(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095319
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】お薦め情報出力システム及びお薦め情報出力方法
(51)【国際特許分類】
G10H 1/18 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
G10H1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211137
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116068
【氏名又は名称】ローランド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】深山 祐介
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478DB01
5D478MM03
(57)【要約】
【課題】ユーザの嗜好に合致したコンテンツのお薦め情報が提示できるサーバ、お薦め情報出力システム、お薦め情報出力プログラム及びお薦め情報出力方法を提供すること。
【解決手段】サーバ70には、電子楽器30において音色データをロードしたロード回数等の電子楽器30の音色データの使用回数が、音色データ毎および電子楽器30を利用するユーザH毎に記憶される。サーバ70は、携帯端末50からお薦め情報要求を受信した場合、記憶された使用回数からお薦め情報要求に含まれる要求ユーザに類似する類似ユーザを取得する。要求ユーザの音色データ毎の使用回数と、類似ユーザの音色データ毎の使用回数とからお薦め情報に登録する音色データを取得し、取得された音色データにからお薦め情報を作成する。これにより、サーバ70で作成されるお薦め情報を要求ユーザの嗜好に合致したものにすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコンテンツを記憶する電子楽器から、当該電子楽器を使用する際の使用者を特定するユーザ識別子と、その際に使用したコンテンツを特定するコンテンツ識別子及び当該コンテンツの使用頻度を取得する頻度取得手段と、
その頻度取得手段で取得した前記使用頻度を、前記ユーザ識別子及び前記コンテンツ識別子に対応付けて記憶する頻度記憶手段と、
その頻度記憶手段に記憶された1のユーザ識別子が示す要求ユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度と、前記頻度記憶手段に記憶された当該要求ユーザ以外のユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度との相関度を算出し、当該相関度に従って特定されたユーザを示すユーザ識別子に対応付けられて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに関する情報を出力する出力手段と、を備えていることを特徴とするお薦め情報出力システム。
【請求項2】
前記出力手段は、算出された相関度が最も高いユーザを類似ユーザとして特定し、当該類似ユーザを示すユーザ識別子に対応付けて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに対応する使用頻度と、前記要求ユーザを示すユーザ識別子に対応付けて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに対応する使用頻度との差を算出し、当該コンテンツのうち当該差が最も大きいコンテンツに関する情報を出力することを特徴とする請求項1記載のお薦め情報出力システム。
【請求項3】
前記コンテンツは、前記電子楽器で使用可能な音色データであり、前記使用頻度は、当該音色データを前記電子楽器で使用した回数、編集した回数または使用した時間のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載のお薦め情報出力システム。
【請求項4】
前記音色データは、前記電子楽器が発音処理に使用する波形データ及び当該発音処理の制御に使用する発音制御データのいずれか1つを含んで構成され、前記電子楽器で当該音色データを使用するとは、前記電子楽器への発音指示に対して、前記音色データが発音可能な状態にすることであることを特徴とする請求項3記載のお薦め情報出力システム。
【請求項5】
複数のコンテンツを記憶する電子楽器から、当該電子楽器を使用する際の使用者を特定するユーザ識別子と、その際に使用したコンテンツを特定するコンテンツ識別子及び当該コンテンツの使用頻度を取得する頻度取得ステップと、
その頻度取得ステップで取得した前記使用頻度を、前記ユーザ識別子及び前記コンテンツ識別子に対応付けて頻度記憶手段に記憶する頻度記憶ステップと、
前記頻度記憶手段に記憶された1のユーザ識別子が示す要求ユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度と、前記頻度記憶手段に記憶された当該要求ユーザ以外のユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度との相関度を算出し、当該相関度に従って特定されたユーザを示すユーザ識別子に対応付けられて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに関する情報を出力する出力ステップと、を備えていることを特徴とするお薦め情報出力方法。
【請求項6】
前記出力ステップは、算出された相関度が最も高いユーザを類似ユーザとして特定し、当該類似ユーザを示すユーザ識別子に対応付けて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに対応する使用頻度と、前記要求ユーザを示すユーザ識別子に対応付けて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに対応する使用頻度との差を算出し、当該コンテンツのうち当該差が最も大きいコンテンツに関する情報を出力することを特徴とする請求項5記載のお薦め情報出力方法。
【請求項7】
前記コンテンツは、前記電子楽器で使用可能な音色データであり、前記使用頻度は、当該音色データを前記電子楽器で使用した回数、編集した回数または使用した時間のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載のお薦め情報出力方法。
【請求項8】
