(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095305
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】シートベルトバックル装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/22 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B60R22/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211115
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前原 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 正浩
(72)【発明者】
【氏名】家吉 晃一
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018BA12
3D018CA03
3D018CB06
(57)【要約】
【課題】汎用性の高いバックル保持構造を有するシートベルトバックル装置を提供する。
【解決手段】シートベルトバックル装置101は、シートベルト6に設けられたタング7が連結されるバックル10と、バックル10を被覆するカバー部材20と、車体フロアに固定されるアンカー部材30と、バックル10をアンカー部材30に繋ぎ止める撓み変形可能なウェビング40と、を備え、バックル10は、車両シートに設けられた挿入穴に挿入されたときにカバー部材20が挿入穴から受ける面圧によって保持されるように構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートに設けられるシートベルトバックル装置であって、
シートベルトに設けられたタングが連結されるバックルと、
上記バックルを被覆するカバー部材と、
車体フロアに固定されるアンカー部材と、
上記バックルを上記アンカー部材に繋ぎ止める撓み変形可能なウェビングと、
を備え、
上記車両シートには、上記バックルが上記カバー部材による被覆状態で挿入される挿入穴が設けられており、
上記バックルは、上記挿入穴に挿入されたときに上記カバー部材が上記挿入穴から受ける面圧によって保持されるように構成されている、シートベルトバックル装置。
【請求項2】
上記カバー部材は、上記バックルを被覆する第1被覆部と、上記第1被覆部から上記ウェビングを収容するように上記アンカー部材に向けて延びる筒状の第2被覆部と、を有し、上記第2被覆部には、上記ウェビングとの縫合のための縫合部が設けられている、請求項1に記載のシートベルトバックル装置。
【請求項3】
上記カバー部材の上記第1被覆部は、上記バックルを第1バックルとしたとき、上記第1バックルと上記第1バックルとは別の第2バックルとの両方を被覆するように構成されている、請求項2に記載のシートベルトバックル装置。
【請求項4】
上記カバー部材の上記第1被覆部は、上記車両シート側に設けられた支持部によって支持される被支持部を有する、請求項2または3に記載のシートベルトバックル装置。
【請求項5】
上記カバー部材は、上記第1被覆部と上記挿入穴との間の隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載のシートベルトバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルトバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1の開示のシートベルトバックル装置は、後部座席の乗員が使用するシートベルトのためのものである。このシートベルトバックル装置は、シートベルトに取り付けられたタングが連結されるバックルと、車体フロアに固定されるアンカー部材と、バックルとアンカー部材を連結するウェビング部材と、アンカー部材とウェビング部材を覆うように上下方向に延びる筒状のカバーと、を備えている。カバーは、その下端部が車体フロアに取り付けられるように構成されている。このカバーの下端部を車体フロアに当てることによって、バックルはカバーを介して自立した状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記シートベルトバックル装置は、カバーの下端部を車体フロアに取り付けることによってバックルを保持するバックル保持構造を有する。このため、他車への転用の際に車両シートの種類や車体フロアの形状などの違いに応じてカバーの形状を変更する必要がある。その結果、シートベルトバックル装置に要する投資コストが高くなるという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、汎用性の高いバックル保持構造を有するシートベルトバックル装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両シートに設けられるシートベルトバックル装置であって、
