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特開2023-9528世帯属性推定装置および世帯属性推定方法
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009528
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】世帯属性推定装置および世帯属性推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230113BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230113BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112895
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】安井 威人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】世帯属性の推定精度を向上させることができる世帯属性推定装置および世帯構成推定方法を提供する。
【解決手段】推定装置の制御装置10Cは、スマートメータから通信ネットワークを介して各世帯の使用電力量を取得する。制御装置10Cは、属性説明変数作成部41、電力説明変数作成部42、結合処理部43および推定処理部44を有している。属性説明変数作成部41は、各世帯の電気契約に関するデータに基づき属性説明変数を作成する。電力説明変数作成部42は、スマートメータを通じて取得される各世帯の電力データに基づき電力説明変数を作成する。結合処理部は、属性説明変数と電力説明変数とを結合することにより最終的な説明変数を作成する。推定処理部44は、結合処理部により作成される最終的な説明変数に基づき、目的変数として設定される属性である世帯セグメントの複数カテゴリの中から各世帯が属するカテゴリを推定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能を有する電力メータから通信ネットワークを介して各世帯の使用電力量を取得する制御装置を有し、
前記制御装置は、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する第1の作成部と、
少なくとも前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づき第2の説明変数を作成する第2の作成部と、
前記第1の作成部により作成される第1の説明変数と、前記第2の作成部により作成される第2の説明変数とを結合することにより最終的な説明変数を作成する結合処理部と、
前記結合処理部により作成される最終的な説明変数に基づき、目的変数として設定される属性である世帯セグメントの複数カテゴリの中から各世帯が属するカテゴリを推定する推定処理部と、を有している世帯属性推定装置。
【請求項2】
前記第2の作成部は、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器の消費電力を、前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データから除去し、この除去された後の各世帯の電力データを使用して前記第2の説明変数を作成する請求項1に記載の世帯属性推定装置。
【請求項3】
前記特定の機器は、電気給湯器である請求項2に記載の世帯属性推定装置。
【請求項4】
前記第2の作成部は、前記特定の機器の消費電力を除去した各世帯の電力データを使用して、定められた時間帯区分ごと、かつ2区分の平日休日ごと、かつ12区分の月ごとに消費電力の平均を演算することによって複数種類の前記第2の説明変数を作成する請求項2または請求項3に記載の世帯属性推定装置。
【請求項5】
前記第2の作成部は、前記特定の機器の消費電力を除去した各世帯の電力データおよび休日情報に基づき朝夕の人の活動の違いを検出するための追加説明変数を作成し、この作成される追加説明変数を使用して前記第2の説明変数を作成する請求項2~請求項4のうちいずれか一項に記載の世帯属性推定装置。
【請求項6】
前記第1の作成部は、定められたルールに従って作成される正解データと、正解に関連する外部データに基づき作成される追加の説明変数とを結合することにより、前記第1の説明変数を作成する請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載の世帯属性推定装置。
【請求項7】
前記推定処理部は、機械学習を通じて構築される推定モデルを使用して各世帯が属する前記カテゴリを推定する請求項1~請求項6のうちいずれか一項に記載の世帯属性推定装置。
【請求項8】
通信機能を有する電力メータから通信ネットワークを介して各世帯の使用電力量を取得する段階と、
少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する段階と、
少なくとも前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づき第2の説明変数を作成する段階と、
前記第1の説明変数と前記第2の説明変数とを結合することにより最終的な説明変数を作成する段階と、
