(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095416
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ストレッチ成形装置及びストレッチ成形方法
(51)【国際特許分類】
B21D 25/02 20060101AFI20230629BHJP
B30B 15/28 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B21D25/02
B30B15/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211293
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 範男
【テーマコード(参考)】
4E089
4E137
【Fターム(参考)】
4E089JJ01
4E089JJ07
4E089JJ08
4E137AA08
4E137AA10
4E137BB01
4E137CA12
4E137DA11
4E137DA14
4E137EA01
4E137EA22
4E137EA23
4E137FA02
4E137FA03
4E137FA12
4E137FA22
4E137FA24
4E137GA01
4E137GB20
(57)【要約】
【課題】ワークを曲面状に精度良く成形することが可能なストレッチ成形装置及びストレッチ成形方法を提供する。
【解決手段】ストレッチ成形装置1は、ワークWの一の部分を挟み込む第1フレーム21及び第2フレーム22と、第1フレーム21及び第2フレーム22の少なくとも一方を挟み込み方向に移動させる移動機構6と、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させることを可能とする拘束力可変機構8と、を含む挟み込み機構2と、挟み込み機構2によりワークWが挟まれた状態で、ワークWの他の部分を引っ張る引っ張り機構4と、挟み込み機構2と引っ張り機構4との間でワークWを成形する成形部3と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの一の部分を挟み込む第1フレーム及び第2フレームと、前記第1フレーム及び前記第2フレームの少なくとも一方を挟み込み方向に移動させる移動機構と、前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させることを可能とする拘束力可変機構と、を含む挟み込み機構と、
前記挟み込み機構により前記ワークが挟まれた状態で、前記ワークの他の部分を引っ張る引っ張り機構と、
前記挟み込み機構と前記引っ張り機構との間で前記ワークを成形する成形部と、
を備える、
ストレッチ成形装置。
【請求項2】
前記拘束力可変機構は、前記ワークへの圧下量を変化させることで、前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させることを特徴とする請求項1に記載のストレッチ成形装置。
【請求項3】
前記第1フレームの前記挟み込み方向の位置を検出するための位置センサを備え、
前記拘束力可変機構は、前記第1フレームが前記ワークに当接した位置から前記挟み込み方向に移動した距離を前記ワークへの圧下量とすることを特徴とする請求項2に記載のストレッチ成形装置。
【請求項4】
前記挟み込み機構は、前記第1フレームを挟んで前記第2フレームの反対側に第3フレームを有しており、
前記移動機構は、前記第1フレームを前記第3フレームに対して相対的に移動させることで、前記第1フレームの前記挟み込み方向の位置を移動させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置。
【請求項5】
前記挟み込み機構は、前記第1フレームを挟んで前記第2フレームの反対側に第3フレームを有しており、
前記拘束力可変機構は、前記第3フレームを前記挟み込み方向に移動させて前記第1フレームを前記挟み込み方向に移動させることで、前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置。
【請求項6】
前記拘束力可変機構は、ウォームジャッキとサーボモータとを備えており、前記サーボモータを駆動させ、前記ウォームジャッキを前記挟み込み方向に移動させて、前記第3フレームを前記挟み込み方向に移動させることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のストレッチ成形装置。
【請求項7】
前記第1フレームの落下を防止するための落下防止装置が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置。
【請求項8】
前記引っ張り機構は、サーボモータの回転駆動により前記ワークを引っ張るように構成されており、
前記拘束力可変機構は、前記ワークの引っ張りが開始された後、前記引っ張り機構の前記サーボモータに流れる電流の絶対値が閾値まで上昇した時点で、前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を低下させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置。
【請求項9】
前記引っ張り機構は、サーボモータの回転駆動により前記ワークを引っ張るように構成されており、前記ワークの引っ張りを開始した後、前記引っ張り機構の前記サーボモータに流れる電流の絶対値が閾値まで上昇した時点で、前記サーボモータの回転駆動を停止させて前記ワークに対する引っ張りを停止することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のストレッチ成形装置を用いたストレッチ成形方法において、
