(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095208
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ロータ、モータ、駆動装置、噴射孔の形成方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/22 20060101AFI20230629BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20230629BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H02K1/22 C
H02K9/19 Z
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210958
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 立棚
(72)【発明者】
【氏名】條野 雄介
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD30
5H601DD47
5H601DD50
5H601EE26
5H601GE02
5H601GE11
5H601JJ05
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609PP11
5H609PP17
5H609QQ05
5H609QQ10
5H609QQ14
5H609QQ20
5H609RR37
5H609RR46
5H609RR48
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャフトによる噴射孔をより容易に形成するモータを提供する。
【解決手段】ロータコアは、シャフト140の径方向外側面に固定される。シャフトは、回転軸J1に沿って軸方向に延びる筒部141を有する。流体が流通可能な第1流路142は、筒部の内部に配置されて軸方向に延び、軸方向端部に開口する。溝部143は、シャフトの筒部の径方向外側面に配置されて、軸方向に延びる。延伸方向は、軸方向と斜めに交差する一方向である。流体が噴射される噴射孔144は、第1流路から延伸方向に延びて、溝部に開口する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って軸方向に延びる筒部を有するシャフトと、
前記シャフトの径方向外側面に固定されるロータコアと、
を備え、
前記シャフトは、
流体が流通可能な第1流路と、
前記筒部の径方向外側面に配置される溝部と、
前記流体が噴射される噴射孔と、
をさらに有し、
前記第1流路は、前記筒部の内部に配置されて軸方向に延び、軸方向の少なくともどちらかの端部に開口し、
前記溝部は、径方向内方に凹んで、軸方向に延び、
前記噴射孔は、前記第1流路から軸方向と斜めに交差する一方向である延伸方向に延びて、前記溝部に開口する、ロータ。
【請求項2】
前記噴射孔は、前記筒部の軸方向における中央部から端部に向かう軸方向外方側の部分に配置され、径方向外方に向かうにつれて軸方向外方に向かって延びる、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記噴射孔は、複数であって、周方向に並ぶ、請求項1又は請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
周方向に並ぶ前記噴射孔は、等間隔に配置される、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記噴射孔の前記延伸方向と軸方向とが成す最小の角度は、30度以上であって60度以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記ロータコアの径方向内端部から径方向内方に突出する突出片をさらに備え、
前記溝部は、前記突出片を収容する第1溝部を有し、
前記噴射孔は、前記第1溝部に開口する第1噴射孔を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
前記シャフトに前記ロータコアを固定するためのナットをさらに備え、
前記溝部は、前記ナットが加締められる第2溝部を有し、
前記シャフトは、前記ナットが螺子止めされる雄螺子部をさらに有し、
前記雄螺子部は、前記筒部の径方向外側面に配置され、周方向に延びて前記第2溝部と交差し、
前記噴射孔は、前記第2溝部に開口する第2噴射孔を有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記シャフトに前記ロータコアを固定するためのナットをさらに備え、
前記溝部は、前記ナットが加締められる第2溝部を有し、
前記シャフトは、前記ナットが螺子止めされる雄螺子部をさらに有し、
前記雄螺子部は、前記筒部の径方向外側面に配置され、周方向に延びて前記第2溝部と交差し、
前記噴射孔は、前記第2溝部に開口する第2噴射孔をさらに有し、
軸方向から見て、前記第1溝部及び前記第2溝部は、周方向において交互且つ等間隔に配置される、請求項6に記載のロータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のロータと、
前記ロータと径方向に対向するステータと、
を備える、モータ。
【請求項10】
前記シャフトを回転可能に支持するベアリングをさらに備え、
前記噴射孔の径方向外方側の開口は、前記噴射孔が延びる方向において前記ベアリングと対向する、請求項9に記載のモータ。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載のモータと、
流体を送出可能なポンプと、
前記ポンプから送出される前記流体の流通が可能な第2流路と、
を備え、
前記第2流路は、前記シャフトの軸方向端部と前記ポンプとを繋ぐ、駆動装置。
【請求項12】
請求項9又は請求項10に記載のモータと、
流体を送出可能なポンプと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記ポンプから送出される前記流体の流通が可能な第3流路と、
前記モータハウジング内の上部に配置される流体リザーバと、
を備え、
前記第3流路は、前記ポンプと前記流体リザーバとを繋ぎ、
前記流体リザーバは、前記第3流路から供給される前記流体を前記ステータに滴下する、駆動装置。
【請求項13】
請求項9又は請求項10に記載のモータと、
前記モータの出力を駆動シャフトに伝達するギヤ部と、
前記ギヤ部を収容するギヤハウジングと、
前記ギヤハウジング内の上部に配置され、流体を貯留可能な貯留部と、
前記流体の流通が可能な第4流路と、
を備え、
前記ギヤ部は、前記ギヤハウジングの下部に溜まる前記流体を前記貯留部に向けて掻き上げるギヤを有し、
前記第4流路は、前記貯留部と前記シャフトの軸方向端部とを繋ぐ、駆動装置。
【請求項14】
回転軸に沿って軸方向に延びるシャフトの筒部に噴射孔を形成する形成方法であって、
前記筒部の径方向外側面に配置されて径方向内方に凹むとともに軸方向に延びる溝部の底部を切削する第1の加工により、軸方向と斜めに交差する方向に広がる斜面を前記底部に形成するステップと、
前記斜面を穿孔する第2の加工により、前記斜面から前記筒部の内周面に貫通する前記噴射孔を形成するステップと、
前記溝部の前記底部を切削する第3の加工により、前記斜面の少なくとも径方向外端部と前記噴射孔の径方向外端部とを削除するステップと、
を備える、噴射孔の形成方法。
【請求項15】
前記噴射孔を形成するステップの前記第2の加工において、軸方向と斜めに交差し且つ前記斜面と垂直な延伸方向に向けて前記斜面が穿孔される、請求項14に記載の噴射孔の形成方法。
【請求項16】
前記第1の加工、前記第2の加工、及び前記第3の加工は、エンドミルを用いて実施される、請求項15に記載の噴射孔の形成方法。
