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特開2023-95417嚥下を検知する装置および軟口蓋の挙動の測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095417
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】嚥下を検知する装置および軟口蓋の挙動の測定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A61B5/11 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211294
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 譲
(72)【発明者】
【氏名】吉本 拓登
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB09
4C038VB40
4C038VC02
(57)【要約】
【課題】より簡易な操作によって嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができる軟口蓋の挙動の測定方法、および、嚥下を検知することができる嚥下を検知する装置を提供する。
【解決手段】外耳道103に挿入する挿入部10を備え、挿入部10は、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部と、発光部から射出された光を検知するセンサー部と、を有している嚥下を検知する装置1、および、耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出するステップと、光を検知するステップと、を有している軟口蓋の挙動の測定方法。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道に挿入する挿入部を備え、
前記挿入部は、前記外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部と、前記発光部から射出された前記光を検知するセンサー部と、を有している嚥下を検知する装置。
【請求項2】
前記センサー部は、前記発光部から射出され、前記外耳道および前記鼓膜の少なくともいずれか一方に反射した前記光を検知する請求項1に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項3】
前記発光部は前記鼓膜に対して前記光を射出する請求項1または2に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項4】
前記挿入部は、鼓膜側に配置される遠位端と前記鼓膜側とは反対側に配置される近位端を有し、
前記発光部と前記センサー部は、前記挿入部の遠位部に配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項5】
前記発光部が射出する前記光は波長が780nm以上の赤外光である請求項1~4のいずれか一項に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項6】
前記センサー部はフォトトランジスタである請求項1~5のいずれか一項に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項7】
前記挿入部の側部には弾性部材が設けられている請求項1~6のいずれか一項に記載の嚥下を検知する装置。
【請求項8】
外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出するステップと、
前記光を検知するステップと、を有している軟口蓋の挙動の測定方法。
【請求項9】
検知した前記光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するステップを有している請求項8に記載の軟口蓋の挙動の測定方法。
【請求項10】
前記電気エネルギーを増幅し、デジタル信号に変換するステップを有している請求項9に記載の軟口蓋の挙動の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下を検知する装置および軟口蓋の挙動の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嚥下は下記のようにしてなされる。まず、食物が口腔内に入ると、咀嚼によって食物を飲み込める状態にする。咀嚼がある程度完了した後、舌によって食物が咽頭へ送りこまれる。この時、軟口蓋は上方へ上がるのと同時に後方へ膨らみ(以下、「軟口蓋の後退」と記載することがある)、口腔と鼻腔を遮断する(以下、「軟口蓋の挙上」と記載することがある)。この時、口腔と鼻腔がうまく遮断されなければ、食物が鼻腔に逆流することになる。食道の蠕動運動により食物は胃へと運ばれていくが、それに伴って口蓋へ押し付けられていた舌の緊張が弱まり、軟口蓋は元の位置に戻る(以下、「軟口蓋の下降」と記載することがある)。
【0003】
