(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009532
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】先導管および既設管への管挿入工法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F16L1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112904
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】517278163
【氏名又は名称】クリモトポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】大塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】平谷 泰郎
(72)【発明者】
【氏名】安松 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真
(57)【要約】
【課題】新設管を既設管に引き込む際の摩擦抵抗の低減を図ることが可能な先導管、および、立坑間の距離が特に長距離の際に新設管を既設管にスムーズに引き込むことが可能な既設管への管挿入工法を提供する。
【解決手段】先導管1が、先端に向かって外径が縮径する先端部2と、先端部2の後端に連設された、先端部2の後端と同一径で管軸方向に延び、その内径側に新設管Pが取り付けられる筒状の直胴部3と、を備える構成とし、管挿入工法が、発進立坑11、到達立坑12、および、中間立坑16をそれぞれ形成する立坑形成工程と、所定長の新設管Pを形成する融着工程と、発進立坑11側から挿入した新設管Pを中間立坑16まで引き込む中間引込工程と、中間立坑16まで引き込んだ新設管Pを到達立坑12まで引き込む到達引込工程と、両新設管Pの端部同士を中間立坑16において接続する接続工程と、を備える構成とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新設管(P)を既設管(P’)の内部に引き込んで管路を更生する際に、前記新設管(P)の挿入方向先端に設けられる先導管において、
先端に向かって外径が縮径する先端部(2)と、
前記先端部(2)の後端に連設された、前記先端部(2)の後端と同一径で管軸方向に延び、その内径側に前記新設管(P)が取り付けられる筒状の直胴部(3)と、
を備えることを特徴とする先導管。
【請求項2】
前記直胴部(3)の後端側に、該直胴部(3)に挿入された前記新設管(P)をその内面側から保持する管取付部(7)をさらに有し、前記新設管(P)の管体に形成された貫通穴(H)を通して前記新設管(P)の外周側から前記管取付部(7)の径方向端部の取付座(8)に形成されたタップ穴(9)にねじ(10)をねじ込むことによって、前記新設管(P)を前記管取付部(7)に固定する請求項1に記載の先導管。
【請求項3】
前記先端部(2)の内径側にリブ(5)をさらに有し、前記リブ(5)の管軸方向後端側に前記管取付部(7)が固定されている請求項2に記載の先導管。
【請求項4】
前記リブ(5)が、前記先端部(2)の軸心から外周側に向かって放射状に複数設けられた板状部材である請求項3に記載の先導管。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の先導管(1)を用いた、新設管(P)を既設管(P’)の内部に引き込んで管路を更生する既設管への管挿入工法であって、
前記先導管(1)の前記直胴部(3)に、前記既設管(P’)に挿入される新設管(P)の挿入方向先端を取り付ける先導管取付工程と、
前記既設管(P’)の到達立坑(12)側に設けられた牽引装置(14)によって、前記先導管(1)を牽引して、前記新設管(P)を発進立坑(11)側から前記到達立坑(12)側まで引き込む引込工程と、
を有する既設管への管挿入工法。
【請求項6】
新設管(P)を既設管(P’)の内部に引き込んで管路を更生する既設管への管挿入工法において、
既設管路の途中に、前記新設管(P)が引き込まれる発進立坑(11)、前記新設管(P)が引き出される到達立坑(12)、および、前記発進立坑(11)と前記到達立坑(12)の間の中間立坑(16)をそれぞれ形成する立坑形成工程と、
