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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095268
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】硬表面用液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230629BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D3/43
C11D3/20
C11D3/37
C11D1/14
C11D1/22
C11D1/29
C11D3/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211057
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】服部 謙吾
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB15
4H003AB19
4H003AB27
4H003AB31
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA17
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB16
4H003EB33
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】スポンジ等の掃除用具を用いることなく、湯垢洗浄力に優れ、かつ洗浄後の硬表面に残るヌルつきを低減できる硬表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:アニオン性界面活性剤0.1~10.0質量%と、(B)成分:グリコール系溶剤0.1~10.0質量%と、(C)成分:キレート剤0.1~10.0質量%と、(D)成分:ポリビニルアルコールとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子化合物0.1~5.0質量%と、を含有し、25℃におけるpHが9~12である、硬表面用液体洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:アニオン性界面活性剤0.1~10.0質量%と、
(B)成分:グリコール系溶剤0.1~10.0質量%と、
(C)成分:キレート剤0.1~10.0質量%と、
(D)成分:ポリビニルアルコールとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子化合物0.1~5.0質量%と、
を含有し、
25℃におけるpHが9~12である、硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、下記一般式(I)で表されるグリコール系溶剤である、請求項1又は2に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
-O-(CO)-(CO)-R ・・・(I)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、もしくはアルケニル基、フェニル基又はベンジル基である。xはオキシエチレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。yはオキシプロピレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。ただし、xとyが同時に0になることはない。]
【請求項4】
前記(C)成分が、アミノカルボン酸型キレート剤又はクエン酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
D/A比が質量比で0.05~5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬表面用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、硬表面洗浄用洗剤組成物は、洗浄~すすぎの一連の流れにおいて、掃除をより簡便にかつ不快感なく行うことができる設計が求められている。例えば、浴室用洗剤においては、スポンジ等の洗浄用具を用いることなく、浴室の硬表面に洗剤液を吹きかけて流すだけで掃除が終了することが望ましい。そのため、浴室用洗剤は、洗浄力の高い洗浄成分が配合されていること、及び硬表面に密着して前記洗浄成分による洗浄効果を発現することが求められる。しかしながら、浴室用洗剤には、シャワー等ですすいだ後に洗浄成分が硬表面上に残留し、ぬるぬるとした感触(ヌルつき)が残ることで不快感が生じるという課題があった。
【0003】
浴室用液体洗浄剤としては、例えば、(A)成分:非イオン界面活性剤(a1)を含む界面活性剤と、(B)成分:グリコール系溶剤と、(C)成分:アミノカルボン酸型キレート剤と、(D)成分:水溶性高分子と、を含有し、25℃において細管粘度計で測定した動粘度が、1.5~20mm/sであるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-78134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、洗浄力に優れる硬表面洗浄用洗剤組成物とヌルつき抑制性に優れる硬表面洗浄用洗剤組成物とが個別に得られていたものの、洗浄力とヌルつき抑制性とを満たす硬表面洗浄用洗剤組成物は得られていなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、スポンジ等の掃除用具を用いることなく、湯垢洗浄力に優れ、かつ洗浄後の硬表面に残るヌルつきを低減できる硬表面用液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1](A)成分:アニオン性界面活性剤0.1~10.0質量%と、
