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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095379
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20230629BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20230629BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/092 510
A61M25/098
A61M25/00 624
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211223
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】林 伸明
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB06
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB31
4C267BB40
4C267BB52
4C267BB63
4C267CC08
4C267EE03
4C267GG04
4C267GG34
4C267HH04
4C267HH08
4C267HH11
4C267HH16
(57)【要約】
【課題】更に操作性に優れた構造の医療機器を提供する。
【解決手段】医療機器100は、長尺な医療機器本体10と、それぞれ医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第1操作ワイヤ41及び第2操作ワイヤ42と、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引可能な操作部70と、を備えており、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とは、医療機器本体10の横断面において、互いに対極の位置に配置されている。第1操作ワイヤ41の先端は、医療機器本体10の先端部10aに固定されており、第2操作ワイヤ42の先端は、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第1操作ワイヤ41の先端よりも基端側の位置に固定されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な医療機器本体と、
それぞれ前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第1操作ワイヤ及び第2操作ワイヤと、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引可能な操作部と、
を備え、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、前記医療機器本体の横断面において、互いに対極の位置に配置されており、
前記第1操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の先端部に固定されており、
前記第2操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作ワイヤの先端よりも基端側の位置に固定されている医療機器。
【請求項2】
前記第2操作ワイヤの破断強度が前記第1操作ワイヤの破断強度よりも大きい請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記操作部による牽引によって前記第2操作ワイヤに付与可能な張力の最大値が、前記操作部による牽引によって前記第1操作ワイヤに付与可能な張力の最大値よりも大きい請求項1又は2に記載の医療機器。
【請求項4】
前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第3操作ワイヤを更に備え、
前記第3操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面において、前記第2操作ワイヤの近傍の位置に配置されており、
前記第3操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第2操作ワイヤの先端よりも先端側の位置に固定されている請求項1から3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第4操作ワイヤを更に備え、
前記第4操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面において、前記第1操作ワイヤの近傍の位置に配置されており、
前記第4操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第3操作ワイヤの先端よりも基端側の位置に固定されており、
前記第4操作ワイヤの破断強度が前記第3操作ワイヤの破断強度よりも大きい請求項4に記載の医療機器。
【請求項6】
前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第5操作ワイヤを更に備え、
前記第5操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面の周方向において、前記第1操作ワイヤ及び前記第4操作ワイヤの配置領域と、前記第2操作ワイヤ及び前記第3操作ワイヤの配置領域と、の中間の領域に配置されており、
前記第5操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端よりも先端側の位置に固定されている請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端の固定位置は、前記医療機器本体の長手方向において互いに同等の位置となっており、
先端の固定位置が、前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端の固定位置よりも先端側となっている操作ワイヤの本数が、
前記第2操作ワイヤ及び前記第4操作ワイヤと同等の位置に先端が固定されている操作ワイヤの本数以上である請求項6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記医療機器本体の前記先端部に固定されている第1マーカと、
前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1マーカよりも基端側の位置に固定されている第2マーカと、
を備え、
前記第1操作ワイヤの先端と前記第3操作ワイヤの先端とが前記第1マーカに固定されており、
前記第2操作ワイヤの先端が前記第2マーカに固定されている請求項4から7のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項9】
前記医療機器本体は、補強層を含み、
前記第2マーカよりも基端側における前記補強層の曲げ剛性が、前記第2マーカよりも先端側における前記補強層の曲げ剛性よりも大きく、
前記第2マーカよりも基端側における前記医療機器本体の曲げ剛性が、前記第2マーカよりも先端側における前記医療機器本体の曲げ剛性よりも大きい請求項8に記載の医療機器。
【請求項10】
当該医療機器は、カテーテルであり、
前記医療機器本体は、当該医療機器本体の先端において開口しているルーメンを有する請求項1から9のいずれか一項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
先端部の屈曲操作が可能な医療機器としては、操作ワイヤを有するタイプのものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の医療機器においては、中央のルーメンの周囲に複数の中空管が配置されており、中央のルーメンを介して対向する2本の中空管の内部にそれぞれ操作ワイヤが挿通されている。同文献の医療機器においては、操作ワイヤの先端は、当該カテーテルの先端部に固定されている。同文献の医療機器は、操作ワイヤの後端を牽引操作することが可能に構成されている。これにより、操作ワイヤを選択して牽引することでカテーテルの先端部を屈曲させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-48711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の医療機器では、医療機器の操作性について、なお改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、より操作性に優れた構造の医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長尺な医療機器本体と、
それぞれ前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第1操作ワイヤ及び第2操作ワイヤと、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引可能な操作部と、
を備え、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、前記医療機器本体の横断面において、互いに対極の位置に配置されており、
前記第1操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の先端部に固定されており、
前記第2操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作ワイヤの先端よりも基端側の位置に固定されている医療機器を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、医療機器の操作性をより向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)及び図1(b)は第1実施形態に係る医療機器の先端部を示す図であり、このうち図1(a)は屈曲操作が行われていない状態を示し、図1(b)は屈曲操作が行われている状態を示す。
