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特開2023-95220詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法
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  • 特開-詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095220
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/224 20060101AFI20230629BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20230629BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20230629BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08J9/224 CES
A47C27/00 K
A47C27/00 Q
B68G7/06 Z
A47C27/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210979
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】大出 康貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
【テーマコード(参考)】
3B096
4F074
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AD07
4F074AA24
4F074AD13
4F074AG11
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA38
4F074CA46
4F074DA08
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA37
4F074DA45
(57)【要約】
【課題】良好な手触りやクッション性を発揮でき、かつ、長期間使用された場合であっても、良好な手触りやクッション性を維持可能なクッション材用の詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法を提供する。
【解決手段】クッション材用の詰め物ビーズは、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体が脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆されているポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、上記発泡粒子本体が脂肪酸アミドを含有するよう構成される。またポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体を、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆することでポリオレフィン系樹脂発泡粒子である詰め物ビーズが製造される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材用の詰め物ビーズであって、
前記詰め物ビーズは、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体が脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆されているポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、
前記発泡粒子本体が脂肪酸アミドを含有することを特徴とする詰め物ビーズ。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドの含有量が0.01重量%以上3重量%以下である、請求項1に記載の詰め物ビーズ。
【請求項3】
前記脂肪酸アミドと前記脂肪酸金属塩との重量比が1:0.5~1:20である、請求項1又は2に記載の詰め物ビーズ。
【請求項4】
前記脂肪酸アミドがエルカ酸アミドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積が0.5mm/個以上1000mm/個以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における前記脂肪酸金属塩の被覆量の平均値が、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.01μg以上0.3μg以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の形状が略円柱状であり、平均L/Dが0.8以上1.3以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ密度が5kg/m以上200kg/m以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
【請求項9】
クッション材用の詰め物ビーズを製造する方法であって、
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体を、
脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆して詰め物ビーズを得る、詰め物ビーズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズクッション、ソファ、およびマットレスなどのクッション材に用いられる、詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビーズクッション、ソファ、およびマットレスなどのクッション材を製造するために用いられる詰め物ビーズとして、発泡粒子が使用されている。例えば、特許文献1には、スチレン系樹脂発泡粒子が袋体に充填されてなるクッション体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-223002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述するスチレン系樹脂発泡粒子は、クッション材用の詰め物ビーズとして、袋体の内部に充填された場合に好適な感触を発揮し得る。一方、当該クッション材の繰り返しの使用等により、スチレン系樹脂発泡粒子に荷重が繰り返しかけられた場合に、荷重が取り除かれても、発泡粒子の状態が、荷重をかける前の状態まで十分に復元しない等の問題があった。そのため、長期間使用した際には、上記クッション材のクッション性や手触りが低下する虞があった。
【0005】
これに対し、一般的に、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、スチレン系樹脂発泡粒子に比べ、発泡粒子の復元性に優れる。しかしポリオレフィン系樹脂発泡粒子をクッション材用の詰め物ビーズとして用いた場合の、当該クッション材の手触り等については向上の余地があった。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、良好な手触りやクッション性を発揮でき、かつ、長期間使用された場合であっても、良好な手触りやクッション性を維持可能なクッション材用の詰め物ビーズおよび詰め物ビーズの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の詰め物ビーズは、クッション材用の詰め物ビーズであって、上記詰め物ビーズは、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体が脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆されているポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、上記発泡粒子本体が脂肪酸アミドを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の詰め物ビーズの製造方法は、クッション材用の詰め物ビーズを製造する製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体を、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆して詰め物ビーズを得る、詰め物ビーズの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の詰め物ビーズは、クッション材のクッション性や手触りを良好なものとするとともに、クッション材が繰り返し使用された場合であっても、その良好なクッション性や手触りを長期間維持することが可能である。
【0010】