前記音色データは、前記電子楽器が発音処理に使用する波形データ及び当該発音処理の制御に使用する発音制御データのいずれか1つを含んで構成され、前記電子楽器で当該音色データを使用するとは、前記電子楽器への発音指示に対して、前記音色データが発音可能な状態にすることであることを特徴とする請求項7記載のお薦め情報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お薦め情報出力システム及びお薦め情報出力方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、サーバ10に記憶されるサウンドデータをPC30及び記録メディア45を介して電子楽器50に送信し、送信されたサウンドデータを電子楽器50で利用するデータ利用システムSが開示されている。電子楽器50においては、自身に予め内蔵されるサウンドデータのみならず、サーバ10から取得されたサウンドデータも利用できるので、これらのサウンドデータによって表現豊かな演奏が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子楽器50の内蔵メモリの大容量化により電子楽器50に記憶できるサウンドデータの数が膨大となってきている。また、サブスクリプション(料金定額)制度の導入により、サーバ10等からネットワークを通してサウンドデータを自由に電子楽器50へ追加更新できるようになっている。かかる状況下では、電子楽器50で利用可能なサウンドデータの1つ1つを発音し、出音により確認するのが困難である。
【0005】
ところで、オンラインによる通販の分野や、楽曲等の音楽コンテンツのオンライン販売の分野においては、購入者にお薦めの商品・コンテンツを、例えばランキング形式にした「お薦め情報」を付随的に提供することで、購入対象候補を案内することが知られている。このようなお薦め情報の生成には、サーバに蓄積された購入者群の購入履歴やコンテンツのダウンロード回数が利用されている。
【0006】
しかしながら、電子楽器においては、これら購入履歴やダウンロード回数が必ずしもダウンロード又は購入後のコンテンツの実際の使用状況を反映するものではない。これは、1度コンテンツを購入またはダウンロードして電子楽器に記憶すれば、それ以後は記憶したコンテンツをロードして使用することが可能なため、当該コンテンツの複数回のダウンロードが発生しないからである。更にサブスクリプション制度においては、コンテンツを実際に使用するか否かに関わらずダウンロードできてしまうからである。従って、購入履歴やダウンロード回数は多いが、実際にはあまり使用されないコンテンツもお薦め情報に登録されてしまうので、上記の従来技術をそのまま転用するだけでは、ユーザの嗜好に合致しないコンテンツがお薦め情報として提示される虞があるといった問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ユーザの嗜好に合致したコンテンツのお薦め情報が提示できるお薦め情報出力システム及びお薦め情報出力方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明のお薦め情報出力システムは、複数のコンテンツを記憶する電子楽器から、当該電子楽器を使用する際の使用者を特定するユーザ識別子と、その際に使用したコンテンツを特定するコンテンツ識別子及び当該コンテンツの使用頻度を取得する頻度取得手段と、その頻度取得手段で取得した前記使用頻度を、前記ユーザ識別子及び前記コンテンツ識別子に対応付けて記憶する頻度記憶手段と、その頻度記憶手段に記憶された1のユーザ識別子が示す要求ユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度と、前記頻度記憶手段に記憶された当該要求ユーザ以外のユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度との相関度を算出し、当該相関度に従って特定されたユーザを示すユーザ識別子に対応付けられて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに関する情報を出力する出力手段と、を備えている。
【0009】
また本発明のお薦め情報出力方法は、複数のコンテンツを記憶する電子楽器から、当該電子楽器を使用する際の使用者を特定するユーザ識別子と、その際に使用したコンテンツを特定するコンテンツ識別子及び当該コンテンツの使用頻度を取得する頻度取得ステップと、その頻度取得ステップで取得した前記使用頻度を、前記ユーザ識別子及び前記コンテンツ識別子に対応付けて頻度記憶手段に記憶する頻度記憶ステップと、前記頻度記憶手段に記憶された1のユーザ識別子が示す要求ユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度と、前記頻度記憶手段に記憶された当該要求ユーザ以外のユーザに対応付けられたコンテンツの使用頻度との相関度を算出し、当該相関度に従って特定されたユーザを示すユーザ識別子に対応付けられて前記頻度記憶手段に記憶されたコンテンツに関する情報を出力する出力ステップと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】お薦め情報出力システムの概要を表す図である。
【
図2】お薦め情報の作成の概要を説明する図である。
【
図3】お薦め情報出力システムの機能ブロック図である。
【
図4】お薦め情報出力システムのサーバ及び携帯端末の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】お薦め情報出力システムの電子楽器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図7】電子楽器メイン処理のフローチャートである。
【
図8】(a)は、携帯端末メイン処理のフローチャートであり、(b)は、指定条件を入力させる際に携帯端末のLCDに表示される入力画面を表す図である。
【
図10】変形例におけるお薦め情報出力システムの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1を参照して本実施形態のお薦め情報出力システムSの概要を説明する。
図1は、お薦め情報出力システムSの概要を表す図である。
図1に示す通り、お薦め情報出力システムSは、電子楽器30と、携帯端末50と、サーバ70とで構成される。電子楽器30とサーバ70とは通信可能に構成され、携帯端末50とサーバ70とも通信可能に構成される。
【0012】
電子楽器30は、ユーザHの演奏に基づいて楽音を発音する装置(電子機器)である。電子楽器30には、音色の情報を有する音色データが後述の音色メモリ32bに記憶されており、ユーザHが選択した音色に対応する音色データを音色メモリ32bから読み出し、
図6で後述の音源38にて処理をすることにより、楽音として
図6で後述のスピーカ43から出力される。以下、音色データを楽音の出力のために読み出すことを「ロード」という。かかる「ロード」は、データを単にネットワーク経由で取得する「ダウンロード」とは異なる概念である。
【0013】
音色データは、波形データ及び音色に関する複数の変数値(アタック、ディケイ、サスティン及びリリースのエンベロープの情報等)からなるデータである。電子楽器30は、ユーザHにより選択された音色データに設定された各変数値に応じて音を加工し、加工された音色を発音する。音色データは、電子楽器30の工場出荷時に組み込まれているものの他にサーバ70からも取得される。電子楽器30は、音色データをロードしたり、音色データの音量やエンベロープ等を編集した場合に、その旨をサーバ70に送信する。
【0014】
携帯端末50は、ユーザHから入力される指示に応じた処理を行う端末(情報処理装置、コンピュータ)である。携帯端末50には、表示装置であるLCD56が設けられる。詳細は後述するが、携帯端末50はユーザHからの指示に応じて電子楽器30へサーバ70からの音色データを取得できるように構成され、更にはサーバ70から受信した音色データに関するお薦め情報をLCD56に表示可能に構成される。