前記発進立坑(11)側に設置した融着機(13)によって、複数の短管を前記各立坑(11、12、16)間の距離に対応する長さに融着して所定長の新設管(P)を形成する融着工程と、
前記新設管(P)の挿入方向先端に先導管(1)を設け、前記中間立坑(16)側に設けた牽引装置(14)によって、前記発進立坑(11)側から挿入した前記新設管(P)を前記既設管(P’)を通って前記中間立坑(16)まで引き込む中間引込工程と、
前記到達立坑(12)側に設けた牽引装置(14)によって、前記中間立坑(16)まで引き込んだ前記新設管(P)を前記既設管(P’)を通って前記到達立坑(12)まで引き込む到達引込工程と、
前記中間立坑(16)まで引き込んだ前記新設管(P)と、前記到達立坑(12)まで引き込んだ前記新設管(P)の端部同士を前記中間立坑(16)において接続する接続工程と、
を備えることを特徴とする既設管への管挿入工法。
【請求項7】
前記接続工程において、前記中間立坑(16)内に両端に管接続端部が形成された調整管(17)を配置し、前記中間立坑(16)まで引き込んだ前記新設管(P)と、前記到達立坑(12)まで引き込んだ前記新設管(P)の端部をそれぞれ前記管接続端部に挿入して接続する請求項6に記載の既設管への管挿入工法。
【請求項8】
前記調整管(17)に電熱線が設けられており、前記電熱線への通電によって両新設管(P)の端部を融着させる請求項7に記載の既設管への管挿入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新設管を既設管の内部に引き込んで管路を更生する際に、この新設管の挿入方向先端に設けられる先導管、および、新設管を既設管の内部に引き込んで管路を更生する既設管への管挿入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道・農業用水路などの既設管は、年月の経過とともにその管内が老朽化するため、適宜にその老朽化した既設管の更生が行われる。この更生工法として、例えば下記特許文献1、2に示すように、新設管を既設管の内部に引き込む工法(パイプリバース工法など)がある。この新設管として、軽量で柔軟性に富んだ樹脂管(ポリエチレン管など)が採用されることがある(特に特許文献1)。
【0003】
樹脂管を採用する工法においては、既設管路の途中で所定間隔ごとに地面を掘削し、既設管に新設管を引き込むための発進立坑、および、既設管から新設管を引き出すための到達立坑が形成される。そして、発進立坑側に設置した融着機によって、複数の短管(樹脂管)を両立坑間の距離に対応する長さ(例えば100m)に順次融着して新設管を形成する。新設管の挿入方向先端には先導管が設けられ、この先導管をウインチなどによって牽引することによって、新設管が既設管の中に引き込まれる(特許文献1の
図1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭60-30536号公報
【特許文献2】特開昭55-86984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すように、新設管の先端に設けた先導管をウインチで牽引する構成においては、立坑間の長距離(例えば100m)に亘って引き込みを行う必要があるため、引き込み時の摩擦抵抗が問題となることがある。また、立坑間が特に長距離(例えば300m)に亘る場合は、新設管と既設管との間の摩擦抵抗の影響が避けられないことがある。
【0006】
そこで、本発明は、新設管の先端に設けた先導管によって新設管を既設管に引き込む際の摩擦抵抗の低減を図ることを第1の課題とし、立坑間の距離が特に長距離の際に新設管を既設管にスムーズに引き込むことを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の課題を解決するため、本発明では、
新設管を既設管の内部に引き込んで管路を更生する際に、前記新設管の挿入方向先端に設けられる先導管において、
先端に向かって外径が縮径する先端部と、
前記先端部の後端に連設された、前記先端部の後端と同一径で管軸方向に延び、その内径側に前記新設管が取り付けられる筒状の直胴部と、
を備えることを特徴とする先導管を構成した。
【0008】