本発明の詰め物ビーズの製造方法によれば、本発明の詰め物ビーズを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態であるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の全融解熱量及び高温ピーク熱量を得るための、JIS K7122:1987年に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に従って得たDSC曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の詰め物ビーズについて説明する。
本発明の詰め物ビーズは、例えば、袋体に充填されて、クッション材を形成するために用いられる粒子状の詰め物である。このようなクッション材は、袋体と、袋体の内部に充填された詰め物ビーズとを備える。袋体を構成する素材としては、伸縮性を有する素材を用いることができ、例えば、化学繊維、絹、木綿等により形成された布等を使用することができる。
本発明に関し、クッション材は、その内部に発泡粒子が詰められた状態で用いられるものであり、クッション性を有する構成物として広く用いることができる。具体的には、クッション材として、ビーズクッション、ソファ、枕、人形およびマットレスなどのクッション性を有する構成物が挙げられる。これらの中でも、本発明の詰め物ビーズは、ビーズクッション用の詰め物ビーズとして好適に用いることができる。
本発明の詰め物ビーズは、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆された発泡粒子本体を備え、脂肪酸アミドを含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子である。
上記構成を備える本発明の詰め物ビーズは、例えば、袋体に充填されて、袋体と、該袋体の内部に充填された詰め物ビーズとを備えるクッション材が形成された際に、当該クッション材のクッション性や手触りを良好なものとするとともに、当該クッション材が繰り返し使用された場合であっても、その良好なクッション性や手触りを長期間維持することが可能である。以下に本発明の詰め物ビーズについて詳細に説明する。
【0013】
[発泡粒子本体]
本発明の詰め物ビーズに用いられる発泡粒子本体は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂として構成される。本発明は、ポリオレフィン系樹脂を基材とする発泡粒子本体を用いることでクッション材の柔軟性および復元性を良好なものとするとともに、後述するとおり、当該発泡粒子本体を、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆するとともに、発泡粒子本体に脂肪酸アミドを含有させることで、長期間の使用においても、クッション材の触り心地を良好なものとする。
【0014】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を用いることができ、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。なお、これらの樹脂は、単独で用いられても良いし、混合して用いられてもよい。
また、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂の割合は50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、実質的に100重量%、つまりポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂であることが特に好ましい。
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂以外の樹脂やエラストマー等の他の重合体を含んで発泡粒子本体が構成されてもよい。発泡粒子本体が他の重合体を含む場合、その含有量は、基材樹脂100重量部に対して、概ね30重量部以下であることが好ましく、20重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0015】
発泡粒子本体を構成する基材樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体又はプロピレンに由来する構造単位を、50重量%を超えて含むポリプロピレン系共重合体が例示される。
上記ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示できる。尚、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
上記基材樹脂は、1種のポリプロピレン系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上のポリプロピレン系樹脂から構成されていてもよい。また上述する重合体は架橋したものであってもよいが、無架橋のものであることが好ましい。
軽量で、適度な剛性を有すると共に、クッション性と復元性とが良好な発泡粒子を安定して得ることができる観点からは、ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体から選択される1種以上のポリプロピレン系共重合体がより好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がさらに好ましい。
また、発泡粒子に適度な剛性を付与しやすくなる観点からは、上記ポリプロピレン系樹脂の融点は、135℃以上であることが好ましく、138℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。また、発泡粒子のクッション性や復元性を高めやすくなる観点からは、上記ポリプロピレン系樹脂の融点は、160℃以下であることが好ましく、155℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987に基づいて求めることができる。この際、試験片の状態調節としては、「(2)一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」が採用される。
より具体的には、発泡粒子を試験片として、JIS K7121:1987に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で23℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で23℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂の融点とする。なお、DSC曲線において融解ピークが2つ以上現れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点の温度を融点とする。この際、各融解ピークの頂点温度の間に位置するDSC曲線の谷間の温度を境にして各融解ピークを区別して各融解ピークの面積(融解熱量)を比較することで、最も大きな面積を有する融解ピークを判断することができる。DSC曲線の谷間の温度は、DSCの微分曲線(DDSC)を参照して、微分曲線の縦軸の値が0となる温度から判断することができる。
【0016】
発泡粒子本体を構成する基材樹脂としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が例示される。基材樹脂は、1種のポリエチレン系樹脂から構成されていてもよいし、2種以上のポリエチレン系樹脂から構成されていてもよい。尚、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0017】
発泡粒子本体には、上述する基材樹脂を含む樹脂以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜任意の添加剤が含まれてもよい。任意の添加剤としては、難燃剤、難燃助剤、気泡調整剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、導電材、帯電防止剤等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いられる発泡粒子本体の製造方法は特に限定されないが、後述する詰め物ビーズの製造方法の説明において、併せて発泡粒子本体の製造方法の例について説明する。
【0019】
[ポリオレフィン系樹脂発泡粒子]
本発明の詰め物ビーズをなすポリオレフィン系樹脂発泡粒子(以下、単に発泡粒子ともいう。)は、被覆剤により被覆された上記発泡粒子本体を主体とし、脂肪酸アミドを含有する。本発明においてポリオレフィン系樹脂発泡粒子に含有される脂肪酸アミドは、主として上記発泡粒子本体中に分散して含有されている。
【0020】
被覆剤:
本発明における被覆剤は、発泡粒子本体の表面を被覆する。発泡粒子本体が被覆剤により被覆されている発泡粒子をクッション材用の詰め物ビーズとして用いることによって、袋体に充填された際の発泡粒子の流動性が良好となり、これによってクッション材の手触りを向上させることができる。尚、本発明に関し流動性とは、袋体に充填されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の集合体における各発泡粒子の動き易さを指す。当該流動性は、クッション材の手触りなどの官能評価や、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の安息角を測定することで評価することができる。
【0021】
被覆剤は、脂肪酸金属塩を含む。クッション材の手触りを安定して高めやすい観点からは、被覆剤中の脂肪酸金属塩の割合は、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが特に好ましい。
【0022】
上記脂肪酸金属塩は脂肪酸と金属との塩である。脂肪酸金属塩としては、たとえば、炭素数が12以上30以下の脂肪酸(高級脂肪酸)と金属との塩が挙げられ、より具体的には、ステアリン酸金属塩、ラウリン酸金属塩、パルミチン酸金属塩などが好ましい例として挙げられる。
また、脂肪酸金属塩を構成する金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウムなどが例示される。
【0023】
クッション材の手触りを顕著に向上させることができるという観点からは、脂肪酸金属塩は、ステアリン酸金属塩を含むことが好ましく、ステアリン酸亜鉛を含むことがより好ましい。また、脂肪酸金属塩がステアリン酸金属塩を含む場合、脂肪酸金属塩中の上記ステアリン酸金属塩の割合は、50重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましく、90重量%以上であることがさらに好ましい。なお、この場合も、ステアリン酸金属塩がステアリン酸亜鉛であることが好ましい。
【0024】
被覆剤に含まれうる脂肪酸金属塩以外の被覆剤としては、たとえば、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸エステル、ジメチルシリコーンオイル等のシリコーンオイル、アルキルジエタノールアミン、グリセリン等が挙げられる。
【0025】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%に対して、0.05重量%以上1重量%以下であることが好ましく、0.08重量%以上0.80重量%以下であることがより好ましく、0.10重量%以上0.60重量%以下であることがさらに好ましく、0.15重量%以上0.40重量%以下であることが特に好ましい。
上述する脂肪酸金属塩の被覆量が0.05重量%以上である詰め物ビーズであれば、良好な手触りのクッション材を安定して提供し易い。また被覆量が1重量%以下である詰め物ビーズであれば、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子から脂肪酸金属塩が過度に脱離することを良好に抑制することができ、詰め物ビーズを袋体に充填する際の作業性を高めることや、クッション材使用時の脂肪酸金属塩の飛散をより確実に抑制することができる。
【0026】
(脂肪酸金属塩の被覆量の測定方法)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量の測定方法は公知の方法から適宜選択して行うことができる。以下では、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛が用いられた場合における、キレート滴定法による当該ステアリン酸亜鉛の被覆量の測定方法を例に説明する。
まず、フラスコ等の容器に、所定量のポリオレフィン系樹脂発泡粒子とメタノールとを入れて撹拌し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に被覆されているステアリン酸亜鉛をメタノール中に溶出させる。次いで、ステアリン酸亜鉛が溶出したメタノールを分取し、このメタノールと、所定の濃度に調整されたEDTA-Na-Cu(II)水溶液と、所定のpHに調整されたNHCl-アンモニア緩衝溶液とを混合して、水溶液S1を調整する。次いで、イオン選択性電極(銅イオン電極)を備える電位差自動滴定装置を用い、水溶液S1に、所定の濃度に調整された、EDTA-NaとMgClとを含む水溶液S2を滴下して、キレート滴定を行う。この測定により銅イオン量(すなわち、亜鉛イオン量)を算出し、この量にステアリン酸亜鉛の分子量(632g/mol)を乗じて単位換算することで、水溶液S1中に含まれるステアリン酸亜鉛の量を算出する。このステアリン酸亜鉛の量を、測定に使用したポリオレフィン系樹脂発泡粒子の量で除し、百分率で表すことで、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子におけるステアリン酸亜鉛の被覆量を求めることができる。
【0027】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量の平均値)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量の平均値は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.01μg以上0.3μg以下であることが好ましい。
脂肪酸金属塩の被覆量の平均値が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.01μg以上であることで、クッション材に良好な手触りが安定して発現しやすくなる。かかる観点から、脂肪酸金属塩の被覆量の平均値は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.02μg以上であることが好ましく、0.03μg以上であることがより好ましく、0.04μg以上であることがさらに好ましく、0.05μg以上であることが特に好ましい。また、脂肪酸金属塩の被覆量の平均値が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.3μg以下に調整することによって脂肪酸金属塩の脱離を良好に防止することができる。かかる観点から、脂肪酸金属塩の被覆量の平均値は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.20μg以下であることが好ましく、0.18μg以下であることがより好ましく、0.16μg以下であることがさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値は、所定量(例えば100g)のポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の量A(g)、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積a(mm/個)および当該所定量(例えば100g)のポリオレフィン系樹脂発泡粒子における発泡粒子の個数b(個)を求める。そして、得られた値を用い、以下の式(1)により求められる。
[数1]
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値(μg)=脂肪酸金属塩の量A(g)×10/(平均体積a(mm/個)×粒子の数b(個))・・・・・(1)
【0028】
発泡粒子本体に対し、脂肪酸金属塩を含む被覆剤を被覆させる方法については、後述する詰め物ビーズの製造方法において説明する。
【0029】
脂肪酸アミド:
本発明の詰め物ビーズをなすポリオレフィン系樹脂発泡粒子は脂肪酸アミドを含有する。これは、詰め物ビーズを構成する発泡粒子本体に脂肪酸アミドを含有させることで実現される。
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体に対して被覆剤を被覆させた場合、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体に対して被覆剤を被覆させた場合に比べ、被覆剤が脱離しやすく、クッション材の手触りが低下しやすい傾向にある。一方、本発明においては、発泡粒子本体の表面に被覆剤を被覆させるだけでなく、発泡粒子本体に脂肪酸アミドを含有させることによって、クッション材の良好な手触りを長期間にわたって維持することが可能となるという優れた効果が発揮される。このような効果が発揮される理由は明らかではないが、発泡粒子本体に含有された脂肪酸アミドの一部が時間の経過とともに発泡粒子本体から発泡粒子本体の表面に移行すると共に、移行した脂肪酸アミドと、当該表面を被覆する脂肪酸金属塩などの被覆剤との親和性が良いためか、発泡粒子の流動性が高められると共に、脂肪酸金属塩の脱離が防止されやすくなるといったことが推察される。
【0030】
本発明において、脂肪酸アミドは、炭化水素基の炭素数が12以上の高級脂肪酸アミドを意味する。脂肪酸アミドの炭化水素基の炭素数は、12以上30以下であることが好ましく、16以上26以下であることがより好ましく、18以上24以下であることが更に好ましい。なお、脂肪酸アミドの炭化水素基の炭素数は、アミド基を構成する炭素原子を除いた炭化水素基の炭素数である。例えば、脂肪酸アミドが第1級アミドの場合には、脂肪酸アミドは、一般式:RCONHで表され、炭化水素基(具体的には、長鎖脂肪酸基)とアミド基とを有する化合物である。一般式:RCONHにおけるRは炭化水素基である。