前記最終的な説明変数に基づき目的変数として設定される属性である世帯セグメントの複数カテゴリの中から各世帯が属するカテゴリを推定する段階と、を有している世帯属性推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、世帯属性推定装置および世帯属性推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、地域における各世帯の電力使用量を有効に活用することが検討されている。たとえば、特許文献1の世帯人数想定装置は、夏期の冷房運転中または冬期の暖房運転中に電力メータにより計測される時間帯別の消費電力量に基づいて、地域内の各世帯の世帯人数を推定する。この推定される各世帯の世帯人数は、たとえば地域に災害が発生した場合における地域内の避難状況を想定するために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-36262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば企業におけるマーケティング活動あるいは営業活動では、世帯構成あるいは世帯人数などの世帯属性を把握することが求められることがある。世帯属性の推定精度をより向上させることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得る世帯属性推定装置は、通信機能を有する電力メータから通信ネットワークを介して各世帯の使用電力量を取得する制御装置を有している。前記制御装置は、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する第1の作成部と、少なくとも前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づき第2の説明変数を作成する第2の作成部と、前記第1の作成部により作成される第1の説明変数と、前記第2の作成部により作成される第2の説明変数とを結合することにより最終的な説明変数を作成する結合処理部と、前記結合処理部により作成される最終的な説明変数に基づき、目的変数として設定される属性である世帯セグメントの複数カテゴリの中から各世帯が属するカテゴリを推定する推定処理部と、を有している。
【0006】
この構成によれば、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づく第1の説明変数と、少なくとも電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づく第2の説明変数とが結合されることによって最終的な説明変数が作成される。この最終的な説明変数を使用して、各世帯が属する世帯セグメントのカテゴリが推定される。各カテゴリは、目的変数として設定される属性である。このため、世帯属性の推定精度を向上させることができる。
【0007】
上記の世帯属性推定装置において、前記第2の作成部は、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器の消費電力を、前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データから除去し、この除去された後の各世帯の電力データを使用して前記第2の説明変数を作成するようにしてもよい。
【0008】
この構成によれば、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器の消費電力が前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データから除去されることにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0009】
上記の世帯属性推定装置において、前記特定の機器は、電気給湯器であってもよい。
この構成によるように、電気給湯器は安価な夜間電力を使用して湯を沸かすことが想定される。このため、電気給湯機の影響で深夜の消費電力が急増するおそれがある。したがって、電気給湯機の深夜における消費電力を、電力メータを通じて取得される各世帯の電力データから除去することが好ましい。このようにすれば、各世帯における人の活動時間帯をより正確に推定することが可能となる。
【0010】
上記の世帯属性推定装置において、前記第2の作成部は、前記特定の機器の消費電力を除去した各世帯の電力データを使用して、定められた時間帯区分ごと、かつ2区分の平日休日ごと、かつ12区分の月ごとに消費電力の平均を演算することによって複数種類の前記第2の説明変数を作成するようにしてもよい。
【0011】
この構成によれば、複数種類の第2の説明変数が最終的な説明変数に加味されることにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
上記の世帯属性推定装置において、前記第2の作成部は、前記特定の機器の消費電力を除去した各世帯の電力データおよび休日情報に基づき朝夕の人の活動の違いを検出するための追加説明変数を作成し、この作成される追加説明変数を使用して前記第2の説明変数を作成するようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、朝夕の人の活動の違いを検出しやすくなる。このため、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
上記の世帯属性推定装置において、前記第1の作成部は、定められたルールに従って作成される正解データと、正解に関連する外部データに基づき作成される追加の説明変数とを結合することにより、前記第1の説明変数を作成するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、正解データと正解に関連する外部データに基づく追加の説明変数とが結合されることにより、第1の説明変数が作成される。この第1の説明変数を使用することにより世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0014】
上記の世帯属性推定装置において、前記推定処理部は、機械学習を通じて構築される推定モデルを使用して各世帯が属する前記カテゴリを推定するようにしてもよい。
