(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095411
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A41B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211284
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
(72)【発明者】
【氏名】野田 真奈美
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA02
3B018AC08
3B018AD01
(57)【要約】
【課題】生産効率を低下させることなく、片手で容易かつ迅速に着用でき、着用中に脱げ等脱落することなく着用感を向上させる靴下を提供する。
【解決手段】靴下1は、口ゴム部2、レッグ部3、ヒール部4、フート部5及びトウ部6が丸編みにより順次連続して編成される靴下であって、レッグ部3が、コース方向に不連続で分離し、ウェール方向に所定数編成された帯状の把持部10を有し、口ゴム部2が、シングル編みにより編成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口ゴム部、レッグ部、ヒール部、フート部及びトウ部が丸編みにより順次連続して編成される靴下であって、
前記レッグ部が、コース方向に不連続で分離し、ウェール方向に所定数編成された帯状の把持部を有し、
前記口ゴム部が、シングル編みにより編成されることを
特徴とする靴下。
【請求項2】
前記請求項1に記載の靴下において、
前記レッグ部が、パイル編みによって編成されたパイル編み部分と、当該パイル編み部分に連続して、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分とを有することを
特徴とする靴下。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の靴下において、
前記口ゴム部、及び前記把持部を含む前記レッグ部上部が、靴下外側に折り返されるとともに、前記口ゴム部端部が前記レッグ部に縫着されることを
特徴とする靴下。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれか一項に記載の靴下において、
前記フート部が、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分を有することを
特徴とする靴下。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれか一項に記載の靴下において、
前記ヒール部及び前記トウ部が、パイル編みによって編成されたパイル編み部分を有することを
特徴とする靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産効率を低下させることなく、片手で容易かつ迅速に着用でき、着用中に脱げ等脱落することなく着用感を向上させる靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や体の不自由な人、健常者であっても体を動かしにくい状況にある人は必ずしも両手を使うことができるとは限らず、例えば、両手で靴下の履き口を拡げて爪先を入れてから靴下を引き上げる、といった靴下を着用する際の一連の動作を行うことが容易ではない。
【0003】
そこで、
図5に示されるような、片手で着用することのできる靴下100が従来知られている。
図5に示される靴下100は、口ゴム部からトウ部にかけて連続した筒編みで形成され、レッグ部101の後側に別工程にて縫着された取手部102を備える構成となっている。着用者は、取手部102を左右いずれかの手で掴んで引き上げることによって、靴下100を着用することができるというものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図5で示される従来の靴下100は、取手部102の1か所に力を集中して手で引き上げることから、開口した口ゴム部が変形して開口部分を狭くし、容易に着用できないという課題を有していた。
【0005】
また、取手部102は、一旦口ゴム部からトウ部までを連続して筒編みで編み立てた後、別途レッグ部101の後側に縫着する必要があり、製造工程数が増え、生産効率を低下させるという課題を有していた。
【0006】