【請求項17】
前記斜面を形成するステップは、前記シャフトに固定されるロータコアの径方向内端部から径方向内方に突出する突出片を収容する第1溝部の底部に、軸方向と斜めに交差する方向に広がる第1斜面を形成するステップを含み、
前記噴射孔を形成するステップは、前記第1斜面から前記筒部の内周面に貫通する第1噴射孔を形成するステップを含み、
前記削除するステップは、前記第1斜面の少なくとも径方向外端部と前記第1噴射孔の径方向外端部とを削除するステップを含む、請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の噴射孔の形成方法。
【請求項18】
前記斜面を形成するステップは、前記シャフトの雄ネジ部にネジ止めされて前記シャフトにロータコアを固定するナットが加締められる第2溝部の底部に、軸方向と斜めに交差する方向に広がる第2斜面を形成するステップを含み、
前記噴射孔を形成するステップは、前記第2斜面から前記筒部の内周面に貫通する第2噴射孔を形成するステップを含み、
前記削除するステップは、前記第2斜面の少なくとも径方向外端部と前記第2噴射孔の径方向外端部とを削除するステップを含む、請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の噴射孔の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、モータ、駆動装置、噴射孔の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータのシャフトの内部を流れる冷媒を、貫通孔を介してシャフトの外部に送出させる技術が知られている。たとえば、モータのシャフトは、モータの固定子を冷却するための冷却機構部を備える。冷却機構部は、シャフトの径方向の中心部からを軸方向に沿って延びる基幹冷却路と、この基幹冷却路から分岐する分岐冷却路と、を有する。一部の分岐冷却路は、シャフトを支えるベアリングに向かって軸方向に対して斜めに延びる。分岐冷却路から流出する冷却媒体は、シャフトの回転により、ベアリングに供給される。(特開2016-72998号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、軸方向と斜めに交差する方向に延びる貫通孔をシャフトの径方向外側面に形成することは難しい。たとえば、貫通孔を形成する際、軸方向に対して穿孔方向が斜めに交差するので、穿孔工具の先端がシャフトの径方向外側面で滑り易い。
【0005】
本発明は、シャフトに噴射孔をより容易に形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なロータは、シャフトと、ロータコアと、を備える。前記シャフトは、回転軸に沿って軸方向に延びる筒部を有する。前記ロータコアは、前記シャフトの径方向外側面に固定される。前記シャフトは、第1流路と、溝部と、噴射孔と、をさらに有する。前記第1流路には、流体が流通可能である。前記溝部は、前記筒部の径方向外側面に配置される。前記噴射孔から、前記流体が噴射される。前記第1流路は、前記筒部の内部に配置されて軸方向に延び、軸方向の少なくともどちらかの端部に開口する。前記溝部は、径方向内方に凹んで、軸方向に延びる。延伸方向は、軸方向と斜めに交差する一方向である。前記噴射孔は、前記第1流路から前記延伸方向に延びて、前記溝部に開口する。
【0007】
本発明の例示的なモータは、上述のロータと、前記ロータと径方向に対向するステータと、を備える。
【0008】
本発明の例示的な駆動装置は、上述のモータと、ポンプと、第1流路と、を備える。前記ポンプは、流体を送出可能である。前記第1流路は、前記ポンプから送出される前記流体の流通が可能である。前記第2流路は、前記シャフトの軸方向端部と前記ポンプとを繋ぐ。
【0009】
また、本発明の例示的な駆動装置は、上述のモータと、ポンプと、モータハウジングと、第3流路と、流体リザーバと、を備える。前記ポンプは、流体を送出可能である。前記モータハウジングは、前記モータを収容する。前記第3流路では、前記ポンプから送出される前記流体の流通が可能である。前記流体リザーバは、前記モータハウジング内の上部に配置される。前記第3流路は、前記ポンプと前記流体リザーバとを繋ぐ。前記流体リザーバは、前記第3流路から供給される前記流体を前記ステータに滴下する。
【0010】
また、本発明の例示的な駆動装置は、上述のモータと、ギヤ部と、ギヤハウジングと、貯留部と、第4流路と、を備える。前記ギヤ部は、前記モータの出力を駆動シャフトに伝達する。前記ギヤハウジングは、前記ギヤ部を収容する。前記貯留部は、前記ギヤハウジング内の上部に配置され、流体を貯留可能である。前記第4流路は、前記流体の流通が可能である。前記ギヤ部は、ギヤを有する。前記ギヤは、前記ギヤハウジングの下部に溜まる前記流体を前記貯留部に向けて掻き上げる。前記第4流路は、前記貯留部と前記シャフトの軸方向端部とを繋ぐ。
【0011】
本発明の例示的な噴射孔の形成方法は、回転軸に沿って軸方向に延びるシャフトの筒部に噴射孔を形成する。前記形成方法は、斜面を形成するステップと、噴射孔を形成するステップと、削除するステップと、を備える。前記斜面を形成するステップでは、溝部の底部を切削する第1の加工により、斜面を前記底部に形成する。前記溝部は、前記筒部の径方向外側面に配置されて、径方向内方に凹むとともに、軸方向に延びる。前記斜面は、軸方向と斜めに交差する方向に広がる。前記噴射孔を形成するステップでは、前記斜面を穿孔する第2の加工により、前記噴射孔を形成する。前記噴射孔は、前記斜面から前記筒部の内周面に貫通する。前記削除するステップでは、前記溝部の前記底部を切削する第3の加工により、前記斜面の少なくとも径方向外端部と前記噴射孔の径方向外端部とを削除する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の例示的なロータ、モータ、駆動装置、噴射孔の形成方法によれば、シャフトに噴射孔をより容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、駆動装置をZ軸方向から見た概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、駆動装置をX軸方向から見た概略的な構成図である。
【
図4】
図4は、駆動装置を搭載する車両の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、ロータシャフトの構成例を示す外観図である。
【
図6】
図6は、+Y方向から-Y方向に向かってロータシャフトを見た図である。
【
図7】
図7は、Y軸方向と垂直な一方向から見たロータシャフトの断面図である。
【
図8】
図8は、Y軸方向と垂直な他の一方向から見たロータシャフトの断面図である。
【
図9】
図9は、噴射孔の形成方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1噴射孔の形成方法を説明するための断面図である。
【
図12】
図12は、第2噴射孔の形成方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0015】
なお、本明細書では、駆動装置100が水平な路面上に位置する車両300に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、三次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)である。+Z方向は、上方(重力方向とは向きが反対の鉛直上方)である。-Z方向は、下方(重力方向と同じ向きの鉛直下方)である。
【0016】