この構成によれば、機械学習を通じて構築される推定モデルを使用することにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決し得る世帯属性推定方法は、通信機能を有する電力メータから通信ネットワークを介して各世帯の使用電力量を取得する段階と、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する段階と、少なくとも前記電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づき第2の説明変数を作成する段階と、前記第1の説明変数と前記第2の説明変数とを結合することにより最終的な説明変数を作成する段階と、前記最終的な説明変数に基づき目的変数として設定される属性である世帯セグメントの複数カテゴリの中から各世帯が属するカテゴリを推定する段階と、を有している。
【0016】
この方法によれば、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づく第1の説明変数と、少なくとも電力メータを通じて取得される各世帯の電力データに基づく第2の説明変数とが結合されることによって最終的な説明変数が作成される。この最終的な説明変数を使用して、各世帯が属する世帯セグメントのカテゴリが推定される。各カテゴリは、目的変数として設定される属性である。このため、世帯属性の推定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の世帯属性推定装置および世帯構成推定方法によれば、世帯属性の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】世帯属性推定装置の一実施の形態および電力メータが通信ネットワークに接続されている状態を示すブロック図である。
図2】一実施の形態の世帯属性推定装置と連携するスマートメータの構成を示すブロック図である。
図3】一実施の形態の世帯属性推定装置の構成を示すブロック図である。
図4】一実施の形態の世帯属性推定装置のデータ処理構成を示すブロック図である。
図5】一実施の形態の属性説明変数作成部のデータ処理構成を示すブロック図である。
図6】一実施の形態の電力説明変数作成部のデータ処理構成を示すブロック図である。
図7】世帯における消費電力の経時的変化の一例を示すグラフである。
図8】深夜における電気給湯器の影響を除去した世帯消費電力の経時的変化を示すグラフである。
図9】世帯消費電力の経時的変化の一例を示すグラフである。
図10】世帯消費電力を機器ごとの消費電力に分離した一例を示すグラフである。
図11】夏季の消費電力、ならびに春季および秋季の消費電力の経時的変化の一例を示すグラフである。
図12】気温によらない活動消費電力、および基礎消費電力の経時的変化の一例を示すグラフである。
図13】一実施の形態の世帯属性推定装置によって深夜に電気給湯器の使用が無かったとして推定される世帯消費電力の経時的変化の一例を示すグラフである。
図14】一実施の形態における世帯セグメントの各カテゴリの推定結果の一例を示す一覧表である。
図15】一実施の形態における世帯セグメントの各カテゴリの推定精度の一例を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、世帯属性推定装置および世帯属性推定方法を具体化した一実施の形態を説明する。世帯属性推定装置は、世帯の電力使用量に基づき世帯属性を推定する。世帯属性は、世帯構成および世帯人数を含む概念である。
【0020】
図1に示すように、推定装置10は、インターネットなどの通信ネットワーク20に接続されている。推定装置10は、電力会社などの一般送配電事業者に設けられる。推定装置10は、通信ネットワーク20を介してスマートメータ30との間で相互に通信可能である。スマートメータ30は、電力計測機能および通信機能を併せ持つ電力メータであって、地域の各世帯に設けられる。スマートメータ30は、定められた期間(たとえば30分)ごとの電力使用量を計測するとともに、その計測される電力使用量を示すデータである電力データを、通信ネットワーク20を介して推定装置10へ送信する。電力データには、スマートメータ30の位置情報も含まれている。推定装置10は、通信ネットワーク20を介して取得される各世帯の電力データに基づき、世帯属性を推定する。
【0021】
図2に示すように、スマートメータ30は、計測装置30A、記憶装置30B、通信装置30Cおよび制御装置30Dを有している。これら計測装置30A、記憶装置30B、通信装置30Cおよび制御装置30Dは、信号線であるバス30Eを介して相互に接続されている。
【0022】
計測装置30Aは、定められた期間(たとえば30分)ごとに需要家である世帯の使用電力量を計測する。計測装置30Aは、電力系統の電圧、および電力系統から負荷に供給される電流を検出する。計測装置30Aは、検出される電圧および電流に基づき世帯の電力使用量を計測する。
【0023】
記憶装置30Bは、制御装置30Dからの命令に従って、計測装置30Aによって計測される電力使用量を記憶する。また、記憶装置30Bは、スマートメータ30に固有の識別情報およびスマートメータ30の位置情報を記憶している。この位置情報は、スマートメータ30が設置されている位置を示す情報であって、たとえばスマートメータ30が設置される家屋などの所在地を示す情報である。
【0024】
通信装置30Cは、制御装置30Dと通信ネットワーク20との間のインターフェースである。通信装置30Cは、通信ネットワーク20を介して情報の送信および受信を行う。通信装置30Cは、制御装置30Dからの命令に従って、通信ネットワーク20に接続される外部装置との間で情報を授受する。外部装置には、推定装置10が含まれる。
