IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

<>
  • 特開-電源装置 図1
  • 特開-電源装置 図2
  • 特開-電源装置 図3
  • 特開-電源装置 図4
  • 特開-電源装置 図5
  • 特開-電源装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095369
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211208
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 真吾
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730FG05
5H730XC14
5H730XX04
5H730XX15
5H730XX24
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】突入電流を抑制する。
【解決手段】本開示に係る電源装置において、第1の容量素子は、第1の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第2の容量素子は、第2の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第1のスイッチング素子は、第1の入力ノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第1のノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第1のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第2の入力ノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第3の容量素子は、第2のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第1の誘導素子は、第2のノードと第1の出力ノードとの間に電気的に接続される。第2の誘導素子は、第2のノードと第3のノードとの間で第3の容量素子に直列に電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される第1の容量素子と、
第2の入力ノードと前記第1のノードとの間に電気的に接続される第2の容量素子と、
前記第1の入力ノードと第2のノードとの間に電気的に接続される第1のスイッチング素子と、
前記第1のノードと前記第2のノードとの間に電気的に接続される第2のスイッチング素子と、
前記第1のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される第3のスイッチング素子と、
前記第2の入力ノードと前記第3のノードとの間に電気的に接続される第4のスイッチング素子と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間に電気的に接続される第3の容量素子と、
前記第2のノードと出力ノードとの間に電気的に接続される第1の誘導素子と、
前記第2のノードと前記第3のノードとの間で前記第3の容量素子に直列に電気的に接続される第2の誘導素子と、
を備えた電源装置。
【請求項2】
前記第3の容量素子は、一端が前記第3のノードに電気的に接続され、他端が前記第2の誘導素子に電気的に接続され、
前記第2の誘導素子は、一端が前記第2のノードに電気的に接続され、他端が前記第3の容量素子に電気的に接続される
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第3の容量素子は、一端が前記第2の誘導素子に電気的に接続され、他端が前記第2のノードに電気的に接続され、
前記第2の誘導素子は、一端が前記第3の容量素子に電気的に接続され、他端が前記第3のノードに電気的に接続される
請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
第1の期間に前記第1のスイッチング素子及び前記第3のスイッチング素子がオン状態に維持され、第2の期間に前記第2のスイッチング素子及び前記第4のスイッチング素子がオン状態に維持される
請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1の容量素子、前記第3の容量素子、前記第2の誘導素子を含むループの共振周波数は、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第3のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子のスイッチング周波数より低く、
前記第2の容量素子、前記第3の容量素子、前記第2の誘導素子を含むループの共振周波数は、前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子、前記第3のスイッチング素子、前記第4のスイッチング素子のスイッチング周波数より低い
