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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095271
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20230629BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20230629BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
H01S5/022
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211061
(22)【出願日】2021-12-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】516257981
【氏名又は名称】株式会社ライトショー・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山影 明広
(72)【発明者】
【氏名】加藤 厚志
(72)【発明者】
【氏名】梅 雨非
【テーマコード(参考)】
2H045
5F173
【Fターム(参考)】
2H045AA75
2H045BA02
2H045BA24
5F173MC30
5F173MD64
5F173MF18
5F173MF27
5F173MF28
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【解決手段】半導体レーザと、半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第1コリメートレンズとを備えたレーザ光源と第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、偏向素子の光学面に集光する集光レンズと、偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第2コリメートレンズと、を備えた走査型光源において、偏向素子は、回転軸を中心とする円周に沿って形成され、回転軸を中心に回転可能な光学面を備え、光学面は、円周に沿って回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、傾斜角は、光学面を一定速度で連続的に回転させると、レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、ことを特徴とする走査型光源である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザと、前記半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第1コリメートレンズとを備えたレーザ光源と、
偏向素子と、
前記第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記偏向素子の光学面に集光する集光レンズと、
前記偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第2コリメートレンズと、
を備えた走査型光源において、
前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、
前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、
前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
ことを特徴とする走査型光源。
【請求項2】
前記光学面は、前記集光レンズにより集光された前記レーザビームを反射させる反射面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型光源。
【請求項3】
前記光学面は、前記集光レンズにより集光された前記レーザビームを、透光性の基部に入射させる入射面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型光源。
【請求項4】
前記レーザ光源が出力するレーザビームの断面は、前記半導体レーザのSlow軸を長手方向とし、Fast軸を短手方向とする略矩形形状であり、
前記偏向素子は、前記短手方向に沿って前記レーザビームを偏向する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査型光源。
【請求項5】
前記レーザ光源は、単素子の半導体レーザと、前記第1コリメートレンズの出力光を前記Slow軸の方向に拡大するビームコンバイナを備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載の走査型光源。
【請求項6】
前記レーザ光源は、Fast軸方向が直線に並ぶように配置された複数の半導体レーザを備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載の走査型光源。
【請求項7】
前記レーザ光源は、前記複数の半導体レーザの各々の出力ビームを分割するビーム分割手段を備えている、
ことを特徴とする請求項6に記載の走査型光源。
【請求項8】
異なる色光毎に設けられた、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の走査型光源と、
前記走査型光源の各々が出力するビームを、互いに重ならないように合成する光合成部と、
前記光合成部が出力する光を、反射型光変調素子に導く光路変換ミラーと、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備える、
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項9】
前記走査型光源が出力するビームのFast軸方向の強度分布には影響を与えないが、Slow軸方向の強度分布を均一化させる光学的インテグレータを、前記走査型光源の前記第2コリメートレンズと前記反射型光変調素子の間に備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記光学的インテグレータは、前記Slow軸方向にビームを拡散させるストライプ状の拡散素子と、前記拡散素子で拡散されたビームを前記反射型光変調素子の画面に集光するシリンドリカルレンズと、を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記光学的インテグレータの出力光を拡散させる固定式または移動式の拡散手段と、前記拡散手段から出力される拡散光を前記反射型光変調素子の画面に転写して結像する転写照明系と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項9または10に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、および光源装置を備えた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ光を用いた投射型表示装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、レーザ光源と、レーザ光を映像信号に応じて光変調する光音響変調器と、変調されたレーザ光を水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーと、を備えた投射型表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-180759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された投射型表示装置では、水平走査する多角形ミラーと、垂直走査するガルバノミラーとを併用した光学的な走査手段を備えているが、水平と垂直の両方向を光学的に走査するため、大きな光路空間が必要となり、装置が大型化する問題があった。
【0006】
また、垂直走査に用いているガルバノミラーは、反射面を機械的に往復運動させるデバイスであり、1走査毎に走査開始位置まで反射面を戻すのに大きな時間を要し、しかも位置制御が複雑であるという問題があった。
【0007】
ガルバノミラーに代えて、比較的制御が簡単な共振型ミラースキャナーを垂直走査に用いることも考えられるが、共振型ミラースキャナーは正弦波駆動であるため走査が非等速になってしまううえ、走査開始位置までミラーを戻すのに要する時間も大きくなる。このため、投射型表示装置の垂直走査に用いるのは不適当であった。
【0008】