このようにすると、先端部によって新設管を既設管に引き込む際の摩擦抵抗を極力小さくすることができる。また、新設管が直胴部の内径側に取り付けられるため、直胴部と新設管の外周がほぼ面一となって、新設管の引き込みの際に、新設管の先端端面と既設管の内面が接触することに伴う摩擦抵抗の増大を防止することができる。このため、既設管内に新設管をスムーズに引き込むことができる。
【0009】
前記構成においては、
前記直胴部の後端側に、該直胴部に挿入された前記新設管をその内面側から保持する管取付部をさらに有し、前記新設管の管体に形成された貫通穴を通して前記新設管の外周側から前記管取付部の径方向外縁の取付座に形成されたタップ穴にねじをねじ込むことによって、前記新設管を前記管取付部に固定する構成とするのが好ましい。
【0010】
このようにすると、新設管が先導管に確実に固定されるため、先導管の牽引中に新設管が脱落するのを防止することができる。
【0011】
前記管取付部を有する構成においては、
前記先端部の内径側にリブをさらに有し、前記リブの管軸方向後端側に前記管取付部が固定されている構成とするのが好ましい。
【0012】
このようにすると、リブによって先端部の剛性が向上するため、新設管をスムーズに既設管に引き込むことができる。しかも、リブに管取付部を固定することにより、先導管と新設管の結合をより強固にすることができる。
【0013】
前記リブを有する構成においては、
前記リブが、前記先端部の軸心から外周側に向かって放射状に複数設けられた板状部材である構成とするのが好ましい。
【0014】
このようにすると、先端部の剛性をより高めることができる。
【0015】
また、上記第1の課題を解決するため、本発明では、
前記各構成に係る先導管を用いた、新設管を既設管の内部に引き込んで管路を更生する既設管への管挿入工法であって、
前記先導管の前記直胴部に、前記既設管に挿入される新設管の挿入方向先端を取り付ける先導管取付工程と、
前記既設管の到達立坑側に設けられた牽引装置によって、前記先導管を牽引して、前記新設管を発進立坑側から前記到達立坑側まで引き込む引込工程と、
を有する既設管への管挿入工法を構成した。
【0016】
このようにすると、新設管を既設管に引き込む際の摩擦抵抗を先導管によって低減することができ、新設管の挿入作業をスムーズに行うことができる。
【0017】
また、上記第2の課題を解決するため、本発明では、
新設管を既設管の内部に引き込んで管路を更生する既設管への管挿入工法において、
既設管路の途中に、前記新設管が引き込まれる発進立坑、前記新設管が引き出される到達立坑、および、前記発進立坑と前記到達立坑の間の中間立坑をそれぞれ形成する立坑形成工程と、
前記発進立坑側に設置した融着機によって、複数の短管を前記各立坑間の距離に対応する長さに融着して所定長の新設管を形成する融着工程と、
前記新設管の挿入方向先端に先導管を設け、前記中間立坑側に設けた牽引装置によって、前記発進立坑側から挿入した前記新設管を前記既設管を通って前記中間立坑まで引き込む中間引込工程と、
前記到達立坑側に設けた牽引装置によって、前記中間立坑まで引き込んだ前記新設管を前記既設管を通って前記到達立坑まで引き込む到達引込工程と、
前記中間立坑まで引き込んだ前記新設管と、前記到達立坑まで引き込んだ前記新設管の端部同士を前記中間立坑において接続する接続工程と、
を備えることを特徴とする既設管への管挿入工法を構成した。
【0018】
このようにすると、発進立坑と中間立坑の間、および、中間立坑と到達立坑の間のそれぞれの区間に分けて新設管を引き込めばよいため、発進立坑と到達立坑の全長に亘って一度に新設管を引き込む場合と比較してそれぞれの引き込みの際の摩擦抵抗が低減する。このため、新設管を既設管にスムーズに引き込むことができる。
【0019】
前記構成においては、
前記接続工程において、前記中間立坑内に両端に管接続端部が形成された調整管を配置し、前記中間立坑まで引き込んだ前記新設管と、前記到達立坑まで引き込んだ前記新設管の端部をそれぞれ前記管接続端部に挿入して接続する構成とするのが好ましい。
【0020】
このようにすると、作業スペースを確保しづらい中間立坑内で、両融着管の端部同士をスムーズに接続することができ、作業時間の短縮を図ることができる。
【0021】
前記調整管を配置した構成においては、
