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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095380
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20230629BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/098
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211224
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中川 彰馬
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB03
4C267BB07
4C267BB11
4C267BB15
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG02
4C267GG22
4C267GG34
4C267GG36
4C267HH09
4C267HH17
(57)【要約】
【課題】より優れたカテーテルの引っ張り強度を実現することが可能な構造のカテーテルを提供する。
【解決手段】カテーテル100は、ルーメン31を有する長尺な管状本体10と、マーカー70と、編組された金属線材により構成されていて、管状本体10と同軸の配置で管状本体10に埋設されている金属補強層41と、編組された樹脂線材により構成されていて、管状本体10と同軸の配置で管状本体10に埋設されている樹脂補強層46と、を有する。金属補強層41と樹脂補強層46とが互いに同層に配置されており、金属補強層41の先端と樹脂補強層46の基端とがマーカー70の位置で終端しており、金属補強層41の先端部41aと樹脂補強層46の基端部46bとがマーカー70により周囲から押さえ付けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンを有する長尺な管状本体と、
前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体の先端部に埋設されているマーカーと、
編組された金属線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている金属補強層と、
編組された樹脂線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている樹脂補強層と、
を有し、
前記金属補強層と前記樹脂補強層とが互いに同層に配置されており、
前記金属補強層の先端と前記樹脂補強層の基端とが前記マーカーの位置で終端しており、
前記金属補強層の先端部と前記樹脂補強層の基端部とが前記マーカーにより周囲から押さえ付けられているカテーテル。
【請求項2】
前記マーカーの内側に接着剤層が配置されており、
前記接着剤層が前記金属補強層の先端部と前記樹脂補強層の基端部とに含浸している請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記マーカーよりも先端側において、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている先端側マーカーを更に備え、
前記樹脂補強層の先端が前記先端側マーカーの位置で終端しており、
前記樹脂補強層の先端部が前記先端側マーカーにより周囲から押さえ付けられている請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記先端側マーカーは、前記マーカーよりも、軸方向における寸法が小さい請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記樹脂補強層を構成する前記樹脂線材の条数が、先端側に向けて減少している請求項1から4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記樹脂線材の条数の切り替わりの位置は、
互いに交差する一対の前記樹脂線材どうしの交点の先端側近傍の位置となっており、
当該位置において、前記一対の樹脂線材のうち下層側の樹脂線材が終端している請求項5に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血管等の体腔に挿入可能なカテーテルの開発が行なわれている(例えば特許文献1)。
一般に、カテーテルは、ガイドワイヤを用いたオーバーザワイヤという手法で体腔に挿入される。この手法では、カテーテルに挿通したガイドワイヤの先端部をカテーテルの先端から突出させ、該ガイドワイヤの先端を所望の分枝路に到達させた後、ガイドワイヤに沿ってカテーテルを押し込むことによって、カテーテルを所望の分枝路に挿入させる。