請求項1から4のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、スイッチトキャパシタ回路を用いて構成されることがある(例えば、特許文献1参照)。この電源装置では、スイッチトキャパシタ回路でスイッチング素子及びキャパシタのセットが複数設けられる。スイッチトキャパシタ回路において、偶数番号のスイッチング素子と奇数番号のスイッチング素子とが交互にオンすることで複数のキャパシタの電圧の均一化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-158334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源装置では、スイッチトキャパシタ回路で偶数番号のスイッチング素子と奇数番号のスイッチング素子とが交互にオンする際に、過渡的にキャパシタへの大きな突入電流が発生する可能性がある。大きな突入電流が発生すると、スイッチング素子などの素子が劣化しやすくなる。
【0005】
本開示は、突入電流を抑制できる電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源装置は、第1の容量素子と第2の容量素子と第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子と第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子と第3の容量素子と第1の誘導素子と第2の誘導素子とを有する。第1の容量素子は、第1の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第2の容量素子は、第2の入力ノードと第1のノードとの間に電気的に接続される。第1のスイッチング素子は、第1の入力ノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第2のスイッチング素子は、第1のノードと第2のノードとの間に電気的に接続される。第3のスイッチング素子は、第1のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第4のスイッチング素子は、第2の入力ノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第3の容量素子は、第2のノードと第3のノードとの間に電気的に接続される。第1の誘導素子は、第2のノードと第1の出力ノードとの間に電気的に接続される。第2の誘導素子は、第2のノードと第3のノードとの間で第3の容量素子に直列に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る電源装置によれば、突入電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図。
図2】実施形態における電源装置の動作を示す波形図。
図3】実施形態における電源装置の動作を示す波形図。
図4】実施形態における複数のモードの動作を示す波形図。
図5】実施形態における複数のモードの動作を示す回路図。
図6】実施形態の変形例に係る電源装置の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る電源装置の実施形態について説明する。
(実施形態)
実施形態にかかる電源装置は、スイッチトキャパシタ回路に降圧チョッパ回路が接続されて構成されるが、突入電流抑制回路がさらに追加される。突入電流抑制回路は、スイッチトキャパシタ回路における突入電流を抑制するための回路である。例えば、電源装置1は、図1に示すように構成され得る。図1は、実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
【0010】
電源装置1は、外部の電源Vinと負荷回路LDとの間に電気的に接続される。電源装置1は、入力ノードNin1,Nin2を介して電源Vinに接続され、出力ノードNout1,Nout2を介して負荷回路LDに接続される。入力ノードNin1は、グランド電位及び電源Vinの正極側に接続される。入力ノードNin1は、電源Vinの負極側に接続される。すなわち、電源装置1は、負の電源電圧Vinで動作する電源装置である。電源装置1は、電源Vinから電源電圧Vinを受け、電源電圧Vinに応じて、負荷回路LD用の電源電圧Voutを生成する。電源装置1は、電源電圧Voutを負荷回路LDへ供給する。電源装置1は、スイッチトキャパシタ回路2、降圧チョッパ回路3及び突入電流抑制回路4を有する。スイッチトキャパシタ回路2は、入力ノードNin1,Nin2及び降圧チョッパ回路3の間に電気的に接続される。降圧チョッパ回路3は、スイッチトキャパシタ回路2及び出力ノードNout1,Nout2の間に電気的に接続される。突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3にそれぞれ電気的に接続される。
【0011】
スイッチトキャパシタ回路2は、磁気部品を使用せず電圧を昇圧、降圧、極性反転など行うことが可能な回路である。スイッチトキャパシタ回路2は、スイッチング素子及びキャパシタのセットが複数設けられる。スイッチトキャパシタ回路2は、容量素子Cin1、容量素子Cin2、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4を有する。容量素子Cin1とスイッチング素子Q1,Q2とが互いに対応し1つのセットを構成する。容量素子Cin2とスイッチング素子Q3,Q4とが互いに対応し1つのセットを構成する。容量素子Cin1は、入力ノードNin1とノードN1との間に電気的に接続される。容量素子Cin1は、一端が入力ノードNin1に接続され、他端がノードN1に接続される。容量素子Cin2は、入力ノードNin2とノードN1との間に電気的に接続される。容量素子Cin2は、一端が入力ノードNin2に接続され、他端がノードN1に接続される。
