(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095171
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料並びにその製造方法及び香味向上方法
(51)【国際特許分類】
C12C 5/02 20060101AFI20230629BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20230629BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20230629BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230629BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20230629BHJP
C12C 3/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/06
C12G3/04
A23L2/00 B
A23L2/56
C12C3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210905
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大取 靖秀
(72)【発明者】
【氏名】村上 綾子
(72)【発明者】
【氏名】▲蛸▼井 潔
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
4B128
【Fターム(参考)】
4B115LH11
4B117LC03
4B117LK06
4B117LL01
4B117LL09
4B128CP11
4B128CP16
(57)【要約】
【課題】従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料並びにその製造方法及び香味向上方法を提供する。
【解決手段】ビールテイスト飲料は、0.001質量ppb以上の1,8-シネオールと、3質量ppb以上のゲラン酸メチルと、41質量ppb以上の2-アセチルピロールと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001質量ppb以上の1,8-シネオールと、
3質量ppb以上のゲラン酸メチルと、
41質量ppb以上の2-アセチルピロールと、
を含む、
ビールテイスト飲料。
【請求項2】
0.005質量ppb以上の1,8-シネオールを含む、
請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
7質量ppb以上のゲラン酸メチルを含む、
請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
45質量ppb以上の2-アセチルピロールを含む、
請求項1乃至3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオールを含む原料、ゲラン酸メチルを含む原料及び2-アセチルピロールを含む原料を使用することを含む、
ビールテイスト飲料の製造方法。
【請求項6】
ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量を調整することにより、前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料並びにその製造方法及び香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、甘味度が2以下であり、冷涼感付与物質と、リモネンとを含有する、容器詰め炭酸アルコール飲料に関し、当該冷涼感付与物質の含有量が、0.1~1000ppmであることや、当該冷涼感付与物質が、メントール又はその誘導体、メントン、カンファー、プレゴール、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ペパーミントオイル、スペアーミントオイル、ユーカリプタスオイル、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、N-アルキル-p-メンタン-3-カルボキサミド、2-メチル-3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、p-メンタン-3,8-ジオール、2-(l-メントキシ)エタン-1-オール、3-(l-メントキシ)プロパン-1-オール、4-(l-メントキシ)ブタン-1-オール、3-ヒドロキシブタン酸メンチル、乳酸メンチル、メントングリセリンケタール、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、並びにグリオキシル酸メンチルからなる群から選択される少なくとも一種であることが記載され、具体的な実施例では当該冷涼感付与物質としてメントール誘導体であるl-Menthyl(3S)-3-hydroxybutanoateを1ppm~120ppm添加したことが記載されている。
【0003】
特許文献2には、α-ユーデスモール、β-ユーデスモール及びγ-ユーデスモールからなるユーデスモールの1又は2以上を有効成分とし、該有効成分の含有量が含有するユーデスモールの含有量の合計で5~100ppbであることを特徴とする自律神経調節作用を有する冷涼感に優れたアルコール含有量が1%未満である非アルコール飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-180279号公報
【特許文献2】特開2013-094097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、本発明の発明者らは、従来にない冷涼感を含む香味をビールテイスト飲料に付与するための技術的手段について検討を行ってきた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料並びにその製造方法及び香味向上方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料は、0.001質量ppb以上の1,8-シネオールと、3質量ppb以上のゲラン酸メチルと、41質量ppb以上の2-アセチルピロールと、を含む。本発明によれば、従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料が提供される。
【0008】