そこで、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置の実現が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、半導体レーザと、前記半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第1コリメートレンズとを備えたレーザ光源と、偏向素子と、前記第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記偏向素子の光学面に集光する集光レンズと、前記偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第2コリメートレンズと、
を備えた走査型光源において、前記偏向素子は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、ことを特徴とする走査型光源である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像信号に応じてレーザ光を変調して投射する投射型画像表示装置の分野において、小型で、駆動制御が容易で、光利用効率が高い装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る投射型表示装置1000の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施形態に係るシングルLDタイプの光源100の基本構成を示すための模式図。
図3】(a)半導体レーザの出力光のNear-Field Patternを示す図。(b)半導体レーザの出力光のFar-Field Patternを示す図。
図4】(a)コリメートレンズ102を通過した後の平行方向についてのビームの広がりを示す図。(b)コリメートレンズ102を通過した後の直交方向についてのビームの広がりを示す図。
図5】(a)マルチLDタイプの光源100の基本構成を示す模式図。(b)ビーム分割手段108を設けたマルチLDタイプの光源100の基本構成を示す模式図。
図6】(a)ビーム分割手段108の具体的な構成を示す図。(b)ビーム分割手段108の出力を示す図。
図7】(a)複数列の半導体レーザを備えた光源を例示する図。(b)複数列の半導体レーザとビーム分割手段108を備えた光源を例示する図。
図8】(a)実施形態に係る偏向器1の外観を示す斜視図。(b)偏向器1の側面図。
図9】(a)偏向器1における入射ビームと反射ビームの方向を説明するための図。(b)偏向器1における反射面の位置と傾斜角を説明するための図。
図10】(a)実施形態に係る偏向器2の外観を示す斜視図。(b)偏向器2の側面図。
図11】(a)偏向器2における入射ビームと反射ビームの方向を説明するための図。(b)偏向器2における反射面の位置と傾斜角を説明するための図。
図12】(a)実施形態に係る偏向器3の外観を示す斜視図。(b)偏向器3における反射面の位置と傾斜角を説明するための図。
図13】(a)光源100の後方から偏向器210を見た図。(b)偏向器210がレーザビームを垂直走査の開始位置に向けて反射させている状態を示す側面図。(c)光合成部220側からコリメートレンズ202側を見た図。(d)偏向器210がレーザビームを垂直走査の終了位置に向けて反射させている状態を示す側面図。(e)光合成部220側からコリメートレンズ202側を見た図。
図14】(a)反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す図。(b)反射型光変調素子340の画面を矩形のビームが走査する様子を示すタイムチャート。
図15】光源100の点灯(消灯)タイミングを示す図。
図16】実施形態2に係る投射型表示装置1000の光学系の概略構成を示す図。
図17】(a)光源のタイプ別に矩形内のビーム強度分布を示す図。(b)光学的インテグレータ230の構成を例示する模式的な斜視図。(c)光学的インテグレータ230の光学的作用を説明するための模式図。
図18】実施形態3に係る投射型表示装置1000の光学系の概略構成を示す図。
図19】実施形態4に係る投射型表示装置1000の光学系の概略構成を示す図。
図20】実施形態5に係る投射型表示装置1000の光学系の概略構成を示す図。
図21】(a)実施形態に係る偏向器4の外観を示す斜視図。(b)偏向器4の側面図。
図22】(a)偏向器4における入射ビームと透過ビームの方向を説明するための図。(b)基体211bの材料がガラスである場合のβ(偏向角)の値を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施形態にかかる投射型表示装置および光源装置について説明してゆく。尚、以下に示す実施形態は例示であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更して実施をすることができる。
尚、以下の説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同様の機能を有するものとする。
【0013】
また、以下の説明において、例えばXプラス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと同じ方向を指し、Xマイナス方向と記す場合には、図示の座標系におけるX軸矢印が指すのと180度反対の方向を指すものとする。また、単にX方向と記す場合には、図示のX軸矢印が指す向きとの異同は関係なく、X軸と平行な方向であることを指すものとする。X以外の方向についても、同様とする。
【0014】
また、以下の説明では、赤色のことを「R」、緑色のことを「G」、青色のことを「B」と記載する場合がある。したがって、例えば、R光は赤色光と、G光源は緑色光源と、Bレーザは青色レーザと、それぞれ同義である。
【0015】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0016】
[全体構成]
投射型表示装置1000は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、各色の光源と各色の偏向器の間には集光レンズ201が配置され、各色の偏向器と光合成部220の間にはコリメートレンズ202(第2コリメートレンズ)が配置されている。また、投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0017】
B光源100BはB光を発する半導体レーザを、G光源100GはG光を発する半導体レーザを、R光源100RはR光を発する半導体レーザを、それぞれ備えている。光源については、後に詳述する。
【0018】
B用偏向器210Bは、B光源100Bが発するB光をDB方向に偏向する偏向器である。同様に、G用偏向器210Gは、G光源100Gが発するG光をDG方向に偏向する偏向器であり、R用偏向器210Rは、R光源100Rが発するR光をDR方向に偏向する偏向器である。偏向器については、後に詳述する。
【0019】
B用偏向器210Bと光合成部220の間には、コリメートレンズ202が設けられている。B光(点線)がB用偏向器210BによりDB方向に偏向されても、コリメートレンズ202の作用により、B光はX方向と平行な光線として光合成部220に入射する。
【0020】
G用偏向器210Gと光合成部220の間には、コリメートレンズ202が設けられている。G光(実線)がG用偏向器210GによりDG方向に偏向されても、コリメートレンズ202の作用により、G光はZ方向と平行な光線として光合成部220に入射する。
【0021】
R用偏向器210Rと光合成部220の間には、コリメートレンズ202が設けられている。R光(一点鎖線)がR用偏向器210RによりDR方向に偏向されても、コリメートレンズ202の作用により、R光はX方向と平行な光線として光合成部220に入射する。
【0022】
光合成部220は、ダイクロイックミラー221とダイクロイックミラー222を備える。ダイクロイックミラー221は、G光を透過させ、B光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー222は、G光及びB光を透過させ、R光を反射する光学特性を備えている。ダイクロイックミラー221上において、B光用のコリメートレンズ202の光軸中心と、G光用のコリメートレンズ202の光軸中心とが重なるように、各素子は配置されている。また、ダイクロイックミラー222上において、B光用のコリメートレンズ202の光軸中心と、G光用のコリメートレンズ202の光軸中心と、R光用のコリメートレンズ202の光軸中心とが重なるように、各素子は配置されている。
【0023】
光合成部220により、B光(点線)、G光(実線)、R光(一点鎖線)の進行方法は全てZプラス方向に揃えられるが、これらの光は、どのタイミングにおいても互いに重なり合わないように合成されている。B光、G光、R光の各々が、互いに反射型光変調素子340の画面上で重ならないように、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査のタイミング(偏向の位相)を制御しているからである。走査方法については後に詳述する。
光合成部220から出射したB光、G光、R光は、光路変換ミラー330によりXプラス方向に進路を変更され、TIRプリズム350に入射する。
