(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095349
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】オーディオ制御装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
H03F1/00 240
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211177
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】川名 啓資
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA02
5J500AA41
5J500AC36
5J500AC48
5J500AC87
5J500AC92
5J500AF18
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK03
5J500AK04
5J500AK15
5J500AK42
5J500AK62
5J500AS05
5J500AT01
5J500LV08
5J500RF04
5J500RU14
(57)【要約】
【課題】ポップアップノイズの発生を防止するオーディオ制御装置の構造を提案する。
【解決手段】本発明に係るオーディオ制御装置は、クロック信号と音声データの入力に基づいてスピーカの駆動信号を出力するとともに、特定端子の端子電圧により前記駆動信号の出力停止モードと出力実行モードが切り替えられるオーディオICと、前記クロック信号が入力されていない間は前記出力停止モードの電圧値とされ、前記クロック信号が入力されている間は前記クロック信号の入力開始タイミングから遅延して前記出力実行モードの電圧値とされる制御信号を生成し、前記特定端子に供給する制御信号生成回路と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号と音声データの入力に基づいてスピーカの駆動信号を出力するとともに、特定端子の端子電圧により前記駆動信号の出力停止モードと出力実行モードが切り替えられるオーディオICと、
前記クロック信号が入力されていない間は前記出力停止モードの電圧値とされ、前記クロック信号が入力されている間は前記クロック信号の入力開始タイミングから遅延して前記出力実行モードの電圧値とされる制御信号を生成し、前記特定端子に供給する制御信号生成回路と、を備える
オーディオ制御装置。
【請求項2】
前記制御信号生成回路は、抵抗とコンデンサからなるローパスフィルタ回路を備える
請求項1に記載のオーディオ制御装置。
【請求項3】
前記制御信号生成回路は、直列に接続される複数の前記ローパスフィルタ回路を備える
請求項2に記載のオーディオ制御装置。
【請求項4】
前記制御信号生成回路は、前記ローパスフィルタ回路を構成する抵抗により分圧された出力信号を前記制御信号として出力する
請求項2又は請求項3に記載のオーディオ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカの駆動制御を行うオーディオ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力されたクロック信号と音声データに基づいてスピーカに駆動信号を出力するオーディオ制御装置が知られている。
【0003】
このようなオーディオ制御装置においては、クロック信号の入力が開始されてからしばらくの間は、その後入力される音声データとは関係のないいわゆるポップアップノイズといった雑音が発生してしまうことがある。
【0004】
例えば特許文献1に開示されているオーディオ制御装置では、音声データをミュートするミュート回路のオン/オフを、クロック信号を入力とするラッチ回路により制御し、電源投入からクロック信号の一周期までの間ミュート回路をオンにすることで、スピーカからポップアップノイズが出力されることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなラッチ回路に基づく制御によれば、オーディオ制御装置へのクロック信号の入力が開始された際にポップアップノイズの発生を抑制することができる。
ここで、クロック信号の入力が一旦停止され、その後クロック信号の入力が再開された際には再びポップアップノイズの発生を抑制する必要がある。
【0007】