シートベルトに設けられたタングが連結されるバックルと、
上記バックルを被覆するカバー部材と、
車体フロアに固定されるアンカー部材と、
上記バックルを上記アンカー部材に繋ぎ止める撓み変形可能なウェビングと、
を備え、
上記車両シートには、上記バックルが上記カバー部材による被覆状態で挿入される挿入穴が設けられており、
上記バックルは、上記挿入穴に挿入されたときに上記カバー部材が上記挿入穴から受ける面圧によって保持されるように構成されている、シートベルトバックル装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様のシートベルトバックル装置によれば、タングが連結されるバックルは、カバー部材による被覆状態で車両シートの挿入穴に挿入されたとき、カバー部材が挿入穴から受ける面圧によって保持される。このとき、車両シートの挿入穴による面圧がカバー部材を介してバックルに作用する。また、バックルは、撓み変形可能なウェビングによってアンカー部材に繋ぎ止められる。
【0008】
このシートベルトバックル装置では、車両シートの挿入穴にバックルの保持機能を持たせることによって、カバー部材にバックルの保持機能を持たせる必要がない。これにより、バックルを車両シートの挿入穴に嵌め込んで宙吊りしたような状態で自立させることができる。
【0009】
このようなバックル保持構造を採用すれば、他車への転用の際に車両シートの種類や車体フロアの形状などの違いがある場合でも、ウェビングの長さや形状を変更するのみで対応が可能であり、カバー部材の形状を変更する必要がない。すなわち、シートベルトバックル装置を他車に転用するときに、変更部品がウェビングのみで済み、その他の部品を共通で使用することができる。このため、汎用性の高いバックル保持構造を実現することができ、これによりシートベルトバックル装置に要する投資コストを低く抑えることが可能になる。
【0010】
したがって、上述の態様によれば、汎用性の高いバックル保持構造を有するシートベルトバックル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1にかかる車体シートのシートクッション部を前斜め上方からみた斜視図。
【
図3】実施形態1のシートベルトバックル装置を車両上方からみた平面図。
【
図4】実施形態1のシートベルトバックル装置を斜め方向からみた斜視図。
【
図7】
図6においてシートベルトバックル装置によるホルダの保持状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0013】
上述の態様のシートベルトバックル装置において、上記カバー部材は、上記バックルを被覆する第1被覆部と、上記第1被覆部から上記ウェビングを収容するように上記アンカー部材に向けて延びる筒状の第2被覆部と、を有し、上記第2被覆部には、上記ウェビングとの縫合のための縫合部が設けられているのが好ましい。
【0014】
このシートベルトバックル装置によれば、カバー部材のうちバックルを被覆する第1被覆部からアンカー部材に向けて延びる筒状の第2被覆部は、とともに縫合部においてウェビングに縫合される。このとき、第2被覆部とウェビングを互いに縫合することで、可撓性を有するウェビングに生じ得る撓みや弛みを抑えることができる。
【0015】
上述の態様のシートベルトバックル装置において、上記カバー部材の上記第1被覆部は、上記バックルを第1バックルとしたとき、上記第1バックルと上記第1バックルとは別の第2バックルとの両方を被覆するように構成されているのが好ましい。
【0016】
このシートベルトバックル装置によれば、カバー部材の1つの第1被覆部を2つのバックルに兼用してこれら2つのバックルを一度に被覆することが可能になる。これにより、シートベルトバックル装置を構成する部品点数を少なく抑えることができる。
【0017】
上述の態様のシートベルトバックル装置において、上記カバー部材の上記第1被覆部は、上記車両シート側に設けられた支持部によって支持される被支持部を有するのが好ましい。
【0018】
このシートベルトバックル装置によれば、カバー部材に下向きの外部荷重が作用したとき、第1被覆部の被支持部が車両シートの支持部によって下方から支持されることで、バックルが挿入穴を下方へ移動するのを防ぐことができる。
【0019】
上述の態様のシートベルトバックル装置において、上記カバー部材は、上記第1被覆部と上記挿入穴との間の隙間を塞ぐ隙間塞ぎ部を有するのが好ましい。
【0020】
このシートベルトバックル装置によれば、挿入穴まわりの余分な隙間を隙間塞ぎ部によって無くすことができ、カバー部材の周辺の外観上の見栄えを向上させることができる。
【0021】