また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であり、駆動装置100が搭載される車両300の前後方向を示す。+X方向が車両300の前方であり、-X方向が車両300の後方である。ただし、+X方向が車両300の後方であり、-X方向が車両300の前方となることもありうる。
【0017】
Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であり、車両300の幅方向(左右方向)を示す。-Y方向が車両300の左方であり、+Y方向が車両300の右方である。但し、+X方向が車両300の後方となる場合には、-Y方向が車両300の右方であり、+Y方向が車両300の左方となることもありうる。すなわち、X軸方向に関わらず、単に-Y方向が車両300の左右方向の一方側となり、+Y方向が車両300の左右方向の他方側となる。また、駆動装置100の車両300への搭載方法によっては、X軸方向が車両300の幅方向(左右方向)で、Y軸方向が車両300の前後方向になることもありうる。下記の実施形態では、Y軸方向は、たとえばモータ1の回転軸J1などと平行である。なお、以下の説明における「Y軸方向」は、本発明の「軸方向」の一例である。また、「+Y方向」は本発明の「軸方向一方」の一例であり、「-Y方向」は本発明の「軸方向他方」の一例である。但し、以下の説明では、モータ1の回転軸J1などの所定の軸に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶことがある。
【0018】
径方向のうち、軸へと近づく向きを「径方向内方」と呼び、軸から離れる向きを「径方向外方」と呼ぶ。また、所定の軸と直交する方向を単に「径方向」と呼び、所定の軸を中心とする周方向を「周方向」と呼ぶ。
【0019】
また、方位、線、及び面のうちのいずれかと他のいずれかとの位置関係において、「平行」は、両者がどこまで延長しても全く交わらない状態のみならず、実質的に平行である状態を含む。また、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者が互いに90度で交わる状態のみならず、実質的に垂直である状態及び実質的に直交する状態を含む。つまり、「平行」、「垂直」及び「直交」はそれぞれ、両者の位置関係に本発明の主旨を逸脱しない程度の角度ずれがある状態を含む。
【0020】
なお、これらは単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係、方向、及び名称などを限定する意図はない。
【0021】
<1.駆動装置100>
図1は、駆動装置100をZ軸方向から見た概略的な構成図である。
図2は、駆動装置100をX軸方向から見た概略的な構成図である。
図3は、駆動装置100の外観図である。
図4は、駆動装置100を搭載する車両300の一例を示す概略図である。なお、
図1から
図4は、あくまで概念図であり、各部の配置及び寸法は、実際の駆動装置100と同じであるとは限らない。
【0022】
駆動装置100は、少なくともモータを動力源とする車両300に搭載される(
図4参照)。車両300は、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などである。駆動装置100は、上記の車両300の動力源として使用される。なお、
図4において、駆動装置100は、車両300の前輪を駆動する。但し、
図4の例示に限定されず、駆動装置100は、前輪及び後輪の少なくともどちらかを駆動すればよい。車両300は、駆動装置100と、バッテリー200と、を有する。バッテリー200は、駆動装置100に供給するための電力を蓄積する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、駆動装置100は、モータ1を有する。また、駆動装置100は、ギヤ部2と、インバータユニット3と、ポンプ41と、流体クーラ42と、ハウジング5と、流体供給路6と、をさらに有する。
【0024】
<1-1.モータ1>
モータ1は、駆動装置100の駆動源であり、ステータ12よりも径方向内方にロータ11が回転可能に配置されたインナーロータ型である。
図1に示すように、モータ1は、ロータ11と、ステータ12と、第1モータベアリング131と、第2モータベアリング132と、を備える。モータ1によれば、ロータ11が回転する際、ロータ11の後述する噴射孔144から噴射される流体Fを所定の部材(たとえば第1モータベアリング131)へ確実に供給できる。
【0025】
<1-1-1.ロータ11>
ロータ11は、ステータ12により駆動され、回転軸J1を中心として回転可能である。ロータ11は、モータシャフト14を備える。
【0026】
モータシャフト14は、Y軸方向と平行な回転軸J1に沿って延びる筒状であり、回転軸J1周りに回転可能である。モータシャフト14の内側には、流体Fが流れる。駆動装置100は、この流体Fをさらに備える。なお、流体Fは、本実施形態では、ギヤ部2及び駆動装置100の各々のベアリングなどを潤滑する潤滑液であり、たとえばATF(automatic transmission fluid)である。また、流体Fは、モータ1などを冷却する冷媒としても利用される。
【0027】
本実施形態では、モータシャフト14は、2分割された分割シャフトであり、ロータシャフト140及びギヤシャフト210で構成される。
【0028】
ロータシャフト140は、後述するロータコア111を保持する。ロータコア111は、ロータシャフト140の径方向外側面に固定される。なお、ロータシャフト140は、本発明の「シャフト」の一例である。ロータ11は、ロータシャフト140を備える。
【0029】
ギヤシャフト210は、ギヤ部2に接続される。ギヤシャフト210の+Y方向側の端部は、ロータシャフト140の-Y方向側の端部にスプライン嵌合される。但し、この例示に限定されず、ロータシャフト140及びギヤシャフト210は、雄ねじ及び雌ねじを用いたねじカップリングにより連結されてもよいし、圧入及び溶接等の固定方法にて接合されてもよい。圧入、溶接等の固定方法を採用する場合、Y軸方向に延びる凹部及び凸部を組み合わせるセレーションを採用してもよい。このような構成とすることで、ロータシャフト140からギヤシャフト210に回転を確実に伝達することが可能である。
【0030】
また、本実施形態の例示に限定されず、モータシャフト14は、単一の部材であってもよい。この場合、モータシャフト14が本発明の「シャフト」に対応する。
【0031】
次に、ロータ11は、ロータコア111をさらに備える。また、ロータ11は、マグネット112と、突出片113と、ナット114と、をさらに備える。
【0032】
ロータコア111は、磁性体であり、たとえば薄板状の電磁鋼板をY軸方向に積層して形成される。ロータコア111は、ロータシャフト140を囲んでY軸方向に延び、ロータシャフト140に固定される。
【0033】
ロータコア111には、複数のマグネット112が固定される。複数のマグネット112は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0034】
突出片113は、ロータコア111の径方向内端部から径方向内方に突出し、Y軸方向に延びる。前述の如く、ロータ11は、突出片113を備える。たとえば、突出片113は、ロータシャフト140に対してロータコア111の回り止めをするキーである。
【0035】
ナット114は、ロータシャフト140にロータコア111を固定するための部材である。前述の如く、ロータ11は、ナット114を備える。ナット114の径方向内端部には、雌螺子部(符号省略)が配置される。ナット114は、ロータシャフト140の後述する雄螺子部1414にねじ込まれて、ロータコア111の+Y方向側の端部に接する。また、ナット114は、ロータシャフト140の後述する第2溝部1432に加締められる。
【0036】
<1-1-2.ステータ12>