また、前記ビールテイスト飲料は、0.005質量ppb以上の1,8-シネオールを含むこととしてもよい。また、前記ビールテイスト飲料は、7質量ppb以上のゲラン酸メチルを含むこととしてもよい。また、前記ビールテイスト飲料は、45質量ppb以上の2-アセチルピロールを含むこととしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオールを含む原料、ゲラン酸メチルを含む原料及び2-アセチルピロールを含む原料を使用することを含む。本発明によれば、従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料の製造方法が提供される。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法においては、ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量を調整することにより、前記ビールテイスト飲料の香味を向上させる。本発明によれば、ビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させる方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料並びにその製造方法及び香味向上方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る実施例の例1において、ビールテイスト飲料の香味を評価した結果の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る実施例の例2において、ビールテイスト飲料の香味を評価した結果の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る実施例の例3において、ビールテイスト飲料の香味を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0014】
本実施形態に係るビールテイスト飲料(以下、「本飲料」という。)は、0.001質量ppb以上の1,8-シネオールと、3質量ppb以上のゲラン酸メチルと、41質量ppb以上の2-アセチルピロールと、を含む。
【0015】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、その一側面として、ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールを含む原料を使用することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法を含む。
【0016】
すなわち、本発明の発明者らは、従来にない冷涼感を含む香味をビールテイスト飲料に付与するための技術的手段について鋭意検討を行った結果、意外にも、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールという特定の3成分について、特定の含有量の組み合わせを採用することにより、従来にない冷涼感を含む香味を有するビールテイスト飲料を実現できることを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
このため、本方法は、他の側面として、ビールテイスト飲料の1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb以上、ゲラン酸メチルの含有量が3質量ppb以上、且つ2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb以上となるように、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量を調整することにより、当該ビールテイスト飲料の香味を向上させる方法を含む。
【0018】
1,8-シネオールは、CAS番号470-82-6で特定される化合物である。本飲料における1,8-シネオールの含有量は、0.002質量ppb以上であることが好ましく、0.005質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.01質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.02質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.03質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.04質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.05質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.06質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.07質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.08質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.09質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0019】
また、特に冷涼感を高める観点からは、本飲料における1,8-シネオールの含有量は、0.1質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.2質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.3質量ppb以上であることがさらに好ましく、0.4質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0020】
本飲料における1,8-シネオールの含有量は、30質量ppb以下であってもよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがさらに好ましく、10質量ppb以下であることがさらに好ましく、9質量ppb以下であることがさらに好ましく、8質量ppb以下であることがさらに好ましく、7質量ppb以下であることがさらに好ましく、6質量ppb以下であることがさらに好ましく、5質量ppb以下であることがさらに好ましく、4質量ppb以下であることがさらに好ましく、3質量ppb以下であることがさらに好ましく、2質量ppb以下であることがさらに好ましく、1質量ppb以下であることが特に好ましい。
【0021】