【0024】
TIRプリズム350は、例えば2つのプリズムを組み合わせて構成された内部全反射プリズムであり、照明光(B光、G光、R光)をエアギャップ面で全反射させて、反射型光変調素子340に所定の角度で入射させる。前述したように、B光、G光、R光は、互いに重ならないように、それぞれが反射型光変調素子340の画面の一部を照明する。
【0025】
反射型光変調素子340には、例えばマイクロミラーデバイスをアレイ状に設けたDMDが用いられる。各表示画素に対応するマイクロミラーは、映像信号の輝度レベルに応じて、パルス幅変調により反射方向が変更されるように駆動される。ただし、反射型液晶デバイスのような、別種の反射型光変調デバイスを用いることも可能である。
【0026】
B光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のB成分の輝度レベルに応じて駆動され、B映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。同様に、G光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のG成分の輝度レベルに応じて駆動され、G映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。また、R光で照明されている画面領域の画素は、映像信号のR成分の輝度レベルに応じて駆動され、R映像光をTIRプリズム350に向けて所定角度で反射する。このように、反射型光変調デバイスは、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rによる偏向走査のタイミングと同期して駆動される。
【0027】
映像光(B映像光、G映像光、R映像光)は、TIRプリズム350を透過して、投射レンズ360に導かれ、カラー映像として投射される。投射レンズ360は、単数もしくは複数のレンズで構成され、自動焦点調節機能やズーム機能を備えることもできる。
【0028】
投映スクリーン190は、リヤプロジェクション型の表示装置を構成する場合に用いられる。また、フロントプロジェクション型の場合にも設置されることが多いが、ユーザが任意の壁面などに投射する場合には、必ずしも設置する必要はない。
【0029】
[光源]
B光源100B、G光源100G、R光源100Rについて説明する。B光源100BはB光を発する半導体レーザとコリメートレンズを、G光源100GはG光を発する半導体とレーザコリメートレンズを、R光源100RはR光を発する半導体レーザとコリメートレンズを、それぞれ備えている。半導体レーザの発光波長を別にすれば、各色の光源の基本的な構成は同一であるので、以下では色光毎に区別せずに単に光源100として説明する場合がある。
本実施形態で用いられ得る各色の光源には、単素子の半導体レーザを備えるタイプ(シングルLDタイプ)と、複数の半導体レーザを備えるタイプ(マルチLDタイプ)がある。以下、順に説明する。
【0030】
(シングルLDタイプ)
図2は、シングルLDタイプの光源100の基本構成を示すための模式図である。11は半導体レーザ、13は給電端子、12は半導体レーザ11に形成された発光部であり、これらは発光素子101としてパッケージされている。尚、図2では、図1のB光源100Bに合わせてXYZ座標系の向きを表示している。図2においては、発光部12の長手方向HをY方向と平行にし、発光部12から出射した光の進行方向をZ方向と平行に図示している。
【0031】
発光部12の長手方向Hとは、典型的には、半導体レーザ11を構成する半導体チップの側面において、P型クラッド層とN型クラッド層に挟まれた活性層が延在している方向である。図2に示すように、以後の説明では、半導体レーザ11の発光部12の長手方向と平行な方向を「平行方向」と記し、発光部12の長手方向と直交する方向を「直交方向」と記す場合がある。発光素子101からは、直線偏光の光が出射し、その電界の振動方向は平行方向(Y方向)である。
【0032】
半導体レーザ11の出力光は、出射方向によって角度特性が異なることが知られているが、図3(a)に出力光のNear-Field Patternを、図3(b)に出力光のFar-Field Patternを例示する。
【0033】
図3(a)に示すように、Near-Field Patternでは、発光部の形状(長手、短手)を反映したビームプロファイルであることが判る。一方、ビームが進行するにつれて、図3(b)のFar-Field Patternに例示するように、ビームは広がってゆく。すなわち、平行方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、広がりが小さく、狭い角度範囲内に強度分布が均一なパターンで進行してゆくことがわかる。一方、直交方向についてみれば、半導体レーザ11から出射したビームは、強度分布が山形になるパターン(ガウシアン)になり、進行するにつれて平行方向よりも広い角度範囲に広がってゆくことがわかる。半導体レーザの活性層は、直交方向の厚さが小さいため、出射する際に回折の影響を大きく受けるためである。Far-Field Patternで見て広がりが小さな平行方向をSlow軸、広がりが大きな直交方向をFast軸と呼ぶこともできる。
【0034】
本実施形態では、図2に示すようにコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)を用いて半導体レーザ11から出射したレーザビームを成形する。すなわち、長手方向の長さがHy1である発光部12から出射した光は、コリメートレンズ102によりコリメートされ、断面が楕円形状のビームとなってZ方向に進行する。尚、楕円形状の長径はX方向と平行で、短径はY方向と平行である。
【0035】
コリメートレンズ102を通過しても、ビームが光軸(Z方向)と完全に平行になるわけではなく、平行方向(発光部の長手方向)と直交方向(発光部の短手方向)ではビームの広がり方が異なったものとなる。図4(a)および図4(b)を参照して、コリメートレンズ102を通過した後のビームの広がり方の違いについて説明する。図4(a)は平行方向についての広がりを示し、図4(b)は直交方向についての広がりを示している。
【0036】
図4(a)に示すように、平行方向についてみれば、ビーム強度のトップはフラットではあるものの、Z方向に進むにつれてビーム径が広がってしまうので、ダイバージェンスが良好であるとは言えない。これに対して、図4(b)に示すように、直交方向についてみれば、コリメートレンズ102からの距離が変化してもビーム強度分布とビーム径の変化が小さいのが判る。すなわち、コリメートレンズ102を透過した後のレーザビームは、直交方向(半導体レーザのFast軸)の方が平行方向(半導体レーザのSlow軸)よりも平行性が高く、ダイバージェンスが良好である。
【0037】
図2に戻り、シングルLDタイプの光源100は、例えばシリンドリカルレンズで構成されたビームコンバイナ107を備えている。ビームコンバイナ107は、ビームを平行方向(Y方向)に拡大する。ビームコンバイナ107を経て、光源100から出力光として出射されるビームは、断面形状が略矩形になるよう整形された矩形光線となる。矩形の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸)、矩形の短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸)に対応する。光源100から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。尚、以下の説明で矩形という際には、必ずしも幾何学的に厳密な矩形を意味するものではなく、例えば角の部分が変形した略矩形形状でもよい。
【0038】
後述するように、本発明では、光源100から出力されるビームのダイバージェンスが直交方向(矩形の短手方向)において優れる(ビームの平行度が高い)という性質を利用して、直交方向に沿ってビームを偏向走査させて光変調素子を照明する。ダイバージェンスが優れる方向に沿ってビームを偏向走査する方が、光変調素子の画面上でR、G、Bの各色照明領域の重なりを防止するのに有利だからである。
【0039】
(マルチLDタイプ)
図5(a)は、マルチLDタイプの光源100の基本構成を示すための模式図である。光源100は、複数の半導体レーザおよびコリメートレンズ102(第1コリメートレンズ)を含んだレーザモジュールLM1を備えている。個々の半導体レーザについての説明は、シングルLDタイプと内容が重複するので省略する。尚、図5(a)では、図1のB光源100Bに合わせてXYZ座標系の向きを表示している。
【0040】
レーザモジュールLM1においては、複数の半導体レーザがY方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。また、どの半導体レーザも、発光部12の長手方向がY方向に沿う向きになるように配置されている。4素子の半導体レーザを用いる例を示すが、素子の数はこの例に限られるわけではない。