ステータ12は、ロータ11と径方向に隙間を空けて対向する。ステータ12は、ロータ11を囲む環状であって、ロータ11よりも径方向外方に配置される。ステータ12は、インバータユニット3からの電力供給に応じて、ロータ11を回転させる。
【0037】
ステータ12は、ステータコア121と、コイル部122と、ステータコア121及びコイル部122間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ12は、ハウジング5に保持される。ステータコア121は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示省略)を有する。磁極歯の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル部122を構成する。コイル線は、図示略のバスバーを介してインバータユニット3に接続される。
【0038】
<1-1-3.モータベアリング131,132>
モータベアリング131,132は、ハウジング5に保持される。第1モータベアリング131は、ロータシャフト140を回転可能に支持し、詳細にはロータシャフト140の+Y方向側の端部を支持する。なお、第1モータベアリング131は、本発明の「ベアリング」の一例である。前述の如く、モータ1は、第1モータベアリング131を備える。第2モータベアリング132は、ロータシャフト140の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。
【0039】
<1-1-4.ロータシャフト140>
次に、
図5から
図8を参照して、ロータシャフト140の構成を説明する。
図5は、ロータシャフト140の構成例を示す外観図である。
図6は、+Y方向から-Y方向に向かってロータシャフト140を見た図である。
図7は、Y軸方向と垂直な一方向から見たロータシャフト140の断面図である。
図8は、Y軸方向と垂直な他の一方向から見たロータシャフト140の断面図である。
図7及び
図8は、たとえば回転軸J1を含む平面で切断したロータシャフト140の仮想の断面構造を示す。また、
図8は、たとえば、
図7とは回転軸J1周りに90°離れた方向から見た断面構造を示す。
【0040】
ロータシャフト140は、筒部141を有する。筒部141は、回転軸J1に沿ってY軸方向に延びる。筒部141は、大径部1411と、一対の小径部1412と、フランジ部1413と、雄螺子部1414と、を有する。
【0041】
大径部1411及び一対の小径部1412は、回転軸J1に沿ってY軸方向に延びる筒状である。大径部1411の外径は、一対の小径部1412の外径よりも太い。一対の小径部1412のうちの一方は、大径部1411の+Y方向側の端部から+Y方向に延びる。一方の小径部1412の径方向外端部には、第1モータベアリング131が配置される。一対の小径部1412のうちの他方は、大径部1411の-Y方向側の端部から-Y方向に延びる。他方の小径部1412の径方向外端部には、第2モータベアリング132が配置される。大径部1411及び一対の小径部1412の軸中心はそれぞれ、回転軸J1と一致する。
【0042】
フランジ部1413は、大径部1411の-Y方向側の端部に配置され、大径部1411の径方向外側面から径方向外方に広がる。フランジ部1413は、ロータコア111の-Y方向側の端部と接する。ロータコア111は、-Y方向側の端部におけるフランジ部1413との当接と、+Y方向側の端部におけるナット114との当接とにより、Y軸方向において固定される。
【0043】
雄螺子部1414には、ナット114が螺子止めされる。ロータシャフト140は、雄螺子部1414を有する。雄螺子部1414は、筒部141の径方向外側面に配置され、詳細には大径部1411の+Y方向側の端部に配置される。雄螺子部1414は、周方向に延びて、第2溝部1432と交差する。
【0044】
また、ロータシャフト140は、内部流路142と、溝部143と、噴射孔144と、を有する。
【0045】
内部流路142は、筒部141の内部空間である。内部流路142には、流体Fが流通可能である。なお、内部流路142は、本発明の「第1流路」の一例である。内部流路142は、筒部141の内部に配置されてY軸方向に延び、筒部141のY軸方向における端部に開口する。本実施形態では、ロータシャフト140のY軸方向における両端部に開口する。また、内部流路142は、ギヤシャフト210の内部空間を介してモータシャフト14の-Y方向側の端部に繋がる。
【0046】
溝部143は、筒部141の径方向外側面に配置される。溝部143は、径方向内方に凹んで、Y軸方向に延びる。溝部143は、第1溝部1431と、第2溝部1432と、を有する。
【0047】
第1溝部1431は、大径部1411の径方向外側面に配置されて、径方向内方に凹む。第1溝部1431は、径方向から見て、大径部1411の+Y方向側の端部から-Y方向に延びて、フランジ部1413に達する。第1溝部1431は、いわゆるキー溝であり、キーとして機能する突出片113を収容する。第1溝部1431に突出片113が挿入されることで、ロータコア111は、ロータシャフト140に対して周方向に回ることを防止できる。
【0048】
第2溝部1432は、大径部1411の径方向外側面において第1溝部1431とは異なる周方向位置に配置されて、径方向内方に凹む。第2溝部1432は、径方向から見て、大径部1411の+Y方向側の端部から-Y方向に延びて、ロータコア111に達する。第2溝部1432は、いわゆるカシメ溝である。第2溝部1432には、ナット114が加締められる。
【0049】
好ましくは、Y軸方向から見て、第1溝部1431及び第2溝部1432は、周方向において交互且つ等間隔に配置される。たとえば本実施形態では、周方向において隣り合う第1溝部1431及び第2溝部1432は、
図6に示すように90°離れる。こうすれば、ロータシャフト140の周方向における重量の偏りを防止できる。従って、ロータ11をバランス良く安定的に回転させることができる。但し、この例示は、周方向において交互に並ぶ第1溝部1431及び第2溝部1432が異なる間隔で並ぶ構成を排除しない。
【0050】
噴射孔144は、流体Fが噴射される孔である。噴射孔144は、筒部141を貫通する。噴射孔144は、内部流路142から延伸方向Deに延びて、溝部143に開口する。延伸方向Deは、Y軸方向と斜めに交差する一方向である。なお、噴射孔144の形成方法は、後に説明する。
【0051】
ロータシャフト140の噴射孔144がY軸方向と交差する延伸方向Deに延びることにより、ロータ11が回転する際、内部流路142を流れる潤滑油などの流体Fは遠心力によって、噴射孔144を通じて第1モータベアリング131などの所定の部材に向かって噴射される。従って、ロータ11は、所定の部材に流体Fを確実に供給できる。
【0052】
また、噴射孔144を溝部143に開口させることにより、ロータシャフト140に噴射孔144をより容易に形成することができる。たとえば、溝部143の底部1430に噴射孔144の形成用の斜面145(後述する
図10Aから
図10C参照)を形成することで、筒部141の被加工面(
図10Aから
図10Cでは斜面145)での穿孔工具Tpの滑りを抑制しつつ、ロータシャフト140の筒部141に噴射孔144を配置できる。
【0053】
さらに、噴射孔144の配置後に、溝部143の底部1430を削除することにより、溝部143の底部1430において不要な部分を削除できる。
【0054】
本実施形態では、噴射孔144は、筒部141の軸方向外方側の部分に配置され、径方向外方に向かうにつれて軸方向外方に向かって延びる。なお、軸方向外方は、Y軸方向において中央部から端部に向かう向きである。こうすれば、筒部141のY軸方向端部付近に配置される部材(本実施形態では第1モータベアリング131)に、筒部141の内部を流れる潤滑油などの流体Fを供給し易くなる。但し、この例示は、少なくとも一部の噴射孔144が径方向外方に向かうにつれて軸方向内方に向かって延びる構成を排除しない。なお、軸方向内方は、Y軸方向において端部から中央部に向かう向きである。
