(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095187
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230629BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230629BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20230629BHJP
【FI】
G08G1/16 E
G08G1/09 H
H04B1/3822
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210927
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】姜 宏武
【テーマコード(参考)】
5H181
5K011
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC12
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL06
5K011DA02
5K011DA26
5K011JA01
5K011KA03
(57)【要約】
【課題】車両と無線通信を行う通信装置における消費電力を抑制する。
【解決手段】第1の車両に装着される通信装置は、第2の車両から定期的に送信される、少なくとも第2の車両の位置情報を含む第2の情報を受信する無線通信部と、第2の情報に基づいて第1の車両と第2の車両との間の距離を特定し、距離が閾値未満である場合、第1の車両の存在を示す第1の情報を無線通信部を通じて送信し、距離が閾値以上である場合、第1の情報を送信しない、制御部と、備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両に装着される通信装置であって、
第2の車両から定期的に送信される、少なくとも前記第2の車両の位置情報を含む第2の情報を受信する無線通信部と、
前記第2の情報に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両との間の距離を特定し、前記距離が閾値未満である場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を前記無線通信部を通じて送信し、前記距離が前記閾値以上である場合、前記第1の情報を送信しない、制御部と、を備える、
通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記第1の車両の移動速度に応じて、前記閾値を決定する、
通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信装置であって、
前記第1の情報は、前記第1の情報の受信レベルの要求を含み、
前記制御部は、前記第1の情報を受信した前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記閾値未満の範囲内に位置する複数の前記第2の車両のうち、前記第1の車両から最も遠い前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の前記送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置であって、
前記第1の車両の移動方向に指向性を有するアンテナをさらに備え、
前記無線通信部は、前記アンテナを通じて前記第1の情報を送信する、
通信装置。
【請求項6】
第1の車両に装着される通信装置であって、
前記第1の車両の運転者からの入力を検知する入力部と、
第2の車両から定期的に送信される第2の情報を受信する無線通信部と、
前記入力部が入力を検知した場合、一定期間、前記第2の情報の受信を監視し、前記第2の情報を受信した場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を前記無線通信部を通じて送信する、
通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の通信装置であって、
前記第1の車両の移動方向に指向性を有するアンテナをさらに備え、
前記無線通信部は、前記アンテナを通じて前記第1の情報を送信する、