(B)成分:グリコール系溶剤0.1~10.0質量%と、
(C)成分:キレート剤0.1~10.0質量%と、
(D)成分:ポリビニルアルコールとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子化合物0.1~5.0質量%と、
を含有し、
25℃におけるpHが9~12である、硬表面用液体洗浄剤組成物。
[2]前記(A)成分が、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
[3]前記(B)成分が、下記一般式(I)で表されるグリコール系溶剤である、[1]又は[2]に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
-O-(CO)-(CO)-R ・・・(I)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、もしくはアルケニル基、フェニル基又はベンジル基である。xはオキシエチレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。yはオキシプロピレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。ただし、xとyが同時に0になることはない。]
[4]前記(C)成分が、アミノカルボン酸型キレート剤又はクエン酸である、[1]~[3]のいずれかに記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
[5]D/A比が質量比で0.05~5である、[1]~[4]のいずれかに記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スポンジ等の掃除用具を用いることなく、湯垢洗浄力に優れ、かつ洗浄後の硬表面に残るヌルつきを低減できる硬表面用液体洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪硬表面用液体洗浄剤組成物≫
本発明の硬表面用液体洗浄剤組成物(以下、単に「液体洗浄剤」ということがある。)は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有する組成物である。
本明細書において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、アニオン性界面活性剤である。(A)成分は洗浄力に寄与する。特に皮脂・タンパク汚れ成分等で構成される湯垢に対する洗浄力に寄与する。
【0011】
アニオン性界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が好ましい。
アニオン性界面活性剤の塩の形態としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0012】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、下記一般式(a1)で表される化合物が好ましい。
11-O-(EO)-SO ・・・(a1)
式(a1)において、R11は炭素数8~18の直鎖アルキル基であり、かつ、酸素原子と結合している炭素原子は第一級炭素原子である。EOはオキシエチレン基を表し、nはEOの平均繰り返し数を表し、0<n≦4を満たす整数である。Mは水素イオン以外の陽イオンである。
11の炭素数は10~14が好ましく、12~14がより好ましい。R11は油脂原料由来のアルキル基であることが好ましい。例えば、R11は、C12のアルキル基とC14のアルキル基の存在比率(モル比)を表すC12/C14が75/25である天然油脂由来のアルキル基であることが特に好ましい。
EOの平均繰り返し数、すなわちエチレンオキシドの平均付加モル数は、1~3が好ましく、1が特に好ましい。
Mとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0013】
アルキル基を有するアルカンスルホン酸塩としては、炭素数10~20のアルカンスルホン酸塩が挙げられ、炭素数14~17のアルカンスルホン酸塩が好ましく、第2級アルカンスルホン酸塩が特に好ましい。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、直鎖アルキル基の炭素数が8~16の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が10~14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0014】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
(A)成分としては、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、α-オレフィンスルホン酸塩が特に好ましい。
【0015】
<(B)成分>
(B)成分は、グリコール系溶剤である。
【0016】
(B)成分は、下記一般式(I)で表されるグリコール系溶剤であることが好ましい。
-O-(CO)-(CO)-R ・・・(I)
[式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、もしくはアルケニル基、フェニル基又はベンジル基である。xはオキシエチレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。yはオキシプロピレン基の平均繰返し数を表す数であり、0~5である。ただし、xとyが同時に0になることはない。]
【0017】
