IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニッタン株式会社の特許一覧

特開2023-95405押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機
<>
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図1
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図2
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図3
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図4
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図5
  • 特開-押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095405
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】押しボタン式スイッチの保護板および当該保護板を備えた火災報知用発信機
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20230629BHJP
   H01H 13/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G08B17/00 H
H01H13/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211275
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山納 正人
(72)【発明者】
【氏名】中村 颯月
【テーマコード(参考)】
5G206
5G405
【Fターム(参考)】
5G206AS36H
5G405AA02
5G405CA09
5G405FA04
(57)【要約】
【課題】誤報を防止しつつ、火災発生時にも確実に通報できる火災報知用発信機とその保護板を提供する。
【解決手段】保護板について前面側に突出する形状のつまみ部を設ける。そして当該保護板を用いた火災報知用発信機は、つまみ部の周囲に補助弾性部材を配することで、通報時に通報者が手を伸ばすと補助弾性部材の表面が変形してつまみ部が相対的に浮き上がるので、通報者はつまみ部をつまんで容易に保護板を回転させつつ押し込んで確実に通報できる。
またはつまみ部の先端の周囲に補助板を有して、内部にばね係数が異なるばねを2重に有することでまずは補助板が変位してつまみ部が相対的に浮き上がり、通報者はつまみ部をつまんで容易に保護板を回転させつつ押し込んで確実に通報できる。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタン式スイッチを内蔵し前記押しボタン式スイッチの前方に凹形状を成す収納部を有する筐体の前記収納部に収納可能であり、操作者によって押下される頭部を有し前記押しボタン式スイッチの前方を覆う押しボタン式スイッチの保護板であって、
前記頭部は、
前記筐体の前面側において突出する形状のつまみ部を有することを特徴とした
押しボタン式スイッチの保護板。
【請求項2】
請求項1に記載の保護板を有し、
前記つまみ部の周囲には押下動作に伴い押圧変形する補助面を含む補助弾性部材が配置されたことを特徴とした火災報知用発信機。
【請求項3】
請求項1に記載の保護板を有し、
前記つまみ部の先端の周囲には押下動作に伴い当該押下の方向に変位する補助面を含む補助板が配置され、
前記補助板の背面と前記頭部の前面との間には第1のばね、前記頭部の背面と前記収納部との間には前記第1のばねよりもばね係数が大きい第2のばねを有する
ことを特徴とした火災報知用発信機。
【請求項4】
前記筐体の前面パネル、前記補助面、前記つまみの先端のうち、少なくとも前記補助面と前記つまみの先端は前記押下動作がされる前は面一となっていることを特徴とした請求項2または3に記載の火災報知用発信機。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押しボタン式スイッチの保護板に関し、例えば建物の壁部に設けられ火災発生時に操作されることで警報を発するための火災報知用の発信機の押しボタンに利用して有効な技術に関する。
