IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図1
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図2
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図3
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図4
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図5
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図6
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図7
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図8
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図9
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図10
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図11
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図12
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図13
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図14
  • 特開-医療用噴霧デバイス 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095201
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】医療用噴霧デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A61B17/00 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210947
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
(72)【発明者】
【氏名】大河内 竣介
(72)【発明者】
【氏名】河村 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】戸田 圭亮
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM18
(57)【要約】
【課題】複数の液状物を適切な方向へ向けて霧状に吐出させることができる、新規な構造の医療用噴霧デバイスを提供する。
【解決手段】先端側が体内に挿入されるチューブ状の流路部材12を有しており、流路部材12を通じて体外から供給される液状物62を体内で霧状に吐出させる医療用噴霧デバイス10であって、流路部材12の先端部分14には、複数の液流路32と、各液流路32の周壁20を囲むように形成された外周壁22によって各液流路32の外周に形成された複数のガス流路42とが、設けられており、各ガス流路42の外周壁22は、かかる複数の液流路32が互いに近接位置する近接側に比して、かかる複数の液流路32の近接側とは径方向反対側に位置する遠隔側が、流路部材12の先端側に突出しており、且つ、各ガス流路42の外周壁22は、各液流路32の周壁20よりも流路部材12の先端側にまで延びている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側が体内に挿入されるチューブ状の流路部材を有しており、該流路部材を通じて体外から供給される液状物を体内で霧状に吐出させる医療用噴霧デバイスであって、
前記流路部材の先端部分には、複数の液流路と、各該液流路の周壁を囲むように形成された外周壁によって各該液流路の外周に形成された複数のガス流路とが、設けられており、
各該ガス流路の該外周壁は、かかる複数の液流路が互いに近接位置する近接側に比して、かかる複数の液流路の該近接側とは径方向反対側に位置する遠隔側が、該流路部材の先端側に突出しており、且つ、
各該ガス流路の該外周壁は、各該液流路の周壁よりも該流路部材の先端側にまで延びている医療用噴霧デバイス。
【請求項2】
前記流路部材が互いに平行に延びる複数のルーメンを有していると共に、該各ルーメンには内チューブが挿入配置されており、
各該内チューブの内孔によって前記液流路が構成されていると共に、各該ルーメン内において該内チューブの外周側に前記ガス流路が形成されている請求項1に記載の医療用噴霧デバイス。
【請求項3】
前記内チューブがそれぞれ挿入配置された複数本の外チューブを束ねて相互に一体化した形状をもって前記流路部材が構成されている請求項2に記載の医療用噴霧デバイス。
【請求項4】
前記流路部材は外チューブ本体の先端部分に先端ノズルを備えており、
該先端ノズルの内部には該外チューブ本体のルーメンを仕切る隔壁が設けられて複数の前記ガス流路が構成されている請求項1に記載の医療用噴霧デバイス。
【請求項5】
前記液流路の周壁と前記ガス流路の外周壁との間には、径方向での相対的な移動を制限する径方向位置決め部が設けられている請求項1~4の何れか一項に記載の医療用噴霧デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液状物を体内で霧状に吐出させる医療用噴霧デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、体内の損傷部位(患部)を塞ぐための手段の1つとして、複数の液状物を混合させることによってゲル化反応が開始される生体接着剤が用いられている。生体接着剤は、体内の損傷部位に付着された状態で硬化する必要があり、生体接着剤を構成する複数の液状物を予め混合しておくことはできない。
【0003】