さらに、靴下を容易かつ迅速に着用するためには、口ゴム部及びレッグ部を極端に緩く編み立てて形成するか、オーバーサイズの靴下を採用することも考えられるが、こられのいずれも着用中に脱げ等で着用感を悪化させるという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記課題を解消するためになされたものであり、生産効率を低下させることなく、片手で容易かつ迅速に着用でき、着用中に脱げ等脱落することなく着用感を向上させる靴下を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る靴下は、口ゴム部、レッグ部、ヒール部、フート部及びトウ部が丸編みにより順次連続して編成される靴下であって、レッグ部が、コース方向に不連続で分離し、ウェール方向に所定数編成された帯状の把持部を有し、口ゴム部が、シングル編みにより編成されるものである。
【0009】
このように本発明においては、把持部が丸編みにより連続して編成されるとともに、口ゴム部がシングル編みにより編成されることから、着用者が把持部を掴んで引き上げる際に、シングル編みの口ゴム部の締付力によって口ゴム部の変形を極力抑制し、かつコース方向に不連続で分割して形成される帯状の把持部によりレッグ部周方向への応力を分断してウェール方向(上下方向)へのみ応力を伝達して開口部分を狭くすることがなく、片手で容易かつ迅速に着用することができる。
また、把持部が丸編みにより連続して編成されることから、靴下の縫製工程とは別に、靴下に把持部を取り付ける工程が不要となり、生産効率を低下させることがない。
【0010】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、レッグ部が、パイル編みによって編成されたパイル編み部分と、パイル編み部分に連続して、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分とを有するものである。
【0011】
このように本発明においては、レッグ部にシンカー乗せ編み部分を有することから、口ゴム部をシングル編みで編成しても、シンカー乗せ編みによる編目の数が同じで度目が大きく形成される部分で強く締め付けることができることとなり、靴下がずり落ちてしまうことを防止することができる。
また、ウェール方向のおけるシンカー乗せ編み部分の伸び率が、パイル編み部分の伸び率よりも小さいことから、着用者が靴下を引き上げる際に、靴下が伸び切きることなく着用者の引き上げ動作に追従して引き上げやすくなり、より片手で容易かつ迅速に着用することができる。
さらに、シンカー乗せ編み部分の目が粗いことから、通気性を確保することができ、蒸れを防止することができる。
【0012】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、口ゴム部、及び把持部を含むレッグ部上部が、靴下外側に折り返されるとともに、口ゴム部端部がレッグ部に縫着されるものである。
【0013】
このように本発明においては、口ゴム部及び把持部を含むレッグ部上部が、靴下外側に折り返されてレッグ部の外側に口ゴム部が重畳された反転状態となっていることから、口ゴム部よりも締付力の小さいレッグ部にて足首まわりに保持されることとなり、締め付けによる着用者にかかる負担を軽減することができる。
また、把持部は、コース方向の不連続部分をとおして靴下内側に折り返し可能であることから、口ゴム部及び把持部を含むレッグ部上部を外側に折り返したとしても、パイル編成部分のパイル側に折り返された把持部が口ゴム部及び把持部を含むレッグ部上部の折り返しにより外側に位置するようになり、片手履き用の靴下としてそのまま使用し続けることができる。
【0014】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、フート部が、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分を有するものである。
【0015】
このように本発明においては、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分をフート部が有することから、シンカー乗せ編み部分の締付力により着用者の足甲部に強く保持されることとなり、歩行時等の足裏及びインソール間の摩擦による靴下のズレを防止することができる。
また、ウェール方向のおけるシンカー乗せ編み部分の伸び率が、パイル編み部分の伸び率よりも小さいことから、着用者が靴下を引き上げる際に、靴下が伸び切きることなく着用者の引き上げ動作に追従して引き上げやすくなり、片手であっても靴下のトウ部までを確実に着用させることができる。
さらに、シンカー乗せ編み部分の目が粗いことから、通気性を確保することができ、蒸れを防止することができる。
【0016】
本発明に係る靴下は、必要に応じて、ヒール部及びトウ部が、パイル編みによって編成されたパイル編み部分を有するものである。
【0017】