脂肪酸アミドは、飽和脂肪酸アミドであっても、不飽和脂肪酸アミドであってもよい。クッション材の手触りが長期間にわたって維持されやすくなる観点から、好ましくは不飽和脂肪酸アミドがよい。また、脂肪酸アミドは、第1級アミドであっても、第2級アミドであっても、第3級アミドであってもよい。クッション材の手触りが長期間にわたって維持されやすくなる観点から、好ましくは第1級アミドがよい。
【0031】
脂肪酸アミドとしては、具体的には、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ネルボン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミドが挙げられる。発泡粒子本体は、1種又は2種以上の脂肪酸アミドを含有することができる。クッション材の手触りを高められやすいと共に、クッション材の手触りが長期間にわたって維持されやすくなる観点から、脂肪酸アミドは、少なくともエルカ酸アミドを含むことが好ましい。
また、脂肪酸アミドがエルカ酸アミドを含む場合、脂肪酸アミド中のエルカ酸アミドの割合は、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが更に好ましく、90重量%以上であることが特に好ましい。
【0032】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドの含有量)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子100重量%における脂肪酸アミドの含有量は、0.01重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.02重量%以上1重量%以下であることがより好ましく、0.03重量%以上0.5重量%以下であることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドの含有量を上記範囲とすることで、クッション材の手触りを高めつつ、クッション材の手触りをより長期間にわたって維持させることができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドの含有量は、当該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子製造時に用いた脂肪酸アミドの配合量と同等であるため、上記配合量が参照される。たとえば、発泡粒子本体を製造する際に脂肪酸アミドを当該発泡粒子本体に含有させる場合には、このとき材料として用いた脂肪酸アミドの量が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に含有される脂肪酸アミドの量と認識される。
また別の方法として、例えば、発泡粒子をガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)等に供することにより、発泡粒子中の脂肪酸アミドの含有量を求めることができる。
なお、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)により、発泡粒子中の脂肪酸アミドの含有量を求める場合、例えば以下の方法を採用することができる。
まず、冷凍粉砕した発泡粒子に対して、溶媒としてクロロホルムを用いてソックスレー抽出を行い、クロロホルム不溶部である重合体成分などを除去する。次いで、ソックスレー抽出で得られたクロロホルム可溶部をアセトンと混合し、アセトン不溶部を除去する。アセトン可溶部から溶媒を除去して得られた固体を測定試料として用い、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)による測定を行う。この測定結果と、濃度既知の標準品(内部標準試料)から作成された検量線との関係から、発泡粒子中の脂肪酸アミドの含有量を求めることができる。
ガスクロマトグラフ質量分析装置としては、たとえば、日本電子株式会社製JMS-Q1500GCV型を使用することができる。
【0033】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子おける脂肪酸アミドの含有量の平均値)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子おける脂肪酸アミドの含有量の平均値は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.002μg以上0.5μg以下であることが好ましく、0.005μg以上0.3μg以下であることがより好ましく、0.008μg以上0.1μg以下であることがさらに好ましい。
脂肪酸アミドの含有量の平均値が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.002μg以上であることで、クッション材の良好な手触りをより長期間持続させやすい。また、脂肪酸アミドの含有量の平均値が、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.5μg以下であることで、手触りが良好なクッション材を安定して得やすい。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸アミドの含有量の平均値は、所定量(例えば100g)のポリオレフィン系樹脂発泡粒子に含有された脂肪酸アミドの量B(g)、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積a(mm/個)および当該所定量(例えば100g)のポリオレフィン系樹脂発泡粒子における発泡粒子の個数b(個)を求める。そして、得られた値を用い、以下の式(2)により求められる。
[数2]
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸アミドの含有量の平均値(μg)=脂肪酸アミドの量B(g)×10/(平均体積a(mm/個)×粒子の数b(個))・・・・・(2)
【0034】
(脂肪酸アミドと脂肪酸金属塩との重量比)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における、脂肪酸アミドの含有量と脂肪酸金属塩の被覆量との重量比は1:0.5~1:20であることが好ましく、1:1~1:15であることがより好ましく、1:2~1:10であることがさらに好ましく、1:3~1:8であることが特に好ましい。脂肪酸アミドと脂肪酸金属塩との重量比を上記範囲に調整することによって、発泡粒子からの被覆剤の脱離が生じにくいとともに、クッション材の手触りが安定して良好になり、さらにクッション材の良好な手触りをより長期間にわたって維持させることができる。
【0035】
次に、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径、平均体積、平均重量、平均L/D、かさ密度について説明する。尚、本発明におけるポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、発泡粒子本体に被覆剤が被覆されてなる点で当該発泡粒子本体と相違するが、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径、平均体積、平均重量、平均L/D、かさ密度は、発泡粒子本体の平均粒子径、平均体積、平均重量、平均L/D、かさ密度とほぼ同等である。また、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いた平均粒子径、平均L/D、平均体積、平均重量、かさ密度の測定方法は、適宜、発泡粒子本体にも適用される。
【0036】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましい。このように比較的粒子径の大きいポリオレフィン系樹脂発泡粒子をクッション材用の詰め物ビーズとして用いると、クッション材の手触りが低下しやすい傾向にあったが、本発明の構成を備える詰め物ビーズとすることで、良好な手触りを有するクッション材を得ることができる。また、このように比較的粒子径の大きいポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いることによって、クッション材に充填されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の総体積に対するポリオレフィン系樹脂発泡粒子の総表面積の割合を小さく抑えることができる。これによって発泡粒子本体の表面を被覆する被覆剤の被覆量を少なくすることができ、またクッション材の使用時等における被覆剤(特には粉体の脂肪酸金属塩)の空中への飛散を抑制しやすくなる。一方、クッション材内における流動性を高める観点からは、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径は12mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることがさらに好ましい。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径は、後述する方法で求めたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積と同じ体積を有する仮想真球の直径として算出される。