【0012】
スイッチング素子Q1は、入力ノードNin1とノードN2との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q1は、例えばトランジスタNM1及びダイオードD1を含む。トランジスタNM1は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN2に接続され、ドレインが入力ノードNin1及び出力ノードNout1に接続される。ダイオードD1は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードが入力ノードNin1に接続され、アノードがノードN2に接続される。スイッチング素子Q2は、ノードN1とノードN2との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q2は、例えばトランジスタNM2及びダイオードD2を含む。トランジスタNM2は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN1に接続され、ドレインがノードN2に接続される。ダイオードD2は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN2に接続され、アノードがノードN1に接続される。スイッチング素子Q3は、ノードN1とノードN3との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q3は、例えばトランジスタNM3及びダイオードD3を含む。トランジスタNM3は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースがノードN3に接続され、ドレインがノードN1に接続される。ダイオードD3は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN1に接続され、アノードがノードN3に接続される。スイッチング素子Q4は、入力ノードNin2とノードN3との間に電気的に接続される。スイッチング素子Q4は、例えばトランジスタNM4及びダイオードD4を含む。トランジスタNM4は、例えばNMOSトランジスタであり、ゲートが外部の制御回路CTRに接続され、ソースが入力ノードNin2に接続され、ドレインがノードN3に接続される。ダイオードD4は、例えばNMOSトランジスタの寄生ダイオードであり、カソードがノードN3に接続され、アノードが入力ノードNin2に接続される。
【0013】
スイッチトキャパシタ回路2は、電源装置1から出力されるべき電源電圧Voutの大きさをレギュレーションする機能がない。そのため、スイッチトキャパシタ回路2の後段に降圧チョッパ回路3が接続される。降圧チョッパ回路3は、スイッチングのデューティー比(すなわち、オン/オフ時間の比率)に応じて電源電圧Voutの大きさをレギュレーションすることができる。
【0014】
降圧チョッパ回路3は、スイッチング素子Q1、容量素子Co、誘導素子Lo、抵抗素子Roを有する。降圧チョッパ回路3は、スイッチング素子Q1をスイッチトキャパシタ回路2と共有する。容量素子Coは、出力ノードNout1と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。容量素子Coは、一端が出力ノードNout1に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。誘導素子Loは、ノードN2と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。誘導素子Loは、一端がノードN2に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。抵抗素子Roは、出力ノードNout1と出力ノードNout2との間に電気的に接続される。抵抗素子Roは、一端が出力ノードNout1に接続され、他端が出力ノードNout2に接続される。
【0015】
スイッチトキャパシタ回路2は、スイッチング素子及びキャパシタの複数セット(Q1,Q2,Cin1),(Q3,Q4,Cin2)を含む回路であるため、高負荷、高電圧時に過大な突入電流が流れスイッチ損失が増大する可能性がある。そのため、突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2に電気的に接続される。突入電流抑制回路4は、共振を利用して電流の位相を遅らせることで、突入電流を抑制できる。
【0016】