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末と車両とが無線通信を行うことにより、車両が通信端末の警戒対象に衝突することを回避するシステムにおいて、通信端末の消費電力を抑制する技術が検討されている。特許文献1には、車両に搭載された車載機と車両の周辺に存在する警戒対象が保持する通信端末とが通信可能であり、車載機が通信端末から警戒対象の情報を取得する情報取得システムが開示される。特許文献1に開示される車載機は、通信端末からの電波の受信状況を検出し、その検出結果に基づいて通信端末に情報を要求するか否かを判定し、情報を要求すると判定された場合に、当該情報を取得するための要求を通信端末に送信し、送信された要求に応じて通信端末から送信されてきた情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-225572号公報
【特許文献2】特開2007-233684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示される構成では、通信端末は、車載機から送信される要求を常時監視する必要があり、通信端末における消費電力の抑制が不十分である。
【0005】
本開示は、車両と無線通信を行う通信装置における消費電力を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る通信装置は、第1の車両に装着される通信装置であって、第2の車両から定期的に送信される、少なくとも前記第2の車両の位置情報を含む第2の情報を受信する無線通信部と、前記第2の情報に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両との間の距離を特定し、前記距離が閾値未満である場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を前記無線通信部を通じて送信し、前記距離が前記閾値以上である場合、前記第1の情報を送信しない、制御部と、を備える。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車両と無線通信を行う通信装置における消費電力を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る通信装置の使用態様の一例を説明するための模式図
【
図2】本実施の形態に係る通信システムの構成例を示すブロック図
【
図3】報知ボタンが押下されたときに第1の情報を送信する条件を説明するための模式図
【
図4】報知ボタンが押下されたときに第1の情報を送信する際の送信電力の制御を説明するための模式図
【
図5】本実施の形態に係る通信装置が実行する距離閾値決定処理の一例を示すフローチャート
【
図6】本実施の形態に係る通信装置が実行する第1の情報の送信処理の一例を示すフローチャート
【
図7】本実施の形態に係る車両が実行する第2の情報の送信処理の一例を示すフローチャート
【
図8】本実施の形態に係る通信装置が実行する送信電力決定処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0011】
(本実施の形態)
<概要>
図1は、本実施の形態に係る通信装置10の使用態様の一例を説明するための模式図である。なお、本実施の形態では、車両を区別する場合は、車両20A、20B、20Cのように、数字とアルファベットの組み合わせで参照符号を表現し、車両を区別しない場合は、車両20のように、数字のみで参照符号を表現する。
【0012】
本実施の形態に係る通信装置10は、
図1に示すように、車両の一例である自転車5のハンドルに装着される。例えば、自転車5の運転者が、見通しの悪い交差点に差し掛かったときに、通信装置10の報知ボタン16を押下すると、通信装置10は、当該自転車5の存在を知らせる情報(以下、第1の情報と称する)51を、無線信号としてブロードキャスト送信する。
【0013】
自転車5の近くに存在する車両20は、この通信装置10から送信された第1の情報51を受信した場合、近くに自転車5が存在する旨を車両20の運転者に知らせる。これにより、見通しの悪い交差点に進入する車両20の運転者は、近くに自転車5が存在することを知ることができ、車両20が自転車5に衝突することを回避できる。また、車両20は、第1の情報51を受信した場合、自動的に減速又は停止してもよい。これにより、車両20が自転車5に衝突することを自動的に回避できる。
【0014】
しかし、自転車5に装着される通信装置10は、小型軽量化が求められるため、大容量の電源を搭載することが難しい。よって、通信装置10には、消費電力の抑制が求められる。そこで、以下では、通信装置10における消費電力を抑制する技術について説明する。ただし、通信装置10は、自転車5に限らず、バイク(自動二輪車)又は自動車といった様々な車両に装着されてもよい。また、通信装置10は、車両に限らず、歩行者が所持する携帯端末(例えばスマートフォン)に装着又は内蔵されてもよい。
【0015】
<通信システム構成>
図2は、本実施の形態に係る通信システムの構成例を示すブロック図である。