【0015】
サーバ70は、電子楽器30で利用される音色データが複数記憶される情報処理装置(コンピュータ)である。サーバ70には、音色データ以外にも電子楽器30や携帯端末50で利用される音の波形情報であるウェーブデータや、楽譜データ等も記憶される。サーバ70に記憶される音色データ等の電子楽器30や携帯端末50で利用可能なデータのことを、まとめて「コンテンツ」という。
【0016】
サーバ70には、記憶される音色データ毎およびサーバ70に接続される電子楽器30のユーザH毎に、音色データの使用回数や使用時間が記憶される。そして、記憶された使用回数等に基づいて、音色データに関するお薦め情報が作成される。ここで
図2を参照して、サーバ70の電子楽器30からの使用回数等の記憶および記憶された使用回数等からのお薦め情報の作成を説明する。
【0017】
図2は、お薦め情報の作成の概要を説明する図である。サーバ70には、複数の音色データが記憶される音色DB72bと、使用回数データ72cとが設けられる。使用回数データ72cには、音色データ毎および電子楽器30を利用するユーザH毎に音色データの使用回数および使用時間が記憶される。本実施形態において「音色データの使用回数」とは、電子楽器30が音色データをロードした回数であるロード回数や、電子楽器30において音色データを編集した編集である編集回数をいう。これら音色データの使用回数および使用時間は、音色データの使用状況を表す指標である。
【0018】
電子楽器30には、ワークメモリ33aと音色メモリ32bとが設けられる。ワークメモリ33aは、現在のユーザHの演奏において用いられる音色データとその音色データの属性情報とが記憶されており、音源38が音源処理を行うためにアクセスできるメモリ又はメモリ領域である。ワークメモリ33aは複数の音色データ及びその属性情報を記憶できるが、そのうちユーザHの演奏が直接に反映される音色データを「カレント」という。ユーザHは電子楽器30の操作によりカレントを選択できる。音色メモリ32bには、ワークメモリ33aに記憶させ発音に用いる候補としての複数の音色データ及びその属性情報が記憶される。
【0019】
ワークメモリ33aへ音色データを記憶させる手法としては、サーバ70に記憶される音色データを取得し、その音色データをワークメモリ33aに記憶させるものと、音色メモリ32bに記憶される音色データを取得し、その音色データをワークメモリ33aに記憶させるものとが設けられる。ワークメモリ33aへ音色データを記憶させることを「ロード」という。
【0020】
電子楽器30からサーバ70へ音色データの使用回数や使用時間が送信される。具体的には、電子楽器30を使用する場面において、ユーザHが所望の音色を選択したことに伴って、音色データをワークメモリ33aにロードした場合には、ロードした旨がサーバ70に送信され、ユーザHが選択した音色データについて所望の発音になるように、音色に関する変数値を調整したことに伴って、電子楽器30がワークメモリ33a又は音色メモリ33bに記憶される音色データを編集した場合に、編集した旨が送信される。また、ワークメモリ33aにロードしてある音色データを別の音色データに変更した場合に、当該音色データをロードした時間、即ち使用時間がサーバ70に送信される。
【0021】
サーバ70は、電子楽器30から使用回数や使用時間を受信した場合は、受信した使用回数や使用時間を使用回数データ72cの該当する音色データ及び当該電子楽器30を利用するユーザHの領域に記憶する。具体的に、電子楽器30から音色データをロードした旨、音色データを編集した旨、又は、音色データの使用時間を受信した場合、当該音色データ及び当該電子楽器30を利用するユーザHに対応する使用回数データ72cの使用回数、即ちロード回数又は編集回数に1を加算する。また、受信した音色データの使用時間を、使用回数データ72cの当該音色データ及び当該電子楽器30を利用するユーザHに対応する使用時間に加算する。
【0022】
このような使用回数データ72cへの使用回数や使用時間の記憶が、サーバ70に接続される複数の電子楽器30から送信される。電子楽器30には、それぞれ1以上の当該電子楽器30を利用するユーザHが存在するため、使用回数データ72cには、ユーザH毎に、音色データ毎の使用回数や使用時間が記憶される。
【0023】
このようにサーバ70の使用回数データ72cに記憶された使用回数や使用時間から、サーバ70に記憶される音色データのうち、ユーザHに利用(即ちロード)を薦める音色データを提示するお薦め情報が作成される。ここで、お薦め情報とは、使用回数データ72c(音色DB72b)に記憶される音色データのうち、当該情報の作成を要求した要求ユーザに利用を薦める音色データに関する情報(音色識別子や音色の名称等)が設定されたものである。
【0024】
お薦め情報を作成する際、サーバ70は、携帯端末50からお薦め情報の対象となるユーザHである要求ユーザのユーザ識別子を受信する。具体的に、携帯端末50には、予め携帯端末50を利用するユーザHの識別子であるユーザ識別子が入力されており、その携帯端末50を利用するユーザHのユーザ識別子がサーバ70に送信される。サーバ70においては携帯端末50から受信したユーザ識別子が、上記の要求ユーザのユーザ識別子として用いられる。
【0025】
サーバ70は、使用回数データ72cに記憶される要求ユーザの使用回数や使用時間と、要求ユーザ以外のユーザHの使用回数や使用時間とに基づいて、要求ユーザに類似するユーザHである類似ユーザを取得する。
【0026】
要求ユーザの音色データ毎の使用回数や使用時間と、取得された類似ユーザの音色データ毎の使用回数や使用時間とから、お薦め情報に登録される音色データが取得され、取得された音色データに基づいてお薦め情報が作成される。作成されたお薦め情報が携帯端末50に送信され、携帯端末50のLCD56に表示される。LCD56に表示されるお薦め情報は、ユーザHに利用を薦める音色データの名称が1又は複数(例えば、上記の
図1に示すような3つの音色データの名称)表示される。
【0027】
このように、電子楽器30から取得され、サーバ70に記憶された要求ユーザの使用回数や使用時間に基づいてお薦め情報がサーバ70で作成され、作成されたお薦め情報がサーバ70から携帯端末50へ送信され、携帯端末50のLCD56に表示される。音色データのうち、使用回数や使用時間が高い音色データは、そのユーザHが繰り返しロードや編集をしたり、長時間利用したりするものであるため、そのユーザHにとって親しみや愛着があり、そのユーザHの嗜好に合致した音色データである。
【0028】
ここで、電子楽器30においては音色データをサーバ70から受信して使用する場合もあるので、当該音色データのダウンロード回数や購入回数に基づいてお薦め情報を作成することも考えられる。しかしながら、ダウンロード回数や購入回数が同じ1回の音色データでも、電子楽器30で繰り返しロードされたり編集されたものと、ロードや編集が殆どされなかったものとが存在することになる。即ち音色データのダウンロード回数や購入回数では、その音色データが要求ユーザの嗜好に合致しているのか判断することが難しい。