グリコール系溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレングリコール系溶剤、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール等のプロピレングリコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のエチレングリコール系エーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコール系エーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル等のジアルキルグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
(B)成分としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテルがより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが特に好ましい。
【0019】
<(C)成分>
(C)成分は、キレート剤である。(C)成分は湯垢洗浄力に寄与する。
キレート剤としては、アミノカルボン酸型キレート剤、クエン酸等が挙げられる。アミノカルボン酸型キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ヒドロキシエチレンイミノジ酢酸(HIDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、メチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β-アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)、イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、N-ラウロイルエチレンジアミン三酢酸、ニトリロトリ酢酸(NTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ジカルボキメチルグルタミン酸(CMGA)、(S,S)-エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)又はこれらの塩等が挙げられる。キレート剤の塩の形態としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(C)成分としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ヒドロキシエチレンイミノジ酢酸(HIDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)がより好ましく、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が特に好ましい。
【0021】
<(D)成分>
(D)成分は、ポリビニルアルコールとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子化合物である。(D)成分はヌルつき抑制に寄与する。
(D)成分は、グラフトコポリマー(D1)以外の他の水溶性高分子(D2)を1種以上含んでもよい。
本明細書において「高分子」とは、分子量1,000以上の化合物を意味する。(D)成分の分子量は、ポリエチレングリコール(PEG)を標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量である。
本明細書において「水溶性高分子」とは、25℃の水1Lに0.1g以上溶解する(透明な水溶液となる)高分子を意味する。
【0022】
グラフトコポリマー(D1)は、例えば、特開2008-274181号公報、特開2015-213882号公報に記載の合成方法で、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも記す。)にN-ビニルピロリドン(N-ビニル-2-ピロリドン、以下、「NVP」とも記す。)をグラフト重合して得られる。
前記合成方法によれば、グラフトコポリマー(D1)と、グラフト化していないNVPのホモポリマー(ポリビニルピロリドン、以下、「PVP」と記す。)とを含む水溶性高分子が得られる。PVPは他の水溶性高分子(D2)である。
【0023】
グラフト重合に用いるPVAは重合度が4000以下であることが好ましい。4000を超えると水への溶解に要する時間が長くなる傾向がある。PVAのケン化度は70~100モル%であることが好ましい。ケン化度が70モル%未満であると水に均一に溶解しにくくなる。
グラフト重合に用いるNVPの量(仕込みNVP質量)は、グラフト重合に用いるPVAの量(仕込みPVA質量)と仕込みNVP質量の合計に対して5~90質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましい。5質量%以上であると優れた水溶性を有するグラフトコポリマーを得ることができ、90質量%以下であるとPVAに由来する特性を維持したグラフトコポリマーを得やすい。
【0024】
前記合成方法で得られる水溶性高分子において、下記数式(1)で算出されるグラフト効率は40~60質量%が好ましい。
(グラフト効率の算出方法)
濃度10%の水溶性高分子水溶液5gを150mLのt-ブチルアルコールに沈殿させ、沈殿物を遠心分離により分離した後、減圧乾燥機にて乾燥させ、得られた乾燥物の質量(沈殿物質量)を測定した。この沈殿物質量はグラフトコポリマー(D1)の質量に相当する。
この沈殿物質量と、仕込みPVA質量と、仕込みNVP質量とから下記数式(1)によりグラフト効率を算出した(周知の方法である)。
グラフト効率(単位:質量%)=(沈殿物質量-仕込みPVA質量)×100/仕込みNVP質量 ・・・(1)
上記数式(1)で求められるグラフト効率は、グラフト重合に用いたNVP(仕込みNVP質量)のうち、PVAにグラフト共重合したNVPの割合を意味する。
【0025】
他の水溶性高分子(D2)は、特に限定されず、洗浄剤の分野で公知の水溶性高分子を用いることができる。
他の水溶性高分子(D2)としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。
PVAは変性していないホモポリマータイプである。PVAの好ましい重合度及びケン化度は、グラフト重合に用いるPVAと同様である。