【0055】
本実施形態では、噴射孔144は、第1モータベアリング131に向かって延びる。噴射孔144の径方向外方側の開口は、噴射孔144が延びる延伸方向Deにおいて、第1モータベアリング131と対向する。たとえばこの開口が第1モータベアリング131と直接に面するので、モータ1は、ロータ11が回転する際、噴射孔144を通じて、筒部141の内部を流れる潤滑油などの流体Fを第1モータベアリング131に向かって直接に噴射できる。従って、モータ1は、第1モータベアリング131に流体Fを確実に供給できる。
【0056】
好ましくは、噴射孔144は、複数であって、周方向に並ぶ。こうすれば、より多くの流体Fを、噴射孔144から所定の部材(たとえば第1モータベアリング131)に向けて噴射できる。但し、この例示は、噴射孔144が単数である構成を排除しない。
【0057】
さらに好ましくは、周方向に並ぶ噴射孔144は、等間隔に配置される。こうすれば、各々の噴射孔144から噴射される流体Fが所定の部材に供給されるタイミングを均等にできる。従って、一定の頻度で、流体Fを所定の部材に噴射できる。なお、この例示は、噴射孔144が異なる間隔で周方向に並ぶ構成を排除しない。
【0058】
また、好ましくは、噴射孔144の延伸方向DeとY軸方向とが成す最小の角度θは、30度以上であって60度以下である。最小の角度θを30度以上且つ60度以下にすることで、筒部141の強度をさほど低減させることなく、筒部141の内部を流れる潤滑油などの流体Fを噴射孔144から所定の部材に向けて噴射できる。対して、最小の角度θを30度未満にすると、所定の部材に向けて流体Fを噴射孔144から噴射し難くなる。また、最小の角度θを60度よりも大きくすると、筒部141の強度が低下する虞がある。
【0059】
噴射孔144は、第1噴射孔1441を有する。第1噴射孔1441は、第1溝部1431に開口する。こうすれば、第1溝部1431を利用して、第1噴射孔2441をロータシャフト140に形成できる。第1噴射孔1441を形成するための溝を新規に形成しなくてもよいので、噴射孔144の形成工程及びロータシャフト140の構造の複雑化を防止できる。なお、第1噴射孔1441は、単数であってもよいし、複数であってもよい。
【0060】
第1噴射孔1441の径方向外方側の開口は、ロータコア111及びナット114よりも+Y方向に配置される。従って、ロータ11が回転する際、第1噴射孔1441から噴射される流体Fは、第1モータベアリング131に供給される。
【0061】
また、噴射孔144は、第2噴射孔1442をさらに有する。第2噴射孔1442は、第2溝部1432に開口する。こうすれば、第2溝部1432を利用して、第2噴射孔2442をロータシャフト140に形成できる。第2噴射孔1442を形成するための溝を新規に形成しなくてもよいので、噴射孔144の形成工程及びロータシャフト140の構造の複雑化を防止できる。なお、第2噴射孔1442は、単数であってもよいし、複数であってもよい。また、本実施形態では、第2噴射孔1442が延びる第2延伸方向De2とY軸方向とが成す最小の角度θ2は、第1噴射孔1441が延びる第1延伸方向De1とY軸方向とが成す最小の角度θ1と同じである(後述する
図11及び
図12参照)。但し、この例示に限定されず、θ2は、θ1とは異なっていてもよい。
【0062】
第2噴射孔1442の径方向外方側の開口は、ロータコア111及びナット114よりも+Y方向に配置される。従って、ロータ11が回転する際、第2噴射孔1442から噴射される流体Fは、第1モータベアリング131に供給される。
【0063】
<1-1-5.噴射孔144の形成方法>
次に、
図9から
図10Cを参照して、噴射孔144の形成方法を説明する。
図9は、噴射孔144の形成方法を説明するためのフローチャートである。
図10Aは、溝部143の内部に形成される斜面145の一例を示す断面図である。
図10Bは、斜面145に形成された噴射孔144の一例を示す断面図である。
図10Cは、斜面145の削除例を示す断面図である。
図10Aから
図10Cは、回転軸J1を基準とする周方向から溝部143の底部1430を見ている。
【0064】
図9の工程では、噴射孔144の形成方法では、回転軸J1に沿ってY軸方向に延びるロータシャフト140の筒部141に噴射孔144を形成する。
【0065】
まず、第1の加工(
図10A参照)により、斜面145を溝部143の底部1430に形成する(ステップS1)。第1の加工では、底部1430を切削する。なお、溝部143は、筒部141の径方向外方Do側の面に配置されて、径方向内方Diに凹むとともに、Y軸方向に延びる。斜面145は、Y軸方向と斜めに交差する方向に広がる。たとえば、第1の加工では、斜面145を形成する部分において、-Y方向に移動する切削工具Tcを-Y方向に向かうにつれて径方向外方Doに移動させる。第1の加工は、溝部143を形成する際に実施されてもよいし、既に形成された溝部143に対して実施されてもよい。後者であれば、たとえば、切削工具Tcは、溝部143の底面を切削工具TcでY軸方向になぞればよい。
【0066】
次に、第2の加工(
図10B参照)により、斜面145から筒部141の内周面(つまり内部流路142)に貫通する噴射孔144を形成する。(ステップS2)。第2の加工では、たとえば斜面145に穿孔工具Tpを押し付けて、斜面145を穿孔する。
【0067】
そして、第3の加工(
図10C参照)により、斜面145の少なくとも径方向外方Do側の端部と噴射孔144の径方向外方Do側の端部とを削除する。(ステップS3)。第3の加工では、溝部143の底部1430を再び切削することで、斜面145の少なくとも一部を切除する。これにより、噴射孔144の径方向外方Do側の開口の径方向位置を、底部1430のうちの噴射孔144の径方向外方Do側の開口に沿う部分と同じ(つまり面一)にできる。なお、
図10Cでは、斜面145は、切削工具Tcで全て切除される。但し、この例示に限定されず、斜面145の一部が切削工具Tcで切除され、斜面145の残りの一部はそのまま残されてもよい。
【0068】
【0069】
上述の形成方法によれば、ステップS1にてY軸方向と斜めに交差する方向に広がる斜面145を溝部143の底部1430に形成するとともに、ステップS2にて穿孔工具Tpでこの斜面145を穿孔することにより噴射孔144を形成できる。従って、Y軸方向に延びる筒部141の径方向外側面を穿孔工具Tpで直接に穿孔する構成と比べて、穿孔工具Tpを傾けた状態で穿孔しても、穿孔工具Tpの先端が筒部141の被加工面である斜面145でY軸方向に滑り難い。そのため、穿孔工具Tpの先端を斜面145に押し付け易い。従って、上述の直接に穿孔する構成と比べて、ロータシャフト140に噴射孔144をより容易に形成することができる。
【0070】
さらに、ステップS3にて斜面145の少なくとも径方向外方Do側の端部と噴射孔144の径方向外方Do側の端部とを削除することにより、溝部143の底部1430において不要な部分を削除できる。つまり、噴射孔144の形成後、噴射孔144を形成するための部分を溝部143の底部1430に配置したままにしないで済む。たとえば
図10Cに示すように、底部1430にY軸方向と平行な底面を形成し、この底面に噴射孔144を開口させることができる。
【0071】
好ましくは、ステップS2において、穿孔工具Tpは、斜面145の法線方向に押し付けられる。つまり、噴射孔144を形成するステップS2の第2の加工において、延伸方向Deに向けて、斜面145が穿孔される。延伸方向Deは、Y軸方向と斜めに交差し且つ斜面145と垂直な方向である。こうすれば、第2の加工において、斜面145における穿孔工具Tpの先端の滑りを確実に防止できる。また、さらに穿孔工具Tpの先端を斜面145に押し付け易くなるので、さらに容易に噴射孔144を形成できる。
