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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095348
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】カードエッジコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20230629BHJP
   H01R 12/72 20110101ALI20230629BHJP
【FI】
H01R13/52 301B
H01R12/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211176
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】ミネベアコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】澤本 泰宏
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087LL04
5E087LL12
5E087MM02
5E087MM06
5E087MM14
5E087RR12
5E223AC03
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB12
5E223CD01
5E223DA23
5E223DB09
5E223DB23
5E223EA02
(57)【要約】
【課題】防水カードエッジコネクタをより簡便に実現できる技術を提供する。
【解決手段】接続電極が設けられた回路基板と嵌合するハウジング部と、接続電極と接触する弾性接触片と、接続電極または弾性接触片を囲むように設けられた環状のシール部と、を有し、回路基板にハウジング部を嵌合した際、接続電極および弾性接触片は、ハウジング部と、シール部と、回路基板とによって水密に密封される、カードエッジコネクタ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続電極が設けられた回路基板と嵌合するハウジング部と、
前記接続電極と接触する弾性接触片と、
前記接続電極または前記弾性接触片を囲むように設けられた環状のシール部と、を有し、
前記回路基板に前記ハウジング部を嵌合した際、前記接続電極および前記弾性接触片は、前記ハウジング部と、前記シール部と、前記回路基板とによって水密に密封される、カードエッジコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジング部は、前記回路基板を前記ハウジング部に押し当てた状態で前記ハウジング部を回転させることにより、前記回路基板と嵌合するように構成された、請求項1に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項3】
前記シール部は、前記弾性接触片を囲むように前記ハウジング部に設けられている、請求項1または請求項2に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項4】
前記シール部は、前記接続電極を囲むように前記回路基板に設けられている、請求項1または請求項2に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項5】
前記弾性接触片は、前記回路基板の片面にのみ接触する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードエッジコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
カードエッジコネクタとしては、コネクタ端子の弾性接触片が互いに対向して配置されており、対向する弾性接触片の間に回路基板を挿入して、回路基板の接続電極と、カードエッジコネクタの弾性接触片とを接触させることで、両者の間の導通を確保するように構成されているものが知られている。また、防水タイプのカードエッジコネクタとしては、回路基板をケースの中に収納し、接続部分のみをケース開口部にて露出させ、その開口部に合わせたシール部品を備えたコネクタを嵌合することで防水性を保っているものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接続電極を備えるカードと嵌合するハウジングを備える防水カードエッジコネクタが開示されている。また、例えば、特許文献2には、変位規制部がコネクタハウジングに係合されることにより、嵌合方向と交差する方向にシール保持部材が変位することが規制された防水コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6448505号