【0026】
(D)成分の総質量、すなわちグラフトコポリマー(D1)と他の水溶性高分子(D2)の合計に対して、グラフトコポリマー(D1)の含有量は50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
【0027】
(D)成分として、例えば、グラフト重合に用いたPVAの重合度が4000以下、ケン化度が70~100モル%であり、仕込みPVA質量と仕込みNVP質量の合計に対する仕込みNVP質量の割合が5~90質量%であり、グラフト効率が40~60質量%である水溶性高分子が好ましい。このような水溶性高分子(水溶液)の市販品として、例えば、ピッツコールV-7154(第一工業製薬社製品名)が例示できる。
【0028】
<水>
本発明の液体洗浄剤は、製造時のハンドリングのし易さ、使用する際の水への溶解性等の観点から、溶剤として水を含有することが好ましい。
【0029】
<任意成分>
液体洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分以外の任意成分を必要に応じて含有してもよい。
任意成分としては、洗浄剤の分野で公知の成分を使用できる。例えば、(A)成分以外の界面活性剤(他の界面活性剤)、ハイドロトロープ剤、防腐剤、pH調整剤、色素、香料等が挙げられる。
【0030】
ハイドロトロープ剤は、液体洗浄剤の保存安定性(透明外観の維持)の向上に寄与する。特に、低温安定性の向上に寄与する。
ハイドロトロープ剤の例としては、安息香酸等の芳香族カルボン酸及びその塩、p-トルエンスルホン酸等のトルエンスルホン酸及びその塩、エタノール等が挙げられる。ハイドロトロープ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ハイドロトロープ剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。ハイドロトロープ剤の含有量が上記範囲内であれば、湯垢洗浄力及びヌルつき抑制性を低下させることなく、その配合効果を充分に得ることができる。
【0031】
液体洗浄剤が防腐剤を含有することにより、液体洗浄剤に微生物等が混入しても、菌の増殖が抑制される。
防腐剤の例としては、ベンズイソチアゾリノン(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)、メチルイソチアゾリノン(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)等のイソチアゾリン系化合物が挙げられる。防腐剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
防腐剤の含有量は、液体洗浄剤の総質量に対して0.0002~0.01質量%(2~100質量ppm)が好ましく、0.0005~0.004質量%(5~40質量ppm)がより好ましい。防腐剤の含有量が上記範囲内であれば、湯垢洗浄力及びヌルつき抑制性を低下させることなく、その配合効果を充分に得ることができる。
【0032】
pH調整剤の例としては、無機アルカリ剤(水酸化ナトリウムなど)、有機アルカリ剤(モノエタノールアミンなど)、無機酸(硫酸など)、有機酸(クエン酸など)などが挙げられる。
【0033】
<含有量>
(A)成分の含有量は、硬表面用液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~10.0質量%が好ましく、0.3~5.0質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が前記範囲の下限値以上であると、湯垢洗浄力に優れる。(A)成分の含有量が上限値以下であると、ヌルつきをより抑制できる。
【0034】
(B)成分の含有量は、硬表面用液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~10.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が前記下限値以上であると、湯垢洗浄力に優れる。(B)成分の含有量が前記上限値以下であると、粘度が変化し過ぎることがなく、スプレー性に優れる。
【0035】
(C)成分の含有量は、硬表面用液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~10.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。(C)成分の含有量が前記下限値以上であると、湯垢洗浄力に優れる。(C)成分の含有量が前記上限値以下であると、各成分が析出することなく安定性に優れるため、スプレー性に優れる。
【0036】
(D)成分の含有量は、硬表面用液体洗浄剤組成物の総質量に対して0.1~5.0質量%が好ましく、0.1~3.0質量%がより好ましい。(D)成分の含有量が前記下限値以上であると、ヌルつきをより抑制できる。(D)成分の含有量が前記上限値以下であると、粘度が上がり過ぎることがなく、スプレー性に優れる。
【0037】
液体洗浄剤において、(A)成分に対する(D)成分の質量比を表すD/Aは、0.05~5が好ましく、0.1~3がより好ましい。D/Aが前記範囲内であると、ヌルつきをより抑制できる。
【0038】
水の含有量は、硬表面用液体洗浄剤組成物の総質量に対して80~99質量%が好ましく、88~98質量%がより好ましく、90~95質量%がさらに好ましい。水の含有量が前記範囲の下限値以上であると、各成分が析出することなく安定性に優れるため、スプレー性に優れる。水の含有量が上限値以下であると、湯垢洗浄力に優れる。
【0039】
<pH>
液体洗浄剤の25℃におけるpHは、9~12であり、10~12が好ましい。液体洗浄剤の25℃におけるpHが前記下限値未満では、湯垢洗浄力が不足する。液体洗浄剤の25℃におけるpHが前記上限値を超えると、アルカリ性が強くなり、安全性が低下する。
本発明において、液体洗浄剤のpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値を示す。