同文献には、補強層がマーカーの位置で終端している構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-82802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1のカテーテルの構造では、カテーテルの引っ張り強度について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、より優れたカテーテルの引っ張り強度を実現することが可能な構造のカテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ルーメンを有する長尺な管状本体と、
前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体の先端部に埋設されているマーカーと、
編組された金属線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている金属補強層と、
編組された樹脂線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている樹脂補強層と、
を有し、
前記金属補強層と前記樹脂補強層とが互いに同層に配置されており、
前記金属補強層の先端と前記樹脂補強層の基端とが前記マーカーの位置で終端しており、
前記金属補強層の先端部と前記樹脂補強層の基端部とが前記マーカーにより周囲から押さえ付けられているカテーテルを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カテーテルの引っ張り強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るカテーテルの全体図である。
図2】第1実施形態に係るカテーテルの先端部とその周辺構造を示す縦断面図である。
図3】第1実施形態に係るカテーテルの先端部の縦断面図である。
図4】第1実施形態における金属補強層、樹脂補強層及びマーカーを選択的に示す側面図ある。
図5図5(a)及び図5(b)は第1実施形態におけるマーカーを用いて管状本体に金属補強層及び樹脂補強層を固定する一連の工程の例を説明するための図である。
図6】第2実施形態に係るカテーテルの先端部の縦断面図である。
図7図7(a)は第3実施形態に係るカテーテルにおいて金属補強層、樹脂補強層及びマーカーを選択的に示す側面図であり、図7(b)は図7(a)に示すA部の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
本実施形態に係るカテーテル100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0010】
本発明の実施形態を説明する際に用いられる用語は、特段の断りがない限り、以下のとおり定義される。
先端部とは、カテーテル100の各部において、カテーテル100の挿入先端側の端部(遠位端)であり、基端部とは、カテーテル100の各部において、カテーテル100の基端側の端部(近位端部)である。
また、軸心とは、管状本体10の長手方向に沿った中心軸を意味する。
カテーテル100の縦断面とは、カテーテル100を軸心に沿って切断した断面をいう。
【0011】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図5(b)を用いて第1実施形態を説明する。
図1から図3のいずれかに示すように、本実施形態に係るカテーテル100は、ルーメン31を有する長尺な管状本体10と、管状本体10と同軸の配置で管状本体10の先端部10aに埋設されているマーカー70と、編組された金属線材により構成されていて、管状本体10と同軸の配置で管状本体10に埋設されている金属補強層41と、編組された樹脂線材により構成されていて、管状本体10と同軸の配置で管状本体10に埋設されている樹脂補強層46と、を有する。
金属補強層41と樹脂補強層46とが互いに同層に配置されており、金属補強層41の先端411と樹脂補強層46の基端462とがマーカー70の位置で終端しており、金属補強層41の先端部41aと樹脂補強層46の基端部46bとがマーカー70により周囲から押さえ付けられている。
ここで、金属補強層41と樹脂補強層46とが互いに同層に配置されているとは、金属補強層41と樹脂補強層46との位置が径方向において互いに重複していることを意味している。なお、金属補強層41と樹脂補強層46とは、径方向において、必ずしも互いに完全に重複している必要はなく、少なくとも一部分どうしが重複していればよい。
【0012】
カテーテル100は、一例として、血流に乗って前進するフローダイレクトカテーテルである。
なお、カテーテル100は、例えば、被験者の大腿の付け根の動脈から体内に挿入し、心臓及び内頸動脈を介して、内頸動脈から分枝した穿通枝に管状本体10の先端部を挿入する手技を行うために用いられる。このため、管状本体10は、そのような手技に対応した長さに作製される。ただし、本発明は、この例に限らず、カテーテル100は、他の部位への挿入に適した長さに作製されていてもよい。
【0013】
本実施形態によれば、管状本体10には、金属補強層41と樹脂補強層46とが埋設されており、金属補強層41の先端部41aと樹脂補強層46の基端部46bとは、マーカー70により周囲から押さえ付けられている。