【0041】
半導体レーザのY方向の間隔を適宜に設定することにより、光源100から出射されるビームは、断面形状が略矩形な矩形光線となる。矩形の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸方向)、矩形の短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸方向)に対応する。光源100から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0042】
また、図5(b)に示すように、平行なビームを分割するビーム分割手段108を設けることにより、断面形状が略矩形な矩形光線におけるビーム強度の均一性を向上させることができる。図6(a)に、ビーム分割手段108の具体的な構成を例示するが、各々のコリメートレンズ102の光軸上にはハーフミラーが配置されている。レーザビームのうち半分の光量はそのままハーフミラーを透過してZ方向に進むが、残り半分の光量はハーフミラーによりY方向に反射される。反射光の光路上には、全反射ミラーが配置されており、ハーフミラーでY方向に反射された光は、全反射ミラーに反射されてZ方向に進む。その結果、4個の半導体レーザから出力された4本の出力ビームは、ビーム分割手段108により分割されて、Z方向に進む平行な8本のビームとなり、図6(b)に示すように、断面形状が略矩形な矩形光線におけるビーム強度の均一性が向上する。ここでも、矩形の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸)、矩形の短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸)に対応する。ビーム分割手段108を備える光源100であっても、出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0043】
以上の例では、複数の半導体レーザを1列だけY方向に沿って並べたが、Y方向に沿った列を複数設けて矩形光線を出力するように構成してもよい。図7(a)に示すのは、図5(a)では1列であった素子列を2列にしたレーザモジュールLM2である。また、図7(b)に示すのは、図5(b)では1列であった素子列を2列にしたレーザモジュールLM2である。このように、Y方向に沿った半導体レーザの素子列を複数列備える光源100であっても、出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好である。
【0044】
[偏向器]
B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rについて説明する。これらは、異なる色のレーザビームを偏向走査するのに用いられる偏向素子であるが、基本的な構成は同一であるので、以下では特に色を特定せずに偏向器210として説明する場合がある。偏向器210について、複数のバリエーションを説明する。
(偏向器1)
偏向器210の1つの形態である偏向器1について説明する。図8(a)は、偏向器1の外観を示す斜視図であり、図8(b)は、偏向器1の側面図である。
【0045】
偏向器1は、回転可能な円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の光学面である反射面213が設けられている。ここで、反射面の位置を特定するため、図8(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力された矩形のビームが集光レンズ201(図1)により集光されるビームスポット位置である。
【0046】
帯状の反射面213は、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が位置によって変化するようにねじれている。図9(a)と図9(b)を参照して、反射面の角度について説明する。図9(a)と図9(b)において、反射面の位置として示されているのは、図8(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0047】
図9(b)に示すように、反射面の位置に対して反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。図8(a)、図9(b)に示すように、反射面の位置が0°(360°)において反射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、図9(a)では反射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。
【0048】
モータにより基体211がR方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、図8(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0049】
反射面が回転してレーザビームに照射される反射面の部位が変化したとしても、図9(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で反射面213に入射する。一方、反射面の位置に応じて反射面の傾斜角は、-θから+θの範囲で変化する。このため、図9(a)に示すように、反射面213で反射されたレーザビームの方向は、軸BXを基準にすると、(α-2×θ)から(α+2×θ)までの4θの角度範囲内で変化する。つまり、傾斜角は、光学面(反射面)を一定速度で連続的に回転させると、レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
【0050】
言い換えれば、図8(b)に示すように、偏向器210は、出射ビームをRD1(軸BXに対して(α-2×θ))からRD2(軸BXに対して(α+2×θ))までの角度範囲内で偏向走査することができる。図8(a)のR方向に反射面213を連続回転させると、出射ビームは、図8(b)のRD1からRD2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD2に達すると瞬時にRD1に回帰し、再びRD2に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし反射面213をR方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、図8(b)のRD2からRD1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD1に達すると瞬時にRD2に回帰し、再びRD1に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0051】
このように、偏向器1によれば、ガルバノミラーなどとは異なり、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0052】
偏向器1の製造方法について付言すると、円周に沿って帯状の反射面213が設けられた円板状の基体211は、例えばプレス押出工法で金属母材を加工することにより低コストで製造することが可能である。図9(a)に例示したように、反射面213の近傍には基体211の主面から突出した部分や凹んだ部分が存在するが、回転バランスを良好にするため、回転軸AXを通る断面で見た時、どの位置の断面であっても断面積が等しい形状にするのが望ましい。また、基体211の主面から突出する最大高さや、主面から凹む最大深さは、風切り音を低減するため、平均板厚の3/4以下にするのが望ましい。具体的には、基体211の平均板厚は、0.7mm以上で2mm以下とするのが望ましく、θは3°以上で6°以下とするのが望ましい。
【0053】
(偏向器2)
偏向器210の1つの形態である偏向器2について説明する。図10(a)は、偏向器2の外観を示す斜視図であり、図10(b)は、偏向器2の側面図である。
【0054】
偏向器2は、円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の反射面213が設けられている。ここで、反射面の位置を特定するため、図10(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力された矩形のビームが集光レンズ201(図1)により集光されるビームスポット位置である。
【0055】
帯状の反射面213は、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が位置によって変化するようにねじれている。図11(a)と図11(b)を参照して、反射面の角度について説明する。図11(a)と図11(b)において、反射面の位置として示されているのは、図10(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0056】