【0016】
図2に示すように、通信システム2は、通信装置10と車両20とを含んで構成される。通信装置10と車両20とは、互いにV2X通信(無線通信)が可能であってよい。V2X通信は、路車間(V2I;Vehicle to Infrastructure)通信、車車間(V2V;Vehicle to Vehicle)通信、車歩行者間(V2P;Vehicle to Pedestrian)通信、及び、車ネットワーク間(V2N;Vehicle to Network)通信のうち少なくとも1つを含んでよい。V2X通信方式の例として、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、C-V2X(Cellular-V2x)が挙げられる。V2X通信方式は、4G又は5Gに対応するものであってもよい。
【0017】
<<通信装置の構成>>
通信装置10は、記憶部11、制御部12、無線通信部13、アンテナ14、位置測定部15、報知ボタン16、及び、バッテリ17を含んで構成される。
【0018】
記憶部11は、制御部12が取り扱うデータ及びコンピュータプログラム等を保持する。記憶部11は、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、又はそれらの組み合わせとして構成されてよい。
【0019】
制御部12は、記憶部11に保持されるデータ及びコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、通信装置10が有する機能を実現する。制御部12は、制御回路、演算回路、プロセッサ、コントローラ、CPU(Central Processing Unit)、又は、LSI(Large Scale Integrated Circuit)といった他の用語に読み替えられてもよい。なお、以下の説明において、通信装置10を主体とする処理は、通信装置10が備える制御部12を主体とする処理に読み替えられてよい。
【0020】
無線通信部13は、アンテナ14を通じて、無線信号を送信及び受信する。例えば、無線通信部13は、V2X通信により、BSM(Basic Safety Message)を送信及び受信する。BSMは、本実施の形態における第1の情報51及び第2の情報52(
図3参照)の一例であってよい。アンテナ14は、通信装置10の進行方向(自転車5の前方)に電波の指向性を有する、いわゆる指向性アンテナであってよい。
【0021】
位置測定部15は、通信装置10(自転車5)の現在位置を測定する。例えば、位置測定部15は、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)信号を受信して、現在位置を示す経度及び緯度を測定し、その測定した現在位置とその測定した時刻とを含む位置情報を生成する。なお、制御部12は、位置測定部15から取得した位置情報が示す現在位置の単位時間当たりの移動量に基づいて、通信装置10(自転車5)の移動速度を算出してよい。
【0022】
報知ボタン16は、自転車5の運転者が自分の存在を周囲の車両20に知らせたいときに押下されるボタンである。報知ボタン16が押下されると、
図1にて説明したように、制御部は、無線通信部13及びアンテナ14を通じて、第1の情報51をブロードキャスト送信する。なお、報知ボタン16は入力部の一例であり、入力部の構成はボタンに限られない。例えば、入力部は、タッチパネル、スイッチ又はレバー等であってもよい。
【0023】
バッテリ17は、記憶部11、制御部12、無線通信部13、位置測定部15等に電力を供給する。バッテリは、一次電池あってもよいし、二次電池であってもよい。通信装置10が電動アシスト付き自転車に装着される場合、当該電動アシスト付き自転車が搭載するバッテリを、通信装置10のバッテリ17として利用してもよい。通信装置10がバイク(又は自動車)に装着される場合、当該バイク(又は自動車)が搭載するバッテリを、通信装置10のバッテリ17として利用してもよい。
【0024】
<<車両の構成>>
車両20は、記憶部21、制御部22、無線通信部23、アンテナ24、位置測定部25、表示部26、及び、スピーカ27を含んで構成される。なお、記憶部21、制御部22及び無線通信部23は、ECU(Electronic Control Unit)として構成されてもよい。
【0025】
記憶部21は、制御部22が取り扱うデータ及びコンピュータプログラム等を保持する。
【0026】
制御部22は、記憶部21に保持されるデータ及びコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、車両20が有する機能を実現する。なお、以下の説明において、車両20を主体とする処理は、車両20が備える制御部22を主体とする処理に読み替えられてよい。