以下、本実施形態のシートベルトバックル装置の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
このシートベルトバックル装置の説明のための図面において、特に断りのない限り、前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示し、右方を矢印RHで示し、左方を矢印LHで示している。
【0023】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1にかかる車両シート1は、車両後部に設けられるシートであり、3人掛け用のシートクッション部2及びシートバック部3を有する。シートクッション部2とシートバック部3はいずれも、外部荷重に対して弾性変形可能なクッション材を使用して構成されている。この車両シート1は、所謂「ベンチシート」とも称される。
【0024】
車両シート1には、車両シート1の右側領域の乗員用のシートベルト6と、車両シート1の中央領域の乗員用のシートベルト8と、車両シート1の左側領域の乗員用のシートベルト(図示省略)と、が設けられている。これらのシートベルトはともに、合成繊維からなる帯状のベルト部材であり、容易に撓み変形する可撓性を有する。シートベルト6にプレート状のタング7が設けられ、シートベルト8にプレート状のタング9が設けられている。
【0025】
実施形態1のシートベルトバックル装置101は、車両シート1に設けられるものである。このとき、車両シート1の種類は、
図1に例示されるようなベンチシートに限定されるものではなく、別の種類の車両シートにシートベルトバックル装置101を設けるようにしてもよい。
【0026】
シートベルトバックル装置101は、タング7が連結されるバックル10を備えている。バックル10には、タング7との連結の際にこのタング7を挿入するための挿入口11と、連結解除の際に乗員によって手動操作される操作ボタン12と、が設けられている。
【0027】
シートベルトバックル装置101は、バックル10に加えて、このバックル10を被覆するカバー部材20を備えている。このカバー部材20の材質は特に限定されないが、車両シート1との接触や成形性などを考慮した場合、ゴム材料や樹脂材料を採用するのが好ましい。このカバー部材20は、第1被覆部21と、後述の第2被覆部27と、を有する。
【0028】
カバー部材20の第1被覆部21は、第1バックルであるバックル10と、このバックル10とは別の第2バックルであるバックル50と、の両方を被覆するように構成されている。本構成によれば、カバー部材20の1つの第1被覆部を2つのバックル10,50に兼用してこれら2つのバックル10,50を一度に被覆することが可能になる。これにより、シートベルトバックル装置101を構成する部品点数を少なく抑えることができる。
【0029】
バックル50には、タング9との連結の際にこのタング9を挿入するための挿入口51が設けられている。この挿入口51は、車幅方向に延びる長穴として形成されている。これに対して、バックル10の挿入口11は、車長方向に延びる長穴、すなわち挿入口51と概ね直交するように延びる長穴として形成されている。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、車両シート1には、バックル10,50がカバー部材20による被覆状態で挿入される挿入穴4が設けられている。本実施形態において、車両シート1の挿入穴4は、シートクッション部2を車高方向に貫通する貫通穴と、シートバック部3の一部の前面と、によって形成されている。
【0031】
バックル10,50は、車両シート1の挿入穴4に挿入されたときにカバー部材20の第1被覆部21がこの挿入穴4から受ける面圧によって保持されるように構成されている。すなわち、カバー部材20の第1被覆部21は、挿入穴4への挿入状態でこの挿入穴4の内壁面と面接触するように寸法設定されている。このとき、車両シート1を構成するクッション材の弾性によって、挿入穴4に挿入された状態のバックル10,50にカバー部材20の第1被覆部21を介して圧縮荷重を付与される。
【0032】
なお、車両シート1の挿入穴4は、2つのバックル10,50の相対的な配置関係を考慮して、その開口面積を小さく抑えるように構成されるのが好ましい。また、シートクッション部2とシートバック部3の両方を利用して挿入穴4を形成する以外に、シートクッション部2を車高方向に貫通する貫通穴のみによって挿入穴4を形成するようにしてもよい。
【0033】
図2に示されるように、バックル50をバックル10よりも車両後方においてバックル10と直交する向きに配置したとき、バックル10の車幅方向の寸法がバックル50の車幅方向の寸法を下回る。そこで、車両シート1の挿入穴4を車両上方から見たときの平面視で、この挿入穴4の形状として、車両前側の前辺の長さが車両後側の後辺の長さよりも短くなるような略台形を採用することによって、挿入穴4の開口面積を小さく抑えることができる。これにより、車両シート1の挿入穴4を目立ちにくくすることができる。