【0025】
制御装置30Dは、スマートメータ30の全体を統括的に制御する。制御装置30Dは、電力データを生成する。電力データは、計測装置30Aによって計測される電力使用量およびスマートメータ30の位置情報を含む。制御装置30Dは、通信装置30Cを介して電力データを推定装置10へ送信する。
【0026】
図3に示すように、推定装置10は、通信装置10A、記憶装置10B、および制御装置10Cを有している。これら通信装置10A、記憶装置10B、および制御装置10Cは、信号線であるバス10Dを介して相互に接続されている。
【0027】
通信装置10Aは、制御装置10Cと通信ネットワーク20との間のインターフェースである。通信装置10Aは、通信ネットワーク20を介して情報の送信および受信を行う。通信装置10Aは、制御装置10Cからの命令に従って、通信ネットワーク20に接続される外部装置との間で情報を授受する。外部装置には、スマートメータ30が含まれる。
【0028】
記憶装置10Bは、たとえば主記憶部および補助記憶部を有している。主記憶部は、制御装置10Cが実行するコンピュータプログラム、および制御装置10Cが処理するデータなどを記憶する。主記憶部は、RAM(Random Access Memory)および(Read Only Memory)を有している。補助記憶部は、OS(Operating System)を含む各種のプログラムおよび各種のデータを読み書き自在に格納する不揮発性の記憶装置である。補助記憶部は、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)などである。OSは、通信装置10Aを介して接続される外部装置との間のデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。補助記憶装置には、通信装置10Aを介して受信される情報が格納される。この情報には、スマートメータ30から通信ネットワーク20を介して送られてくる電力データが含まれる。
【0029】
制御装置10Cは、記憶装置10Bに記憶されるプログラムに従って各種の処理を実行する。制御装置10Cは、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)などのプロセッサを有している。プロセッサは、記憶装置10Bの作業領域に展開されるコンピュータプログラムの実行を通じて推定装置10の全体を統括的に制御する。制御装置10Cは、スマートメータ30から通信ネットワーク20を介して送られてくる電力データを、通信装置10Aを介して受信し、その受信される電力データをスマートメータ30に固有の識別情報と関連付けた状態で記憶装置10Bに格納する。
【0030】
制御装置10Cは、特定の期間(たとえば月数あるいは時間帯)の使用電力量を含む各種の入力情報を取り込み、この取り込まれる入力情報に基づき世帯属性を推定する。
<制御装置10Cの詳細構成>
つぎに、制御装置10Cについて詳細に説明する。
【0031】
図4に示すように、制御装置10Cは、第1のデータ加工部である属性説明変数作成部41、第2のデータ加工部である電力説明変数作成部42、結合処理部43、および推定処理部44を有している。
【0032】
属性説明変数作成部41は、たとえば電気契約情報、登録情報、およびオープンデータを入力情報として取り込み、これら取り込まれる入力情報に基づき属性説明変数を作成する。
【0033】
電気契約情報のデータ取得対象者は、たとえば家族人数、子供の人数、本人の年齢、長子の年齢を取得できる契約者である。電気契約情報は、たとえば電気契約月数、都道府県、市町村、郵便番号、契約種別コード、支払い方法、0~23ヶ月前の使用電力量などの項目を含む。
【0034】
登録情報は、電力契約以外の個人情報である。登録情報のデータ取得対象者も、たとえば家族人数、子供の人数、本人の年齢、長子の年齢を取得できる契約者である。電力契約以外の個人情報は、たとえば家族人数、子供の人数、本人の年齢、ガスの種別、家屋の広さあるいは間取り、および使用している家電あるいは給湯設備などに関する情報を含む。これらの情報は、たとえばキャンペーンなどにおけるアンケートの実施、あるいは電力契約以外のサービスの提供にあたって登録される情報である。電力契約以外のサービスの提供にあたって登録される情報は、たとえばwebサービス登録情報を含む。webサービス登録情報は、たとえば電力会社が提供する家庭向けwebサービスを利用する際に登録されるデータである。
【0035】
オープンデータは、誰でも自由に再利用できるように、あらかじめ許諾あるいはデータ形式の整備が施されているデータである。オープンデータには、政府あるいは自治体などが公開する資料および調査データが含まれる。オープンデータの一例は、たとえば国勢調査結果である。国勢調査結果は、市区町村別の世帯構成比率として、単身世帯比率、二人世帯比率、子供あり世帯比率、および高齢世帯比率などの項目を含む。オープンデータは、正解に関連する外部データである。
【0036】
電力説明変数作成部42は、たとえばSMデータおよび休日情報を入力情報として取り込み、これら取り込まれる入力情報に基づき電力説明変数を作成する。
SMデータのデータ取得対象者は、SMデータをデータプラットフォームユニットで受領している世帯である。SMデータは、定められた期間(たとえば30分)ごとの電力使用量(消費電力)を含む。
【0037】
休日情報は、外部データである。休日情報は、各日にちが休日か否かを示す休日フラグを含む。
結合処理部43は、属性説明変数作成部41により作成される属性説明変数と、電力説明変数作成部42により作成される電力説明変数とを結合することにより、最終的な説明変数を作成する。
【0038】