【0027】
無線通信部23は、アンテナ24を通じて、無線信号を送信及び受信する。例えば、無線通信部23は、V2X通信により、BSMを送信及び受信する。
【0028】
位置測定部25は、車両20の現在位置を測定する。例えば、位置測定部25は、GNSS信号を受信して、現在位置を示す経度及び緯度を測定し、その測定した現在位置とその測定した時刻とを含む位置情報を生成する。
【0029】
表示部26は、車両20内に設けられ、車両20の運転者に向けて様々な画像情報を出力する。表示部26の例として、液晶ディスプレイ、又は、有機ELディスプレイが挙げられる。例えば、無線通信部23が第1の情報51を受信した場合、表示部26は、近くに自転車5が存在する旨を示す画像情報を出力する。
【0030】
スピーカ27は、車両20内に設けられ、車両20の運転者に向けて様々な音声情報を出力する。例えば、無線通信部23が第1の情報51を受信した場合、スピーカ27は、近くに自転車5等が存在する旨を示す音声情報を出力する。
【0031】
<第1の情報の送信の条件>
図3は、報知ボタン16が押下されたときに第1の情報51を送信する条件を説明するための模式図である。
【0032】
通信装置10は、報知ボタン16が押下された場合、通信装置10(自転車5)と車両20との間の距離(以下、車両間距離と称する)を算出する。例えば、通信装置10は、車両20から定期的に送信される第2の情報52に含まれる車両20の位置情報と、位置測定部15にて生成された通信装置10の位置情報とに基づいて、車両間距離を算出する。
【0033】
通信装置10は、車両間距離が距離閾値未満である場合、
図3(a)に示すように、第1の情報51を送信する。通信装置10は、車両間距離が距離閾値以上である場合、
図3(b)に示すように、第1の情報51を送信しない。自転車5から十分遠くに位置する車両20に対して自転車5の存在を報知しても、あまり衝突回避に効果がないためである。これにより、不要な第1の情報51の送信が抑止されるので、通信装置10の消費電力を抑制できる。
【0034】
通信装置10は、当該通信装置10の移動速度(つまり自転車5の移動速度)に応じて、距離閾値を変化させてよい。例えば、通信装置10は、移動速度が速いほど、距離閾値を大きくし、移動速度が遅いほど、距離閾値を小さくする。あるいは、通信装置10は、移動速度が速いほど、段階的に距離閾値を大きくしてもよい。例えば、通信装置10は、移動速度が0km以上かつ第1の速度閾値(例えば時速20km)未満の場合に第1の距離閾値(例えば100m)とし、移動速度が第1の速度閾値以上かつ第2の速度閾値(例えば時速40km)未満の場合に第2の閾値(例えば200m)とする。このように、通信装置10の移動速度に応じて適切な距離閾値を設定することにより、例えば自転車5の移動速度が遅く、かつ、遠くに車両20が位置する場合、第1の情報51は送信されない。よって、通信装置10の消費電力を抑制できる。一方、自転車5の移動速度が速い場合は、車両20の位置が遠くても、第1の情報51は送信されるので、自転車5と車両20との衝突を十分に回避できる。
【0035】
<第1の情報の送信電力の制御>
図4は、報知ボタン16が押下されたときに第1の情報51を送信する際の送信電力の制御を説明するための模式図である。
【0036】
通信装置10は、無線通信部13及びアンテナ14を通じて第1の情報51を送信する際、当該通信装置10の移動方向(つまり自転車5の前方)において、通信装置10の現在位置から距離閾値が示す位置までの範囲(以下、報知対象範囲と称する)に存在する複数の車両20A、20Bのうち、最も遠くに存在する車両20Bに到達するように送信電力を制御して第1の情報51をブロードキャスト送信する。
【0037】
例えば、
図4(a)に示すように、通信装置10は、各車両20A、20B、20Cから定期的に送信される第2の情報52を受信して、車両20の存在を認識した場合、受信レベル要求を含む第1の情報51をブロードキャスト送信する。受信レベル要求は、車両20に対して、当該車両20(無線通信部23)が第1の情報51を含む無線信号を受信した際の受信レベルを要求するコマンドである。受信レベルの例として、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、RSRP(Reference Signal Received Power)、又は、RSRQ(Reference Signal Received Quality)が挙げられる。各車両20A、20B、20Cは、受信レベル要求を含む第1の情報51を受信した場合、当該第1の情報51に係る受信レベルを測定し、その受信レベルを含む第2の情報52(第1の情報51に対するACK)を送信する。なお、第2の情報52には、車両20の位置情報及び車両20の識別情報が含まれる。