このように本発明においては、パイル編みによって編成されたパイル編み部分をヒール部及びトウ部が有することから、柔らかな履き心地と保温性、特に指先の保温性を確保することができる。
また、クッション性を有することから、歩行時等に着用者の踵部、爪先部に掛かる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る靴下の側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る靴下におけるレッグ部の概略図であって、(a)は要部拡大図、(b)は(a)におけるA-A拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る靴下におけるレッグ部の編み組織を示す模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る靴下の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る靴下を
図1ないし
図3に基づいて説明する。また、本実施形態の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0020】
本実施形態に係る靴下1は、全体を丸編機により基端開口部からルーズ・コースまでが連続して編成される筒状体で形成され、当該筒状体の基端開口部からなる口ゴム部2と、先端開口部を縫合してなるトウ部6と、口ゴム部2とトウ部6との間に編成されるレッグ部3、ヒール部4及びフート部5とを備える構成である。
【0021】
靴下1は、靴下であれば特に限定されず、例えば、ハイソックス、スニーカーソックス、オーバーニー、2本指靴下、3本指靴下、5本指靴下でもよい。
【0022】
口ゴム部2は、編地が一重のシングル編みとされ、伸縮性を持たせるために地糸の中にゴム糸を挿入して編成される。
口ゴム部2は、例えば、ウーリーナイロン糸を地糸として平編みにより編成され、ゴム糸が挿入される。
【0023】
レッグ部3は、上部にパイル編みによって編成されたパイル編み部分7と、当該パイル編み部分7に連続して、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分8とを有する。
【0024】
パイル編み部分7は、パイル編みによって編成され、例えば、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をFTY糸とされる。
【0025】
パイル編み部分7は後側上端部にコース方向に編み組織が不連続となっている不連続部分9を有し、この不連続部分9にウェール方向に所定数連続して編成され、レッグ部3後方に分離した帯状の把持部10が形成される。把持部10は、丸編機のシリンダの一部を利用して、ピッカーの動作を停止することによって編成される。
把持部10は、パイル編みによって編成され、例えば、例えば、表糸をウーリーナイロン糸、裏糸をFTY糸とされる。
【0026】
シンカー乗せ編み部分8は、シンカー乗せ編みによって編成される。
ここで、シンカー乗せ編みとは、表糸及び裏糸の両糸をシンカーの最も高い位置に配置された爪部上に乗せて編成する方法である。
パイル編みは、
図3(a)に示すように、表糸30をシンカー20の最も高い位置に配置された第1の爪部21上に乗せ、裏糸31を第1の爪部21よりも低い位置に配置された第2の爪部22上に乗せて編地を編み立てる。
図3(b)に示すように、表糸30でループを形成し、第1の爪部21と第2の爪部22との高さの差に応じたパイルを形成する。
これに対し、シンカー乗せ編みは、
図3(c)に示すように、表糸30及び裏糸31の両糸を第1の爪部21上に乗せて編地を編み立てる。そのため、
図3(b)と略同一スケールで描いた
図3(d)に示すように、度目が大きく、目の粗い(隙間の多い)編み方となっている。
シンカー乗せ編み部分8は、例えば、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をウーリーナイロン糸とエステル糸を巻いたゴム糸とされる。編み組織にゴム糸を挿入することにより、シンカー乗せ編み部分8の締付力を確保している。
【0027】
シンカー乗せ編み部分8は、全体の伸び率がパイル編み部分7全体における伸び率よりも小さくなるように形成される。
上述したように、シンカー乗せ編みで編み立てられた編地は度目が大きいため、ウェール方向の編成数が平編みやパイル編みと比較して少なくなる。
図1に示す例では、パイル編み部分7とシンカー乗せ編み部分8のウェール方向長さが概ね同じとなっていることから、シンカー乗せ編み部分8のウェール方向の編成数は、パイル編み部分7のウェール方向の編成数よりも少なく、その結果として、シンカー乗せ編み部分8全体における伸び率がパイル編み部分7全体における伸び率よりも小さくなっている。