そこで、特開2003-159255号公報(特許文献1)に開示されている生体接着剤噴霧ノズルのような、液状物を霧状に吐出させて患部に吹き付けることで、それら複数の液状物を吐出後に混合させながら患部に付着させる医療用噴霧デバイスが提案されている。特許文献1の生体接着剤噴霧ノズルは、薬液供給管に対する内周側及び外周側にガス供給管が同軸的に配されており、薬液供給管から吐出される液状物(薬液)が、ガス供給管から噴出するガスによって吹き飛ばされて噴霧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-159255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献1の構造では、ガスによって噴霧される液状物が、相互に離れる方向を含む広範囲に拡散し易く、患部だけでなく不要な部位にまで液状物が吹き付けられるおそれがある。また、複数の液状物が相互に離れる方向に拡散すると、それら液状物がうまく混合されず、例えば液状物の混合によるゲル化等の化学反応が有効に発現しないおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、複数の液状物を適切な方向へ向けて霧状に吐出させることができる、新規な構造の医療用噴霧デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第1の態様は、先端側が体内に挿入されるチューブ状の流路部材を有しており、該流路部材を通じて体外から供給される液状物を体内で霧状に吐出させる医療用噴霧デバイスであって、前記流路部材の先端部分には、複数の液流路と、各該液流路の周壁を囲むように形成された外周壁によって各該液流路の外周に形成された複数のガス流路とが、設けられており、各該ガス流路の該外周壁は、かかる複数の液流路が互いに近接位置する近接側に比して、かかる複数の液流路の該近接側とは径方向反対側に位置する遠隔側が、該流路部材の先端側に突出しており、且つ、各該ガス流路の該外周壁は、各該液流路の周壁よりも該流路部材の先端側にまで延びているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされた医療用噴霧デバイスによれば、ガス流路の外周壁の遠隔側が近接側よりも先端側に突出していることにより、複数の液流路から吐出された複数の液状物が、相互に離れる離隔側(遠隔側)へ拡散し難くすることができる。これにより、霧状とされた液状物の噴霧範囲を制限して、体内の目的とする部位に液状物を吹き付けることができる。また、複数の液流路から吐出された液状物が近接側に向けて飛散し易くなることにより、それら液状物の混合が促進されると共に、混ざり方の均一化や安定化も図られ得る。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に記載された医療用噴霧デバイスにおいて、前記流路部材が互いに平行に延びる複数のルーメンを有していると共に、該各ルーメンには内チューブが挿入配置されており、各該内チューブの内孔によって前記液流路が構成されていると共に、各該ルーメン内において該内チューブの外周側に前記ガス流路が形成されているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた医療用噴霧デバイスによれば、ガス流路が各液流路の周囲にそれぞれ形成されることから、各液流路の先端から吐出される液状物をそれぞれ安定して噴霧することができる。また、各液流路の周囲にガス流路がそれぞれ形成されることから、例えば、複数のガス流路に対して異なる圧力でガスを供給することも可能であり、複数の液状物に粘度の差がある場合などにも、液状物の飛散状態の違いを低減して、液状物の安定した混合等を実現することができる。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に記載された医療用噴霧デバイスにおいて、前記内チューブがそれぞれ挿入配置された複数本の外チューブを束ねて相互に一体化した形状をもって前記流路部材が構成されているものである。
【0013】
本態様に従う構造とされた医療用噴霧デバイスによれば、互いに平行に延びる複数のルーメンを有する流路部材を簡単に得ることができる。例えば、内チューブと外チューブを同軸的に配することによって、外チューブと内チューブの間に供給されたガスが内チューブの外周側において周方向でバランスよく気流を形成し、液状物の安定した噴霧等が実現される。
【0014】
第4の態様は、第1の態様に記載された医療用噴霧デバイスにおいて、前記流路部材は外チューブ本体の先端部分に先端ノズルを備えており、該先端ノズルの内部には該外チューブ本体のルーメンを仕切る隔壁が設けられて複数の前記ガス流路が構成されているものである。
【0015】
本態様に従う構造とされた医療用噴霧デバイスによれば、例えば単純なシングルルーメン構造とされた外チューブ本体のルーメンを隔壁で仕切ることによって、複数のガス流路を構成することもできる。また、先端ノズルによって構成された複数のガス流路により、複数の液流路の先端から吐出される液状物を適切に噴霧することができる。
【0016】
第5の態様は、第1~第4の何れか1つの態様に記載された医療用噴霧デバイスにおいて、前記液流路の周壁と前記ガス流路の外周壁との間には、径方向での相対的な移動を制限する径方向位置決め部が設けられているものである。
【0017】
本態様に従う構造とされた医療用噴霧デバイスによれば、ガス流路が各液流路の周囲に安定して形成されて、液状物のガスによる噴霧の安定化が図られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療用噴霧デバイスにおいて、複数の液状物を適切な方向へ向けて霧状に吐出させることができて、複数の液流路から噴霧された液状物の混合の促進、混ざり方の均一化や安定化などが図られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態としての医療用噴霧デバイスを示す斜視図
図2図1に示す医療用噴霧デバイスの正面図
図3図1に示す医療用噴霧デバイスの平面図
図4図3のIV-IV断面図
図5図4のA部を拡大して示す詳細図
図6図4のVI-VI断面図
図7図4のVII-VII断面図
図8】本発明の第2実施形態としての医療用噴霧デバイスを構成する流路部材の先端部分を示す断面図であって、図10のVIII-VIII断面に相当する図
図9図8に示す流路部材を構成する先端ノズルの斜視図
図10図9に示す先端ノズルの正面図
図11図10に示す先端ノズルの平面図
図12図10の先端ノズルを拡大して示す左側面図
図13図10の先端ノズルを拡大して示す右側面図
図14】本発明の第3実施形態としての医療用噴霧デバイスを示す左側面図
図15】本発明の第4実施形態としての医療用噴霧デバイスの先端部分を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1図4には、本発明の第1実施形態としての医療用噴霧デバイス10が示されている。医療用噴霧デバイス10は、先端側が患者の体内へ挿入されるチューブ状の流路部材12を備えており、流路部材12を通じて体外から供給される液状物62(後述)を体内で霧状に吐出させるようになっている。なお、以下の説明において、原則として、上下方向とは図2中の上下方向を、前後方向とは医療用噴霧デバイス10の軸方向である図2中の左右方向を、左右方向とは図3中の上下方向を、それぞれ言う。また、原則として、先端側とは使用時の患者側(遠位側)である図2中の左側を、基端側とは使用時の施術者側(近位側)である図2中の右側を、それぞれ言う。
【0022】
流路部材12は、先端部分である吐出管路14と、基端部分である供給管路16とが、接続部材18によって接続された構造を有している。吐出管路14は、図4に示すように、2本の内チューブ20,20と、2本の外チューブ22,22とを、備えている。