前記調整管に電熱線が設けられており、前記電熱線への通電によって両新設管の端部を融着させる構成とするのが好ましい。
【0022】
このようにすると、通電操作によって速やかに接続作業を完了することができ、作業時間の一層の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による先導管は、先端に向かうほど外径が縮径する先端部を形成するとともに、直胴部によって新設管の端面が既設管の内面と接触するのを防止したことにより、新設管を既設管に引き込む際の摩擦抵抗の低減を図ることができる。また、本発明による既設管への管挿入工法においては、発進立坑と到達立坑の間に中間立坑を形成し、中間立坑まで引き込んだ新設管と到達立坑まで引き込んだ新設管を中間立坑において接続するようにしたので、発進立坑から到達立坑までの距離が特に長距離であっても、既設管に新設管をスムーズに引き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る先導管の一実施形態を示す正面から見た断面図
【
図5】
図1に示す先導管の斜視図であって、(a)は後方側、(b)は前方側
【
図6】
図1に示す先導管に新設管を接続した状態の正面図
【
図8】本発明に係る既設管への管挿入工法の第一例を示す概略図
【
図9】本発明に係る既設管への管挿入工法の第二例を示す概略図であって、(a)は立坑を形成した状態、(b)は新設管を発進立坑から中間立坑まで引き込んでいる状態、(c)は(b)の新設管をさらに中間立坑と到達立坑まで引き込んでいる状態、(d)は他の新設管を発進立坑から中間立坑まで引き込んでいる状態、(e)は他の新設管の引き込みが完了した状態、(f)は両新設管を中間立坑で接続した状態
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る先導管1の一実施形態を図面に基づいて説明する。先導管1は、新設管Pを既設管P’の内部に引き込んで管路を更生する際に、新設管Pの挿入方向先端に設けられる部材であって、
図1から
図7に示すように、先端部2と直胴部3を有している。
【0026】
先端部2は、先端に向かって縮径するテーパが外周面に形成されている。このテーパの勾配(
図1中のaとbの比a/b)は適宜決めることができるが、例えば、0.2以上1.0以下の範囲内、さらに0.4以上0.8以下の範囲内とするのが好ましい。なお、テーパとする代わりに砲弾形とすることもできる。先端部2の先端側には、牽引装置によって牽引されるワイヤのフックを引っ掛けるための牽引部材4が設けられている。
【0027】
直胴部3は、先端部2の後端に連設された、先端部2の後端と同一径で管軸方向に延びる筒状の部分である。直胴部3の内径側には新設管Pが挿し込まれて取り付けられるようになっており、その内径は、新設管Pの外径とほぼ同程度に設計されている。直胴部3の管軸方向長さは、この直胴部3に新設管Pを安定的に挿し込むことができる限りにおいて、適宜決定することができる。
【0028】
先端部2の内径側には、リブ5が設けられている。リブ5は、先端部2の軸心から外周側に向かって放射状に複数設けられた板状の部材である。リブ5の外縁は、先端部2に内接している。また、リブ5の後端は、直胴部3の後端よりもさらに後方に延出している。直胴部3の内面とリブ5の外縁との間には、径方向の隙間gが形成されており(
図1参照)、この隙間gに新設管Pの端部が挿入可能となっている。この実施形態では、軸心から90度間隔で4か所にリブ5が形成されているが、その角度間隔(リブ5の数)は適宜変更することもできる。リブ5を設けることによって、先端部2の剛性を向上することができる。
【0029】
リブ5の軸心側の一部には、他所と比較して厚肉の厚肉部6が形成されている(例えば、厚肉部6の厚みが12mmに対して、他所の厚みが6mm)。このようにすることで、リブ5による先端部2の剛性のさらなる向上を図っている。なお、この厚肉部6を形成せずに、リブ5の全体を均一の厚さとすることもできる。
【0030】
リブ5の管軸方向後端には、直胴部3に挿入された新設管Pをその内面側から保持する管取付部7が設けられている。管取付部7は、先端部2の軸心から外周側に向かって放射状に設けられた4か所のリブ5のそれぞれに設けられており、軸方向視において十字形をなしている(