前記挟み込み機構の前記第1フレームと前記第2フレームとで前記ワークを挟み込みつつ、前記引っ張り機構で前記ワークを引っ張りながら、前記成形部で前記ワークを成形する際に、前記挟み込み機構の前記拘束力可変機構により前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させながら前記ワークを成形する、
ストレッチ成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチ成形装置及びストレッチ成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機のフレームやパラボラアンテナの反射面等を製造する際、金属等の板状のワークが曲面状に成形される。
このように、板状のワークを曲面状に成形する装置としてストレッチ成形装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1に記載されたストレッチ成形装置では、ワークを、その面方向に直交する方向から挟み込みつつ、ワークの先端を引っ張る。
そして、引っ張られているワークの部分に湾曲した金型を押し当てるなどし、その状態でワークを引っ張っていくことで板状のワークが曲面状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のストレッチ成形装置では、上記のように、湾曲した金型を押し当てるなどすることでワークを曲げられた状態(曲面状)に成形するが、金型の延在方向と直交する方向、すなわちワークを引っ張る方向にも曲げられた状態に成形することができる。これは、ワークを挟み込む位置と金型を押し当てる位置との間隔を変えたりそれらの相対的な高さを変えたりすることで実現される。
しかしながら、従来のストレッチ成形装置では、ワークを曲面状に精度良く成形することができない場合があった。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、ワークを曲面状に精度良く成形することが可能なストレッチ成形装置及びストレッチ成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るストレッチ成形装置は、
ワークの一の部分を挟み込む第1フレーム及び第2フレームと、前記第1フレーム及び前記第2フレームの少なくとも一方を挟み込み方向へ移動させる移動機構と、前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させることを可能とする拘束力可変機構と、を含む挟み込み機構と、
前記挟み込み機構により前記ワークが挟まれた状態で、前記ワークの他の部分を引っ張る引っ張り機構と、
前記挟み込み機構と前記引っ張り機構との間で前記ワークを成形する成形部と、
を備える。
【0008】
また、本発明に係るストレッチ成形方法は、
上記のストレッチ成形装置を用いたストレッチ成形方法において、
前記挟み込み機構の前記第1フレームと前記第2フレームとで前記ワークを挟み込みつつ、前記引っ張り機構で前記ワークを引っ張りながら、前記成形部で前記ワークを成形する際に、前記挟み込み機構の前記拘束力可変機構により前記第1フレーム及び前記第2フレームによる前記ワークに対する拘束力を変化させながら前記ワークを成形する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ワークを曲面状に精度良く成形することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本実施形態に係るストレッチ成形装置を説明するためのイメージ図であり、(b)側方から見たイメージ図である。
【
図3】(a)ワークに成形された複合曲面の一例を表す斜視図であり、(b)側面図である。
【
図4】本実施形態に係るストレッチ成形装置の構成を表す概略側面図である。
【
図5】本実施形態に係る挟み込み機構の構成を表す図であり、(a)第1フレームを第3フレームに接近させた状態、(b)第1フレームを第3フレームから離した状態を表す図である。
【
図6】(a)圧下量Gと張力Tとの関係を表すグラフであり、(b)圧下量Gと拘束力Fとの関係を表すグラフである。
【
図7】本実施形態に係る引っ張り機構の構成を表す図である。
【
図8】(a)パラボラアンテナの反射面におけるパラボラアンテナの中心から径方向への距離rと曲率半径Rとの関係を表すグラフであり、(b)(a)の形状を成形する際のワークの引っ張りストロークSxと圧下量Gとの関係を表すグラフである。
【
図9】従来のストレッチ成形装置の引っ張り機構の構成例を表す図である。
【
図10】(a)ワークの引っ張りストロークの時間的変化を表すグラフであり、(b)引っ張り機構のサーボモータに流れる電流の絶対値の時間的変化等を表すグラフである。
【
図11】(a)ワークの引っ張りストロークの時間的変化を表すグラフであり、(b)引っ張り機構のサーボモータに流れる電流の絶対値の時間的変化等を表すグラフであり、(c)挟み込み機構における圧下量の時間的変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るストレッチ成形装置及びストレッチ成形方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明において、ストレッチ成形装置を後述する
図1等に示すX方向をワークWの引っ張り方向又は単に引っ張り方向という場合があり、また、Z方向を上下方向やワークWの挟み込み方向という場合がある。また、以下では、ワークが略三角形状の板材である場合について説明するが、ワークは矩形状等であってもよく、ワークの形状は略三角形状の場合に限定されない。
【0012】
図1(a)は、本実施形態に係るストレッチ成形装置を説明するためのイメージ図であり、
図1(b)は側方から見たイメージ図である。
なお、以下では、