嚥下を検知する方法としては、VF(造影検査)、内視鏡検査、筋電計測、マイクロフォンによる嚥下音の計測、嚥下時にスイッチを押してもらう方法などが存在するが、装置が高価であったり、大掛かりであったり、計測準備が複雑であったりするなどの問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1には、舌骨上筋群の筋活動による舌骨上筋群生体信号を検出する舌骨上筋群用筋電センサを舌骨上筋群部分に配置する工程、又は、舌骨下筋群の筋活動による舌骨下筋群生体信号を検出する舌骨下筋群用筋電センサを舌骨下筋群部分に配置する工程の少なくともいずれか一方の工程を行い、さらに、喉頭の挙上による喉頭挙動信号を検出する喉頭挙動センサを喉頭部分に配置するセンサ部配置工程と、舌骨上筋群用筋電センサで舌骨上筋群生体信号を検出し、舌骨下筋群用筋電センサで舌骨下筋群生体信号を検出し、喉頭挙動センサで喉頭挙動信号を検出する生体信号検出工程と、舌骨上筋群生体信号、舌骨下筋群生体信号及び喉頭挙動信号から、解析部でそれぞれの特徴量を抽出する特徴量抽出工程と、喉頭挙動信号の特徴量から舌骨の挙上開始点を識別する挙上開始点識別工程と、挙上開始点を非随意運動である嚥下反射の開始点とし、舌骨上筋群生体信号の特徴量及び舌骨下筋群生体信号の特徴量の時系列変化に合わせることで摂食嚥下機能を評価する評価工程と、評価した結果を表示部に表示する表示工程と、を備えている摂食嚥下機能評価方法について記載されている。
【0005】
なお、嚥下を認識するものではないが、特許文献2には、外耳に装着され、咀嚼によって起こる外耳道の形状変化を距離の変化として検知して検知信号を出力するセンサ部と、該センサ部からの検知信号に基づいて咀嚼を認識する認識部とを備え、ウェアラブルコンピュータの入力デバイスとして使用できる咀嚼認識装置について記載されている。
【0006】
特許文献3には、外耳道を含む外耳に装着され、嚥下を含まない所定の動き(瞼の瞬き動作、眼球の動作、舌の動作、咀嚼動作、顔面の伸縮動作、及びこれらの組み合わせ動作)によって起こる外耳道の形状変化を距離の変化として検知する光学式センサと、光学式センサからの検知信号に基づいて外部の出力デバイスを制御する制御部と、を備えている入力デバイスについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-142087号公報
【特許文献2】特許第6245603号公報
【特許文献3】特許第5543929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載されている摂食嚥下機能評価方法においては、複数のセンサを適切な筋肉部分に配置する必要があるため、専門的な知識が必要で、手技も複雑であった。このため、より簡単に操作することができる嚥下を検知する装置や嚥下を検知するための方法の開発が望まれていた。
【0009】
また、特許文献2および特許文献3に記載されている装置やデバイスは、瞼の瞬き動作、眼球の動作、舌の動作、咀嚼動作、顔面の伸縮動作等を検知して、ウェアラブルコンピュータ等の出力デバイスを制御するための入力デバイスとして使用できるものである。ここに記載されている動作は実行しようと思えば比較的直ぐに実行できるものであるのに対して、嚥下はその動作の実行を考えてから完了するまでに時間を要するものであり、即応性が求められる入力デバイスに対しては適性のない動作であったことから、検知する動作の対象としては不適当であった。
【0010】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡単に操作が可能な嚥下を検知する装置および軟口蓋の挙動の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決できた本発明の嚥下を検知する装置の一実施態様は、外耳道に挿入する挿入部を備え、挿入部は、外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部と、発光部から射出された光を検知するセンサー部と、を有している点に要旨を有する。上記構成を有する嚥下を検知する装置は、発光部が外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出し、センサー部が当該光を検知する。嚥下中に軟口蓋が動くことに伴って外耳道や鼓膜も動く。これにより、発光部から射出された光の反射の仕方が変化する。この反射の変化をセンサー部が検知することで嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。上記嚥下を検知する装置は外耳道に挿入するだけでよいため、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって嚥下を検知することができる。
【0012】
センサー部は、発光部から射出され、外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に反射した光を検知することが好ましい。
【0013】
発光部は鼓膜に対して光を射出することが好ましい。
【0014】
挿入部は、鼓膜側に配置される遠位端と鼓膜側とは反対側に配置される近位端を有し、発光部とセンサー部は、挿入部の遠位部に配置されていることが好ましい。
【0015】
発光部が射出する光は波長が780nm以上の赤外光であることが好ましい。
【0016】
センサー部はフォトトランジスタであることが好ましい。
【0017】
挿入部の側部には弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記課題を解決できた本発明の軟口蓋の挙動の測定方法の一実施態様は、外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出するステップと、光を検知するステップと、を有している点に要旨を有する。嚥下中に軟口蓋が動くことに伴って外耳道や鼓膜も動く。これにより、射出された光の反射の仕方が変化する。この反射の変化を検知することで嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。これにより、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。