【0028】
以上にように、レッグ部3にシンカー乗せ編み部分8を有することから、口ゴム部2をシングル編みで編成しても、シンカー乗せ編みによる編目の数が同じで度目が大きく形成される部分(シンカー乗せ編み部分8)で強く締め付けることができることとなり、靴下1がずり落ちてしまうことを防止することができる。
また、ウェール方向のおけるシンカー乗せ編み部分8の伸び率が、パイル編み部分7の伸び率よりも小さいことから、着用者が靴下1を引き上げる際に、靴下1が伸び切きることなく着用者の引き上げ動作に追従して引き上げやすくなり、より片手で容易かつ迅速に着用することができる。
さらに、シンカー乗せ編み部分8の目が粗いことから、通気性を確保することができ、蒸れを防止することができる。
【0029】
ヒール部4は、丸編機のシリンダの一部を利用して目減らし及び目増しによって編成される。
図1に示す例では、ヒール部4にI字状のゴアライン11が形成されているが、Y字状であってもよく、その形状は問わない。
ヒール部4は、パイル編みによって編成され、例えば、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をFTY糸とされる。
【0030】
フート部5は、パイル編みによって編成されるが、少なくとも一部をシンカー乗せ編みによって編成される。
図1に示す例では、着用者の土踏まずに対応する部分の全周が、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分12となっている。
フート部5のパイル編み部分は、例えば、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をFTY糸とされ、シンカー乗せ編み部分12は、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をウーリーナイロン糸とエステル糸を巻いたゴム糸とされる。
【0031】
以上にように、シンカー乗せ編みによって編成されたシンカー乗せ編み部分12をフート部5が有することから、シンカー乗せ編み部分12の締付力により着用者の足甲部に強く保持されることとなり、歩行時等の足裏及びインソール間の摩擦による靴下1のズレを防止することができる。
また、ウェール方向のおけるシンカー乗せ編み部分12の伸び率が、パイル編み部分の伸び率よりも小さいことから、着用者が靴下1を引き上げる際に、靴下1が伸び切きることなく着用者の引き上げ動作に追従して引き上げやすくなり、片手であっても靴下1のトウ部6までを確実に着用させることができる。
さらに、シンカー乗せ編み部分12の目が粗いことから、通気性を確保することができ、蒸れを防止することができる。
【0032】
トウ部6は、丸編機のシリンダの一部を利用して、目減らし及び目増しによって編成される。トウ部6には、ゴアライン13と、ルーズ・コースを縫製したリンキングライン14が形成される。
トウ部6は、パイル編みによって編成され、例えば、表糸をレーヨンシルク糸、裏糸をFTY糸とされる。
【0033】
以上にように、パイル編みによって編成されたパイル編み部分をヒール部4及びトウ部6が有することから、柔らかな履き心地と保温性、特に指先の保温性を確保することができる。
また、クッション性を有することから、歩行時等に着用者の踵部、爪先部に掛かる負荷を軽減することができる。
【0034】
次に、本実施形態に係る靴下1の製造方法における編成動作について説明する。
丸編機による靴下1の編成は、口ゴム部2、レッグ部3、ヒール部4、フート部5及びトウ部6を順次連続して編み立て、フート部5及びトウ部6に各々連続する先端開口部となるルーズ・コースを編み立てられることとなる。
【0035】
まず、口ゴム部2は、丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用して複数のコースを順次繰り返すことにより編成される。
【0036】
次に、レッグ部3は、パイル編み部分7の上部を丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用して複数のコースを順次繰り返すことにより編成した後、シリンダの一部を利用して、編成範囲以外のピッカーの動作を停止することにより、帯状の編地(把持部10)を編成する。把持部10を編成後、再び、シリンダの全周を編成範囲として使用して複数のコースを順次繰り返すことによりパイル編み部分7の下部を編成する。
パイル編み部分7の編成後、連続して、丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用して複数のコースを順次繰り返すことによりシンカー乗せ編み部分8を編成する。
【0037】