【0038】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個あたりの平均体積は、0.5mm/個以上1000mm/個以下であることが好ましく、5mm/個以上500mm/個以下であることがより好ましく、10mm/個以上300mm/個以下であることがさらに好ましい。上記のように比較的体積の大きいポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いた場合であっても、本発明の構成を備える詰め物ビーズとすることで、良好な手触りを有するクッション材を得ることができる。
【0039】
上記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個当たりの平均体積は、水没法により求められる。詳しくは、まず、メスシリンダー内に、温度23℃の水を入れる。次に、当該メスシリンダーに所定の個数(例えば100個)のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を入れ、金網を用いてメスシリンダー内のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を水中に沈める。そして、メスシリンダーの水位上昇量を読み取り、水位上昇量から金網の体積を差し引くことにより、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の見掛け体積(単位:L)を算出する。この見掛け体積を、メスシリンダーに入れたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の個数で除し、単位換算することにより、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積(単位:mm/個)を算出することができる。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値は、上述する式(1)により求められる。
【0040】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均重量)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個あたりの平均重量は特に限定されないが、たとえば0.1mg以上5mg以下の範囲であることが好ましく、0.5mg以上2mg以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の1個あたりの平均重量は、無作為に選択した100個以上のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の総重量を測定し、当該総重量を選択されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の数で割ることで求められる。
【0041】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均L/D)
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の形状は特に限定されないが、発泡粒子の形状が略円柱状である場合、発泡粒子の短径(D)に対する発泡粒子の長径(L)の比の平均値である平均L/Dが、0.8以上1.3以下であることが好ましく、0.9以上1.2以下であることがより好ましい。
発泡粒子本体を後述するダイレクト発泡方法により製造した場合、略円柱状の発泡粒子本体が得られやすい。略円柱状の発泡粒子本体を用いた態様と、略真球状の発泡粒子本体を用いた態様とを比較すると、一般的には略円柱状の発泡粒子本体を用いた態様では流動性に劣る傾向にある。しかしながら、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆されるとともに脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体とすることで、上記範囲の平均L/Dを示すような略円柱状のポリオレフィン系樹脂発泡粒子であっても、優れた流動性および良好な手触りのクッション材を容易に実現可能である。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均L/Dは、以下のとおり求められる。
無作為に選択した30個以上のポリオレフィン系樹脂発泡粒子について、発泡粒子の軸方向(円柱の高さ方向)の最大長(発泡粒子の長径)Lと、当該最大長Lの長さ方向における中央部の最小径(発泡粒子の短径)Dとをノギスで測定し、各発泡粒子のL/Dを算出する。得られた値の算術平均値を、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均L/Dとする。
なお、発泡粒子が略真球状であること等により、発泡粒子の軸方向を判断することが難しい場合には、発泡粒子の最大長を発泡粒子の長径Lとする。
【0043】
(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ密度)
本発明の詰め物ビーズをなすポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ密度は特に限定されず、これを用いて製造されるクッション材の用途等を勘案して適宜決定することができる。例えばクッション材の軽量化を図るとともに良好なクッション性や手触りを発揮させるという観点からは、5kg/m以上200kg/m以下であることが好ましく、10kg/m以上100kg/m以下であることがより好ましく、12kg/m以上50kg/m以下であることがさらに好ましく、15kg/m以上30kg/m以下であることが特に好ましい。
【0044】
上述するかさ密度に調整するためには、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に用いられる発泡粒子本体のかさ密度を調整すればよい。
発泡粒子本体のかさ密度は、例えば、発泡工程において、密閉容器の内容物を放出する際の、密閉容器内の温度や圧力などの発泡条件の適宜の変更によって調整可能である。
また、よりかさ密度の低い発泡粒子本体を所望する場合、発泡粒子本体を多段的に発泡させる工程(二段発泡工程)を実施してもよい。二段発泡工程については、後述する詰め物ビーズの製造方法の説明が参照される。
【0045】
上述するポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ密度は、以下の方法により測定される。まず、測定に供するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置する。このようにして得られた重量W(g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群のかさ体積V(L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群のかさ体積Vで除す(W/V)。これにより求められる値をkg/mに単位換算することにより、発泡粒子のかさ密度(kg/m)を得ることができる。
【0046】
[詰め物ビーズの製造方法]
本発明の詰め物ビーズの製造方法は特に限定されず、上述する構成を備えるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を得られる範囲において適宜決定することができる。以下では、詰め物ビーズの製造方法の好ましい一態様について説明する。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂粒子の製造:
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を構成する発泡粒子本体を得るためにポリオレフィン系樹脂粒子が製造される。ポリオレフィン系樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、たとえば押出機を用いた押出方法により製造される。押出方法は、まず、発泡粒子本体を構成するためのポリオレフィン系樹脂等を押出機に供給し、溶融すると共に混練して樹脂溶融物を得る。この際、基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂とともに、脂肪酸アミドおよびさらに適宜、他の材料が配合される。
そして押出機の下流側に設けられた押出用ダイから上記樹脂溶融物を押し出し、ペレタイズすることにより、円柱状のポリオレフィン系樹脂粒子が得られる。