図2】第1実施形態における医療機器本体の縦断面図である。
図3図2のA-A線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図4図2のB-B線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図5】第1実施形態に係る医療機器の操作部及びその近傍の部分を示す側面図である。
図6】第1実施形態に係る医療機器の操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
図7図7(a)は第1実施形態における張力解除機構の側面図であり、図7(b)は第1実施形態における第1回転部材の側面図であり、図7(c)は第1実施形態における係合凹部と係合凸部とが係合している状態を示し、図7(d)は第1実施形態における係合凸部と係合凹部との係合が解除されている状態を示す。
図8図8(a)、図8(b)及び図8(c)の各々は第1実施形態における医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
図9図9(a)及び図9(b)は第1実施形態における医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
図10】第2実施形態に係る医療機器の先端部を示す図である。
図11】第2実施形態における医療機器本体の縦断面図である。
図12図11のA-A線に沿った医療機器本体の横断面図である。
図13】第2実施形態に係る医療機器の操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
図14】第3実施形態における医療機器本体の縦断面図である。
図15図14のA-A線に沿った断面図である。
図16】第3実施形態に係る医療機器の操作部及びその近傍の部分を示す平面図である。
図17図17(a)、図17(b)及び図17(c)の各々は第3実施形態における医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図であり、このうち図17(a)は平面図、図17(b)は図17(a)に示す矢印Aの方向に視た図、図17(c)は図17(a)に示す矢印Bの方向に視た図である。
図18】第3実施形態における医療機器本体の先端部の屈曲動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
本実施形態に係るカテーテルの各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0011】
本実施形態の説明に用いられる用語は、特段の断りがない限り、以下のとおり定義される。
先端部とは、医療機器100の各部において、医療機器100の挿入先端側の端部(遠位端)であり、基端部とは、医療機器100の各部において、医療機器100の基端側の端部(近位端部)である。
また、軸心とは、医療機器本体10の長手方向に沿った中心軸を意味する。
医療機器本体10の縦断面とは、医療機器本体10を軸心に沿って切断した断面をいう。
医療機器本体10の横断面とは、医療機器100を軸心に対して直交する平面で切断した断面をいう。
【0012】
〔第1実施形態〕
先ず、図1(a)から図8(c)を用いて第1実施形態を説明する。なお、図1(a)及び図1(b)においては、第1操作ワイヤ41~第3操作ワイヤ43を破線で示している。また、図2図3のA-A線に沿った断面図である。図5においては、部分的に操作部70の本体ケース70aを破断して本体ケース70aの内部の構造を示している。
【0013】
図1(a)、図2及び図3に示すように、本実施形態に係る医療機器100は、長尺な医療機器本体10と、それぞれ医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第1操作ワイヤ41及び第2操作ワイヤ42と、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引可能な操作部70と、を備えている。
第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とは、医療機器本体10の横断面において、互いに対極の位置に配置されている。
第1操作ワイヤ41の先端は、医療機器本体10の先端部10aに固定されており、第2操作ワイヤ42の先端は、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第1操作ワイヤ41の先端よりも基端側の位置に固定されている。
ここで、対極の位置とは、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とが、医療機器本体10の周方向において互いに160度以上離間していることを意味しており、好ましくは、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とは、医療機器本体10の周方向において互いに170度以上離間している。
【0014】
本実施形態によれば、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とのうち第1操作ワイヤ41を選択的に牽引することにより、医療機器本体10の先端部10aを一方向(以下、第1方向)に選択的に屈曲させることができる。更には、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引することにより、図1(b)に示すように、医療機器本体10の先端部10aにおいて、主として第2操作ワイヤ42の先端よりも先端側の領域(以下、第1領域12)を第1方向に屈曲させつつ、主として第2操作ワイヤ42の先端よりも基端側の領域(以下、第2領域14)を第2方向に屈曲させることができる。また、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とのうち第2操作ワイヤ42を選択的に牽引することにより、医療機器本体10の先端部10aを第1方向とは反対方向(第2方向)に屈曲させることができる。すなわち、血管等の体腔の分岐部の分岐方向に応じて、医療機器本体10をより高い自由度で屈曲させることが可能となるので、医療機器100の分岐選択性を向上させることができる。よって、医療機器100の操作性を向上させることができる。
【0015】
本実施形態の場合、医療機器100は、一例として、カテーテルである。より詳細には、例えば、医療機器100は、医療機器本体10を血管内に挿通させて用いられる血管内カテーテルである。ただし、医療機器100は、例えば、カテーテルを体腔内に挿通する際に用いられるガイドワイヤであってもよい。
【0016】
本実施形態の場合、図1(a)、図2及び図3に示すように、医療機器100は、医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第3操作ワイヤ43を更に備えている。
第3操作ワイヤ43は、医療機器本体10の横断面において、第2操作ワイヤ42の近傍の位置に配置されており、第3操作ワイヤ43の先端は、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第2操作ワイヤ42の先端よりも先端側の位置に固定されている。
このような構成によれば、第3操作ワイヤ43を牽引することにより、医療機器本体10の先端部10aを、第1操作ワイヤ41を牽引することにより屈曲する方向に対する実質的な反対方向に屈曲させることができる。
ここで、第2操作ワイヤ42の近傍の位置に配置されているとは、医療機器本体10の周方向において、第2操作ワイヤ42の位置から20度以内の位置を意味しており、好ましくは第2操作ワイヤ42の位置から10度以内の位置である。
医療機器本体10の周方向において、第1操作ワイヤ41と、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43と、は互いに対極の位置に配置されている。
また、第3操作ワイヤ43は、医療機器本体10の横断面において、第2操作ワイヤ42の近傍の位置に配置されているため、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とは、医療機器本体10の横断面において、互いに対極の位置に配置されている。
ここで、対極の位置とは、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とが、医療機器本体10の周方向において互いに160度以上離間していることを意味しており、好ましくは、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とは、医療機器本体10の周方向において互いに170度以上離間している。
【0017】
より詳細には、本実施形態の場合、例えば、図2及び図3に示すように、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。また、第2操作ワイヤ42と第3操作ワイヤ43とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、医療機器本体10の周方向において、互いに略同等の位置に配置されている。したがって、第3操作ワイヤ43と第1操作ワイヤ41とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。
本実施形態の場合、第1操作ワイヤ41を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向と、第3操作ワイヤ43又は第2操作ワイヤ42を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向とは、互いに反対方向となる。