また、本飲料における1,8-シネオールの含有量は、0.9質量ppb以下であることがさらに好ましく、0.8質量ppb以下であることがさらに好ましく、0.7質量ppb以下であることがさらに好ましく、0.6質量ppb以下であることがさらに好ましく、0.5質量ppb以下であることが特に好ましい。本飲料における1,8-シネオールの含有量は、上述した下限値のいずれか1つと上述した上限値のいずれか1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0022】
ゲラン酸メチルは、CAS番号2349-14-6で特定される化合物である。本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、5質量ppb以上であることが好ましく、7質量ppb以上であることがさらに好ましく、8質量ppb以上であることがさらに好ましく、9質量ppb以上であることがさらに好ましく、10質量ppb以上であることがさらに好ましく、11質量ppb以上であることがさらに好ましく、12質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0023】
また、本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、13質量ppb以上であることがさらに好ましく、14質量ppb以上であることがさらに好ましく、15質量ppb以上であることがさらに好ましく、16質量ppb以上であることがさらに好ましく、17質量ppb以上であることがさらに好ましく、18質量ppb以上であることがさらに好ましく、19質量ppb以上であることがさらに好ましく、20質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0024】
また、本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、21質量ppb以上であることがさらに好ましく、22質量ppb以上であることがさらに好ましく、23質量ppb以上であることがさらに好ましく、24質量ppb以上であることがさらに好ましく、25質量ppb以上であることがさらに好ましく、26質量ppb以上であることがさらに好ましく、27質量ppb以上であることがさらに好ましく、28質量ppb以上であることがさらに好ましく、29質量ppb以上であることがさらに好ましく、30質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0025】
また、特に冷涼感を高める観点からは、本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、32質量ppb以上であることがさらに好ましく、40質量ppb以上であることがさらに好ましく、50質量ppb以上であることがさらに好ましく、60質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0026】
本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、500質量ppb以下であってもよく、400質量ppb以下であることが好ましく、350質量ppb以下であることがさらに好ましく、310質量ppb以下であることが特に好ましい。
【0027】
また、本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、300質量ppb以下であることがさらに好ましく、280質量ppb以下であることがさらに好ましく、260質量ppb以下であることがさらに好ましく、240質量ppb以下であることがさらに好ましく、220質量ppb以下であることがさらに好ましく、200質量ppb以下であることがさらに好ましく、180質量ppb以下であることがさらに好ましく、160質量ppb以下であることがさらに好ましく、140質量ppb以下であることがさらに好ましく、120質量ppb以下であることがさらに好ましく、110質量ppb以下であることが特に好ましい。
【0028】
また、本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、100質量ppb以下であることがさらに好ましく、90質量ppb以下であることがさらに好ましく、80質量ppb以下であることがさらに好ましく、70質量ppb以下であることがさらに好ましく、60質量ppb以下であることがさらに好ましく、50質量ppb以下であることがさらに好ましく、40質量ppb以下であることが特に好ましい。本飲料におけるゲラン酸メチルの含有量は、上述した下限値のいずれか1つと、上述した上限値のいずれか1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0029】
2-アセチルピロールは、CAS番号1072-83-9で特定される化合物である。本飲料における2-アセチルピロールの含有量は、45質量ppb以上であることが好ましく、50質量ppb以上であることがさらに好ましく、55質量ppb以上であることがさらに好ましく、60質量ppb以上であることがさらに好ましく、65質量ppb以上であることがさらに好ましく、70質量ppb以上であることがさらに好ましく、75質量ppb以上であることがさらに好ましく、80質量ppb以上であることがさらに好ましく、85質量ppb以上であることがさらに好ましく、90質量ppb以上であることがさらに好ましく、95質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0030】
また、特に冷涼感を高める観点からは、本飲料における2-アセチルピロールの含有量は、100質量ppb以上であることがさらに好ましく、110質量ppb以上であることがさらに好ましく、120質量ppb以上であることがさらに好ましく、130質量ppb以上であることが特に好ましい。
【0031】
本飲料における2-アセチルピロールの含有量は、2000質量ppb以下であってもよく、1500質量ppb以下であることが好ましく、1100質量ppb以下であることがさらに好ましく、1000質量ppb以下であることがさらに好ましく、900質量ppb以下であることがさらに好ましく、800質量ppb以下であることがさらに好ましく、700質量ppb以下であることがさらに好ましく、600質量ppb以下であることがさらに好ましく、500質量ppb以下であることがさらに好ましく、400質量ppb以下であることがさらに好ましく、350質量ppb以下であることがさらに好ましく、300質量ppb以下であることが特に好ましい。
【0032】