【0034】
図2及び
図3に示されるように、カバー部材20の第1被覆部21は、緩衝部25及び隙間塞ぎ部26を有する。緩衝部25は、クッション性を有する柔らかい材料からなる。これにより、緩衝部25は、車両シート1とバックル50との間に介在することによってバックル50を保護する機能を果たす。隙間塞ぎ部26は、第1被覆部21と挿入穴4との間に形成される隙間4aを塞ぐ機能を果たす。これにより、挿入穴4まわりの余分な隙間4aを隙間塞ぎ部26によって無くすことができ、カバー部材20の周辺の外観上の見栄えを向上させることができる。
【0035】
なお、カバー部材20の第1被覆部21においては、必要に応じて、緩衝部25と隙間塞ぎ部26の少なくとも一方を省略するようにしてもよい。
【0036】
図4及び
図5に示されるように、シートベルトバックル装置101は、アンカー部材30,31と、アンカーボルト32と、ウェビング40,41と、を備えている。
【0037】
アンカー部材30,31はいずれも、固定部材である共通の1つのアンカーボルト32を介して車体フロア5に締結固定される。ウェビング40は、バックル10をアンカー部材30に繋ぎ止める撓み変形可能な繋留体である。同様に、ウェビング41は、バックル50をアンカー部材31に繋ぎ止める撓み変形可能な繋留体である。これらウェビング40,41は、シートベルト6,8と同様の帯状のベルト部材からなる。
【0038】
ウェビング40は、その一端部がバックル10の被連結部13に連結され、その他端部がアンカー部材30の被連結部30aに連結されている。同様に、ウェビング41は、その一端部がバックル50の被連結部(図示省略)に連結され、その他端部がアンカー部材31の被連結部31a(
図5を参照)に連結されている。
【0039】
図4に示されるように、カバー部材20の第1被覆部21は、互いに平行に設けられた上部プレート22及び下部プレート23と、上部プレート22と下部プレート23の間に互いに隙間を隔てて介装された複数のリブプレート24(
図2及び
図3も参照)と、を有する。
【0040】
上部プレート22及び下部プレート23は、挿入穴4に対するカバー部材20の挿入方向を板厚方向とするように構成されている。このため、上部プレート22及び下部プレート23は、挿入穴4から抜け出そうとする第1被覆部21に対してその動きを規制する摺動抵抗力を付与する形状とされている。したがって、第1被覆部21が挿入穴4に挿入されて保持された状態でカバー部材20に下向きの外部荷重が作用したとき、第1被覆部21が挿入穴4から抜け出すのを抑制することができる。
【0041】
それに加えて、下部プレート23は、車両シート1側に設けられた支持部1a(
図3を参照)によって下方から支持される被支持部として構成されている。これにより、カバー部材20に下向きの外部荷重が作用したとき、第1被覆部21の下部プレート23が車両シート1側の支持部1aによって下方から支持されることで、バックル10が挿入穴4を下方へ移動するのを防ぐことができる。
【0042】
なお、支持部1aは、車両シート1側に設けられている部材であれば、その形状及び配置は特に限定されない。この部材は、車両シート1自体を構成するものであってもよいし、或いは、車両シート1に一体状に取り付けられるものであってもよい。例えば、車両シート1のシートクッション部2の下方に一体状に配置されるシート台座を支持部1aとして採用することができる。
【0043】
複数のリブプレート24は、上部プレート22と下部プレート23の間に介在するように立設することで、第1被覆部21自体の剛性を高める機能を果たす。すなわち、第1被覆部21において上部プレート22と下部プレート23が互いに近接する方向の変形については、複数のリブプレート24によってこの変形を抑制することができる。
【0044】
図4に示されるように、カバー部材20の第2被覆部27は、第1被覆部21からウェビング40,41を収容するようにアンカー部材30,31に向けて筒状に延びている。第2被覆部27は、ウェビング40,41を収容する収容空間27aを有する。この第2被覆部27によれば、ウェビング40,41を被覆することでウェビング40,41を保護することができる。このとき、この第2被覆部27は、ウェビング40,41の断面形状に応じて、収容空間27aの断面形状が略四角形となるように構成されるのが好ましい。このような筒状の第2被覆部27を有するカバー部材20は、「ブーツ」とも称される。
【0045】
また、カバー部材20の第2被覆部27は、アンカー部材30,31まで達しない長さを有するように寸法設定されている。ウェビング40,41のアンカー部材30,31側の一部が第2被覆部27から露出している。これにより、シートベルトバックル装置101の取り付け状態で、アンカー部材30,31が車体フロア5(