第1操作ワイヤ41、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43は、それぞれ金属又は樹脂などの細線により構成されている。
【0018】
ここで、本実施形態の場合、第2操作ワイヤ42の破断強度が第1操作ワイヤ41の破断強度よりも大きい。
これにより、第2操作ワイヤ42をより強く牽引することができる。
より詳細には、本実施形態の場合、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とは、例えば、互いに同種の材料によって構成されている。一方、第2操作ワイヤ42の線径が、第1操作ワイヤ41の線径よりも大きい寸法に設定されていることによって、第2操作ワイヤ42の破断強度を第1操作ワイヤ41の破断強度よりも大きくすることができる。ただし、例えば、第2操作ワイヤ42を構成している材料として、第1操作ワイヤ41を構成している材料の破断強度よりも大きい破断強度を有するものを用いることによって、第2操作ワイヤ42の破断強度を第1操作ワイヤ41の破断強度よりも大きくすることもできる。
また、本実施形態の場合、一例として、第3操作ワイヤ43と第1操作ワイヤ41とは、互いに同種の材料によって構成されており、第3操作ワイヤ43の線径は、例えば、第1操作ワイヤ41の線径と略同等の寸法に設定されている。
なお、例えば、第3操作ワイヤ43の線径と第1操作ワイヤ41の線径とは互いに異なる寸法に設定されていてもよい。また、第3操作ワイヤ43と第1操作ワイヤ41とは、例えば、互いに異なる種類の材料によって構成されていてもよい。
【0019】
第1操作ワイヤ41の線径及び第3操作ワイヤ43の線径は、特に限定されないが、10μm以上60μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
第2操作ワイヤ42の線径は、特に限定されないが、30μm以上180μm以下であることが好ましく、60μm以上150μm以下であることがより好ましい。
ただし、上述のように、第1操作ワイヤ41の線径よりも第2操作ワイヤ42の線径の方が大きいことが好ましい。
【0020】
本実施形態の場合、医療機器本体10は、当該医療機器本体10の先端において開口しているルーメン20を有する。
図2及び図3に示すように、医療機器本体10は、例えば、内層22と、内層22の周囲に設けられた外層23と、を備える二層構造であり、医療機器本体10の軸心側から、内層22と外層23との順に積層されて構成されている。
内層22は、医療機器本体10の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層22は、医療機器本体10の先端と基端との両端において開口している。本実施形態の場合、ルーメン20は、内層22の内周面によって画定されている。
内層22は、例えば、フッ素系やオレフィン系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、同様にオレフィン系ポリマー材料はポリエチレンなどとすることができる。
外層23は医療機器本体10の最外層である。例えば、医療機器本体10の肉厚の大部分(過半部)は、外層23の肉厚によって占められている。外層23は、例えば、その肉厚が軸方向における位置にかかわらず略一定の円管状に形成されている。ただし、外層23の先端部の先端の外径は、例えば、先端側に向けて僅かに縮径している。
医療機器本体10の外表層には、必要に応じて、親水性コートが形成されていてもよい。
ルーメン20は、医療機器本体10の先端から基端に亘って連続的に形成されており、医療機器本体10の先端と基端においてそれぞれ開口している。
【0021】
図2から図4に示すように、医療機器本体10は、更に、それぞれ外層23に埋設されている第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33を備えている。
第1中空管31には第1操作ワイヤ41が挿通されており、第2中空管32には第2操作ワイヤ42が挿通されており、第3中空管33には第3操作ワイヤ43が挿通されている。
第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33は、それぞれサブルーメンチューブであり、これらサブルーメンチューブの内腔はサブルーメンである。すなわち、各操作ワイヤ(第1操作ワイヤ41、第2操作ワイヤ42、第3操作ワイヤ43)は、サブルーメンに挿通されている。
第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33の内径は、ルーメン20の内径よりも小さい。
【0022】
本実施形態の場合、第2操作ワイヤ42及び第2中空管32と、第3操作ワイヤ43及び第3中空管33とが、医療機器本体10の径方向において並んで配置されている。そして、第3操作ワイヤ43及び第3中空管33が、第2操作ワイヤ42及び第2中空管32よりも医療機器本体10の径方向外方(医療機器本体10の軸心から遠い位置)に配置されている。
ただし、例えば、第2操作ワイヤ42及び第2中空管32と、第3操作ワイヤ43及び第3中空管33とが、医療機器本体10の周方向において並んで配置されていてもよい。また、径方向において、医療機器本体10の軸心と第2操作ワイヤ42の軸心(又は第2中空管32の軸心)との離間距離は、例えば、医療機器本体10の軸心と第3操作ワイヤ43の軸心(又は第3中空管33の軸心)との離間距離と略同等であってもよい。
【0023】
第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33の材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等の樹脂材料、またはポリエチレン等を用いることができる。
【0024】
図1(a)及び図2に示すように、医療機器本体10の先端部10aには、放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状の第1マーカ61が埋設されている。
第1マーカ61は、ルーメン20と同軸に、且つ、ルーメン20の周囲に配置されている。
第1マーカ61は、例えば、補強層51の周囲に配置されている。
【0025】
更に、医療機器本体10において、第1マーカ61が埋設されている部位よりも基端側の部位には、放射線不透過性の金属材料により構成されているリング状の第2マーカ63が埋設されている。
第2マーカ63は、ルーメン20と同軸に、且つ、ルーメン20の周囲に配置されている。
第2マーカ63は、例えば、補強層51の周囲に配置されている。
なお、第2マーカ63には、例えば、当該第2マーカ63の肉厚部分を軸方向に貫通した貫通孔(不図示)が形成されていてもよい。また、第2マーカ63は、例えば、当該第2マーカ63の周方向における一部分が途切れており、軸方向に視た形状が略C字形状となっていてもよい。
【0026】
例えば、第1マーカ61と第2マーカ63とは互いに同一の内径を有している。例えば、第1マーカ61の外径は、第2マーカ63の外径よりも大きい。
【0027】
第1操作ワイヤ41の先端及び第1中空管31の先端は、例えば、不図示の半田、溶接、又は摩擦抵抗が生じる機械的な接手等によって、第1マーカ61の基端に対して固定されている。
第2操作ワイヤ42の先端及び第2中空管32の先端は、例えば、不図示の半田、溶接、又は摩擦抵抗が生じる機械的な接手等によって、第2マーカ63の基端に対して固定されている。
第3操作ワイヤ43の先端及び第3中空管33の先端は、例えば、不図示の半田、溶接、又は摩擦抵抗が生じる機械的な接手等によって、第1マーカ61の基端に対して固定されている。
したがって、第1操作ワイヤ41の先端と第3操作ワイヤ43の先端とは医療機器本体10の軸方向において互いに同位置(略同位置)に配置されている。
【0028】
このように、医療機器100は、医療機器本体10の先端部10aに固定されている第1マーカ61と、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第1マーカ61よりも基端側の位置に固定されている第2マーカ63と、を備え、第1操作ワイヤ41の先端と第3操作ワイヤ43の先端とが第1マーカ61に固定されており、第2操作ワイヤ42の先端が第2マーカ63に固定されている。
なお、本発明において、医療機器100が備えるマーカの数は、例えば、2つ以上であってもよい。
【0029】
本実施形態の場合、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第2マーカ63の先端よりも先端側の領域が、第1領域12となっており、第2マーカ63の先端よりも基端側の領域が、第2領域14となっている。なお、先端部10aにおいて、第1領域12の長さ及び第2領域14の長さは、医療機器本体10の軸方向において、第1マーカ61と第2マーカ63との距離を所望の距離に設定することによって、調節することができる。
【0030】
また、第1操作ワイヤ41の先端部は第1マーカ61に固定されることで、間接的に、医療機器本体10の先端部10aに固定されており、第3操作ワイヤ43の先端部は第2マーカ63に固定されることで、間接的に、医療機器本体10の先端部10aに固定されている。
【0031】
図1(a)及び図2に示すように、第1操作ワイヤ41は、医療機器本体10における第2マーカ63の配設領域よりも径方向外側の部分を通して、第2マーカ63よりも基端側の領域から第2マーカ63よりも先端側の領域へと引き回されている。
より詳細には、第1操作ワイヤ41が挿通されている第1中空管31も、医療機器本体10における第2マーカ63の配設領域よりも径方向外側の部分を通して、第2マーカ63よりも基端側の領域から第2マーカ63よりも先端側の領域へと引き回されている。
ただし、本発明において、径方向における、医療機器本体10の軸心と第1操作ワイヤ41の軸心(又は第1中空管31の軸心)との離間距離は、例えば、医療機器本体10の軸心と第2操作ワイヤ42の軸心(又は第2中空管32の軸心)との離間距離と略同等であってもよい。
【0032】