【0023】
内チューブ20は、内腔24を流れる液状物62(後述)に対する耐性等も考慮して形成材料が選択され、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂や医療用ステンレス等の金属などによって形成され得る。内チューブ20は、中間部26が基端側へ向けて大径となるテーパー形状とされており、中間部26の先端側に連続する先端部28が、中間部26の基端側に連続する基端部30よりも小径とされている。内チューブ20の先端部28と基端部30は、それぞれ略一定の内径及び外径で直線的に延びている。内チューブ20は、先端部28と基端部30が互いに略平行に非傾斜で延びていると共に、中間部26が基端側へ向けて上下方向の外側へ傾斜している。
【0024】
内チューブ20の内腔24は、後述する液供給チューブ50に接続されて、後述する液状物62が流れる液流路32を構成する。液流路32は、内チューブ20の全長に亘って連続して設けられており、内チューブ20の先端及び基端に開口している。2本の内チューブ20,20がそれぞれ液流路32の周壁を構成することから、流路部材12の先端部分には、2つの液流路32,32が並列的に設けられている。
【0025】
外チューブ22は、内腔(ルーメン34)を流れるガス(後述)に対する耐性等も考慮して形成材料が選択され、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂や医療用ステンレス等の金属などによって形成され得る。外チューブ22は、図1図4に示すように、中間部36が基端側へ向けて大径となるテーパー形状とされており、中間部36の先端側に連続する先端部38が、中間部36の基端側に連続する基端部40よりも小径とされている。外チューブ22の先端部38と基端部40は、それぞれ略一定の内径及び外径で直線的に延びている。外チューブ22は、先端部38と基端部40が互いに略平行に非傾斜で延びていると共に、中間部36が基端側へ向けて上下方向の外側へ傾斜している。要するに、外チューブ22は、内チューブ20と対応する形状とされている。
【0026】
外チューブ22は、図4に示すように、軸方向に貫通するルーメン34を備えたシングルルーメン構造とされており、内径寸法が内チューブ20の外径寸法よりも大きくされている。そして、外チューブ22の内腔(ルーメン34)には、内チューブ20が挿入状態で配置されている。
【0027】
内チューブ20の内周面と外チューブ22の外周面との間には、隙間が形成されており、当該隙間を含む外チューブ22のルーメン34によって、ガス流路42が構成されている。外チューブ22は、ガス流路42の外周壁を構成しており、ガス流路42が外チューブ22の先端及び基端に開口している。2本の外チューブ22,22がそれぞれガス流路42の外周壁を構成することから、流路部材12の先端部分には、2つのガス流路42,42が並列的に設けられている。2つのガス流路42,42は、2つの液流路32,32の周壁を構成する内チューブ20,20の各外周側に設けられており、液流路32,32の各周壁を囲むように配されている。
【0028】
外チューブ22の先端面は、図5に示すように、外チューブ22の中心軸に対して傾斜する傾斜先端面44とされている。傾斜先端面44は、例えば、外チューブ22の中心軸に対して一方向に傾斜して広がる仮想平面上に位置している。傾斜先端面44と外チューブ22の中心軸との傾斜角度(上記仮想平面と外チューブ22の中心軸との傾斜角度)αは、好適には15度≦α≦45度とされ、より好適には25度≦α≦35度とされる。傾斜先端面44は、例えば、外チューブ22の先端を斜めに切断することで形成される。
【0029】
外チューブ22の先端は、内チューブ20の先端よりも先端側へ突出している。換言すれば、内チューブ20の先端は、外チューブ22の先端よりも基端側に控えて配置されて、外チューブ22よりも先端へ突出していない。内チューブ20の先端に対する外チューブ22の先端側への最大突出量Dは、特に限定されないが、好適には5.5mm≦D≦10.5mm、より好適には6.0mm≦D≦7.5mmとされる。
【0030】
2本の外チューブ22,22は、相互に隣接して並列的に配されており、それら外チューブ22,22に対してそれぞれ内チューブ20が内挿状態で配されている。このように、流路部材12の先端部分を構成する吐出管路14は、内チューブ20,20が挿入配置された2本の外チューブ22,22を束ねて相互に一体化した形状をもって構成されている。2本の外チューブ22,22は、互いに独立していてもよいが、例えば、先端部38,38において相互に連結されていることが望ましい。2本の外チューブ22,22を先端部38,38で連結する構造は特に限定されず、例えば、外チューブ22,22の先端部38,38の近接側を直接的に接着又は溶着等して連結することもできるし、2本の外チューブ22,22の先端部38,38の各外周面に取り付けられる連結部材によって、それら外チューブ22,22を直接的に固着することなく連結してもよい。
【0031】
上下方向で並列的に隣接配置された2本の外チューブ22,22は、上下方向の内側が近接側とされていると共に、上下方向の外側が近接側とは反対の遠隔側とされている。そして、2本の外チューブ22,22の各先端が傾斜先端面44とされていることにより、図5に示すように、外チューブ22,22の遠隔側が近接側よりも先端側に突出する遠隔側突出部46,46とされている。外チューブ22における遠隔側突出部46の近接側に対する先端側への突出量dは、2.5mm≦d≦7.5mmであることが望ましく、より好適には3.0mm≦d≦4.5mmとされる。内チューブ20の先端に対する外チューブ22の先端側への最大突出量Dと外チューブ22における遠隔側突出部46の近接側に対する先端側への突出量dとの差は、例えば、2.0mm≦D-d≦4.0mmであることが望ましく、より好適には2.5mm≦D-d≦3.5mmとされる。
【0032】
本実施形態では、外チューブ22の先端が傾斜先端面44とされていることによって遠隔側突出部46が構成されていることから、外チューブ22の先端位置は、近接側から遠隔側に向かって次第に先端側となっている。これにより、外チューブ22の左右両側方には、近接側の端部よりも先端側に突出した側方突出部48が設けられている。側方突出部48は、図5に示すように、左右方向視で上下方向の内側から外側に向けて先端側への突出量が大きくなる略三角形となっている。
【0033】
供給管路16は、図4に示すように、2本の液供給チューブ50,50と、1本のガス供給チューブ52とを備えている。液供給チューブ50は、内チューブ20と同様に、内腔を流れる後述する液状物62に対する耐性を有する合成樹脂や金属等で形成されている。液供給チューブ50は、可撓性を有していてもよいし、容易に撓み変形しない程度の剛性を有していてもよい。液供給チューブ50の基端部には、メスコネクタ54が取り付けられている。メスコネクタ54は、全体として円筒状とされており、軸方向に貫通する内腔が液供給チューブ50の内腔に連通されている。メスコネクタ54は、基端部分が後述する液供給装置58に接続されるようになっており、その構造は液供給装置58側の接続構造に応じて変更され得るが、例えば、ルアーテーパーや螺合によるロック機構などを備えている。