【0072】
また、好ましくは、第1の加工、第2の加工、及び第3の加工は、エンドミルを用いて実施される。エンドミルは、穿孔のみならず、穿孔方向(延伸方向De)と交差する方向(たとえばY軸方向)への切削加工もすることができる。同一の工具を用いて第1から第3の加工ができるので、上述の噴射孔144の形成工程がし易くなる。但し、この例示に限定されず、第1の加工、第2の加工、及び第3の加工のうちの少なくともいずれかは、エンドミル以外の工具を用いて実施されてもよい。たとえば、第2の加工には、ドリルなどが用いられてもよい。
【0073】
また、第1噴射孔1441及び第2噴射孔1442は、
図9の工程により形成できる。
【0074】
<1-1-5-1.第1噴射孔1441の形成方法>
まず、
図9及び
図11を参照して、第1噴射孔1441の形成方法を説明する。
図11は、第1噴射孔1441の形成方法を説明するための断面図である。
図11は、回転軸J1を基準とする周方向から第1溝部1431の底部を見ている。
【0075】
たとえば、
図9の斜面145を形成するステップS1は、ステップS11を含む。ステップS11では、第1の加工により、Y軸方向と斜めに交差する方向に広がる第1斜面1451を第1溝部1431の底部に形成する。なお、前述の如く、第1溝部1431は、突出片113を収容するキー溝である。突出片113は、いわゆるキーであり、ロータシャフト140に固定されるロータコア111の径方向内方Di側の端部から径方向内方Diに突出する。
【0076】
また、
図9の噴射孔144を形成するステップS2は、ステップS21を含む。ステップS21では、第2の加工により、第1斜面1451から筒部141の内周面に貫通する第1噴射孔1441を形成する。
【0077】
また、
図9の削除するステップS3は、ステップS31を含む。ステップS31では、第3の加工により、第1斜面1451の少なくとも径方向外方Do側の端部と第1噴射孔1441の径方向外方Do側の端部とを削除する。なお、
図11では、第1斜面1451は、全て切除される。但し、この例示に限定されず、第1斜面1451の一部が切除され、第1斜面1451の残りの一部はそのまま残されてもよい。
【0078】
こうすれば、第1溝部1431は、ロータシャフト140に対するロータコア111の回り止めをするキー(突出片113)が収容されるキー溝として機能する。従って、第1溝部1431を利用して、第1噴射孔1441をロータシャフト140に形成できる。第1噴射孔1441を形成するための溝を新規に形成しなくてもよいので、第1噴射孔1441の形成工程及びロータシャフト240の構造の複雑化を防止できる。
【0079】
<1-1-5-2.第2噴射孔1442の形成方法>
次に、
図9及び
図12を参照して、第2噴射孔1442の形成方法を説明する。
図12は、第2噴射孔1442の形成方法を説明するための断面図である。
図12は、回転軸J1を基準とする周方向から第2溝部1432の底部を見ている。
【0080】
たとえば、
図9の斜面145を形成するステップS1は、ステップS12を含む。ステップS12では、第1の加工により、Y軸方向と斜めに交差する方向に広がる第2斜面1452を第2溝部1432の底部に形成する。なお、前述の如く、第2溝部1432は、ナット114が加締められるカシメ溝である。ナット114は、ロータシャフト140の雄螺子部1414に螺子止めされて、ロータシャフト140にロータコア111を固定する。
【0081】
また、
図9の噴射孔144を形成するステップS2は、ステップS22を含む。ステップS22では、第2の加工により、第2斜面1452から筒部141の内周面に貫通する第2噴射孔1442を形成する。
【0082】
また、
図9の削除するステップS3は、ステップS32を含む。ステップS32では、第3の加工により、第2斜面1452の少なくとも径方向外方Do側の端部と第2噴射孔1442の径方向外方Do側の端部とを削除する。なお、
図12では、第2斜面1452は、全て切除される。但し、この例示に限定されず、第2斜面1452の一部が切除され、第2斜面1452の残りの一部はそのまま残されてもよい。
【0083】
こうすれば、ロータコア111をロータシャフト140に固定するためのナット114の加締用の第2溝部1432を利用して、第2噴射孔1442をロータシャフト140に形成できる。第2噴射孔1442を形成するための溝を新規に形成しなくてもよいので、第2噴射孔1442の形成工程及びロータシャフト140の構造の複雑化を防止できる。
【0084】
なお、
図9では、第2噴射孔1442の形成工程(ステップS12からS32)は、第1噴射孔1441の形成工程(ステップS11からS31)と同時に実施される。但し、この例示に限定されず、第2噴射孔1442の形成工程(ステップS12からS32)は、第1噴射孔1441の形成工程(ステップS11からS31)とは独立して実施されてもよい。
【0085】
<1-2.ギヤ部2>
次に、ギヤ部2は、モータシャフト14の-Y方向側に接続され、本実施形態ではギヤシャフト210に接続される。前述の如く、駆動装置100は、ギヤ部2を備える。ギヤ部2は、モータ1の動力を後述する駆動シャフトDsに伝達する動力伝達装置である。ギヤ部2は、減速装置21と、差動装置22と、を有する。
【0086】
<1-2-1.減速装置21>
減速装置21は、ギヤシャフト210に接続される。減速装置21は、モータ1の回転速度を減じて、モータ1から出力されるトルクをその減速比に応じて増大させる。減速装置21は、モータ1から出力されるトルクを差動装置22に伝達する。減速装置21は、第1ギヤ211と、第2ギヤ212と、第3ギヤ213と、中間シャフト214と、を有する。
【0087】
第1ギヤ211は、モータシャフト14の-Y方向側においてモータシャフト14の径方向外側面に固定される。ギヤ部2は、第1ギヤ211を有する。たとえば、第1ギヤ211は、ギヤシャフト210の径方向外側面に配置される。第1ギヤ211は、ギヤシャフト210と一体であってもよいし、ギヤシャフト210と別体であってギヤシャフト210の径方向外側面に強固に固定されてもよい。第1ギヤ211は、モータシャフト14とともに、回転軸J1を中心に回転可能である。
【0088】
中間シャフト214は、中間軸J2に沿って延び、中間軸J2を中心として回転可能である。なお、中間軸J2は、Y軸方向に延びる。中間シャフト214の両端は、第1中間ベアリング4231及び第2中間ベアリング4621により、中間軸J2を中心として回転可能に支持される。
【0089】
第2ギヤ212及び第3ギヤ213は、中間シャフト214の径方向外側面に固定される。第2ギヤ212は、第1ギヤ211と噛み合う。第3ギヤ213は、たとえば第2ギヤよりも+Y方向に配置されて、差動装置22の後述する第4ギヤ221と噛み合う。第2ギヤ212及び第3ギヤ213はそれぞれ、中間シャフト214と一体であってもよいし、中間シャフト214とは別体であって中間シャフト214の径方向外側面に強固に固定されてもよい。第2ギヤ212及び第3ギヤ213とは、中間シャフト214とともに、中間軸J2を中心に回転可能である。
【0090】
モータシャフト14のトルクは、第1ギヤ211から第2ギヤ212に伝達される。そして、第2ギヤ212に伝達されたトルクは、中間シャフト214を介して第3ギヤ213に伝達される。さらに、第3ギヤ213から、差動装置22の第4ギヤ221にトルクが伝達される。
【0091】
<1-2-2.差動装置22>
差動装置22は、駆動シャフトDsに取り付けられ、減速装置21から伝達されるトルクを駆動シャフトDsに伝達する。差動装置22は、第3ギヤ213と噛み合う第4ギヤ221を有する。言い換えると、ギヤ部2は、第4ギヤ221を有する。第4ギヤ221は、いわゆるリングギヤであり、本発明の「ギヤ」の一例である。第4ギヤ221のトルクは、駆動シャフトDsに出力される。