突入電流抑制回路4は、容量素子Cfly及び誘導素子Lrを有する。容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のスイッチング周波数より低い。これにより、スイッチング時に、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループに流れる電流の位相を遅らせることができる。容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数は、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4のスイッチング周波数より低い。これにより、スイッチング時に、容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループに流れる電流の位相を遅らせることができる。なお、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数と容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数とは、同じでもよいし、異なっていてもよい。容量素子Cflyは、ノードN2とノードN3との間に電気的に接続される。容量素子Cflyは、一端がノードN2に接続され、他端がノードN3に接続される。容量素子Cflyは、スイッチング時にフローティング状態になり得ることから、フローティングコンデンサとも呼ばれる。誘導素子Lrは、ノードN2とノードN3との間で容量素子Cflyに直列に電気的に接続される。誘導素子Lrは、ノードN2と容量素子Cflyとの間に電気的に接続されてもよいし、容量素子CflyとノードN3との間に電気的に接続されてもよい。図1では、誘導素子Lrは、一端がノードN2に接続され、他端が容量素子Cflyに接続される。
【0017】
突入電流抑制回路4では、容量素子Cflyに直列に誘導素子Lrを挿入していることにより、突入電流抑制回路4を含むループに共振電流を生成することができる。この際の共振周波数をスイッチング周波数よりも低く設計することでスイッチング素子(Q1、Q3、Q4)のターンオン時におけるソフトスイッチ動作が可能となり、スイッチ損失が低減できる。そのため、高効率の回路動作を実現できる。
【0018】
なお、ソフトスイッチ動作とは、スイッチング過程におけるスイッチング素子の電圧-電流特性平面上の軌跡が最大電圧点、最大電流点および原点を結ぶ三角形の領域(緩やか変化とみなせる領域)内で動くようなスイッチング動作を意味する。スイッチング素子のオン・オフ時に全軌跡が三角形の領域内に収まっておればソフトスイッチング成功、外側に少しでもはみ出すとソフトスイッチング失敗でありハードスイッチングとなる。例えば、スイッチング動作に伴う電流及び/又は電圧の変化がスイッチング素子のゲート信号の遷移時間内であれば三角形の領域を外れてそのスイッチング動作がハードスイッチ動作となることが多い。スイッチング動作に伴う電流及び/又は電圧の変化が遷移時間を超えると三角形の領域に収まりそのスイッチング動作がソフトスイッチ動作となることが多いが、サージ電圧が発生すると瞬間的に三角形の領域から外れるためハードスイッチ動作になる。
【0019】
例えば、電源装置1は、図2及び図3に示すように動作し得る。図2及び図3は、それぞれ、電源装置1の動作を示す波形図である。図2は、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2の動作についてシミュレーションを行った結果を示し、図3は、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4についてシミュレーションを行った結果を示す。シミュレーションは、図2及び図3いずれも、次の条件で行った。電源Vinからの入力電圧Vin=1500Vである。容量素子Cin1の容量値Cin1=12μFである。容量素子Cin2の容量値Cin2=12μFである。容量素子Cin3の容量値Cin3=12μFである。誘導素子Lrのインダクタンス値Lr=500nHである。誘導素子Loのインダクタンス値Lo=100μHである。容量素子Coの容量値Co=12μFである。抵抗素子Roの抵抗値Ro=16.66Ωである。スイッチング周波数は100kHzである。デューティー比は、(スイッチング素子Q2のオン期間)/(スイッチング周期)とする。デューティー比は、50%である。スイッチング素子Q1のオン期間とスイッチング素子Q2のオン期間との間隔(デッドタイム)は、120nsである。スイッチング素子Q1,Q3は、オン・オフがそれぞれ互いに同時である。スイッチング素子Q2,Q4は、オン・オフがそれぞれ互いに同時である。この条件では、容量素子Cin1、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数が91.9kHzであり、スイッチング周波数100kHzより小さい。容量素子Cin2、容量素子Cfly、誘導素子Lrを含むループの共振周波数が91.9kHzであり、スイッチング周波数100kHzより小さい。
【0020】
図2(a)~図2(c)における一点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図2(d)~図2(f)に示す。図2(a)~図2(c)における二点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図2(g)~図2(i)に示す。図2(a)、図2(d)、図2(g)では、スイッチング素子Q1のゲート信号が実線で示され、スイッチング素子Q2のゲート信号が点線で示される。図2(b)、図2(e)、図2(h)では、スイッチング素子Q1の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q1に流れる電流が点線で示される。図2(c)、図2(f)、図2(i)では、スイッチング素子Q2の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q2に流れる電流が点線で示される。