推定処理部44は、学習データを使用して機械学習を行うことにより推定モデルを構築する。学習データは、たとえば電力会社が保有するデータである。機械学習のアルゴリズムは、たとえば「XGboost(eXtreme Gradient Boosting)」あるいは「LightGBM」である。「XGboost」および「LightGBM」は、いずれも勾配ブースティングによるアンサンブル学習と弱学習器である決定木とを組み合わせた機械学習の手法である。推定処理部44は、結合処理部43により作成される最終的な説明変数に基づき世帯属性を推定する。
【0039】
世帯属性は、捕捉したい世帯構成あるいはライフスタイルの変化に基づき、たとえば世帯セグメントとして7つのカテゴリ(A1)~(A7)が定義される。7つのカテゴリは、目的変数である。
【0040】
(A1)現役単身…1人世帯かつ契約者年齢が69歳以下
(A2)現役二人…子供のいない二人世帯かつ契約者年齢が69歳以下
(A3)幼児…3人以上世帯かつ長子が5歳以下
(A4)小学生…3人以上世帯かつ長子が6歳以上11歳以下
(A5)中学生以上…3人以上世帯かつ長子が12歳以上20歳以下
(A6)引退単身…1人世帯かつ契約者年齢が70歳以上
(A7)引退二人…二人世帯かつ契約者年齢が70歳以上
推定処理部44は、結合処理部43により作成される最終的な説明変数を推定モデルに入力し、その推定モデルからのアウトプットである出力情報に基づき世帯セグメントのカテゴリを推論する。
【0041】
<属性説明変数作成部の詳細構成>
つぎに、属性説明変数作成部41の詳細な構成を説明する。
図5に示すように、属性説明変数作成部41は、正解データ作成部41A、追加変数作成部41B、および結合処理部41Cを有している。
【0042】
正解データ作成部41Aは、先の登録情報に基づき正解データを作成する。正解データ作成部41Aは、まず正解データ作成ルールに従って正解データを作成する。正解データ作成ルールは、たとえば、つぎの表1に示す通りである。「N/A」は「該当なし(not applicable)」を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
つぎに、正解データ作成部41Aは、推定モデルに入力しないデータが含まれている場合、その推定モデルに入力しないデータを正解データから削除する。これにより、推定モデルに入力される最終的な正解データが作成される。推定モデルに入力しないデータは、製品仕様などに応じて適宜設定される。推定モデルに入力しないデータは、たとえば家族人数、子供人数、および長子年齢である。
【0045】
追加変数作成部41Bは、電気契約情報および先のオープンデータに基づき追加変数を作成する。オープンデータは、外部データである。これは、様々なカテゴリに、正解と関連が深い数値を付与することで、推定モデルが説明変数から正解の値を捉えやすくすることを意図している。追加変数は、たとえば、つぎの変数(B1)~(B5)である。
【0046】
(B1)都道府県市区町村×契約期間5年区切り単身比率
(B2)都道府県市区町村×契約期間5年区切り二人比率
(B3)都道府県市区町村×契約期間5年区切り小さい子比率
(B4)都道府県市区町村×契約期間5年区切り大きい子比率
(B5)都道府県市区町村×契約期間5年区切り高齢比率
結合処理部41Cは、正解データ作成部41Aにより作成される正解データと、追加変数作成部41Bにより作成される追加変数とを結合することにより、最終的な属性説明変数である加工済みの属性説明変数を作成する。
【0047】
<電力説明変数作成部の詳細構成>
つぎに、電力説明変数作成部42の詳細な構成を説明する。
電力説明変数作成部42は、ディスアグリゲーション技術を使用してスマートメータ30を通じて取得されるデータ(以下、「SMデータ」という。)から夜間給湯器の影響を除去する。電力説明変数作成部42は、夜間給湯器の影響が除去されたSMデータから説明変数を作成する。SMデータには、各世帯の電力使用量を示す電力データが含まれる。
【0048】
図6に示すように、電力説明変数作成部42は、ディスアグリゲーション部42A、集約説明変数作成部42B、および追加説明変数作成部42Cを有している。
ディスアグリゲーション部42Aは、ディスアグリゲーション技術を利用してSMデータから電気給湯器の影響を除去する。ディスアグリゲーション技術とは、SMデータに基づき世帯における各機器の電力消費量を推定する技術をいう。
【0049】
SMデータから夜間給湯器の影響を除去する理由は、つぎの通りである。
図7のグラフに矢印C1で示すように、たとえば電気給湯機の影響で深夜の消費電力が急増することがある。これに起因して人の活動時間帯を誤認するおそれがある。このため、SMデータから電気給湯器の影響を除去する必要がある。電気給湯器は、たとえば自然冷媒ヒートポンプ給湯機である。自然冷媒ヒートポンプ給湯機とは、ヒートポンプ技術を利用して空気の熱で湯を沸かすことができる電気給湯機のうち、冷媒として二酸化炭素を使用している給湯器をいう。この電気給湯器は、電気料金がより安くなる夜間電力を使用して夜間のうちに湯を沸かす。湯はタンクに貯められる。
【0050】
図8のグラフに示すように、SMデータから破線で示される電気給湯器の影響C2を除去することにより、人が活動していない時間帯の消費電力を抑えられる。これにより、各世帯における人の活動時間帯をより正確に推定することが可能となる。
【0051】
図9のグラフに示すように、ディスアグリゲーション部42Aは、SMデータに基づき世帯における1日(0時~24時)の消費電力波形C3を取得する。
この後、図10のグラフに示すように、ディスアグリゲーション部42Aは、世帯全体の消費電力波形C3を、たとえば4つの消費電力波形C4~C7に分離する。これら消費電力波形C4~C7は、世帯における機器ごとの消費電力の波形である。