【特許文献2】特開2014-146437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、防水カードエッジコネクタをより簡便に実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、
接続電極が設けられた回路基板と嵌合するハウジング部と、
前記接続電極と接触する弾性接触片と、
前記接続電極または前記弾性接触片を囲むように設けられた環状のシール部と、を有し、
前記回路基板に前記ハウジング部を嵌合した際、前記接続電極および前記弾性接触片は、前記ハウジング部と、前記シール部と、前記回路基板とによって水密に密封される、カードエッジコネクタが提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、
前記ハウジング部は、前記回路基板を前記ハウジング部に押し当てた状態で前記ハウジング部を回転させることにより、前記回路基板と嵌合するように構成された、上記第1の態様に記載のカードエッジコネクタが提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、
前記シール部は、前記弾性接触片を囲むように前記ハウジング部に設けられている、上記第1または第2の態様に記載のカードエッジコネクタが提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、
前記シール部は、前記接続電極を囲むように前記回路基板に設けられている、上記第1または第2の態様に記載のカードエッジコネクタが提供される。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、
前記弾性接触片は、前記回路基板の片面にのみ接触する、上記第1から第4の態様のいずれか1つに記載のカードエッジコネクタが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防水カードエッジコネクタをより簡便に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る、嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る、非嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る、非嵌合状態から嵌合状態へ移行する際のカードエッジコネクタ10を示す側面図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係る、嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す側面図である。
図5図5は、従来型の防水カードエッジコネクタの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
<発明者の得た知見>
まず、発明者が得た知見について説明する。
【0014】
図5は、従来型の防水カードエッジコネクタの一例を示す斜視図である。図5に示すような、回路基板3をケース9の中に収納し、防水性を保つような従来型の防水カードエッジコネクタは、コネクタ嵌合部を小型化することが困難であり、必然的にサイズ全体が大きくなってしまうという問題がある。また、ケース9のサイズによって、コネクタ形状が制限されてしまう問題もある。
【0015】
発明者は、上述のような問題に対して鋭意検討を行った。その結果、回路基板自体を、密閉空間を形成する部材の一部として利用することによって、回路基板をケースで覆うことなく、接続部を水密に密封できることを見出した。本発明によれば、回路基板をケースで覆うことなく接続部のみを開口しておけば良く、コネクタ形状に寄与しないケース形状とすることができる。また、ケース形状および回路基板形状を任意に設定することができるため、部品全体の小型化を図ることが可能となる。
【0016】
次に、本発明の一実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0017】
<本発明の第1実施形態>
(1)カードエッジコネクタの構成
まず、本実施形態のカードエッジコネクタ10の構成について説明する。カードエッジコネクタ10は、エッジコネクタソケットまたはスロットとも呼ばれるもので、端縁近傍に接続電極が形成された回路基板3と対で用いられる雌型のコネクタである。このようなカードエッジコネクタ10は、回路基板3に直接嵌合することになるので、構成の複雑化や製品コスト低減等を図る上で有用なものとなる。
【0018】