【0019】
軟口蓋の挙動の測定方法は、さらに、検知した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するステップを有していることが好ましい。
【0020】
軟口蓋の挙動の測定方法は、さらに、電気エネルギーを増幅し、デジタル信号に変換するステップを有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の嚥下を検知する装置および軟口蓋の挙動の測定方法は、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の側面図を表す。
図2図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の正面図を表す。
図3図2に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置のIII-III線における断面図(一部側面図)を表す。
図4図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の変形例を示す側面図を表す。
図5図4に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の断面図(一部側面図)を表す。
図6図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置を使用者が装着している様子を示す側面図(一部断面図)を表す。
図7】本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置のセンサー部から取得した信号をアナログ-デジタル変換回路によってデジタル信号に変換し、経時的に示したグラフの一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0024】
本発明の嚥下を検知する装置の一実施態様は、外耳道に挿入する挿入部を備え、挿入部は、外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部と、発光部から射出された光を検知するセンサー部と、を有している点に要旨を有する。上記構成を有する嚥下を検知する装置は、発光部が外耳道および鼓膜の少なくともいずれか一方に対して光を射出し、センサー部が当該光を検知する。嚥下中に軟口蓋が動くことに伴って外耳道や鼓膜も動く。これにより、発光部から射出された光の反射の仕方が変化する。この反射の変化をセンサー部が検知することで嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。上記嚥下を検知する装置は外耳道に挿入するだけでよいため、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって嚥下を検知することができる。
【0025】
図1図7を参照して、嚥下を検知する装置の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の側面図を表す。図2は、図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の正面図を表し、より詳細には、図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置を遠位側から観察した状態を表す。図3は、図2に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置のIII-III線における断面図(一部側面図)を表す。図4は、図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の変形例を示す側面図を表す。図5は、図4に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置の断面図(一部側面図)を表す。図6は、図1に示す本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置を使用者が装着している様子を示す側面図(一部断面図)を表す。図2図5は、挿入部10と発光部20と、センサー部30を備えている嚥下を検知する装置1の構成例を示している。図6は、挿入部10が使用者100の外耳道103に挿入されている様子が示されている。図7は、本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置のセンサー部から取得した信号をアナログ-デジタル変換回路によってデジタル信号に変換し、経時的に示したグラフの一例を表す。なお、図1図3図6において紙面左側が挿入部10の近位側に相当し、紙面右側が挿入部10の遠位側に相当する。図2は、紙面手前側が挿入部10の遠位側に相当し、紙面奥側が挿入部10の近位側に相当する。以下では、嚥下を検知する装置1を単に装置1と称することがある。
【0026】
本明細書内において、遠位側とは挿入部10を外耳道103に挿入したときに挿入部10の延在方向に対して鼓膜104側を指し、遠位側とは近位側の反対側を指す。挿入部10の遠位部とは挿入部10のうちの遠位側半分を指し、挿入部10の近位部とは挿入部10のうちの近位側半分を指す。また、挿入部10の延在方向を軸方向x、該軸方向xと垂直に交わる方向を径方向yと称す。なお、径方向yは軸方向xに垂直な方向であるが、本図面では紙面上下方向の径方向yのみを示している。
【0027】
