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  • 特開-船舶用舵および船舶 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095408
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】船舶用舵および船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20230629BHJP
   B63B 39/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B63H25/38 D
B63H25/38 105
B63B39/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211281
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】590005874
【氏名又は名称】株式会社西日本流体技研
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】安川 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 泰久
(57)【要約】
【課題】プロペラの旋回流の回収のみならず、船舶の動揺軽減が可能な船舶用舵および船舶の提供。
【解決手段】舵本体10の右舷側および左舷側にそれぞれ水平方向に延びる支持軸26A,26B回りに回転可能な右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bと、船舶の運動状態を示す情報に基づいて右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bのそれぞれの回転角度θを制御する制御手段とを含む船舶用舵1であり、船舶の運動状態に応じて右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bのそれぞれの回転角度θを制御することで、船舶のピッチング運動、ヒービング運動やローリング運動等を軽減することが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の進行方向を定める船舶用舵であって、
舵本体の右舷側および左舷側にそれぞれ水平方向に延びる支持軸回りに回転可能な右舷側フィンおよび左舷側フィンと、
前記船舶の運動状態を示す情報に基づいて前記右舷側フィンおよび前記左舷側フィンのそれぞれの回転角度を制御する制御手段と
を含む船舶用舵。
【請求項2】
前記船舶の運動状態を示す情報は、前記船舶の姿勢、動揺、速度、前記舵本体の船首側に配置されたプロペラの回転数および前記舵本体の舵角を含む請求項1記載の船舶用舵。
【請求項3】
前記舵本体の舵軸内でそれぞれ上下に進退動作することにより前記右舷側フィンおよび前記左舷側フィンをそれぞれ揺動動作させる右舷側フィン動作ロッドおよび左舷側フィン動作ロッドと、
前記右舷側フィン動作ロッドおよび前記左舷側フィン動作ロッドの進退動作を前記右舷側フィンおよび前記左舷側フィンの回転動作にそれぞれ変換するリンク機構と
を有する請求項1または2に記載の船舶用舵。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の船舶用舵を備えた船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の進行方向を定める船舶用舵および船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船尾に配置されたプロペラにより推進力を得る船舶の多くは、プロペラの後方に船舶の進行方向を定める舵を有し、プロペラにより発生した水流の向きを舵により変えることで船体の向きを変える。また、例えば特許文献1に記載のように、舵の右舷側および左舷側に略水平方向に延びて設けられたフィン(以下、「水平フィン」と称す。)を有する船舶が知られている。この従来の水平フィン付き舵を有する船舶は、水平フィンによりプロペラの旋回流を回収して推進力を得ることにより、省エネルギーを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6643404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来の水平フィン付き舵を有する船舶は、水平フィンによりプロペラの旋回流を回収して推進力を得ることにより、省エネルギーを図ることを目的としており、水平フィンは舵に対して一定の角度で固定されている。
【0005】
しかしながら、旋回流の強さはプロペラの回転速度によって変化するため、従来の水平フィン付き舵を有する船舶ではある程度の旋回流の回収は見込まれるものの、プロペラの回転速度に応じて十分に回収できているとは言えない。
【0006】
そこで、本発明においては、プロペラの旋回流の回収のみならず、船舶の動揺軽減が可能な船舶用舵および船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の船舶用舵は、船舶の進行方向を定める船舶用舵であって、舵本体の右舷側および左舷側にそれぞれ水平方向に延びる支持軸回りに回転可能な右舷側フィンおよび左舷側フィンと、船舶の運動状態を示す情報に基づいて右舷側フィンおよび左舷側フィンのそれぞれの回転角度を制御する制御手段とを含むものである。本発明の船舶用舵によれば、船舶の運動状態に応じて右舷側フィンおよび左舷側フィンのそれぞれの回転角度を制御することで、船舶のピッチング運動、ヒービング運動やローリング運動等を軽減することが可能となる。
【0008】
船舶の運動状態を示す情報は、船舶の姿勢、動揺、速度、舵本体の船首側に配置されたプロペラの回転数および舵本体の舵角を含むことが望ましい。これらの船舶の運動状態を示す情報に基づいて右舷側フィンおよび左舷側フィンのそれぞれの回転角度を制御することで、船舶の姿勢、動揺、速度、舵本体の船首側に配置されたプロペラの回転数および舵本体の舵角に応じて、船舶のピッチング運動、ヒービング運動やローリング運動等をより効果的に軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の船舶用舵により、以下の効果を奏することができる。
(1)船舶のピッチング運動、ヒービング運動やローリング運動等を軽減することにより船体抵抗を小さくし、省エネルギー効果が得られる。
(2)船舶の動揺が小さくなることで船舶の乗り心地が向上する。