図4参照)。各管取付部7の径方向端部には、取付座8が形成されている。各取付座8には、雌ねじ部9aを有するタップ穴9が形成されている。タップ穴9の開口近傍には、開口側に向かうほど拡径するテーパ部9bが形成されている。
【0031】
タップ穴9にねじ込まれるねじ10は、タップ穴9の雌ねじ部9aにねじ込まれる雄ねじ部10aと、タップ穴9に形成されたテーパ部9bのテーパ角に対応して傾斜するテーパ部10bと、新設管Pの管体に形成された貫通穴Hに挿し込まれるスペーサ部10cと、新設管Pの外周面に当接する円板状の頭部10dと、を有している。直胴部3に新設管Pを挿入した上で、新設管Pの管体に予め形成された貫通穴Hを通して新設管Pの外周側から取付座8に形成されたタップ穴9にねじをねじ込むことによって、新設管Pが管取付部7(先導管1)に固定される。
【0032】
この実施形態のように、少なくとも4か所において新設管Pを管取付部7(取付座8)に固定するのが好ましいが、その数は適宜変更される場合もある。また、直胴部3への挿入によって新設管Pを確実に固定できる場合は、管取付部7を省略できる可能性もある。また、管取付部7を設ける代わりに、例えば、直胴部3および新設管Pの管体を貫通するように抜け止めピンを挿し込むことによって、新設管Pを先導管1に固定できる可能性もある。
【0033】
先端部2、直胴部3、リブ5、および、管取付部7は、いずれも一般構造用圧延鋼材(SS材)で構成されている。この素材は、新設管Pの引き込みに耐え得る剛性を備える限りにおいて、例えばステンレス鋼などの他の素材に変更することもできる。
【0034】
上記の先導管1を用いた、新設管Pを既設管P’の内部に引き込んで管路を更生する既設管P’への管挿入工法の第一例を
図8に示す。この工法においては、新設管Pとして、軽量で柔軟性に富んだポリエチレン管が採用される。既設管路の途中には、新設管Pが引き込まれる発進立坑11と、新設管Pが引き出される到達立坑12が形成される。
【0035】
発進立坑11の近傍には、融着機13が設けられている。この融着機13で、ポリエチレン製の複数の短管(例えば長さ5m)を順次融着(バット融着)して所定長(例えば100m)の新設管Pを形成する。到達立坑12の近傍には、牽引装置14としてのウインチ(以下において、牽引装置14と同じ符号を付する。)が設けられている。このウインチ14にはワイヤ15が接続されており、このワイヤ15を巻き取ることによって、先端に先導管1を設けた新設管Pを既設管P’に引き込むようになっている。
【0036】
第一例に係る管挿入工法は、上記の先導管1を用いて、新設管Pを既設管P’の内部に引き込んで管路を更生する際の工法であって、先導管取付工程と、引込工程とを有している。
【0037】
先導管取付工程は、先導管1の直胴部3に、既設管P’に挿入される新設管Pの挿入方向先端を取り付ける工程である。直胴部3に挿入された新設管Pの管体には貫通穴Hが予め形成されており、この貫通穴Hと先導管1の管取付部7の取付座8に形成されたタップ穴9の位置を合わせた上で、このタップ穴9にねじ10をねじ込むことによって先導管1に新設管Pが固定される(
図7参照)。
【0038】
引込工程は、既設管P’の到達立坑12側に設けられたウインチ14によって、先導管1を牽引して、新設管Pを発進立坑11側から到達立坑12側まで引き込む工程である。この引込工程においては、新設管Pの先端にテーパを形成した先端部2が設けられているため、既設管P’内の堆積物の堆積状況や、通水状況にかかわらず、スムーズに新設管Pの引き込み作業を行うことができる。
【0039】
新設管Pを既設管P’の内部に引き込んで管路を更生する既設管P’への管挿入工法の第二例を
図9に示す。上記の第一例に示す構成は、発進立坑11と到達立坑12の間の距離が100~200m程度の比較的短い場合に適しているが、両立坑11、12間が特に長距離(例えば300m)に亘る場合は、新設管Pと既設管P’との間の摩擦抵抗が過大となって新設管Pの引き込み作業に支障が生じることがある。この場合、第二例に係る管挿入工法を適用することで、スムーズに新設管Pの引き込み作業を行うことができる。
【0040】
第二例に係る管挿入工法は、立坑形成工程と、融着工程と、中間引込工程と、到達引込工程と、接続工程と、を備えている。
【0041】