また本発明は、当該保護板を用いた火災報知用の発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内部には火災の発生を知らせるために、火災報知システムが設けられている。火災報知システムは、火災感知器や押しボタン式スイッチを備えた手動の火災報知用の発信機、受信機、火災報知用のベル、表示灯などから構成され、このうち火災報知用の発信機は建物の廊下等の壁面に適切な高さで設置されている。火災発生時には、発見者が火災報知用の発信機の押しボタンを強く押して内部のスイッチをオンさせることにより、火災発生を知らせる信号が受信機に伝送されると共に、発信機の近傍に設けられるベルから警報音が発せられて、周囲の人に対し火災発生を知らせることができる。
【0003】
従来の火災報知用発信機は、室内露出部分を覆う円盤状の前面パネル部を発信機本体の前面に備えたものが一般的であり、発信機本体は上記押しボタン式スイッチを備えており、建物の壁面に埋め込むように設置される。また、離れたところからでもまた暗がりであっても発見し易いように、火災報知用発信機の近傍に砲弾状をなす表示灯が設けられていた。
上記のような機能を有する火災報知用発信機に関する発明としては、例えば特許文献1
や2に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-142051号公報
【特許文献2】特開平04-85699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の火災報知用発信機においては、特許文献1または特許文献2に開示されているように、押しボタンを覆う保護板を指で押し込む構造であったために、例えば発信機が配設されている通路を歩行している人が発信機の傍でバランスを崩してよろめき、肩や肘など体の一部が保護板に当たって押し込んだり、大きな荷物を抱えた人が対向する人とすれ違うときに体勢を変えた拍子に荷物の角で保護板を押し込んだりして誤報を発してしまう可能性が否定できなかった。
これに対しては通報する際、手のひらや指先で保護板を回転することも要求することで、押し込む力の一部をトルクに変換させ、直線的に押下する力が入力されても最後まで押し込みにくくすれば解決が図れる。しかし従来の保護板は表面が滑らかであるのが一般的であるため手のひらや指先が滑り、火災発生時に気が動転した発見者がうまく回転操作させることができないという課題があった。
【0006】
さらには、心理的に回転操作を誘導するには、例えば家庭用ガスコンロなどで一般的に用いられているダイヤルノブを模擬した形状とすることが考えられるが、火災報知用発信機の保護板が常態でもダイヤルノブを模した形状であるのは心理的受容性の観点からは望ましくない。
【0007】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは誤報を防ぐ一方で、火災発生時に確実に保護板を回転させて通報が可能となる、押しボタンスイッチ式の火災報知用発信機に好適な保護板を提供することにある。
また本発明は、そのような保護板を備え、常態では従来どおりに平面と見紛う形状を有し、火災発生時に確実に保護板を回転させて通報が可能となる火災報知用発信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、押しボタン式スイッチを内蔵し前記押しボタン式スイッチの前方に凹状を成す収納部を有する筐体の前記収納部に収納可能であり、操作者によって押下される頭部を有し前記押しボタン式スイッチの前方を覆う押しボタン式スイッチの保護板であって、前記頭部は、前記筐体の前面側において突出する形状のつまみ部を有するように構成したものである。
上記構成によれば、火災を発見した通報者は保護板の頭部の前面側において突出する形状のつまみ部をつまんで確実に回転させることが可能となる。
【0009】
また、本出願の他の発明は、前述の保護板を有し、前記つまみ部の周囲には押下動作に伴い押圧変形する補助面を含む補助弾性部材が配置されたものである。
上記構成によれば、常態では火災報知用発信機の前面においてつまみ部が目立つことを避けつつ、火災発生時には通報者が通報しようと手を伸ばして押下動作をすると補助弾性部材が押圧変形するので、つまみ部が相対的に浮き上がりつまみ部を確実につまんで通報が可能となる。
【0010】
また、本出願の他の発明は、前述の保護板を有し、前記つまみ部の先端の周囲には押下動作に伴い当該押下の方向に変位する補助面を含む補助板が配置され、前記補助板の背面と前記頭部の前面との間には第1のばね、前記頭部の背面と前記収納部との間には前記第1のばねよりもばね係数が大きい第2のばねを有するように構成したものである。
上記構成によれば、常態では火災報知用発信機の前面においてつまみ部が目立つことを避けつつ、火災発生時には通報者が通報しようと手を伸ばして押下動作をすると補助板が押下の方向に変位するので、つまみ部が相対的に浮き上がりつまみ部を確実につまんで通報が可能となる。