ペレタイズの方法としては、例えば、押出用ダイから上記樹脂溶融物を押し出すことによりストランドを形成し、次いで、ペレタイザー等により当該ストランドを所望の寸法に切断する方法等により行うことができる。
【0048】
発泡粒子本体の製造:
上述のとおり準備されたポリオレフィン系樹脂粒子を発泡させることで、発泡粒子本体を製造することができる。たとえば、分散工程、発泡剤含浸工程、発泡工程を含む発泡粒子の製造方法により、発泡粒子本体を製造することができる。
上記分散工程は、容器内の無機分散剤を含む水性媒体中に、ポリオレフィン系樹脂粒子を分散させる工程である。上記発泡剤含浸工程は、容器内でポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程である。上記発泡工程は、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂粒子(発泡性樹脂粒子)を水性媒体と共に密閉容器から放出して発泡させる工程である。
本発明の製造方法は、これらの工程以外に本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜任意の工程を追加することができる。
【0049】
必要に応じて、上記発泡工程後にさらに二段発泡工程を実施してもよい。二段発泡工程は、まず発泡粒子本体を加圧可能な密閉容器に貯留し、空気などの気体を該密閉容器内に圧入することにより加圧処理をして発泡粒子本体の気泡内の内圧を高める操作を行う。その後、該発泡粒子本体を密閉容器から取り出し、これをスチームや熱風を用いて加熱することにより、該発泡粒子本体を発泡させることで実施される。かかる二段発泡工程を実施することにより、より低いかさ密度である発泡粒子本体(二段発泡粒子)を得ることが可能である。
【0050】
(高温ピーク)
また、得られる発泡粒子本体の結晶状態を調整するために、上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、容器の昇温速度の調整や、容器を所定の温度で所定時間保持するなどの調整を行ってもよい。例えば、熱流束示差走査熱量測定により得られるDSC曲線(図1参照)において、発泡粒子本体を構成する基材樹脂の吸熱ピーク(固有ピーク)よりも高温側に吸熱ピーク(高温ピーク)が現れるよう、調整することが可能である。このように高温ピークを示す発泡粒子本体とすることで、良好なクッション性を有すると共に、回復性が良好な詰め物ビーズを得やすくなる。
上述する高温ピークを得るための調整は、たとえば、次のようにして行うことができる。上述する分散工程及び/又は発泡剤含浸工程において、(ポリオレフィン系樹脂の融点-20℃)以上(ポリオレフィン系樹脂の融解終了温度)未満の温度で10~60分程度保持する一段保持工程を行う。その後、(ポリオレフィン系樹脂の融点-15℃)から(ポリオレフィン系樹脂の融解終了温度)未満の温度に調節する。そして、必要によりその温度でさらに10~60分程度保持する二段保持工程を行う。次いで、後述する発泡工程を行うことにより、高温ピークを有する発泡粒子を製造することができる。
クッション性と回復性とのバランスに優れる詰め物ビーズを安定して得やすくなる観点から、得られる発泡粒子本体、またはこれを用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子における全融解熱量は、50J/g以上90J/g以下であることが好ましく、55J/g以上80J/g以下であることがより好ましい。また、得られる発泡粒子本体、またはこれを用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子における高温ピークの吸熱量(高温ピーク熱量)は、5J/g以上40J/g以下であることが好ましく、8J/g以上30J/g以下であることがより好ましく、10J/g以上20J/g以下であることがさらに好ましい。
発泡粒子本体、またはこれを用いたポリオレフィン系樹脂発泡粒子における全融解熱量及び高温ピーク熱量は、JIS K7122:1987に記載されたプラスチックの転移熱測定方法に基づいて、発泡粒子1~3mgを試験片とし、10℃/分の加熱速度で23℃から試験片の融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱して得られるDSC曲線(図1参照)から求められる。
【0051】
より具体的には、図1に示すDSC曲線において、DSC曲線上における80℃に相当する点Iと、発泡粒子の融解終了温度に相当する点IIとを結ぶ直線を引く。尚、融解終了温度は、高温ピークbにおける高温側の端点であり、DSC曲線における、高温ピークbと、高温ピークbよりも高温側のベースラインとの交点である。
図1に示すとおり、点Iと点IIとを結ぶ直線を引いた後、固有ピークaと高温ピークbとの間に存在する極大点IIIを通りグラフの縦軸に平行な直線と、点Iと点IIとを結んだ直線との交点をIVとする。
そして、点Iと点IVを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、および点Iと点IIIとを結ぶDSC曲線の面積を固有ピークaの面積とする。また点IVと点IIとを結ぶ直線、点IIIと点IVとを結ぶ直線、及び点IIIと点IIとを結ぶDSC曲線によって囲まれる部分(斜線部分)の面積を高温ピークbの面積とする。上述のとおり求めた固有ピークaの面積と高温ピークbの面積との合計から発泡粒子の全融解熱量の値を算出し、高温ピークbの面積から発泡粒子の高温ピーク熱量の値を算出する。
【0052】
詰め物ビーズ(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子)の製造:
上述のとおり予め準備された、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体を、脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆することによって詰め物ビーズが製造される。被覆方法は、特に限定されないが、たとえば、適量の発泡粒子本体と、脂肪酸金属塩を含む粉体状の被覆剤とを、ドラムタンブラーなどの混合機で混合し、これによって発泡粒子本体の表面に被覆剤を付着させ被覆させることができる。
かかる製造方法は、一般的な発泡粒子本体の製造方法を実施して発泡粒子本体を得た後、当該発泡粒子本体に被覆剤を被覆させるだけの簡易な方法で、クッション材の手触りを高めつつ、クッション材の手触りをより長期間にわたって維持させることができる詰め物ビーズを得ることができる。
尚、本発明者らの検討によれば、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体に被覆剤を被覆させる場合、ポリスチレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体に対して被覆剤を被覆させる場合に比べ、被覆剤が脱離しやすい傾向にある。しかしながら、上記製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体に被覆剤を良好に付着させることが可能である。
【実施例0053】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。尚、表1では、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を単に「発泡粒子」と記載した。
<実施例1>
(樹脂粒子の調製)
内径50mmの押出機、該押出機の下流側に付設されたストランド形成用ダイを備える製造装置を準備した。
ポリプロピレン系樹脂と、脂肪酸アミドとしてのエルカ酸アミド(花王株式会社製「脂肪酸アマイドE」、表1の含有量となるように添加)と、気泡調整剤としてのホウ酸亜鉛(ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して0.1重量部)とを押出機に供給し、溶融混練した。得られた樹脂溶融物をストランド形成用ダイに導入してストランドを押出した。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーにて切断し、1個当たりの平均重量が1.0mgの樹脂粒子を得た。
【0054】
(発泡粒子本体の調製)
得られた樹脂粒子1kgを、水性分散媒である水3Lと共に、内容量5Lの密閉容器内に供給した。また、樹脂粒子100重量部に対して、無機分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン、第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004重量部(有効成分として)をそれぞれ密閉容器内に添加した。
次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、ゲージ圧で2.0MPa(G)となるまで加圧した。尚、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。その後、密閉容器内を撹拌しながら2℃/分の昇温速度で、発泡温度(149.5℃)になるまで加熱昇温し、同温度で15分間保持した。これにより、得られる発泡粒子のDSC測定による吸熱曲線に高温ピークが現れるよう調整した。