図1は、本実施形態の嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す斜視図である。図2は、本実施形態の非嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す斜視図である。図1および図2に示すように、本実施形態のカードエッジコネクタ10は、例えば、ハウジング部1と、電線部2と、弾性接触片5と、シール部7と、を有している。なお、本明細書において、嵌合状態とは、カードエッジコネクタ10のハウジング部1が回路基板3と嵌合している状態を意味し、非嵌合状態とは、カードエッジコネクタ10のハウジング部1が回路基板3と嵌合していない状態を意味する。また、カードエッジコネクタ10のハウジング部1が回路基板3と嵌合することを、煩雑性を避けるために、単にカードエッジコネクタ10が回路基板3と嵌合するともいう。以下、図1に示す、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向ともいう。
【0019】
回路基板3は、プリント基板とも呼ばれるもので、絶縁体の板状部材に導体の配線が形成されてなるものである。回路基板3は、例えば、半導体メモリを備えるメモリカード、小型ハードディスク装置を備える携帯用ハードディスクユニット、CPU、MPU等の演算素子や半導体メモリを備える小型制御ユニット等の一部であってもよい。回路基板3の厚みは、特に限定されないが、カードエッジコネクタ10と嵌合した際の強度と、利便性を考慮すると、例えば、1mm以上3mm以下であることが好ましい。
【0020】
回路基板3の一方の主面(嵌合状態において、カードエッジコネクタ10と対向する面、以下、上面ともいう)には、カードエッジコネクタ10との電気的接続のために、回路基板3の配線と導通する複数の接続電極(図示せず)が設けられている。接続電極は、例えば、回路基板3の上面の所定の位置に露出するように設けられており、嵌合状態において、カードエッジコネクタ10の弾性接触片5と接触(導通)するように構成されている。
【0021】
図1に示すように、回路基板3には、例えば、一対の基板側ロック穴4が設けられていることが好ましい。基板側ロック穴4は、例えば、接続電極の左右両側の所定の位置に設けられ、嵌合状態において、ハウジング部1に設けられた一対のロック部8と係合するように構成されている。これにより、カードエッジコネクタ10は、嵌合状態において、回路基板3を左右両側から安定的にロックすることができる。
【0022】
ハウジング部1は、例えば、樹脂等の絶縁性の材料(例えば、ポリブチレンテレフタレート:PBT)からなり、回路基板3と嵌合するように構成されている。ハウジング部1の嵌合面(嵌合状態において、回路基板3と対向する面)側には、導電性の金属部材(例えば、銅または銅合金)からなる複数の弾性接触片5が設けられている。弾性接触片5は、嵌合状態において、回路基板3の接続電極と接触(導線)するように構成されている。また、ハウジング部1の一端には、電線部2が設けられている。電線部2は、図1および図2に示すように、複数の導線であってもよいし、フレキシブルフラットケーブル等のように、平行に配列された複数の導線が一体化された平板状ケーブルであってもよい。ハウジング部1の内部において、弾性接触片5と、電線部2とは、電気的に接続されている。なお、弾性接触片5の形状については特に限定されず、公知技術を利用して構成したものであればよい。
【0023】
ハウジング部1の嵌合面側、左右方向の両端には、一対のロック部8が設けられていることが好ましい。一対のロック部8は、嵌合状態において、回路基板3の基板側ロック穴4と係合するように構成されている。これにより、カードエッジコネクタ10は、嵌合状態において、回路基板3を左右両側から安定的にロックすることができる。なお、ロック部8の形状については特に限定されず、公知技術を利用して構成したものであればよい。
【0024】
シール部7は、例えば、弾性変形可能な樹脂やゴム等からなる環状の部材であり、弾性接触片5を囲むように、ハウジング部1の嵌合面側に設けられている。嵌合状態において、シール部7は、ハウジング部1と回路基板3との間で両者に押し潰されることで、回路基板3の接続電極、および弾性接触片5の防水性を確保するように構成されている。つまり、嵌合状態において、接続電極および弾性接触片5は、ハウジング部1と、シール部7と、回路基板3とによって水密に密封される。これにより、回路基板3をケースで覆うことなく、防水構造を簡便に実現することが可能となる。なお、シール部7は、ハウジング部1と同じ材料で成形(二重成形)してもよいし、ハウジング部1とは別の材料で成形した後、ハウジング部1の所定の位置に接着(または嵌め込み)してもよい。なお、本明細書において、水密に密封されるとは、例えば、IPX4相当の防水性能を有することを意味する。
【0025】
嵌合状態におけるシール部7の圧縮率(厚みの減少率)は、例えば、10%以上40%以下であることが好ましい。これにより、嵌合状態と非嵌合状態との切替がしやすくなる。また、シール部7の形状は特に限定されず、シール部7の断面形状は、例えば、OリングのようなO形状や、台形形状、またはそれらが複数連なる形状のように、ハウジング部1または回路基板3と密着しやすい形状であればよい。
【0026】
弾性接触片5は、回路基板3の片面(上面)にのみ接触するように構成されていることが好ましい。これにより、カードエッジコネクタ10の部品の数を減らし、カードエッジコネクタ10をより小型化することが可能となる。