【0034】
液供給チューブ50の基端側には、メスコネクタ54を介して液供給装置58が接続されている。液供給装置58は、本実施形態ではシリンジであって、シリンダ60の内部に液状物62が収容されており、ピストン64をシリンダ60に対して先端側へ押し込むことにより、液状物62が先端チップ66から吐出される。先端チップ66は、液供給チューブ50の基端部に取り付けられたメスコネクタ54に接続されており、先端チップ66から吐出された液状物62がメスコネクタ54を通じて液供給チューブ50の内腔に流入するようになっている。
【0035】
ガス供給チューブ52は、外チューブ22と同様に、内腔を流れるガスや外部環境に対する耐性を有する合成樹脂や金属等で形成されている。ガス供給チューブ52は、液供給チューブ50と同様に、可撓性を有していてもよいし、容易に撓み変形しない程度の剛性を有していてもよいが、後述するガス供給装置68への接続を容易にするために可撓性を有していることが望ましい。ガス供給チューブ52の基端部には、液供給チューブ50と同様にメスコネクタ54が取り付けられている。
【0036】
ガス供給チューブ52は、メスコネクタ54を介してガス供給装置68に接続されている。ガス供給装置68は、公知の送風機又は圧縮機であって、ガス供給チューブ52の内腔に基端側から先端側へ向けたガスの流れ(気流)を形成可能とされている。なお、ガス供給装置68が供給するガスは、体内への吹付けに際して人体に悪影響を及ぼすものでなければよく、特に限定されないが、例えば空気や窒素ガスなどが好適に採用される。また、ガス供給装置68によって形成される気流の圧力は、液状物62の粘性等を考慮して適宜に設定され、調節可能とされていることが望ましい。
【0037】
吐出管路14と供給管路16は、接続部材18によって相互に接続されている。接続部材18は、合成樹脂や金属で形成された硬質の部材であって、先端側に上下2つの吐出管路接続部70,70を備えていると共に、基端側に供給管路接続部72を備えている。
【0038】
吐出管路接続部70は、先端へ向けて突出する内側突出部74,74と、各内側突出部74の外周を囲むように配された外側突出部76とを、備えている。図6に示すように、内側突出部74は、全周にわたって連続する筒状とされている一方、外側突出部76は、上下方向の内側である近接側に切欠き78を備えたC環状とされている。
【0039】
そして、内側突出部74,74に内チューブ20,20の各基端開口部が外挿状態で取り付けられていると共に、外側突出部76,76に外チューブ22,22の各基端開口部が外挿状態で取り付けられている。これにより、内外挿状態で配された内チューブ20と外チューブ22は、基端部において、硬質の接続部材18によって径方向で相互に位置決めされている。本実施形態の内チューブ20と外チューブ22は、何れもある程度の剛性を有しており、容易に撓まないことから、基端部分が径方向で位置決めされることによって、先端部分も径方向である程度は位置決めされている。本実施形態では、液流路32の周壁である内チューブ20とガス流路42の外周壁である外チューブ22との径方向での相対的な移動を制限する径方向位置決め部が、接続部材18によって構成されている。なお、接続部材18には、外側突出部76,76に取り付けられた外チューブ22,22の周囲を囲むように、囲繞壁部80が設けられており、吐出管路14と接続部材18の接続部分が囲繞壁部80によって保護されている。
【0040】
供給管路接続部72は、2つの液管路接続部82,82と、1つのガス管路接続部84とを、備えている。本実施形態では、液管路接続部82,82が上下方向の両端部分において基端側へ向けて開口する凹状とされていると共に、ガス管路接続部84が上下方向の中央部分において基端側へ向けて開口する凹状とされている。本実施形態では、液管路接続部82,82が基端開口へ向けて上下方向の外側へ傾斜している。
【0041】
そして、液管路接続部82,82に液供給チューブ50,50の先端部分が挿入されて固定されていると共に、ガス管路接続部84にガス供給チューブ52の先端部分が挿入されて固定されている。液供給チューブ50,50は、先端面が液管路接続部82,82の底面に当接することによって、接続部材18に対して位置決めされている。同様に、ガス供給チューブ52は、先端面がガス管路接続部84の底面に当接することによって、接続部材18に対して位置決めされている。なお、液管路接続部82,82とガス管路接続部84の周壁がそれぞれ基端側へ突出しており、供給管路16と接続部材18の固定強度が確保されている。
【0042】
接続部材18における吐出管路接続部70と供給管路接続部72との間には、図4に示すように、2つの液流路連通孔86,86と、1つのガス流路連通孔88とが形成されている。液流路連通孔86は、液管路接続部82に接続された液供給チューブ50の内腔と、内側突出部74の内腔とを連通している。ガス流路連通孔88は、ガス管路接続部84に接続されたガス供給チューブ52の内腔と、外側突出部76,76の切欠き78,78とを連通している。ガス流路連通孔88の先端部分は、図7に示すように、軸方向位置決め部90によって上下に二分されており、図4に示すように、切欠き78,78を通じてガス流路42,42の各一方に連通されている。外チューブ22,22は、近接側の基端が軸方向位置決め部90に軸方向で当接していることによって、接続部材18に対して軸方向で位置決めされている。
【0043】
このように、吐出管路14と供給管路16とが接続部材18によって相互に接続されることにより、内チューブ20,20の各内腔24で構成された液流路32,32に対して、液供給チューブ50,50の内腔を介して液供給装置58,58が接続される。また、内チューブ20,20の内周面と外チューブ22,22の外周面との間の各隙間によって構成されたガス流路42,42に対して、ガス供給チューブ52の内腔を介してガス供給装置68が接続される。従って、液流路32,32には、液供給装置58,58から液状物62a,62bが供給されると共に、ガス流路42には、ガス供給装置68からガスが供給される。
【0044】
かくの如き構造とされた医療用噴霧デバイス10は、例えば、内視鏡を用いた手術に際して、内視鏡のワーキングチャンネルを通じて先端部を体内へ挿入して、体内の目的とする部位に液状物62a,62bを混合しながら吹き付ける際に使用される。具体的には、例えば、2液の混合によってゲル化反応が開始される生体接着剤を体内の創傷に吹き付けて創傷を塞ぐ及び/又は覆う際などに使用することができ、生体接着剤を構成する液状物62a,62bを、非混合状態で別々に体内へ吐出させると共に、吐出後に創傷等の目標部位において液状物62a,62bを混合してゲル化反応等を発現させることができる。
【0045】