図1(a)、(b)において矢印Xで表される方向がワークを引っ張る方向であり、以下、X方向又は引っ張り方向という。また、図中矢印Yで表される方向が引っ張り方向に直交する方向であり、以下、Y方向という。さらに、図中矢印Zで表される方向が板状のワークに直交する方向であり、以下、Z方向という。
【0013】
ストレッチ成形装置1は、ワークWを挟み込む第1フレーム21及び第2フレーム22を含む挟み込み機構2と、ワークWをX方向に引っ張る引っ張り機構4と、挟み込み機構2と引っ張り機構4との間でワークWを成形する成形部3とを備えている。
挟み込み機構2と成形部3と引っ張り機構4の具体的構成等については後で説明する。
【0014】
挟み込み機構2の構成は、ワークWを、第1フレーム21及び第2フレーム22で板状のワークWに直交する方向すなわちZ方向から挟み込むことができるものであればよく、特定の構成に限定されない。
本実施形態では、Y方向に延在する第1フレーム21の上金型21aの下面は、X方向の中央部分が下方に突出されており、Y方向に延在する凸状部分が形成されている。また、第1フレーム21に対応してY方向に延在する第2フレーム22の下金型22aの上面は、X方向の中央部分が下方に陥没されており、上金型21aの凸状部分に対応する、Y方向に延在する凹状部分が形成されている。
【0015】
挟み込み機構2の第1フレーム21の上金型21aの凸状部分の下方への突出距離、正確には
図2に示すように上金型21aと下金型22aとが接近した状態でワークWが圧下される凹部の深さを、以下、圧下量Gという。
なお、このように第1フレーム21の上金型21aに形成される凸状部分や第2フレーム22の下金型22aに形成される凹状部分はそれぞれ1条でなくてもよく、例えば複数条設けることも可能である。
【0016】
成形部3は、本実施形態では、下端部分に下に凸に湾曲した金型31aを備えるY方向に延在する第2ステージ31を備えており、第2ステージ31は、ワークWに金型31aを上方から押し付けるように配置される。
また、成形部3は、挟み込み機構2側から見た場合、第2ステージ31の奥側に、上端部分に下に凸に湾曲した金型32aを備えるY方向に延在する第3ステージ32を備えており、第3ステージ32は、第2ステージ31により押し下げられたワークWを金型32aで下方から押し上げるように配置される。
【0017】
そして、ワークWは、挟み込み機構2側から見た場合に、成形部3の奥側に配置された引っ張り機構4のクランプ部41でその端部が把持された状態で、引っ張り機構4によりX方向に引っ張られるようになっている。
引っ張り機構4のクランプ部41は、ワークWの端部を把持した状態でX方向、すなわち挟み込み機構2から離れる方向に移動しながらワークWを引っ張る。
【0018】
ストレッチ成形装置1では、以上のようにして、ワークWが、挟み込み機構2で挟み込まれ、その状態で引っ張り機構4によりX方向に引っ張られる。そして、ワークWは、第1フレーム21と第2フレーム22との間で摺動しながら、X方向にテンションがかかった状態で、成形部3で上下から金型31a、32aを押し付けられる。
本実施形態に係るストレッチ成形装置1では、このようにして、成形部3により挟み込み機構2と引っ張り機構4との間でワークWを成形するようになっている。そして、このように成形されることで、例えば
図3(a)に示すように、ワークWがY方向に湾曲した状態に成形される。
【0019】
また、ワークWを引っ張る間に、挟み込み機構2と第2ステージ31との距離L1と、第2ステージ31と第3ステージ32との距離L2を変えたり、第2ステージ31と第3ステージ32を上下方向に移動させて第2ステージ31によるワークWの下方への押し下げ量と第3ステージ32によるワークWの上方への押し上げ量を変えたりすることで、例えば
図3(a)、(b)に示すように、ワークWがX方向にも湾曲した状態に成形される。
このように、本実施形態に係るストレッチ成形装置1では、ワークWのXY方向に3次元的な曲率を有する複合曲面を成形することができるようになっている。なお、この点については、後で改めて説明する。
【0020】
図4は、本実施形態に係るストレッチ成形装置の構成を表す概略側面図である。
ワークWは、図中左側から挟み込み機構2の第1フレーム21と第2フレーム22との間に挿入され、成形部3の第2ステージ31の金型31aの下側を通され、第3ステージ32の金型32aの上側を通される。
そして、ワークWは、挟み込み機構2の第1フレーム21と第2フレーム22とで挟み込まれ、第2ステージ31の金型31aで押し下げられ、第3ステージ32の金型32aで押し上げられた状態で、その端部が、図中Aで示される位置で引っ張り機構4のクランプ部41で把持される。
この状態が、ワークWの成形開始直前の状態に相当する。なお、以下、
図4中Aで示される位置を、引っ張り機構4による引っ張り開始位置Aという。
【0021】
図4に示すように、挟み込み機構2には、ワークWの上面と下面に潤滑油を付与するためのオイルプレート23が設けられている。
また、挟み込み機構2は、台座部5に対してX方向すなわちワークWの引っ張り方向に移動可能とされており、ストレッチ成形装置1には、挟み込み機構2をX方向に移動させるためのモータ24a等を備える移動装置24が設けられている。本実施形態では、挟み込み機構2が台座部5に対してX方向に移動することで、挟み込み機構2と第2ステージ31との距離L1を変えることができるようになっている。
【0022】
図5(a)、(b)を用いて、本実施形態に係る挟み込み機構の構成について詳しく説明する。
挟み込み機構2は、前述したように、下端部分に上金型21aを有する第1フレーム21と、上端に下金型22aを有する第2フレーム22とを備えており、第1フレーム21及び第2フレーム22でワークの一の部分を挟み込むようになっている。
【0023】
また、本実施形態では、第1フレーム21の上方、すなわち第1フレーム21を挟んで第2フレーム22の反対側には第3フレーム25が配置されている。