また、本飲料における2-アセチルピロールの含有量は、280質量ppb以下であることがさらに好ましく、260質量ppb以下であることがさらに好ましく、240質量ppb以下であることがさらに好ましく、220質量ppb以下であることがさらに好ましく、200質量ppb以下であることがさらに好ましく、180質量ppb以下であることがさらに好ましく、160質量ppb以下であることがさらに好ましく、140質量ppb以下であることがさらに好ましく、130質量ppb以下であることがさらに好ましく、120質量ppb以下であることがさらに好ましく、110質量ppb以下であることが特に好ましい。本飲料における2-アセチルピロールの含有量は、上述した下限値のいずれか1つと、上述した上限値のいずれか1つとの任意の組み合わせにより特定されてもよい。
【0033】
本飲料における1,8-シネオール含有量と、ゲラン酸メチル含有量と、2-アセチルピロール含有量との組み合わせは、上述した1,8-シネオール含有量の任意の下限値及び/又は上限値で特定される範囲と、上述したゲラン酸メチル含有量の任意の下限値及び/又は上限値で特定される範囲と、上述した2-アセチルピロール含有量の任意の下限値及び/又は上限値で特定される範囲との任意の組み合わせによって特定される。
【0034】
具体的に、本飲料は、例えば、0.001質量ppb以上の1,8-シネオールを含み、さらに、7質量ppb以上、120質量ppb以下のゲラン酸メチルと、45質量ppb以上、350質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが好ましく、13質量ppb以上、100質量ppb以下のゲラン酸メチルと、55質量ppb以上、130質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが特に好ましい。
【0035】
また、本飲料は、例えば、3質量ppb以上のゲラン酸メチルを含み、さらに、0.005質量ppb以上、5質量ppb以下の1,8-シネオールと、45質量ppb以上、350質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが好ましく、0.05質量ppb以上、0.6質量ppb以下の1,8-シネオールと、55質量ppb以上、130質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが特に好ましい。
【0036】
また、本飲料は、例えば、41質量ppb以上の2-アセチルピロールを含み、さらに、0.005質量ppb以上、5質量ppb以下の1,8-シネオールと、7質量ppb以上、120質量ppb以下のゲラン酸メチルと、を含むことが好ましく、0.05質量ppb以上、0.6質量ppb以下の1,8-シネオールと、13質量ppb以上、100質量ppb以下のゲラン酸メチルと、を含むことが特に好ましい。
【0037】
また、本飲料は、例えば、0.005質量ppb以上、5質量ppb以下の1,8-シネオールと、7質量ppb以上、120質量ppb以下のゲラン酸メチルと、45質量ppb以上、350質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが好ましく、0.05質量ppb以上、0.6質量ppb以下の1,8-シネオールと、13質量ppb以上、100質量ppb以下のゲラン酸メチルと、55質量ppb以上、130質量ppb以下の2-アセチルピロールと、を含むことが特に好ましい。
【0038】
ただし、上述のとおり、本飲料における1,8-シネオール含有量と、ゲラン酸メチル含有量と、2-アセチルピロール含有量との組み合わせは、これらに限られず、上述した1,8-シネオール含有量の任意の範囲と、上述したゲラン酸メチル含有量の任意の範囲と、上述した2-アセチルピロール含有量の範囲との任意の組み合わせによって特定されてもよい。
【0039】
本飲料は、ビールテイスト飲料である。ビールテイスト飲料は、ビール様の香味を有する飲料である。ビールテイスト飲料は、その製造時の条件(例えば、麦芽の使用の有無、ホップの使用の有無、アルコール発酵の有無等)に関わらず、ビール様の香味を有する飲料であれば特に限られない。
【0040】
本飲料は、アルコール飲料であることとしてもよい。アルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1体積%以上、20体積%以下であってもよく、3体積%以上、10体積%以下であってもよく、4体積%以上、6体積%以下であってもよい。なお、アルコール発酵を行うことなくアルコール飲料を製造する場合、例えば、原料液にエタノール、スピリッツ、発酵液等のアルコール含有組成物を添加することにより、当該アルコール飲料を得ることができる。
【0041】
本飲料は、ノンアルコール飲料であることとしてもよい。ノンアルコール飲料は、アルコール含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のアルコール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。なお、ノンアルコール飲料の製造においてアルコール発酵を行う場合、例えば、当該アルコール発酵後の発酵液に、アルコール含有量を低減する処理を施すことにより、ノンアルコール飲料を得ることができる。
【0042】
本飲料は、発泡性飲料であることとしてもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料であることが好ましい。なお、アルコール発酵を行うことなく発泡性飲料を製造する場合、例えば、炭酸ガスの吹き込み及び炭酸水との混合からなる群より選択される1以上により、飲料に発泡性を付与することができる。
【0043】
発泡性飲料は、そのNIBEM値が50秒以上であってもよく、80秒以上であることが好ましく、150秒以上であることがより好ましく、200秒以上であることが特に好ましい。発泡性飲料のNIBEM値は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.29 泡-NIBEM-Tを用いた泡持ち測定法-」に記載の方法により測定される。
【0044】
発泡性飲料は、その炭酸ガス圧が1.0kg/cm2以上であってもよく、2.0kg/cm2以上であることとしてもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧の上限値は、特に限られないが、当該炭酸ガス圧は、3.0kg/cm2以下であってもよい。発泡性飲料の炭酸ガス圧は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.21 ガス圧」に記載の方法により測定される。
【0045】
本飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよい。この場合、本飲料は、例えば、ビール、発泡酒(ビールに比べて麦芽の使用比率が低い点以外はビールと同様に製造されるビールテイスト飲料)、及び、発泡酒と他のアルコール成分(例えば、スピリッツ(例えば、焼酎、ウォッカ、ウイスキー及びブランデーからなる群より選択される1以上)、清酒、果実酒、甘味果実酒、雑酒及び粉末酒からなる群より選択される1以上)とを含有する発泡性アルコール飲料からなる群より選択される発泡性アルコール飲料であってもよい。
【0046】
本飲料は、発酵飲料であることとしてもよい。発酵飲料は、アルコール発酵を行って製造される飲料である。発酵飲料は、酵母によるアルコール発酵由来の香気成分(例えば、高級アルコール類及び/又はエステル類)を含む。
【0047】
本飲料は、麦類飲料であってもよい。麦類飲料は、麦類を使用して製造された飲料である。麦類飲料は、麦類由来成分を含む。本飲料は、麦芽飲料であってもよい。麦芽飲料は、麦芽を使用して製造された飲料である。麦芽飲料は、麦芽由来成分を含む。
【0048】
本飲料は、苦味を有することとしてもよい。すなわち、本飲料の苦味価(BU)は、例えば、5以上であってもよく、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが特に好ましい。また、本飲料のBUは、例えば、50以下であってもよく、40以下であることが好ましく、30以下であることが特に好ましい。本飲料のBUは、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを組み合わせて特定されてもよい。BUは、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.15 苦味価(IM)」に記載の方法により測定される。
【0049】
本飲料は、ホップ由来成分を含んでもよい。ホップ由来成分は、本飲料の製造において使用されたホップに由来する成分である。ホップ由来成分は、例えば、ホップ由来の芳香成分及び/又は苦味成分である。ホップ由来の芳香成分は、例えば、テルペン類である。テルペン類は、例えば、ミルセン、フムレン、リナロール、β-シトロネロール及びゲラニオールからなる群より選択される1種以上であってもよい。ホップ由来の苦味成分は、例えば、イソα酸である。また、本飲料は、ホップ由来のα酸を含んでもよい。
【0050】
本飲料の色度は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、3.0EBC単位以上であってもよく、4.0EBC単位以上であることが好ましく、5.0EBC単位以上であることが特に好ましい。また、本飲料の色度は、例えば、30.0EBC単位以下であってもよく、20.0EBC単位以下であることが好ましく、15.0EBC単位以下であることがより好ましく、10.0EBC単位以下であることが特に好ましい。本飲料の色度は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを組み合わせて特定されてもよい。色度は、文献「改訂 BCOJビール分析法 2013年増補改訂(編集:ビール酒造組合 国際技術委員会(分析委員会)、発行所:公益財団法人日本醸造協会)」の「8.8 色度」の「8.8.2 吸光度法(IM)」に記載の方法により測定される。
【0051】
本方法においては、1,8-シネオールの含有量が上述した特定の範囲内となり、ゲラン酸メチルの含有量が上述した特定の範囲内となり、且つ2-アセチルピロールの含有量が上述した特定の範囲内となるように、1,8-シネオールを含む原料、ゲラン酸メチルを含む原料及び2-アセチルピロールを含む原料を任意に組み合わせて使用する。なお、1,8-シネオールを含む原料、ゲラン酸メチルを含む原料及び2-アセチルピロールを含む原料は、互いに異なる原料であってもよいし、同一の原料であってもよい。すなわち、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの3つの成分のうち1つの成分のみを含む原料、当該3つのうち2つの成分のみを含む原料、及び当該3つの全てを含む原料からなる群より選択される1以上を任意に組み合わせて使用すればよい。
【0052】
1,8-シネオールの含有量が上述した特定の範囲内となり、ゲラン酸メチルの含有量が上述した特定の範囲内となり、且つ2-アセチルピロールの含有量が上述した特定の範囲内となるように、当該1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量を調整することにより、従来にない冷涼感を含む香味をビールテイスト飲料に付与して、当該ビールテイスト飲料の香味を効果的に向上させることができる。
【0053】
1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールを含む原料は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、当該原料は、例えば、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールからなる群より選択される1以上を含む植物原料、及び/又は、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールからなる群より選択される1以上を含む添加用組成物を含むことが好ましい。
【0054】
植物原料は、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールからなる群より選択される1以上を含むものであれば特に限られず、1種の植物原料を使用してもよいし、2種以上の植物原料を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
すなわち、例えば、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの1以上を含み、且つ、これらの含有量が互いに異なる2種以上の植物原料を組み合わせて使用することにより、上述した1,8-シネオール含有量、ゲラン酸メチル含有量及び2-アセチルピロール含有量の特定の組み合わせを実現することとしてもよい。
【0056】
添加用組成物は、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールからなる群より選択される1以上を含むものであれば特に限られず、1種の添加用組成物を使用してもよいし、2種以上の添加用組成物を組み合わせて使用してもよい。添加用組成物は、液体であってもよいし、固体(例えば、粉末)であってもよい。
【0057】