すなわち、ガス供給装置68,68からガス流路42,42へガスが供給されて、ガス流路42,42において先端側へ流れる気流が所定の圧力で形成された状態で、液供給装置58,58から供給された液状物62a,62bが液流路32,32の先端開口から吐出される。これにより、液状物62a,62bがガス流路42,42の気流によって吹き飛ばされて、先端側へ向けて霧状に吐出される。
【0046】
液状物62a,62bは、互いに独立した液流路32,32によって先端側へ流れることから、液流路32,32内では相互の接触によるゲル化等の反応が生じない。一方、液流路32,32から吐出された液状物62a,62bは、霧状に噴出されることで相互に接触し、ゲル化等の反応が開始される。このように、複数の液状物62a,62bの接触(混合)による反応が、液流路32,32から吐出された後で開始されるようになっており、例えば、液流路32,32内でゲル化反応が開始されて液流路32,32が閉塞されるといった不具合が防止される。
【0047】
霧状に吐出されて混合による反応が開始された液状物62a,62bは、速やかに体内の創傷等の目標部位に付着し、反応の継続によって目的とする効果を発揮する。具体的には、例えば、生体接着剤を創傷へ吹き付ける場合には、霧状に吐出されてゲル化反応が開始された液状物62a,62bは、粘性が増大してゲル状となりながら創傷に付着する。そして、創傷を覆いながらゲル化反応が継続されることにより、創傷を覆って或いは塞いで、生体接着剤としての止血効果等を発揮する。
【0048】
本実施形態に従う構造とされた医療用噴霧デバイス10は、ガス流路42,42の外周壁を構成する外チューブ22,22において、遠隔側である上下方向の外側部分が、近接側である上下方向の内側部分よりも先端側へ突出する遠隔側突出部46,46とされている。これにより、ガス流路42,42を流れるガスは、内チューブ20,20よりも先端側において、近接側への拡散を許容されると共に、遠隔側への拡散が制限される。このように、ガスの供給によってガス流路42に形成される気流の向きが、遠隔側突出部46によって制御されて、全体として先端に向けて上下方向の内側(近接側)へ傾いた方向となる。その結果、気流に乗って霧状に拡散する液状物62a,62bが相互に接近して接触し易くなって、吐出後の液状物62a,62bが効率的に混合される。従って、液状物62a,62bの接触(混合)による反応が効率的に発現されると共に、噴霧部位において均一な反応状態を得ることができる。
【0049】
上記のように、霧状に吐出された液状物62a,62bは、外チューブ22,22の遠隔側に遠隔側突出部46,46が設けられていることによって、近接側である上下方向の内側へ向かい易いことから、上下方向の外側へ拡散し難く、噴霧範囲が不必要に広くなるのを防ぐことができる。それゆえ、患者の体内における目標部位へ液状物62a,62bを的確に噴霧することができて、目標部位以外への液状物62a,62bの不必要な付着を抑えることができる。
【0050】
本実施形態では、外チューブ22の遠隔側突出部46が、外チューブ22の先端に傾斜先端面44を設けることで実現されている。従って、外チューブ22は、近接側から遠隔側に向けて先端側への突出量が徐々に大きくなっており、左右方向の両側に近接側より先端へ突出した側方突出部48,48が設けられている。これにより、霧状に吐出された液状物62a,62bが外チューブ22,22における左右方向の中央側へ向かい易く、左右方向においても液状物62a,62bの不必要な拡散が抑えられ得る。
【0051】
液流路32,32を構成する内チューブ20,20の先端が、ガス流路42,42を構成する外チューブ22,22の先端よりも基端側に控えた位置に配されていることから、液流路32,32の先端開口から吐出された液状物62a,62bの一部が、ガス流路42,42の気流に乗らずに外部へ漏出してしまうのを防ぎ易くなる。即ち、液流路32,32の先端開口から吐出された液状物62a,62bは、鉛直下向きに流れようとすることから、医療用噴霧デバイス10の向きによっては軸方向以外の向きに流れる場合もある。しかしながら、仮に液状物62a,62bが例えば軸直角方向等に流れたとしても、液状物62a,62bが内チューブ20,20よりも先端側まで延び出した外チューブ22,22によって受け止められることから、直ちに外部へ漏れ出すことがない。更に、内チューブ20,20よりも先端側では、外チューブ22,22のルーメン34,34全体がガス流路42,42を構成することから、外チューブ22,22によって受け止められた液状物62a,62bはガス流路42,42を流れるガスによって先端側へ速やかに噴霧される。従って、液状物62a,62bがガスによって噴霧されずに液状のままで外部へ漏れるのを防ぐことができて、液状物62a,62bによる汚染等を防ぐことができると共に、液状物62a,62bを効率的に噴霧することができる。
【0052】
医療用噴霧デバイス10の流路部材12では、液流路32,32の周壁を構成する内チューブ20,20が、ガス流路42,42の外周壁を構成する外チューブ22,22に挿入配置されており、ガス流路42,42が液流路32,32の周囲にそれぞれ形成されている。それゆえ、各液流路32,32の先端から吐出される液状物62a,62bをそれぞれ安定して噴霧することができる。特に、例えば、内チューブ20と外チューブ22が略同軸的に配されていれば、内チューブ20と外チューブ22の間に供給されたガスが内チューブ20の外周側において周方向でバランスよく気流を形成し、液状物62の安定した噴霧等が効果的に実現される。
【0053】
なお、本実施形態では、内外挿状態で配された内チューブ20と外チューブ22は、基端部分において同軸的に径方向で位置決めされているが、先端部分では相互に拘束されていないことから、例えば内チューブ20の傾きや撓み等によって、先端部分で相互に接触した状態となり得る。この場合、液流路32の周囲に形成されるガス流路42は、内チューブ20と外チューブ22が接触する周方向の一部において塞がれた状態となる。しかしながら、ガス流路42にガスが供給されると、内チューブ20がガスの圧力によって外チューブ22に対して同軸的な配置となるように移動して、内チューブ20と外チューブ22の周方向の一部における接触が解除されることから、噴霧時には液流路32を全周にわたって囲むように環状のガス流路42が形成される。このように、ガス流路42に供給されるガスの圧力が、内チューブ20と外チューブ22を径方向で相互に位置決めする径方向の位置決め手段として機能することも期待できる。
【0054】
本実施形態では、2本の外チューブ22,22を束ねて相互に一体化することで、ガス流路42,42の外周壁が構成されていることから、互いに平行に延びるガス流路42,42を、それら外チューブ22,22のルーメン34,34によって簡単に得ることができる。
【0055】
なお、本実施形態のガス流路42,42は、全体が独立した2本の外チューブ22,22のルーメン34,34によって構成されていることから、例えば、それらルーメン34,34に異なる圧力のガスを供給することも可能である。これによれば、例えば、複数の液状物62a,62bに粘度の差がある場合等にも、液状物62a,62bの飛散状態の違いを低減して、液状物62a,62bの安定した混合等を実現することができる。