これにより、先端部10a(特にマーカー70よりも先端側の部分)の引っ張り強度を向上させることができる。よって、例えば、体腔内において、塞栓剤(接着剤)を噴射して当該塞栓剤をカテーテル100ごと硬化させた後、カテーテル100を抜去する際に、先端部10aまでも容易に抜去することができる。
また、金属補強層41と樹脂補強層46とが互いに同層に配置されているので、金属補強層41と樹脂補強層46とが互いに異なる層に配置されている場合と比較して、管状本体10の外径をより小さい寸法とすることができる。よって、カテーテル100の抹消到達性を向上させることができるので、先端部10aを穿通枝等に良好に到達させることができる。
更には、金属補強層41よりも先端側に樹脂補強層46が配置されている構成となるので、先端部10aの柔軟性を十分に確保することができる。よって、管状本体10をガイドワイヤ(不図示)の屈曲形状に良好に追従させつつ、先端部10aをガイドワイヤに沿って体腔内に進入させることができる。
一方、樹脂補強層46よりも基端側に金属補強層41が配置されている構成となるので、マーカー70よりも基端側において管状本体10の剛性をより十分に確保することができる。よって、管状本体10の適度なプッシャビリティを実現できる。
【0014】
図1及び図2に示すように、管状本体10は、長尺な中空の管状部材である。
図2及び図3に示すように、管状本体10は、例えば、内層32と、内層32の周囲に設けられた外層33と、を備える二層構造であり、管状本体10の軸心側から、内層32と外層33との順に積層されて構成されている。
内層32は、管状本体10の最内層であり、例えば、肉厚が軸方向における位置にかかわらず一定の円管状に形成されている。内層32は、管状本体10の先端と基端との両端において開口している。本実施形態の場合、ルーメン31は、内層32の内周面によって画定されている。
内層32は、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂により構成されている。フッ素系の熱可塑性ポリマー材料は、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などとすることができる。
外層33は管状本体10の最外層である。例えば、管状本体10の肉厚の大部分(過半部)は、外層33の肉厚によって占められている。
ルーメン31は、管状本体10の先端から基端に亘って連続的に形成されており、管状本体10の先端と基端においてそれぞれ開口している。
【0015】
本実施形態の場合、管状本体10は、先端チップ80(図1及び図2参照)を含み、管状本体10の先端は、先端チップ80の先端によって構成されている。先端チップ80は、先端が開口している先端ルーメン61を有し、先端ルーメン61はルーメン31の一部分を構成している。
本実施形態の場合、先端チップ80は、管状本体10において、マーカー70の位置よりも先端側の部分である。
先端チップ80は、管状本体10におけるその他の部位と同様の層構造となっている。すなわち、先端チップ80は、内層32と外層33との2層構造となっている。
本実施形態の場合、先端チップ80の外径は、当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定である。
なお、先端チップ80の先端の外周側の角部はR面取形状とされていてもよく、その場合、先端チップ80の軸方向において角部がR面取形状とされている先端領域を除き、先端チップ80の外径が当該先端チップ80の軸方向における位置にかかわらず一定となっている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の場合、管状本体10は、一例として、先端側小径領域21と、先端側小径領域21の基端側に連なっている拡径領域23と、拡径領域23の基端側に隣接しているとともに、先端側小径領域21よりも大径の大径領域22と、を含む。
先端側小径領域21においては、例えば、管状本体10の軸方向における位置にかかわらず内径及び外径が一定となっている。
拡径領域23においては、例えば、基端側に向けてルーメン31の内径と当該管状本体10の外径とが徐々に拡径している。
大径領域22においては、例えば、管状本体10の軸方向における位置にかかわらず内径及び外径が一定となっている。
ただし、管状本体10は、このような構成に限定されず、例えば、管状本体10の内径及び外径は、軸方向における位置にかかわらず略一定となっていてもよい。
【0017】
また、管状本体10の先端側部分の外表層、及び、先端チップ80の外表層には、必要に応じて、親水性コートが形成されていてもよい。
【0018】
先端チップ80の軸方向における当該先端チップ80の長さ(図2に示すL1)は、2.5mm以上7mm以下であることが好ましく、3mm以上であることが更に好ましく、4mm以上6mm以下であることが一層好ましく、典型的には6mm程度とすることができる。先端チップ80の長さは、穿通枝等の細径の血管に分枝する前の相対的大径の血管(内頸動脈等)の内径と同等の長さに設定されていることが好ましい。