そして、第1フレーム21と第3フレーム25は、後述する移動機構6のリンク機構63により第1フレーム21と第3フレーム25とが相対的にZ方向に移動可能な状態で連結されている。
【0024】
また、第1フレーム21と第3フレーム25の側方には、第2フレーム22が固定された下部フレーム26から立設された昇降ガイドフレーム27が配置されており、第1フレーム21と第3フレーム25はリンク機構63により連結された状態で全体として昇降ガイドフレーム27に沿ってZ方向に移動する、すなわち昇降することができるようになっている。
昇降ガイドフレーム27には、第1フレーム21のZ方向の位置を検出するためのリニアエンコーダ等を備えた位置センサ28が設けられている。
【0025】
そして、挟み込み機構2は、第1フレーム21及び第2フレーム22の少なくとも一方を挟み込み方向すなわちZ方向に移動させる移動機構6を備えている。
なお、
図5(a)、(b)ではワークWの図示が省略されている。また、以下では、第1フレーム21をZ方向に移動させる場合について説明するが、このように構成する代わりに、第2フレーム22をZ方向に移動させるように構成することも可能であり、また、第1フレーム21と第2フレーム22の両方をZ方向に移動させるように構成することも可能である。
【0026】
本実施形態では、移動機構6は、第1フレーム21を第3フレーム25に対して相対的に移動させることで、第1フレーム21のZ方向すなわちワークWに対する挟み込み方向の位置を移動させるように構成されている。
移動機構6は、昇降用アクチュエータ61とリンク機構63とを備えている。昇降用アクチュエータ61は第3フレーム25の上面部分に取り付けられている。
【0027】
なお、
図5(a)、(b)では昇降用アクチュエータ61が流体シリンダで構成されている場合を示したが、この他にも、例えば、直線的に動作するボールネジ駆動の電動アクチュエータ等を用いることも可能である。
そして、昇降用アクチュエータ61により接続ロッド62を伸縮させることでリンク機構63の各部材を回動させるなどして第1フレーム21を第3フレーム25に対してZ方向に移動させるようになっている。
【0028】
すなわち、
図5(a)に示すように、昇降用アクチュエータ61が接続ロッド62を収縮させると、その動きがリンク機構63を介して第1フレーム21に伝達され、第1フレーム21は第3フレーム25に接近する方向すなわち上方に移動する。
本実施形態では、移動機構6は、このようにして接続ロッド62を収縮させて第1フレーム21を第3フレーム25に接近させることで、第1フレーム21のZ方向の位置を移動させて上昇させる。
【0029】
また、
図5(b)に示すように、昇降用アクチュエータ61が接続ロッド62を伸長させると、その動きがリンク機構63を介して第1フレーム21に伝達され、第1フレーム21は第3フレーム25から離れる方向すなわち下方に移動する。
本実施形態では、移動機構6は、このようにして接続ロッド62を伸長させて第1フレーム21を第3フレーム25に離間させることで、第1フレーム21のZ方向の位置を移動させて下降させる。そのため、
図1(b)に示したように第1フレーム21と第2フレーム22とでワークWを挟み込む状態になる。
【0030】
なお、本実施形態では、第1フレーム21が落下することを防止するために、落下防止装置7が設けられている。
図5(b)に示すように、落下防止装置7は、第3フレーム25の上面部分に配置されており、X方向に出没可能な係合部71を有している。
【0031】
そして、第3フレーム25に対して第1フレーム21がZ方向に移動する際に落下防止装置7のX方向側で揺動するリンク機構63の部分に孔が設けられており、
図5(a)に示すように、第1フレーム21が相対的に第3フレーム25に最も接近した位置にある状態で、落下防止装置7から突出させた係合部71がリンク機構63に設けられた孔と係合するようになっている。
【0032】
このようにして、本実施形態では、第1フレーム21が第3フレーム25に最も接近した状態で落下防止装置7により第1フレーム21の落下が防止されるようになっている。
そして、例えば、第1フレーム21下部の上金型21aを交換するときなど、第1フレーム21を上昇させた位置に移動させて作業を行う際には、安全のために事前に落下防止装置7により第1フレーム21の落下が防止された状態で作業が行われる。
【0033】
一方、挟み込み機構2は、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させることを可能とする拘束力可変機構8を備えている。
ここで、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fについて説明する。
【0034】
前述した第1フレーム21の上金型21aの凸状部分や第2フレーム22の下金型22aの構造や、ワークWの材質等にもよるが、第1フレーム21の上金型21aと第2フレーム22の下金型22aとでワークWを挟み込んだ状態でワークWを引っ張り機構4で引っ張り方向すなわちX方向に引っ張った場合に、ワークWが第1フレーム21と第2フレーム22に対して摺動を開始した際にワークWに加わっている張力TとワークWへの圧下量Gとの関係を実験的に求めると、例えば
図6(a)に示すように圧下量Gに対して張力Tが単調増加する関係になる。
【0035】
そして、その場合の張力Tと、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fとの間には、μ’を動摩擦係数とすると、
T=μ’F …(1)
の関係があるため、拘束力Fも
図6(b)に示すように圧下量Gに対して単調増加する関係になる。
【0036】
そのため、本実施形態では、拘束力可変機構8は、