【0038】
次に、
図4(b)に示すように、通信装置10は、車両20A、20B、20Cから第2の情報52を受信し、その第2の情報52に含まれる車両20A、20B,20Cの位置情報に基づいて、各車両20A、20B、20Cとの車両間距離を算出する。そして、通信装置10は、報知対象範囲に存在する車両20A、20Bのうち、最も遠くに存在する車両20Bを特定する。次に、通信装置10は、その車両20Bから送信された第2の情報52に含まれる受信レベルに基づいて、当該車両20Bに到達可能な送信電力を計算し、その送信電力にて第1の情報51をブロードキャスト送信する。すなわち、通信装置10は、報知対象範囲内の最も遠くに位置する車両20Bに到達し、それよりも遠くには到達しなくても構わない程度の送信電力で第1の情報51を送信する。
【0039】
これにより、報知対象範囲外に存在する車両20Cにまで到達可能な送信電力で第1の情報51を送信する場合と比較して、本実施の形態は、送信電力を抑制することができる。さらに、報知対象範囲の遠端(つまり距離閾値の位置)にまで到達可能な送信電力で第1の情報51を送信する場合と比較しても、本実施の形態は、送信電力を抑制することができる。よって、通信装置10の消費電力を抑制できる。
【0040】
また、通信装置10は、上述した送信電力の計算を、第1の情報51の送信周期毎に行う。これにより、通信装置10は、車両20Bとの距離が変化しても、その距離に最適な送信電力で第1の情報51をブロードキャスト送信することができる。
【0041】
また、通信装置10は、通信装置10の移動方向(つまり自転車5の前方)に指向性を有するアンテナ14を通じて、第1の情報51を送信してよい。これにより、無指向性のアンテナを通じて第1の情報51を送信する場合と比較して、省電力で自転車5の前方のより遠くまで無線信号を到達させることができる。よって、通信装置10の第1の情報51を送信する際の消費電力を抑制できる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る通信装置10及び車両20が実行する処理について説明する。
【0043】
<距離閾値決定処理>
図5は、本実施の形態に係る通信装置10が実行する距離閾値決定処理の一例を示すフローチャートである。なお、通信装置10は、本処理を常時又は適宜実行してよい。
【0044】
通信装置10は、当該通信装置10(又は自転車5)の移動速度を測定する(S101)。例えば、通信装置10は、位置測定部15によって測定される現在位置の単位時間当たりの移動量に基づいて、移動速度を測定する。あるいは、自転車5に速度計が搭載されている場合、通信装置10は、当該速度計によって測定された速度を、移動速度として取得してもよい。
【0045】
通信装置10は、ステップS101にて測定した速度に応じて距離閾値を決定する(S102)。
【0046】
通信装置10は、所定期間(例えば1秒間)待機した後(S103)、処理をステップS101に戻す。
【0047】
以上の処理により、通信装置10は、当該通信装置10(又は自転車5)の移動速度に応じた距離閾値を決定できる。
【0048】
<第1の情報の送信処理>
図6は、本実施の形態に係る通信装置10が実行する第1の情報51の送信処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
通信装置10は、報知ボタン16の押下を検知したか否かを判定する(S201)。
【0050】
通信装置10は、報知ボタン16の押下を検知していない場合(S201:NO)、ステップS201の処理を繰り返し、報知ボタン16の押下を検知した場合(S201:YES)、処理を次のステップS202に進める。
【0051】
通信装置10は、車両20から定期的に送信される第2の情報52の受信監視を開始し(S202)、第2の情報52を受信したか否かを判定する(S203)。
【0052】
通信装置10は、第2の情報52を受信していない場合(S203:NO)、処理を後述するステップS208に進め、第2の情報52を受信した場合(S203:YES)、処理を次のステップS204に進める。
【0053】
通信装置10は、当該通信装置10の位置測定部15が測定した位置情報と、受信した第2の情報52に含まれる車両20の位置情報とに基づいて、車両間距離を測定する(S204)。
【0054】
通信装置10は、ステップS204にて測定した車両間距離が、
図5に示す処理にて決定された距離閾値未満であるか否かを判定する(S205)。なお、当該距離閾値は、
図3及び
図5にて説明したように、通信装置10(自転車5)の移動速度に応じて変化し得る。
【0055】
通信装置10は、車両間距離が距離閾値以上である場合(S205:NO)、処理を後述するステップS208に進め、車両間距離が距離閾値未満である場合(S205:YES)、処理を次のステップS206へ進める。