【0011】
ここで、望ましくは筐体の前面パネル、補助面、つまみの先端のうち、少なくとも補助面とつまみの先端は押下動作がされる前は面一となるように構成する。
かかる構成によれば、常態では従来通りに平面と見紛う形状を有する一方で、火災発生時に確実につまみ部をつまんで保護板を回転させて通報が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば誤報を防ぎつつ、火災発生時には確実に通報が可能となる火災報知用発信機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる保護板と火災報知用発信機の一実施例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る保護板と補助弾性部材の一実施例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る補助弾性部材に中空のシリコンを用いた場合の一実施例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る補助弾性部材を火災報知用発信機に用いた場合に補助弾性部材が変形する様子を示した図である。
図5】第2の実施形態に係る補助板の一実施例を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る補助板を火災報知用発信機に用いた場合に補助板が変位する様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る保護板と、当該保護板を火災報知用発信機に適用した場合の実施形態について説明する。
本実施形態の火災報知用発信機(以下、単に発信機と記す)は、火災等の異常が発生した際に、前面に設けられている押しボタンを強く押し、かつ回転させて内部のスイッチをオンさせることにより異常の発生を知らせる信号を火災受信機に伝送する機能を備え、建造物の壁面あるいは消火栓箱の扉などに設置されて使用されるように構成されている。
そのために、本発明に係る保護板は回転が容易となるよう表面に突出する形状によるつまみ部を有している。
【0015】
図1図6に、本実施例の発信機を模式的に示す。このうち、図1は発信機の全体図、図2図4は第1の実施形態に係る説明図、図5図6は第2の実施形態に係る説明図である。
図1に示すように、第1の実施形態および第2の実施形態のいずれの発信機10も押しボタン式スイッチを保護し通報時に押下および回転動作する保護板20、保護板20の一部を構成するつまみ部21、つまみ部21の先端の周囲に補助面25を構成する所定の部材、そして収納ケース11とから構成されている。
詳細は後述するが、補助面25を構成する所定の部材は第1の実施形態では弾性体、第2の実施形態では保護板と同様な硬い材質を用いる。
【0016】
図1(a)は、常態における発信機10の外観を示している。発信機10の前面には補助面25とつまみ部21の先端が視認可能となっている。なお、少なくとも補助面25とつまみ部21の先端とは、凹凸を形成していることが原因で通行人の服を引っかけるなどの問題が生じないように、また意匠性向上のために面一となるよう各部の寸法を定めるのが好適である。さらには発信機10の前面パネル部12も揃えて面一にするのがなおのこと好適である。
【0017】
図1(b)は、図1(a)における発信機10について所定の部材を省略し、保護板20を外した状態を説明する分解斜視図である。
図1(b)に示すように、発信機10は、保護板20を収納する凹形状の収納部13および前部に円環状をなす前面パネル部12を有している。
発信機10は回路基板等を内蔵した箱状または円柱状の収納ケース11を備えており、内部に回路基板等を内蔵している。その回路基板等には、押しボタン式スイッチやスイッチのオン状態を検出して信号を生成し図示しない火災受信機へ信号を送信する回路が構成されている。
【0018】
保護板20の裏面には、図1(b)に示すように、円筒状の移動ガイド23が、保護板20の前面と直交する方向に後方すなわち発信機10の収納部13の底部へ向かって突出するように設けられている。
一方、発信機10の前面側にある収納部13の前面中央には円筒状の誘導ガイド14が、保護板20の前面と直交するように前方すなわち保護板20の裏面へ向かって突出するように設けられている。
【0019】
誘導ガイド14の内径は、保護板20裏面の移動ガイド23の外径とガイドの厚み分だけ異なる大きさに設定されており、これにより誘導ガイド14と移動ガイド23は互いに嵌合可能に構成されている。