図6(b)の関係に基づいて、ワークWへの圧下量Gを変化させることで、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させるようになっている。
そして、本実施形態では、ワークWへの圧下量Gは、位置センサ28で検出される第1フレーム21のZ方向の位置から算出される。すなわち、拘束力可変機構8は、第1フレーム21の上金型21aがワークWに当接した位置から第1フレーム21がZ方向に移動した距離すなわち第1フレーム21がワークWを挟み込んだ距離をワークWへの圧下量Gとして算出するようになっている。
【0037】
本実施形態では、拘束力可変機構8は、昇降ガイドフレーム27の上端部分に架け渡された上部フレーム29に配置されており、ウォームジャッキ81とサーボモータ82とを備えている。なお、
図5(a)、(b)では、ウォームジャッキ81が2台配置されている場合が示されているが、1台でもよく、あるいは3台以上配置されていてもよい。
ウォームジャッキ81は、上部フレーム29を貫通するように立設されており、その下端が第3フレーム25の上端部分に取り付けられている。
【0038】
また、上部フレーム29のY方向の一方側の端部部分にサーボモータ82は配置されており、サーボモータ82の出力軸がカップリング83を介してウォームジャッキ81に接続されている。
そして、ウォームジャッキ81は、上部フレーム29のY方向の一方側の端部部分に配置されたサーボモータ82の回転駆動によりZ方向に移動すなわち昇降するようになっている。
【0039】
そして、拘束力可変機構8は、
図5(b)に示したように移動機構6の駆動により第1フレーム21が第3フレーム25に対して最も離間した状態、すなわち第3フレーム25に対して第1フレーム21がZ方向に最も下降して
図1(b)に示したように第1フレーム21と第2フレーム22とでワークWを挟み込んだ状態で、サーボモータ82を駆動させ、ウォームジャッキ81をZ方向に移動させることで、第3フレーム25をZ方向に移動させて第1フレーム21をZ方向に移動させるようになっている。
【0040】
その際、第1フレーム21を下方に移動させると、第1フレーム21と第2フレーム22との間隔が狭まるため、前述したワークWへの圧下量Gが大きくなり、第1フレーム21と第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fが強くなる。
また、第1フレーム21を上方に移動させると、第1フレーム21と第2フレーム22との間隔が開くため、ワークWへの圧下量Gが小さくなり、第1フレーム21と第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fが弱くなる。
【0041】
本実施形態では、このように、まず、移動機構6を駆動させて、
図5(b)に示したように第1フレーム21を第3フレーム25に対して最も離間した状態に移動させて、第1フレーム21と第2フレーム22とでワークWを挟み込む。
そして、その後、拘束力可変機構8が、サーボモータ82を駆動させてウォームジャッキ81を上下方向に伸縮させて第3フレーム25をZ方向すなわちワークWに対する挟み込み方向に移動させて第1フレーム21をZ方向に移動させ、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWへの圧下量Gを変化させることで、ワークWに対する拘束力Fを変化させて微調整することができるようになっている。
【0042】
なお、挟み込み機構2の拘束力可変機構8で、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させることの効果や活用のしかた等については、後で説明する。
【0043】
また、上記のようにサーボモータ82を駆動させてウォームジャッキ81でワークWへの圧下量Gを微調整する場合、
図5(b)に示したように移動機構6のリンク機構63が垂直に立った状態で微調整を行うと、上金型21aにかかる力が垂直に立った状態のリンク機構63に沿って伝達するため、上金型21aに強い力がかかってもリンク機構63は回転しない。
そのため、移動機構6の昇降用アクチュエータ61にかかる負荷を小さくすることが可能となる。また、昇降用アクチュエータ61が、上金型21aに強い力がかかった際にリンク機構63の回転を防止する性能を有する必要がないため、アクチュエータサイズを小さくすることが可能となる。
【0044】
次に、ストレッチ成形装置1の成形部3について説明する。
図4に示すように、成形部3の第2ステージ31はZ方向にのみ移動することができるようになっている。
本実施形態では、第2ステージ31は、挟み込み機構2の第1フレーム21における構成と同様の構成でZ方向に移動するようになっている。
【0045】
すなわち、第2ステージ31の上方には第4フレーム33が配置されている。そして、第2ステージ31と第4フレーム33は、リンク機構を有する移動装置34により第2ステージ31と第4フレーム33とが相対的にZ方向に移動可能に連結されている。
また、第4フレーム33の上方に、リンク機構で連結された第2ステージ31及び第4フレーム33を昇降させるためのサーボモータとウォームジャッキ等を備えた昇降装置35が配置されている。
【0046】
そして、第2ステージ31は、移動装置34と昇降装置35の駆動により第4フレーム33とともにZ方向に移動されるようになっている。
そして、移動装置34と昇降装置35の駆動により第2ステージ31をZ方向に移動させることで、前述した第2ステージ31によるワークWの下方への押し下げ量の調整を行うことができるようになっている。
【0047】
一方、成形部3の第3ステージ32はZ方向だけでなくX方向にも移動することができるようになっている。
すなわち、第3ステージ32の下方には支持台36が配置されており、第3ステージ32は昇降装置37の駆動により支持台36に対してZ方向に移動する、すなわち昇降することができるようになっている。