液体洗浄剤のpHは、上述したpH調整剤を用いて調整すればよい。
【0040】
<製造方法>
液体洗浄剤は、例えば、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて任意成分とを、水に溶解し、pH調整剤を用いて所定のpHに調整する方法で製造できる。
液体洗浄剤は、例えば、スプレー容器やスクイズ容器等公知の吐出容器に収容された製品形態であってもよい。また、保存用の容器に収容され、吐出容器に移して使用する製品形態であってもよい。
【0041】
<使用方法>
液体洗浄剤を用いて洗浄対象物を洗浄する方法としては、霧状又は泡状等にして吹き付け、任意の時間放置して、水ですすぐ方法等が挙げられる。
洗浄は機械力をかける洗浄方法でもよい。例えば、前記原液又は希釈液を含ませたスポンジ等で洗浄対象物を擦って洗浄してもよい。前記原液又は希釈液を洗浄対象物に塗布し、スポンジ等で擦って洗浄してもよい。前記洗希釈液に洗浄対象物を浸し、スポンジ等で擦って洗浄してもよい。
洗浄対象物は、物品等の硬表面であればよく、例えば、浴室の硬表面、浴室用品、トイレの硬表面、トイレ用品、台所の硬表面、台所用品(食器、調理器具等)が例示できる。
硬表面とは、プラスチック類、陶磁器、ガラス、ステンレス等の硬質な材質からなる表面を意味する。
【0042】
<作用効果>
以上説明した本発明の硬表面用液体洗浄剤組成物は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分とを含有し、各成分の含有量が上記範囲内であるため、湯垢洗浄力に優れ、かつ洗浄後の硬表面に残るヌルつきを低減できる。すなわち、本発明の硬表面用液体洗浄剤組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分と、(D)成分であるポリビニルアルコールとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマーを含む水溶性高分子化合物とを特定の濃度で併用することにより、スポンジ等の掃除用具を用いることなく、高い湯垢洗浄力を示し、かつ洗浄後の硬表面に残るヌルつきを低減できる。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。なお、各例で用いた成分の配合量は、特に断りのない限り純分換算値である。
【0044】
[(A)成分]
A-1:α-オレフィン(C14-C16)スルホン酸ナトリウム(AOS、ライオン株式会社製、商品名「リポランLJ-441」)。
A-2:直鎖アルキル(C12-14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS、ライオン株式会社製、商品名「ライポンPS-230」)。
A-3:炭素数14~17の第2級アルカンスルホン酸ナトリウム(SAS、クラリアントジャパン株式会社製、商品名「HOSTAPUR SAS 30A」)。
A-4:炭素数12~16のアルキル硫酸ナトリウム(AS、PEPMACO MANUFACTURING CORPORATION製、商品名「SLS」)。
A-5:アルキル基の炭素数が12~14であり、オキシエチレン基の平均繰り返し数が1であるポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム(AES、新日本理化株式会社製、商品名「シノリンSPE-1100」)。
【0045】
[(B)成分]
B-1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「ブチルジグリコール」)。
B-2:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「プロピルプロピレングリコール」)。
B-3:エチレングリコールモノヘキシルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「ヘキシルグリコール」)。
B-4:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「フェニルジグリコール」)。
B-5:エチレングリコールモノフェニルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「フェニルグリコール」)。
B-6:ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(日本乳化剤株式会社製、商品名「ベンジルジグリコール」)。
【0046】
[(C)成分]
C-1:エチレンジアミン四酢酸(EDTA、ライオン株式会社、商品名「ディゾルビンZ」)。
C-2:ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA、キレスト株式会社、商品名「HEDTA」)。
C-3:ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG、キレスト株式会社、商品名「DHEG」)。
C-4:ヒドロキシエチレンイミノジ酢酸(HIDA、キレスト株式会社、商品名「HIDA」)。
C-5:ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、キレスト株式会社、商品名「DTPA」)。
C-6:クエン酸(扶桑化学株式会社、商品名「クエン酸(無水)」)。
【0047】
[(D)成分]
D:PVAとN-ビニル-2-ピロリドンとのグラフトコポリマー(D-1)を含む水溶性高分子、下記合成例1により合成されたもの。
【0048】
(合成例1:D-1の合成)
特開2015-213882号公報の実施例1に記載の方法で合成した。