立坑形成工程は、既設管路の途中に、新設管Pが引き込まれる発進立坑11、新設管Pが引き出される到達立坑12に加えて、発進立坑11と到達立坑12の間に中間立坑16をそれぞれ形成する工程である(
図9(a)を参照)。発進立坑11と中間立坑16の間の距離、および、中間立坑16と到達立坑12の間の距離は適宜決めることができるが、各立坑11、12、16間における新設管Pの引き込み作業をスムーズに行うために、100~200m程度とするのが好ましい。両立坑11、12、16間の距離がこれよりも長くなる場合は、発進立坑11と到達立坑12の間に複数の中間立坑16を形成して、各立坑11、12、16間の距離を短くすることも検討される。
【0042】
融着工程は、発進立坑11側に設置した融着機13によって、ポリエチレン製の複数の短管を各立坑11、12、16間(発進立坑11から中間立坑16の間、または、中間立坑16から到達立坑12の間)の距離に対応する長さに融着(バット融着)して所定長の新設管Pを形成する工程である(
図9(b)を参照)。
【0043】
中間引込工程は、新設管Pの挿入方向先端に先導管1を設け、中間立坑16側に設けたウインチ14によって、挿入した新設管Pを既設管P’を通って中間立坑16まで(スパン1まで)引き込む工程である(
図9(b)を参照)。中間立坑16の形成位置は、発進立坑11と中間立坑16との間の距離が過度に長くならないように決定されるため(例えば100~200m程度)、発進立坑11側から新設管Pを引き込む際の新設管Pと既設管P’との間の摩擦抵抗もそれほど大きくならず、その引き込み作業をスムーズに行うことができる。この中間引込工程で設けられる先導管1は特に限定されないが、先端部2と直胴部3を備えた
図1から
図7で説明した先導管1を採用するのが好ましい。
【0044】
到達引込工程は、到達立坑12側に設けたウインチ14によって、中間立坑16まで引き込んだ新設管Pを既設管P’を通って到達立坑12まで(スパン2まで)引き込む工程である(
図9(c)を参照)。この到達引込工程においては、中間引込工程で中間立坑16まで引き込んだ新設管Pの先導管1に接続されているワイヤ15を一旦外し、到達立坑12に設けられたウインチ14のワイヤ15に接続し直す。到達立坑12に設けられるウインチ14は、中間立坑16に設けられているウインチ14を移動させて利用してもよいが、到達立坑12用のウインチ14を別途準備してもよい。
【0045】
到達引込工程の後に、中間引込工程が再度行われ、中間立坑16まで(スパン1まで)新設管Pが新たに引き込まれる(
図9(d)を参照)。所定の位置(スパン1、2)までそれぞれ新設管Pが引き込まれたら、各新設管Pの先端に設けられた先導管1が取り外される(
図9(e)を参照)。
【0046】
接続工程は、中間立坑16まで(スパン1まで)引き込んだ新設管Pと、到達立坑12まで(スパン2まで)引き込んだ新設管Pの端部同士を中間立坑16において接続する工程である(
図9(f)を参照)。この接続には、調整管17が用いられる。調整管17は、両端に管接続端部(開口)が形成された樹脂製のソケットであって、その管接続端部内には電熱線が設けられている。電熱線には通電端子が接続されており、外部電源をこの通電端子に接続することによって、電熱線に通電することができるようになっている。
【0047】
中間立坑16内に調整管17を配置し、中間立坑16まで引き込んだ新設管Pと、到達立坑12まで引き込んだ新設管Pの端部をこの調整管17の管接続端部にそれぞれ挿入する。そして、電熱線に通電することによって両新設管Pの端部を融着させる。通常、中間立坑16は、発進立坑11と比較して狭小なので、発進立坑11側に設けた融着機13をそのまま設置するのは難しいが、調整管17への通電による新設管P同士の接続はスペースをそれほど必要としないため、その作業をスムーズに行うことができる。
【0048】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 先導管
2 先端部
3 直胴部
4 牽引部材
5 リブ
6 厚肉部
7 管取付部
8 取付座
9 タップ穴
9a 雌ねじ部
9b テーパ部
10 ねじ
10a 雄ねじ部
10b テーパ部
10c スペーサ部
10d 頭部
11 発進立坑
12 到達立坑
13 融着機
14 牽引装置(ウインチ)
15 ワイヤ
16 中間立坑
17 調整管
P 新設管
P’ 既設管
H 貫通穴