体部11の短手方向の寸法は、バンド部材20の短手方向の寸法の半分程度の大きさである。そのため、図7(b)に示すバンド部材の上方から差し込まれた鳥害防止具10Aに加えて、下方からも別の鳥害防止具10Aが差し込まれてもよい。
【0036】
上述した各実施形態の鳥害防止具10(10’,10’’,10A)は、図示したものや説明したものに限定されることはない。鳥害防止具10は、射出成形によって成形されることに限定されず、種々の方法で形成されてよい。また、上述した各実施形態では、ゴム材によって鳥害防止具10が形成されているが、弾性を有していればその他の樹脂材で形成されてもよく、また、同一の材料で一体成形されていなくてもよく、さらにまた樹脂材に限定されることはなく、アルミニウム等の弾性変形可能な金属製の薄板や針金等の弾性変形可能な金属製の線材によって形成されてもよい。
【0037】
上述した各実施形態では、本体部11の長手方向の寸法は、バンド部材20における一方の抱持部22の周方向の寸法よりもわずかに短い寸法で形成されているが、これに限定されることはない。例えば、抱持部22から取付部23に至る寸法で本体部11が形成されて取付部23に至る部分にも突起部12が設けられていれば、取付部23に鳥が止まることが抑制される。また、本体部11が一方の抱持部22の一端部221の近傍からヒンジ部21を介して他方の抱持部22の一端部221の近傍に至る寸法で形成されてもよい。このような寸法で本体部11が構成されれば、1つのバンド部材20に一つの鳥害防止具10を取り付けるだけですむ。
【0038】
また、図5(a)(b)(c)の鳥害防止具10’においては、本体部11の他方面11bに突条部16,16が設けられているが、突条部16,16に代わり半球状に突出する突部が間隔を空けながら本体部11の他方面11bの略全面に設けられてもよい。
【0039】
また、図7の鳥害防止具10Aは、鳥害防止具10Aの本体部11の短手方向の寸法がバンド部材20の短手方向の寸法の半分程度の大きさに形成されているが、これに限定されることはない。本体部11の短手方向の寸法は、さらに短い寸法で形成されてもよく、バンド部材20の短手方向の寸法と略同一の寸法で形成されてもよい。また、図1等の2つの係止部13A,13Bを備える鳥害防止具10の本体部11に長手方向に沿って薄肉の切断ラインを設けて、その切断ラインで切断することで2つに分けて利用することもできる。
【0040】
各実施形態における突起部12(12A,12B)の構成も上述したものに限定されることはない。例えば、突起部12の内部に針金等による芯材が設けられることで、突起部12の傾斜角度の維持や鳥との接触による倒れ込みの抑制を図ることができる。また、係止部13や接続部14に設けられた各突起部12の長短を異ならせることで、体のサイズの異なるスズメやカラス等の種々の鳥に突起部12の先端部が刺さるようにしてもよい。また、突起部12の傾斜角度や本数は図示したものに限定されることはなく、適宜設計されればよい。また、突起部12は、ゴム材等の弾性材料で形成されることに限定されることはなく、突起部12は金属材料や硬質な樹脂材で形成されてもよい。例えば本体部11、接続部14、係止部13は弾性材料であるゴム材で形成され、突起部12として市販品の釘が用いられてもよい。釘の先端部が本体部11から離れる方向を向くように係止部13や接続部14に刺せば、釘が突起部12となる。また、釘の頭が係止部13や接続部14の抜け止めとなる。
【0041】
また、各実施形態に用いられるバンド部材20は上述したものや図示したものに限定されることはなく、例えば取付部23やリブ24が設けられていないものでもよい。また、ヒンジ部21が設けられずに、半円以上の大きさの円弧で形成された抱持部22を弾性変形させることでパイプPに取り付けられるバンド部材20であってもよい。また、図2(a)(b)では、抱持部22,22を閉じたときの形状は円状に構成されているが、パイプPが角筒状であれば、抱持部22,22を閉じたときの形状がパイプPの外周面に対応した矩形状のものが用いられてもよい。抱持部22,22を閉じたときの形状が矩形状であっても、鳥害防止具10はバンド部材20の外周面に沿って変形して取り付け可能である。
【符号の説明】
【0042】
10,10’,10’’,10A 鳥害防止具
11 本体部
12,12A,12B 突起部
13,13A,13B 係止部
20 バンド部材
22 抱持部
22b 内周面
P パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7