反応容器に、水800gにPVA(ポリビニルアルコール、クラレ社製品名「PVA-117」、けん化度98~99モル%、重合度1700)100gを溶解した水溶液に、NVP(N-ビニル-2-ピロリドン)100gを加え、容器内の空気を窒素で置換した。続いて、70℃に昇温し、1質量%硫酸銅水溶液0.01g、28質量%アンモニア水1g及び30質量%過酸化水素水1.5gを添加し、重合を開始させた。重合中は温度を70~80℃、アンモニア水によりpHを5.5~6.5に維持し、30質量%過酸化水素水1.5gを15分おきに6回添加することで重合率は90%以上となった。続いて残存NVP処理工程として30質量%過酸化水素水4gを添加し、アンモニア水によりpH5以上に保持しながら合計210分間反応させ、PVAとNVPとのグラフトコポリマー(D-1)を含む水溶性高分子(D-1)の水溶液を得た。
仕込みPVA質量と仕込みNVP質量の合計に対する仕込みNVP質量の割合は50質量%であり、グラフト効率は50質量%であった。
【0049】
[実施例1~36、比較例1~9]
<液体洗浄剤の調製>
表1~8に示す配合組成の液体洗浄剤を以下の手順にて調製した。
1Lビーカーに、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、水とを入れて充分に撹拌した。続いて、pH調整剤以外の任意成分を加え、混合した。混合終了後、25℃におけるpHが10.5になるように、必要に応じpH調整剤を適量添加した後、全体量が100質量%になるように水(蒸留水)を加え、さらによく撹拌し、液体洗浄剤を得た。
得られた各例の液体洗浄剤について、以下の方法で、湯垢汚れ洗浄力、洗浄後のヌルつき性及びスプレー性を評価した。結果を表1~8に示す。
表において、空欄はその配合成分が配合されていないことを意味する。
【0050】
≪液体洗浄剤の評価方法≫
各例の液体洗浄剤について、湯垢汚れ洗浄力、洗浄後のヌルつき性、スプレー性を以下のように評価した。
【0051】
[湯垢汚れ洗浄力の評価]
一般家庭の浴槽内側壁面に、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)製テストピース(2cm×10cm)を固定した後、成人男性4名がそれぞれ3回入浴(1日につき1回の入浴を3日間繰り返し、その間、風呂水のみを入れ替え、浴槽は洗わずに使用)し、テストピースに汚れを付着させた。
この汚れが付着したテストピースを充分に乾燥させた後、前記テストピースに対して、その全面が濡れるように各例の浴室用液体洗浄剤を滴下し、1分間放置した後、水道水(25℃)ですすぎ流した。テストピースを充分に乾燥させ、5枚のテストピース表面の汚れの除去状態を目視、指触により、下記洗浄力の評価基準に従って評価した。下記評価基準において、◎及び○を合格とした。
<評価基準>
◎:汚れ落ちが非常に良好[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察されず、5枚ともテストピース全面につるつるとした指触が得られる]。
〇:汚れ落ちが良好[5枚のテストピースのうち、1枚以上は目視による汚れが観察されず、かつ、テストピース全面につるつるとした指触が得られ、5枚のテストピースのうち、少なくとも1枚はテストピースにざらざらとした指触を感じる]。
△:ほとんど汚れが落ちない[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察され、5枚ともざらざらとした指触を感じるが、前記目視による汚れ及びざらざらとした指触は、洗浄前より軽減されている]。
×:全く汚れが落ちない[5枚のテストピースのうち、5枚とも目視による汚れが観察され、5枚ともざらざらとした指触を感じ、前記目視による汚れ及びざらざらとした指触は、洗浄前と変わらない]。
【0052】
[洗浄後のヌルつき性の評価]
ガラス繊維強化プラスチック(FRP)製テストピース(5cm×5cm)に対して、その全面が濡れるように各例の浴室用液体洗浄剤を滴下し、1分間放置した後、水道水(25℃)ですすぎ流した。次いで、テストピースが乾燥しないうちに担当者5名が濡れた指でテストピース表面を指触し、下記ヌルつき性の評価基準に従って評価した。下記評価基準において、◎及び○を合格とした。
<評価基準>
◎:処理していないテストピースと比べて、ヌルつきを全く感じない。
〇:処理していないテストピースと比べて、ヌルつきをほとんど感じない。
△:処理していないテストピースと比べて、ヌルつきをやや感じる。
×:処理していないテストピースと比べて、ヌルつきを非常に感じる。
【0053】
[スプレー性の評価]
各例の浴室用液体洗浄剤を既成のスプレー容器(ライオン株式会社製ルックプラスバスタブクレンジング)に充填してスプレーした際の液の広がりを評価した。
<評価基準>
◎:洗浄剤液が充分に広がり、ミスト状にスプレーできる。
〇:洗浄剤液に広がりがやや狭くなり、充分にミスト状にはスプレーできない。
×:スプレー液が広がらず、全くミスト状にスプレーできない。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
【表8】
【0062】
表1~8の結果に示されるように、各実施例の液体洗浄剤は、湯垢汚れ洗浄力及びスプレー性に優れ、液体洗浄剤と接触した洗浄対象物のヌルつきが抑制されていた。
表1の結果に示されるように、(A)成分を含まない比較例1は、洗浄力が劣っていた。
表1の結果に示されるように、(A)成分の含有量が12質量%である比較例2は、スプレー性が劣っていた。
表3の結果に示されるように、(B)成分を含まない比較例3は、洗浄力が劣っていた。
表3の結果に示されるように、(B)成分の含有量が12質量%である比較例4は、スプレー性が劣っていた。
表5の結果に示されるように、(C)成分を含まない比較例5は、洗浄力が劣っていた。
表5の結果に示されるように、(C)成分の含有量が15質量%である比較例6は、スプレー性が劣っていた。
表7の結果に示されるように、(D)成分の含有量が0.03質量%である比較例7は、液体洗浄剤と接触した洗浄対象物のヌルつきが抑制されていなかった。
表7の結果に示されるように、(D)成分の含有量が8質量%である比較例8は、スプレー性が劣っているとともに、液体洗浄剤と接触した洗浄対象物のヌルつきが抑制されていなかった。
表8の結果に示されるように、pHが8.0である比較例9は、液体洗浄剤と接触した洗浄対象物のヌルつきが抑制されていなかった。