また、支持台36はストレッチ成形装置1の台座部5によりX方向に移動可能に支持されており、サーボモータ等を備える移動装置38の駆動により台座部5に対してX方向すなわちワークWの引っ張り方向に移動されるようになっている。
【0048】
そして、移動装置38の駆動により支持台36をX方向に移動させて第3ステージ32をX方向に移動させることで、
図1に示した第2ステージ31と第3ステージ32との距離L2を変えることができるようになっている。
また、昇降装置37の駆動により第3ステージ32をZ方向に移動させることで、前述した第3ステージ32によるワークWの上方への押し上げ量の調整を行うことができるようになっている。
【0049】
次に、ストレッチ成形装置1の引っ張り機構4について説明する。
引っ張り機構4は、床面等に固定されたストレッチ成形装置1の台座部5によりX方向に移動可能に支持されたキャリッジ42を備えており、キャリッジ42の先端すなわち挟み込み機構2側の端部に前述したクランプ部41が取り付けられている。
また、台座部5にはサーボモータ43が配置されており、サーボモータ43の回転駆動によりキャリッジ42とクランプ部41をX方向に移動させることで、ワークWをX方向すなわち引っ張り方向に引っ張るようになっている。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、引っ張り機構4は、クランプ部41が取り付けられたキャリッジ42の下側には、X方向に延在する2本の走行フレーム44が固定されている。
走行フレーム44のY方向の側面には複数の車輪45が回転自在に取り付けられており、各車輪45はX方向に延在するレール46上を走行するようになっている。また、走行フレーム44の下面部分には、
図4に示すようにラック47が取り付けられている。
【0051】
また、
図7に示すように、サーボモータ43の回転出力は減速機48で減速されるようになっており、減速機48の出力軸48aには、
図4に示すようにピニオン49が取り付けられている。
そして、サーボモータ43の回転駆動がラック47とピニオン49で構成されるラックアンドピニオン機構を介して走行フレーム44に伝達され、走行フレーム44がX方向に移動することでキャリッジ42がX方向に移動してクランプ部41がワークWをX方向すなわち引っ張り方向に引っ張るようになっている。
【0052】
図4に示したように、ワークWの成形開始前に引っ張り開始位置AでワークWの端部がクランプ部41で把持される。そして、サーボモータ43を駆動させてクランプ部41をX方向に移動させることで、クランプ部41でワークWを引っ張り方向に引っ張りながらワークWの成形が行われる。
なお、サーボモータ43に流れる電流を検出する電流センサ50については後で説明する。
【0053】
次に、本実施形態に係るストレッチ成形装置1の作用について説明する。また、本実施形態に係るストレッチ成形方法についてもあわせて説明する。
【0054】
本実施形態に係るストレッチ成形装置1を用いたストレッチ成形方法では、上記のように、挟み込み機構2の第1フレーム21と第2フレーム22とでワークWを挟み込み方向すなわちZ方向から挟み込みつつ、引っ張り機構4でワークWをX方向に引っ張りながら、成形部3でワークWを成形する。
そして、その際に、挟み込み機構2の拘束力可変機構8により第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させながらワークWを成形するようになっている。
【0055】
例えば、ワークWを成形してパラボラアンテナの反射面を成形する場合、パラボラアンテナの中心から外側に向かう半径断面での曲率半径Rは、例えば
図8(a)に示すように、パラボラアンテナの外側に向かうほど、すなわちパラボラアンテナの中心から径方向への距離rが遠くなるほど大きくなるように成形される。
【0056】
そして、従来のストレッチ成形装置では、引っ張り機構4でワークWを引っ張りながら、挟み込み機構2と第2ステージ31との距離L1と、第2ステージ31と第3ステージ32との距離L2を変えたり、第2ステージ31と第3ステージ32を上下方向に移動させて第2ステージ31によるワークWの下方への押し下げ量と第3ステージ32によるワークWの上方への押し上げ量を変えたりすることでこのような成形を行っていた。
しかし、このような成形方法では、ワークを曲面状に精度良く成形することができない場合があった。
【0057】
本実施形態に係るストレッチ成形装置1でも、ワークWの成形において、上記と同様に、引っ張り機構4でワークWを引っ張りながら、距離L1と距離L2を変えたり第2ステージ31によるワークWの押し下げ量と第3ステージ32によるワークWの押し上げ量を変えたりする。
そして、それと同時に、上記のように挟み込み機構2の拘束力可変機構8により第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させながらワークWを成形する。
【0058】
その際、本実施形態では、上記のように、拘束力可変機構8は、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWへの圧下量Gを変化させてワークWに対する拘束力Fを変化させる。
そして、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力FすなわちワークWへの圧下量Gを大きくするほど張力Tが大きくなり、成形後のスプリングバックが小さくなることから、ワークWに成形される曲面の曲率が大きくなり、曲率半径Rが小さくなる。
【0059】
例えば、
図8(a)に示したようなパラボラアンテナの反射面を成形する場合、引っ張り機構4によるワークWの引っ張りが開始直後、すなわち引っ張り機構4によるワークWの引っ張り開始位置AからのX方向への引っ張りストロークSxが短い時点では、
図8(a)におけるパラボラアンテナの中心から径方向への距離rが遠い部分の成形が行われる。