装置1は、外耳道103に挿入する挿入部10を備える。挿入部10の形状は、使用者100の外耳道103に挿入することができるものであれば特に限定されないが、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状、またはこれらを組み合わせた形状などにすることができる。なかでも、外耳道103への挿入のしやすさから、挿入部10の形状は、図1及び図2に示すように、円柱状であることが好ましい。なお、図示しないが、挿入部10は、遠位側に向かって径が小さくなっていてもよく、例えば、遠位側に向かって径が小さくなる円錐台状や多角錐台状であってもよい。
【0028】
挿入部10を構成する素材は特に限定されないが、例えば、天然樹脂、合成樹脂などがあげられる。
【0029】
図1に示すように、挿入部10は、鼓膜104側に配置される遠位端11と鼓膜104側とは反対側に配置される近位端12を有していてもよい。
【0030】
挿入部10は、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部20を有している。発光部20は、外耳道103のみに対して光を射出してもよいし、鼓膜104のみに対して光を射出してもよいし、外耳道103および鼓膜104の両方に対して光を射出してもよいが、嚥下の検知精度を向上させやすくする観点から、発光部20は鼓膜104に対して光を射出するように構成されていることが好ましい。
【0031】
発光部20は光を射出するものであればよい。例えば、LED素子や光ファイバーのコアを発光部20として用いることができる。
【0032】
発光部20としてLED素子を用いる場合は、電気を供給する電源装置が導線60aを介してLED素子と接続されている構成にすることができる。これにより、電気が電源装置から導線60aを介して発光部20であるLED素子に供給され、LED素子を発光させる構成とすることができる。
【0033】
図示しないが、発光部として光ファイバーのコアが用いられる場合は、該光ファイバーの一端がLED光源装置と接続されていることが好ましい。これにより、LED光源装置から射出された光が該LED光源装置に接続されている光ファイバーの一端から入射し、入射した光が光ファイバーのコアを通って光ファイバーの他端から射出される構成とすることができる。
【0034】
発光部20が射出する光は波長が780nm以上の赤外光であることが好ましく、830nm以上の赤外光であることがより好ましく、880nm以上の赤外光であることがさらに好ましい。発光部20が射出する光の波長の上限は、例えば、1000nm以下、990nm以下などにすることができる。発光部20が射出する光の波長は、960nmであることが特に好ましい。これにより、嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる。
【0035】
発光部20が射出する光としては上述した範囲内の波長の光を用いることができるが、発光部20からは上述した範囲内の波長の光のみが射出されてもよいし、上述した範囲内の波長の光に加えて上述した範囲外の波長の光を射出しても構わない。嚥下の検知精度を向上させやすくする観点からは、発光部20からは上述した範囲内の波長の光のみが射出されることが好ましい。
【0036】
発光部20は、挿入部10の遠位部に配置されていることが好ましく、挿入部10の遠位端部に配置されていることがより好ましく、挿入部10の遠位端11に配置されていることがさらに好ましい。また、軸方向xにおける発光部20の遠位端の位置と挿入部10の遠位端11の位置とが同じ位置であることがさらに好ましい。これにより、使用者100の外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を当てやすくすることができるため、嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる。
【0037】
挿入部10は、発光部20から射出された光を検知するセンサー部30を有している。センサー部30は、光を検知する受光素子を有していることが好ましく、光の強度を検知する受光素子であることが好ましい。例えば、センサー部30に用いられる受光素子としてフォトトランジスタ、フォトダイオード、CCDなどがあげられるが、センサー部30はフォトトランジスタであることが好ましい。フォトトランジスタを使用することにより、検知した信号のノイズを低減することができるため、嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる。
【0038】
上述のように、外耳道103に挿入する挿入部10を備え、挿入部10は、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出する発光部20と、発光部20から射出された光を検知するセンサー部30と、を有している嚥下を検知する装置1は、発光部20が外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出し、センサー部30が当該光を検知する。嚥下中に軟口蓋が動くことに伴って外耳道103や鼓膜104も動く。これにより、発光部20から射出された光の反射の仕方が変化する。この反射の変化をセンサー部30が検知することで嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。上記嚥下を検知する装置1は外耳道103に挿入するだけでよいため、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって嚥下を検知することができる。
【0039】