【0029】
そこで、サーバ70の使用回数データ72cに記憶された要求ユーザの音色データの使用回数や使用時間に基づいて、要求ユーザのお薦め情報を作成することで、そのお薦め情報を要求ユーザの嗜好に合致したものとすることができる。
【0030】
次に、
図3を参照してお薦め情報出力システムSの機能を説明する。
図3は、お薦め情報出力システムSの機能ブロック図である。
図3に示すように、お薦め情報出力システムSは、電子楽器30と、サーバ70と、携帯端末50とから構成される。電子楽器30は、音色選択部300と、音色データ記憶部301と、音色データ読込部302と、音源処理部303と、ユーザ情報管理部304と、頻度送信部305とを有する。
【0031】
音色選択部300は、ユーザHに音色データを選択させるものであり、
図6で後述の設定キー35及びCPU31で実現される。音色データ記憶部301は、音色データが記憶されるものであり、
図6で後述の音色メモリ32bで実現される。音色データ読込部302は、音色選択部300で選択された音色データを音色データ記憶部301からロードするものであり、CPU31で実現される。音源処理部303は、音色データ読込部302でロードされた音色データに基づいて発音を行うものであり、
図6で後述の音源38及びDPS39で実現される。
【0032】
ユーザ情報管理部304は、電子楽器30を利用するユーザHの識別子であるユーザ識別子を管理するものであり、CPU31で実現される。頻度送信部305は、音色データ読込部302でロードされた音色データの情報と、ユーザ情報管理部304で管理されるユーザ識別子とをサーバ70に送信する手段であり、CPU31及び
図6で後述の通信装置37で実現される。
【0033】
サーバ70は、頻度記憶部400と、頻度受信部401と、頻度更新部402と、要求受信部450と、お薦め情報作成部451と、お薦め情報送信部452とを有する。頻度記憶部400は、音色データ毎およびユーザH毎にロード回数が記憶されるものであり、
図4で後述のHDD72で実現される。頻度受信部401は、電子楽器30から送信された、ロードされた音色データの情報とユーザ識別子とを受信するものであり、
図4で後述のCPU71及び通信装置76で実現される。頻度更新部402は、頻度受信部401で受信したロードされた音色データの情報と、ユーザ識別子とを用いて、頻度記憶部400のロード回数を更新するものであり、CPU71で実現される。
【0034】
要求受信部450は、携帯端末50からお薦め情報の作成を要求するお薦め情報要求を受信するものであり、CPU71及び通信装置76で実現される。お薦め情報作成部451は、お薦め情報要求に含まれるユーザ識別子と音色データの分類(ピアノ等)等のお薦め条件とに基づいてお薦め情報を作成するものであり、CPU71で実現される。お薦め情報作成部451においては、取得されたユーザ識別子のロード回数が類似する類似ユーザを取得する。そして、取得されたユーザ識別子のユーザHと類似ユーザとのロード回数に差が大きな音色データであって、取得されたお薦め条件に合致する音色データがお薦め情報に登録される。お薦め情報送信部452は、お薦め情報作成部451で作成されたお薦め情報を、要求受信部450でお薦め情報要求を受信した携帯端末50に送信するものであり、CPU71及び通信装置76で実現される。
【0035】
携帯端末50は、お薦め条件指定部500と、ユーザ情報管理部501と、お薦め情報要求部502と、お薦め情報受信部503と、お薦め情報表示部504とを有する。お薦め条件指定部500は、ユーザHからお薦め条件を指定させるものであり、
図4で後述のCPU51及びタッチパネル57で実現される。ユーザ情報管理部501は、携帯端末50を利用するユーザHのユーザ識別子を管理するものであり、CPU51で実現される。お薦め情報要求部502は、お薦め条件指定部500で指定されたお薦め条件と、ユーザ情報管理部501で管理されるユーザ識別子とを含んだお薦め情報要求をサーバ70に送信するものであり、CPU51及び
図4で後述の通信装置61で実現される。
【0036】
お薦め情報受信部503は、サーバ70から送信されたお薦め情報を受信するものであり、CPU51及び通信装置61で実現される。お薦め情報表示部504は、お薦め情報受信部503で受信したお薦め情報を表示するものであり、CPU51及び上記したLCD56で実現される。
【0037】
お薦め情報出力システムSにおいて、サーバ70には、電子楽器30から取得されたユーザ識別子毎かつ音色データ毎のロード回数が記憶される。そして、サーバ70は、受信した携帯端末50のユーザ識別子に対応する音色データのロード回数に基づき、お薦め情報が作成され、そのお薦め情報が携帯端末50に表示される。音色データのうち、ロード回数が高い音色データは、そのユーザHにとって親しみや愛着があり、そのユーザHの嗜好に合致した音色データである。このような音色データの使用回数や使用時間に基づいてお薦め情報を作成し、携帯端末50に表示することで、携帯端末50のユーザHの嗜好に合致した音色データをお薦めとして提示できる。
【0038】
次に、
図4~6を参照してお薦め情報出力システムSの電気的構成を説明する。
図4は、お薦め情報出力システムSのサーバ70及び携帯端末50の電気的構成を示すブロック図である。サーバ70は、CPU71と、ハードディスク・ドライブ72(以下「HDD72」と略す)と、RAM73とを有し、これらはバスライン74を介して入出力ポート75にそれぞれ接続されている。入出力ポート75には更に電子楽器30及び携帯端末50と通信する通信装置76が接続される。
【0039】
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置である。HDD72は、CPU71により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、サーバ制御プログラム72aと、上記した音色DB72b及び使用回数データ72cとを含む。CPU71によってサーバ制御プログラム72aが実行されると、
図9のサーバメイン処理が実行される。
図5を参照して、使用回数データ72cの具体的な構成を説明する。
【0040】
図5は、使用回数データ72cを模式的に表す図である。
図5に示す通り、使用回数データ72cには、音色データ毎に、音色データの音色情報と、使用回数(即ちロード回数および編集回数)と使用時間とが記憶される。使用回数データ72cに記憶される使用回数および使用時間のことを「使用頻度」ともいう。
【0041】
音色情報には、音色データの名称、分類、特徴および上記したエンベロープが設けられる。音色データの分類として、ピアノ、オルガン、ギター等の楽器の種類が設定される。音色データの特徴として、明るい、暗い、柔らかい、硬い等、音色データを聞いた際の定性的(感覚的)な特徴が設定される。
【0042】
エンベロープには、アタック(図中では「A」)、ディケイ(図中では「D」)、サスティン(図中では「S」)及びリリース(図中では「R」)が設定される。このうち、アタック、ディケイ及びリリースにはそれぞれの継続時間が設定され、具体的には、継続時間の最小タイムから最大タイムを0~127の128段階に対応(換算)させた値が記憶される。また、サスティンには、音量がそれぞれ設定され、具体的には、音量の最小レベルから最大レベルを0~127の128段階に対応(換算)させた値が記憶される。