【0027】
図3は、非嵌合状態から嵌合状態へ移行する際のカードエッジコネクタ10を示す側面図(左右方向から見た)であり、図4は、嵌合状態のカードエッジコネクタ10を示す側面図(左右方向から見た)である。なお、図3および図4においては、嵌合状態を認識しやすくするため、紙面手前側のロック部8等、一部の部材を省略して図示している。
【0028】
図3に示すように、ハウジング部1は、回路基板3をハウジング部1の嵌合面側から斜めに挿入し、回路基板3をハウジング部1に押し当てた状態で、ハウジング部1を図3に示す矢印方向に回転させることにより、非嵌合状態から、図4に示すような嵌合状態へ移行するように構成されていることが好ましい。図4に示すように、嵌合状態においては、ロック部8が基板側ロック穴4と係合し、回路基板3は左右両側からロック(固定)される。図5に示したような、従来型の防水カードエッジコネクタでは、回路基板3に対して前後方向(図5の矢印方向)にコネクタを嵌合させているため、接続部が多極になるほど嵌合時の挿入力が増大する。これに対し、本実施形態のカードエッジコネクタ10では、回路基板3の端部を回転軸として嵌合させるため、挿入力は発生せず、接触力のみが発生するため、カードエッジコネクタ10の嵌合作業に過大な力を必要とせず、作業性を向上させることができる。
【0029】
図4に示すような嵌合状態において、シール部7は弾性変形しているため、ロック部8が基板側ロック穴4と係合した状態を維持するための付勢力を得ることができる。つまり、本実施形態のシール部7は、ハウジング部1と回路基板3との間で弾性変形することで、接続部(接続電極および弾性接触片5)の密封性を確保する機能と、回路基板3がロックされた状態を維持する機能の2つの機能を兼ね備えている。
【0030】
図2に示すように、ハウジング部1には、誤挿入防止形状6が設けられていることが好ましい。誤挿入防止形状6は、例えば、回路基板3をハウジング部1に押し当てる際、回路基板3の挿入を所定の位置に規制するように設けられた部材である。誤挿入防止形状6が設けられていることで、嵌合時の位置決めが容易となる。なお、誤挿入防止形状6の形状については特に限定されず、公知技術を利用して構成したものであればよい。
【0031】
(2)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0032】
(a)本実施形態のカードエッジコネクタ10では、回路基板3の接続電極および弾性接触片5は、ハウジング部1と、シール部7と、回路基板3とによって水密に密封されるように構成されている。これにより、回路基板3をケースで覆うことなく、防水構造を簡便に実現することが可能となる。また、ケース形状および回路基板形状を任意に設定することができるため、部品全体の小型化を図ることが可能となる。さらに、弾性接触片5の近傍にシール部7があるため、耐振動性を向上させることができる。
【0033】
(b)本実施形態のカードエッジコネクタ10では、ハウジング部1は、回路基板3をハウジング部1に押し当てた状態で、ハウジング部1を回転させることにより、非嵌合状態から嵌合状態へ移行するように構成されていることが好ましい。回路基板3の端部を回転軸として嵌合させるため、挿入力は発生せず、接触力のみが発生するため、カードエッジコネクタ10の嵌合作業に過大な力を必要とせず、作業性を向上させることができる。
【0034】
(c)本実施形態のカードエッジコネクタ10では、シール部7は、弾性接触片5を囲むように、ハウジング部1の嵌合面側に設けられている。これにより、回路基板3には、特別な構造を付加することなく、簡便な防水構造を実現することができる。
【0035】
(d)本実施形態のカードエッジコネクタ10では、弾性接触片5は、回路基板3の片面(上面)にのみ接触するように構成されていることが好ましい。これにより、カードエッジコネクタ10の部品の数を減らし、カードエッジコネクタ10をより小型化することが可能となる。
【0036】
(3)変形例等
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0037】
例えば、上述の実施形態では、シール部7は、弾性接触片5を囲むように、ハウジング部1の嵌合面側に設けられている場合について説明したが、シール部7は、例えば、回路基板3の接続電極を囲むように、回路基板3の上面側に設けられていてもよい。この場合、例えば、回路基板3の種類によって、シール部7の材質や形状を変更することが容易である。しかしながら、防水構造を実現するためのコストを低減する観点からは、上述の実施形態のように、ハウジング部1にシール部7を設ける方が有利である。
【符号の説明】
【0038】
1 ハウジング部
2 電線部
3 回路基板
4 基板側ロック穴
5 弾性接触片
6 誤挿入防止形状
7 シール部
8 ロック部
9 ケース
10 カードエッジコネクタ
図1
図2
図3
図4
図5