センサー部30は、発光部20から射出され、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に反射した光を検知することが好ましい。センサー部30が検知するのは外耳道103に対して射出されて反射した光のみであってもよいし、鼓膜104に対して射出されて反射した光のみであってもよいし、外耳道103および鼓膜104の両方に射出されて反射した光であってもよい。嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる観点から、センサー部30は、発光部20から射出されて鼓膜104に反射した光を検知することがより好ましい。
【0040】
センサー部30は、挿入部10の遠位部に配置されていることが好ましく、挿入部10の遠位端部に配置されていることがより好ましく、挿入部10の遠位端11に配置されていることがさらに好ましい。また、軸方向xにおけるセンサー部30の遠位端の位置と挿入部10の遠位端11の位置とが同じ位置であることも好ましい。これにより、使用者100の外耳道103および鼓膜104の少なくとも一方に対して射出された発光部20の反射光を検知しやすくすることができるため、嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる。
【0041】
発光部20とセンサー部30は、挿入部10の遠位部に配置されていることが好ましく、挿入部10の遠位端部に配置されていることがより好ましく、挿入部10の遠位端11に配置されていることがさらに好ましい。また、軸方向xにおける発光部20の遠位端の位置およびセンサー部30の遠位端の位置が、挿入部10の遠位端11の位置と同じ位置であることも好ましい。これにより、発光部20から射出された光を使用者100の外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して当てやすくすることができ、使用者100の外耳道103および鼓膜104の少なくとも一方から反射した光をセンサー部30が検知しやすくすることができるため、嚥下の検知精度を向上させやすくすることができる。
【0042】
センサー部30は導線60bに接続されていることが好ましい。図示しないが、センサー部30は導線60bを介して表示装置に接続されていることがより好ましい。表示装置としては、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などがあげられる。これらの表示装置に検知結果を表示することにより、使用者100は容易に嚥下の検知結果を確認することができる。
【0043】
挿入部10の側部13には弾性部材40が設けられていることが好ましい。弾性部材40は、弾性変形可能な部材を指す。弾性部材40は挿入部10よりも弾性変形しやすいことが好ましい。挿入部10の側部13に弾性部材40が設けられていることにより、挿入部10を外耳道103に挿入する際、弾性部材40が外耳道103の形に沿って変形することができるため、装着時の違和感を軽減することができる。
【0044】
図4および図5に示すように、挿入部10の側部13には遠位側に向かって径が小さくなるように弾性部材40が設けられていることが好ましい。弾性部材40は複数の部材から構成されていてもよい。径方向yにおける長さが挿入部10よりも長い第1弾性部材40aと、径方向yにおける長さが第1弾性部材40aよりも長い第2弾性部材40bと、径方向yにおける長さが第2弾性部材40bよりも長い第3弾性部材とを有していてもよい。外耳道103への挿入性向上の観点から、第1弾性部材40aと第2弾性部材40bと第3弾性部材40cは、遠位側からこの順で配置されていることが好ましい。
【0045】
弾性部材40の形状は図4および図5に示すような半球台状であってもよい。図示しないが、弾性部材40の形状は半円状や円錐台状、多角柱状であってもよい。また、筒状に形成された弾性部材の内腔に挿入部が配置されているような態様であってもよい。第1弾性部材40aと第2弾性部材40bと第3弾性部材40cはそれぞれ異なる形状であっても構わないが、第1弾性部材40aと第2弾性部材40bと第3弾性部材40cが全て半球台状であることが好ましい。なお、図示しないが、第1弾性部材40aと第2弾性部材40bと第3弾性部材40cが全て同じ形状、同じ大きさであっても構わない。
【0046】
弾性部材40を構成する素材は特に限定されないが、例えば、天然樹脂、合成樹脂などがあげられる。弾性部材40を構成する素材は挿入部10を構成する素材と同じであってもよいし、異なっていてもよい。弾性部材40はゴムやシリコンで形成されていることが好ましい。
【0047】
挿入部10の近位部にはコネクト部50が設けられていることが好ましく、挿入部10の近位端12にコネクト部50が設けられていることがより好ましい。これにより、使用者100が装置1を把持しやすくすることができるため、挿入部10を外耳道103に挿入しやすくすることができる。
【0048】
コネクト部50は、使用者100が把持しやすい形状であることが好ましく、例えば、円柱状、楕円柱状、多角柱状、またはこれらを組み合わせた形状などにすることができる。
【0049】
コネクト部50を構成する素材は特に限定されないが、例えば、天然樹脂、合成樹脂などがあげられる。コネクト部50を構成する素材は挿入部10を構成する素材と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
ここまで、本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置について説明した。次に本発明の軟口蓋の挙動の測定方法について説明する。
【0051】
本発明の軟口蓋の挙動の測定方法の一実施態様は、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出するステップと、光を検知するステップと、を有している点に要旨を有する。