また移動ガイド23には図1(b)に示すように間隙24が設けられている。一方で誘導ガイド14の内壁には、突起15が設けられている。
【0020】
そして図1(b)の点線矢印に示すように間隙24と突起15は噛み合う構造となっているが、間隙24は途中で二手に分かれるクランク形状となっている。これは通行人がよろめいて誤って肩で保護板を押下して誤報となる場合には、多くの場合直線的にかつ一瞬で押圧動作が終了することに着目したものである。すなわち間隙24と突起15の噛み合わせにより途中までは保護板は直線的に押下されるものの、途中で直線的にはそれ以上押下できない。それに対し火災の通報者が通報する際には意図的に保護板を時計回り、または反時計回りのいずれかの方向に回転させてから、さらに押し込むことで本来の正しい通報が可能となる。
【0021】
なお、図1において保護板20の頭部22は、発信機10の前面パネル部12の直径の1/2~1/3程度と思しき大きさで描画しているが、これは理解容易のためであり、一般的な大きさである1/4程度でも本発明の実施には支障はない。
【0022】
第1の実施形態に係る保護板と補助面を含む部材を、図2を用いて説明する。
本発明に係る保護板20は、図2(a)に示すように、頭部22の裏面側、つまり収納部13に向かう側に移動ガイド23、頭部22の表面側、つまり通報者が目視できる側につまみ部21を有している。
【0023】
図2(a)に示すように、本実施形態においては、つまみ部21は略直方体形状で頭部22に取り付けられている。大きさは頭部22との関係で適宜決めればよいが、後述するように人の手、特に人差し指と親指でつまむ動作が好適と考えられるので、例えば突出方向に20mm、上下方向に長さ40mm、左右方向に厚み10mmとすることができる。
あるいは略直方体に代えて側面に適宜凹凸を設けた円柱状でもよい。
またつまみ部21は頭部22と同素材とすることが好適である。異なる素材でもよいが、適宜火災発生時にも視認性が確保できる素材と着色であることが求められる。
【0024】
第1の実施形態にかかる、補助面25を有する補助弾力部材を図2(b)に示す。
補助弾力部材30は、低反発ウレタンあるいはシリコンを用いた中空の円柱状として実現され、通報者が手を伸ばし従来通り押下動作をすると、容易に押下方向に変形する性質を有する。
また補助弾力部材30には、つまみ部21と同形状かつ同サイズの穴31が開いており、図2(c)に示すように、運用時には保護板20と嵌め合わせて用いる。
【0025】
補助弾力部材30に低反発ウレタンを用いる場合には図2(b)に示す形状にて中実で実現できる。
シリコンを用いた中空の円柱状の場合には図3に示すように実現すればよい。なお、図3(a)におけるA-A’を結ぶ一点鎖線の端面を図3(b)に示す。
また補助弾力部材30は、厚さをつまみ部21の突出方向の高さと揃えることで、図1(a)に示すように、発信機表面として面一の状態が実現できる。
【0026】
図4に、火災発生時に通報者が第1の実施形態に係る発信機を操作して通報する際、補助弾力部材30がどのように変形することでつまみ部21が浮き上がり、回転動作が容易になるかを模式的に示す。
【0027】
図4(a)は、第1の実施形態に係る発信機を横から見た縦断面、および通報者が通報しようと手1を近づけている様子を示している。
図4(a)に示すように、発信機10本体の内部には、コイルバネ16と押しボタン式スイッチのアクチュエータ19が嵌挿されている。
当然ながら、通報者が発信機10に手1を接触させる前は、補助弾力部材30は特に変形はしていない。
【0028】
図4(b)は、同図(a)の後、通報者が手1を発信機10に接触させたのち、押下動作を開始した直後の様子を示している。
押下動作を開始すると、補助弾力部材30は押下方向に変形する。このときの補助弾力部材30の表面である補助面25は、つまみ部21のすぐ脇が点線に示すように部分的に凹んで、変形した補助面32となる。すると、つまみ部21は補助面25Aから浮き出る。そして図4(b)に示すように通報者は、つまみ部21を人差し指と親指で挟むことが可能となり、図1(b)を用いて説明したように保護板20を回転させてさらに押し込むことが可能となる。
保護板20を押し込むとコイルバネ16が圧縮されて、保護板20の裏面中央の突起の先端が押しボタン式スイッチのアクチュエータ19に当接してこれを押し込んでスイッチをオンさせる。そして、保護板への押し込み力を解除するとコイルバネ16の復元力、および逆方向に回転させることで保護板20が元の位置へ復帰する。
【0029】
第2の実施形態に係る保護板と補助面を含む部材を、図5を用いて説明する。
図5(a)に、補助面25Bを含む所定の部材である補助板40の形状を示す。