その後、密閉容器の内容物(樹脂粒子及び水)を大気圧下に放出して、かさ密度60kg/mの発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。
上述のとおり得た一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境に24時間放置して養生を行った。そして加圧可能な密閉容器に養生後の一段発泡粒子を充填し、当該密閉容器内の圧力を常圧から上昇させて発泡粒子を加圧した。発泡粒子を加圧した状態を所定時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から一段発泡粒子を取り出し、発泡粒子の気泡の内圧が0.5MPa(G)である一段発泡粒子を得た。その後、この一段発泡粒子を二段発泡装置に供給した。該装置内にスチームを供給して一段発泡粒子を発泡させて、かさ密度18kg/mの発泡粒子本体を得た。
得られた発泡粒子本体の全融解熱量は65J/g、高温ピークの融解熱量は15J/gであった。
【0055】
(詰め物ビーズの調製)
上述のとおり得られた発泡粒子本体と、脂肪酸金属塩としてのステアリン酸亜鉛とを、表1に示す被覆量となるように、容積100Lのドラムタンブラーに供給した。そして、発泡粒子本体と被覆剤とを温度23℃の環境下で15分間攪拌して混合することにより、発泡粒子本体の表面に被覆剤を付着させ、粒子本体の表面が被覆剤で被覆された略円柱状のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造した。
【0056】
<実施例2~4、比較例1、2>
表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に実施例2~4および比較例1、2の詰め物ビーズを得た。
【0057】
上述のとおり実施された各実施例及び各比較例に関し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均粒子径、平均L/D、平均体積(a)、平均重量、かさ密度を以下の方法で測定した。
また、以下の方法で各実施例及び各比較例のポリオレフィン系樹脂発泡粒子100gにおける脂肪酸金属塩の被覆量(A)を算出し、発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値を上記式(1)により算出し表1に示した。またポリオレフィン系樹脂発泡粒子100gにおける脂肪酸アミドの含有量(B)を、樹脂粒子に配合した脂肪酸アミドの量から算出し表1に記載するとともに、発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸アミドの含有量の平均値を上記式(2)により算出し表1に記載した。また、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドに対する脂肪酸金属塩の重量比率を求めた。
これらの測定結果を表1に記載した。なお、実施例、比較例で得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均重量は1.0mg、平均L/Dは1.1であった。
【0058】
<発泡粒子の平均粒子径>
後述のとおり求めた発泡粒子の平均体積から、発泡粒子の平均体積と同じ体積を有する仮想真球の直径を算出し、これを発泡粒子の平均粒子径とした。
【0059】
<発泡粒子の平均L/D>
無作為に選択した30個の発泡粒子について、発泡粒子の軸方向の最大長(発泡粒子の長径)Lと、発泡粒子の最大長Lの長さ方向における中央部の最小径(発泡粒子の短径)Dとをノギスで測定した。各発泡粒子におけるL/Dを算出し、その算術平均値を、発泡粒子の平均L/Dとした。
【0060】
<発泡粒子の平均体積a>
容積200mLのメスシリンダーを用意し、メスシリンダー内に温度23℃の水を100mL入れた。次に、100個の発泡粒子を、メスシリンダーに入れ、金網を用いてメスシリンダー内の水中に沈めた後、メスシリンダーの水位上昇量を読み取った。そして、水位上昇量から金網の体積を差し引くことにより、発泡粒子の見掛け体積(単位:L)を算出した。この見掛け体積を、メスシリンダーに入れた発泡粒子の個数で除し、単位換算することにより、発泡粒子の平均体積(単位:mm/個)を算出した。
【0061】
<発泡粒子の平均重量>
無作為に選択した100個の発泡粒子の総重量を測定し、これを100で割ることで発泡粒子の1個当たりの平均重量(mg)を求めた。
【0062】
<発泡粒子のかさ密度>
まず、測定に供する発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境中で24時間以上放置した。その後、重量W(単位:g)の発泡粒子群をメスシリンダー内に充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群のかさ体積V(単位:L)を読み取り、発泡粒子群の重量Wを発泡粒子群のかさ体積Vで除す(つまり、W/V)。これにより求められる値を単位換算することにより、発泡粒子のかさ密度(単位:kg/m)を得た。
【0063】
<脂肪酸金属塩の被覆量A>
被覆剤として用いた脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛)の被覆量を以下の方法(キレート滴定法)で求めた。
まず、500mLのフラスコに、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子6gおよびメタノール100mLを入れて撹拌し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に被覆されているステアリン酸亜鉛をメタノール中に溶出させた。次いで、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を除去し、ステアリン酸亜鉛が溶出したメタノールを容器(ポリカップ)に移した。
次いで、この容器に、EDTA-Na-Cu(II)水溶液(濃度:2.0×10-2mol/L)5mLと、NHCl-アンモニア緩衝溶液(pH10.7)5mLとを入れ、水溶液S1を調整した。
次いで、イオン選択性電極(銅イオン電極)を備える電位差自動滴定装置(京都電子工業製「AT-710」、銅イオン電極:I-371)を用い、水溶液S1が入った容器に、EDTA-NaとMgClとを含む水溶液S2(EDTA-Na濃度:1.0×10-2mol/L、MgCl濃度:1.0×10-3mol/L)を滴下して、キレート滴定を行った。この測定により求められた当量点における水溶液S2の滴下量に、水溶液S2のEDTA-Na濃度を乗じることで、水溶液S1中の銅イオン量(mol)(すなわち、亜鉛イオン量(mol))を算出し、このイオン量にステアリン酸亜鉛の分子量(632g/mol)を乗じることで、水溶液S1中に含まれるステアリン酸亜鉛の量を算出した。このステアリン酸亜鉛の量を、測定に使用したポリオレフィン系樹脂発泡粒子の量で除し、百分率で表すことで、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子におけるステアリン酸亜鉛の被覆量(重量%)を求めた。
また、ステアリン酸亜鉛の被覆量をもとに、発泡粒子100gあたりの被覆量Aを算出した。
【0064】
<発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値(μg)>
上述する式(1)を用い、発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸金属塩の被覆量の平均値(μg)を求めた。尚、実施例、比較例において用いられた発泡粒子の重量は1.0mg/個であったため、発泡粒子本体100gにおける発泡粒子の個数は、1.0×10個として計算した。
【0065】
<脂肪酸アミドの含有量B>
発泡粒子を製造するために用いた樹脂粒子に配合された脂肪酸アミドの量から発泡粒子100gあたりの脂肪酸アミドの含有量Bを算出した。
【0066】
<発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸アミドの含有量の平均値(μg)>
上述する式(2)を用い、発泡粒子の平均体積1mmあたりの脂肪酸アミドの含有量の平均値(μg)を求めた。尚、実施例、比較例において用いられた発泡粒子本体の重量は1.0mg/個であったため、発泡粒子100gにおける発泡粒子の個数は、1.0×10個として計算した。
【0067】
各実施例および各比較例を充填したクッション材の繰り返し圧縮回復率、安息角、手触り、繰り返し圧縮試験後の手触りについて評価または測定し、結果を表1に示した。
【0068】
<繰り返し圧縮回復率>