【0092】
駆動シャフトDsは、第1駆動シャフトDs1と、第2駆動シャフトDs2と、を有する。第1駆動シャフトDs1は、差動装置22の+Y方向側に取り付けられる。第2駆動シャフトDs2は、差動装置22の-Y方向側に取り付けられる。差動装置22は、たとえば、車両300の旋回時に、各々の駆動シャフトDs1,Ds2の回転速度差を吸収しつつ、各々の駆動シャフトDs1,Ds2にトルクを伝える。
【0093】
<1-3.ポンプ41>
次に、ポンプ41は、流体Fを送出可能である。前述の如く、駆動装置100は、ポンプ41を備える。ポンプ41は、電気により駆動する電動ポンプであり、ハーネスケーブル(図示省略)を介してインバータユニット3と接続される。すなわち、ポンプ41は、インバータユニット3により駆動される。ポンプ41には、トロコイダルポンプ、遠心ポンプなどを採用できる。ポンプ41は、ハウジング5に形成されたポンプハウジング504に設けられる。ポンプ41は、ギヤハウジング502の後述する流体溜りP(
図2参照)に溜まる流体Fを吸い込んで流体クーラ42に送出する。
【0094】
<1-4.流体クーラ42>
流体クーラ42は、ポンプ41から送出される流体Fと、流体Fとは別系統で供給される冷媒REとの熱交換を行う。これにより、流体クーラ42は、ポンプ41から送出された流体Fを冷却する。流体クーラ42で冷却された流体Fは、後述する第1モータ側流路61及び第2モータ側流路62に送出され、これらを介してモータ1に供給される。冷媒REは、インバータユニット3の図示しないスイッチング素子(たとえばIGBT、SIC素子)及びコンデンサなどを冷却した後、流体クーラ42に供給される。
【0095】
<1-5.ハウジング5>
次に、
図1及び
図2を参照して、ハウジング5の構成を説明する。ハウジング5は、モータ筒部51と、側板部52と、板部53と、モータ蓋部54と、ギヤ筒部55と、ギヤ蓋部56と、を有する。また、ハウジング5は、モータハウジング501と、ギヤハウジング502と、インバータハウジング503と、ポンプハウジング504と、をさらに有する。
【0096】
<1-5-1.モータ筒部51>
モータ筒部51は、Y軸方向に延びる筒状であって、ロータシャフト140、ロータ11、及びステータ12などを収容する。
【0097】
<1-5-2.側板部52>
側板部52は、回転軸J1と交差する方向に広がる板状であって、モータ筒部51の-Y方向側の端部を覆う。本実施形態では、モータ筒部51及び側板部52は、同一の部材である。但し、この例示に限定されず、両者は別の部材であってもよい。
【0098】
また、側板部52は、挿通孔521と、第2モータベアリングホルダ522と、第1ギヤベアリングホルダ523と、第1中間ベアリングホルダ524と、第1駆動シャフト通過孔525と、第1駆動ベアリングホルダ526と、側板開口527と、を有する。挿通孔521、第1駆動シャフト通過孔525、及び側板開口527は、側板部52をY軸方向に貫通する。
【0099】
挿通孔521の中心は、回転軸J1と一致する。挿通孔521の+Y方向側には、第2モータベアリング132を保持する第2モータベアリングホルダ522が配置される。挿通孔521の-Y方向側には、第1ギヤベアリング5231を保持する第1ギヤベアリングホルダ523が配置される。第1ギヤベアリング5231は、ギヤシャフト210の+Y方向側の端部を回転可能に支持する。第1中間ベアリングホルダ524は、第1中間ベアリング5241を保持する。第1中間ベアリング5241は、中間シャフト214の+Y方向側の端部を回転可能に支持する。
【0100】
第1駆動シャフト通過孔525の中心は、差動軸J3と一致する。第1駆動シャフト通過孔525には、第1駆動シャフトDs1が回転可能な状態で貫通する。第1駆動シャフト通過孔525には、第1駆動ベアリングホルダ526が配置される。第1駆動ベアリングホルダ526は、第1駆動ベアリング5261を保持する。第1駆動ベアリング5261は、第1駆動シャフトDs1を回転可能に支持する。なお、第1駆動ベアリングホルダ526において第1駆動ベアリング5261よりも+Y方向側には、流体Fの漏れを抑制するため、シール部材(不図示)が設けられる。
【0101】
側板開口527は、後述するモータハウジング501とギヤハウジング502とを接続する。側板開口527は、モータハウジング501内の下部に溜った流体Fをギヤハウジング502に流出可能にする。ギヤハウジング502に流出した流体Fは、流体溜りPに溜まる。
【0102】
<1-5-3.板部53>
板部53は、モータ筒部51から-X方向に延びる。板部53には、ポンプ41及び流体クーラ42が取り付けられる。
【0103】
<1-5-4.モータ蓋部54>
モータ蓋部54は、モータ筒部51の+Y方向側の端部を覆う。モータ蓋部54は、第1モータベアリング131を保持する第1モータベアリングホルダ541を有する。
【0104】
<1-5-5.ギヤ筒部55>
ギヤ筒部55は、Y軸方向に延びる筒状であって、ギヤ部2を収容する。ギヤ筒部55は、側板部52の-Y方向側の端部に取り付けられる。
【0105】
<1-5-6.ギヤ蓋部56>
ギヤ蓋部56は、ギヤ筒部55の-Y方向側の端部を覆う。本実施形態では、ギヤ筒部55及びギヤ蓋部56は、同一の部材である。但し、この例示に限定されず、両者は別の部材であってもよい。
【0106】
また、ギヤ蓋部56は、蓋部材561と、第2ギヤベアリングホルダ562と、第2中間ベアリングホルダ563と、第2駆動シャフト通過孔564と、第2駆動ベアリングホルダ565と、を有する。
【0107】
蓋部材561は、回転軸J1と交差する方向に広がる。第2ギヤベアリングホルダ562は、第2ギヤベアリング5621を保持する。第2ギヤベアリング5621は、ギヤシャフト210の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。第2中間ベアリングホルダ563は、第2中間ベアリング5631を保持する。第2中間ベアリング5631は、中間シャフト214の-Y方向側の端部を回転可能に支持する。
【0108】
第2駆動シャフト通過孔564は、蓋部材561をY軸方向に貫通する。第2駆動シャフト通過孔564の中心は、差動軸J3と一致する。第2駆動シャフト通過孔564には、第2駆動シャフトDs2が回転可能な状態で貫通する。第2駆動シャフト通過孔564には、第2駆動ベアリングホルダ565が配置される。第2駆動ベアリングホルダ565は、第2駆動シャフトDs2を回転可能に支持する第2駆動ベアリング5651を保持する。なお、第2駆動ベアリングホルダ565において第2駆動ベアリング5651よりも-Y方向側には、流体Fの漏れを抑制するため、シール部材(不図示)が設けられる。
【0109】
<1-5-7.モータハウジング501>
モータハウジング501は、モータ筒部51、側板部52、及びモータ蓋部54で囲まれる空間である。モータハウジング501は、モータ1を収容する。駆動装置100は、ギヤハウジング502を有する。
【0110】
<1-5-8.ギヤハウジング502>
ギヤハウジング502は、側板部52、ギヤ筒部55、及びギヤ蓋部56で囲まれた空間である。ギヤハウジング502は、ギヤ部2を収容する。駆動装置100は、ギヤハウジング502を有する。ギヤハウジング502の内部の-Z方向側の部分には、流体Fが溜まる流体溜りPが配置される。モータハウジング501及びギヤハウジング502は、側板部52により区画される。
【0111】
<1-5-9.インバータハウジング503>
インバータハウジング503は、モータ筒部51及び板部53の+Z方向側の端部に配置され、インバータユニット3を収容する。
【0112】
<1-5-10.ポンプハウジング504>
ポンプハウジング504は、ポンプ41を収容する。ポンプハウジング504は、板部53に形成される。