このときラッチ回路により再度ポップアップノイズの発生を抑制するためには、ラッチ回路へのクロック信号の入力が終了した際に、その都度ラッチ回路のリセット処理を行う必要があるが、このようなリセット処理が必要になるとラッチ回路の制御側の処理負担が増加することになる。またこれに伴い、制御側に当該リセット処理の制御信号を出力するための出力信号ポートが必要となり、ポート数が圧迫されてしまう。
またポップアップノイズを抑制するためにラッチ回路を採用することで、回路構成が複雑になり、部品点数の増加に伴う製品価格の上昇も懸念される。
【0008】
そこで本発明では、上記課題を解消しつつポップアップノイズの発生を防止することのできるオーディオ制御装置の構造を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るオーディオ制御装置は、クロック信号と音声データの入力に基づいてスピーカの駆動信号を出力するとともに、特定端子の端子電圧により前記駆動信号の出力停止モードと出力実行モードが切り替えられるオーディオICと、前記クロック信号が入力されていない間は前記出力停止モードの電圧値とされ、前記クロック信号が入力されている間は前記クロック信号の入力開始タイミングから遅延して前記出力実行モードの電圧値とされる制御信号を生成し、前記特定端子に供給する制御信号生成回路と、を備えるものである。これにより、オーディオICへの信号入力が開始された直後の期間は出力停止モードが維持され、スピーカの駆動信号が出力されない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な回路構成によりポップアップノイズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態におけるオーディオ制御装置の構成例を示す図である。
【
図2】第1の実施の形態における制御信号生成回路の構成例を示す図である。
【
図3】第1の実施の形態における制御信号の電圧値の経時変動を模式的に示す図である。
【
図4】第1の実施の形態における制御信号の電圧値の経時変動を模式的に示す図である。
【
図5】第2の実施の形態における制御信号生成回路の構成例を示す図である。
【
図6】第1の実施の形態における制御信号の電圧値の経時変動を模式的に示す図である。
【
図7】第2の実施の形態における制御信号の電圧値の経時変動を模式的に示す図である。
【
図8】第2の実施の形態における制御信号生成回路の構成例を示す図である。
【
図9】変形例における制御信号生成回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について
図1から
図9を参照して説明する。
なお、本実施の形態の説明にあたり参照する図面に記載された構成は、本実施の形態を実現するにあたり必要な要部及びその周辺の構成を抽出して示したものである。また図面は模式的なものであり、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。
【0013】
第1の実施の形態におけるオーディオ制御装置10の構成例について、
図1を参照して説明する。
【0014】
オーディオ制御装置10は、各種機器において音声出力装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、その他非常に多様な分野の機器(表示装置)が想定される。オーディオ制御装置10は、これらの多様な機器製品の各種機能に必要な音声を出力する。
【0015】
図1は、オーディオ制御装置10と製品側MCU(Micro Control Unit)100を示している。ここでの製品側MCU100は、オーディオ制御装置10が装着される各種機器における制御装置を示している。
【0016】
製品側MCU100は、例えばアプリケーションプログラムに基づいてオーディオデータを所定のデジタル規格の信号に変換してオーディオ制御装置10に入力する。製品側MCU100は、例えばPCM(Pulse Code Modulation)などのデジタルオーディオデータをI2S(Inter-IC Sound)規格の信号(以下、オーディオ信号という)に変換してオーディオ制御装置10に入力する。
【0017】
I2Sは、IC(Integrated Circuit)間でデジタル音声信号をシリアル転送するための規格であり、クロック信号LRCLK(LR Clock)、クロック信号BCLK(Bit Clock)、及び音声データSDATA(Serial Data)の少なくとも3つの信号が含まれている。
【0018】