【0056】
図8には、本発明の第2実施形態としての医療用噴霧デバイス100における流路部材102の先端部分が示されている。流路部材102は、シングルルーメン構造とされた外チューブ本体104の先端部分に、図8図13に示すような先端ノズル106が取り付けられた構造を有している。なお、第1実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。また、医療用噴霧デバイス100の基端部分等の図示されていない部分には、第1実施形態の医療用噴霧デバイス10と同様の構造を適用することができる。
【0057】
外チューブ本体104は、図8に示すように、略円筒形状とされており、2本の内チューブ本体108,108を挿入配置し得る大きさのルーメン110を内部に備えている。そして、2本の内チューブ本体108,108が、外チューブ本体104のルーメン110内において、上下方向で並んで配されている。なお、内チューブ本体108は、前記第1実施形態の内チューブ20と略同一であることから、ここでは説明を省略する。
【0058】
外チューブ本体104の先端側には、外チューブ本体104とは別体の先端ノズル106が取り付けられている。先端ノズル106は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂や医療用ステンレス等の金属によって形成された硬質の部材とされている。先端ノズル106は、略円板形状のベース部112を備えており、ベース部112から先端側へ吐出ノズル部114が突出していると共に、ベース部112から基端側へチューブ接続部116が突出している。
【0059】
吐出ノズル部114は、2本の液ノズル118,118と、それら液ノズル118,118の周囲を囲むガスノズル120とを備えている。液ノズル118は、略円筒形状とされており、2本が上下方向に並んで且つ相互に離隔して配されている。液ノズル118,118の内腔122,122によって、本実施形態の液流路32,32が構成されている。液ノズル118は、先端面が上下方向外側(遠隔側)に向けて先端へ傾斜する傾斜面126とされている。これにより、液ノズル118は、遠隔側が近接側よりも先端へ突出している。
【0060】
ガスノズル120は、吐出ノズル部114の外周壁を構成する周壁部128と、2本の液ノズル118,118の上下間を仕切る隔壁部130とを一体的に備えている。これにより、ガスノズル120は、図12に示す先端側からの側面視において略θ形状とされており、ガスノズル120の内腔132が隔壁部130によって上下に二分されている。そして、ガスノズル120の内腔132における隔壁部130の上下両側には、それぞれ液ノズル118が挿入状態で配されている。これにより、液ノズル118の周囲がガスノズル120の周壁部128及び隔壁部130によって囲まれており、それらガスノズル120の周壁部128及び隔壁部130と液ノズル118との間に、略半円形断面で延びるガス流路42が形成されている。
【0061】
液流路32,32の周壁を構成する液ノズル118,118と、ガス流路42,42の外周壁を構成するガスノズル120は、何れも硬質とされて撓み(曲げ)変形が生じ難いと共に、基端部がベース部112によって径方向で相互に位置決めされていることから、先端部分において径方向で相互に位置決めされている。このように、本実施形態では、液流路32,32の周壁とガス流路42,42の外周壁とを径方向で相互に位置決めする径方向位置決め部が、ベース部112によって構成されている。
【0062】
ガスノズル120の周壁部128は、図8図10に示すように、隔壁部130から上下両側へ離れるに従って先端へより大きく突出している。要するに、周壁部128は、隔壁部130とつながる上下方向の中央部分においてベース部112からの突出長さ(軸方向長さ)が最小とされていると共に、隔壁部130から最も離れた上下方向の両端部分において軸方向長さが最大とされている。また、隔壁部130は、略一定の軸方向長さで左右方向に延びており、隔壁部130の軸方向長さが周壁部128の最小軸方向長さと略同じとされている。従って、ガス流路42,42の周壁は、遠隔側を構成する周壁部128の上下両端部分が、近接側を構成する隔壁部130よりも先端側に突出する遠隔側突出部134とされている。また、ガスノズル120の周壁部128が上下方向の中央(近接側)から両端(遠隔側)へ行くに従って先端側へ突出していることから、周壁部128の左右両側部分には、近接側よりも先端側へ突出した側方突出部136がそれぞれ設けられている。なお、ガスノズル120は、軸方向長さが最小となる周壁部128の上下中央部分及び隔壁部130の各先端が、液ノズル118の上下両端部分の先端よりも先端側に位置しており、ガスノズル120の先端の全体が、液ノズル118よりも先端側に突出している。
【0063】
チューブ接続部116は、図8図13に示すように、2つの筒状体が隣接一体化して基端側へ突出した形状の内側接続部138を備えている。内側接続部138は、図13に示す基端側からの側面視において略8の字状とされており、2つの嵌入穴142,142が上下方向に並んで設けられている。また、チューブ接続部116は、ベース部112の外周端縁部において基端側へ突出する略円筒形状の外側接続部140を備えている。内側接続部138は、外側接続部140の内周側に離れて配置されており、上下方向の両側において外側接続部140に最も接近している。内側接続部138は、外側接続部140よりも基端側へ突出しており、外側接続部140よりも軸方向長さ寸法が大きくされている。
【0064】
そして、内側接続部138の嵌入穴142,142に対して内チューブ本体108,108が挿入されて接続されていると共に、外側接続部140の内周へ外チューブ本体104が挿入されて接続されており、先端ノズル106が外チューブ本体104と内チューブ本体108,108の先端側に取り付けられている。外チューブ本体104は、全周にわたって外側接続部140に内嵌されていると共に、上下両側において、内側接続部138と外側接続部140の間で挟持されている。なお、内チューブ本体108,108及び外チューブ本体104は、先端ノズル106に対して、取外し可能に接続されていてもよいが、容易に抜けないように接着等の手段で固定されていることが望ましい。
【0065】
内チューブ本体108,108は、先端開口が、ベース部112に貫通形成された液通過孔144,144を通じて、液ノズル118,118の内腔である液流路32,32に連通されていると共に、基端開口が、図示しない液供給装置に接続されている。これにより、液供給装置から供給される液状物が、内チューブ本体108,108を通じて液ノズル118,118の先端から吐出される。一方、外チューブ本体104は、先端開口が、ベース部112に貫通形成されたガス通過孔146を通じて、ガスノズル120のガス流路42,42に連通されていると共に、基端開口が、図示しないガス供給装置に接続されている。これにより、ガス供給装置から供給されるガスが、外チューブ本体104を通じてガスノズル120の先端から吐出される。なお、ガス通過孔146は、図12図13に示すように、ガスノズル120の周壁部128と隔壁部130の接続部付近にそれぞれ設けられており、各ガス流路42に対して2つのガス通過孔146,146が連通されている。