その際、パラボラアンテナの中心から径方向への距離rが遠い部分では曲率半径Rが大きくワークWに成形される曲面の曲率が小さくてよいため、
図8(b)に示すように、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fすなわち圧下量Gは小さくてよい。
【0060】
そして、引っ張り機構4によるワークWの引っ張りストロークSxが大きくなるほど成形されるパラボラアンテナの中心から径方向への距離rが短くなっていき、曲率半径Rが徐々に小さくなっていく。
すなわちワークWに成形される曲面の曲率が徐々に大きくなり、カーブがきつくなっていく。
【0061】
そこで、
図8(b)に示すように、引っ張り機構4によるワークWの引っ張りストロークSxが大きくなるほど第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fすなわち圧下量Gを大きくしていくことで、ワークWに成形される曲面の曲率が徐々に大きくすることができる。
そのため、
図8(a)に示したように、パラボラアンテナの中心から径方向への距離rが短くなるほど曲率半径Rが小さくなるような曲面がワークWに成形される。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力FすなわちワークWへの圧下量Gを適切に変化させることができるため、X方向に直交する方向すなわちY方向の曲面成形の精度も良くなる。
そのため、本実施形態では、ワークWを曲面状に精度良く成形することができる。
【0063】
以上のように、本実施形態に係るストレッチ成形装置1及びストレッチ成形方法によれば、ワークWの成形時に、引っ張り機構4でワークWを引っ張りながら、上記の距離L1と距離L2を変えたり第2ステージ31によるワークWの押し下げ量と第3ステージ32によるワークWの押し上げ量を変えたりすると同時に、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWへの圧下量Gを変化させるなどしてワークWに対する拘束力Fを変化させることが可能となる。
そのため、ワークWのX方向すなわち引っ張り方向の曲面成形を精度良く行うことが可能となるとともに、X方向に直交する方向すなわちY方向の曲面成形の精度も良くなる。そのため、本実施形態に係るストレッチ成形装置1及びストレッチ成形方法によれば、ワークWを曲面状に精度良く成形することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態に係るストレッチ成形装置1及びストレッチ成形方法を用いると、以下のような有益な作用効果も得られる。
従来のストレッチ成形装置では、挟み込み機構の構成としては種々の構成があるが、例えば
図9に示すように、本実施形態と同様に、挟み込み機構100が、第2フレーム102の上方に配置された第1フレーム101と、その上方に設けられた第3フレーム103とがリンク機構104で連結されており、移動機構105を駆動させることで第1フレーム101をZ方向に移動させるように構成されている場合がある。
【0065】
このような場合、移動機構105を駆動させて第3フレーム103に対して第1フレーム101を最も離した状態すなわち第1フレーム101を最も下降させた状態で、第1フレーム101と第2フレーム102との間で図示しないワークWが挟み込まれる。
しかし、上記の構成では第1フレーム101と第3フレーム103を全体として昇降させる機構がないため、第1フレーム101と第2フレーム102によるワークWへの圧下量Gを変えることができない。
【0066】
そのため、従来のストレッチ成形装置では、一旦ワークWへの圧下量Gが決まると、ワークWを引っ張っている最中に圧下量Gを変化させて第1フレーム101と第2フレーム102によるワークWの拘束力Fを変化させることができない。
そのため、本実施形態に係るストレッチ成形装置1とは異なり、ワークWの曲面成形を精度良く行うことが容易でなかった。
【0067】
また、ワークWの厚さが種々異なる場合でも第1フレームと第2フレームによるワークWの拘束力Fを一定に保つために、従来のストレッチ成形装置では、
図9に示すように、第1フレーム101と、第2フレーム22が固定される下部フレーム106との間にスペーサ107を噛ませ、スペーサ107の厚さを変えることで拘束力Fを一定にしていた。
しかし、このような構成では、ワークWの厚さが変わるごとにスペーサ107を交換しなければならず、拘束力Fの調整や段取替えに時間がかかっていた。
【0068】
それに対し、本実施形態に係るストレッチ成形装置1では、拘束力可変機構8を有しているため、拘束力可変機構8を作動させるだけで第1フレーム21と第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させることができるため、ワークWの厚さが変わっても拘束力可変機構8を作動させることで拘束力Fの調整や段取替えを容易かつ迅速に行うことが可能となる。
また、ワークWを引っ張っている最中でも、拘束力可変機構8を作動させて圧下量Gを変化させて第1フレーム21と第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを変化させることができるため、ワークWの曲面成形を精度良く行うことが可能となることは前述したとおりである。
【0069】
ところで、従来のストレッチ成形装置においても同様であるが、本実施形態に係るストレッチ成形装置1において、挟み込み機構2の第1フレーム21及び第2フレーム22で挟み込まれ、成形部3の第2ステージ31で押し下げられ第3テージ32で押し上げられたワークWを引っ張り機構4で引っ張ると、ワークWが破断してしまう場合がある。
ワークWの破断は、第3ステージ32と引っ張り機構4のクランプ部41との間で生じる場合が多い。
【0070】