クロック信号LRCLKは、2チャンネルステレオにおいて音声データSDATAのLチャンネルとRチャンネルを区別するための信号である。またクロック信号BCLKは、音声データSDATAを抽出するためのビットタイミングを示すクロック信号である。そして音声データSDATAは、デジタル音声信号のシリアルデータ(ビット列)である。
【0019】
オーディオ制御装置10は、
図1に示すようにオーディオIC1と制御信号生成回路2を備えている。
【0020】
オーディオIC1はスピーカ20に接続され、この接続を介してオーディオIC1から駆動信号が入力される。入力された駆動信号に基づいてスピーカ20が駆動することで音声が出力される。
【0021】
オーディオIC1は、オーディオ信号処理部11、AMP(amplifier)12及びモード切替部13を備えている。
【0022】
オーディオ信号処理部11には、オーディオ信号に含まれるクロック信号LRCLK、クロック信号BCLK及び音声データSDATAが、各信号線を通じて製品側MCU100から入力される。オーディオ信号処理部11は、入力されたシリアルデータとしての音声データSDATAについて、クロック信号LRCLK及びクロック信号BCLKを用いてデータ抽出し、デジタル/アナログ変換処理を行ってアナログ音声信号を得る。
【0023】
そしてオーディオ信号処理部11は、アナログ音声信号を駆動信号としてAMP12に供給する。供給された駆動信号はAMP12により増幅され、スピーカ20に出力される。このAMP12からの駆動信号に基づいてスピーカ20が駆動することで音声データSDATAに応じた音声が出力される。
【0024】
またオーディオ信号処理部11は、モード切替部13から供給される信号に基づいて、駆動信号の出力制御を行う。ここで選択可能な出力制御のモード設定としては少なくとも出力実行モードと出力停止モードが設けられている。
【0025】
オーディオ信号処理部11は、出力実行モードの信号がモード切替部13から供給されている状態において、音声データSDATAに応じた駆動信号の出力を行う。従って出力実行モードの期間は、スピーカ20から音声が出力される状態となる。
【0026】
一方で、オーディオ信号処理部11は、出力停止モードの信号がモード切替部13から供給されている状態において、音声データSDATAに応じた駆動信号の出力を停止する。従って出力停止モードの期間は、音声データSDATA等の入力に関わらずスピーカ20から音声が出力されない。
【0027】
モード切替部13は、オーディオIC1の端子14の端子電圧に基づいて各モードを示す信号をオーディオ信号処理部11に供給する。
例えば端子14の端子電圧が「0.16V以上0.77V未満」の場合は出力実行モード、端子電圧が「0V以上0.16V未満」の場合は出力停止モードとされる。
【0028】
この端子14には、制御信号生成回路2から制御信号SVが印加される。
制御信号生成回路2は、入力されたクロック信号LRCLKに基づいて制御信号SVを生成し、当該生成した制御信号SVをオーディオIC1の端子14に供給する。
【0029】
制御信号生成回路2の構成例について
図2から
図4を参照して説明する。
制御信号生成回路2は、
図2に示すように例えばNOT回路21とローパスフィルタ回路22を備えている。
【0030】
NOT回路21は、入力端がクロック信号LRCLKの信号線と接続されており、出力端がローパスフィルタ回路22を構成する抵抗R1に接続されている。
抵抗R1の他端は同じくローパスフィルタ回路22を構成するコンデンサC1及び抵抗R10と接続されている。
【0031】
従って、制御信号生成回路2に入力されたクロック信号LRCLKは、ローパスフィルタ回路22により時定数による遅延をもって平滑化されて出力される。
【0032】
またローパスフィルタ回路22の出力電圧は、抵抗R1と抵抗R10によって分圧される。この分圧された電圧が制御信号SVとして端子14に印加される。
【0033】
以上のオーディオIC1及び制御信号生成回路2の動作について
図3を参照して説明する。
図3は、オーディオIC1へのオーディオ信号の入力状態に応じた制御信号SVの電圧値の経時変動を模式的に示している。
【0034】
まず、オーディオ制御装置10が起動されてからオーディオIC1へのオーディオ信号の入力が開始されるまでの間、クロック信号LRCLK、クロック信号BCLKを入力する信号線の電圧はHiレベルに維持されており、音声データSDATAを入力する信号線の電圧はLowレベルに維持されている。
【0035】