【0066】
そして、第1実施形態と同様に、液流路32,32の各先端開口から流出する液状物が、ガス流路42,42を流れるガスの気流によって霧状に吐出されて、体内の創傷等の目標部位に吹き付けられる。
【0067】
本実施形態に示した医療用噴霧デバイス100のように、ガス流路42は、必ずしも全体が独立した複数のルーメンで構成されていなくてもよく、基端部分が外チューブ本体104のシングルルーメンで構成されていてもよい。
【0068】
また、本実施形態に示したような先端ノズル106を採用すれば、流路部材102における先端ノズル106よりも基端側は、何れもシングルルーメンの簡単な構造とされた内チューブ本体108,108と外チューブ本体104で構成することが可能になり、例えば従来からあるチューブを内チューブ本体108,108や外チューブ本体104として採用することも可能となり得る。しかも、先端ノズル106を硬質とすれば、内チューブ本体108,108及び外チューブ本体104の材質や形状等に関係なく、液ノズル118,118とガスノズル120,120との相対的な位置関係を安定して保持することもできる。
【0069】
なお、先端ノズル106の構造の詳細は、要求性能等に応じて適宜に変更され得る。具体的には、例えば、ガスノズル120内におけるガス通過孔146の位置や大きさ、液ノズル118及びガスノズル120の内径や長さなどは、液状物の粘度、ガスの圧力等も考慮して適宜に設定される。
【0070】
図14には、本発明の第3実施形態としての医療用噴霧デバイス150を構成する流路部材152の先端が示されている。流路部材152は、液流路32,32の周壁を構成する内チューブ20,20と、ガス流路42,42の外周壁を構成する外チューブ154,154とを、備えている。また、内チューブ本体108の先端部分を、ベース部112を貫通して組付配置することで、液ノズル118を内チューブ本体108で構成することも可能である。
【0071】
外チューブ154,154は、第1実施形態の外チューブ22,22と同様に、上下方向に並んで配されており、上下方向の内側が近接側、上下方向の外側が遠隔側とされている。外チューブ154,154は、それぞれシングルルーメン構造とされており、それら外チューブ154,154のルーメン34,34が相互に独立している。
【0072】
外チューブ154は、先端の遠隔側が近接側よりも先端側へ突出する遠隔側突出部156とされている。遠隔側突出部156は、外チューブ154の周方向の半周程度にわたって連続する半円筒状とされている。遠隔側突出部156は、先端面が軸直角方向に広がる略半円環状とされており、軸方向の長さが周方向で略一定とされている。更に、遠隔側突出部156の周方向両端は、外チューブ154の中心軸と略平行に延びており、遠隔側突出部156の周方向長さが軸方向において略一定とされている。
【0073】
外チューブ154における遠隔側突出部156を周方向に外れた部分の先端面は、遠隔側突出部156の先端面と略平行とされており、軸方向位置が周方向において略一定とされている。従って、本実施形態の外チューブ154は、遠隔側突出部156を備えた図14に示す先端部分が、半周ずつ軸方向長さの異なる段差形状とされている。
【0074】
各外チューブ154には、それぞれ内チューブ20が内挿状態で配されている。内チューブ20の先端は、外チューブ154における遠隔側突出部156の先端よりも基端側に位置しており、好適には外チューブ154における遠隔側突出部156を周方向に外れた部分の先端よりも基端側に位置している。要するに、内チューブ20の先端は、全周にわたって外チューブ154の先端よりも基端側に位置していることが望ましい。なお、内チューブ20の先端面は、本実施形態では軸直角方向に広がっているが、第2実施形態の液ノズル118の先端面のような傾斜形状であってもよいし、外チューブ154のような段差形状であってもよい。
【0075】
このような本実施形態に従う構造とされた流路部材152を備えた医療用噴霧デバイス150は、第1,第2実施形態に示した医療用噴霧デバイス10,100と同様に、内チューブ20,20から吐出される液状物が、ガス流路42,42を通じて噴出されるガスの気流によって霧状とされて、目標部位へ吹き付けられる。ここにおいて、遠隔側突出部156,156によってガスの気流が遠隔側へ拡散し難くされていることから、液状物の吐出方向が近接側となって、液状物の噴霧範囲を限定することができると共に、内チューブ20,20から吐出される2種類の液状物の効率的な混合が図られる。
【0076】
図15には、本発明の第4実施形態としての医療用噴霧デバイス160を構成する流路部材162の先端が示されている。流路部材162は、3つの液流路32,32,32と3つのガス流路42,42,42とを備えている。流路部材162は、液流路32,32,32の周壁を構成する3本の内チューブ20,20,20と、ガス流路42,42,42の外周壁を構成する外チューブ164とを、備えている。
【0077】
外チューブ164は、略円筒形状の周壁部166を備えていると共に、周壁部166の内腔を仕切る隔壁部168を備えている。隔壁部168は、周壁部166の中心から径方向外方へ向けて周方向で均等に設けられた放射状とされており、外周端において周壁部166と一体的に連続している。このような隔壁部168を備えることによって、内チューブ20は、内腔が周方向で3つに仕切られており、並列的に延びる3つのルーメン170,170,170を備えたトリプルルーメン構造とされている。
【0078】
そして、外チューブ164の内腔において隔壁部168によって画成された3つの領域には、それぞれ内チューブ20が配されている。3本の内チューブ20,20,20の内腔によって本実施形態の液流路32が構成されていると共に、各内チューブ20と外チューブ164の周壁部166及び隔壁部168との間に、本実施形態のガス流路42がそれぞれ形成されている。要するに、本実施形態では、3つの液流路32,32,32と、それら液流路32,32,32の各周囲を延びる3つのガス流路42,42,42とが形成されている。なお、内チューブ20の先端は、外チューブ164の先端よりも基端側に位置していることが望ましく、それによって液流路32の先端開口がガス流路42の先端開口よりも基端側に配置されている。
【0079】