同様に、第3操作ワイヤ43は、医療機器本体10における第2マーカ63の配設領域よりも径方向外側の部分を通して、第2マーカ63よりも基端側の領域から第2マーカ63よりも先端側の領域へと引き回されている。
より詳細には、第3操作ワイヤ43が挿通されている第3中空管33も、医療機器本体10における第2マーカ63の配設領域よりも径方向外側の部分を通して、第2マーカ63よりも基端側の領域から第2マーカ63よりも先端側の領域へと引き回されている。
ただし、本発明において、径方向における、医療機器本体10の軸心と第3操作ワイヤ43の軸心(又は第3中空管33の軸心)との離間距離は、例えば、医療機器本体10の軸心と第2操作ワイヤ42の軸心(又は第2中空管32の軸心)との離間距離と略同等であってもよい。
【0033】
ここで、本実施形態の場合、医療機器本体10は、補強層51を含む。第2マーカ63よりも基端側における補強層51の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における補強層51の曲げ剛性よりも大きい。第2マーカ63よりも基端側における医療機器本体10の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における医療機器本体10の曲げ剛性よりも大きい。
より詳細には、図2及び図3に示すように、補強層51は、例えば、外層23に埋設されているブレード層53と、外層23に埋設されている巻回ワイヤ55と、を含む。ブレード層53及び巻回ワイヤ55の各々は、医療機器本体10の先端側から基端部10bに亘って延在している。ただし、図2に示すように、ブレード層53の先端は、例えば、軸方向において、第2マーカ63の先端の位置と略同等の位置に配置されている。一方、巻回ワイヤ55の先端は、例えば、軸方向において、第1マーカ61の先端の位置と略同等の位置に配置されている。
これにより、医療機器本体10において、第2マーカ63よりも基端側の領域はブレード層53と巻回ワイヤ55とによって補強されている一方で、第2マーカ63よりも先端側の領域は巻回ワイヤ55によって補強されている構成となる。よって、第2マーカ63よりも基端側における医療機器本体10の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における医療機器本体10の曲げ剛性よりも大きい構成となる。
ブレード層53は、複数本のワイヤを編組することにより構成されている。ブレード層53は、例えば、内層22の周囲に配置されている。
なお、第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33は、例えば、補強層51よりも医療機器本体10の径方向外方(医療機器本体10の軸心から遠い位置)に配置されている。
ブレード層53を構成するワイヤの材料は、例えば、ステンレスやタングステンなどの金属材料が好ましいが、樹脂材料であってもよい。
巻回ワイヤ55は、補強層51、第1中空管31、第2中空管32及び第3中空管33よりも医療機器本体10の径方向外方において巻回されている。
巻回ワイヤ55を構成するワイヤの材料は、例えば、ステンレスやタングステンなどの金属材料が好ましいが、樹脂材料であってもよい。
なお、本発明において、ブレード層53の先端は、例えば、第1マーカ61の先端の位置(巻回ワイヤ55の先端の位置)と略同等の位置に配置されていてもよい。この場合例えば、ブレード層53は、第1領域12において、第2領域14におけるワイヤの本数よりも少ない本数のワイヤによって構成されているか、第1領域12におけるブレード層53の編目の開口幅が、第2領域14におけるブレード層53の編目の開口幅よりも大きくなっていることが好ましい。このようにすることにより、第2マーカ63よりも基端側における医療機器本体10の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における医療機器本体10の曲げ剛性よりも大きい構成とすることができる。
また、本発明において、補強層51は、例えば、ブレード層53の代わりに、ワイヤを複数回巻回することによって構成されているコイル層(不図示)を備えていてもよい。
【0034】
図5及び図6に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、医療機器本体10の基端部に設けられているハブ91を有する。
ハブ91は、当該ハブ91の基端から図示しない注入器(シリンジ)を挿入するための連結部93を有している。連結部93の外周には、シリンジを着脱可能に固定できるようにねじ溝が形成されている。
ハブ91は、ハブ91の軸心を介して互いに対向する2枚の羽部92を当該ハブ91の外周に有している。
ハブ91の先端部には、医療機器本体10の基端部が差し込み固定されている。これにより、医療機器本体10の内側のルーメン20と、ハブ91の内部空間とが相互に連通している。
ハブ91の軸心を中心として羽部92を回転させることにより、医療機器本体10の全体を軸回転させるトルク操作が可能である。
ハブ91の先端側には、以下に説明する操作部70の本体ケース70aが連接固定されている。
【0035】
上述のように、医療機器100は、医療機器本体10の先端部10aの屈曲操作を行うための操作部70を備えている。操作部70に対し、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とのうち一方を選択的に牽引する操作と、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引する操作と、が可能となっている。
【0036】
図5及び図6に示すように、操作部70は、例えば、本体ケース70aと、本体ケース70aに対して回転可能に軸支されている第1回転部材71と、を備えている。
第1回転部材71は、例えば、プーリである。
ここで、本明細書において、ある部材が回転可能とは、360度以上回転可能な態様に限らず、360度未満の所定の角度範囲での揺動のみが可能な態様も含む。
より詳細には、第1回転部材71には、当該第1回転部材71と同軸に、円盤状などの形状の第1ダイヤル操作部74が係合している。第1ダイヤル操作部74が本体ケース70aに対して回転可能に軸支されていることにより、第1回転部材71は、間接的に、本体ケース70aに対して回転可能に軸支されている。
【0037】
医療機器本体10の基端部10bは、本体ケース70aの内部を通して、本体ケース70aの基端側に導かれており、ハブ91の先端部に差し込み固定されている。
第1ダイヤル操作部74の回転軸は、本体ケース70a内における医療機器本体10の軸心方向に対して直交する方向に延在している。
【0038】
図6に示すように、第1ダイヤル操作部74の少なくとも一部分が本体ケース70aの外部に露出しており、医療機器100の操作を行う操作者が第1ダイヤル操作部74を本体ケース70aの外部から行うことができるようになっている。
【0039】
更に、操作部70は、例えば、本体ケース70aに対して軸方向に摺動可能に固定されている第1スライダ操作部81を備えている。
本体ケース70aには、軸方向に延在している不図示のスライド孔が形成されており、第1スライダ操作部81は、当該スライド孔によって案内されて、本体ケース70aに対して相対的に軸方向において摺動可能となっている。
図6に示すように、第1スライダ操作部81の少なくとも一部分が、スライド孔を介して本体ケース70aの外部に露出しており、医療機器100の操作を行う操作者が第1スライダ操作部81を基端側又は先端側に摺動させる操作を本体ケース70aの外部から行うことができるようになっている。
【0040】
図5に示すように、第1操作ワイヤ41、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43の各々は、本体ケース70a内においてそれぞれ医療機器本体10から導出されている。
第1操作ワイヤ41の基端部は、例えば、第1回転部材71に対して1周半巻回されて、当該第1操作ワイヤ41の基端が第1回転部材71に固定されている。
また、第3操作ワイヤ43の基端部は、例えば、第1回転部材71に対して1周半巻回されて、当該第3操作ワイヤ43の基端が第1回転部材71に固定されている。
第1回転部材71に対する第1操作ワイヤ41の巻回方向と第3操作ワイヤ43の巻回方向とは互いに反対方向となっている。
第1ダイヤル操作部74に対する回転操作により、第1ダイヤル操作部74に対して係合している第1回転部材71が一方向に回転すると、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とのうち第1操作ワイヤ41が選択的に基端側に牽引されるようになっている。
また、第1ダイヤル操作部74に対する回転操作により、第1回転部材71が上記一方向に対する反対方向に回転すると、第1操作ワイヤ41と第3操作ワイヤ43とのうち第3操作ワイヤ43が選択的に基端側に牽引されるようになっている。
【0041】
第2操作ワイヤ42の基端は、例えば、第1スライダ操作部81に固定されている。
第1スライダ操作部81に対する摺動操作により、軸方向において第1スライダ操作部81が本体ケース70aに対して相対的に基端側に移動すると、第2操作ワイヤ42が基端側に牽引されるようになっている。
【0042】
このため、第1ダイヤル操作部74と第1スライダ操作部81とのうちいずれか一方に対する操作を行うことにより、第1操作ワイヤ41(又は第3操作ワイヤ43)と第2操作ワイヤ42とうちいずれか一方を個別に牽引する操作が可能である。
また、第1ダイヤル操作部74に対する操作と第1スライダ操作部81に対する操作とを並行して行うことにより、第1操作ワイヤ41(又は第3操作ワイヤ43)と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引する操作が可能である。