容積500mLのメスシリンダーを用いてかさ体積330mL分のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を量り取り、内径78mmの円筒型容器にポリオレフィン系樹脂発泡粒子を入れた。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子との接触部が平板状である圧縮治具を用い、10mm/分の速度で圧縮治具を下方へ移動させることにより容器内の発泡粒子を圧縮した。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に加わる荷重が650Nに達した時点で圧縮治具を上方へ移動させ、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子への荷重を完全に除荷した。このサイクルを1サイクルとして、圧縮と除荷とを100サイクル繰り返すことにより繰り返し圧縮試験を実施した。
繰り返し圧縮試験が完了した後のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を容積500mLのメスシリンダー内に入れ、25℃、湿度50%、1atmの環境下で24時間静置した時点のかさ体積を測定した。そして、繰り返し圧縮試験前のポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ体積に対する繰り返し圧縮試験後のかさ体積の割合を算出し、この値を繰り返し圧縮回復率(単位:%)とした。
【0069】
<安息角>
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の流動性を評価するために、安息角を求めた。具体的には、筒井理化学器機社製の「流動表面角測定器FSA-100S」を用いて、円筒回転法によりポリオレフィン系樹脂発泡粒子の安息角を求めた。
まず、かさ密度で200mL分のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を測定用の円筒型容器(容積500mL)内に入れた。次に、円筒型容器の回転速度を1周あたり26秒として、円筒型容器を3分間回転させた。その後、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の上部が崩れる直前に、容器の回転を停止させた。この操作により形成されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子による斜面の上端と下端とに合わせて角度計を設定し、斜面の角度を測定した。測定された角度をポリオレフィン系樹脂発泡粒子の安息角とした。なお、安息角が35°以下であると、流動性が良好であると判断できる。発泡粒子の流動性を高める観点からは、安息角は34°以下であることが好ましく、33°以下であることがより好ましい。また、安息角の下限は、概ね25°であり、28°であってもよい。
【0070】
<手触り>
かさ体積2.5L分のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、スパンデックス生地(坪量200g/m)からなる伸縮性のある袋体(内容積2L)に充填封入し、クッション材を作製した。このクッション材に対して、以下の手触り評価を実施し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の手触りを評価した。
(手触り評価)
無作為に選択された10人のパネラーが、上述のとおり作製されたクッション材の手触りを確認し、以下の基準で該クッション材の手触りを評価した。
3点:流動性が高く、さらさらとした感触がある
2点:流動性はあるが、時々ざらざらとした感触がある
1点:流動性が低く、ざらざらとした感触がある
10人の合計点が27点以上の場合を「A」評価、10人の合計点が20点以上26点以下の場合を「B」評価、10人の合計点が19点以下の場合を「C」評価として、クッション材の手触りを評価した。なお、上記評価においては、「A」評価が最も手触りに優れていることを意味する。
【0071】
<繰り返し圧縮試験後の手触り>
かさ体積で5L分のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を内径500mmの円筒型容器に入れた。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子との接触部が平板状である圧縮治具を用い、10mm/分の速度で圧縮治具を下方へ移動させることにより容器内の発泡粒子を圧縮した。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に加わる荷重が10kNに達した時点で圧縮治具を上方へ移動させ、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子への荷重を完全に除荷した。このサイクルを1サイクルとして、圧縮と除荷とを100サイクル繰り返すことにより繰り返し圧縮試験を実施した。
この繰り返し圧縮試験後のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、かさ体積で2.5L分、上記袋体に充填封入し、クッション材を作製した。このクッション材を使用したこと以外は、上述する手触りの評価と同様の方法で、クッション材の手触りを評価し、繰り返し圧縮試験後の手触り(ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の手触りの持続性)を評価した。なお、クッション材の手触り評価が「A」の場合、長期間使用された場合であっても、良好な手触りを維持可能なポリオレフィン系樹脂発泡粒子であると判断できる。
【0072】
【表1】
【0073】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)クッション材用に充填されるための詰め物ビーズであって、
前記詰め物ビーズは、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体が脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆されているポリオレフィン系樹脂発泡粒子であり、
前記発泡粒子本体が脂肪酸アミドを含有することを特徴とする詰め物ビーズ。
(2)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸アミドの含有量が0.01重量%以上3重量%以下である、上記(1に記載の詰め物ビーズ。
(3)前記脂肪酸アミドと前記脂肪酸金属塩との重量比が1:0.5~1:20である、上記(1)又は(2)に記載の詰め物ビーズ。
(4)前記脂肪酸アミドがエルカ酸アミドを含む、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積が0.5mm/個以上1000mm/個以下であり、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における前記脂肪酸金属塩の被覆量の平均値が、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.01μg以上0.3μg以下である、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(6)前記脂肪酸金属塩がステアリン酸亜鉛を含む、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(7)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の形状が略円柱状であり、平均L/Dが0.8以上1.3以下である、上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(8)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子のかさ密度が5kg/m以上200kg/m以下である、上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(9)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子における脂肪酸金属塩の被覆量が0.05重量%以上1重量%以下である上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(10)前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子おける前記脂肪酸アミドの含有量の平均値が、
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均体積1mmあたり0.002μg以上0.5μg以下である上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の詰め物ビーズ。
(11)クッション材用の詰め物ビーズを製造する方法であって、
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とし、脂肪酸アミドを含有する発泡粒子本体を、
脂肪酸金属塩を含む被覆剤で被覆して詰め物ビーズを得る、詰め物ビーズの製造方法。



図1