【0113】
<1-6.流体供給路6>
次に、
図1及び
図2を参照して、流体供給路6を説明する。流体供給路6は、駆動装置100の所定部に流体Fを供給する。流体供給路6は、第1モータ側流路61と、第2モータ側流路621と、流体リザーバ622と、ギヤ側流路63と、貯留部631と、を有する。
【0114】
<1-6-1.第1モータ側流路61>
第1モータ側流路61では、ポンプ41から送出される流体Fの流通が可能である。なお、第1モータ側流路61は、本発明の「第2流路」の一例である。駆動装置100は、第1モータ側流路61を備える。第1モータ側流路61は、ロータシャフト140のY軸方向端部とポンプ41とを繋ぐ。詳細には、第1モータ側流路61の一方端部は、流体クーラ42を介してポンプ41と繋がる。第1モータ側流路61の他方端部は、第1モータベアリングホルダ541に繋がり、第1モータベアリングホルダ541を介してロータシャフト140の+Y方向側の端部と繋がる。第1モータ側流路61により、駆動装置100は、ポンプ41から送出される流体Fをロータシャフト140内に供給できる。従って、駆動装置100は、この流体Fをモータ1内の所定の部材(たとえば第1モータベアリング131)に供給できる。
【0115】
<1-6-2.第2モータ側流路621及び流体リザーバ622>
第2モータ側流路621では、ポンプ41から送出される流体Fの流通が可能である。第2モータ側流路621は、本発明の「第3流路」の一例である。駆動装置100は、第2モータ側流路621を備える。第2モータ側流路621は、ポンプ41と流体リザーバ622とを繋ぐ。詳細には、第2モータ側流路621の一方端部は、流体クーラ42を介してポンプ41と繋がる。第2モータ側流路62の他方端部は、流体リザーバ622と繋がる。
【0116】
流体リザーバ622は、モータハウジング501内の上部に配置され、第2モータ側流路621から供給される流体Fを貯留可能である。流体リザーバ622は、第2モータ側流路621から供給される流体Fをステータ12に滴下する。こうすれば、駆動装置100は、第2モータ側流路621を経由してポンプ41から送出される流体Fを流体リザーバ622からステータ12に供給して、ステータ12を冷却できる。
【0117】
たとえば、流体リザーバ622の底部には、滴下孔(符号省略)が形成されており、滴下孔から流体Fを滴下する。滴下孔は、たとえば、ステータ12のコイル部122のコイルエンド(符号省略)の上部に形成される。滴下孔から滴下される流体Fは、コイル部122に供給されて、コイル部122を冷却する。
【0118】
<1-6-3.貯留部631及びギヤ側流路632>
貯留部631は、ギヤハウジング502内の上部に配置され、流体Fを貯留可能である。駆動装置100は、貯留部631を備える。詳細には、貯留部631は、第4ギヤ221よりも差動軸J3を基準とする径方向外方に配置され、+Z方向(つまり鉛直上方)に開口する。貯留部631には、第4ギヤ221によって掻き上げられた流体Fが貯められる。
【0119】
ギヤ側流路632は、ギヤ蓋部56において蓋部材561の内部に配置される。ギヤ側流路632では、流体Fの流通が可能である。ギヤ側流路632は、本発明の「第4流路」の一例である。ギヤ側流路632は、貯留部631とロータシャフト140のY軸方向端部とを繋ぐ。詳細には、ギヤ側流路632の一方端部は、貯留部631と繋がる。ギヤ側流路632の他方端部は、第2ギヤベアリングホルダ562に繋がる。なお、第2ギヤベアリングホルダ562は、中空のギヤシャフト210の-Y方向側の端部と繋がる。従って、ギヤ側流路632の他方端部は、第2ギヤベアリングホルダ562及びギヤシャフト210を介して、ロータシャフト140の-Y方向側の端部と繋がる。
【0120】
こうすれば、駆動装置100は、ギヤハウジング502の下部に溜まる潤滑油などの流体Fをロータシャフト140の内部流路142に供給できる。従って、駆動装置100は、この流体Fをモータ1内の所定の部材(たとえば第1モータベアリング131)に供給できる。
【0121】
たとえば、第4ギヤ221は、ギヤハウジング502の下部(たとえば流体溜りP)に溜まる流体Fを貯留部631に向けて掻き上げる。貯留部631に掻き上げられた流体Fは、ギヤ側流路632に供給される。
図2に示すように、ギヤ側流路632に供給された流体Fの一部は、第2ギヤベアリング5621に供給される。また、ギヤ側流路632に供給された流体Fの他の一部は、ギヤシャフト210の-Y方向側の端部に流入して+Y方向に流れ、ギヤシャフト210の内部空間を経由してロータシャフト140の内部流路142に流入する。
【0122】
なお、本実施形態では、流体供給路6は、第1モータ側流路61と、第2モータ側流路621及び流体リザーバ622と、ギヤ側流路63及び貯留部631と、を全てを備える。ただし、この例示に限定されず、これらのうちの少なくとも2組は省略されてもよい。
【0123】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜且つ任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、軸方向と斜めに交差する方向に延びる貫通孔が配置される中空のシャフトを搭載する装置に有用である。
【符号の説明】
【0125】
100・・・駆動装置、200・・・バッテリー、300・・・車両、1・・・モータ、11・・・ロータ、111・・・ロータコア、112・・・マグネット、113・・・突出片、114・・・ナット、12・・・ステータ、121・・・ステータコア、122・・・コイル部、131・・・第1モータベアリング、132・・・第2モータベアリング、14・・・モータシャフト、140・・・ロータシャフト、141・・・筒部、1411・・・大径部、1412・・・小径部、1413・・・フランジ部、2414・・・雄螺子部、142・・・内部流路、143・・・溝部、1430・・・底部、1431・・・第1溝部、1432・・・第2溝部、144・・・噴射孔、1441・・・第1噴射孔、1442・・・第2噴射孔、145・・・斜面、1451・・・第1斜面、1452・・・第2斜面、2・・・ギヤ部、21・・・減速装置、210・・・ギヤシャフト、211・・・第1ギヤ、212・・・第2ギヤ、213・・・第3ギヤ、214・・・中間シャフト、22・・・差動装置、221・・・第4ギヤ、3・・・インバータユニット、41・・・ポンプ、42・・・流体クーラ、5・・・ハウジング、501・・・モータハウジング、502・・・ギヤハウジング、503・・・インバータハウジング、504・・・ポンプハウジング、51・・・モータ筒部、52・・・側板部、521・・・挿通孔、522・・・第2モータベアリングホルダ、523・・・第1ギヤベアリングホルダ、5231・・・第1ギヤベアリング、524・・・第1中間ベアリングホルダ、5241・・・第1中間ベアリング、525・・・第1駆動シャフト通過孔、526・・・第1駆動ベアリングホルダ、5261・・・第1駆動ベアリング、527・・・側板開口、53・・・板部、54・・・モータ蓋部、541・・・第1モータベアリングホルダ、55・・・ギヤ筒部、56・・・ギヤ蓋部、561・・・蓋部材、562・・・第2ギヤベアリングホルダ、5621・・・第2ギヤベアリング、563・・・第2中間ベアリングホルダ、5631・・・第2中間ベアリング、564・・・第2駆動シャフト通過孔、565・・・第2駆動ベアリングホルダ、5651・・・第2駆動ベアリング、61・・・第1モータ側流路、621・・・第2モータ側流路、622・・・流体リザーバ、63・・・ギヤ側流路、631・・・貯留部、F・・・流体、Ds・・・駆動シャフト、Ds1・・・第1駆動シャフト、Ds2・・・第2駆動シャフト、J1・・・回転軸、J2・・・中間軸、J3・・・差動軸、P・・・流体溜り、RE・・・冷媒、Tc・・・切削工具、Tp・・・穿孔工具、De・・・延伸方向