【0043】
これら使用回数データ72cの音色情報は、製造メーカや音色データの作成者等によって予め設定され、音色DB72bへの音色データの登録と共に、該当する音色データの音色情報が使用回数データ72cに記憶される。
【0044】
使用回数データ72cの使用回数および使用時間には、音色データ毎かつユーザH毎に、上記したロード回数、編集回数および使用時間が記憶される。
【0045】
図4に戻る。RAM73は、CPU71がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、上記した要求ユーザが記憶される要求ユーザメモリ73aと、お薦め情報を作成する際に用いられる
図5で上記した音色情報および使用回数および使用時間の条件である指定条件が記憶される指定条件メモリ73bと、要求ユーザに類似するユーザHである類似ユーザが記憶される類似ユーザメモリ73cと、お薦め情報が記憶されるお薦め情報メモリ73dとを含む。
【0046】
次に携帯端末50の電気的構成を説明する。携帯端末50は、CPU51と、フラッシュROM52と、RAM53とを有し、これらはバスライン54を介して入出力ポート55にそれぞれ接続されている。入出力ポート55には更に、サーバ70及び電子楽器30と通信する通信装置61と、上記したLCD56と、ユーザHからの指示が入力されるタッチパネル57とが接続される。
【0047】
CPU51は、バスライン54により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM52は、CPU51により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、携帯制御プログラム52aが記憶される。CPU51によって携帯制御プログラム52aが実行されると、
図8(a)の携帯端末メイン処理が実行される。RAM53は、CPU51がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、指定条件が記憶される指定条件メモリ53aを含む。
【0048】
次に、
図6を参照して電子楽器30の電気的構成を説明する。
図6は、お薦め情報出力システムの電子楽器30の電気的構成を示すブロック図である。電子楽器30には、CPU31と、フラッシュROM32と、RAM33と、ユーザHの演奏による演奏情報を取得する鍵盤34と、ユーザHが各種設定を入力する設定キー35と、電子楽器30の設定状態等を表示するLCD36と、サーバ70及び携帯端末50と通信する通信装置37と、音源38と、Digital Signal Processor39(以下「DSP39」と称す)とを有し、それぞれバスライン40を介して接続される。
【0049】
CPU31は、バスライン40により接続された各部を制御する演算装置である。フラッシュROM32は、CPU31により実行されるプログラムや固定値データ等を格納した書き換え可能な不揮発性の記憶装置であり、制御プログラム32aと、上記した音色メモリ32bとを含む。CPU31によって制御プログラム32aが実行されると、
図7の電子楽器メイン処理が実行される。RAM33は、CPU31がプログラムの実行時に各種のワークデータやフラグ等を書き換え可能に記憶するためのメモリであり、上記したワークメモリ33aが含まれる。
【0050】
音源38は、鍵盤34から入力される演奏情報に応じてワークメモリ33aのカレントの音色データに基づく音源処理を実行する処理部である。DSP39は、音源38から入力された波形データを演算処理するための演算処理部である。DSP39には、音源38とデジタルアナログコンバータ(DAC)41とが接続され、そのDAC41にはアンプ42が接続され、そのアンプ42にはスピーカ43が接続される。
【0051】
次に、
図7~9を参照して電子楽器30のCPU31、携帯端末50のCPU51及びサーバ70のCPU71で実行される処理を説明する。まず
図7を参照して、電子楽器30の処理を説明する。
【0052】
図7は、電子楽器メイン処理のフローチャートである。電子楽器メイン処理は、通信装置1の電源が投入された場合に起動され、実行されるループ処理である。電子楽器メイン処理はまず、音色データをワークメモリ33aにロードさせるロード指示を取得したかを確認する(S1)。ロード指示は、電子楽器30の設定キー35を介して音色メモリ32bの音色データをロードさせるための指示の他、サーバ70からサーバ70の音色DB72bに記憶されている音色データをロードさせる指示も含まれる。
【0053】
S1の処理において、ロード指示を取得した場合は(S1:Yes)、S1の処理で取得したロード指示に該当する音色データをロードする(S2)。S4の処理の後、ロードされた音色データの音色識別子と、当該電子楽器30を利用するユーザ識別子とをサーバ70に送信する(S3)。なお、S2の処理でロードされた音色データが複数である場合は、それぞれの音色データについてS3の処理による送信が行われる。
【0054】
S1の処理において、ロード指示を取得していない場合は(S1:No)、S2,S3の処理をスキップする。
【0055】
S1,S3の処理の後、音色データを編集する編集指示を取得したかを確認する(S4)。編集指示は、ワークメモリ33aに記憶されている音色データを編集する指示の他、電子楽器30の音色メモリ32b(
図6参照)に記憶されている音色データを編集する指示も含まれる。
【0056】
S6の処理において、編集指示を取得した場合は(S4:Yes)、当該編集指示に対応する音色データの編集を行う(S5)。S5の処理の後、編集された音色データの音色識別子と、当該電子楽器30のユーザ識別子とをサーバ70に送信する(S6)。一方で、S4の処理において、編集指示を取得していない場合は(S4:No)、S5,S6の処理をスキップする。
【0057】
S4,S6の処理の後、音色データをワークメモリ33aからアンロード(消去)するアンロード指示を取得したかを確認する(S7)。S7の処理において、アンロード指示を取得した場合は(S7:Yes)、当該アンロード指示に対応する音色データのアンロードを行う(S8)。S8の処理の後、アンロードされた音色データの音色識別子と、当該電子楽器30のユーザ識別子とをサーバ70に送信する(S9)。一方で、S7の処理において、アンロード指示を取得していない場合は(S7:No)、S7,S8の処理をスキップする。なお、アンロード指示が取得される場合とは、別の音色データをロードしたことに伴い、それまでロードされていた音色データがアンロードされる場合や、電子楽器30の電源をオフにした場合等である。
【0058】
S7,S9の処理の後、電子楽器30のその他の処理(例えば、鍵盤34を介してユーザHから演奏情報が入力されたかの確認やLCD36への表示の更新処理等)を実行し(S10)、S1以下の処理を繰り返す。
【0059】
次に、
図8を参照して電子楽器30の処理を説明する。
図8(a)は、携帯端末メイン処理のフローチャートである。携帯端末メイン処理は、携帯制御プログラム52a(
図4参照)に含まれるお薦め情報出力システムS用のアプリケーションプログラムが起動された場合に実行されるループ処理である。