【0056】
通信装置10は、
図4にて説明したように、第1の情報51の送信電力を決定する(S206)。なお、当該送信電力の決定処理の詳細については後述する(
図8参照)。また、通信装置10は、当該送信電力の決定処理を行わなくてもよい。この場合、通信装置10は、報知対象範囲の遠端に到達する程度の送信電力を、第1の情報51の送信電力としてよい。
【0057】
通信装置10は、受信レベル要求を含む第1の情報51を、ステップS206にて決定した送信電力でブロードキャスト送信する(S207)。ここで送信された第1の情報51に対する応答(ACK)としての第2の情報52は、次回のステップS203にて受信され得る。これにより、
図4にて説明したように、第1の情報51は、報知対象範囲内において最も遠くに位置する車両20Bと、その車両20Bよりも近くに位置する車両20Aに受信される。
【0058】
通信装置10は、第2の情報52の受信監視期間が終了したか否かを判定する(S208)。当該受信監視期間は、予め定められた一定期間であってよい。
【0059】
通信装置10は、第2の情報52の受信監視期間が終了していない場合(S208:NO)、処理をステップS203に戻し、第2の情報52の受信監視の期間が終了した場合(S208:YES)、処理をステップS201に戻す。
【0060】
以上の処理により、通信装置10は、報知ボタン16が押下された場合、消費電力を抑制しつつ、自転車5の存在を、報知対象範囲内に位置する車両20A、20Bに知らせることができる。
【0061】
<第2の情報の送信処理>
図7は、本実施の形態に係る車両20が実行する第2の情報52の送信処理の一例を示すフローチャートである。
【0062】
車両20は、自転車5に装着された通信装置10から受信レベル要求を含む第1の情報51を受信したか否かを判定する(S301)。車両20は、受信レベルを含む第1の情報51を受信していない場合(S301:NO)、処理を後述するステップS304に進める。
【0063】
車両20は、受信レベルを含む第1の情報51を受信した場合(S301:YES)、受信レベル要求に対応可能であるか否かを判定する(S302)。車両20は、受信レベル要求に対応できない場合(S302:NO)、処理を後述するステップS304に進める。
【0064】
車両20は、受信レベル要求に対応できる場合(S302:YES)、
図4にて説明したように、第1の情報51の受信レベルを特定する(S303)。
【0065】
車両20は、第2の情報52を生成する(S304)。このとき、車両20は、当該車両20の位置情報及び識別情報を第2の情報52に含めてよい。加えて、車両20は、ステップS303にて第1の情報51の受信レベルを特定した場合、当該特定した受信レベルを第2の情報52に含める。
【0066】
車両20は、ステップS304にて生成した第2の情報52を、無線通信部23及びアンテナ24を通じて送信する(S305)。そして、車両20は、所定期間待機した後(S306)、処理をステップS301に戻す。当該所定期間は、第2の情報52の送信周期に相当する期間であってよい。
【0067】
以上の処理により、車両20は、通信装置10から送信された第1の情報51の受信レベルを、第2の情報52によって通信装置10に伝えることができる。加えて、車両20は、当該車両20の位置情報及び識別情報を、第2の情報52によって通信装置10に伝えることができる。
【0068】
<送信電力決定処理>
図8は、本実施の形態に係る通信装置10が実行する送信電力決定処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理は、
図6に示すステップS206の処理の詳細な説明に相当する。また、説明をわかり易くするために、
図4に示す車両20A、20B、20Cを用いて本処理を説明する。
【0069】
通信装置10は、各車両20A、20B、20Cから受信した第2の情報52に含まれる位置情報に基づいて、当該通信装置10から見た各車両20A、20B、20Cの方位及び距離を特定する(S401)。
【0070】
通信装置10は、ステップS401で特定した各車両20A、20B、20Cの方位及び距離に基づいて、通信装置10の移動方向(自転車5の前方)における報知対象範囲内に位置する車両20A、20Bのうち、最も遠くに位置する車両20Bを特定する(S402)。
【0071】
通信装置10は、最も遠くに位置する車両20Bから送信された第2の情報52に受信レベルが含まれているか否かを判定する(S403)。
【0072】
車両20Bから送信された第2の情報52に受信レベルが含まれている場合(S403:YES)、通信装置10は、第2の情報52に含まれる受信レベルに基づいて、第1の情報51の送信電力を計算し(S404)、処理を