このとき制御信号生成回路2では、入力されるHiレベルのクロック信号LRCLKがNOT回路21において反転され、端子14に供給される制御信号SVはLowレベル(例えば0V)に維持される。即ち、制御信号生成回路2にクロック信号LRCLKが入力されていない期間は、端子14に供給される制御信号SVの電圧値は出力停止モードの範囲内となる。
【0036】
従って、オーディオIC1からスピーカ20に駆動信号が出力されず、スピーカ20から音声出力が行われない。なお、オーディオ信号処理部11及びAMP12の動作が停止されることで、出力停止モードの期間の消費電力を低減させることができる。
【0037】
オーディオIC1へのオーディオ信号の入力が開始されると、製品側MCU100からは、まずクロック信号LRCLKとクロック信号BCLKが出力され、遅れて音声データSDATAが出力される。
【0038】
クロック信号LRCLKが制御信号生成回路2に入力されると、ローパスフィルタ回路22の出力電圧、つまり制御信号SVは、電圧波形W1として示すように電圧値が徐々に上昇する。
【0039】
従って、制御信号生成回路2から端子14に供給される制御信号SVの電圧値は、オーディオ信号の入力開始から遅延して出力実行モードの範囲、例えば「0.16V以上0.77V未満」の値に到達することになる。
【0040】
このためオーディオIC1へのオーディオ信号の入力が開始されてから若干の期間、即ちクロック信号LRCLKとクロック信号BCLKのみが入力されている期間の初期の期間は、出力停止モードが維持され、オーディオIC1からスピーカ20に駆動信号は出力されず、スピーカ20から音声が出力されない状態となる。そしてその後、オーディオIC1は、制御信号SVの電圧値が0.16V以上となることで、出力実行モードに遷移することになる。
【0041】
ここで、オーディオIC1へのクロック信号LRCLKとクロック信号BCLKの入力が開始された初期の期間においては、ポップアップノイズといわれる雑音が発生することがある。
【0042】
しかしながら、本実施の形態のようにオーディオ信号の入力が開始されてから若干の期間は出力停止モードを維持することで、ポップアップノイズが発生するおそれのある期間においてスピーカ20からの音声出力を停止させることができる。
【0043】
その後、製品側MCU100から音声データSDATAの出力が開始される時点には、オーディオIC1が出力実行モードとなっているため、スピーカ20からの音声データSDATAに基づく音声出力は通常に実行される。
【0044】
つまりローパスフィルタ回路22が、コンデンサC1及び抵抗R1によって、制御信号SVの電圧の立ち上がりの遅延時間を適切に設定することで、
図3のように、オーディオ信号の入力開始時点直後は出力停止モードを維持し、音声データSDATAの入力前に出力実行モードに遷移できる。
【0045】
従って、クロック信号LRCLKの入力時に発生するポップアップノイズを解消しつつ、入力された音声データSDATAに基づく駆動信号がオーディオIC1からスピーカ20に出力され、音声データSDATAに基づく音声がスピーカ20から出力される状態とすることができる。
【0046】
ところで
図2で述べたように、ローパスフィルタ回路22からの出力電圧は抵抗R1,R10で分圧されて、制御信号SVとされる。これは、抵抗R1,R10で、制御信号SVの電圧値を調節できることを意味する。
即ち、端子14の端子電圧が、あらかじめ設定された各出力モードの閾値範囲内の仕様に適合するように、出力する制御信号SVの電圧値を調節することができる。
【0047】
例えば出力実行モードを示す制御信号SVを入力する際にその電圧値が「0.16V以上0.77V未満」に収まるように、かつ出力停止モードを示す制御信号SVを入力する際にその電圧値が「0V以上0.16V未満」に収まるように分圧抵抗値が設定されればよい。
【0048】
製品側MCU100からオーディオIC1へのオーディオ信号の入力が終了すると、それに伴いクロック信号LRCLKの制御信号生成回路2への入力が停止される。
【0049】
クロック信号LRCLKの入力が停止されるとローパスフィルタ回路22からの出力電圧は徐々に変動するため、制御信号生成回路2から出力される制御信号SVの電圧は
図3の電圧波形W2に示すように緩やかに降下する。
【0050】
このように制御信号生成回路2で生成される制御信号SVの電圧値は、クロック信号LRCLKの入力停止から遅延して出力停止モードの閾値範囲に到達する。その後も制御信号SVの電圧値は降下し続け、最終的に制御信号生成回路2から出力される制御信号SVはLowレベルに維持される。