【0060】
携帯端末メイン処理はまず、携帯端末50においてお薦め情報を表示する動作モードである、お薦め情報表示モードが設定されているかを確認する(S20)。S20の処理において、お薦め情報表示モードが設定されている場合は(S20:Yes)、指定条件が入力されたかを確認する(S21)。指定条件とは、サーバ70においてお薦め情報を作成する際に用いられる音色情報、使用回数および使用時間による条件である。ここで、
図8(b)を参照して、指定条件の入力を説明する。
【0061】
図8(b)は、指定条件を入力させる際に携帯端末50のLCD56に表示される入力画面を表す図である。S21の処理において、ユーザHに指定条件を入力させる場合には、
図8(b)に表す入力画面がLCD56に表示される。入力画面においては、お薦め情報の対象となる音色データの使用回数、使用時間および音色情報の範囲や種類が、タッチパネル57を介してユーザHによって設定される。
【0062】
具体的には、使用回数として、お薦め情報の対象となる音色データのロード回数および編集回数の下限値および上限値とが指定可能に構成され、使用時間の下限時間および上限時間も指定可能に構成される。なお、指定される使用回数を、使用回数そのものの値ではなく、使用回数の下限値から上限値までを複数の段階(例えば5段階)に変換して、当該段階を指定させても良い。また、下限値および上限値と下限時間および上限時間との指定において、任意の値や時間を指定したい場合は、ワイルドカードを表す「*」が指定される。例えば、
図8(b)においてロード回数には、下限値が「*」、上限値が「10回」が指定されているので、ロード回数が10回以下の音色データが、サーバ70で作成されるお薦め情報の対象とされる。
【0063】
一方で音色情報として、お薦め情報の対象となる音色データの分類および特徴の種類と、エンベロープのアタック(図中では「A」)、ディケイ(図中では「D」)、サスティン(図中では「S」)及びリリース(図中では「R」)の各値が指定可能に構成される。エンベロープの各値の指定に関しては、上記した使用回数等の指定と同様に、ワイルドカードを指定可能に構成される。
【0064】
本実施形態では、ロード回数、編集回数および使用時間のいずれか1つが指定可能とされ、音色情報の分類、特徴およびエンベロープのいずれか1つが指定可能とされる。
図8(b)においては、使用回数指定として「ロード回数」のみが選択により有効化されており、音色情報指定として、ピアノの指定が有効化されており、一方で、エンベロープの指定が有効化されていない場合を表している。使用回数指定や音色情報指定として複数の条件が指定可能とされ、複数の条件が指定された場合は各条件のAND条件としたものが、指定条件とされる。なお、複数の条件が指定された場合に各条件のOR条件としたものを指定条件としても良い。
【0065】
また、ロード回数、編集回数、使用時間および音色情報のうちの複数が指定されても良いし、ロード回数、編集回数、使用時間および音色情報のうちのいずれかが指定されても良い。このように、入力画面で指定されたロード回数、編集回数、使用時間および音色情報の条件が、指定条件とされる。
【0066】
図8(a)に戻る。S21の処理において、指定条件が入力された場合は(S21:Yes)、
図8(b)の入力画面で入力された指定条件を指定条件メモリ73bに保存する(S22)。一方で、S21の処理において、指定条件が入力されていない場合は(S21:No)、S22の処理をスキップする。
【0067】
S21,S22の処理の後、指定条件メモリ73bに記憶される指定条件と、当該携帯端末50を利用するユーザのユーザ識別子とを含む要求であって、お薦め情報を要求する要求であるお薦め情報要求を作成し、サーバ70に送信する(S23)。
【0068】
S23の処理の後、送信したお薦め情報要求に対応するお薦め情報をサーバ70から受信したかを確認する(S24)。S24の処理において、サーバ70からお薦め情報を受信していない場合は(S24:No)、S24の処理を繰り返す。一方で、S25の処理において、サーバ70からお薦め情報を受信した場合は(S24:Yes)、受信したお薦め情報をLCD56に表示する(S25)。
【0069】
一方で、S20の処理において、お薦め情報表示モードが設定されていない場合は(S20:No)、S21~S25の処理をスキップする。S20,S25の処理の後、携帯端末50のその他の処理(例えば、タッチパネル57を介してユーザHから入力されたかの確認やLCD56への表示の更新処理等)を実行し(S26)、S20以下の処理を繰り返す。
【0070】
次に
図9を参照してサーバ70の処理を説明する。
図9は、サーバメイン処理のフローチャートである。サーバメイン処理は、サーバ70の電源が投入された場合に起動され、実行されるループ処理である。
【0071】
サーバメイン処理はまず、電子楽器30から音色識別子およびユーザ識別子を受信したかを確認する(S40)。S40の処理において、電子楽器30から音色識別子およびユーザ識別子を受信した場合は(S40)、受信した音色識別子およびユーザ識別子に対応する使用回数および使用時間を使用回数データ72cに保存する(S41)。具体的には、電子楽器30が音色データをロードする際の音色識別子およびユーザ識別子を受信した場合は、使用回数データ72cの受信した音色識別子に該当する音色データの、同じく受信したユーザ識別子に該当するユーザHの使用回数に1を加算する。
【0072】
電子楽器30が音色データを編集する際の音色識別子およびユーザ識別子を受信した場合は、使用回数データ72cの該当する音色データ及びユーザHの編集回数に1を加算する。また、電子楽器30が音色データをアンロードする際の音色識別子およびユーザ識別子を受信した場合は、当該音色データをロードしてからアンロードするまでの時間を算出し、その時間を使用回数データ72cの該当する音色データ及びユーザHの使用時間に加算する。
【0073】
一方で、S40の処理において、電子楽器30から使用回数を受信していない場合は(S40:No)、S41の処理をスキップする。
【0074】
S40,S41の処理の後、携帯端末50からお薦め情報要求を受信したかを確認する(S42)。S42の処理において携帯端末50からお薦め情報要求を受信した場合は(S42:Yes)、受信したお薦め情報要求に含まれるユーザ識別子と指定条件とを取得し、それぞれ要求ユーザメモリ73aと指定条件メモリ73bとに保存する(S43)。
【0075】
S43の処理の後、使用回数データ72cにおける要求ユーザメモリ73aの要求ユーザの各音色データのロード回数と、使用回数データ72cにおける要求ユーザメモリ73aの要求ユーザ以外の他のユーザH(以下「他のユーザH」という)の各音色データのロード回数との相関度Tをそれぞれ算出する(S44)。
【0076】
ここで、要求ユーザの各音色データのロード回数をA1,A2,・・・,An(例えば、要求ユーザのロックピアノのロード回数をA1,要求ユーザのジャズピアノのロード回数をA2等)、他のユーザHの各音色データのロード回数をB1,B2,・・・,Bn(例えば、類似ユーザのロックピアノのロード回数をB1,類似ユーザのジャズピアノのロード回数をB2等)とした場合、相関度Tは以下の数式1のコサイン類似度によって算出される。