図6に示すステップS207へ進める。
【0073】
車両20Bから送信された第2の情報52に受信レベルが含まれていない場合(S403:NO)、通信装置10は、車両20Bから送信された第2の情報52を受信した際の無線信号の受信レベルに基づいて、第1の情報51の送信電力を計算し(S405)、処理を
図6に示すステップS207へ進める。例えば、
図6に示す処理において、報知ボタン16が押下されて最初のステップS203にて受信した第2の情報52には受信レベルが含まれてない場合があるので、通信装置10は、当該ステップS405の処理によって第1の情報41の送信電力を計算してよい。
【0074】
以上の処理により、報知対象範囲内において最も遠くに位置する車両20Bに第1の情報51を到達させるための送信電力を計算することができる。
【0075】
(本開示のまとめ)
本開示の内容は以下の付記のように表現できる。
【0076】
<付記1>
第1の車両(5)に装着される通信装置(10)は、第2の車両(20)から定期的に送信される、少なくとも第2の車両の位置情報を含む第2の情報(52)を受信する無線通信部(13)と、第2の情報に基づいて第1の車両と第2の車両との間の距離(車両間距離)を特定し、距離が閾値(距離閾値)未満である場合、第1の車両の存在を示す第1の情報(51)を無線通信部を通じて送信し、距離が閾値以上である場合、第1の情報を送信しない、制御部(12)と、を備える。
これにより、通信装置は、第1の車両と第2の車両との距離が閾値以上である場合、第1の情報を送信しないので、消費電力を抑制できる。
【0077】
<付記2>
付記1に記載の通信装置において、制御部(12)は、第1の車両の移動速度に応じて、閾値を決定してよい。
これにより、通信装置は、第1の車両の存在を知らせる範囲(報知対象範囲)を、移動速度に応じて適切に変化させることができる。
【0078】
<付記3>
付記1又は2に記載の通信装置において、第1の情報は、当該第1の情報の受信レベルの要求を含み、制御部は、第1の情報を受信した第2の車両から送信される受信レベルに基づいて、第1の情報の送信電力を決定してよい。
これにより、通信装置は、第2の車両に到達する適切な送信電力で第1の情報を送信できるので、消費電力を抑制できる。
【0079】
<付記4>
付記3に記載の通信装置において、制御部(12)は、閾値未満の範囲内に位置する複数の第2の車両のうち、第1の車両から最も遠い第2の車両から送信される受信レベルに基づいて、第1の情報の送信電力を決定してよい。
これにより、通信装置は、第1の車両の存在を知らせる範囲(報知対象範囲)内において最も遠くに位置する第2の車両に到達する適切な送信電力で第1の情報を送信できる。よって、通信装置は、消費電力を抑制できる。
【0080】
<付記5>
付記1から4のいずれか1項に記載の通信装置において、第1の車両の移動方向に指向性を有するアンテナをさらに備え、無線通信部は、当該アンテナを通じて第1の情報を送信してよい。
これにより、通信装置は、第1の車両の移動方向に、より小さな送信電力でより遠くまで第1の情報を送信できる。よって、通信装置は、消費電力を抑制できる。
【0081】
<付記6>
第1の車両(5)に装着される通信装置(10)は、第1の車両の運転者からの入力を検知する入力部(例えば報知ボタン16)と、第2の車両から定期的に送信される第2の情報(52)を受信する無線通信部(13)と、入力部が入力を検知した場合、一定期間、第2の情報の受信を監視し、第2の情報を受信した場合、第1の車両の存在を示す第1の情報(51)を無線通信部を通じて送信する。
これにより、通信装置は、運転者が入力部に入力した場合、かつ、第2の情報を受信した場合、つまり第2の車両が近くに存在する場合に、第1の情報を送信する。別言すると、通信装置は、運転者が入力部に入力しない場合、または、第2の情報を受信しない場合、つまり第2の車両が近くに存在しない場合は、第1の情報を送信しない。よって、通信装置は、消費電力を抑制できる。
【0082】
<付記7>
付記6に記載の通信装置は、第1の車両の移動方向に指向性を有するアンテナをさらに備え、無線通信部は、当該アンテナを通じて前記第1の情報を送信してよい。
これにより、通信装置は、第1の車両の移動方向に、より小さな送信電力でより遠くまで第1の情報を送信できる。よって、通信装置は、消費電力を抑制できる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示の技術は、無線通信を用いて他の車両に自分の存在を報知する通信装置に有用である。
【符号の説明】
【0085】
2 通信システム
5 自転車
10 通信装置
11 記憶部
12 制御部
13 無線通信部
14 アンテナ
15 位置測定部