図11(b)に示すように、反射面の位置に対して反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。図10(a)、図11(b)に示すように、反射面の位置が0°(360°)において反射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、図11(a)では反射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。
【0057】
モータにより基体211がR方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、図10(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0058】
反射面が回転してレーザビームに照射される反射面の部位が変化したとしても、図11(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で反射面213に入射する。一方、反射面の位置に応じて反射面の傾斜角は、-θから0の範囲で変化する。このため、図11(a)に示すように、反射面213で反射されたレーザビームの方向は、軸BXを基準にすると、(α-2×θ)からαまでの2θの角度範囲内で変化する。
【0059】
言い換えれば、図10(b)に示すように、偏向器210は、出射ビームをRD1(軸BXに対して(α-2×θ))からRD2(軸BXに対してα)までの角度範囲内で偏向走査することができる。図10(a)のR方向に反射面213を連続回転させると、出射ビームは、図10(b)のRD1からRD2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD2に達すると瞬時にRD1に回帰し、再びRD2に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし反射面213をR方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、図10(b)のRD2からRD1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、RD1に達すると瞬時にRD2に回帰し、再びRD1に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0060】
このように、偏向器2によれば、ガルバノミラーなどとは異なり、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
偏向器2の製造方法や具体的なサイズについては、偏向器1の説明と同様である。
【0061】
(偏向器3)
偏向器210の1つの形態である偏向器3について説明する。図12(a)は、偏向器3の外観を示す斜視図であり、図12(b)は、偏向器3の反射面の位置と傾斜角の関係を示す図である。
【0062】
偏向器3は、円板状の基体211と、回転軸AXを中心に基体211を回転させるモータを備えている。円板状の基体211の主面には、円周に沿って帯状の反射面213が設けられている。ここで、反射面の位置を特定するため、図12(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で反射面213を通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力された矩形のビームが集光レンズ201(図1)により集光されるビームスポット位置である。
【0063】
帯状の反射面213は、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が位置によって変化するようにねじれている。反射面の傾斜角が-θから+θまでリニアに変化いて、反射面の位置として示されているのは、図12(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、反射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211の主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、反射面の傾斜角である。
【0064】
図12(b)に示すように、反射面の位置が0°~180°の区間と、180°~360°の区間において、反射面の傾斜角がリニアに変化するように、反射面213は構成されている。前出の偏向器1では、0°から360°にかけて反射面の傾斜角が-θから+θまでリニアに変化したが、偏向器3では、0°~180°の区間と180°~360°のそれぞれの区間において、反射面の傾斜角が-θから+θまでリニアに変化する。尚、図12(a)、図12(b)に示すように、偏向器3では、反射面の位置が0°(360°)および180°においては反射面の傾斜角は不連続になっている。
【0065】
モータにより基体211がR方向に回転されると、反射面213も回転軸AXの回りを回転するため、図12(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0066】
反射面の傾斜角と出射ビームの方向との関係は、偏向器1についての説明と同様であるが、偏向器3の場合は図12(b)の下段に示したように、基体211を1回転させることにより2回の偏向走査が可能である。このため、画像表示の1フレームに対して基体211を1/2回転させればよく、回転速度を低減できるため、静音化の点で有利である。
【0067】
このように、偏向器3によれば、ガルバノミラーなどとは異なり、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。後述するように、反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0068】
尚、1周を0°~180°と180°~360°の2つの区間に分割して、それぞれの区間で反射面の傾斜角を-θから+θまで変化させる例を示したが、3つ以上の区間に分割してそれぞれの区間で傾斜角を変化させてもよい。また、傾斜角は、-θから+θまで変化させる例に限られるわけではなく、偏向器2のように-θから0の範囲で変化させてもよいし、それ以外でもよい。
偏向器3の製造方法や具体的なサイズについては、偏向器1の説明と同様である。
【0069】
[走査方法]
投射型表示装置1000(図1)は、B、G、Rの各色について、上述した光源100と偏向器210を備えている。光源100B、光源100G、光源100Rから出力された矩形のBビーム、Gビーム、Rビームは、反射型光変調素子340の画面を照明しながら、垂直方向(V方向)に沿って画面を走査する。光源100、偏向器210、集光レンズ201、第2コリメートレンズ202により構成される部分を、走査型光源と呼ぶことができる。
【0070】
図13(a)は、光源100の後方から偏向器210を見た図であり、偏向器の反射面で反射されたレーザビームが、コリメートレンズ202で平行化される様子を示している。
【0071】
図13(b)は、偏向器210がレーザビームを垂直走査の開始位置に向けて反射させている状態を示している。図13(c)は、その際に光合成部220側からコリメートレンズ202側を見た図であり、矩形のビームを模式的に斜線領域で示している。また、図13(d)は、偏向器210がレーザビームを垂直走査の終了位置に向けて反射させている状態を示している。図13(e)は、その際に光合成部220側からコリメートレンズ202側を見た図であり、矩形のビームを模式的に斜線領域で示している。尚、図13(b)~図13(e)に記載した座標軸は、図1のG用偏向器210Gに対応させて示したもので、B用偏向器210B、R用偏向器210Rの場合は、座標軸は異なった向きになる。
【0072】
これらの図に例示されるように、光源100から出力された矩形のビームは、集光レンズ201により偏向器210の反射面213のビームスポット位置に集光されている。ビームスポット位置にて反射されたビームは広がり角を有しているが、コリメートレンズ202により平行化されている。
本実施形態では、偏向器の反射面を回転させることにより、矩形のレーザビームを走査方向SDに沿って偏向走査することができる。
【0073】
図14(a)に、反射型光変調素子340の画面と、矩形のレーザビームの走査範囲SAの関係を示す。反射型光変調素子340の画面サイズをH(水平方向)×V(垂直方向)とすると、矩形のレーザビームの走査範囲SAは、画面サイズよりも大きなH’×V’の領域をカバーする。
【0074】
図14(b)は、反射型光変調素子340の画面を矩形のBビーム、Gビーム、Rビームのそれぞれが照射する様子を、横軸を時間軸として示した図である。Bビーム、Gビーム、Rビームは、走査方向SDに沿って反射型光変調素子340の画面を垂直走査し、1フレーム時間で1画面の走査を完了する。各色領域の境界部分で混色が生じないように、Bビーム、Gビーム、Rビームは、互いに重複しないように構成されており、必然的に各ビームの垂直方向の幅は、V’の1/3以下に構成されている。各ビームの垂直方向の幅は、反射型光変調素子340の画面の垂直方向の幅の1/4以上かつ1/3以下に設定され得る。