【0077】
【数1】
例えば、
図5において、要求ユーザをユーザ1、類似ユーザをユーザ2とした場合、A1にはユーザ1のロックピアノのロード回数「100」が設定され、A2にはユーザ1のジャズピアノのロード回数「5」が設定され、A3以降にはユーザ1のコンサートピアノ以降のロード回数がそれぞれ設定される。同様に、B1にはユーザ2のロックピアノのロード回数「100」が設定され、B2にはユーザ2のジャズピアノのロード回数「0」が設定され、B3以降にはユーザ2のコンサートピアノ以降のロード回数がそれぞれ設定される。S44の処理では、このような要求ユーザと他のユーザHとのロード回数に関する相関度Tを使用回数データ72cに記憶される他のユーザHの全てに対して算出される。
【0078】
S44の処理の後、S44の処理で算出された相関度Tのうち、最も高い相関度TのユーザHを取得し、類似ユーザメモリ73cに保存する(S45)。相関度Tは、0から1までの値を取る指標であり、相関度Tが1に近い程要求ユーザの各音色データのロード回数に類似するものとされる。よって、S45の処理によって、類似ユーザメモリ73cに保存される最も相関度Tが高いユーザHは、要求ユーザと最も嗜好の近い類似ユーザとされる。
【0079】
S45の処理の後、使用回数データ72cにおける要求ユーザと類似ユーザとの音色データのうち、指定条件メモリ73bの指定条件に指定されている音色情報、使用回数等の項目の差が大きい音色データを取得する(S46)。具体的に、使用回数データ72cの音色データ毎に、要求ユーザと類似ユーザとにおける指定条件メモリ73bの指定条件に指定されている音色情報や使用回数等の項目の値を使用回数データ72cから取得し、これらの差をそれぞれ算出する。例えば、指定条件がロード回数、要求ユーザがユーザ1、類似ユーザがユーザ2である場合は、ロックピアノにおけるロード回数の差が「0」、ジャズピアノにおけるロード回数の差が「5」等とされる。他の指定条件である編集回数や使用時間もロード回数と同様に算出される。
【0080】
更にこのようなロード回数等の指定条件に、分類、特徴およびエンベロープといった音色情報による指定条件を加えることで、取得される音色データを絞り込むことができる。
【0081】
この際、指定条件メモリ73bの指定条件に指定されている項目が、分類や特徴等の数値で表現されない項目である場合は、要求ユーザと類似ユーザとで一致するものである場合は「0」とし、一致しない場合は「10」とし、特徴において例えば「明るい」と「やや明るい」等傾向が類似するものは「5」とするように、分類や特徴における要求ユーザと類似ユーザとの合致の度合いに応じた値を「差」としても良い。
【0082】
そして、算出された音色データ毎の差を参照し、類似ユーザの方が要求ユーザよりも10以上差が大きい音色データを、差が大きい音色データとして取得する。なお、差が大きい音色データと判断される差の閾値は10に限られず、10以上でも10以下でも良い。また、指定条件メモリ73bの指定条件に指定されている項目毎に応じて、差が大きい音色データと判断される差の閾値を変化させても良い(例えば、指定されている項目がロード回数の場合は「10」、編集回数の場合は「5」、エンベロープのアタックの場合は「15」等)。
【0083】
なお、S46の処理において差を計算する際に、類似ユーザにおいて最後に使用された日時が所定日時以内の音色データのみを、差を計算する音色データとしても良い。例えば、S42の処理によるお薦め情報要求を受信した日時を基準として、直近1か月以内に類似ユーザが使用した音色データを、差を計算する音色データにすることで更に現状の嗜好に合致した結果が得られることが期待できる。
【0084】
S46の処理の後、S46の処理で取得された音色データのうち、指定条件メモリ73bの指定条件で指定された範囲に含まれる音色データを取得し、取得された音色データの名称や音色識別子等の、音色データの特定情報をお薦め情報として、お薦め情報メモリ73dに保存する(S47)。具体的に、類似ユーザの且つS46の処理で取得された音色データの、指定条件メモリ73bの指定条件で指定された項目の値をそれぞれ取得する。取得された値が、指定条件メモリ73bの指定条件で指定された範囲に含まれる音色データを取得し、取得された音色データの名称がお薦め情報としてお薦め情報メモリ73dに保存される。
【0085】
S47の処理の後、お薦め情報メモリ73dに記憶されるお薦め情報を、S42の処理でお薦め情報要求を送信した携帯端末50に送信する(S48)。
【0086】
S42の処理において、携帯端末50からお薦め情報要求を受信していない場合は(S42:No)、S43~S48の処理をスキップする。S41,S48の処理の後、サーバ70のその他の処理(例えば、電子楽器30や携帯端末50からの要求に対する応答処理等)を実行し(S49)、S40以下の処理を繰り返す。
【0087】
サーバ70においては、携帯端末50から指定された要求ユーザに対するお薦め情報が作成され、当該携帯端末50に送信される。この際、要求ユーザに類似する類似ユーザがロード回数から取得され、取得された類似ユーザと要求ユーザとにおける使用回数データ72cの使用回数等や音色情報に基づいてお薦め情報が作成される。
【0088】
類似ユーザは、要求ユーザとロード回数が類似したユーザHであり、言い換えると、似た傾向の音色データをロードする要求ユーザの嗜好に類似したユーザHである。このような類似ユーザの使用回数等や音色情報に基づいてお薦め情報を作成することで、要求ユーザの嗜好により合致したお薦め情報とすることができる。
【0089】
また、お薦め情報を作成する際、携帯端末50から送信された指定条件の項目が考慮される。例えば、指定条件の項目として音色情報の分類「ピアノ」が指定されることで、使用回数データ72c(即ち音色DB72b)に記憶される音色データのうち、ピアノに分類される音色データをお薦め情報とすることができる。
【0090】
また、指定条件の項目として使用回数の「ロード回数」を指定することで、類似ユーザと要求ユーザとにおいてロード回数の差の大きい音色データ、即ち類似ユーザが頻繁にロードしている一方で、要求ユーザにおいてロード回数が少ない音色データがお薦め情報とされる。かかる音色データは、類似ユーザが頻繁にロードしているが、要求ユーザにとってはロード回数が少ない「未知な」音色データである。つまり、かかる音色データは、要求ユーザにとってはこれまで馴染みがない、いわゆる「食わず嫌い」が原因で、本来嗜好に合うが、これまであまり使用されなかった音色についての音色データである。
【0091】
このような音色データがお薦め情報に含まれることで、要求ユーザに嗜好が合致しつつも未知な音色データの存在を要求ユーザに提示できるので、音色DB72bや電子楽器30の音色メモリ32bに含まれる数多くの音色データを、要求ユーザに余すところなく使用させることができる。これにより、サーバ70から出力されるお薦め情報を要求ユーザにとって有益なものとすることができる。
【0092】
更に指定条件の項目に対して、取り得る値の範囲が指定可能に構成され、その値の範囲がお薦め情報を作成する際の類似ユーザの音色情報や使用回数に適用される。これにより、指定条件の項目に合致する音色データのうち、お薦め情報とする音色データを要求ユーザの意向や嗜好に応じて詳細に選定することができる。