補助板40は、頭部22と同形状の円盤状であり、第1の実施形態の補助弾力部材30と同様に、つまみ部21と同サイズの穴41が開いており、運用時にはつまみ部21と穴41は隙間なく嵌合する。
補助板40は、保護板20と同様な材質で実現され、一定以上の硬度を有するものとする。すなわち人の手による押下動作では容易に変形しない材質とする。
【0030】
図5(b)に、運用時の様子として、つまみ部21を穴41に挿入して補助板40と保護板20が一体化した状態を示す。同図からわかるように補助板40はつまみ部21の先端付近に留めることとして、補助板40と保護板20の頭部22との間の隙間には、後述のようにバネを篏挿する。
【0031】
図6に、火災発生時に通報者が第2の実施形態に係る発信機を操作して通報する際、補助板40がどのように変位することでつまみ部21が浮き上がり、回転動作が容易になるかを模式的に示す。
第2の実施形態に係る発信機は、図6に縦断面図として示すように、補助板40と保護板20の頭部22に第1のバネ17、保護板20の頭部22と収納部13の底面との間に第2のバネ18を備えている。
【0032】
ここで第1のバネ17と第2のバネ18は同じものを用いるのではなく、両者のバネ係数を比較すると「(第1のバネ係数)<(第2のバネ係数)」という関係を満たすものを適宜選択して使用するが好適である。すなわち、第1のバネ17は押下動作に伴い、容易に縮む弱いバネであり、第2のバネ18は押圧を押下動作開始よりも強めることで縮む程度の強さのバネである。
【0033】
第1のバネ17と第2のバネ18のバネ係数が異ならせることで、本発明の効果につながることを引き続き図6(b)と(c)を用いて説明する。
図6(b)に示すように、通報者が通報すべく押下動作を開始すると第1のバネ17のバネ係数は第2のバネ18のバネ係数より小さいため容易に縮み、つまみ部21が浮き出てくる。一方で、第2のバネ18は容易には縮まないため、おおよそ同図(a)と同じ長さを維持する。
【0034】
図6(b)の状態となると、通報者はつまみ部21を人差し指と親指で挟むことが可能となり、図1(b)を用いて説明したように保護板20を回転させてさらに押し込むことが可能となる。
【0035】
保護板20を押し込むと第2のバネ18が圧縮されて、保護板20の裏面中央の突起の先端が押しボタン式スイッチのアクチュエータ19に当接してこれを押し込んでスイッチをオンさせる。そして、保護板への押し込み力を解除すると、第1のバネ17と第2のバネ18の復元力、および逆方向に回転させることにより保護板20が元の位置へ復帰する。
【0036】
以上説明したように、本発明に係る保護板はその前面につまみ部を有し、さらに当該つまみ部の周囲に補助面を含む部材を配置して、当該部材が変形または変位することで、常態では発信機前面の面一が実現されつつ、火災発生時には容易につまみ部が浮き出てくるので、誤報防止のために回転を要求している発信機であっても確実につまみ部をつまんで回転させることで通報が可能となる。
【0037】
なお、補助弾力部材30または補助板40の前面には、「強く押し、回転させてからさらに押す」なる文字が印字されていても良い。つまみ部21の先端部にも印字されてもよい。
【0038】
また各実施形態では保護板20は、適宜周知な材質を用いてある程度の硬度を持つことが必要であるものの、光を透過する性質を持たせてもよい。
すなわち保護板20が透光材で形成されており、発信機10の収納部13の底部に配設されている図示しないLED(発光素子)が点灯されると、その光が頭部22の裏面側より入射して内部で乱反射し、つまみ部21の表面全体がぼんやりと光るように構成されてもよい。また、保護板20を構成する透光材は、アクリル樹脂のような透明な材料に光散乱粒子を混入したものであっても良い。
さらには第1の実施形態における補助弾力部材30、第2の実施形態における補助板40もある程度の光の透過性を持たせられれば、補助面25(図1(a)参照)もぼんやりと光らせることも可能となる。
【0039】
さらに、上記実施形態では、本発明を、火災報知システムを構成する火災報知用発信機に適用したものを説明したが、本発明は火災報知用発信機に限定されず、駅のプラットホームや踏切に設置される列車緊急停止用の発信機やエスカレーターその他の機器の緊急停止ボタンなどにも広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 火災報知用発信機
17 第1のバネ
18 第2のバネ
20 保護板
21 つまみ部
22 頭部
25A 補助弾性部材の補助面
30 補助弾力部材
32 変形した補助面
40 補助板

図1
図2
図3
図4
図5
図6