【0075】
ところで、偏向器1~偏向器3で例示したように、偏向器の反射面には、傾斜角が不連続になる位置があるが、この部分では意図しない方向に反射して迷光し、表示画質が低下する懸念がある。そこで、本実施形態では、例えば図8(a)、図10(a)、図12(a)に示すビーム照射位置214が、反射面の傾斜角が不連続になる位置の近傍にあるタイミングでは、光源100を消灯させる、あるいは輝度を大幅に低下させるように光源100の駆動を制御する。
【0076】
図15は、偏向器210として偏向器1を用いた場合を例にして、横軸を時間として光源100の点灯(消灯)タイミングを示した図である。表示画像のフレームを切り替えるタイミングにおいては、ビーム照射位置は反射面の傾斜角が不連続になる位置(偏向器1の場合は、0°=360°)となるので、図15下段のグラフに示すように、このタイミングに合わせて光源100を消灯させる、あるいは輝度を大幅に低下させるように光源100の駆動を制御する。
【0077】
本実施形態では、図13(b)、図13(d)を参照して説明したように、光源100から出力された矩形のビームは、集光レンズ201により偏向器210の反射面213(ビーム照射位置214)に集光されているので、傾斜角が不連続になる位置にビームスポットが滞在する時間は短い。したがって、光源100を消灯させる、あるいは輝度を大幅に低下させる時間は、短時間で済み、表示輝度を低下させることは殆ど無い。例えば、反射面213の環の直径を30mmだとすると、反射面213の周方向の長さは94.2mmとなる。集光レンズ201で集光されたビームスポットの直径が例えば1mmだとすれば、消灯時間の割合は、1/94.2=0.0106で済むことになり、表示輝度が低下することは殆ど無い。
【0078】
以上説明したように、本実施形態では、ガルバノミラーや共振型ミラースキャナーのように往復動作が必要で、1走査毎に走査開始位置に戻るのに要する時間が大きな光学走査手段を用いることなく、定速回転によりリニアに偏向走査することが可能な垂直偏向器を用いてB、G、Rのレーザビームを走査する。B、G、Rのレーザビームは、ビーム断面が矩形であり、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好に構成され、偏向器はダイバージェンスが良好な方向に沿って垂直偏向走査する。B、G、Rのレーザビームは、集光レンズ201により偏向器210の反射面213に集光され、反射面213で反射される。反射されたB、G、Rのレーザビームは、コリメートレンズ202により平行化され、光合成部220にて合成され、反射型光変調素子340の画面を照明するために導かれる。本実施形態は、水平方向には光学的な偏向走査を行わないため、装置が小型である。また、垂直走査には、往復動作が不必要で、走査戻りに要する時間が実質的には無い偏向器を用いるため、駆動制御が容易で、しかも光利用率が高く、画像品位が高い投射型表示装置を提供することが可能である。
【0079】
[実施形態2]
実施形態2について説明するが、実施形態1と共通する事項については、説明を簡略化または省略するものとする。図16は、実施形態2に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0080】
[全体構成]
実施形態1と同様に、本実施形態の投射型表示装置1000は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、各色の光源と各色の偏向器の間には集光レンズ201が配置され、各色の偏向器と光合成部220の間にはコリメートレンズ202が配置されている。また、投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0081】
実施形態2が実施形態1と異なるのは、光学的インテグレータ230を備える点である。光学的インテグレータ230は、レーザビームが偏向走査される方向と直交する方向、すなわち反射型光変調素子340の画面の水平方向における照明輝度の均一性を向上するために設けられている。
【0082】
実施形態1において光源100のバリエーションについて説明したが、図17(a)に、矩形光線を例示する。左側に示すのは、図2を参照して説明したシングルLDタイプの光源100から出力された矩形光線である。ビームコンバイナ107を用いることにより、矩形内でのビーム強度の均一性が高いのがわかる。図17(a)の中央に示すのは、図5(a)あるいは図5(b)を参照して説明したマルチLDタイプの光源100から出力された矩形光線である。図17(a)の右側に示すのは、図7(a)あるいは図7(b)を参照して説明した複数列の半導体レーザを備えたマルチLDタイプの光源100から出力された矩形光線である。矩形の長手方向が平行方向(半導体レーザのSlow軸)、矩形の短手方向が直交方向(半導体レーザのFast軸)に対応する。光源100から出力されるビームは、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好であり、偏向器による走査方向SDは、矩形の短手方向と一致している。
【0083】
図17(a)の中央や右側の例を見れば判るように、マルチLDタイプの光源の場合には、矩形の長手方向において半導体レーザの配置を反映してビーム強度に分布が発生しがちである。
【0084】
そこで、本実施形態では、矩形ビームの短手方向(偏向走査方向)には影響を与えないが、長手方向(偏向走査方向と直交する方向)に対しては強度分布を均一化させるような光学的インテグレータ230を用いる。図17(b)は、光学的インテグレータ230の構成を例示するための模式的な斜視図であり、図17(c)は、光学的インテグレータ230の光学的作用を説明するための模式図である。光学的インテグレータ230は、矩形の長手方向(偏向走査方向と直交する方向)にビームを拡散させるストライプ状の拡散素子231と、拡散素子231で拡散されたビームをターゲット面(反射型光変調素子の画面)に集光するシリンドリカルレンズ232で構成される。
【0085】
光学的インテグレータ230を備えることにより、マルチLDタイプの光源を用いる場合であっても、シングルLDタイプの光源と同様に、矩形の長手方向のビーム強度を均一なものとすることができる。
【0086】
尚、図16では、光学的インテグレータ230は、光合成部220と光路変換ミラー330の間に配置されているが、ビームをターゲット面(反射型光変調素子の画面)に集光するようにできれば、コリメートレンズ202と反射型光変調素子340の間の任意の位置に配置することが可能である。
【0087】
以上説明したように、本実施形態では、ガルバノミラーや共振型ミラースキャナーのように往復動作が必要で、1走査毎に走査開始位置に戻るのに要する時間が大きな光学走査手段を用いることなく、定速回転によりリニアに偏向走査することが可能な垂直偏向器を用いてB、G、Rのレーザビームを走査する。B、G、Rのレーザビームは、ビーム断面が矩形であり、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好に構成され、偏向器はダイバージェンスが良好な方向に沿って垂直偏向走査する。B、G、Rのレーザビームは、集光レンズ201により偏向器210の反射面213に集光され、反射面213で反射される。反射されたB、G、Rのレーザビームは、コリメートレンズ202により平行化され、光合成部220にて合成され、反射型光変調素子340の画面を照明するために導かれる。その光路上に、本実施形態では光学的インテグレータ230を備えるため、画面の水平方向の照射ビーム強度の均一性を高めることができる。本実施形態は、水平方向には光学的な偏向走査を行わないため、装置が小型である。また、垂直走査には、往復動作が不必要で、走査戻りに要する時間が実質的には無い偏向器を用いるため、駆動制御が容易で、しかも光利用率が高く、画像品位が高い投射型表示装置を提供することが可能である。
【0088】
[実施形態3]
実施形態3について説明するが、実施形態1あるいは実施形態2と共通する事項については、説明を簡略化または省略するものとする。図18は、実施形態3に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0089】
実施形態3は、実施形態2と同様に光学的インテグレータ230を備えているが、さらに拡散板310aと転写照明系320を備えている。本実施形態では、光学的インテグレータ230のターゲット面(図17(c)参照)を、反射型光変調素子の画面ではなく拡散板310aの位置に設定する。そして、第1照明レンズ321と第2照明レンズ322から構成される転写照明系320を用いて、拡散板310aから拡散光として射出する照明光を、反射型光変調素子340の画面に転写して結像させて照明する。
【0090】
本実施形態によれば、実施形態2と同様な効果に加えて、拡散板310aにより、反射型光変調素子340から投射レンズ360に向かう映像光のFナンバーを制御して与えられる利点がある。