管状本体10の全長は、130cm以上200cm以下であることが好ましく、典型的には165cm程度とすることができる。
【0019】
本実施形態の場合、金属補強層41及び樹脂補強層46の各々は、内層32を包囲するように内層32の周囲に配置されている。
より詳細には、例えば、金属補強層41は、管状本体10において、マーカー70の基端よりも先端側、且つ、マーカー70の先端よりも基端側の位置から基端に亘って連続的に配置されているが、マーカー70の位置よりも先端側には配置されていない。
一方、樹脂補強層46は、管状本体10において、例えば、マーカー70の基端よりも先端側、且つ、マーカー70の先端よりも基端側の位置から先端の近傍に亘って連続的に配置されているが、マーカー70の位置から基端側には配置されていない(図2参照)。
【0020】
金属補強層41は、一方向に巻回される複数本の金属線材と、当該一方向に対する反対方向に巻回される複数本の金属線材とを、メッシュ状に編組することで構成されている。この金属線材は、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)などの金属材料によって構成されている。
一方、樹脂補強層46は、一方向に巻回される複数本の樹脂線材と、当該一方向に対する反対方向に巻回される複数本の樹脂線材とを、メッシュ状に編組することで構成されている。この樹脂線材は、例えば、PA66又はPEEKなどの樹脂材料によって構成されている。なお、樹脂補強層46の樹脂硬度(樹脂線材の樹脂硬度)は、管状本体10の外層33の樹脂硬度よりも高い。
【0021】
図2及び図3に示すように、マーカー70は、例えば、管状本体10の先端側小径領域21において、外層33に埋設されているとともに、ルーメン31の周囲に配置されている。
マーカー70は、放射線不透過性の金属材料により構成されている。
上述のように、マーカー70は、金属補強層41の先端及び樹脂補強層46の基端に固定されている。より詳細には、例えば、マーカー70は、例えば、金属補強層41の先端の周囲に配置されているとともに、樹脂補強層46の基端の周囲に配置されている。
ここで、本実施形態の場合、マーカー70の内側に接着剤層77が配置されており、接着剤層77が金属補強層41の先端部41aと樹脂補強層46の基端部46bとに含浸している。
これにより、金属補強層41の先端部41a及び樹脂補強層46の基端部46bは、マーカー70の内周面に対して固定されている。また、例えば、管状本体10に対して衝撃が加わったとしても、当該衝撃を接着剤層77によって吸収できるので、先端部10aの構造的強度を向上させることができる。
より詳細には、本実施形態の場合、マーカー70の内周面の全体に接着剤層77が配置されている。また、マーカー70は、例えば、金属補強層41の先端部41a及び樹脂補強層46の基端部46bに対してかしめ固定されている。
また、本実施形態の場合、金属補強層41において、マーカー70によって覆われている領域を先端部41aとする。同様に、本実施形態の場合、樹脂補強層46において、マーカー70によって覆われている領域を基端部46bとする。
【0022】
金属補強層41の先端及び樹脂補強層46の基端をマーカー70に固定する手法は特に限定されないが、例えば、先ず、マーカー70の内側に接着剤層77を配置した状態で、金属補強層41の周囲にマーカー70を配置する。次に、金属補強層41において、マーカー70の先端よりも先端側の部分を切除する。次に、図5(a)に示すように、樹脂補強層46と樹脂補強層46とを、互いに同軸に配置する。そして、図5(b)に示すように、マーカー70を、金属補強層41に対して相対的に先端側(例えば、マーカー70の全長の1/2先端側)に移動させる。これにより、マーカー70は、金属補強層41の先端の周囲に配置されているとともに、樹脂補強層46の基端の周囲に配置される。これにより、接着剤層77となる接着剤は、金属補強層41の少なくとも先端に対して接触しているとともに、樹脂補強層46の少なくとも基端に対して接触している状態となる。このようにして、金属補強層41の先端部41a及び樹脂補強層46の基端部46bは、マーカー70に対して固定される。
なお、図2から図5(b)に示す例では、樹脂補強層46の基端と金属補強層41の先端とは、軸方向において互いに離間しているが、樹脂補強層46の基端と金属補強層41の先端とは、互いに接触していてもよい(互いに突き当たっていてもよい)。
【0023】
本実施形態の場合、図2及び図3に示すように、マーカー70よりも先端側において、管状本体10と同軸の配置で管状本体10に埋設されている先端側マーカー75を更に備えている。
樹脂補強層46の先端は、先端側マーカー75の位置で終端しており、樹脂補強層46の先端部46aが先端側マーカー75により周囲から押さえ付けられている。
これにより、樹脂補強層46と外層33との一体性が向上するので、カテーテル100を体腔内から抜去する際に、より確実に樹脂補強層46と外層33とを一体的に抜去することができる。