【0052】
(C4)気温による活動消費電力の波形
(C5)気温によらない活動消費電力の波形
(C6)基礎消費電力ΔP3の波形
(C7)深夜の電気給湯器による消費電力の波形
消費電力波形C4は、気温による活動消費電力の波形である。消費電力波形C4は、たとえばエアーコンディショナなどの冷暖房機器による消費電力の波形である。気温による活動消費電力の分離方法は、つぎの通りである。
【0053】
図11のグラフに示すように、気温による活動消費電力ΔP1は、夏季における1日(0時~24時)の消費電力P1と、春季および秋季の平均消費電力P2との差である。ディスアグリゲーション部42Aは、次式(1)を使用して気温による活動消費電力ΔP1を演算する。
【0054】
ΔP1=P1-P2 …(1)
消費電力波形C5は、気温によらない活動消費電力の波形である。消費電力波形C5は、たとえば調理、食事、テレビおよび照明などの人の活動による消費電力の波形である。気温によらない活動消費電力の分離方法は、つぎの通りである。
【0055】
図12のグラフに示すように、気温によらない活動消費電力ΔP2は、7時~24時の期間における世帯の消費電力から気温による活動消費電力ΔP1を減算し、その減算した値からさらに基礎消費電力ΔP3を減算した値である。図12のグラフの実線で示される波形は、7時~24時の期間における世帯全体の消費電力から気温による活動消費電力ΔP1を減算して得られる消費電力P3の波形である。7時~24時の期間は、人の活動が少ない深夜の時間帯の消費電力を考慮しない観点に基づき設定される期間である。
【0056】
ディスアグリゲーション部42Aは、次式(2)を使用して気温によらない活動消費電力ΔP2を演算する。
ΔP2=P3-ΔP3=(P5-ΔP1)-ΔP3 …(2)
ただし、「P3」は、7時~24時の期間における世帯全体の消費電力から気温による活動消費電力ΔP1を減算して得られる消費電力である。「ΔP3」は基礎消費電力である。「P5」は、7時~24時の期間における世帯全体の消費電力である。「ΔP1」は、気温による活動消費電力である。
【0057】
消費電力波形C6は、基礎消費電力ΔP3の波形である。基礎消費電力ΔP3とは、冷蔵庫の待機電力など、世帯において最低限消費される電力をいう。基礎消費電力ΔP3は、たとえば1日における気温に依らない活動消費電力ΔP2の下位から設定割合の値に設定される。設定割合は、百分率で表される値であって、たとえば10%である。ディスアグリゲーション部42Aは、たとえば1日における気温に依らない活動消費電力ΔP2の下位10%の値を基礎消費電力ΔP3として演算する。
【0058】
消費電力波形C7は、たとえば人の活動時間外である深夜の電気給湯器による消費電力の波形である。深夜の電気給湯器による消費電力は、世帯における1日の消費電力から気温による活動消費電力ΔP1、気温によらない活動消費電力ΔP2および基礎消費電力ΔP3を減算した値である。ディスアグリゲーション部42Aは、次式(3)を使用して深夜の電気給湯器による消費電力ΔP4を演算する。
【0059】
Δp4=P6-(ΔP1+ΔP2+ΔP3) …(3)
ただし、「P6」は、世帯における1日の消費電力である。
ディスアグリゲーション部42Aは、世帯における機器ごとの消費電力波形のうち不要とされる機器以外の消費電力波形を足し合わせて利用したい部分を取り出す。ここで不要とされる機器の消費電力波形は、電気給湯器の消費電力波形C7である。ディスアグリゲーション部42Aは、消費電力波形C4(気温による活動消費電力の波形)、消費電力波形C5(気温によらない活動消費電力の波形)、および消費電力波形C6(基礎消費電力ΔP3の波形)を足し合わせることにより、電気給湯器の影響を除去済みのSMデータを作成する。
【0060】
図13のグラフに示すように、ディスアグリゲーション部42Aは、前日の24時までの期間T1における気温によらない活動消費電力ΔP2、および当日の7時以降の期間T2における気温によらない活動消費電力ΔP2は既知であるとして、24時から7時までの期間T3に電気給湯器の使用が無かったとした場合の消費電力を推計する。
【0061】
ここで、24時付近および7時付近の時間帯は人が活動している可能性があるものの、深夜(たとえば2時~4時)の時間帯は人が活動している可能性が極めて低い。この観点に基づき、ディスアグリゲーション部42Aは、電気給湯器の使用が無かったとした場合の消費電力を推計する。
【0062】
図13のグラフに破線で示されるように、ディスアグリゲーション部42Aは、24時以降の消費電力の値が深夜の時間帯に滑らかに「0」へ近づくように、電気給湯器の使用が無かったとした場合の消費電力P7を推計する。ディスアグリゲーション部42Aは、たとえばガウス過程(Gaussian process)を使用して消費電力P7を推計する。ガウス過程は、連続時間確率過程の一種である。
【0063】
集約説明変数作成部42Bは、深夜の電気給湯器による消費電力ΔP4を除去したSMデータから消費電力を網羅的に集計して電力説明変数を作成する。ここで、時間帯あるいは季節ごとの消費電力は世帯構成との関連が深いと考えられる。この観点に基づき、集約説明変数作成部42Bは電力説明変数を作成する。
【0064】
集約説明変数作成部42Bは、深夜の電気給湯器による消費電力ΔP4を除去した365日分のSMデータに基づき、たとえば、つぎの区分(D1)~(D3)ごとに消費電力の平均値を算出する。集約説明変数作成部42Bは、「時間帯×平日休日×月」別に消費電力の平均を演算することによって、「24×2×12」種類の電力説明変数を作成する。
【0065】
(D1)24区分の時間帯…0時台~23時台
(D2)2区分の平日休日…平日または休日
(D3)12区分の月…1月~12月