本方法は、原料と水とを混合して原料液を調製することを含む。原料は、植物原料を含むことが好ましい。すなわち、原料は、植物原料として、例えば、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。穀類、豆類及びイモ類は、発芽させたものであってもよいし、発芽させていないものであってもよいし、これら両方であってもよい。
【0058】
穀類は、例えば、麦類、米類、とうもろこし及びこうりゃんからなる群より選択される1以上であることが好ましく、麦類であることが特に好ましい。麦類は、例えば、大麦、小麦、燕麦及びライ麦からなる群より選択される1以上であることが好ましく、大麦及び小麦からなる群より選択される1以上であることがより好ましく、大麦であることが特に好ましい。
【0059】
原料は、植物原料として、穀類、豆類及びイモ類からなる群より選択される1以上を発芽させたもの、すなわち、発芽穀類、発芽豆類及び発芽イモ類からなる群より選択される1以上を含むことが特に好ましい。
【0060】
発芽穀類は、麦類、米類、とうもろこし及びこうりゃんからなる群より選択される1以上を発芽させたもの、すなわち、発芽麦類(すなわち、麦芽)、発芽米類、発芽とうもろこし及び発芽こうりゃんからなる群より選択される1以上であることが好ましく、麦芽であることが特に好ましい。
【0061】
麦芽は、大麦麦芽、小麦麦芽、燕麦麦芽及びライ麦麦芽からなる群より選択される1以上であることが好ましく、大麦麦芽及び小麦麦芽からなる群より選択される1以上であることがより好ましく、大麦麦芽であることが特に好ましい。
【0062】
原料が麦類を含む場合、当該麦類は、麦芽及び/又は発芽していない麦類(未発芽麦類)を含む。すなわち、この場合、原料は、麦芽及び未発芽麦類を含むこととしてもよいし、麦芽を含み未発芽麦類を含まないこととしてもよいし、未発芽麦類を含み麦芽を含まないこととしてもよい。
【0063】
未発芽麦類は、未発芽大麦、未発芽小麦、未発芽燕麦及び未発芽ライ麦からなる群より選択される1以上であることが好ましく、未発芽大麦及び未発芽小麦からなる群より選択される1以上であることがより好ましく、未発芽大麦であることが特に好ましい。
【0064】
原料が麦類を含む場合、当該原料100重量部に対する当該麦類の重量(当該麦類が麦芽及び未発芽麦類を含む場合は、当該麦芽の重量と当該未発芽麦類の重量との合計)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1重量部以上であってもよく、5重量部以上であってもよく、10重量部以上であってもよく、15重量部以上であってもよく、20重量部以上であってもよく、25重量部以上であってもよく、50重量部以上であってもよい。麦類の使用比率が大きくなるにつれて、当該麦類由来の香味が増強される。
【0065】
また、原料が麦類を含む場合、当該原料100重量部に対する当該麦類の重量は、例えば、100重量部以下であってもよく、100重量部未満であってもよく、50重量部未満であってもよく、25重量部未満であってもよく、20重量部未満であってもよく、15重量部未満であってもよく、10重量部未満であってもよい。麦類の使用比率が小さくなるにつれて、当該麦類由来の香味が低減される。原料100重量部に対する麦類の重量は、上述した下限値のいずれかと、上述した上限値のいずれかとを任意に組み合わせて特定されてもよい。
【0066】
原料が麦類を含む場合、当該麦類100重量部に対する、当該麦類に含まれる麦芽の重量(すなわち、麦芽の重量と未発芽麦類の重量との合計100重量部に対する、当該麦芽の重量)は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、1重量部以上(1重量部以上、100重量部以下)であってもよく、5重量部以上であることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましく、25重量部以上であることがより一層好ましく、50重量部以上であることが特に好ましい。
【0067】
原料は、植物原料として、ホップを含むこととしてもよい。ホップは、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、ホップペレット、ホップパウダー、プレスホップ、生ホップ、ホップエキス、イソ化ホップ、ローホップ、テトラホップ及びヘキサホップからなる群より選択される1以上であることが好ましい。ホップは、1品種のみを使用してもよいし、2品種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
すなわち、例えば、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの1以上を含み、且つ、これらの含有量が互いに異なる2品種以上のホップを組み合わせて使用することにより、上述した1,8-シネオール含有量、ゲラン酸メチル含有量及び2-アセチルピロール含有量の特定の組み合わせを実現することとしてもよい。
【0069】
本方法において、原料液は、糖化を行って調製されてもよい。糖化は、多糖類及びタンパク質(例えば、麦類に由来する多糖類及びタンパク質)と、消化酵素(例えば、多糖類分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素)とを含む原料液を、当該消化酵素が働く温度(例えば、30℃以上、80℃以下)に加熱することにより行う。消化酵素としては、原料(例えば、麦類等の植物原料)に含まれるもの、及び/又は、外的に添加されるもの(例えば、微生物に由来するもの)が好ましく使用される。
【0070】
原料液は、煮沸を行って調製されてもよい。この場合、原料液は、ホップを使用し、煮沸を行って調製されてもよい。また、原料液は、糖化を行い、さらに煮沸を行って調製されてもよい。
【0071】
本方法は、原料液のアルコール発酵を行うことを含んでもよい。この場合、原料液に酵母を添加して、当該酵母によるアルコール発酵を行う。すなわち、原料液に酵母を添加して発酵液を調製し、当該発酵液を所定の温度で所定時間保持することにより、当該発酵液のアルコール発酵を行う。
【0072】
原料液に添加する酵母は、アルコール発酵を行う生きた酵母であれば特に限られないが、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1以上であることが好ましく、ビール酵母であることが特に好ましい。アルコール発酵開始時の原料液における酵母の密度は、例えば、1×106個/mL以上、3×109個/mL以下であることが好ましい。
【0073】
アルコール発酵を行う温度は、例えば、30℃以下(例えば、0℃超、30℃以下)であってもよく、25℃以下であってもよく、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることが特に好ましい。アルコール発酵を行う時間は、例えば、1日以上、14日以下であってもよい。