【0051】
従ってオーディオIC1は出力停止モードに遷移し、その後、再びオーディオ信号の入力が開始されるまでは、オーディオIC1からスピーカ20に駆動信号が出力されず、スピーカ20から音声出力が行われない状態となる。なお、オーディオ信号の入力が開始されるまでの期間においてオーディオ信号処理部11及びAMP12の動作が停止されることで、当該期間の消費電力を低減させることができる。
【0052】
以上の第1の実施の形態によれば、ローパスフィルタ回路22を備える制御信号生成回路2により、オーディオIC1によるスピーカ20への駆動信号の出力制御を行うことができる。そのため、例えば製品側MCU100などの外部の制御装置によりオーディオIC1の出力制御を行う必要がなくなる。従って、外部の制御装置による処理負担を軽減することができるとともに、その制御装置のポート数を圧迫することを防止することができる。
【0053】
上述した特許文献1との比較においては、ラッチ回路よりも簡易な構成であるローパスフィルタ回路22を用いて駆動信号の出力制御を行うことができ、ポップアップノイズの発生を防止することができる。
【0054】
またローパスフィルタ回路22は抵抗R1やコンデンサC1といった簡易な構成からなるため、ラッチ回路で用いられるようなICチップ等が不要となる。従って、ローパスフィルタ回路22を用いることで、ラッチ回路を用いるよりも安価に製品を製造することができる。
【0055】
また
図4に示すように、製品側MCU100におけるアプリケーションの起動や終了などの要因により、オーディオ信号の入力が不連続となることがある。
【0056】
このような場合にラッチ回路を用いようとすると、オーディオ信号の入力が再開されたときに発生するポップアップノイズを防止するためには、その都度ラッチ回路にリセット信号を入力してリセット処理を行う必要がある。従って、ラッチ回路を用いた場合には、オーディオ信号の入力が再開されるごとに製品側MCU100などの外部の制御装置等の処理負担が増加してしまう。
【0057】
一方で、第1の実施の形態のように抵抗R1とコンデンサC1から構成されるローパスフィルタ回路22を用いることで、オーディオ信号の入力が不連続な場合であっても外部の制御装置からの特別な制御が不要なまま制御信号SVが
図4のように変化するため、クロック信号LRCLKの出力開始によるポップアップノイズの発生を防止することができる。このとき例えばオーディオ信号の入力が再開される度に外部の制御装置等によるリセット処理等の特別な制御を行う必要はない。
【0058】
第2の実施の形態における制御信号生成回路2Aの構成例について
図5から
図8を参照して説明する。第2の実施の形態の制御信号生成回路2Aは、複数のローパスフィルタ回路22を有する点で第1の実施の形態の制御信号生成回路2と異なる。
【0059】
なお、以降の説明においては複数のローパスフィルタ回路22をローパスフィルタ回路22-1、22-2、・・・22-n(nは自然数)と区別して表記するが、各構成は第1の実施の形態のローパスフィルタ回路22と同様である。また第1の実施の形態と共通の部分については同一符号を付し、説明を省略する。
【0060】
第2の実施の形態の制御信号生成回路2Aは、
図5に示すように例えばNOT回路21に加えて複数のローパスフィルタ回路22-1,22-2を備えている。このときローパスフィルタ回路22-1,22-2は直列接続されている。
【0061】
NOT回路21は、入力端がクロック信号LRCLKの信号線と接続されており、出力端がローパスフィルタ回路22-1を構成する抵抗R1に接続されている。
抵抗R1の他端には、ローパスフィルタ回路22-1を構成するコンデンサC1とローパスフィルタ回路22-2を構成する抵抗R2とが接続されている。
抵抗R2の他端は、ローパスフィルタ回路22-2を構成するコンデンサC2及び抵抗R11と接続されている。
【0062】
従って、制御信号生成回路2に入力されたクロック信号LRCLKは、ローパスフィルタ回路22-1,22-2により遅延をもちつつ平滑化されて出力される。
【0063】
またローパスフィルタ回路22の出力電圧は、抵抗R1,R2,R11によって分圧される。この分圧された電圧が制御信号SVとして端子14に印加される。
【0064】
このように、制御信号生成回路2Aにおいて複数のローパスフィルタ回路22-1,22-2を設けることで、制御信号生成回路2Aにクロック信号LRCLKを入力した際に出力される制御信号SVの電圧値のリプル(電圧の振れ)を軽減に有利となる。