【0091】
[実施形態4]
実施形態4について説明するが、実施形態1~実施形態3と共通する事項については、説明を簡略化または省略するものとする。図19は、実施形態4に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0092】
実施形態4は、実施形態3と同じく、光学的インテグレータ230、拡散手段、転写照明系320を備えている。実施形態3では、拡散手段として固定式の拡散板310aを用いたが、本実施形態では、回転型拡散板310bを用いる。回転型拡散板310bとは、モータにより回転される円板状の拡散板である。固定型の拡散板310aの場合には、空間的な位置毎に拡散特性が決まってしまい、レーザ光によるシンチレーション(輝点の瞬き)の発生を抑制することが難しい。これに対して、回転型拡散板310bは、空間的な位置毎に拡散特性が固定することはなく、回転に応じて空間的な位置毎の拡散特性が時間的に変化するため、シンチレーションを抑制する効果をえることができる。尚、空間的な位置毎の拡散特性を時間的に変化させることができればよいので、拡散板は必ずしも回転で動かさなくてはならないわけではなく、例えば直線的な往復運動や揺動運動をするの移動式拡散板でもよい。
【0093】
尚、図19の例では、光学的インテグレータ230はB光とG光の合成光に対して1台、Rに対して1台設けられており、各々の光学的インテグレータ230のターゲット面は回転型拡散板310bの拡散面と一致させている。
以上のように、本実施形態によれば、実施形態3と同様の効果に加えて、レーザ光によるシンチレーション(輝点の瞬き)の発生を抑制できる利点がある。
【0094】
[実施形態5]
実施形態5について説明するが、実施形態1~実施形態4と共通する事項については、説明を簡略化または省略するものとする。図20は、実施形態5に係る投射型表示装置の光学系の概略構成を示す図である。説明の便宜のため、同図では、光学要素を設置するための機械的機構や、筐体、電気的配線などは省略されている。
【0095】
[全体構成]
実施形態1と同様に、本実施形態の投射型表示装置1000は、B光源100B、G光源100G、R光源100R、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210R、光合成部220、光路変換ミラー330、TIRプリズム350、反射型光変調素子340、投射レンズ360を備える。また、各色の光源と各色の偏向器の間には集光レンズ201が配置され、各色の偏向器と光合成部220の間にはコリメートレンズ202が配置されている。また、投射型表示装置1000は、任意的に投映スクリーン190を備えることができる。
【0096】
実施形態1~実施形態4では、B用偏向器210B、G用偏向器210G、R用偏向器210Rとして、円板状の基体211の主面に、円周に沿って帯状の反射面213が設けられた偏向器、すなわち反射型の偏向器を用いた。これに対して、実施形態5は、反射型ではなく、透過型の偏向器を備えている。
【0097】
(偏向器4)
透過型の偏向器210の1つの形態である偏向器4について説明する。図21(a)は、偏向器4の外観を示す斜視図であり、図21(b)は、偏向器4の側面図である。
【0098】
偏向器4は、透光性材料から成る基部である円板状の基体211bと、回転軸AXを中心に基体211bを回転させるモータ212を備えている。円板状の基体211bの主面には、円周に沿って帯状の光学面である入射面213bが設けられている。ここで、入射面の位置を特定するため、図21(a)に示すように、回転軸AXを中心として反時計回りに角度座標を設定する。(図では、0°、90°、180°、270°が示されている)。また、図に示す軸BXは、回転軸AXと平行で入射面213bを通る軸である。ビーム照射位置214として示すのは、光源100から出力された矩形のビームが集光レンズ201(図20)により集光されるビームスポット位置である。
【0099】
帯状の入射面213bは、軸BX(すなわち回転軸AX)に対する角度が位置によって変化するようにねじれている。図22(a)を参照して、入射面の角度について説明する。図22(a)において、入射面の位置として示されているのは、図21(a)で説明した角度座標により規定される位置である。また、入射面の傾斜角として示されるのは、円板状の基体211bの主面(すなわち軸BXと直交する面)を基準とした時の、入射面の傾斜角である。
【0100】
図22(a)に示すように、入射面の位置に対して入射面の傾斜角がリニアに変化するように、入射面213bは構成されている。図21(a)に示すように、入射面の位置が0°(360°)において入射面の傾斜角が不連続になるため、説明の便宜上、図22(a)では入射面の位置が1°と359°の場合の傾斜角を示している。
【0101】
モータにより基体211bがR方向に回転されると、入射面21b3も回転軸AXの回りを回転するため、図21(a)に示したビーム照射位置214にてレーザビームが照射される部位の角度座標は、0°→90°→180°→360°(=0°)→90°・・・のように連続的に変化してゆく。
【0102】
入射面が回転してレーザビームに照射される入射面の部位が変化したとしても、図22(a)に示すように、入射ビームは常に軸BXに対してαの角度で入射面213bに入射する。一方、入射面の位置に応じて入射面の傾斜角は、-θから+θの範囲で変化する。このため、図22(a)に示すように、レーザビームの出射方向は、透光性材料から成る円板状の基体211bへの入射する際の屈折と、基体211bから出射する際の屈折により、軸BXを基準にすると、(α+β)から(α-β)までの2×βの角度範囲内で変化する。
【0103】
ここで、βは、入射面213bの傾斜角θ、透光性材料から成る基体211bの屈折率n、入射角αに依存して決まる。図22(b)に、基体211bの材料がガラスである場合のβの値を表にして示す。
【0104】
本実施形態の偏向器210は、図21(b)に示すように、出射ビームをDF1(軸BXに対して(α-β))からDF2(軸BXに対して(α+β))までの角度範囲内で偏向走査することができる。図21(a)のR方向に入射面213bを連続回転させると、出射ビームは、図21(b)のDF2からDF1に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、DF1に達すると瞬時にDF2に回帰し、再びDF1に向けて偏向(走査)されてゆく。また、もし入射面213bをR方向とは逆に回転させるのであれば、出射ビームは、図21(b)のDF1からDF2に向けて連続的に偏向(走査)されてゆき、DF2に達すると瞬時にDF1に回帰し、再びDF2に向けて偏向(走査)されてゆくことになる。
【0105】
このように、偏向器4によれば、ガルバノミラーなどとは異なり、回転体を一定速度で連続的に回転させるという簡単な駆動方法で、レーザビームを所定方向に等速度で再帰的に偏向走査することができる。反射型光変調素子340の駆動タイミング(あるいは、反射型光変調素子340に入力する画像信号)と同期して回転するようにモータ212を制御することにより、照明光を反射型光変調素子340の画面においてV方向に走査することができる。
【0106】
偏向器4の製造方法について付言すると、円周に沿って帯状の入射面213bが設けられた円板状の基体211bは、例えばプレス押出工法でガラス母材を加工することにより低コストで製造することが可能である。図22(a)に例示したように、入射面213bの近傍には基体211bの主面から突出した部分や凹んだ部分が存在するが、回転バランスを良好にするため、回転軸AXを通る断面で見た時、どの位置の断面であっても断面積が等しい形状にするのが望ましい。
【0107】
以上説明したように、本実施形態では、ガルバノミラーや共振型ミラースキャナーのように往復動作が必要で、1走査毎に走査開始位置に戻るのに要する時間が大きな光学走査手段を用いることなく、定速回転によりリニアに偏向走査することが可能な垂直偏向器を用いてB、G、Rのレーザビームを走査する。B、G、Rのレーザビームは、ビーム断面が矩形であり、矩形の短手方向の方が長手方向よりもダイバージェンスが良好に構成され、偏向器はダイバージェンスが良好な方向に沿って垂直偏向走査する。B、G、Rのレーザビームは、集光レンズ201により偏向器210の入射面213bに集光されて基体211bに入射し、屈折により偏向して透過する。透過したB、G、Rのレーザビームは、コリメートレンズ202により平行化され、光合成部にて合成され、反射型光変調素子340の画面を照明するために導かれる。本実施形態は、水平方向には光学的な偏向走査を行わないため、装置が小型である。また、垂直走査には、往復動作が不必要で、走査戻りに要する時間が実質的には無い偏向器を用いるため、駆動制御が容易で、しかも光利用率が高く、画像品位が高い投射型表示装置を提供することが可能である。
【0108】
[その他の実施形態]