【0074】
本方法は、アルコール発酵後にさらに熟成を行うことを含んでもよい。なお、本実施形態において、アルコール発酵は、ビールの製造でいえば主発酵又は前発酵に相当する。また、熟成は、ビールの製造でいえば貯酒又は後発酵に相当する。
【0075】
本方法は、アルコール発酵後(熟成を行う場合は当該熟成後)、得られた発酵後液を濾過することを含んでもよい。この濾過では、例えば、濾過により発酵後液に含まれる酵母を除去する。発酵後液を濾過する方法は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、珪藻土濾過、遠心分離、及びフィルター濾過からなる群より選択される1以上が好ましく用いられる。
【0076】
本方法においては、アルコール発酵を行わないこととしてもよい。この場合、例えば、1,8-シネオールを含む原料、ゲラン酸メチルを含む原料及び2-アセチルピロールを含む原料を任意の組み合わせで使用して原料液を調製し、当該原料液を任意の他の成分と混合して、ビールテイスト飲料を得る。原料液と混合する他の成分は、本発明の効果が得られれば特に限られないが、例えば、糖類、食物繊維、色素、香料、酸味料、甘味料、苦味料及びアルコール(例えば、エタノール)からなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0077】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例0078】
[ビールテイスト飲料の製造]
まずベース飲料として、大麦麦芽(原料に占める比率25重量%未満)、未発芽大麦、液糖及びホップを使用して製造されたアルコール含有量が約5.5体積%のビールテイスト飲料を用意した。
【0079】
このベース飲料は、1,8-シネオール含有量が0.000質量ppbであり、ゲラン酸メチル含有量が2質量ppbであり、2-アセチルピロール含有量が40質量ppbであった。なお、本実施例において、ビールテイスト飲料における1,8-シネオール、ゲラン酸メチル、及び2-アセチルピロールの含有量の測定は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ-質量分析法(SPME-GC-MS法)により行った。
【0080】
次いで、ベース飲料に対して、市販の1,8-シネオールを含む組成物、市販のゲラン酸メチルを含む組成物、及び市販の2-アセチルピロールを含む組成物を添加して、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量の組み合わせが異なる複数のビールテイスト飲料を製造した。
【0081】
具体的に、例1においては、32質量ppbのゲラン酸メチルと、100質量ppbの2-アセチルピロールとを含み、さらに0.000質量ppb、0.001質量ppb、0.01質量ppb、0.1質量ppb、1質量ppb、又は10質量ppbの1,8-シネオールを含む6種類のビールテイスト飲料を用意した。
【0082】
また、例2においては、0.1質量ppbの1,8-シネオールと、100質量ppbの2-アセチルピロールとを含み、さらに2質量ppb、5質量ppb、12質量ppb、32質量ppb、102質量ppb、又は302質量ppbのゲラン酸メチルを含む6種類のビールテイスト飲料を用意した。
【0083】
また、例3においては、0.1質量ppbの1,8-シネオールと、32質量ppbのゲラン酸メチルとを含み、さらに40質量ppb、41質量ppb、50質量ppb、100質量ppb、140質量ppb、又は1040質量ppbの2-アセチルピロールを含む6種類のビールテイスト飲料を用意した。
【0084】
[官能検査]
そして、各ビールテイスト飲料について、識別能力がある者として選抜された4名のパネラーによる官能検査を行った。官能検査においては、「冷涼感先味」、「冷涼感後味」、「フラワリー」、「フルーティ」、「シトラス」及び「グリーン」の6項目のそれぞれについて、各パネラーから1点、2点、3点、4点、5点、6点、又は7点が付与された。
【0085】
具体的に、「冷涼感先味」として、飲んだ瞬間に感じる口元(唇)のひんやり感を評価し、「冷涼感後味」として、飲んだ後の喉の奥で感じるひんやり感を評価し、「フラワリー」として、バラやラベンダーのような花を思わせる香味を評価し、「フルーティ」として、種類は問わず果実的な香味を評価し、「シトラス」として、グレープフルーツ等の柑橘を連想させる香りの強さを評価し、「グリーン」として、植物の茎や葉、緑茶・ホップ青臭などのグリーン感全般を評価した。そして、いずれの項目も強く感じられるほど高い点数が付与された。
【0086】
[結果]
図1には、例1における6種類のビールテイスト飲料(例1-1~例1-6)について、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量(質量ppb)、及び、官能検査で6つの評価項目について付与された点数(付与された点数の合計をパネラーの数で除して得られた算術平均値)を示す。
【0087】
図1に示すように、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールを含むビールテイスト飲料において、1,8-シネオールの含有量が増加するにつれて、冷涼感先味及び冷涼感後味の点数が増加する傾向が認められた。すなわち、1,8-シネオールの含有量が増加するにつれて、ビールテイスト飲料の冷涼感が増強された。
【0088】
具体的に、ビールテイスト飲料の冷涼感は、1,8-シネオールの含有量が0.000質量ppb超(具体的には、0.001質量ppb以上)であることで増強され、0.001質量ppb超(具体的には、0.01質量ppb以上)であることでより顕著に増強され、0.01質量ppb超(具体的には、0.1質量ppb以上)であることで極めて顕著に増強された。
【0089】
グリーンについては、1,8-シネオールの含有量が1質量ppbに達するまでは点数が増加したが、1質量ppb以上では点数は一定になった。すなわち、ビールテイスト飲料のグリーンと評価される香味は、1,8-シネオールの含有量が0.000質量ppb超(具体的には、0.001質量ppb以上)であることで増強され、0.001質量ppb超(具体的には、0.01質量ppb以上)であることで顕著に増強され、0.01質量ppb超(具体的には、0.1質量ppb)であることで極めて顕著に増強された。なお、グリーンと評価される香味は、必ずしもポジティブな香味ではなく、強すぎるグリーンは、ネガティブな香味と評価される。
【0090】