ここで、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引するとは、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42との双方をともに牽引するタイミングが存在することを意味し、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42との双方の牽引し始めのタイミングが同じになることに限らず、また、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42との牽引し終わりのタイミングが同じになることに限らない。
【0043】
更に、操作部70は、例えば、第1操作ワイヤ41に付与される所定以上の張力を解除する張力解除機構86(図7(a)~図7(d)参照)を備えている。
張力解除機構86は、例えば、第1回転部材71に形成されている係合凹部86aと、第1ダイヤル操作部74に形成されている係合凸部86bと、を含む。
図7(b)に示すように、第1回転部材71の中央部には、第1回転部材71を厚み方向に貫通する開口部が形成されている。第1回転部材71において、開口部の周囲縁部は、例えば、第1回転部材71の周方向に沿って凹と凸が交互に配置されている複数の凹凸を含み、当該凹凸によって複数の係合凹部86aが形成されている。
図7(a)に示すように、本実施形態の場合、第1ダイヤル操作部74には、一対の係合凸部86bが形成されている。一対の係合凸部86bの各々は、径方向外側に向けて凸の形状に形成されている。一対の係合凸部86bは、第1ダイヤル操作部74の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。また、第1ダイヤル操作部74には、第1ダイヤル操作部74を厚み方向に貫通する一対のスリット部86cが形成されている。一対のスリット部86cは、第1ダイヤル操作部74の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。第1ダイヤル操作部74の軸方向に視たときに、各スリット部86cは、例えば、径方向外側に向けて凸の円弧状となっている。各スリット部86cが形成されていることにより、第1ダイヤル操作部74は径方向内側に向けて弾性変形可能となっている。
図7(d)に示すように、各係合凸部86bは、複数の係合凹部86aのうちいずれか1つずつの係合凹部86aに対して係合している。
【0044】
次に、動作を説明する。
【0045】
先ず、第1操作ワイヤ41を選択的に基端側に牽引する操作が行われた場合には、第1操作ワイヤ41に対して張力が付与され、図8(a)に示すように、医療機器本体10の軸心を基準として、第1操作ワイヤ41が挿通されている第1中空管31側(以下、第1方向)に医療機器本体10の先端部10aが屈曲する。
また、第3操作ワイヤ43を選択的に基端側に牽引する操作が行われた場合には、第3操作ワイヤ43に対して張力が付与され、図8(b)に示すように、医療機器本体10の軸心を基準として、第3操作ワイヤ43が挿通されている第3中空管33側(以下、第2方向)に医療機器本体10の先端部10aが屈曲する。ここで、例えば、第1方向及び第2方向は、互いに同一平面(以下、第1仮想平面)に含まれる方向であり、互いに反対方向である。
更に、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42との双方を同時に牽引する操作が行われた場合には、図8(c)に示すように、主として第1領域12が第1方向に屈曲するとともに、主として第2領域14が第2方向に屈曲する。すなわち、第2操作ワイヤ42に対して張力が付与されると、第1領域12よりも基端側の領域において、医療機器本体10の軸心を基準として、第2操作ワイヤ42が挿通されている第2中空管32側(第3中空管33側)に、医療機器本体10の先端部10aが屈曲する。このため、第2操作ワイヤ42の牽引により主として第2領域14が第2方向に屈曲する動作と、第1操作ワイヤ41の牽引により主として第1領域12が第1方向に屈曲する動作とが複合された動作が生じる。
なお、第2操作ワイヤ42を単独で牽引する操作を行ってもよい。この場合には、主として第2領域14が第2方向に屈曲する。
【0046】
このように、本実施形態によれば、医療機器本体10の先端部10aを第1方向に選択的に屈曲させる操作と、医療機器本体10の先端部10aを第2方向に選択的に屈曲させる操作と、主として第1領域12が第1方向に屈曲させるとともに、主として第2領域14が第2方向に屈曲させる操作と、が可能である。よって、体腔(血管等)の各分岐部での医療機器100の分岐選択性が向上する。
より詳細には、例えば、体腔(血管等)の各分岐部(図9(a)及び図9(b)に示す分岐部310~330)に先端部10aを挿入する際には、図9(a)に示すように、先端部10aの先端が、第1分岐部310から分岐している第2分岐部320に近づいたタイミングで、第3操作ワイヤ43を牽引する操作によって先端部10aを第2方向に屈曲させる。これにより、先端部10aを第2分岐部320に挿入することができる。続いて、先端部10aの先端が、第2分岐部320から分岐している第3分岐部330に近づいたタイミングで、第3操作ワイヤ43に対する牽引を解除し、第2操作ワイヤ42を牽引する操作によって先端部10a(主として第2領域14)を第2方向に屈曲させ、バックアップを取った状態とする。より詳細には、第2操作ワイヤ42を基端側に牽引している状態において、医療機器本体10を軸周りに回転させるトルク回転操作を行おうとしても、先端部10aは、医療機器本体10の軸心を基準として、第2中空管32(第2操作ワイヤ42)側が最も湾曲の内側(インコース)にある状態を維持しようとするので、当該回転操作による回転が医療機器本体10に対して伝達されにくくなっている。換言すると、医療機器本体10が軸周りに回転することを抑制することによって、バックアップを取った状態とする。
そして、この状態から、第2操作ワイヤ42を牽引した状態を維持しつつ、第1操作ワイヤ41を牽引することによって、図9(b)に示すように、先端部10aは略S字状に屈曲し第3分岐部330に挿入される。
ここで、本実施形態の場合、上述のように、第2操作ワイヤ42の破断強度が第1操作ワイヤ41の破断強度よりも大きい。
これにより、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引した際に、主として第2領域14が第2方向に屈曲した状態を維持しつつ、主として第1領域12を第1方向に屈曲させることができる。
更には、本実施形態の場合、上述のように、医療機器本体10は、補強層51を含む。第2マーカ63よりも基端側における補強層51の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における補強層51の曲げ剛性よりも大きい。第2マーカ63よりも基端側における医療機器本体10の曲げ剛性が、第2マーカ63よりも先端側における医療機器本体10の曲げ剛性よりも大きい。
これにより、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引した際に、より確実に、主として第2領域14が第2方向に屈曲した状態を維持しつつ、主として第1領域12を第1方向に屈曲させることができる。
【0047】
ここで、本実施形態の場合、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42に付与可能な張力の最大値が、操作部70による牽引によって第1操作ワイヤ41に付与可能な張力の最大値よりも大きい。
これにより、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43に対する第1操作ワイヤ41のバックアップ性を十分に確保することができる。よって、より確実に、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引した際に、主として第2領域14が第2方向に屈曲した状態を維持しつつ、主として第1領域12を第1方向に屈曲させることができる。
【0048】
より詳細には、本実施形態の場合、第1操作ワイヤ41を一定以上の張力で牽引しようとすると、係合凹部86aと係合凸部86bとの係合が一時的に解除され、第1ダイヤル操作部74は第1回転部材71に対して空回りするようになっている。すなわち、第1ダイヤル操作部74が第1回転部材71に対して空回りするときの張力が、第1操作ワイヤ41に対して付与可能な張力の最大値である。
更に詳細には、上述のように、第1操作ワイヤ41の先端は第1マーカ61に固定されているため、操作部70による牽引によって第1操作ワイヤ41を基端側に牽引する力が大きくなると、第1操作ワイヤ41を先端側に引き戻そうとする力も大きくなる。そして、第1操作ワイヤ41を先端側に引き戻そうとする力が一定以上となると、当該力を逃がすために第1回転部材71は径方向内側に向けて弾性変形し、係合凹部86aと係合凸部86bとの係合が一時的に解除される。これにより、第1ダイヤル操作部74は第1回転部材71に対して空回りすることとなる(第1ダイヤル操作部74の回転が第1回転部材71に伝達されなくなる)。
そして、第1操作ワイヤ41を基端側に牽引する力と第1操作ワイヤ41を先端側に引き戻そうとする力とが均衡する状態となると、係合凹部86aと係合凸部86bとが係合し、ひいては第1回転部材71と第1ダイヤル操作部74とが係合した状態が維持される。
ここで、本実施形態の場合、医療機器100は、第1操作ワイヤ41に対して付与可能な張力の最大値(第1ダイヤル操作部74が第1回転部材71に対して空回りするときの張力)が、第1スライダ操作部81を最大まで基端側に摺動させた際に、第2操作ワイヤ42に付与される張力よりも小さくなるように構成されている。このため、操作部70による牽引によって第1操作ワイヤ41に付与される張力が、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42に付与可能な張力の最大値を上回ってしまうことを抑制できる。
本実施形態の場合、操作部70による牽引によって第1操作ワイヤ41に付与可能な張力の最大値は、例えば、係合凹部86aの深さ寸法(径方向における寸法)、スリット部86cの深さ寸法や長さ寸法(周方向における寸法)及び第1回転部材71の弾性力(バネ力)等によって適宜設定することができる。