【0052】
まず、光を射出するステップについて説明する。該ステップでは、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出する。外耳道103のみに対して光を射出してもよいし、鼓膜104のみに対して光を射出してもよいし、外耳道103および鼓膜104の両方に光を射出してもよい。軟口蓋の挙動を検知する精度を向上させる観点からは、鼓膜104に対して光を射出することが好ましい。
【0053】
外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して射出される光としては、例えば、上記装置1の説明で発光部20が射出する光として例示した波長の光を使用することができる。
【0054】
次に、光を検知するステップについて説明する。外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して射出された光は、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方から反射する。本ステップでは、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方から反射した光を検知することが好ましい。軟口蓋の挙動を検知する精度を向上させる観点からは、鼓膜104から反射した光を検知することがより好ましい。
【0055】
嚥下中に軟口蓋が動くことに伴って外耳道103や鼓膜104も動く。これにより、射出された光の反射の仕方が変化する。この反射の変化を検知することで嚥下中の軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。これにより、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。
【0056】
上述した光を射出するステップと光を検知するステップは、例えば、上述した本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置1を使用して実施することができる。上述した発光部20が外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出し、上述したセンサー部30が外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方から反射した光を検知することができる。
【0057】
軟口蓋の挙動の測定方法は、さらに、検知した光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するステップを有していることが好ましい。例えば、フォトトランジスタを上記装置1のセンサー部30として使用することにより実施することができる。フォトトランジスタは、フォトダイオードとトランジスタを組み合わせて作られるもので、光が照射されることでフォトダイオードに電流を発生させることができる。
【0058】
軟口蓋の挙動の測定方法は、さらに、電気エネルギーを増幅し、デジタル信号に変換するステップを有していることが好ましい。例えば、フォトトランジスタを上記装置1のセンサー部30として使用することにより、フォトダイオードで発生した電流をトランジスタで増幅して出力することにより行うことができる。電気エネルギーをデジタル信号に変換するには、アナログ-デジタル変換回路を用いることができる。上記装置1を用いる場合は、センサー部30が接続されている導線60bにアナログ-デジタル変換回路を接続することによって実施することができる。
【0059】
上記光を射出するステップと光を検知するステップを上述した本発明の実施の形態に係る嚥下を検知する装置1を使用して実施することにより、図7に示すようなグラフを得ることができる。図7は、センサー部30から取得した信号をアナログ-デジタル変換回路によってデジタル信号に変換し、経時的に示したグラフの一例を表している。使用者100の嚥下中に、装置1による信号の取得と、VFによる軟口蓋の観察を同時に行ったところ、図7のBのタイミングで嚥下中の軟口蓋の後退が起こっており、Cのタイミングで嚥下中の軟口蓋の挙上が起こっており、Dのタイミングで嚥下中の軟口蓋の下降が起こっていることを見いだした。嚥下と軟口蓋の挙動とは密接に関係しているため、軟口蓋の挙動を検知することができれば、嚥下を検知することができる。
【0060】
上述の通り、外耳道103および鼓膜104の少なくともいずれか一方に対して光を射出するステップと、光を検知するステップと、を有する軟口蓋の挙動の測定方法を実施することにより、光の反射の変化を検知することによって嚥下中の軟口蓋の挙動に伴って動く外耳道103や鼓膜104の動きを検知することができる。これにより、軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。これにより、所定の筋肉部分にセンサーを配置するというような複雑な手順を踏む必要がなく、より簡単な操作によって軟口蓋の挙動を検知することができ、嚥下を検知することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:嚥下を検知する装置
10:挿入部
11:挿入部の遠位端
12:挿入部の近位端
13:挿入部の側部
20:発光部
30:センサー部
40:弾性部材
40a:第1弾性部材
40b:第2弾性部材
40c:第3弾性部材
50:コネクト部
60a:導線
60b:導線
100:使用者
101:耳介
102:外耳
103:外耳道
104:鼓膜
x:軸方向
y:径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7