図2(a)に示すように、スイッチング素子Q1は、タイミングt1にオンされ、タイミングt2にオフされ、タイミングt5にオンされ、タイミングt6にオフされる。スイッチング素子Q2は、タイミングt3にオンされ、タイミングt4にオフされ、タイミングt7にオンされる。t2~t3の期間、t4~t5の期間、t6~t7の期間は、それぞれ、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2がいずれもオフ状態であるデッドタイムである。図2(a)、図2(d)に示すように、タイミングt2にスイッチング素子Q1がオフされると、図2(b)、図2(e)に示すように、スイッチング素子Q1に略一定のマイナスの電流が流れる。すなわち、図2(e)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q1では、オフ時に寄生ダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。図2(a)、図2(g)に示すように、タイミングt5にスイッチング素子Q1がオンされると、図2(b)、図2(h)に示すように、スイッチング素子Q1に略一定のマイナスの電流が流れる。すなわち、図2(h)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q1では、オン時に寄生ダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。図2(a)、図2(g)に示すように、タイミングt3にスイッチング素子Q2がオンされると、図2(c)、図2(f)に示すように、スイッチング素子Q2にサージ電流が流れる。すなわち、図2(f)に一点鎖線で囲って示すように、スイッチング素子Q2では、オン時にゲート信号の電圧変化に対して電流が急激に変化するため、ハードスイッチ動作になる。
【0021】
しかし、突入電流抑制回路4を含むループに共振特性を利用したことにより、スイッチング素子Q2のスイッチング時に流れる電流の一部が突入電流抑制回路4を含むループに流れる。そのため、スイッチング素子Q2に流れる電流は、突入電流抑制回路4を設けない場合に比べて低減される。したがって、電圧×電流で表される損失レベルは、従来よりも低減されている。
【0022】
図2(a)、図2(d)に示すように、タイミングt4にスイッチング素子Q2がオフされると、図2(c)、図2(i)に示すように、スイッチング素子Q2にプラスの電流が流れていたのがゲート信号と同様に変化しゼロになる。すなわち、図2(g)、図2(i)に示すように、スイッチング素子Q2のゲート信号の遷移時間と電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
【0023】
図3(a)~図3(c)における一点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図3(d)~図3(f)に示す。図3(a)~図3(c)における二点鎖線で囲った部分を時間方向に拡大した波形図を図3(g)~図3(i)に示す。図3(a)、図3(d)、図3(g)では、スイッチング素子Q3のゲート信号が実線で示され、スイッチング素子Q4のゲート信号が点線で示される。図3(b)、図3(e)、図3(h)では、スイッチング素子Q3の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q3に流れる電流が点線で示される。図3(c)、図3(f)、図3(i)では、スイッチング素子Q4の両端電圧が実線で示され、スイッチング素子Q4に流れる電流が点線で示される。図3(a)に示すように、スイッチング素子Q3は、タイミングt1にオンされ、タイミングt2にオフされ、タイミングt5にオンされ、タイミングt6にオフされる。スイッチング素子Q4は、タイミングt3にオンされ、タイミングt4にオフされ、タイミングt7にオンされる。t2~t3の期間、t4~t5の期間、t6~t7の期間は、それぞれ、スイッチング素子Q3及びスイッチング素子Q4がいずれもオフ状態であるデッドタイムである。図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt2にスイッチング素子Q3がオフされると、図3(b)、図3(e)に示すように、スイッチング素子Q3の両端電圧が緩やかな傾きで変化し、略一定のマイナスの電流がわずかに流れる。すなわち、図3(e)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q3では、オフ時に寄生ダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電圧が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt5にスイッチング素子Q3がオンされると、図3(b)、図3(h)に示すように、スイッチング素子Q3に略一定のマイナスの電流が流れる。すなわち、図2(h)に点線で囲って示すように、スイッチング素子Q3では、オン時に寄生ダイオードD1に電流が流れゲート信号の電圧変化に対して電流が緩やかに変化するため、ソフトスイッチ動作になる。図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt3にスイッチング素子Q4がオンされると、図3(c)、図3(f)に示すように、スイッチング素子Q4にサージ電流が流れる。すなわち、図3(f)に一点鎖線で囲って示すように、スイッチング素子Q4では、オン時にゲート信号の電圧変化に対して電流が急激に変化するため、ハードスイッチ動作になる。図3(a)、図3(d)に示すように、タイミングt4にスイッチング素子Q4がオフされると、図3(c)、図3(i)に示すように、スイッチング素子Q4にプラスの電流が流れていたのがゲート信号と同様に変化しゼロになる。すなわち、図3(g)、図3(i)に示すように、スイッチング素子Q4のゲート信号の遷移時間と電流の遷移時間とが略等しいため、ソフト・ハードスイッチの境界条件の動作になる。