また、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42に付与可能な張力の最大値は、例えば、第1スライダ操作部81の最大ストローク(軸方向におけるスライド孔の寸法)によって適宜設定することができる。
【0049】
同様に、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42に付与可能な張力の最大値が、操作部70による牽引によって第3操作ワイヤ43に付与可能な張力の最大値よりも大きい。
より詳細には、医療機器100は、第3操作ワイヤ43に対して付与可能な張力の最大値(第1ダイヤル操作部74が第1回転部材71に対して空回りするときの張力)が、第1スライダ操作部81を最大まで基端側に摺動させた際に、第2操作ワイヤ42に付与される張力よりも小さくなるように構成されている。
【0050】
〔第2実施形態〕
次に、図10から図13を用いて第2実施形態を説明する。なお、図11図12のA-A線に沿った断面図である。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では上記の第1実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0051】
本実施形態の場合、医療機器100は、医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第4操作ワイヤ44を更に備えている。
図11及び図12に示すように、第4操作ワイヤ44は、医療機器本体10の横断面において、第1操作ワイヤ41の近傍の位置に配置されており、第4操作ワイヤ44の先端は、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第3操作ワイヤ43の先端よりも基端側の位置に固定されている。そして、第4操作ワイヤ44の破断強度が第3操作ワイヤ43の破断強度よりも大きい。
このような構成によれば、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に牽引することによって、図10に示すように、主として第1領域12を第2方向に屈曲させるとともに、主として第2領域14を第1方向に屈曲させることができる。すなわち、第1操作ワイヤ41と第2操作ワイヤ42とを同時に牽引する操作により行われる屈曲操作と同様の操作(ただし、医療機器本体10の軸心を基準として180度回転対称となる動作)を、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に牽引する操作でも実現できるため、当該屈曲操作に先立って医療機器本体10を軸周りに回転させるトルク回転操作が不要となったり、当該トルク回転操作での回転量を減らしたりすることができる。よって、医療機器100の操作性を向上させることができる。
なお、図11においては、第1操作ワイヤ41~第4操作ワイヤ44を破線で示している。
【0052】
本実施形態の場合、図11及び図12に示すように、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とは、医療機器本体10の横断面において、互いに対極の位置に配置されている。
ここで、対極の位置とは、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とが、医療機器本体10の周方向において互いに160度以上離間していることを意味しており、好ましくは、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とは、医療機器本体10の周方向において互いに170度以上離間している。
より詳細には、本実施形態の場合、例えば、第4操作ワイヤ44と第1操作ワイヤ41とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、医療機器本体10の周方向において、互いに略同等の位置に配置されている。したがって、第4操作ワイヤ44は、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43に対して、医療機器本体10の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。
本実施形態の場合、第4操作ワイヤ44を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向と、第3操作ワイヤ43(又は第2操作ワイヤ42)を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向とは、互いに反対方向となる。
【0053】
図10及び図11に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、外層23に埋設されている第4中空管34を備えており、第4中空管34には第4操作ワイヤ44が挿通されている。
第4中空管34は、第1中空管31~第3中空管33と同様に、サブルーメンチューブであり、サブルーメンチューブの内腔はサブルーメンである。すなわち、第4操作ワイヤ44は、サブルーメンに挿通されている。
第4中空管34の内径は、ルーメン20の内径よりも小さい。
第4操作ワイヤ44は、第1操作ワイヤ41~第3操作ワイヤ43と同様に、金属又は樹脂などの細線により構成されている。
第4操作ワイヤ44の線径は、例えば、第2操作ワイヤ42の線径と略同等に設定されている。したがって、第4操作ワイヤ44の線径は、第1操作ワイヤ41の線径及び第3操作ワイヤ43の線径よりも大きい。
第4操作ワイヤ44の線径は、特に限定されないが、例えば、30μm以上180μm以下であることが好ましく、より好ましくは、60μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0054】
第4操作ワイヤ44の先端及び第4中空管34の先端は、第2マーカ63の基端に固定されている。したがって、第2操作ワイヤ42の先端及び第4操作ワイヤ44の先端の固定位置は、医療機器本体10の長手方向において互いに同等の位置となっている。第1操作ワイヤ41の先端及び第3操作ワイヤ43の先端の固定位置が、第2操作ワイヤ42の先端及び第4操作ワイヤ44の先端の固定位置よりも先端側となっている。
【0055】
本実施形態の場合、操作部70に対して、上述の操作に加えて、第4操作ワイヤ44を個別に基端側に牽引する操作と、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に基端側に牽引する操作と、を行うことができる。
ここで、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に牽引するとは、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44との双方をともに牽引するタイミングが存在することを意味し、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44との双方の牽引し始めのタイミングが同じになることに限らず、また、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44との牽引し終わりのタイミングが同じになることに限らない。
【0056】
より詳細には、図13に示すように、操作部70は、本体ケース70aに対して軸方向に摺動可能に固定されている第2スライダ操作部84を更に備えている。
第2スライダ操作部84は、例えば、第1スライダ操作部81と同様に構成されている。したがって、本体ケース70aには、第2スライダ操作部84を軸方向に沿って案内するスライド孔(不図示)が形成されている。第1スライダ操作部81と第2スライダ操作部84とは、医療機器本体10の軸心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。
図13に示すように、第2スライダ操作部84の少なくとも一部分が本体ケース70aの外部に露出しており、医療機器100の操作を行う操作者が第2スライダ操作部84を摺動させる操作を本体ケース70aの外部から行うことができるようになっている。
第4操作ワイヤ44の基端は、例えば、第2スライダ操作部84に固定されている。
第2スライダ操作部84に対する操作により、軸方向において第2スライダ操作部84が本体ケース70aに対して相対的に基端側に摺動すると、第4操作ワイヤ44が基端側に牽引されるようになっている。
このため、第1ダイヤル操作部74に対する操作と第2スライダ操作部84に対する操作とを並行して行うことにより、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に牽引する操作が可能である。
【0057】
ここで、本実施形態の場合、操作部70による牽引によって第4操作ワイヤ44に付与可能な張力の最大値が、操作部70による牽引によって第3操作ワイヤ43(第1操作ワイヤ41)に付与可能な張力の最大値よりも大きい。
これにより、第3操作ワイヤ43と第4操作ワイヤ44とを同時に牽引することによって、より確実に、主として第1領域12を第2方向に屈曲させるとともに、主として第2領域14を第1方向に屈曲させることができる。
より詳細には、第1ダイヤル操作部74を空回りさせるのに要する張力が、第2スライダ操作部84を最大まで基端側に摺動させた際に、第4操作ワイヤ44に付与される張力よりも小さくなるように構成されている。これにより、操作部70による牽引によって第3操作ワイヤ43に付与される張力が、操作部70による牽引によって第4操作ワイヤ44に付与可能な張力の最大値を上回ってしまうことを抑制できる。
【0058】
〔第3実施形態〕
次に、図14から図18を用いて第3実施形態を説明する。
本実施形態に係る医療機器100は、以下に説明する点で、上記の第1及び第2実施形態に係る医療機器100と相違しており、その他の点では上記の第1及び第2実施形態に係る医療機器100と同様に構成されている。
【0059】