シトラスについては、1,8-シネオールの含有量が0.1質量ppbに達するまでは点数が増加したが、0.1質量ppb以上では点数はほぼ一定になった。すなわち、ビールテイスト飲料のシトラスと評価される香味は、1,8-シネオールの含有量が0.001質量ppb超(具体的には、0.01質量ppb以上)であることで増強され、0.01質量ppb超(具体的には、0.1質量ppb以下)であることで極めて顕著に増強された。
【0091】
一方、フラワリー及びフルーティについては、1,8-シネオールの含有量が0.1質量ppbに達するまでは点数が増加したが、0.1質量ppbを超えると、点数が減少した。すなわち、ビールテイスト飲料のフラワリー及びフルーティと評価される香味は、1,8-シネオールの含有量が0.000質量ppb超(具体的には、0.001質量ppb以上)であることで増強され、0.001質量ppb超(具体的には、0.01質量ppb以上)及び10質量ppb未満(具体的には、1質量ppb以下)であることでより顕著に増強され、0.01質量ppb超及び1質量ppb未満(具体的には、0.1質量ppb以下)であることで極めて顕著に増強された。
【0092】
図2には、例2における6種類のビールテイスト飲料(例2-1~例2-6)について、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量(質量ppb)、及び、官能検査で6つの評価項目について付与された点数(付与された点数の合計をパネラーの数で除して得られた算術平均値)を示す。
【0093】
図2に示すように、1,8-シネオール及び2-アセチルピロールを含むビールテイスト飲料において、ゲラン酸メチルの含有量が増加するにつれて、冷涼感先味及び冷涼感後味の点数が増加する傾向が認められた。すなわち、ゲラン酸メチルの含有量が増加するにつれて、ビールテイスト飲料の冷涼感が増強された。
【0094】
具体的に、ビールテイスト飲料の冷涼感は、ゲラン酸メチルの含有量が2質量ppb超(具体的には、5質量ppb以上)であることで増強され、5質量ppb超(具体的には、12質量ppb以上)であることでより顕著に増強され、12質量ppb超(具体的には、32質量ppb以上)であることで極めて顕著に増強された。
【0095】
グリーンについても、ゲラン酸メチルの含有量が増加するにつれて、点数が増加した。すなわち、ゲラン酸メチルの含有量が増加するにつれて、ビールテイスト飲料のグリーンと評価される香味が増強された。
【0096】
具体的に、ビールテイスト飲料のグリーンと評価される香味は、ゲラン酸メチルの含有量が2質量ppb超(具体的には、5質量ppb以上)であることで増強され、5質量ppb超(具体的には、12質量ppb以上)であることでより顕著に増強され、12質量ppb超(具体的には、32質量ppb以上)であることで極めて顕著に増強された。
【0097】
一方、シトラスについては、ゲラン酸メチルの含有量が102質量ppbに達するまでは点数が増加したが、102質量ppbを超えると、点数が減少した。すなわち、ビールテイスト飲料のシトラスと評価される香味は、ゲラン酸メチルの含有量が5質量ppb超(具体的には、12質量ppb以上)であることで増強され、102質量ppbまで増強の程度が増加したが、102質量ppb超では増強の程度が減少した。
【0098】
また、フラワリー及びフルーティについては、ゲラン酸メチルの含有量が32質量ppbに達するまでは点数が増加したが、32質量ppbを超えると、点数が減少した。
【0099】
すなわち、ビールテイスト飲料のフラワリーと評価される香味は、ゲラン酸メチルの含有量が2質量ppb超(具体的には、5質量ppb以上)であることで増強され、5質量ppb超(具体的には、12質量ppb以上)、302質量ppb以下であることで顕著に増強され、12質量ppb超(具体的には、32質量ppb以上)、302質量ppb未満(具体的には、102質量ppb以下)であることで極めて顕著に増強された。
【0100】
また、ビールテイスト飲料のフルーティと評価される香味は、ゲラン酸メチルの含有量が2質量ppb超(具体的には、5質量ppb以上)、302質量ppb未満(具体的には、102質量ppb以下)であることで増強され、5質量ppb超(具体的には、12質量ppb以上)、302質量ppb未満(具体的には、102質量ppb以下)であることで顕著に増強され、12質量ppb超、102質量ppb未満(具体的には、32質量ppb以下)であることで極めて顕著に増強された。
【0101】
図3には、例3における6種類のビールテイスト飲料(例3-1~例3-6)について、1,8-シネオール、ゲラン酸メチル及び2-アセチルピロールの含有量(質量ppb)、及び、官能検査で6つの評価項目について付与された点数(付与された点数の合計をパネラーの数で除して得られた算術平均値)を示す。
【0102】
図3に示すように、1,8-シネオール及びゲラン酸メチルを含むビールテイスト飲料において、2-アセチルピロールの含有量が増加するにつれて、冷涼感先味及び冷涼感後味の点数が増加する傾向が認められた。すなわち、2-アセチルピロールの含有量が増加するにつれて、ビールテイスト飲料の冷涼感が増強された。
【0103】
具体的に、ビールテイスト飲料の冷涼感は、2-アセチルピロールの含有量が40質量ppb超(具体的には、41質量ppb以上)であることで増強され、41質量ppb超(具体的には、50質量ppb以上)であることでより顕著に増強され、50質量ppb超(具体的には、100質量ppb以上)であることで極めて顕著に増強された。
【0104】
グリーンについては、2-アセチルピロールの含有量が100質量ppbに達するまでは点数が増加したが、100質量ppb以上では点数は一定になった。すなわち、ビールテイスト飲料のグリーンと評価される香味は、2-アセチルピロールの含有量が41質量ppb超(具体的には、50質量ppb以上)であることで顕著に増強され、50質量ppb超(具体的には、100質量ppb以上)であることで極めて顕著に増強された。
【0105】
一方、フラワリー、フルーティ、及びシトラスについては、2-アセチルピロールの含有量が100質量ppbに達するまでは点数が増加したが、100質量ppbを超えると、点数が減少した。
【0106】
すなわち、ビールテイスト飲料のフラワリー、フルーティ、及びシトラスと評価される香味は、2-アセチルピロールの含有量が40質量ppb超(具体的には、41質量ppb以上)であることで増強され、41質量ppb超(具体的には、50質量ppb以上)、1040質量ppb未満(具体的には、140質量ppb以下)であることで顕著に増強され、50質量ppb超、140質量ppb未満(具体的には、100質量ppb以下)であることで極めて顕著に増強された。