追加説明変数作成部42Cは、深夜の電気給湯器による消費電力ΔP4を除去したSMデータおよび休日情報に基づき、朝夕の活動に注目した追加説明変数を作成する。これは、世帯によって朝夕の活動による消費電力に差がつきやすいことに基づく。この追加説明変数は、朝夕の活動の違いを検出するための説明変数である。追加説明変数は、たとえば、つぎの変数(E1)~(E16)である。
【0066】
(E1)年間消費電力
(E2)推定外出時間一日標準偏差平均
(E3)推定帰宅時間一日標準偏差平均
(E4)推定外出時間年間標準偏差
(E5)推定帰宅時間年間標準偏差
(E6)午前消費電力
(E7)午後消費電力
(E8)午前フラグ
(E9)午後在宅フラグ
(E10)午前午後の消費電力から判定した労働スタイル種別
(E11)午後19時~20時の消費電力平均
(E12)午後20時~22時の消費電力平均
(E13)上記二つの変数E11,E12の比率
(E14)夕方のピーク時刻平均
(E15)夕方のピーク時刻標準偏差
(E16)0時~23時の消費電力標準偏差
追加説明変数作成部42Cにより作成される追加説明変数は、集約説明変数作成部42Bにより作成される電力説明変数と結合される。これにより、最終的な電力説明変数が作成される。
【0067】
<推定処理部44による推定結果の一例>
つぎに、推定処理部44による世帯属性の推定結果の一例を説明する。
推定処理部44は、結合処理部43により作成される最終的な説明変数を推定モデルに入力し、その推定モデルからのアウトプットである出力情報に基づき世帯セグメントのカテゴリを推論する。推定モデルからの出力情報は、各世帯が世帯セグメントの各カテゴリに該当する確率である。推定処理部44は、最も確率が高いカテゴリを各世帯の属性としてのカテゴリとして推定する。
【0068】
図14に示すように、世帯ID_1は、単身世帯である確率が25%で最も確率が高い。このため、推定処理部44は、世帯ID_1を単身世帯(カテゴリA1)であると推定する。世帯ID_2は、高齢者世帯である確率が45%で最も確率が高い。このため、推定処理部44は、世帯ID_2を高齢者世帯であると推定する。なお、高齢者世帯は、先のカテゴリA6(引退単身)、およびカテゴリA7(引退二人)を1つのカテゴリにまとめたものである。
【0069】
世帯ID_3は、二人世帯である確率が43%で最も確率が高い。このため、推定処理部44は、世帯ID_3を二人世帯であると推定する。世帯ID_4は、中学生以上の子供がいる世帯である確率が55%で最も確率が高い。このため、推定処理部44は、世帯ID_4を中学生以上の子供がいる世帯であると推定する。世帯ID_5は、幼児がいる世帯である確率が29%で最も確率が高い。このため、推定処理部44は、世帯ID_5を幼児がいる世帯であると推定する。
【0070】
このように、推定処理部44は、該当確率が最も高いカテゴリを各世帯のカテゴリとして推定する。
<推定処理部44の推定精度>
推定処理部44による世帯属性、すなわちカテゴリの推定精度は、たとえば再現率、適合率あるいは正解率で表される。再現率とは、各カテゴリに該当する世帯のうち、その該当するカテゴリに属する世帯である旨判定された世帯割合をいう。適合率とは、母集団から選んだ世帯のうちの各カテゴリに属する世帯割合をいう。正解率とは、推定対象の全世帯数に対する推定結果が正解であった世帯割合をいう。
【0071】
推定処理部44によるカテゴリの推定精度の一例は、つぎの通りである。
ここでは、図15に示すように、たとえば23114世帯のSMデータを使用してカテゴリを推定する場合について検討する。
【0072】
図14に示すように、カテゴリA1(単身)の再現率は78%、カテゴリA2(二人)の再現率は73%、カテゴリA3(幼児)の再現率は76%、カテゴリA4(小学生)の再現率は44%である。カテゴリA5(中学生以上)の再現率は71%、カテゴリA6(引退単身)の再現率は40%、カテゴリA7(引退二人)の再現率は94%である。
【0073】
カテゴリA1(単身)の適合率は81%、カテゴリA2(二人)の適合率は74%、カテゴリA3(幼児)の適合率は65%、カテゴリA4(小学生)の適合率は55%である。カテゴリA5(中学生以上)の適合率は68%、カテゴリA6(引退単身)の適合率は66%、カテゴリA7(引退二人)の適合率は81%である。
【0074】
トータルの正解率は70・9%である。
なお、本実施の形態において、属性説明変数作成部41は、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する第1の作成部に相当する。属性説明変数は、第1の説明変数に相当する。また、電力説明変数作成部42は、少なくともスマートメータ30を通じて取得される各世帯の電力データに基づき第2の説明変数を作成する第2の作成部に相当する。電力説明変数は、第2の説明変数に相当する。また、電気給湯器は、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器に相当する。
【0075】
<本実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1-1)推定装置10の制御装置10Cは、属性説明変数作成部41、電力説明変数作成部42および結合処理部43を有している。属性説明変数作成部41は、少なくとも各世帯の電気契約に関するデータに基づき第1の説明変数を作成する。電力説明変数作成部42は、少なくともスマートメータ30を通じて取得される各世帯の電力データに基づき電力説明変数を作成する。結合処理部43は、属性説明変数と電力説明変数とを結合することによって最終的な説明変数を作成する。この最終的な説明変数を使用して、各世帯が属する世帯セグメントのカテゴリが推定される。各カテゴリは、目的変数として設定される属性である。このため、世帯属性の推定精度を向上させることができる。