図14及び図15に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第5操作ワイヤ45を更に備えている。
第5操作ワイヤ45は、医療機器本体10の横断面の周方向において、第1操作ワイヤ41及び第4操作ワイヤ44の配置領域と、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43の配置領域と、の中間の領域に配置されている。
第5操作ワイヤ45の先端は、医療機器本体10の先端部10aにおいて、第2操作ワイヤ42の先端及び第4操作ワイヤ44の先端よりも先端側の位置に固定されている。
このような構成によれば、第5操作ワイヤ45を基端側に牽引することにより、医療機器本体10の先端部10aを、第1方向及び第2方向とは異なる方向に屈曲させることができるので、体腔(血管等)の各分岐部での医療機器100の分岐選択性をより向上させることができる。
更には、体腔(血管等)の各分岐部に先端部10aを挿入する際に、屈曲操作に先立って医療機器本体10を軸周りに回転させるトルク回転操作が不要となったり、当該トルク回転操作での回転量を減らしたりすることができる。よって、医療機器100の操作性を向上させることができる。
ここで、本実施形態の場合、第5操作ワイヤ45は、周方向において、第1操作ワイヤ41及び第4操作ワイヤ44の配置領域(又は第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43の配置領域)に対して少なくとも略45度異なる位置に配置されていることが好ましく、略90度異なる位置に配置されていることがより好ましい。
【0060】
第5操作ワイヤ45の先端及び第1操作ワイヤ41(及び第3操作ワイヤ43)の先端の固定位置は、医療機器本体10の長手方向において互いに同等の位置となっている。
図15に示すように、一例として、第5操作ワイヤ45と、第1操作ワイヤ41及び第3操作ワイヤ43とは、医療機器本体10の周方向において互いに略90度異なる位置に配置されている。同様に、一例として、第5操作ワイヤ45と、第3操作ワイヤ43及び第4操作ワイヤ44とは、医療機器本体10の周方向において互いに略90度異なる位置に配置されている。
【0061】
図15に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、例えば、医療機器本体10の長手方向に沿って延在している第6操作ワイヤ46を更に備えている。
第5操作ワイヤ45の先端及び第6操作ワイヤ46の先端の固定位置は、医療機器本体10の長手方向において互いに同等の位置となっている。したがって、第6操作ワイヤ46の先端及び第1操作ワイヤ41(及び第3操作ワイヤ43)の先端の固定位置は、医療機器本体10の長手方向において互いに同等の位置となっている。
第6操作ワイヤ46と第5操作ワイヤ45とが、医療機器本体10の軸中心を基準として、互いに180度回転対称の位置に配置されている。したがって、第6操作ワイヤ46は、医療機器本体10の横断面の周方向において、第1操作ワイヤ41及び第4操作ワイヤ44の配置領域と、第2操作ワイヤ42及び第3操作ワイヤ43の配置領域と、の中間の領域に配置されている。より詳細には、第6操作ワイヤ46と、第1操作ワイヤ41及び第3操作ワイヤ43とは、医療機器本体10の周方向において互いに略90度離間しており、第6操作ワイヤ46と、第3操作ワイヤ43及び第4操作ワイヤ44とは、医療機器本体10の周方向において互いに略90度離間している。
本実施形態の場合、第5操作ワイヤ45を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向(以下、第3方向)と、第6操作ワイヤ46を牽引することにより医療機器本体10の先端部10aが屈曲する方向(以下、第4方向)とは、互いに反対方向となる。
【0062】
図15に示すように、本実施形態の場合、医療機器100は、外層23に埋設されている第5中空管35及び第6中空管36を備えている。第5中空管35には第5操作ワイヤ45が挿通されており、第6中空管36には第6操作ワイヤ46が挿通されている。
第5中空管35及び第6中空管36は、第1中空管31~第3中空管33と同様に、サブルーメンチューブであり、サブルーメンチューブの内腔はサブルーメンである。
第5中空管35の内径及び第6中空管36の内径は、ルーメン20の内径よりも小さい。
第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46は、第1操作ワイヤ41~第3操作ワイヤ43と同様に、金属又は樹脂などの細線により構成されている。
第2操作ワイヤ42及び第4操作ワイヤ44の破断強度は、第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46の破断強度よりも大きい。より詳細には、本実施形態の場合、第1操作ワイヤ41~第6操作ワイヤ46は、互いに同種の材料によって構成されている。ただし、第1操作ワイヤ41~第6操作ワイヤ46は、例えば、互いに異なる種類の材料によって構成されている。
一方、第2操作ワイヤ42及び第4操作ワイヤ44の線径が、第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46線径よりも大きい寸法に設定されていることによって、第2操作ワイヤ42及び第4操作ワイヤ44の破断強度を、第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46の破断強度よりも大きくすることができる。ただし、例えば、第4操作ワイヤ44を構成している材料として、第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46を構成している材料の破断強度よりも大きい破断強度を有するものを用いることによって、第4操作ワイヤ44の破断強度を第5操作ワイヤ45及び第6操作ワイヤ46の破断強度よりも大きくすることもできる。
第5操作ワイヤ45の線径及び第6操作ワイヤ46の線径は、特に限定されないが、10μm以上60μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0063】
図14に示すように、第5中空管35の先端及び第5操作ワイヤ45の先端は、第1マーカ61の基端に固定されている。同様に、第6中空管36の先端及び第6操作ワイヤ46の先端は、第1マーカ61の基端に固定されている。
【0064】
このように、本実施形態の場合、先端の固定位置が、第2操作ワイヤ42の先端及び第4操作ワイヤ44の先端の固定位置よりも先端側となっている操作ワイヤの本数が、第2操作ワイヤ42及び第4操作ワイヤ44と同等の位置に先端が固定されている操作ワイヤの本数以上である。
ここで、同等の位置とは、医療機器本体10の軸方向において、各操作ワイヤの先端どうしの離間距離が、医療機器本体10の外径よりも小さいことを意味する。また、本実施形態のように、各操作ワイヤの先端どうしが互いに共通のマーカ(第1マーカ61又は第2マーカ63)に固定されている場合、軸方向におけるマーカの寸法が、医療機器本体10の外径よりも大きくてもよいが、小さい方が好ましい。
【0065】
本実施形態の場合、操作部70に対し、上述の操作に加えて、第5操作ワイヤ45と第6操作ワイヤ46とのうち一方を選択的に基端側に牽引する操作と、第5操作ワイヤ45と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引する操作と、第6操作ワイヤ46と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引する操作と、が可能となっている。
より詳細には、図16に示すように、操作部70は、本体ケース70aに対して回転可能に軸支されている第2回転部材76と、第2回転部材76に固定されている第2ダイヤル操作部78と、を備えている。
第2回転部材76は、例えば、第1回転部材71と同様に構成されている。第2ダイヤル操作部78は、例えば、第1ダイヤル操作部74と同様に構成されている。
図16に示す例では、第1ダイヤル操作部74と第2ダイヤル操作部78とがそれらの板面に対して直交する方向において互いに重なる配置とされており、第1ダイヤル操作部74の回転軸と第2ダイヤル操作部78の回転軸とが互いに同軸に配置されている。
ただし、第1ダイヤル操作部74の回転軸と第2ダイヤル操作部78の回転軸とは、互いに同軸に配置されていなくてもよい。例えば、第1ダイヤル操作部74と第2ダイヤル操作部78とが医療機器本体10の軸方向において互いに異なる位置に配置されていてもよい。
【0066】
本実施形態の場合、第5操作ワイヤ45の基端部は、例えば、第2回転部材76に対して1周半巻回されて、当該第5操作ワイヤ45の基端が第2回転部材76に固定されている。
また、第6操作ワイヤ46の基端部は、例えば、第2回転部材76に対して1周半巻回されて、当該第6操作ワイヤ46の基端が第2回転部材76に固定されている。
第2回転部材76に対する第5操作ワイヤ45の巻回方向と第6操作ワイヤ46の巻回方向とは互いに反対方向となっている。
【0067】
第2ダイヤル操作部78に対する回転操作により、第2ダイヤル操作部78に対して係合している第2回転部材76が一方向に回転すると、第5操作ワイヤ45と第6操作ワイヤ46とのうち第5操作ワイヤ45が選択的に基端側に牽引される。すると、医療機器本体10の軸心を基準として、第5操作ワイヤ45が挿通されている第5中空管35側に、医療機器本体10の先端部10aが屈曲する。ここで、上記のように、第1操作ワイヤ41の牽引により先端部10aが屈曲する方向(第1方向)と第2操作ワイヤ42の牽引により先端部10aが屈曲する方向(第2方向)とを含む平面を第1仮想平面と称する。第5操作ワイヤ45の牽引により先端部10aが屈曲する方向(第3方向と称する)は、例えば、第1仮想平面に対して直交する第2仮想平面に含まれる方向である。