外チューブ164の周壁部166は、3本の内チューブ20,20,20に対する各遠隔側(周壁部166の中心と反対側)にそれぞれ遠隔側突出部172を備えている。遠隔側突出部172は、周壁部166において他の部分よりも先端側へ突出した部分であって、周方向の幅寸法が内チューブ20の直径よりも大きくされている。外チューブ164の隔壁部168は、周壁部166における遠隔側突出部172を外れた部分と略同じ先端位置とされており、遠隔側突出部172よりも基端側に控えて位置している。なお、隔壁部168の先端位置は、遠隔側突出部172の先端位置よりも基端側であればよく、周壁部166における遠隔側突出部172を外れた部分の先端位置よりも基端側であってもよいし、先端側であってもよい。また、外チューブ164における遠隔側突出部172と他の部位は、先端面が連続的な湾曲面とされていてもよく、その場合には、遠隔側突出部172の最大突出部分での先端位置が、他の部分よりも先端側に位置していればよい。
【0080】
本実施形態に示したように、液流路32とガス流路42は、何れも複数であればよく、3つ以上であってもよい。本実施形態では、周壁部166と隔壁部168が一体形成されたトリプルルーメン構造の外チューブ164を例示したが、例えば、第1実施形態のように、3本の円柱状チューブを並列的に配して束ねた構造の外チューブを採用して、それら各チューブのルーメンに内チューブを配することもできる。また、前記第2実施形態のようなチューブとは別体の先端ノズルにおいて各3つ以上の液流路とガス流路を形成することもできる。なお、複数ルーメン構造の外チューブに対して、隔壁部を備えた先端ノズルを装着することで、外チューブにおける特定のルーメンだけを隔壁部で仕切って、当該特定のルーメンにより更に複数のルーメン(ガス流路)を構成することも可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、遠隔側突出部46は、例えば、先端側へ向かって近接側へ傾斜していてもよい。これによれば、ガス流路42の気流が近接側へより効率的に誘導されることも期待できて、液状物62a,62bの混合効率の向上や、噴霧範囲の限定などがより高度に実現され得る。
【0082】
前記第2実施形態のようなガスノズル120が周壁部128とその内腔を仕切る隔壁部130とを備えた構造において、周壁部128の先端位置を全体に亘って一定とすると共に、隔壁部130の先端位置を全体に亘って一定とし、且つ周壁部128の先端位置を隔壁部130の先端位置よりも先端側に設定することもできる。要するに、遠隔側突出部は、周壁部128の全体に設けられていてもよく、近接側に位置する隔壁部130に対して周壁部128の全体が先端側に突出していてもよい。このことは、前記第4実施形態に示した外チューブ164のようなマルチルーメン構造の場合にも同様である。
【0083】
前記第1実施形態の内チューブ20と外チューブ22は、相互に同一中心軸上に配置されていたが、例えば、内チューブ20の中心軸と外チューブ22の中心軸が偏倚していてもよい。また、液流路32の外周側には全周にわたって連続してガス流路42が形成されていることが望ましいが、例えば、内チューブ20を外チューブ22に対して近接側に偏倚させて、それら内チューブ20と外チューブ22を周方向の一部で相互に当接させてもよい。なお、前記第2実施形態の液ノズル118とガスノズル120についても同様であり、液ノズル118とガスノズル120は、各中心軸が相互に偏倚するように配されていてもよい。
【0084】
内チューブ20と外チューブ22とを径方向で相互に位置決めする径方向位置決め部の具体的な構造は、特に限定されない。具体的には、例えば、内チューブ20の外周面又は外チューブ22の内周面に取り付けられて、外チューブ22の内周面又は内チューブ20の外周面に当接することで、内チューブ20と外チューブ22の先端部分の径方向間に介在する位置決め部材によって、径方向位置決め部を構成することもできる。また、例えば、内チューブ20の外周面の断面形状と外チューブ22の内周面の断面形状とを相互に異ならせて、内チューブ20の外周面と外チューブ22の内周面とを周方向で部分的に当接させることにより、径方向位置決め部を構成することもできる。また、例えば、内チューブ20の内周面又は外チューブ22の外周面との対向面間に突出する位置決め突部が、内チューブ20の内周面又は外チューブ22の外周面に当接することによって、径方向位置決め部が構成されるようにしてもよい。
【0085】
液流路32の周壁の先端面は、傾斜形状や段差形状であってもよく、例えば、第1実施形態の内チューブ20の先端面に傾斜形状や段差形状を適用して、内チューブ20の遠隔側を近接側よりも先端側へ突出させることもできる。なお、内チューブ20の先端形状は、特に限定されず、例えば、近接側が遠隔側よりも先端側へ突出した形状等も採用され得る。
【0086】
医療用噴霧デバイスは、例えば開腹手術の切開部位から先端部分を患者の体内へ挿入されて、液状物を体内へ噴霧するようにしてもよく、必ずしも内視鏡のワーキングチャンネルなどを経由して体内へ挿入される態様に限定されるものではない。なお、前記第1実施形態に示した医療用噴霧デバイス10は、流路部材12の吐出管路14が長くされて、内視鏡のワーキングチャンネルへ挿通可能とされていたが、開腹手術の切開部位から挿入される場合等には、吐出管路14をより短くすることも可能となる。要するに、吐出管路の長さは、噴霧対象となる体内の目標部位の位置や目標部位に至る経路などに応じて適宜に設定され得る。
【符号の説明】
【0087】
10 医療用噴霧デバイス(第1実施形態)
12 流路部材
14 吐出管路
16 供給管路
18 接続部材
20 内チューブ(液流路の周壁)
22 外チューブ(ガス流路の外周壁)
24 内腔
26 中間部
28 先端部
30 基端部
32 液流路
34 ルーメン
36 中間部
38 先端部
40 基端部
42 ガス流路
44 傾斜先端面
46 遠隔側突出部
48 側方突出部
50 液供給チューブ
52 ガス供給チューブ
54 メスコネクタ
58 液供給装置
60 シリンダ
62 液状物
64 ピストン
66 先端チップ
68 ガス供給装置
70 吐出管路接続部
72 供給管路接続部
74 内側突出部
76 外側突出部
78 切欠き
80 囲繞壁部
82 液管路接続部
84 ガス管路接続部
86 液流路連通孔
88 ガス流路連通孔
90 軸方向位置決め部
100 医療用噴霧デバイス(第2実施形態)
102 流路部材
104 外チューブ本体
106 先端ノズル
108 内チューブ本体
110 ルーメン
112 ベース部
114 吐出ノズル部
116 チューブ接続部
118 液ノズル(液流路の周壁)
120 ガスノズル(ガス流路の外周壁)
122 内腔
126 傾斜面
128 周壁部
130 隔壁部
132 内腔
134 遠隔側突出部
136 側方突出部
138 内側接続部
140 外側接続部
142 嵌入穴
144 液通過孔
146 ガス通過孔
150 医療用噴霧デバイス(第3実施形態)
152 流路部材
154 外チューブ(ガス流路の外周壁)
156 遠隔側突出部
160 医療用噴霧デバイス(第4実施形態)
162 流路部材
164 外チューブ(ガス流路の外周壁)
166 周壁部
168 隔壁部
170 ルーメン
172 遠隔側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15