【0024】
次に、電源装置1における電流経路の時間的変化について図4及び図5を用いて説明する。電流経路の時間的変化は、複数のモードに分類することができる。図4は、複数のモードでの動作を示す波形図である。図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)、図4(e)は、それぞれ、容量素子Cfly、スイッチング素子Q1、スイッチング素子Q2、スイッチング素子Q3、スイッチング素子Q4に流れる電流の時間的変化を示す。図5は、複数のモードでの動作を示す回路図である。複数のモードは、例えば、モード(1)、モード(2)、モード(3)、モード(4)を含む。
【0025】
図2図3に示すタイミングt2,t3がタイミングt11に対応し、タイミングt4,t5がタイミングt12に対応し、タイミングt6がタイミングt14に対応し、タイミングt7がタイミングt15に対応する。
【0026】
図4に示すタイミングt11~t12の期間において、モード(1)の動作が行われる。タイミングt12~t13の期間において、モード(2)の動作が行われる。タイミングt13~t14の期間において、モード(3)の動作が行われる。タイミングt14~t15の期間において、モード(4)の動作が行われる。
【0027】
タイミングt11の直前において、スイッチング素子Q2は、オフ状態に維持されているが、ソース・ドレイン間の寄生容量Cossに電荷が溜まっている。このため、タイミングt11にスイッチング素子Q2はオンするが、その際に寄生容量Coss分急激な電流変化があり、スイッチング素子Q2のオン動作はハードスイッチ動作になる。すなわち、モード(1)では、図5(a)に実線の矢印で示すように、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1に流れていた電流を引き継いで流す。これにより、容量素子Cin1の一端→容量素子Coおよび抵抗素子Ro→誘導素子Lo→スイッチング素子Q2→容量素子Cin1の他端の経路で電流が流れる。ただし、誘導素子Loに流れている電流値が誘導素子Lrに流れる電流値より小さければ、電流の初期値は0Aとなる。
【0028】
同様に、タイミングt11の直前において、スイッチング素子Q4は、オフ状態に維持されているが、ソース・ドレイン間の寄生容量Cossに電荷が溜まっている。このため、タイミングt11にスイッチング素子Q4はオンするが、その際に寄生容量Coss分急激な電流変化があり、スイッチング素子Q4のオン動作はハードスイッチ動作になる。すなわち、モード(1)では、図5(a)に実線の矢印で示すように、スイッチング素子Q4は、スイッチング素子Q3に流れていた電流を引き継いで流す。これにより、容量素子Cin2の一端→スイッチング素子Q2→誘導素子Lr→容量素子Cfly→スイッチング素子Q4→容量素子Cin2の他端の経路で電流が流れる。ただし、電流の初期値は、タイミングt11の直前に誘導素子Lrに流れていた電流値にほぼ等しい。
【0029】
タイミングt12にスイッチング素子Q2,Q4がオフすると、図5(b)に一点鎖線で示すように、スイッチング素子Q2,Q4の寄生容量の比で電流が流れる。すなわち、モード(2)では、容量素子Cin1の一端→容量素子Coおよび抵抗素子Ro→誘導素子Lo→スイッチング素子Q2→容量素子Cin1の他端の経路の電流値と容量素子Cin2の一端→スイッチング素子Q2→誘導素子Lr→容量素子Cfly→スイッチング素子Q4→容量素子Cin2の他端の経路の電流値との比が、スイッチング素子Q2,Q4の寄生容量比になる。
【0030】
その後、スイッチング素子Q1,Q3がオンする。このとき、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作の共振周波数がスイッチング素子Q1~Q4のスイッチング周波数に比べて低い。このため、容量素子Cin2、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作により電圧が緩やかに変化し、スイッチング素子Q1,Q3のオン動作はソフトスイッチ動作になる。
【0031】
タイミングt13になると、スイッチング素子Q2,Q4のソース・ドレイン間電圧がVin/2まで上昇し、スイッチング素子Q1,Q3のダイオードDが順バイアスとなり、図5(c)に示すように、スイッチング素子Q1,Q3のダイオードDに順方向電流が流れる。すなわち、モード(3)では、ノードN2→スイッチング素子Q1のダイオードD→容量素子Coおよび抵抗素子Ro→誘導素子Loの経路の電流(第1の電流)と、容量素子Cin1の一端→スイッチング素子Q1→ノードN2→誘導素子Lr→容量素子Cfly→スイッチング素子Q3のダイオード→容量素子Cin1の他端の経路の電流(第2の電流)とが、それぞれ流れる。この第2の電流について、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループで形成される共振回路の共振動作により逆方向の電流が流れる。容量素子Cin1の他端→スイッチング素子Q3→容量素子Cfly→誘導素子Lr→ノードN2→スイッチング素子Q1のダイオード→容量素子Cin2の経路の電流(第3の電流)が流れる。第2の電流と第3の電流とは交互に流れる。