より詳細には、一例として、先端側マーカー75の内周面には、第2接着剤層79が配置されており、第2接着剤層79によって、樹脂補強層46の先端は先端側マーカー75に対して固定されている。更に、先端側マーカー75と樹脂補強層46とは、例えば、かしめ固定によって互いに固定されている。
本実施形態の場合、樹脂補強層46の先端461は、先端部10aにおいて、先端側マーカー75の先端よりも基端側、且つ、先端側マーカー75の基端よりも先端側の位置に配置されている。ただし、樹脂補強層46の先端461は、例えば、先端側マーカー75の基端に対して固定されていてもよい。
先端側マーカー75は、放射線不透過性の金属材料により構成されている。先端側マーカー75は、例えば、管状本体10の先端側小径領域21において、外層33に埋設されているとともに、ルーメン31の周囲に配置されている。
【0024】
ここで、先端側マーカー75は、例えば、マーカー70よりも、軸方向における寸法が小さい。換言すると、軸方向における先端側マーカー75の寸法は、軸方向におけるマーカー70の寸法よりも小さい。
これにより、先端部10aの先端部(管状本体10の最先端部)の良好な屈曲性を確保することができる。
管状本体10の軸方向におけるマーカー70の寸法は、0.2mm以上0.4mm以下であることが好ましく、典型的には0.3mm程度とすることができる。
管状本体10の軸方向における先端側マーカー75の寸法は、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましく、典型的には0.15mm程度とすることができる。
また、マーカー70の外径と先端側マーカー75の外径とは、例えば、互いに略同等の寸法に設定されている。同様に、マーカー70の内径と先端側マーカー75の内径とは、例えば、互いに略同等の寸法に設定されている。
マーカー70の外径及び先端側マーカー75の外径は、0.4mm以上0.6mm以下であることが好ましく、典型的には0.5mm程度とすることができる。
マーカー70の内径及び先端側マーカー75の内径は、0.25mm以上0.45mm以下であることが好ましく、典型的には0.35mm程度とすることができる。
【0025】
本実施形態の場合、図1に示すように、管状本体10の基端部には、把持部90が設けられている。把持部90は、その基端から図示しない注入器(シリンジ)を挿入するための連結部91を有している。連結部91の外周には、シリンジを着脱可能に固定できるようにねじ溝が形成されている。軸方向における把持部90の中央部には、ハブ92が設けられている。把持部90には当該把持部90を先端から基端に亘って軸心方向に貫通する中空が形成されており、この中空における先端側の部分に管状本体10の基端部が挿入されて、把持部90に対して管状本体10の基端部が固定されている。ハブ92は、把持部90の軸心を介して対向する2枚の羽部93を有している。把持部90の軸心を中心として羽部93を回転させることにより、管状本体10の全体を軸回転させるトルク操作が可能であり、体腔に侵入した管状本体10の先端の向きを調整することができる。
ハブ92の先端側には、プロテクタ94が設けられており、管状本体10の基端部の周囲を覆っている。
【0026】
〔第2実施形態〕
次に、図6を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係るカテーテル100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係るカテーテル100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係るカテーテル100と同様に構成されている。
【0027】
図6に示すように、本実施形態の場合、カテーテル100は、先端側マーカー75を備えていない。
このような構成によれば、先端部10aにおいて、先端側マーカー75が埋設されておらず、樹脂補強層46の先端部46aは外層33により周囲から押さえ付けられているので、先端部10aの先端部(管状本体10の最先端部)の屈曲性をより十分に確保できる。
【0028】
〔第3実施形態〕
次に、図7(a)及び図7(b)を用いて第3実施形態を説明する。
本実施形態に係るカテーテル100は、以下に説明する点で、上記の第1又は第2実施形態に係るカテーテル100と相違しており、その他の点では、上記の第1又は第2実施形態に係るカテーテル100と同様に構成されている。
【0029】
本実施形態の場合、図7(a)及び図7(b)に示すように、樹脂補強層46を構成する樹脂線材の条数が、先端側に向けて減少している。
これにより、樹脂補強層46の巻回ピッチが先端側に向けて疎になっている構成を実現できるので、樹脂補強層46を、先端側に向けてより柔軟にすることができる。よって、樹脂補強層46の配置領域において、適度なプッシャビリティを実現しつつ、先端部10aをガイドワイヤの屈曲形状に良好に追従させることができる。
【0030】
ここで、本実施形態の場合、図7(b)に示すように、樹脂線材の条数の切り替わりの位置は、互いに交差する一対の樹脂線材どうし(例えば、図7(b)に示す樹脂線材48、49)の交点47の先端側近傍の位置となっており、当該位置において、一対の樹脂線材48、49のうち下層側の樹脂線材49が終端している。