【0065】
ここでリプルの軽減を示す実験データについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は、制御信号生成回路2(2A)へのクロック信号LRCLKの入力開始からの経過時間に応じた制御信号SVの電圧値の変動を示している。
【0066】
図6は、
図2に示すような1つのローパスフィルタ回路22を備える制御信号生成回路2を用いた場合に出力される制御信号SVの電圧波形を示しており、
図7は、
図5に示すような2つのローパスフィルタ回路22-1,22-2を備える制御信号生成回路2Aを用いた場合に出力される制御信号SVの電圧波形を示している。
【0067】
また
図6及び
図7の実験データは、
図2及び
図5の回路構成において、抵抗R1=1.0KΩ、抵抗R2=1.0KΩ、抵抗R10=0.47KΩ、抵抗R11=1.0KΩ、コンデンサC1=0.1μF、コンデンサC2=0.1μFとし、クロック信号LRCLKの周波数を44.1KHzとした場合に得られたものである。
【0068】
図6と
図7に示すそれぞれの電圧波形を比較すると、複数のローパスフィルタ回路22-1,22-2を備える制御信号生成回路2Aを用いる
図7に示す電圧波形の方が、
図6示す電圧波形よりもリプルが軽減されていることを確認することができる。
【0069】
以上の第2の実施の形態によれば、制御信号生成回路2Aのように複数のローパスフィルタ回路22-1,22-2を設けることで、出力される制御信号SVのリプルを軽減し、電圧の振れの少ない制御信号SVを端子14に供給することができる。これにより、端子14における各モード設定の閾値をリプルにより超えないようにすることができる。従って、端子14の端子電圧に基づくモード切替部13による出力モードの切り替え精度を向上させることができる。
【0070】
また第2の実施の形態では、2つのローパスフィルタ回路22-1,22-2を備える制御信号生成回路2Aに例について説明したが、
図8に示す制御信号生成回路2Bのように、3つのローパスフィルタ回路22-1,22-2,22-3が直列的に接続されていてもよいし、図示しないが4以上のローパスフィルタ回路22-1,22-2,・・・22-n(nは自然数)が直列的に接続されていてもよい。
【0071】
このように接続するローパスフィルタ回路22の数を増やすことで、出力される制御信号SVのリプルをより軽減させることができ、モード切替部13による出力モードの切り替え精度をより向上させることができる。
【0072】
以下、実施の形態の変形例について説明する。
本実施の形態では、制御信号生成回路2(2A,2B)に入力されるクロック信号の例としてクロック信号LRCLKを用いて説明したが、入力されるクロック信号は、オーディオ信号としてオーディオIC1に入力される他のクロック信号でもよく、例えばクロック信号BCLKであってもよい。
【0073】
また本実施の形態では、オーディオ信号がオーディオIC1に入力されていない状態において、クロック信号LRCLK(BCLK)の信号線の電圧値がHiレベルに維持される場合を想定した。このため、制御信号生成回路2(2A,2B)から出力される制御信号SVの電圧値がLowレベルに維持されるように、
図2に示すようなNOT回路21を用いる例とした。
【0074】
しかしながら、制御信号生成回路2(2A,2B)から出力される制御信号SVの電圧値は、クロック信号LRCLK(BCLK)を入力する信号線の電圧値や、オーディオIC1側で設定される出力モードごとの閾値範囲などにより適宜設計変更が可能である。例えばクロック信号LRCLK(BCLK)が供給されていないときに入力端の電圧がLowレベルのときは、例えば
図9に示すようにNOT回路21に換えてバッファー回路24が設けられるようにすることが考えられる。
【0075】
最後に、本開示に記載された効果は例示であって限定されるものではなく、他の効果を奏するものであってもよいし、本開示に記載された効果の一部を奏するものであってもよい。また、実施の形態で説明されている構成の組み合わせの全てが課題の解決に必須であるとは限らない。
【符号の説明】
【0076】
1 オーディオIC
2 制御信号生成回路
10 オーディオ制御装置
11 オーディオ信号処理部
13 モード切替部
14 端子
20 スピーカ
22,22-1,22-2,22-3,22-n ローパスフィルタ回路
C1,C2,C3 コンデンサ
R1,R2,R3,R10,R11、R12 抵抗
LRCLK,BCLK クロック信号
SDATA 音声データ
SV 制御信号