本発明の実施は、上述した実施形態や具体的な実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形や組み合わせの変更が可能である。
例えば、光源や偏向器についてバリエーションを例示したが、投射型表示装置の諸元に適合させるために、これらをもとに更なる変更を加えてもよい。一台の投射型表示装置に、異なる形態の光源や偏向器を組合わせて用いてもよい。
【符号の説明】
【0109】
11・・・半導体レーザ/12・・・発光部/13・・・給電端子/100・・・光源/100B・・・B光源/100G・・・G光源/100R・・・R光源/101・・・発光素子/102・・・コリメートレンズ/107・・・ビームコンバイナ/108・・・ビーム分割手段/190・・・投映スクリーン/201・・・集光レンズ/202・・・コリメートレンズ/210・・・偏向器/210B・・・B用偏向器/210G・・・G用偏向器/210R・・・R用偏向器/211、211b・・・基体/212・・・モータ/213・・・反射面/213b・・・入射面/214・・・ビーム照射位置/220・・・光合成部/221、222・・・ダイクロイックミラー/230・・・光学的インテグレータ/231・・・拡散素子/232・・・シリンドリカルレンズ/310a・・・拡散板/310b・・・回転型拡散板/320・・・転写照明系/321・・・第1照明レンズ/322・・・第2照明レンズ/330・・・光路変換ミラー/340・・・反射型光変調素子/350・・・TIRプリズム/360・・・投射レンズ/1000・・・投射型表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2023-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長のレーザビームを出力する第1半導体レーザと、
第2波長のレーザビームを出力する第2半導体レーザと、
第1偏向素子と、
第2偏向素子と、
前記第1半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第1波長用第1コリメートレンズと、
前記第2半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第2波長用第1コリメートレンズと、
前記第1波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記第1偏向素子の光学面に集光する第1集光レンズと、
前記第2波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記第2偏向素子の光学面に集光する第2集光レンズと、
前記第1偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第1波長用第2コリメートレンズと、
前記第2偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第2波長用第2コリメートレンズと、
前記第1波長用第2コリメートレンズが出力するレーザビームと前記第2波長用第2コリメートレンズが出力するレーザビームが、互いに重ならず偏向方向が同一になるように合成する光合成部と、
前記光合成部が出力する光を、反射型光変調素子に導く光路変換ミラーと、
前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備え、
前記第1偏向素子と前記第2偏向素子の各々は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、
ことを特徴とする投射型表示装置
【請求項2】
前記第1偏向素子または前記第2偏向素子が備える前記光学面は、前記第1集光レンズまたは前記第2集光レンズにより集光された前記レーザビームを反射させる反射面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置
【請求項3】
前記第1偏向素子または前記第2偏向素子が備える前記光学面は、前記第1集光レンズまたは前記第2集光レンズにより集光された前記レーザビームを、透光性の基部に入射させる入射面である、
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置
【請求項4】
前記第1波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームの断面は、前記第1半導体レーザのSlow軸を長手方向とし、Fast軸を短手方向とする略矩形形状であり、前記第1偏向素子は、前記短手方向に沿って前記レーザビームを偏向し、
前記第2波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームの断面は、前記第2半導体レーザのSlow軸を長手方向とし、Fast軸を短手方向とする略矩形形状であり、前記第2偏向素子は、前記短手方向に沿って前記レーザビームを偏向する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投射型表示装置
【請求項5】
前記第1波長用第1コリメートレンズと前記第1集光レンズの間に、前記第1波長用第1コリメートレンズの出力光を前記Slow軸の方向に拡大するビームコンバイナを備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置
【請求項6】
ast軸方向が直線に並ぶように配置された複数の前記第1半導体レーザを備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置
【請求項7】
記複数の前記第1半導体レーザの各々の出力ビームを分割するビーム分割手段を備えている、
ことを特徴とする請求項6に記載の投射型表示装置
【請求項8】
前記第1波長用第2コリメートレンズおよび前記第2波長用第2コリメートレンズが出力するビームのFast軸方向の強度分布には影響を与えないが、Slow軸方向の強度分布を均一化させる光学的インテグレータを備える、
ことを特徴とする請求項に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記光学的インテグレータは、前記Slow軸方向にビームを拡散させるストライプ状の拡散素子と、前記拡散素子で拡散されたビームを前記反射型光変調素子の画面に集光するシリンドリカルレンズと、を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記光学的インテグレータの出力光を拡散させる固定式または移動式の拡散手段と、前記拡散手段から出力される拡散光を前記反射型光変調素子の画面に転写して結像する転写照明系と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項またはに記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記第1偏向素子の回転軸の方向と、前記第2偏向素子の回転軸の方向は、互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の投射型表示装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の第一の態様は、第1波長のレーザビームを出力する第1半導体レーザと、第2波長のレーザビームを出力する第2半導体レーザと、第1偏向素子と、第2偏向素子と、前記第1半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第1波長用第1コリメートレンズと、前記第2半導体レーザが出力するレーザビームをコリメートする第2波長用第1コリメートレンズと、前記第1波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記第1偏向素子の光学面に集光する第1集光レンズと、前記第2波長用第1コリメートレンズが出力するレーザビームを、前記第2偏向素子の光学面に集光する第2集光レンズと、前記第1偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第1波長用第2コリメートレンズと、前記第2偏向素子が出力するレーザビームをコリメートする第2波長用第2コリメートレンズと、前記第1波長用第2コリメートレンズが出力するレーザビームと前記第2波長用第2コリメートレンズが出力するレーザビームが、互いに重ならず偏向方向が同一になるように合成する光合成部と、前記光合成部が出力する光を、反射型光変調素子に導く光路変換ミラーと、前記反射型光変調素子が出力する映像光を投射する投射レンズと、を備え、前記第1偏向素子と前記第2偏向素子の各々は、回転軸を中心に回転可能で、前記回転軸を中心とする円周に沿って形成された光学面を備え、前記光学面は、前記円周に沿って前記回転軸に対する傾斜角が変化するように構成されており、前記傾斜角は、前記光学面を一定速度で連続的に回転させると、前記レーザビームを一定方向に一定の偏向速度で再帰的に偏向するように構成されている、ことを特徴とする投射型表示装置である。