ここで、交点47の先端側近傍とは、交点47よりも先端側、且つ、交点47の近傍を意味している。
また、下層側とは、径方向内側(管状本体10の軸心側)を意味している。
これにより、下層側の樹脂線材49が、上層側の樹脂線材48によって押さえつけられているので、樹脂補強層46が樹脂線材によって編組された状態を良好に維持することができる。また、樹脂補強層46の各樹脂線材の先端が、管状本体10の外周面から外方への飛び出してしまうことを抑制できる。
より詳細には、図7(a)に示すように、一例として、樹脂補強層46の基端側の領域である第1領域44aにおいては、樹脂線材の条数は12となっており、軸方向における中央部である第2領域44bにおいては、樹脂線材の条数は8となっている。樹脂補強層46の先端側の領域である第3領域44cにおいては、一例として、樹脂線材の条数は4となっている。
本実施形態の場合、樹脂線材の条数の切り替わりの各位置のすべてにおいて、一対の樹脂線材のうち下層側の樹脂線材が終端している。
なお、互いに交差する一対の樹脂線材どうしの交点47において、当該樹脂線材どうしが接着剤等(不図示)によって互いに固定されていてもよい。
下層側の樹脂線材49の先端部における、上層側の樹脂線材48からの突出長(図7(b)に示すL3)は、例えば、交点47を含む格子形状の軸方向における寸法(図7(a)に示す寸法L2)未満であることが好ましく、より好ましくは樹脂線材の線径(図7(b)に示すR1)の2倍程度である。
【0031】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0032】
また、上記の第3実施形態では、樹脂補強層46を構成する樹脂線材の条数が、先端側に向けて減少していることによって、樹脂補強層46の巻回ピッチが先端側に向けて疎になっている例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、例えば、樹脂補強層46の巻回ピッチを先端側に向けて広くすることにより、当該巻回ピッチを先端側に向けてより疎となるようしてもよい。このような構成によっても、樹脂補強層46を先端側に向けてより柔軟にすることができる。
【0033】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)ルーメンを有する長尺な管状本体と、
前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体の先端部に埋設されているマーカーと、
編組された金属線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている金属補強層と、
編組された樹脂線材により構成されていて、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている樹脂補強層と、
を有し、
前記金属補強層と前記樹脂補強層とが互いに同層に配置されており、
前記金属補強層の先端と前記樹脂補強層の基端とが前記マーカーの位置で終端しており、
前記金属補強層の先端部と前記樹脂補強層の基端部とが前記マーカーにより周囲から押さえ付けられているカテーテル。
(2)前記マーカーの内側に接着剤層が配置されており、
前記接着剤層が前記金属補強層の先端部と前記樹脂補強層の基端部とに含浸している(1)に記載のカテーテル。
(3)前記マーカーよりも先端側において、前記管状本体と同軸の配置で前記管状本体に埋設されている先端側マーカーを更に備え、
前記樹脂補強層の先端が前記先端側マーカーの位置で終端しており、
前記樹脂補強層の先端部が前記先端側マーカーにより周囲から押さえ付けられている(1)又は(2)に記載のカテーテル。
(4)前記先端側マーカーは、前記マーカーよりも、軸方向における寸法が小さい(3)に記載のカテーテル。
(5)前記樹脂補強層を構成する前記樹脂線材の条数が、先端側に向けて減少している(1)から(4)のいずれか一項に記載のカテーテル。
(6)前記樹脂線材の条数の切り替わりの位置は、
互いに交差する一対の前記樹脂線材どうしの交点の先端側近傍の位置となっており、
当該位置において、前記一対の樹脂線材のうち下層側の樹脂線材が終端している(5)に記載のカテーテル。
【符号の説明】
【0034】
10 管状本体
21 先端側小径領域
22 大径領域
23 拡径領域
30 樹脂層
31 ルーメン
32 内層
33 外層
41 金属補強層
41a 先端部
411 先端
44a 第1領域
44b 第2領域
44c 第3領域
46 樹脂補強層
46a 先端部
46b 基端部
47 交点
48 第1樹脂線材
49 第2樹脂線材
61 先端ルーメン
70 マーカー
75 先端側マーカー
77 接着剤層
79 第2接着剤層
80 先端チップ
90 把持部
91 連結部
92 ハブ
93 羽部
94 プロテクタ
100 カテーテル
461 先端
462 基端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7