【0093】
以上、上記実施形態に基づき説明したが、種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0094】
上記実施形態では、音色データの使用状況を表す指標として、ロード回数、編集回数および使用時間を設けたがこれに限られず、ロード回数、編集回数および使用時間のうちのいずれかを省略してもよいし、ロード回数、編集回数および使用時間以外のユーザHの音色データの使用状況を表す別の指標を用いても良い。
【0095】
上記実施形態では、サーバ70において電子楽器30の音色データの使用時間を算出したが、これに限られない。例えば、電子楽器30において音色データをロードしてからアンロードするまでの時間を計測し、当該音色データの使用時間としてサーバ70に送信しても良い。
【0096】
上記実施形態では、
図9のサーバメイン処理のS44,S45の処理による類似ユーザの取得を、S42の処理で携帯端末50からお薦め情報要求を受信した場合に行ったが、これに限られない。S44,S45の処理による類似ユーザの取得を、S42の処理によってお薦め情報要求を受信する度に行わず、一定時間毎(例えば1日毎)に行っても良い。これにより、S42の処理によってお薦め情報要求を受信した際の、類似ユーザの取得を省略できるので、S46~S48のお薦め情報の作成および送信を迅速に行うことができる。また、S44,S45の処理による類似ユーザの取得をサーバ70から電子楽器30にロード指示をした場合に行っても良いし、その他のタイミングで行っても良い。
【0097】
上記実施形態では、
図9のS45の処理において相関度Tを数式1のコサイン類似度で算出したが、これに限られない。例えば、ユークリッド距離や交互最小二乗法(ALS)等で相関度を算出しても良い。
【0098】
また、相関度Tをロード回数に基づいて算出したが、これに限られず、編集回数や使用時間に基づいて相関度Tを算出しても良い。また、ロード回数、編集回数および使用時間のうちの2つ以上を組み合わせたものに基づいて相関度Tを算出しても良い。同様に、音色データの音色情報(分類、特徴およびエンベロープ)に基づいて相関度Tを算出しても良い。
【0099】
上記実施形態では、サーバ70の
図9のS40,S41の処理によって、電子楽器30から受信したロード、編集およびアンロードにおける音色識別子およびユーザ識別子からロード回数等を算出したが、これに限られない。例えば、電子楽器30でロード回数等を算出し、算出されたロード回数等をサーバ70に送信しても良い。
【0100】
上記実施形態では、
図7のS3,S6,S9の処理で、ロード等をした場合に、ロード等をした旨と、音色識別子と、ユーザ識別子とを常にセットで送信したが、これに限られない。例えば、電子楽器30において音色データをロードした場合、電子楽器30からはロードをした旨とその音色データの音色識別子とを送信し、サーバ70は使用回数データ72cにおける、それ以前に最後にロード等がされたユーザHの、受信した音色データのロード回数に1を加算すれば良い。
【0101】
また、電子楽器30において音色データをアンロードした場合、電子楽器30からはアンロードをした旨のみを送信する。サーバ70は使用回数データ72cにおける、それ以前に最後にロードがされたユーザH及び音色データのアンロード回数に1を加算すれば良い。これと共に、使用回数データ72cの当該ユーザH及び音色データの使用時間に、ロードしてからの時間を加算すれば良い。
【0102】
更に、電子楽器30において音色データをロード等をする度に、ロード等をした旨と、音色識別子と、ユーザ識別子とを送信したが、これに限られない。例えば、電子楽器30において音色データ毎にロード回数、変数回数および使用時間を蓄積できるように構成し、一定期間毎(例えば3時間毎)に、それまで期間で蓄積されたロード回数、変数回数および使用時間をサーバ70に送信しても良い。或いは、電子楽器30の電源が投入された後から電源オフされるまでの間に蓄積されたロード回数、変数回数および使用時間を、電源オフ時にサーバ70に送信しても良い。これらの場合、サーバ70においては送信されたロード回数、変数回数および使用時間を、使用回数データ72cにおける該当するユーザH及び音色データのロード回数、変数回数および使用時間にそれぞれ加算すれば良い。
【0103】
上記実施形態では、
図9のS46の処理において、要求ユーザと類似ユーザとの音色データにおける音色情報や使用回数等の差を算出し、算出された差に基づいてお薦め情報とする音色データを取得した。しかし、これに限られず、要求ユーザと類似ユーザとの音色データにおける音色情報や使用回数等の比を算出し、算出された比に基づいてお薦め情報とする音色を取得しても良い。
【0104】
また、
図9のS46の処理において、類似ユーザのロード回数等が要求ユーザのロード回数等より大きな音色データをお薦め情報としたが、これに限られず、要求ユーザのロード回数等が類似ユーザのロード回数等より大きな音色データをお薦め情報とする音色データをお薦め情報としても良い。
【0105】
上記実施形態では、お薦め情報要求およびサーバ70で作成されたお薦め情報の表示を携帯端末50で行ったが、これに限られない。例えば、お薦め情報要求およびサーバ70で作成されたお薦め情報の表示を電子楽器30で行っても良い。この場合、
図10のお薦め情報出力システムS’のように、
図3に示したお薦め情報出力システムSから携帯端末50を省略し、その代わりに、携帯端末50で実行していたお薦め条件指定部500、ユーザ情報管理部501、お薦め情報要求部502、お薦め情報受信部503及びお薦め情報表示部504を電子楽器30で実行すれば良い。
【0106】
また、お薦め情報要求を携帯端末50で行い、サーバ70で作成されたお薦め情報を、携帯端末50からのお薦め情報要求に含まれるユーザ識別子のユーザHが利用する電子楽器30に送信し、その電子楽器30のLCD36において受信したお薦め情報を表示しても良い。また、サーバ70で作成されたお薦め情報を、サーバ70に接続された表示装置(図示せず)に表示しても良いし、サーバ70に接続されたプリンタ(図示せず)によって紙に印刷しても良い。
【0107】
上記実施形態では、ユーザHからのお薦め情報要求の入力やお薦め情報の表示を行う端末として携帯端末50を例示したが、これに限られない。例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等をユーザHから指示が入力される端末としても良い。
【0108】
上記実施形態では、電子機器として電子楽器30を例示したがこれに限られない。例えば、電子機器を、映像の処理を行う映像装置としても良い。この際サーバ70に、コンテンツとして、映像データや音声データ、更には場面切り替え等の編集に関するデータを記憶すれば良い。また、電子機器を、楽器アプリ等のソフトウェアをインストールしたパーソナルコンピュータやタブレット端末等としても良い。
【0109】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【符号の説明】
【0110】
30 電子楽器
72c 使用回数データ(頻度記憶手段の一部)
S40 頻度取得手段、頻度取得ステップ
S44~S48 出力手段、出力ステップ