図5を参照)に固定されたときに、この車体フロア5に第2被覆部27の下端部が当たらないようになっている。このため、カバー部材20自体がバックル10,50を保持して自立させる機能を果たすものではない。
【0046】
図4に示されるように、カバー部材20のうちウェビング40,41を収容する第2被覆部27には、縫合部28とスリット部29が設けられている。
【0047】
縫合部28は、第2被覆部27とウェビング40,41とを縫合するためのものである。なお、
図4は、説明の便宜上、縫合前の状態を示している。本実施形態において、縫合部28は、第2被覆部27の筒壁を貫通する複数の貫通孔によって構成されている(
図5及び
図6も参照)。特に図示しないが、縫合針及び縫合糸を縫合部28の貫通孔を通じて挿入しながら縫合作業が行われる。このとき、第2被覆部27とウェビング40,41を互いに縫合することで、可撓性を有するウェビング40,41に生じ得る撓みや弛みを抑えることができる。
【0048】
スリット部29は、第2被覆部27のうちアンカー部材30,31側の端部からウェビング40,41の長さ方向に沿って延びるように開口形成されている(
図6も参照)。このスリット部29によれば、収容空間27aにおけるウェビング40,41の配置状態を視認することができる。
【0049】
なお、カバー部材20の第2被覆部27においては、必要に応じて、縫合部28とスリット部29の少なくとも一方を省略するようにしてもよい。
【0050】
図7に示されるように、上記構成のシートベルトバックル装置101は、カバー部材20の第1被覆部21によって被覆されたバックル10,50が車両シート1の挿入穴4に挿入された状態で、アンカー部材30,31をアンカーボルト32によって車体フロア5に締結固定することによって、車両に取り付けられる。このとき、カバー部材20は、第1被覆部21の下部プレート23が支持部1aに支持された状態にセットされる。
【0051】
以下に、上述の実施形態1の作用効果について説明する。
【0052】
実施形態1のシートベルトバックル装置101によれば、タング7が連結されるバックル10は、カバー部材20の第1被覆部21による被覆状態で車両シート1の挿入穴4に挿入されたとき、カバー部材20の第1被覆部21が挿入穴4から受ける面圧によって保持される。このとき、車両シート1の挿入穴4による面圧がカバー部材20の第1被覆部21を介してバックル10に作用する。また、バックル10は、撓み変形可能なウェビング40によってアンカー部材30に繋ぎ止められる。
【0053】
このシートベルトバックル装置101では、車両シート1の挿入穴4にバックル10の保持機能を持たせることによって、カバー部材20にバックル10の保持機能を持たせる必要がない。これにより、バックル10を車両シート1の挿入穴4に嵌め込んで宙吊りしたような状態で自立させることができる。なお、バックル50の保持構造についても、バックル10の前述の保持構造と同様である。
【0054】
このようなバックル保持構造を採用すれば、他車への転用の際に車両シート1の種類や車体フロア5の形状などの違いがある場合でも、ウェビング40,41の長さや形状を変更するのみで対応が可能であり、カバー部材20の形状を変更する必要がない。すなわち、シートベルトバックル装置101を他車に転用するときに、変更部品がウェビング40,41のみで済み、その他の部品を共通で使用することができる。このため、汎用性の高いバックル保持構造を実現することができ、これによりシートベルトバックル装置101に要する投資コストを低く抑えることが可能になる。
【0055】
したがって、上述の実施形態1によれば、汎用性の高いバックル保持構造を有するシートベルトバックル装置101を提供することができる。
【0056】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0057】
上述の実施形態では、カバー部材20の第1被覆部21が2つのバックル10,50の両方を被覆する場合について例示したが、これに代えて、カバー部材20の第1被覆部21が2つのバックル10,50のうちのいずれか一方のみを被覆する構造や、3つ以上の複数のバックルを被覆する構成を採用することもできる。
【0058】
上述の実施形態では、カバー部材20が第1被覆部21と第2被覆部27を備える場合について例示したが、これに代えて、カバー部材20において第2被覆部27を省略した構造を採用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 車両シート
1a 支持部
2 シートクッション部
4 挿入穴
4a 隙間
5 車体フロア
6,8 シートベルト
7,9 タング
10,50 バックル
20 カバー部材
21 第1被覆部
23 下部プレート(被支持部)
26 隙間塞ぎ部
27 第2被覆部
28 縫合部
30,31 アンカー部材
40,41 ウェビング
101 シートベルトバックル装置