ヒール部4は、丸編機におけるシリンダの略半周を編成範囲として使用し、このシリンダの編成範囲以外の編成範囲にあるバットニードルを非編成レベル(センター・カムの上面)に上げるとともに、シリンダの編成範囲にあるバットニードルにてシリンダの正逆往復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らしと目増しとを行って編地を編成する。
【0038】
フート部5は、丸編機におけるシリンダの全周を編成範囲として使用して複数のコースを順次繰り返すことにより、パイル編み部分とシンカー乗せ編み部分12とが編成される。
【0039】
トウ部6は、丸編機におけるシリンダの略半周を編成範囲として使用し、このシリンダの編成範囲以外の編成範囲にあるバットニードルを非編成レベル(センター・カムの上面)に上げるとともに、シリンダの編成範囲にあるバットニードルにてシリンダの正逆往復回転により針上げピッカー及び針下げによる目減らしと目増しとを行って編地を編成する。
【0040】
トウ部6を編成した後、丸編機におけるシリンダの全周に相当する編成範囲を使って、少なくとも1コース分を度粗にしてルーズ・コースを編み立てる。このルーズ・コースはダイヤルリンキング機によって目差しをしてリンキングライン14で縫い合わせることにより全体を袋状の靴下1として形成する。
【0041】
以上にように、把持部10が丸編みにより連続して編成されるとともに、口ゴム部2がシングル編みにより編成されることから、着用者が把持部10を掴んで引き上げる際に、シングル編みの口ゴム部2の締付力によって口ゴム部2の変形を極力抑制し、かつコース方向に不連続で分割して形成される帯状の把持部10によりレッグ部3周方向への応力を分断してウェール方向(上下方向)へのみ応力を伝達して開口部分を狭くすることがなく、片手で容易かつ迅速に着用することができる。
また、把持部10が丸編みにより連続して編成されることから、靴下1の縫製工程とは別に、靴下1に把持部10を取り付ける工程が不要となり、生産効率を低下させることがない。
【0042】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の本実施形態に係る靴下について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係る靴下の側面図である。なお、上記第1の実施形態と重複する記載については省略する。
【0043】
本実施形態に係る靴下が、上記第1の実施形態に係る靴下と異なる点は、口ゴム部及び把持部を含むレッグ部上部が外側に折り返されている点である。
【0044】
図4に示すように、本実施形態に係る靴下1は、口ゴム部2及び把持部10を含むレッグ部3の上部が外側に折り返され、口ゴム部2端部がレッグ部3の外側に縫着されている。
把持部10は、予め不連続部分9を通してレッグ部3におけるパイル編み部分7のパイル側に折り返された状態となっている。
【0045】
なお、口ゴム部2及びレッグ部3上部の折り返し部分は、必ずしもレッグ部3の外側に縫着されている必要はなく、縫着せずに単に折り返して使用することもできる。
【0046】
このように、口ゴム部2及び把持部10を含むレッグ部3上部が、靴下1外側に折り返されてレッグ部3の外側に口ゴム部2が重畳された反転状態となっていることから、口ゴム部2よりも締付力の小さいレッグ部3にて足首まわりに保持されることとなり、締め付けによる着用者にかかる負担を軽減することができる。
また、把持部10は、コース方向の不連続部分9をとおして靴下内側に折り返し可能であることから、口ゴム部2及び把持部10を含むレッグ部3上部を外側に折り返したとしても、パイル編み部分7のパイル側に折り返された把持部10が口ゴム部2及び把持部10を含むレッグ部3上部の折り返しにより外側に位置するようになり、片手履き用の靴下としてそのまま使用し続けることができる。
【0047】
なお、上記各実施形態では、リンキングライン14がトウ部6の上部に形成されるように編成したが、リンキングライン14がトウ部6の下部(着用者の足裏部側)に形成されるように編成してもよい。
このように、トウ部6の下部にリンキングライン14が形成されることから、着用者の爪等へのリンキングライン14の接触を避けることとなり、着用者が巻き爪などの症状がある場合に、靴下を着用することでのリンキングライン14による爪への刺激を回避することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 靴下
2 口ゴム部
3 レッグ部
4 ヒール部
5 フート部
6 トウ部
7 パイル編み部分
8 シンカー乗せ編み部分
9 不連続部分
10 把持部
11 ゴアライン
12 シンカー乗せ編み部分
13 ゴアライン
14 リンキングライン
20 シンカー
21 第1の爪部
22 第2の爪部
30 表糸
31 裏糸