【0032】
タイミングt14になると、スイッチング素子Q1,Q3がオフする。このとき、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作の共振周波数がスイッチング素子Q1~Q4のスイッチング周波数に比べて低い。このため、容量素子Cin1、誘導素子Lr、容量素子Cflyのループの共振動作により電圧が緩やかに変化し、スイッチング素子Q1,Q3のオフ動作はソフトスイッチ動作になる。
【0033】
例えば、モード(4)では、図5(d)に一点鎖線の矢印で示すように、スイッチング素子Q3の寄生容量Cossと誘導素子Lrとにより半波共振し、容量素子Cin1の他端→スイッチング素子Q3→容量素子Cfly→誘導素子Lr→ノードN2→スイッチング素子Q1のダイオード→容量素子Cin2の経路の電流(第3の電流)が流れる。その後、図5(d)に点線の矢印で示すように、スイッチング素子Q3のダイオードDの順方向電流に切り替わり、容量素子Cin1の一端→スイッチング素子Q1→ノードN2→誘導素子Lr→容量素子Cfly→スイッチング素子Q3のダイオード→容量素子Cin1の他端の経路の電流(第2の電流)が流れる。
【0034】
タイミングt14になると、スイッチング素子Q2,Q4がオンし、モード(1)に戻る。スイッチング素子Q2,Q4のオン動作は、ハードスイッチ動作になる。
【0035】
以上のように、実施形態では、電源装置1は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3に加えて突入電流抑制回路4を有する。突入電流抑制回路4は、スイッチトキャパシタ回路2及び降圧チョッパ回路3の間に接続され、容量素子Cfly及び誘導素子Lrの直列接続を含む。これにより、突入電流抑制回路4がスイッチトキャパシタ回路2との間で共振回路を過渡的に形成できる。例えば、過渡的に形成される共振回路の共振周波数をスイッチトキャパシタ回路2におけるスイッチング素子のスイッチング周波数より低くし、共振を利用して電流の位相を遅らせることなどにより、スイッチング動作時の突入電流を抑制できる。
【0036】
したがって、スイッチトキャパシタのメリットである、素子にかかる電圧の緩和と、共振を利用したソフトスイッチングにより突入電流を抑制しつつスイッチストレスを抑えた高効率の回路が実現できる。また、本来ハードスイッチ動作となってしまう降圧チョッパのスイッチに対しても共振を利用することで、導通損失の抑制、スイッチング損失の抑制により、レギュレーションを維持しながら半導体部品のストレスも抑えることができる。これにより、部品のコストアップを抑えかつ低損失となることから電源装置1全体の小型化が容易である。
【0037】
なお、電源装置1iは、図6に示すように、正の電源電圧Vinを受けるように構成されてもよい。図6は、実施形態の変形例に係る電源装置の構成を示す回路図である。電源装置1iは、入力ノードNin1に代えて入力ノードNin2がグランド電位に接続され、正の電源電圧Vinで動作する電源装置である。電源装置1(図1参照)に対して対称な回路構成を有する。電源装置1iは、降圧チョッパ回路3及び突入電流抑制回路4(図1参照)に代えて降圧チョッパ回路3i及び突入電流抑制回路4iを有する。降圧チョッパ回路3iは、スイッチング素子Q1に代えてスイッチング素子Q4を有する。降圧チョッパ回路3iは、スイッチング素子Q4をスイッチトキャパシタ回路2と共有する。
【0038】
降圧チョッパ回路3iは、降圧チョッパ回路3と対称な回路構成を有する。誘導素子Loは、ノードN2iと出力ノードNout1との間に電気的に接続される。誘導素子Loは、一端がノードN2iに接続され、他端が出力ノードNout1に接続される。
【0039】
突入電流抑制回路4iは、突入電流抑制回路4と対称な回路構成を有する。容量素子Cflyは、ノードN2iとノードN3iとの間に電気的に接続される。容量素子Cflyは、一端がノードN2iに接続され、他端がノードN3iに接続される。ノードN2iは、誘導素子Loの一端と容量素子Cflyの一端とスイッチング素子Q3のソースとスイッチング素子Q4のドレインとに接続される。ノードN3iは、スイッチング素子Q1のソースとスイッチング素子Q2のドレインとに接続される。
【0040】
このような構成によっても、突入電流抑制回路4iがスイッチトキャパシタ回路2との間で共振回路を過渡的に形成できる。例えば、過渡的に形成される共振回路の共振周波数をスイッチトキャパシタ回路2におけるスイッチング素子のスイッチング周波数より低くし、共振を利用して電流の位相を遅らせることなどにより、スイッチング動作時の突入電流を抑制できる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1,1i 電源装置
2 スイッチトキャパシタ回路
3,3i 降圧チョッパ回路
4,4i 突入電流抑制回路
Cfly,Cin1,Cin2,Co 容量素子
Lo,Lr 誘導素子
Q1~Q4 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6