(3)船舶の旋回時の船体の傾斜角度を小さくすることができ、船舶の転覆防止が図れる。
(4)プロペラの旋回流を回収し、省エネルギー効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態における船舶用舵を備えた船舶の船尾部を示す側面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV矢視図である。
図5図1のV矢視図である。
図6図1のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施の形態における船舶用舵を備えた船舶の船尾部を示す側面図、図2図1のII-II線断面図、図3図1のIII-III線断面図、図4図1のIV矢視図、図5図1のV矢視図、図6図1のVI-VI線断面図である。
【0012】
図1図3に示すように、本発明の実施の形態における船舶用舵1は、船舶の進行方向を定める舵である。船舶用舵1の舵本体(舵板)10は、船舶の船体Bの船尾部のプロペラPの後方に備えられている。舵本体10は、船体Bに対して回転可能に支持された舵軸11に固定されている。船舶用舵1は、舵本体10の右舷側(図1の表面側)および左舷側(図1の裏面側)にそれぞれ水平方向に延びる右舷側および左舷側のフィン20A,20Bを備える。
【0013】
舵軸11は、船体Bの船尾部に設けられた舵管12内に挿通されている。舵軸11は中空筒状である。舵軸11内には、図2に示すように、右舷側および左舷側のフィン20A,20Bをそれぞれ揺動動作させるための右舷側および左舷側のフィン動作ロッド21A,21Bが挿通されている。フィン動作ロッド21A,21Bの下端部には、舵本体10の右舷側および左舷側にそれぞれ水平方向に延びる操舵軸25A,25Bが設けられている。
【0014】
フィン動作ロッド21A,21Bは、船体Bの上部にそれぞれ設けられたアクチュエータ22A,22Bによりそれぞれ独立して駆動される。図4はアクチュエータ22Aによりフィン動作ロッド21Aを下げ、アクチュエータ22Bによりフィン動作ロッド21Bを上げた状態を示している。
【0015】
アクチュエータ22A,22Bは舵軸11に固定された架台30上に設けられている。架台30は舵軸11とともに回転する。すなわち、アクチュエータ22A,22Bおよびフィン動作ロッド21A,21Bは、操舵の際、舵軸11を回転させて舵本体10を回転させると、舵本体10および右舷側および左舷側のフィン20A,20Bとともに舵軸11を中心に回転する。
【0016】
なお、一般的な船舶では舵軸11上に舵軸11を回転させるための回転駆動装置を備えているが、本実施形態における船舶では、舵軸11上にアクチュエータ22A,22Bが設けられているため、舵軸11からずらした位置に回転駆動装置としてのステッピングモータ23を備えている。ステッピングモータ23の回転は動力伝達機構24を介して舵軸11へ伝達される。
【0017】
動力伝達機構24は、図6に示すように、タイミングプーリ24A,24Bおよびベルト24Cから構成される。タイミングプーリ24Aはステッピングモータ23の回転軸23Aに固定されている。タイミングプーリ24Bは舵軸11に固定されている。ベルト24Cはタイミングプーリ24A,24Bに掛け回されている。ステッピングモータ23の回転は、タイミングプーリ24Aからベルト24Cおよびタイミングプーリ24Bを介して舵軸11へ伝達される。
【0018】
右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bは、操舵軸25A,25Bに対して回転自在に支持されている。また、右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bは、舵本体10の右舷側および左舷側にそれぞれ操舵軸25A,25Bと平行かつ水平方向に延びる支持軸26A,26Bに回転自在に支持されている。支持軸26A,26Bは、操舵軸25A,25Bよりも船尾側に位置する。
【0019】
操舵軸25A,25Bおよび支持軸26A,26Bは、フィン動作ロッド21A,21Bの進退動作を右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bの回転動作にそれぞれ変換するリンク機構を構成する。すなわち、フィン動作ロッド21A,21Bを舵軸11内でそれぞれ上下に進退動作させると、支持軸26A,26Bを支点として操舵軸25A,25Bが上下に移動することにより、右舷側フィン20および左舷側フィン21が支持軸26A,26Bを回転中心としてそれぞれ揺動動作する。
【0020】
船舶用舵1は、船舶の運動状態を示す情報に基づいて、右舷側フィン20Aおよび左舷側フィン20Bのそれぞれの回転速度を制御する制御手段(図示せず。)を有する。船舶の運動状態を示す情報は、船舶の姿勢、動揺、速度、舵本体10の船首側に配置されたプロペラの回転数および舵本体10の舵角を含む。船舶の姿勢、動揺および速度は、衛星測位システムやジャイロセンサ等により取得することができる。制御手段は、これらの船舶の運動状態を示す情報に基づいてアクチュエータ22A,22Bを制御することにより、右舷側および左舷側のそれぞれのフィン20A,20Bの回転角度θを制御する。
【0021】
上記構成の船舶用舵1では、船舶の運動状態に応じて、船舶のピッチング運動、ヒービング運動やローリング運動等が軽減するようにアクチュエータ22A,22Bを制御し、右舷側および左舷側のそれぞれのフィン20A,20Bの回転角度θを制御することができる。これにより、船舶の船体抵抗を小さくして、省エネルギー効果が得られる。また、船舶の動揺が小さくなることで船舶の乗り心地が向上する。さらに、船舶の旋回時の船体の傾斜角度を小さくすることができるため、船舶の転覆防止が図れる。
【0022】
また、本実施形態における船舶用舵1では、右舷側および左舷側のフィン20A,20Bの回転角度θをそれぞれ独立して制御することが可能であるため、プロペラPの駆動状態に応じて常に最適な角度に設定することにより、従来よりもプロペラPの旋回流を効果的に回収して、大きな省エネルギー効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の船舶用舵および船舶は、プロペラの旋回流の回収のみならず、船舶の動揺軽減が可能な船舶用舵および船舶として有用である。
【符号の説明】
【0024】
B 船体
1 船舶用舵
10 舵本体
11 舵軸
20A,20B フィン
21A,21B フィン動作ロッド
22A,22B アクチュエータ
23 ステッピングモータ
24 動力伝達機構
24A,24B タイミングプーリ
24C ベルト
25A,25B 操舵軸
26A,26B 支持軸
30 架台
図1
図2
図3
図4
図5
図6