そして、ワークWが破断する場合、通常、ワークWに加わっている張力Tが異常に強くなっている場合が多い。
そして、ワークWに加わる張力Tが増加すると、引っ張り機構4のサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが上昇する。サーボモータ43に流れる電流は
図4に示した電流センサ50によって検出される。
【0071】
例えば、
図10(a)に示すように、ある時刻taにワークWの引っ張りが開始されて、引っ張り機構4によるワークWの引っ張り開始位置AからのX方向への引っ張りストロークSxが増加し始めると、引っ張り開始と同時にワークWに加わる張力Tが増加する。
そして、電流センサ50で検出される引っ張り機構4のサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが上昇する。
【0072】
そして、通常の場合、すなわちワークWが破断せずに成形される場合は、
図10(b)に実線で示すように、サーボモータ43に流れる電流の絶対値Iは、一旦上昇した後、ワークWを引っ張っている間、徐々に低下する。
そして、ワークWが所定の引っ張りストロークSxだけ引っ張られてワークWの引っ張りを終了する際、サーボモータ43への電流の供給が停止され、サーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが0に戻る。
【0073】
それに対し、ワークWの破断が生じる場合は、
図10(b)に破線で示すように、ワークWの引っ張りが開始されると、上記の場合と同様に、サーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが上昇するが、張力Tが大きくなり過ぎて電流の絶対値Iが所定値Iaに達してワークWが破断すると、その時点でサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが急激に低下して0に戻る。
【0074】
そこで、従来のストレッチ成形装置においても同様であるが、本実施形態に係るストレッチ成形装置1において、例えば、
図10(b)に示すように、サーボモータ43に流れる電流の絶対値Iに閾値Ithを設定しておく。
この場合、閾値Ithは、ワークWが破断せずにワークWの引っ張りが続く場合にサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iの最大値Imaxよりも大きいが、ワークWが破断してしまう際の上記の電流の絶対値Iの所定値Iaよりも小さい値に設定される。
【0075】
そして、引っ張り機構4は、
図10(b)に二点鎖線で示すように、ワークWの引っ張りを開始した後、サーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが閾値Ithまで上昇した時点で、サーボモータ43の回転駆動を停止させてワークWに対する引っ張りを停止するように構成することが可能である。
このように構成すれば、ワークWが破断する前にワークWに対する引っ張りを停止することが可能となり、ワークWの破断を回避することが可能となる。
【0076】
一方、本実施形態のようにストレッチ成形装置1の挟み込み機構2が拘束力可変機構8を備えている場合、拘束力可変機構8は、引っ張り機構4によるワークWの引っ張りが開始された後、引っ張り機構4のサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが閾値Ithまで上昇した時点で、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを低下させるように構成することができる。
拘束力Fを低下させることで、ワークWに加わる張力Tを低下させることができる。また、本実施形態では、上記のように、ワークWへの圧下量Gを小さくすることで、第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを低下させることができる。
【0077】
具体的に説明すると、
図11(a)に示すようにワークWの引っ張りが開始されてワークWの引っ張りストロークSxが増加し始めた後、
図11(b)に二点鎖線で示すようにサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが閾値Ithまで上昇した時点で、すなわち図中の時刻tbで、
図11(c)に二点鎖線で示すように挟み込み機構2でのワークWへの圧下量Gを小さくする。
このように制御すると、ワークWに対する張力Tが低下し、
図11(b)に示すようにサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが、通常の場合すなわちワークWが破断せずに成形される場合の値に戻る。
【0078】
そして、ワークWに対する張力Tが低下するため、ワークWの破断が回避される。
そのため、上記のようにサーボモータ43に流れる電流の絶対値Iが閾値Ithまで上昇した時点で第1フレーム21及び第2フレーム22によるワークWに対する拘束力Fを低下させるように構成することで、ワークWの破断を回避することが可能となる。
【0079】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、挟み付け機構2と成形部3と引っ張り機構4の全体を制御する制御部を設けるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 ストレッチ成形装置
2 挟み込み機構
3 成形部
4 引っ張り機構
6 移動機構
7 落下防止装置
8 拘束力可変機構
21 第1フレーム
22 第2フレーム
25 第3フレーム
28 位置センサ
43 サーボモータ
81 ウォームジャッキ
82 サーボモータ
F 拘束力
G 圧下量
I サーボモータに流れる電流の絶対値
Ith 閾値
W ワーク