また、第2ダイヤル操作部78に対する回転操作により、第2回転部材76が上記一方向に対する反対方向に回転すると、第5操作ワイヤ45と第6操作ワイヤ46とのうち第6操作ワイヤ46が選択的に基端側に牽引される。すると、医療機器本体10の軸心を基準として、第6操作ワイヤ46が挿通されている第6中空管36側に、医療機器本体10の先端部10aが屈曲する。すなわち、医療機器本体10の先端部10aは、医療機器本体10の軸心を基準として、第3方向に対する反対方向(第4方向)に屈曲する。第4方向も、第2仮想平面に含まれる方向である。
更に、第5操作ワイヤ45と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)との双方を牽引する操作が行われた場合には、図17(a)から図17(c)に示すように、主として第1領域12が第3方向に屈曲する一方で、主として第2領域14が第2方向(又は第1方向)に屈曲する。すなわち、第1及び第2実施形態においては、先端部10aの屈曲は、上記の第1仮想平面内における二次元的な屈曲であるのに対して、本実施形態の場合、先端部10aを、上記の第1仮想平面内での屈曲と上記の第2仮想平面内での屈曲とが複合された、いわば三次元的(立体的)な屈曲を実現することができる。
また、第6操作ワイヤ46と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)との双方を牽引する操作が行われた場合には、主として第1領域12が第4方向に屈曲する一方で、主として第2領域14が第2方向(又は第1方向)に屈曲する。すなわち、この場合も、先端部10aを三次元的(立体的)に屈曲させることができる。
【0068】
このように、本実施形態によれば、第5操作ワイヤ45と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを同時に牽引する操作、又は、第6操作ワイヤ46と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを同時に牽引する操作によって、医療機器本体10の先端部10aを三次元的(立体的)に屈曲させることができる。よって、例えば、図18に示すように、三次元的(立体的)に分岐している体腔(血管等)の各分岐部(第1分岐部310~第3分岐部330)に対しても、各分岐部に沿って医療機器本体10の先端部10aを挿入することができる。
【0069】
ここで、本実施形態の場合、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)に付与可能な張力の最大値が、操作部70による牽引によって第5操作ワイヤ45に付与可能な張力の最大値よりも大きい。
これにより、バックアップを十分に取ることができるので、第5操作ワイヤ45と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを同時に牽引することによって、より確実に、主として第1領域12を第3方向に屈曲させるとともに、主として第2領域14を第2方向(又は第1方向)に屈曲させることができる。
【0070】
同様に、操作部70による牽引によって第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)に付与可能な張力の最大値が、操作部70による牽引によって第6操作ワイヤ46に付与可能な張力の最大値よりも大きい。
よって、バックアップを十分に取ることができるので、第6操作ワイヤ46と第2操作ワイヤ42(又は第4操作ワイヤ44)とを同時に牽引することによって、より確実に、主として第1領域12を第4方向に屈曲させるとともに、主として第2領域14を第1方向(又は第2方向)に屈曲させることができる。
【0071】
より詳細には、操作部70は、例えば、第5操作ワイヤ45(又は第6操作ワイヤ46)に付与される所定以上の張力を解除する張力解除機構(不図示)を備えている。
張力解除機構は、例えば、張力解除機構86と同様に構成されている。
したがって、医療機器100は、第5操作ワイヤ45(又は第6操作ワイヤ46)に対して付与可能な張力の最大値(第2ダイヤル操作部78が第2回転部材76に対して空回りするときの張力)が、第1スライダ操作部81を最大まで基端側に摺動させた際に、第2操作ワイヤ42に付与される張力よりも小さくなるように構成されている。
【0072】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0073】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)長尺な医療機器本体と、
それぞれ前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第1操作ワイヤ及び第2操作ワイヤと、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとを個別に牽引可能でかつ同時にも牽引可能な操作部と、
を備え、
前記第1操作ワイヤと前記第2操作ワイヤとは、前記医療機器本体の横断面において、互いに対極の位置に配置されており、
前記第1操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の先端部に固定されており、
前記第2操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1操作ワイヤの先端よりも基端側の位置に固定されている医療機器。
(2)前記第2操作ワイヤの破断強度が前記第1操作ワイヤの破断強度よりも大きい(1)に記載の医療機器。
(3)前記操作部による牽引によって前記第2操作ワイヤに付与可能な張力の最大値が、前記操作部による牽引によって前記第1操作ワイヤに付与可能な張力の最大値よりも大きい(1)又は(2)に記載の医療機器。
(4)前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第3操作ワイヤを更に備え、
前記第3操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面において、前記第2操作ワイヤの近傍の位置に配置されており、
前記第3操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第2操作ワイヤの先端よりも先端側の位置に固定されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療機器。
(5)前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第4操作ワイヤを更に備え、
前記第4操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面において、前記第1操作ワイヤの近傍の位置に配置されており、
前記第4操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第3操作ワイヤの先端よりも基端側の位置に固定されており、
前記第4操作ワイヤの破断強度が前記第3操作ワイヤの破断強度よりも大きい(4)に記載の医療機器。
(6)前記医療機器本体の長手方向に沿って延在している第5操作ワイヤを更に備え、
前記第5操作ワイヤは、前記医療機器本体の横断面の周方向において、前記第1操作ワイヤ及び前記第4操作ワイヤの配置領域と、前記第2操作ワイヤ及び前記第3操作ワイヤの配置領域と、の中間の領域に配置されており、
前記第5操作ワイヤの先端は、前記医療機器本体の前記先端部において、前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端よりも先端側の位置に固定されている(5)に記載の医療機器。
(7)前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端の固定位置は、前記医療機器本体の長手方向において互いに同等の位置となっており、
先端の固定位置が、前記第2操作ワイヤの先端及び前記第4操作ワイヤの先端の固定位置よりも先端側となっている操作ワイヤの本数が、
前記第2操作ワイヤ及び前記第4操作ワイヤと同等の位置に先端が固定されている操作ワイヤの本数以上である(6)に記載の医療機器。
(8)前記医療機器本体の前記先端部に固定されている第1マーカと、
前記医療機器本体の前記先端部において、前記第1マーカよりも基端側の位置に固定されている第2マーカと、
を備え、
前記第1操作ワイヤの先端と前記第3操作ワイヤの先端とが前記第1マーカに固定されており、
前記第2操作ワイヤの先端が前記第2マーカに固定されている(4)から(7)のいずれか一項に記載の医療機器。
(9)前記医療機器本体は、補強層を含み、
前記第2マーカよりも基端側における前記補強層の曲げ剛性が、前記第2マーカよりも先端側における前記補強層の曲げ剛性よりも大きく、
前記第2マーカよりも基端側における前記医療機器本体の曲げ剛性が、前記第2マーカよりも先端側における前記医療機器本体の曲げ剛性よりも大きい(8)に記載の医療機器。
(10)当該医療機器は、カテーテルであり、
前記医療機器本体は、当該医療機器本体の先端において開口しているルーメンを有する(1)から(9)のいずれか一項に記載の医療機器。
【符号の説明】
【0074】
10 医療機器本体
10a 先端部
10b 基端部
12 第1領域
14 第2領域
20 ルーメン
22 内層
23 外層
31 第1中空管
32 第2中空管
33 第3中空管
34 第4中空管
35 第5中空管
36 第6中空管
41 第1操作ワイヤ
42 第2操作ワイヤ
43 第3操作ワイヤ
44 第4操作ワイヤ
45 第5操作ワイヤ
46 第6操作ワイヤ
51 補強層
53 ブレード層
55 巻回ワイヤ
61 第1マーカ
63 第2マーカ
70 操作部
70a 本体ケース
71 第1回転部材
74 第1ダイヤル操作部
76 第2回転部材
78 第2ダイヤル操作部
81 第1スライダ操作部
84 第2スライダ操作部
86 張力解除機構
86a 係合凹部
86b 係合凸部
86c スリット部
91 ハブ
92 羽部
93 連結部
96 ゲート部
100 医療機器
310 第1分岐部
320 第2分岐部
330 第3分岐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18