16 報知ボタン
17 バッテリ
20 車両
21 記憶部
22 制御部
23 無線通信部
24 アンテナ
25 位置測定部
26 表示部
27 スピーカ
51 第1の情報
52 第2の情報
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両に装着される通信装置であって、
第2の車両から定期的に送信される、少なくとも前記第2の車両の位置情報を含む第2の情報を受信する無線通信部と、
前記第2の情報に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両との間の距離を特定し、前記距離が閾値未満である場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を、前記無線通信部を通じて送信し、前記距離が前記閾値以上である場合、前記第1の情報を送信しない、制御部と、を備え、
前記第1の情報は、前記第1の情報の受信レベルの要求を含み、
前記制御部は、前記第1の情報を受信した前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記第1の車両の移動速度に応じて、前記閾値を決定する、
通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記閾値未満の範囲内に位置する複数の前記第2の車両のうち、前記第1の車両から最も遠い前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の前記送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置であって、
前記第1の車両の前方に指向性を有するアンテナをさらに備え、
前記無線通信部は、前記アンテナを通じて前記第1の情報を送信する、
通信装置。
【請求項5】
第1の車両に装着される通信装置であって、
前記第1の車両の運転者からの入力を検知する入力部と、
第2の車両から定期的に送信される第2の情報を受信する無線通信部と、
前記入力部が入力を検知した場合、一定期間、前記第2の情報の受信を監視し、前記第2の情報を受信した場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を前記無線通信部を通じてブロードキャスト送信する、
通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の通信装置であって、
前記第1の車両の前方に指向性を有するアンテナをさらに備え、
前記無線通信部は、前記アンテナを通じて前記第1の情報をブロードキャスト送信する、
通信装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の車両に装着される通信装置であって、
第2の車両から定期的に送信される、少なくとも前記第2の車両の位置情報を含む第2の情報を受信する無線通信部と、
前記第2の情報に基づいて前記第1の車両と前記第2の車両との間の距離を特定し、前記距離が閾値未満である場合、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を、前記無線通信部を通じて送信し、前記距離が前記閾値以上である場合、前記第1の情報を送信しない、制御部と、を備え、
前記第1の情報は、前記第1の情報の受信レベルの要求を含み、
前記制御部は、前記第1の情報を受信した前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記第1の車両の移動速度に応じて、前記閾値を決定する、
通信装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記制御部は、前記閾値未満の範囲内に位置する複数の前記第2の車両のうち、前記第1の車両から最も遠い前記第2の車両から送信される前記受信レベルに基づいて、前記第1の情報の前記送信電力を決定する、
通信装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置であって、
前記第1の車両の前方に指向性を有するアンテナをさらに備え、
前記無線通信部は、前記アンテナを通じて前記第1の情報を送信する、
通信装置。
【請求項5】
第1の車両に装着される通信装置であって、
前記第1の車両の運転者からの入力を検知する入力部と、
第2の車両から定期的に送信される第2の情報を受信する無線通信部と、
前記第1の車両の前方に指向性を有するアンテナと、を備え
前記入力部が入力を検知した場合、一定期間、前記第2の情報の受信を監視し、前記第2の情報を受信した場合、前記無線通信部は、前記第1の車両の存在を示す第1の情報を、前記アンテナを通じてブロードキャスト送信する、
通信装置。