【0076】
(1-2)電力説明変数作成部42は、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器としての電気給湯器の消費電力を、スマートメータ30を通じて取得される各世帯の電力データから除去する。電力説明変数作成部42は、深夜における電気給湯器の消費電力が除去された後の各世帯の電力データを使用して電力説明変数を作成する。これにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。また、各世帯における人の活動時間帯をより正確に推定することが可能となる。
【0077】
(1-3)電力説明変数作成部42は、特定の機器の消費電力を除去した各世帯の電力データを使用して24区分の時間帯ごと、かつ2区分の平日休日ごと、かつ12区分の月ごとに消費電力の平均を演算することによって複数種類の電力説明変数を作成する。複数種類の電力説明変数が最終的な説明変数に加味されることにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0078】
(1-4)電力説明変数作成部42は、電気給湯器の消費電力を除去した各世帯の電力データおよび休日情報に基づき朝夕の人の活動の違いを検出するための追加説明変数を作成し、この作成される追加説明変数を使用して電力説明変数を作成する。これにより、朝夕の人の活動の違いを検出しやすくなる。したがって、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0079】
(1-5)属性説明変数作成部41は、定められたルールに従って作成される正解データと、正解に関連する外部データに基づき作成される追加の説明変数とを結合することにより、属性説明変数を作成する。このように、正解データと正解に関連する外部データに基づく追加の説明変数とが結合されること生成された属性説明変数を使用することにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0080】
(1-6)推定処理部44は、機械学習を通じて構築される推定モデルを使用して各世帯が属するカテゴリを推定する。機械学習を通じて構築される推定モデルを使用することにより、世帯属性の推定精度をより向上させることができる。
【0081】
(1-7)高齢者世帯を「引退単身」世帯と「引退二人」世帯とに分けることによって、たとえば死別による「老人二人」世帯から「独居老人」世帯への変化を捕捉することが可能である。
【0082】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・世帯セグメントのカテゴリ数は、仕様などに応じて適宜変更してもよい。カテゴリ数は、たとえば2つまたは3つであってもよい。また、カテゴリ数は8つ以上であってもよい。
【0083】
・推定処理部44は、機械学習を通じて構築される推定モデルを使用して、世帯セグメントのカテゴリ(A1~A7)に加えて、あるいは各カテゴリに代えて、世帯属性の1つである世帯人数を推定するようにしてもよい。
【0084】
・属性説明変数作成部41は、定められたルールに従って作成される正解データと、正解に関連する外部データに基づき作成される追加の説明変数とを結合する処理を行わなくてもよい。属性説明変数作成部41は、たとえば正解データのみを使用して属性説明変数を作成してもよい。
【0085】
・電力説明変数作成部42は、電気給湯器の消費電力を除去した各世帯の電力データおよび休日情報に基づき朝夕の人の活動の違いを検出するための追加説明変数を作成する処理を行わなくてもよい。
【0086】
・電力説明変数作成部42は、各世帯の電力データを使用して24区分の時間帯ごと、かつ2区分の平日休日ごと、かつ12区分の月ごとに消費電力の平均を演算するようにしたが、消費電力の平均を演算する時間帯区分は24区分に限られない。消費電力の平均を演算する時間帯区分は24区分よりも多くてもよいし少なくてもよい。たとえばスマートメータ30が30分ごとの電力使用量を計測することができる場合、電力説明変数作成部42は、48区分の時間帯ごとに消費電力の平均を演算するようにしてもよい。また、電力説明変数作成部42は、12区分の時間帯ごとに消費電力の平均を演算するようにしてもよい。電力説明変数作成部42は、仕様などに基づき定められた時間帯区分ごとに消費電力の平均を演算する。
【0087】
・電力説明変数作成部42は、電気給湯器の消費電力を除去した各世帯の電力データを使用して24区分の時間帯、かつ2区分の平日休日、かつ12区分の月別に消費電力の平均を演算する処理を行わなくてもよい。
【0088】
・電力説明変数作成部42は、電気給湯器の他にも、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる特定の機器がある場合、その機器の消費電力を、スマートメータ30を通じて取得される各世帯の電力データから除去するようにしてもよい。
【0089】
・電力説明変数作成部42は、人の活動時間外とされる深夜の消費電力が急増する一因となる電気給湯器の消費電力を、スマートメータ30を通じて取得される各世帯の電力データから除去する処理を行わなくてもよい。
【符号の説明】
【0090】
10…推定装置(世帯属性推定装置)
20…通信ネットワーク
30…スマートメータ(電力メータ)
10C…制御装置
41…属性説明変数作成部(第1の作成部)
42…電力説明変数作成部(第2の作成部)
43…結合処理部
44…推定処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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